【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例により詳しく説明する。
<茶抽出物の調製1>
緑茶葉1kgに対して60℃の熱水15kgを加え、90℃の水浴中で30分間抽出し、茶殻を除くためにろ過した後、そのろ液を減圧濃縮、噴霧乾燥を行い、150gの『緑茶抽出物』(対照例)を得た。対照例の成分分析を行った結果を表1に示した。
【0025】
12gの対照例を、脱イオン水110gに25℃で20分間攪拌溶解し、水溶液を得た。次いで、カラム1(内径15mm×高さ300mm、容積50mL)に充填したクラレコールGLC活性炭(クラレケミカル社製、累積細孔容積0.79mL/g、10〜500Åの細孔半径の細孔容積0.48mL/g、比表面積1150m
2/g)を、予めSV=5[h
−1]で500mLの水で洗浄した。カラム2(内径内径15mm×高さ450mm、容積75mL)に充填したイオン交換樹脂SK1B(三菱化学社製)を、予めSV=5[h
−1]で500mLの水で洗浄した。その後、対照例の水溶液120gをSV=4[h
−1]でカラム1に通液し透過液は廃棄した。
【0026】
次いでSV=4[h
−1]で300mLの水で洗浄した。水洗後、0.2質量%水酸化ナトリウム水溶液(pH12.8)をSV=5[h
−1]で1000mL通液し非重合体カテキン類溶出液を得た。溶出液は連続でカラム2に通液し、脱イオンを行い、非重合体カテキン類水溶液960g(pH4.2)を得た。この組成物を更に減圧濃縮処理し、凍結乾燥行い、『茶ポリフェノールA』(実施例1)を約3.2g得た。このようにして得られた実施例1の成分分析を行った、結果を表1に示した。
また、対照例と実施例1の全非重合体カテキン類中、各種類の非重合体カテキンの質量%を
図1(A)と
図1(B)に示した。
図1から明らかなように、実施例1中の各種類の非重合体カテキン類の割合は、対照例中の各種類の非重合体カテキン類の割合とほぼ一致することを確認した。また、表1の結果によると、実施例1中のカフェイン含量が低減され、ORAC値については著しく増加した。且つ官能検査の結果で、実施例1の苦味・渋味が低減されたことが明らかとなった。
【0027】
<茶抽出物の調製2>
12gの対照例を、脱イオン水110gに25℃で20分間攪拌溶解し、対照例の水溶液を得た。次いで、カラム1(内径15mm×高さ300mm、容積50mL)に充填したクラレコールGLC活性炭(クラレケミカル社製、累積細孔容積0.79mL/g、10〜500Åの細孔半径の細孔容積0.48mL/g、比表面積1150m
2/g)を、予めSV=5[h
−1]で500mLの水で洗浄した。その後、対照例の水溶液120gをSV=4[h
−1]でカラム1に通液し、透過液は廃棄した。次いでSV=4[h
−1]で300mLの水で洗浄した。水洗後、0.2質量%水酸化ナトリウム水溶液(pH12.8)をSV=5[h
−1]で1000mL通液し非重合体カテキン類溶出液を得た。溶出液は2Nの塩酸でpH3.8まで調整し、電気透析装置(旭化成社製:卓上脱塩装置マイクロ・アシライザーG3,AC−110−400膜)を用いて、電流が0.1A以下になるまで電気透析を行った。その後、減圧濃縮処理を行い、凍結乾燥して、『茶ポリフェノールB』(実施例2)を約2.8g得た。このようにして得られた実施例2の成分分析を<茶抽出物の調製1>に記載の方法と同様にして行った。結果を表1に示した。
【0028】
<茶抽出物の調製3>
原料が緑茶粉末製剤カメリアエス30S(太陽化学製 非重合体カテキン類濃度=30.2質量%、カフェイン=6.0質量%)12gを、脱イオン水110gに25℃で10分間攪拌溶解し得られた茶抽出物以外は、上記<茶抽出物の調製1>と同様の操作を行った。こうして『茶ポリフェノールC』(実施例3)3.3gを得た。その成分分析を<茶抽出物の調製1>に記載の方法と同様にして行った。結果を表1に示した。
<茶抽出物の調製4>
原料が緑茶粉末製剤カメリアエス30S−BSK(太陽化学製 非重合体カテキン類濃度=24.5質量%、カフェイン=0.5質量%)12gを、脱イオン水110gに25℃で10分間攪拌溶解し得られた茶抽出物以外は、上記<茶抽出物の調製1>に記載の方法と同様の操作を行った。こうして『茶ポリフェノールD』(実施例4)2.6gを得た。その成分分析を<茶抽出物の調製1>に記載の方法と同様にして行った。結果を表1に示した。
【0029】
<比較例の調製1>
緑茶葉を1kgに対して60℃の熱水15kgを加え、90℃の水浴中で30分間抽出し、茶殻を除くためにろ過した後、そのろ過液12kgに酢酸エチル12kgを加えて振とうし、静置、分配した。その酢酸エチル画分を分取、減圧下で脱溶媒の後、凍結乾燥し、比較用茶ポリフェノール(1)(比較例1)を45g得た。比較例1を<茶抽出物の調製1>に記載の方法と同様にして行った。結果を表1に示した。
比較例1の全非重合体カテキン類中、各種類の非重合体カテキンの質量%を
図1(C)に示した。
図1から明らかなように、比較例1のような従来の方法で得られた茶ポリフェノール組成物中に、EGCgのようなガレート体カテキンの割合が高く、強い苦味を有するため、お茶本来の味を感じられなくなった。
【0030】
<比較例の調製2>
12gの比較例1を原料とし、120mLの10%エタノール水溶液に溶解し、ダイヤイオンHP20(三菱化学社製)を80mL充填したカラム(内径内径15mm×高さ450mm、容積75mL)に、当該抽出液(全部)を注入した。次に、300mLの10%エタノール水溶液を通液することにより未吸着成分を除いた後、45%含水エタノールを400mL流して、茶カテキン画分を溶出させた。溶出液を濃縮及び凍結乾燥させて『茶ポリフェノール2』(比較例2)5.3gを得た。このようにして得られた比較例2の成分分析を<茶抽出物の調製1>に記載の方法と同様にして行った。結果を表1に示した。
【0031】
<比較例の調製3>
12gの比較例2を、288mLの水に溶解し、重曹でpH4.5まで調整後、温度20℃に保持し、タンナーゼ(キッコーマン社製タンナーゼKTFH、500U/g)を緑茶抽出液に対して400ppmとなる濃度で添加し、18時間保持した後、90℃に溶液を加熱して、5分間保持し酵素を失活させ、反応を止めた。次いで、濃縮及び凍結乾燥を行い、『茶ポリフェノール3』(比較例3)11.5gを得た。このようにして得られた比較例3の成分分析を<茶抽出物の調製1>に記載の方法と同様にして行った。結果を表1に示した。
対照例、実施例1〜実施例4および比較例1〜比較例3に関するデータを表1に示した。
【0032】
【表1】
【0033】
表1から明らかなように、実施例1〜実施例4は、比較例1および比較例2に比べて、カフェイン含量が低く、ガロカテキン含量が高く、全体的に非重合体カテキン類中の非ガレート体率が高かった。比較例3はタンナーゼ処理によって、非重合体カテキン類中の非ガレート体率が約100%となったが、酵素処理によって生じた没食子酸含量は全非重合体カテキン類中に高濃度となった。
【0034】
<試験例1> 茶ポリフェノール組成物の苦味・渋味及び酸味に関する官能試験
実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例3の茶ポリフェノール組成物の苦味・渋味及び酸味を以下の試験方法に従って調べた。結果を表1に示した。
試験方法:
ランダムに選んだ男女10名をパネラーとして官能検査を行った。まず、イオン交換水800gに実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例3をカテキン含量として1gとなるよう添加し、さらにアスコルビン酸ナトリウム0.3g、5%重曹水溶液を適量加えることによりpHを6.2とし、さらにイオン交換水を加え全量を1000gとして、試験液を調製した。実施例1〜比較例4と比較例1〜比較例3とを比べて、苦味・渋味及び酸味が抑制されているかどうか評価した。
苦味・渋味の評価は、以下の5段階評価で行った。酸味の評価は、以下の2段階評価で行った。なお、一つの試験液・比較液を評価した後は、温湯で口中をすすぎ、30分以上経過してから次の評価を行った。
【0035】
苦味・渋味評価判定基準:
苦味・渋味を非常に強く感じる ・・・・・5点
苦味・渋味を強く感じる ・・・・・・・・4点
苦味・渋味を少し感じる ・・・・・・・・3点
苦味・渋味をあまり感じない ・・・・・・2点
苦味・渋味をまったく感じない ・・・・・1点
酸味評価判定基準:
酸味を感じる ・・・・・・・・・酸味あり
酸味を感じない・・・・・・・・ 酸味なし
表1より、実施例1〜実施例4は、比較例1および比較例2と比較して、苦味・渋味が少ないことが明らかとなった。一方、比較品3は、タンナーゼ処理することによって、苦味・渋味を低減されたが、没食子酸含量はとても高く、酸味を強く感じた。加えて、実施例1〜実施例4は、苦味、渋味が改善され、且つ酸味を全く感じなかった。従って、本実施例は、茶系飲料だけでなく、非茶系飲料としても有用であることが判った。
【0036】
<試験例2> 茶ポリフェノール組成物の抗酸化活性に関する分析
実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例3の茶ポリフェノール組成物の抗酸化活性を以下の試験方法に従って調べた。結果を表1に示した。
試験方法: 実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例3の茶ポリフェノール組成物の抗酸化活性をORAC法(Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition 43, Suppl.1, 485-489 (2008)参照)によって測定した。ORAC法は、ラジカルによる蛍光物質の消失を、添加した物質がどの程度妨げることができるかを測定する方法である。ラジカル発生剤である2,2'-azobis (2-amidino-propane) dihydrochloride(以下、AAPHと記す)を18.75mMとなるように、また蛍光物質であるfluorescein sodium salt(以下、FLと記す)を30nMとなるようにリン酸緩衝液(0.075M, pH7.4)を用いて調製した。FL溶液140μlと実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例3の茶ポリフェノール組成物の水溶液10μlを混合し、これにAAPH溶液を25μl加え、直ちに蛍光(測定波長485nm、励起波長535nm)の測定を開始した。蛍光は1分おきに40分間測定を続けた。縦軸に蛍光強度、横軸に測定時間をとったときに表される面積(AUC)を下式(1)によって計算した。
【0037】
AUC=(f0+f1+f2+f3+・・・・・+f40)/f0 (1)
(AUC:area under curve、 fi:i回目に測定した蛍光強度)
得られたAUCよりnetAUCを下式(2)によって計算した。
netAUC
Trolox=AUC
Trolox-AUC
blank
netAUC
sample=AUC
sample-AUC
blank (2)
各Trolox溶液のnetAUCをX軸に、各Trolox溶液の濃度(μM)をY軸にとったグラフより、二次回帰式(Y=ax
2+bx+c)を算出し、この回帰式より、以下の計算方法(3)からORAC値を算出した。
ORAC(μmol TE/g)=〔a×(netAUC
sample)
2+b×(netAUC
sample)+C〕×V×d/W (3)
a、b、c:二次回帰式のa、b、c
V:サンプル原液の溶液量(mL)
d:サンプル原液の希釈倍率
W:サンプル重量
【0038】
表1から明らかなように、実施例1〜実施例4は、比較例1〜比較例3と比べて、抗酸化活性がほぼ同等程度であることが明らかとなった。従って、本実施形態の方法によって得られたものは、風味が改良されたと共に、ポリフェノールの抗酸化効果も有効であることが分かった。
このように本実施形態によれば、非常に簡便な方法で、ガロカテキン含量が高く、ガレート体率が低く、カフェインをほとんど含まず、急須で入れた茶と近い非重合体カテキン組成を持つ苦味・渋味が低減され且つ酸味のない高濃度茶ポリフェノール抽出物を得ることができた。また、本実施形態の方法では、有機溶媒を全く用いることなく、特定の活性炭を用い茶葉の水抽出物を吸着脱離処理することにより、茶ポリフェノール抽出物を得られるので、残留溶媒の問題がない。