(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第4の特定培地がIL−3、Flt3リガンド、およびGMCSFを含むか、あるいはIL−3、Flt3リガンド、およびIL−6、SCF、またはTPOの少なくとも1つを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
工程(a)が、ラミニン、ビトロネクチン、ゼラチン、ポリリジン、トロンボスポンジン、またはマトリゲル(商標)などのマトリックスでコーティングされた表面上で前記細胞を培養する工程を含む、請求項1に記載の方法。
前記第4の特定培地が、10ng/mlのIL−3、25ng/mlのFlt−3リガンドおよび20ng/mlのGM−CSFを含み、そして10ng/mlのIL−6、25ng/mlのSCFおよび25ng/mlのTPOをさらに含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
複数の前記造血前駆細胞が、CD43、CD34、CD31、およびCD45、またはCD34、CD43、CD45、およびCD31を含むリストより選択される少なくとも2つのマーカーを発現する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
前記方法が、前記細胞の増殖および該細胞のT細胞への分化を促進するのに十分な量のFcキメラNotch DLL−1リガンドならびにIL−7、SCF、およびIL−2からなるリストより選択される1つまたは複数の成長因子を含む第5の特定培地中で複数の該細胞を培養する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
例示的実施形態の説明
多能性細胞(ヒト胚性幹細胞(hESC)または誘導多能性細胞(iPSC)など)の造血前駆細胞および/または内皮細胞へのin vitro分化方法を本明細書中に提供する。多能性細胞を、特定条件下で維持し、増殖し、分化することができる。したがって、多能性細胞の造血前駆細胞および/または内皮細胞への分化にはマウスフィーダー細胞または血清を使用する必要がない。得られた造血前駆細胞を、種々の骨髄細胞系列(例えば、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、または樹状細胞)またはリンパ系細胞系列(例えば、T細胞、B細胞、またはナチュラルキラー細胞)にさらに分化することができる。多能性細胞を、多能性細胞の分化前に特定条件下(例えば、TeSR培地を使用)で本質的に未分化状態にて増殖および維持することができる。
【0030】
特に、本発明者は、一定の成長因子が特定条件下で維持した多能性細胞の分化に特に重要であることを発見した。一定の実施形態では、多能性細胞をいくつかの特定培地に
逐次的に曝露して、造血前駆細胞への分化を促進することができる。第1の特定培地中(例えば、TeSR培地中)での本質的に未分化状態での多能性細胞の培養および維持後、細胞を、BMP4、VEGF、IL−3、Flt3リガンド、またはGMCSFを含まないか本質的に含まない第2の特定培地に曝露することができる。次いで、細胞をBMP4、VEGF、IL−3、Flt3リガンド、およびGMCSFを含む第3の特定培地に曝露して、造血分化を促進することができる。あるいは、細胞を、BMP4およびVEGF、および任意選択的にFGF−2を含む第3の特定培地に曝露し、その後に、IL−3、Flt3リガンド、およびGMCSFを含む第4の培地に曝露することができる。本発明者は、BMP4およびVEGFを含む第3の特定培地への
逐次的曝露およびその後のIL−3、Flt3リガンド、およびGMCSFを含む第4の培地への曝露によって、驚くべきことに造血前駆細胞の生成を実質的に増加させることができることを発見した。以下の実施例に示すように、第3の特定培地中にFGF−2を含めることにより、多能性細胞の造血前駆細胞への分化が驚異的に増加した。また、低酸
素条件(例えば、気圧5%O
2への曝露)、少なくとも部分的な細胞の再凝集(例えば、トリプシンまたはTrypLE(商標)の使用)、および/または胚様体(例えば、約200〜1000細胞/凝集体)の形成における特定範囲の細胞を使用した凝集体の形成を使用して、造血前駆細胞への分化をさらに促進することもできることが発見されている。
【0031】
I.胚性幹細胞の調製および維持
多能性細胞を、造血分化前に種々の方法を使用して未分化状態で培養および維持することができる。一定の実施形態では、多能性細胞を、特定のフィーダー非依存性培養系(TeSR培地など)を使用して、本質的に未分化の状態で培養および維持することができる。あるいは、非特定条件を使用することができる。例えば、多能性細胞を、未分化状態の幹細胞を維持するために線維芽細胞のフィーダー細胞または線維芽細胞のフィーダー細胞に曝露した培地上で培養することができる。
【0032】
フィーダー非依存性の培養系および培地を使用して、多能性細胞(hESCまたはiPSCなど)を培養および維持することができる。これらのアプローチにより、ヒト胚性幹細胞をマウス線維芽細胞の「フィーダー層」を必要とせずに本質的に未分化の状態で保持することが可能である。本明細書中に記載するように、必要に応じて、費用などを軽減するために、これらの方法を様々に修正することができる。
【0033】
実質的に任意の多能性幹細胞株またはヒト胚性幹細胞株を、本明細書中に記載の特定条件下で造血前駆細胞に分化することができると予測される。例えば、ヒト胚性幹細胞株H1、H9、hES2、hES3、hES4、hES5、hES6、BG01、BG02、BG03、HSF1、HSF6、H1、H7、H9、H13B、および/またはH14などを、本明細書中に記載の方法によって造血前駆細胞に分化することができる。その後に利用可能になる幹細胞株も本明細書中に記載の方法によって造血前駆細胞に分化することができると予測される。一定の実施形態でヒト多能性細胞を好んで使用することができるが、ある場合には、他の多能性細胞(哺乳動物、マウス、霊長類など)を造血分化のために使用することも可能である。
【0034】
ヒト胚性幹細胞に加えて、iPS細胞を、本明細書中に記載の方法によって培養し、そして/または造血前駆細胞に分化することができる。iPS細胞は、幹細胞のように作用する再プログラミングされた体細胞である(Takahashiら、2007;Takahashiら、2007;Nakagawaら、2007)。当業者に認識されるように、用語「多能性細胞」には、天然に存在するか胚盤胞に由来する細胞および幹細胞に脱分化するか幹細胞様状態に戻るように誘導された細胞の両方が含まれる(例えば、Nakagawaら、2007;Yuら、2007を参照のこと)。
【0035】
A.TeSR培地
TeSR培地は、未分化ヒト胚性幹細胞を培養するために使用することができる特定培地である。TeSR培地には、TeSR1培地およびmTeSR培地の両方が含まれる。TeSRには、bFGF、LiCl、γ−アミノ酪酸(GABA)、ピペコリン酸、およびTGFβが含まれ、TeSRを使用した種々の方法が以前に記載されている(例えば、米国特許出願公開第2006/0084168号およびLudwigら(2006a;2006b)(その全体が参考として援用される))。
【0036】
TeSR培地は、典型的には、無機塩、微量ミネラル、エネルギー基質、脂質、アミノ酸、ビタミン、成長因子、およびタンパク質、ならびに他の成分を含む。TeSR1培地のための完全処方物を、以下の表1に示す。
【0037】
【表1】
上記処方物中の一定の成分を、例えば、研究または節約のためのTeSRの使用を容易にするために置換することもできる。例えば、培地mTeSR1をTeSR1の代わりに使用することができ、この培地は、TeSR1と以下の点で異なる:ウシ血清アルブミン(BSA)をヒト血清アルブミンの代わりに使用することができ、クローン化したゼブラフィッシュ塩基性線維芽細胞成長因子(zbFGF)をbFGFの代わりに使用することができる。TeSR1は、例えば、Ludwigら(2006)(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0038】
「TeSR−GF」または「mTeSR−GF」は、bFGFおよびTGF−βを欠くTeSR培地をいう。「EB基本培地」は、約20%BIT9500(Stem Cell Technologies)または血清代替物3(Sigma−Aldri ch,St.Louis,MO)、約1%NEAA、約1mM L−グルタミン、約0.1mMメルカプトエタノール、約0.75%BSA、および約50 ug/mlアスコルビン酸を補足したIMDMを含む培地をいう。用語「TeSR培地」は、本明細書中で使用する場合、TeSR1培地、TeSR2培地、またはmTeSR培地を含む。TeSR2培地は、TeSR2培地がヒト化されていることを除いてTeSR1培地と本質的に同一である。TeSR1培地、TeSR2培地、またはmTeSR培地を、本明細書中に開示の方法で使用することができる。
【0039】
1.成長因子含有量を減少させた特定培地における前条件付け
(例えば、TeSR培地およびマトリックス成分(マトリゲル(商標)またはフィブロネクチンなど)を含む二次元培養系における)多能性細胞培養物の培養および/または維持後且つ造血分化前に、多能性細胞を、成長因子が減少しているか、本質的に排除されているか、欠いている特定培地に有利に曝露するか、この特定培地中で培養することができる。一定の実施形態では、培地に、TGF−βおよび/またはFGF−2を補足することができる。例えば、成長因子レベルが実質的に減少した(例えば、約0.1ng/mL TGF−βおよび約20ng/mL FGF−2が補足されているが、全ての他の非インスリン成長因子を欠く)TeSR培地を使用して、さらなる成長因子への曝露前に細胞を培養または「前条件付け」して、例えば、造血細胞への分化を促進することができる。
【0040】
この「前条件付け」培養工程は、多能性細胞を約12時間〜約7日間以上培養する工程を含み得る。一定の実施形態では、前条件付け工程は、約1〜約7日間、約1〜約3日間、または約1、2、3、4、5、6、または7日間、またはこれらから導き出される任意の範囲の期間細胞を培養することを含み得る。以下の実施例に示すように、約1〜約3日目の前条件付け培養物は、その後の多能性細胞の造血分化を有意に改善するのに十分であり得る。
【0041】
前条件付け培養物で使用される特定培地は、FGF−2および/またはTGF−βを含むことができる。典型的には、前条件付け培養物
に補足されるFGF−2および/またはTGF−β
の量を、本質的に未分化の状態で細胞を維持するために使用される特定培地と比較して減少させることができる。一定の実施形態では、約10pg/mL〜約5ng/mL、約0.05ng/mL〜約0.5ng/mL、またはこれらから導き出される任意の範囲のTGF−βを、前条件付け培養
の間に特定培地中に含めることができる。種々の実施形態では、約1ng/mL〜約100ng/mL、約5ng/mL〜約50ng/mL、または約10ng/mL〜約25ng/mL、または約20ng/mLのFGF−2を、前条件付け培養
の間に特定培地中に含めることができる。FGF−2は、組換え的に産生されたヒトまたはゼブラフィッシュFGF−2であり得る。
【0042】
B.マトリックス成分
マトリックス成分を、実質的または本質的に未分化の状態
で多能性細胞
を培養および維持
するために特定培地中に有利に含めることができる。適切な半固体マトリックス中で培養する場合、コロニー形成細胞(CFC)と呼ばれる個別の前駆体が増殖して個別の細胞クラスターまたはコロニーを形成することができる。CFCアッセイを、栄養素およびサイトカインを補足した半固体培地(メチルセルロースまたはコラーゲンなど)に細胞懸濁液を入れ、その後に例えば、約37℃でインキュベートすることによって行うことができる。
【0043】
種々のマトリックス成分を使用して、多能性細胞(hESCまたはiPSCなど)を培養および維持することができる。例えば、Ludwigら(2006)(その全体が参考として援用される)に記載のように、IV型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、およびビトロネクチンの組み合わせを使用して、胚細胞の培養および維持のための固体支持体を得ることができる。
【0044】
マトリゲル(商標)を使用して、多能性細胞の細胞培養および維持のための基質を得ることもできる。マトリゲル(商標)は、マウス腫瘍細胞によって分泌されるゼラチン様タンパク質混合物であり、BD Biosciences(New Jersey,USA)から市販されている。この混合物は、多数の組織で認められる複雑な細胞外環境に類似し、細胞培養用基質として細胞生物学者によって使用されている。マトリゲル(商標)を使用した特定培地中でのヒト胚性幹細胞の培養および維持方法は、例えば、Ludwigら(2006)に記載されており、この方法を使用して造血分化前の多能性細胞を培養することができる。当業者に公知のように、ヒト胚性幹細胞のさらなる培養および維持方法を本発明と共に使用することができることが認識される。
【0045】
II.ES細胞の播種および分化
多能性細胞を、造血分化前に部分的、本質的、または完全に解離または個別化することができる。多能性細胞を、単一のコロニーまたはクローン群としてか、培養組織から解離した細胞の
集塊としてか、個別化した細胞として播種して造血分化を促進することができる。多能性細胞を、機械的方法または酵素的方法(多能性細胞を含む組織のトリプシンまたはTrypLE(商標)への曝露など)を使用して、本質的に個別の細胞に個別化または分離することができる。タンパク質分解酵素を使用して、培養表面から細胞を解離し、細胞自体を分離することができる。分化のためにES細胞を個別化するために使用することができる酵素には、セリンプロテアーゼ(トリプシンなど)および酵素の混合物(アクターゼ(商標)中に見出される酵素など)が含まれる。
【0046】
多能性細胞を、本質的に個別の(または分散した)細胞として播種培地に添加または播種することができる。一定の実施形態では、分散したES細胞を、約50万〜300万細胞/mlの密度にて表面(低付着表面など)上の播種培地中に播種する。一定の実施形態では、播種培地は特定培地である。一定の実施形態では、低付着表面を有利に使用することができるが、標準的な無菌細胞培養物に適合する本質的に任意の材料を培養表面に使用することができると予測される。播種培地は、TeSR培地またはmTeSR培地、マトリックス成分、およびROCKインヒビターを含むことができる。
【0047】
多能性細胞を、ROCKインヒビター、プロテアーゼインヒビター(例えば、トリプシンインヒビター)、および/またはPKCインヒビターを含むか含まない播種培地中で培養するかこの播種培地に曝露することができ、細胞を、1つまたは複数の成長因子を含む特定培養培地中にて低酸
素雰囲気下で培養することができる。一定の実施形態では、ダイズトリプシンインヒビター(例えば、約0.25mg/mL〜0.5mg/ml)を播種培地中に含めることができる。播種培地および特定培養培地は、それぞれ、フィーダー細胞を含まないか、本質的に含まないかもしれない。さらなる分化細胞をその後に回収することができる。例えば、造血前駆細胞またはCD34+細胞
は、播種
後約8日間〜約12日間以上または約6日間〜約9日間
の培養
時に生じ得る。
【0048】
任意選択的に、ポリビニルアルコール(PVA)を、胚様体(EB)の形成
の間にROCKインヒビターを含む培地中に含めることができる。本発明者らは、ROCKインヒビターを含む培地中でのEB形成のためにPVAが必要でな
いが、それにもかかわらず、EB形成
の間の培地(例えば、低レベルのTGF−βおよびFGF−2以外の成長因子(growth)を欠くTeSR培地)中にPVAを含めることができることを認めた。TrypLE(商標)または他の酵素消化物を使用して、ROCKインヒビターおよび/またはトリプシンインヒビター(および/または、任意選択的に、PVA)の曝露およびEB形成前に多能性細胞を実質的に個別化するかバラバラにすることができる。
【0049】
III.多能性細胞の造血前駆細胞への分化
部分的、本質的、または完全な多能性細胞の解離または個別化後、細胞を特定培地中でさらに培養して造血分化を促進することができる。成長因子の特定の組み合わせが多能性細胞の造血前駆体および造血細胞系列への分化を実質的に促進することができることが発見された。成長因子の特定の組み合わせの
逐次的適用を使用して多能性細胞の分化をさらに促進することができることがさらに発見された。一定の実施形態では、成長因子の特定の組み合わせは多能性細胞の造血分化に極めて重要である。例えば、BMP4、VEGF、Flt3リガンド、IL−3、およびGMCSFの組み合わせを使用して造血分化を促進することができることを本明細書中に示す。一定の実施形態では、本発明者は、BMP4およびVEGF(および任意選択的にFGF−2)を含む第1の培地への細胞培養物の
逐次的曝露およびその後のFlt3リガンド、IL−3、およびGMCSFを含む第2の培地中での培養によって多能性細胞の造血前駆細胞および造血細胞への分化を驚異的に増大させることができることを発見した。例えば、以下の実施例に示すように、この
逐次的曝露により、特定条件下で同一時間にわたって産生される造血前駆細胞数がほぼ倍増した。さらに、BMP4およびVEGFを含む培地中にFGF−2(50ng/ml)を含めることにより、多能性細胞からの造血前駆細胞生成の効率が少なくとも倍増した。
【0050】
多能性細胞の造血前駆細胞への分化を、特定条件または非特定条件を使用して行うことができる。一般に、特定条件は、一般に、得られた細胞がヒト被験体への投与を意図
される実施形態で好ましいと認識されるであろう。造血幹細胞を、特定条件下(例えば、TeSR培地およびマトリックス成分(マトリゲル(商標)など)を使用)にて多能性幹細胞から培養することができ、造血細胞を、多能性細胞由来の胚様体から生成することができる。他の実施形態では、多能性細胞を、OP9細胞またはマウス胚線維芽細胞上で共培養し、その後に分化させることができる。
【0051】
多能性細胞は、分化過程の一部として胚様体を形成することが可能である。分化を誘導するための「胚様体」(EB)(すなわち、成長中の細胞のクラスター)の形成は、一般に、ヒト多能性幹細胞のEBへのin vitro凝集を含み、ヒト多能性幹細胞の内胚葉、外胚葉、および中胚葉起源の複数の組織型への自発的および無作為な分化が可能である。したがって、三次元EBを使用して、造血細胞および内皮細胞のいくつかの画分を産生することができる。
【0052】
以下のプロトコールを使用してEBを形成することができる。マトリゲル(商標)コーティングプレート上でのフィーダー
無しでの成長に適合させた未分化のhESCまたはiPSCを、37℃で約10分間のコラゲナーゼIV(1mg/ml)処理を使用して、コンフルエンスで回収することができる。インキュベーション後にウェルのコラゲナーゼを洗い流し、EB基本培地中へのウェルの掻爬によってEBを形成させることができる。翌日、培地を、異なるサイトカイン処方物を含むEB分化培地に交換することができる。
【0053】
EB形成を促進するために、細胞を、約20%BIT9500(Stem Cell Technologies)または血清代替物3、約1%NEAA、約1mM L−グルタミン、および約0.1mMメルカプトエタノール、約0.75%BSA、および約50ug/mlアスコルビン酸を補足したIMDMを含む「EB基本培地」中での一晩のインキュベーションのための低付着プレートに移すことができる。翌日、細胞を各ウェルから回収し、遠心分離することができる。次いで、細胞を、約50ng/ml骨形成因子(BMP−4)、約50ng/ml血管内皮成長因子(VEGF)、約25ng/ml幹細胞因子(SCF)、約25ng/ml Flt−3リガンド(Flt−3L)、約10ng/mlインターロイキン−3(IL−3)、約10ng/mlインターロイキン−6(IL−6)、約20ng/ml顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、約20ng/ml顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、約0.2U/mlエリスロポエチン(EPO)、約25ng/mlトロンボポエチン(thrombopoieitin)(TPO)、および約25ng/ml FGF−2を補足したEB基本培地からなる「EB分化培地」に再懸濁することができる。15mL管にEBを移し、凝集体を約5分間静置することによって、4日毎に培地を交換することができる。一定の実施形態では、EB分化培地は、およそBMP4(例えば、約50ng/ml)、VEGF(例えば、約50ng/ml)、および任意選択的にFGF−2(例えば、約25〜75ng/mlまたは約50ng/ml)を含むことができる。上清を吸引し、新鮮な分化培地と交換することができる。あるいは、細胞に、2日毎に新鮮な培地の半量を補給することができる。細胞を、分化過程中の異なる時点で回収することができる。
【0054】
造血前駆細胞を、特定培地を使用して多能性幹細胞から培養することができる。特定培地を使用した多能性細胞の造血CD34+幹細胞への分化方法は、例えば、米国特許出願第61/015,813号(放棄することなくその全体が参考として援用される)中に記載されている。これらの方法を本発明と共に使用することができると予測される。
【0055】
例えば、特定培地を使用して、造血CD34+分化を誘導することができる。特定培地は、成長因子BMP−4、VEGF、Flt3リガンド、IL−3、および/またはGMCSFを含むことができる。多能性細胞を、BMP4、VEGF、および任意選択的にFGF−2を含む第1の特定培地中で培養し、その後に(Flt3リガンド、IL−3、およびGMCSF)または(Flt3リガンド、IL−3、IL−6、およびTPO)のいずれかを含む第2の培地中で培養することができる。第1および第2の培地はまた、1つまたは複数のSCF、IL−6、G−CSF、EPO、FGF−2、および/またはTPOを含むことができる。実質的な低酸
素条件(例えば、20%O
2未満)は、造血分化または内皮分化をさらに促進することができる。
【0056】
細胞を、機械的手段または酵素的手段(例えば、トリプシンまたはTrypLE(商標)を使用)によって実質的に個別化することができる。ROCKインヒビター(例えば、H1152またはY−27632)を、培地に含めることもできる。これらのアプローチを、例えば、ロボットによる自動化を使用して自動化することができると予測される。
【0057】
多能性細胞の造血前駆細胞への分化のための特定の方法の使用が場合によっては好ましいかもしれないが、特定しないアプローチを種々の実施形態で使用することができる。ヒトESCから造血幹細胞を分化するための1つの特定しない方法は、CD34+への頑強な分化を誘導するフィーダー細胞(マウス胚線維芽細胞(MEF)フィーダー層またはマウス間質細胞株OP9など)上でESCを培養する工程を含む。簡潔に述べれば、ESCを成長因子の存在下でMEF上で成長させることができ、MEFは、細胞のための基質およびおそらくいくつかの栄養物を提供する。特定条件と対照的に、OP9細胞の使用は、一般に、CD34+分化を誘導するための追加の成長因子を必要としない。これらの過程が生じる機構は完全に理解されていない。このアプローチを、一定の成長因子および血清と組み合わせて使用することもできる(Wang、2007)。MEFも、ヒトESCの培養および維持のためにしばしば使用する。マウス胚線維芽細胞上での培養を使用する方法(以下のプロトコールなど)を、FBSの代わりにノックアウト(商標)血清代替物を含むように修正することができる。
【0058】
以下の特定しないプロトコールを、多能性細胞の造血細胞への分化のために使用することができる。H1細胞を、MEF上で日常的に維持し、次いで、
αMEM+20%の特定のFBS+100ng/ml TPO中のほとんどコンフルエントなOP9間質細胞
上に1×10
5細胞/ウェル(1ウェルは9.6cm
2である)で継代することができる。2日目および4日目に、細胞に新鮮な培地を補給することができる。7日目に、細胞を、コラゲナーゼIVを使用して新鮮なOP9細胞上に1:3に分割することができる。8日目および10日目に、細胞に新鮮な培地を補給することができる。11日目に、細胞を、コラゲナーゼIVを使用して新鮮なOP9細胞上に1:1に分割し、その後にトリプシン/EDTAを使用して単一の細胞を得て、培地をαMEM+10%特定FBS+100ng/ml TPOに交換し
得る。14〜16日目に毎日さらなる1mlのこの培地を添加することによって細胞に補給することができる。一定の実施形態では、OP9細胞に関与する分化方法を、Gaurら、2006(その全体が参考として具体的に援用される)に記載のように行うことができる。
【0059】
IV.造血前駆細胞の骨髄細胞系列またはリンパ系細胞系列への分化
種々のアプローチを本発明と共に使用して、造血前駆幹細胞を細胞
系列(赤血球、顆粒球、マクロファージ、および巨核球が含まれる)にさらに分化することができる。これらのアプローチは、赤血球分化培地、メチルセルロース、および巨核球分化培地の使用を含むことができる。一定の実施形態では、造血前駆細胞を、内皮細胞に分化するか、血管産生のために使用することもできる。
【0060】
これらの細胞系列を、種々の医学的処置および適用で使用することができる。例えば、赤血球系列を、血液移植のための血液の産生で使用することができる。他の実施形態では、内皮細胞を使用して、局所虚血を処置するために使用することができる新規の血管を産生することができる。あるいは、一定の実施形態では、本発明にしたがって分化した造血細胞を、鎌状赤血球貧血などの疾患を処置するために投与することができる(Hannaら、2007)。
【0061】
赤血球、顆粒球、単球−マクロファージ、および巨核球骨髄細胞系列の多分化能前駆体および系列制限前駆体を定量するためのin vitroアッセイ系が開発されている。コロニー内の造血系列細胞の1つまたは複数の型の形態学的認識に基づいて、コロニー形成細胞(CFC)を分類および列挙することができる。コロニーの評価および列挙を、光学顕微鏡法または各コロニーの引き抜きおよびその後の細胞化学的方法および免疫細胞化学的方法を使用した細胞の染色によってin situで行うことができる。種々のゲル化剤(寒天、アガロース、メチルセルロース、コラーゲン、およびフィブリン塊が含まれる)が、CFCアッセイのために使用されている。
【0062】
A.赤血球分化
造血前駆細胞を、例えば、赤血球分化培地を使用して赤血球系細胞に分化することができる。赤血球分化培地は無血清培地または特定培地であり得る。この培地は、SCF、EPO、TPO、インスリン、デキサメタゾンまたはヒドロコルチゾン、およびトランスフェリンを含むことができる(Slukvinら、2007)。
【0063】
以下のプロトコールを使用して、造血前駆細胞を赤血球系細胞に分化することができる。赤血球前駆体を、IL−3、FLT−3、SCF、およびTPOから導いた造血前駆細胞をヒドロコルチゾン(10−6M)、ホロトランスフェリン、およびエキサイトを含む培地中に入れることによって生成することができる。以下の実施例に示すように、100万個のhESCは、200万個の赤血球前駆体を生成することができた。
【0064】
B.メチルセルロース
メチルセルロースを使用して、造血前駆細胞からの赤血球、マクロファージおよび/または顆粒球の分化を誘導することができる。メチルセルロースは、比較的不活性なポリマーであり、良好な光学的透明度を有する安定なゲルを形成する。これは、一般に、化合物(ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清アルブミン(BSA)、2−メルカプトエタノール、インスリン、トランスフェリン、および組換えサイトカインが含まれる)を補足した培養培地またはコロニー刺激因子の供給源としての馴化培地中にて最終濃度0.9〜1.2%で使用される。細胞のメチルセルロース分化を含む方法は、例えば、Kaufmanら(2001)に記載されている。
【0065】
メチルセルロースベースの培地は、他
の型の半固体マトリック
スよりも赤血球系列細胞のより良好な成長が可能であり、したがって、同一培養物内での赤血球、顆粒球、単球、および多分化能CFCのアッセイが可能である。巨核球前駆体を、補足コラーゲンベース培地中で適切に培養し、免疫細胞化学染色を使用して具体的に同定する。
【0066】
C.巨核球への分化
造血前駆細胞を、巨核球にさらに分化することができる。体内では、巨核球は、骨髄中で見出され、細胞上で形成される突起(すなわち、血小板前駆体)から血小板を産生する。ヒトの体内の巨核球は、骨髄細胞の
わずかな割合しか示さないが、一定の疾患に応答してその数が10倍まで増加し得る。体内では、巨核球は、典型的には、以下のように造血細胞から分化する:血球芽細胞(hemacytoclast)が巨核芽球に分化し、次いで巨核芽球が前巨核球に分化し、次いで前巨核球が巨核球に分化する。
【0067】
種々の培地および方法を使用して、多能性細胞または造血前駆細胞を巨核球に分化することができる。例えば、米国特許出願公開第2007/0077654(放棄することなくその全体が参考として援用される)に記載の多能性細胞の巨核球への分化のための方法および培地を、本発明と共に使用することができる。
【0068】
成長因子を、巨核球分化培地中に優先的に含める。例えば、巨核球分化培地は、FLT−3リガンド、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン−3(IL−3)、およびインターロイキン−6(IL−6)のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、または全てを含むことができる。一定の実施形態では、SCFのみを巨核球分化培地中に含めることができる。他の実施形態では、SCFを、IL−3および/またはIL−6の一方または両方と組み合わせて使用することができる。種々の実施形態では、FLT−3リガンドおよび/またはTPOを、本発明の巨核球分化培地から排除することができる。
【0069】
造血細胞を、以下のプロトコールによって巨核球に分化することができる。巨核球を、(100ng/ml TPO、SCF、FLT−3、20%BIT9500)を含む培地中に造血前駆細胞を入れることによって産生することができる。以下の実施例に示すように、100万個のhESCは、6万個の巨核球を生成することができた。
【0070】
巨核細胞分化培地を使用して、巨核細胞の生成を誘導することができる。巨核細胞生成のための種々の生成物およびアプローチは記載されてきており、本発明と共に使用することができる(WO2006/050330号などに記載)。さらに、メガカルト(商標)はStem Cell Technologiesから利用可能であり、巨核球の産生/分化のために使用することができる。種々の実施形態では、トロンボポエチン(thrombopoeitin)(TPO)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン6(IL−6)、および/または幹細胞因子を、巨核細胞分化培地中に含めることができる。細胞からの巨核細胞の分化方法は、例えば、Kaufmanら(2001)に記載されている。
【0071】
D.内皮細胞への分化
造血細胞を、内皮細胞に分化させることもできる。内皮細胞を、例えば、動物被験体またはヒト被験体への移植のための以下のプロトコールを使用して生成することができる。ヒトES細胞由来CD31+細胞を、
EGM(商標)−2培地(Lonza,Switzerland)または50ng/mL rhVEGFおよび5ng/mL rhFGF−2を含
む分化培地中で7〜10日
間培養することができる。
【0072】
内皮細胞のさらなる増殖および分化のために、単離したCD31+細胞を、VEGF、FGF、EGF、IGF、アスコルビン酸、およびFBSを含む内皮分化培地(Lonzaカタログ番号CC3202)または50ng/mlの血管(vasular)内皮成長因子(VEGF)、およびFGF−2(例えば、50ng/mlゼブラフィッシュFGF−2)を含む分化培地中で培養することができる。細胞を2〜3週間培養することができる。
【0073】
以下のプロトコールを使用して、内皮分化を誘導することができる。内皮細胞の増殖および分化のために、単離したCD34+細胞を、ゼラチンコーティングしたウェル(1.5〜2×10
4細胞/cm
2)上のEGM−2MV培地(Cambrex)中に播種することができる。ゼラチンは、典型的には、I型コラーゲンコーティングウェルよりも
安価だが、I型コラーゲンコーティングウェル(BD labware)も使用することができる。CD34+細胞を、内皮成長因子、hVEGF
165(50ng/mL)、およびFGF−2(5ng/mL)を含むhESC分化培地中で培養することができる。約7〜10日間のインキュベーション後、付着細胞をトリプシン処理によって回収し、分析のための使用することができる。
【0074】
内皮細胞を、マトリゲルプラグの画像化によって評価することができる。例えば、以下のプロトコールを使用して、細胞を画像化することができる:hESCまたはiPSC由来の内皮細胞(EC)を、マトリゲル中に懸濁し(例えば、約100万個/ml)、SCIDベージュマウスに皮下注射することができる。次いで、FITCデキストランを、マトリゲルプラグ除去の約14日前に静脈内注射することができる。プラグを採取し、蛍光画像化技術を使用した画像化に供し、血管新生の有無についてプラグを分析することができる。
【0075】
E.肥満細胞生成
造血前駆細胞を、肥満細胞にさらに分化することができる。幹細胞因子(SCF)、IL−6、IL−3、IL−4、IL−9、および/またはIL−10への多能性細胞の曝露により、肥満細胞分化を促進することができる。
【0076】
一定の実施形態では、以下のプロトコールを使用して、肥満細胞への分化を促進することができる。造血細胞を、(100ng/ml TPO、SCF、FLT−3、20%BIT9500)を含む培地「MK3」中に造血前駆細胞を入れることによって最初に巨核球に分化することができる。肥満細胞を、その後に、MK3増殖およびその後の50ng/ml SCF、50ng/ml IL−6含有培地中での前駆体の増殖によって産生することができる。
【0077】
種々の実施形態では、臍帯血または末梢血の肥満細胞への分化方法を使用して、巨核球分化を促進することもできる。例えば、Schernthanerら(2001)は、種々の時点でIL−6または(IL−4、IL−6、およびIL−10)と組み合わせたSCFを使用した臍帯血前駆体の肥満細胞への分化方法を記載している。Lappalainenら(2007)は、種々の期間添加したSCFおよび他のサイトカイン(IL−3、IL−6、IL−9、およびIL−4)を使用した細胞の培養による末梢血の肥満細胞への分化方法を提供する。これらの方法のいずれかを本発明と共に首尾よく使用することができると予測される。
【0078】
F.マクロファージおよび樹状細胞
造血前駆細胞を、樹状細胞にさらに分化することができる。例えば、造血前駆細胞を、200ng/ml GMCSFを含む培地中に8日間入れることができる。次いで、これらの細胞を、M−CSF(10ng/ml)およびIL−1β(20ng/ml)を含む培地中に細胞を2週間入れることによってマクロファージにさらに分化するか、(20ng/ml GMCSF、20ng/ml IL−4)中に細胞を入れることによって樹状細胞にさらに分化することができる。以下の実施例に示すように、100万個のhESCは、約20万個〜250万個の樹状細胞および約50万個〜250万個のマクロファージを生成することができた。
【0079】
V.多能性細胞の内皮細胞への分化
多能性細胞(iPSCまたはhESCなど)を、本発明の種々の実施形態で内皮細胞に分化することができる。内皮細胞が血管の一部を構成するので、これらの細胞は、例えば、血管または内皮細胞に及ぼす化合物の影響、薬理学、または毒性学を決定するための化合物のスクリーニングまたは試験に特に有用であり得る。内皮細胞を、1つまたは複数の以下の性質を使用した評価または同定のために使用することもできる:血管収縮または血管拡張、血圧の調節、血液凝固(例えば、血栓症または
線維素溶解)、アテローム性動脈硬化症の促進または軽減、血管形成、炎症、および/または化合物のバリア機能(例えば、血液脳関門機能)または輸送に及ぼす影響。内皮細胞はまた、冠状動脈疾患、真性糖尿病、高血圧症、または高コレステロール血症を促進または軽減することができる化合物のスクリーニングまたは同定に有用であり得る。
【0080】
一定の実施形態では、多能性細胞を、TGF(例えば、約0.1ng/ml)およびFGF(例えば、20ng/ml)を補足した特定培地(例えば、TeSR培地)中で約12〜36時間または約24時間前条件付けすることができる。次いで、細胞を、例えば、約37℃で約5分間のTrypLE処理を使用して、コンフルエンスで採取することができる。細胞を、EB基本培地(例えば、約20%BIT9500(Stem Cell Technologies)または血清代替物−3(商標)、約1%NEAA、約1mM L−グルタミン、約0.1mMメルカプトエタノール、約0.75%BSA、約50ug/mlアスコルビン酸、およびROCKインヒビター(1μMのH−1152など)を補足したIMDMを含む)中で回収することができる。次いで、細胞を、低付着培養表面またはプレート、バイオリアクター、またはスピナーフラスコなどにて培養することができる。
【0081】
培養約12〜24時間後、細胞を回収し、BMP−4(例えば、50ng/ml)、VEGF(例えば、50ng/ml)、およびFGF−2(例えば、50ng/ml)を補足したEB基本培地中に再懸濁することができる。培地を、約4日目で新鮮な培地と少なくとも部分的に置換することができる。EB分化の約7日目に、細胞を内皮分化培地(EGM−2MV、Lonzaカタログ番号CC3202など)中に入れることができる。一定の実施形態では、内皮分化培地は、VEGF、FGF、EGF、IGF、アスコルビン酸、および/またはFBSのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全てを含む。内皮細胞を、その後に(例えば、培養10日目に)回収することができる。1つまたは複数の細胞マーカー(CD31および/またはCD105など)を使用して、例えば、FACSのMACSを使用して、細胞集団から内皮細胞集団を実質的に精製することができる。以下の実施例に示すように、内皮細胞を、本発明の一定の実施形態で、iPSCまたはhESCから首尾よく生成することができる。内皮細胞を同定するか実質的に精製するために使用することができる細胞マーカーには、CD31、CD105、CD144(VE−カドヘリン)、CD106、CD146、およびZ01(密着結合タンパク質)が含まれる。
【0082】
VI.低酸素
状態および分化
一定の実施形態では、実質的に低酸素の条件を使用して、多能性細胞の造血前駆細胞への分化を促進することができる。当業者に認識されるように、約20.8%未満の大気中酸素含有量が低酸素と見なされるであろう。
培養物中のヒ
ト細胞は、周囲の空気と比較して低い酸素含有量の大気条件で成長することができる。この相対的低酸素
状態を、培養培地に曝露した大気中酸素の減少によって達成することができる。胚細胞は、典型的には、一般に約1%と約6%との間の大気中酸素
の、酸素
低減条件および環境レベルの二酸化炭素にてin vivoで発生する。理論に拘束されることを望まないが、低酸
素条件は一定の胚発生条件の態様を模倣し得ると予測される。以下の実施例に示すように、低酸
素条件を一定の実施形態で使用して、多能性細胞(iPSCまたはhESCなど)のより分化された細胞型(造血前駆細胞など)へのさらなる分化を促進することができる。
【0083】
以下の低酸
素条件を使用して、多能性細胞の造血前駆細胞への分化を促進することができる。一定の実施形態では、約20%未満、約19%未満、約18%未満、約17%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%の大気中酸素含有量を使用して、造血前駆細胞への分化を促進することができる。一定の実施形態では、低酸素雰囲気は約5%酸素ガスを含む。
【0084】
VII.特定培養培地
本明細書中に記載のように、1つまたは複数の特定培養培地を有利に使用して、多能性細胞の造血前駆細胞への分化を促進することができる。特に、動物生成物(血清およびマウスフィーダー層など)の排除により、動物生成物への細胞の曝露に関連するリスクを軽減することができ、ヒト被験体により安全に投与することができる細胞の生成が可能である。幹細胞の種々の細胞型への分化のための伝統的な幹細胞培養の開発は血清生成物およびマウスフィーダー層に依存していたので、これらの伝統的な手順は、分化することができる規模を制限し、生物学的
変動性および潜在的汚染を増加させ、
他に有用であると証明され得る探索的治療におけるES細胞の使用
を重度に阻止
してきた。
【0085】
特に、本発明者は、培地中に同時または
逐次的に含まれる非常に制限された数のサイトカイン(例えば、任意選択的にGMCSF、IL−3、IL−6、TPO、および/またはFGF−2を組み合わせたBMP4、VEGF、FLT−3、およびIL−3)を含む特定培養培地への多能性細胞の曝露を使用して造血前駆細胞への分化を促進することができること
を同定
した。驚くべきことに、細胞培養培地中のBMP−4のみおよびVEGFのみでは造血分化を促進しなかった一方で、細胞培養培地中にBMP4およびVEGFの両方を含めた場合に協力作用を示し、一定の実施形態では、前駆細胞の造血細胞への分化を促進するために必要であったことが認められた。BMP4およびVEGFを有する特定培地中にFGF−2を含めることによって多能性細胞の分化を促進することができ、例えば、以下の
実験に例示するように、この培地中にFGF−2を含めることによって多能性細胞からの造血前駆細胞(HPCs)の生成効率が少なくとも倍増した。
【0086】
本発明者らは、一定の実施形態では、(BMP4、VEGF、および任意選択的にFGF−2)の第1の組み合わせへの前駆細胞の
逐次的曝露およびその後の(FLT−3、IL−3、およびGMCSF)または(FLT−3、IL−3、TPO、IL−3、およびIL−6)のいずれかへの
細胞の曝露により、これらの全てのサイトカインを同一期間中
に細胞に同時曝露した場合と比較して、分化(例えば、造血前駆細胞への分化)を驚異的にさらに促進することができることをさらに同定した。(BMP4およびVEGF)への曝露後且つ(FLT−3およびIL−3)への曝露前に細胞を再凝集させて、その後の成長因子への細胞の曝露を促進または改善することができる。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、この再凝集工程によって細胞の造血前駆細胞への分化をさらに促進することができると予測される。
【0087】
培養培地は、典型的には、さらなる栄養素、アミノ酸、抗生物質、および緩衝剤などを含む。一定の実施形態では、特定培養培地は、以下の表1に列挙した1つまたは複数の成分を含む。以下の培養培地は、約25ng/mlのFlt−3、約10ng/ml IL−3、および約10ng/ml GMCSFを含むことができる
。培地は1つまたは複数の抗生物質を含むことができる
が、抗生物質の非存在下で細胞に対して分化方法を実施することができる。以下の実施例に例示するように、IMDM培養培地中に血清代替物3を含めることにより、多能性細胞の分化および増加をさらに促進することができる。
【0088】
【表2】
A.成長因子
種々の成長因子を使用して、多能性細胞の造血前駆細胞への分化を促進することができる。一定の実施形態では、本発明の特定培養培地は、1つ、2つ、またはそれを超える成長因子(例えば、(BMP−4およびVEGF)または(BMP−4、VEGF、FLT−3、IL−3、およびGMCSF)など)を含むことができる。
【0089】
本発明の特定培養培地中に含むことができる成長因子には、BMP−4、VEGF、bFGF、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン9(IL−9)、インターロイキン11(IL−11)、インスリン関連成長因子1(IGF1)、インスリン関連成長因子2(IGF2)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、顆粒球−マクロファージ−コロニー刺激因子(GMCSFまたはGM−CSF)、および顆粒球コロニー刺激因子(GCSFまたはG−CSF)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の特定培養培地は、1つ、2つ、3つ、またはそれを超えるこれらの因子を含むことができる。例えば、細胞の増殖を増加させるか分化状態を調整するために、他の成長因子を特定培地中に含めることができる。一定の実施形態では、特定培地は、少なくとも(BMP−4およびVEGF、および任意選択的にFGF−2)または(FLT−3、IL−3、およびGMCSF)を含むことができる。これらの実施形態では、必ずではないが、1つまたは複数のさらなる成長因子を特定培地中に含めることができる。例えば、分化過程の第2の工程で約25ng/mlのTPOまたはSCFを使用してGMCSFを置換することができる。種々の量のこれらの因子を使用して、細胞応答を刺激することができる(例えば、Yamamuraら、2008;Fadilahら、2007;Basheyら、2007に記載の量)。例えば、細胞の増殖または細胞分化を促進するために、約1〜50ng/mL、約5〜25ng/mL、または約10ng/mLの濃度のTPOを含めることができる。種々の実施形態では、約5〜100ng/mL、約10〜50ng/mL、または約25ng/mLの濃度のSCFを特定培地中に含めることができる。種々の実施形態では、約5〜50ng/mL、約5〜25ng/mL、または約10ng/mLの濃度のIL−6を特定培地中に含めることができる。顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)を、造血前駆細胞からの顆粒球の生成のために使用することができる。
【0090】
1.BMP−4
骨形成タンパク質−4(BMP−4)は、骨形態形成タンパク質および腹側中胚葉誘導因子群のメンバーである。BMPは成人ヒト骨髄(BM)中に発現し、骨のリモデリングおよび成長に重要である。一定の実施形態では、BMP4の含有は培養の最初の2〜3日間のみ必要であり、その後に分化に有害な影響を及ぼすことなく系から除去することができる。
【0091】
BMP−4は、造血前駆細胞の増殖および分化の潜在能力の調整に重要である(Bhardwajら、2001;Bhatiaら、1999;Chadwick 2003)。さらに、BMP−4は、ヒト胎児、新生児、および成人の造血前駆細胞における初期造血細胞発生を調整することができる(Davidson and Zon,2000;Huberら、1998;Marshallら、2000)。例えば、BMP−4は成人および新生児起源の高度に精製された原始ヒト造血細胞の増殖および分化を調節することができ(Bhatiaら、1999)、BMP−4はヒト胚性幹細胞の造血分化を促進することができる(Chadwick,2003)。
【0092】
約5〜100ng/mL、約20〜100ng/mL、約20〜50ng/mL、約10〜30ng/mL、約15〜30ng/mL、約20〜30ng/mL、またはこれらから導き出される任意の範囲の濃度のBMP−4を特定培養培地中に含めることができる。一定の実施形態では、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または約50ng/mLの濃度のBMP−4を特定培養培地中に含める。
【0093】
2.VEGF
血管内皮成長因子(VEGF)は、胚循環器系の形成および血管形成に関与する重要なシグナル伝達タンパク質である。VEGFは、種々の細胞型(血管内皮および他の細胞型(例えば、ニューロン、癌細胞、腎臓上皮細胞)が含まれる)に影響を及ぼし得る。in vitroでは、VEGFは、内皮細胞有糸分裂誘発および細胞遊走を刺激することができる。VEGF機能はまた、種々の病状(癌、糖尿病、自己免疫疾患、および眼血管疾患が含まれる)で重要であることが示されている。
【0094】
約10〜100ng/mL、約20〜100ng/mL、約10〜50ng/mL、約15〜30ng/mL、約20〜30ng/mL、約20〜50ng/mL、またはこれらから導き出される任意の範囲の濃度のVEGFを、特定培養培地中に含めることができる。一定の実施形態では、約2.5、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または約50ng/mLの濃度のVEGFを特定培養培地中に含める。
【0095】
3.FGF−2
塩基性線維芽細胞成長因子(bFGFまたはFGF−2ともいわれる)は、様々な生物学的過程(肢および神経系の発生、創傷治癒、および腫瘍成長が含まれる)に関与している成長因子である。bFGFはヒト胚性幹細胞のフィーダー非依存性成長を支持するために使用されていたが(Ludwigら、(2006)、以前の研究ではbFGFは造血細胞の発生または生存に影響を及ぼす可能性は低いと示されていた(Ratajczakら、1996.)。一定の実施形態では、bFGFは分化を誘導するために必要ではない。したがって、種々の実施形態では、bFGFは、本発明の培地中に含めても排除してもよい。
【0096】
約5〜約100ng/mL、5〜約50ng/mL、約5〜約25ng/mL、約25〜約50ng/mL、またはこれらから導き出される任意の範囲の濃度のbFGFを特定培養培地中に含めることができる。一定の実施形態では、約2.5、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、または約75ng/mLの濃度のbFGFを特定培養
培地中に含める。これらの濃度は、未分化状態または実質的に未分化状態の多能性細胞の維持のために使用される培地に特に有用であり得る。種々の実施形態では、FG2(例えば、約100ng/ml)を、細胞の多能性の維持のために使用することができる。造血分化を促進するために、細胞を約5〜50ng/mlの濃度のFGF2に曝露することができる。
【0097】
種々の実施形態では、より低い濃度のbFGFを造血分化前の「前条件付け」培養段階で特定培地中に含めることができることが本発明者によって発見された。例えば、約5ng/mL〜約50ng/mL、約10ng/mL〜約30ng/mL、約15ng/mL〜約25ng/mL、約50ng/mL未満、約40ng/mL未満、約30ng/mL未満、または約10、15、20、25、もしくは30ng/mLのbFGFを、細胞の造血前駆細胞への分化前に多能性細胞の前条件付け培養中の特定培地中に含めることができる。一定の実施形態では、bFGF(例えば、約25〜75ng/mLまたは約50ng/ml)またはFGF−2および0.1ng/mL TGF−βを補足した成長因子を含まないTeSR培地を、造血分化前の多能性細胞の前条件付け培養中で使用することができる。一定の実施形態では、この前条件付け工程は、その後の造血分化を促進するために不可欠であり得る。
【0098】
多能性細胞を前条件付けした後(例えば、TGF−βおよびFGF−2を補足した成長因子を含まないTeSR培地中で約1日間)、細胞を、BMP4、VEGF、およびFGF−2(例えば、約25〜50ng/ml)を含むEB分化培地中に入れることができる。以下の実施例に示すように、FGF−2を含めることにより、多能性細胞(hESCまたはiPSCなど)の造血前駆細胞への分化効率が少なくとも倍増し得る。
【0099】
一定の実施形態では、他の線維芽細胞成長因子(酸性FGF(aFGF)、FGF4、FGF9、FGF17、またはFGF18など)を、例えば、上記の濃度でbFGFの代わりに使用することができるか、bFGFと共に含めることができると想定される。あるいは、FGF−2模倣化合物を、FGF−2の代わりに使用して実質的または本質的に同一の効果を得ることができる。FGF−2模倣物には、FGF−2を模倣するペプチド、抗体、および小分子が含まれる。例えば、合成ペプチドF2A4−K−NSはin vitroおよびin vivoでFGF−2の影響を模倣し(Linら、2006)、本発明の種々の実施形態においてFGF−2の代わりに使用することができる。
【0100】
FGループ(FGL)ペプチドは、本発明の一定の実施形態で使用することができるFGF−2模倣物の別の例である。FGLは
、FGFR1への
NCAMの結合
部位の一部を示すNCAMの第2のF3モジュール中の15アミノ酸配列である。FGLは、FGFR1に結合して活性化し、神経突起の伸長を刺激することが示されている(Kiselyovら、2003)。
【0101】
BioSET F2Aペプチドを、FGF−2の代わりに使用することもできる。BioSET F2Aペプチドは、天然ヒトFGF−2成長因子の合成模倣物である。BioSET F2AペプチドおよびF2A4−KNSペプチドは、FYI Tornier,Inc.またはBioSurface Engineering Technologies,Inc.(「BioSET」)から利用可能である。FGF−2模倣化合物の組み合わせを本発明の種々の実施形態でFGF−2の代わりに使用することもできることが想定される。
【0102】
4.IL−3
インターロイキン−3(IL−3)は、多分化能造血細胞の生存、増殖、および分化に関与する造血成長因子である。5つの哺乳動物種(ヒトが含まれる)では、IL−3をコードする遺伝子
が単離
されて、
発現され、成熟組換えタンパク質
を得ている。ヒトIL−3遺伝子は、2つの保存システイン残基および2つの潜在的なN結合グリコシル化部位を有する133アミノ酸のタンパク質をコードする(Wagemakerら、1990)。
【0103】
一定の実施形態では、2.5〜約50ng/mL、2.5〜約50ng/mL、約5〜約50ng/mL、約5〜約25ng/mL、約5〜約15ng/mL、またはこれらから導き出される任意の範囲の濃度のIL−3を、本発明の培養培地中に含める。一定の実施形態では、約2.5、5、10、15、20、25、約30ng/mLの濃度のIL−3を特定培養培地中に含める。以下の実施例に示すように、Flt3リガンドおよびIL−3は、多能性細胞の造血前駆細胞への分化に対して相乗作用を発揮し得る。一定の実施形態では、IL−3を、多能性細胞培養において培地中に最初のおよそ1〜3週間含めるか、多能性細胞の分化を促進するために培地に
培養約5日目から約7日目まで含め、その後に分化にほとんどまたは本質的に全く有害作用を及ぼすことなく系から除去することができる。
【0104】
5.FLT3リガンド
Flt3リガンド(FLT−3リガンドとも呼ばれる)は、FLT3の内因性リガンドである。FLT3は、未熟造血前駆細胞によって発現される受容体チロシンキナーゼである。FLT3のリガンドは、膜貫通タンパク質または可溶性タンパク質であり、種々の細胞(造血細胞および骨髄間質細胞が含まれる)によって発現される。他の成長因子と組み合わせて、Flt3リガンドは幹細胞、骨髄前駆細胞およびリンパ前駆細胞、樹状細胞、およびナチュラルキラー細胞の増殖および発生を刺激することができる。受容体の活性化により、造血細胞の増殖、生存、および他の過程を調節する異なるシグナル伝達経路に関与することが公知の種々の重要なアダプタータンパク質
のチロシンリン酸化
が導かれる。FLT3およびFLT3に影響を及ぼす変異はまた、病理学的疾患(白血病の予後および治療など)で重要である(Drexlerら、2004)。
【0105】
一定の実施形態では、5〜約100ng/mL、5〜約50ng/mL、約10〜約30ng/mL、約15〜約30ng/mL、約20〜約30ng/mL、またはこれらから導き出される任意の範囲の濃度のFlt3リガンドを、本発明の培養培地に含める。一定の実施形態では、約2.5、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または約50ng/mLの濃度のFlt3リガンドを特定培養培地中に含める。一定の実施形態では、Flt3リガンドを、多能性細胞培養において培地中に最初のおよそ1〜3週間含めるか、多能性細胞の分化を促進するために培地中に培養約5日目から約7日目まで含め、その後に分化にほとんどまたは本質的に全く有害作用を及ぼすことなく系から除去することができる。
【0106】
6.顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子
顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSFまたはGMCSFとも省略される)は、マクロファージ、T細胞、肥満細胞、内皮細胞、および線維芽細胞によって分泌されるタンパク質である。GMCSFは白血球成長因子として機能することができるサイトカインであり、GMCSFは、幹細胞を刺激して顆粒球(好中球、好酸球、および好塩基球)および単球を産生することができる。単球は循環血中に存在し、マクロファージに成熟することができる。したがって、GMCSFは、少数のマクロファージの活性化によってその数を迅速に増加させることができる免疫/炎症カスケード(感染との戦いに不可欠な過程)で役割を果たし得る。GMCSFの活性形態は、典型的には、ホモ二量体としてin vivoで細胞外に見出される。GMCSFはまた、酵母細胞中で発現する場合、モルグラモスチムまたはサルグラモスチム(ロイカイン)と呼ばれる。一定の実施形態では、組換え産生した成長因子を使用して多能性細胞の造血分化を促進することができる。
【0107】
一定の実施形態では、約2.5〜約100ng/mL、2.5〜約50ng/mL、約5〜約50ng/mL、約5〜約25ng/mL、約5〜約15ng/mL、またはこれらから導き出される任意の範囲の濃度のGMCSFを、本発明の培養培地中に含める。一定の実施形態では、約2.5、5、10、15、20、25、または約30ng/mlの濃度のGMCSFを特定培養培地中に含める。一定の実施形態では、GMCSFリガンドを、多能性細胞培養において培地中に最初のおよそ1〜3週間含めるか、多能性細胞の分化を促進するために培地中に培養約5日目から約7日目まで含め、その後に分化にほとんどまたは本質的に全く有害作用を及ぼすことなく系から除去することができる。
【0108】
7.幹細胞因子
幹細胞因子(SCF)は、CD117(c−Kit)に結合するサイトカインである。SCFは、「KITリガンド」、「c−kitリガンド」、または「
SL因子」としても公知である。SCFは以下の2つの形態で存在する:細胞表面結合SCFおよび可溶性(または遊離)SCF。可溶性SCFは、典型的には、メタロプロテアーゼによる表面結合SCFの切断によってin vivoで産生される。SCFは、造血幹細胞および他の造血前駆細胞の生存、増殖、および分化に重要であり得る。in vivoでは、SCFは、BFU−E(赤芽球バースト形成単位)細胞(赤血球系における最初期の赤血球前駆体である)をCFU−E(赤芽球コロニー形成単位)に変化させることができる。
【0109】
一定の実施形態では、約5〜約100ng/mL、5〜約50ng/mL、約10〜約30ng/mL、約15〜約30ng/mL、約20〜約30ng/mL、またはこれらから導き出される任意の範囲の濃度のSCFを、本発明の培養培地中に含める。一定の実施形態では、約2.5、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または約50ng/mLの濃度のSCFを特定培養培地中に含める。
【0110】
8.IL−6
インターロイキン−6(IL−6)は炎症促進性サイトカインである。in vivoでは、IL−6はT細胞およびマクロファージによって分泌され、外傷または他の組織損傷に対する免疫応答を刺激して、炎症を引き起こす。IL−6は一定の細菌に対する応答でも役割を果たすことができ、骨芽細胞はin vivoでIL−6を分泌して破骨細胞形成を刺激する。ヒトでは、多数の血管の中膜中の平滑筋細胞は、炎症促進性サイトカインとしてIL−6を産生することができ、IL−6は発熱の重要なin vivoメディエーターである。
【0111】
一定の実施形態では、約2.5〜約100ng/mL、2.5〜約50ng/mL、約5〜約50ng/mL、約5〜約25ng/mL、約5〜約15ng/mL、またはこれらから導き出される任意の範囲の濃度のIL−6を、本発明の培養培地中に含める。一定の実施形態では、約2.5、5、10、15、20、25、または約30ng/mLの濃度のIL−6を特定培養培地中に含める。
【0112】
9.TPO
トロンボポエチン(すなわち、TPO)は、肝臓および腎臓によってin vivoで主に産生され、骨髄中での血小板のin vivo生成に関与する糖タンパク質ホルモンである。一定の実施形態では、約2.5〜約100ng/mL、5〜約75ng/mL、約10〜約50ng/mL、約15〜約35ng/mL、約25ng/ml、またはこれらから導き出される任意の範囲の濃度のTPOを、本発明の培養培地中に含める。一定の実施形態では、約2.5、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または約50ng/mLの濃度のTPOを特定培養培地中に含める。
【0113】
B.マトリックス成分
培養培地は、1つまたは複数のマトリックス成分(フィブロネクチンまたはRGDペプチドなど)を含むことができる。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、マトリックス成分により、胚性幹細胞の成長のための固体支持体を得ることができる。一定の実施形態では、マトリックス成分を、培養表面に適用し、細胞の培地への播種前に培養培地と接触させることができる。例えば、細胞を、フィブロネクチンまたはマトリゲル(商標)でコーティングしたプレート上の特定培地(例えば、TeSR培地)中で培養し、その後に細胞を凝集塊に機械的に分離
するかまたは細胞
を個別化し、造血前駆細胞への分化を誘導することができる。
【0114】
種々のマトリックス成分(コラーゲン(例えば、IV型コラーゲン)、ラミニン、ビトロネクチン、マトリゲル(商標)、ゼラチン、ポリリジン、トロンボスポンジン(例えば、TSP−1、−2、−3、−4、および/または−5)、および/またはプロネクチン−F(商標)が含まれる)を使用して、多能性細胞を培養することができる。一定の実施形態では、TeSRを使用し
て予め培養した細胞と共にマトリゲル(商標)、IV型コラーゲン、またはラミニン
のみを使用
することは、細胞生存度
への可能性のある有害作用
のために回避
され得る。それにもかかわらず、これらの組成物を他のマトリックス成分と組み合わせて有利に使用することができる。これらのマトリックス成分の組み合わせは、細胞成長および細胞生存度の促進のためのさらなる利点を得ることができる。一定の実施形態では、1、2、3、4、5、6、またはそれを超える上記マトリックス成分を使用して、例えば、造血分化前に細胞を培養することができる。
【0115】
1.RGDペプチド
RGDペプチドを、特定細胞培養培地中でマトリックス成分として使用することができる。RGDペプチドは、Arg−Gly−Asp(RGD)配列を含む接着タンパク質であり、一定のRGDペプチドは細胞の接着、移動、および成長で重要な役割を果たし得る。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、RGDペプチドにより、胚性幹細胞の分化および成長を可能にするためのフィブロネクチンに類似の胚性幹細胞の物理的基質を得ることができる。一定の実施形態では、合成RGDペプチドを本発明と共に使用することができる。
【0116】
例えば、約0.05〜0.2mg/mLまたは約0.1mg/mLの濃度のRGDペプチドを特定培養培地中に含めることができる。一定の実施形態では、プロネクチンFを使用して、細胞培
養のために表面をコーティングすることができる。プロネクチンF(PnF)は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)の13
の部位を典型的に含む市販のRGDペプチドである。
【0117】
C.ROCKインヒビターおよびPKCインヒビター
本発明のなおさらなる態様では、さらなる培地成分(細胞の解離後(例えば、細胞集団の分割中またはEB形成前)のES細胞のアポトーシスを軽減するか、生存を促進する分子など)をES細胞成長培地中に含めることができる。特定培養培地を使用してES細胞を播種、培養、維持、または分化することができ、この培地は、Rho非依存性キナーゼ(ROCK)のインヒビターおよび/またはプロテインキナーゼC(PKC)のインヒビターを含むことができる。一定の実施形態では、ROCKインヒビターおよび/またはPKCインヒビターを使用して、個別化後の多能性細胞の生存および分化
効率を強化することができる。一定の実施形態では、ROCKインヒビターおよび/またはPKCインヒビターを、TeSRまたはmTeSR培地およびマトリックス成分を含む播種培地中に含めることができる。
【0118】
一定の実施形態では、特定培養培地は、1つまたは複数のRho関連キナーゼ(ROCK)インヒビター(Y−27632またはその誘導体など)を含むことができる。さらに、いくつかの態様では、特定培地は、HA−100:
【0119】
【化1】
またはその誘導体を含むことができる。
【0120】
HA−100またはY−27632は、ES細胞成長培地中に、例えば、約1〜15μM、5〜15μM、1〜30μM、5〜30μM、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30μM、またはこれらから導き出される任意の範囲の濃度で存在し得る。一定の実施形態では、HA−100またはY−27632は、約10〜20μMでES細胞成長培地中に存在する。
【0121】
本発明のES細胞成長培地中に含めることができる他のROCKインヒビターには、H−1152((S)−(+)−2−メチル−1−[(4−メチル−5−イソキノリニル)スルホニル]ホモピペラジン)が含まれる。H−1152は、HA−100のおよそ10倍の効力を示す。したがって、H−1152は、ES細胞成長培地中に、例えば、約0.1〜10μM、約0.5〜5μM、約1〜3μM、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5μM、またはこれらから導き出される任意の範囲の濃度で存在し得る。一定の実施形態では、HA−100は、約1μMでES細胞成長培地中に存在する。
H−1152は、96ウェルプレート中で
の個別化ヒトES細胞の非常に効率的な播種
を可能にする(HA−100に類似するが、濃度が1/10)
。個別化HES細胞
(そうでなければ、細胞凝集塊において継代される)は、ウェルあたり
のより均一な細胞密度を
可能にし、このことは、細胞ベースの小分子スクリーニング
にとって厳格な必須条件である。したがって、H−1152を、本発明の自動化細胞培養を含むES細胞ベースの小分子スクリーニングのためのプロトコールで使用することができる。H−1152は、例えば、Ikenoyaら(2002)およびSasakiら(2002)(本明細書中で参考として援用される)に以前に記載されている。
【0122】
【化2】
ES細胞成長培地中に含めることができる他のROCKインヒビターには、Y−27632、N−(4−ピリジル)−N′−(2,4,6−トリクロロフェニル)尿素、3−(4−ピリジル)−1H−インドール、グリシル−H1152((S)−(+)−2−メチル−4−グリシル−1−(4−メチルイソキノリニル−5−スルホニル)ホモピペラジン)、および/またはHA1100(ヒドロキシフ
ァスジル)が含まれる。Y−27632((R)−(+)−トランス−4−(1−アミノエチル)−N−(4−ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド)は、Sigma−Aldrichから市販されており、以前に記載されている(例えば、Maekawaら、1999;Daviesら、2000を参照のこと)。
【0123】
【化3】
細胞生存を促進するために使用することができる例示的なROCKインヒビターには、HA100、H1152、(+)−トランス−4−(1−アミノエチル)−1−(ピリジン−4−イルアミノカルボニル)シクロヘキサンジヒドロクロリド一水和物(例えば、WO00078351、WO00057913)、イミダゾピリジン誘導体(例えば、US7348339)、置換ピリミジンおよびピリジン誘導体(例えば、US6943172)、および置換イソキノリン−スルホニル化合物(例えば、EP00187371)が含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
PKCインヒビターをROCKインヒビターと組み合わせるかその代替物として使用することができることが予測される。例えば、多能性細胞の解離または個別化後且つ造血前駆細胞への分化前に、例えば、PKCインヒビターを使用して、細胞生存を促進することができる。使用することができるPKCインヒビターには、例えば、V5ペプチド(例えば、US7459424)、ポリミキシンB、カルホスチンC、パルミトイル−DL−カルニチン、ステアロイルカルニチン、ヘキサデシルホスホコリン、スタウロスポリンおよびその誘導体、サンギバマイシン;サフィンゴール、D−エリスロ−スフィンゴシン;塩化ケレリトリン、メリチン;塩化デカリニウム;エラグ酸、HBDDE、1−O−ヘキサデシル−2−O−メチル−ラック−グリセロール、ヒペリシン、K−252、NGIC−J、フロレチン、ピセアタンノール、クエン酸タモキシフェン、置換ピペラジンおよびチアジン(例えば、US6815450)が含まれる。
【0125】
D.他の成分
特定培養培地はまた、さらなる成分(栄養素、アミノ酸、抗生物質、緩衝剤など)を含むことができる。一定の実施形態では、本発明の特定培養培地は、非必須アミノ酸、L−グルタミン、Pen−strep、およびモノチオグリセロールを含むことができる。
【0126】
例えば、約10%〜約30%の量または約20%の量のBIT 9500(StemCell Technologies Inc.,Vancouver,Canada)を本発明の特定培養培地中に含めることもできる。BIT 9500は、IscoveのMDM中にウシ血清アルブミン、インスリン、およびトランスフェリン(BIT)の予め試験したバッチを含む。BIT 9500は、50mg/mLウシ血清アルブミン(NaHCO
3で緩衝化)、50μg/mLrhインスリン、1mg/mLヒトトランスフェリン(鉄飽和)を含む。一定の実施形態では、特定培地を必要としない実施形態においてKOSRをBIT 9500の代わりに使用することができる。KOSRは市販の非特定培地であり(例えば、Gibco/Invitrogen,カタログ番号10828)、以前にWO98/30679に記載されている。
【0127】
上記のように、BITの使用をHITに置換することができる。HITは、成分(血清アルブミンなど)がヒト成分(例えば、ヒト血清アルブミン)であることを除いて、BITについて記載の組成物を含む。例えば、HITの使用は、
潜在的な感染リスクなどが特に懸念される実施形態で好ましいかもしれない。
【0128】
血清代替物3(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)を、BIT9500の代わりに使用することもできる。血清代替物3は、ヒトタンパク質(すなわち、ヒト血清アルブミン、ヒトトランスフェリン、ヒト組換えインスリン)のみを含む。血清代替物3は、成長因子、ステロイドホルモン、糖質コルチコイド、細胞接着因子、検出可能なIg、または分裂促進因子を含まない。以下の実施例に示すように、血清代替物3を含めることにより、一定の実施形態では、分化をさらに促進することができる。
【0129】
種々の実施形態では、特定培養培地は、1つまたは複数のビタミン、ミネラル、塩、脂質、アミノ酸、または他の成分を含むことができる。例えば、本発明の特定培地は、TeSR培地中に存在する1つまたは複数の成分(例えば、TeSR中に含まれる濃度に同一または匹敵する濃度)を含むことができる。
【0130】
VIII.細胞の分離
胚性幹細胞からの造血(例えば、CD34+、CD43+)前駆細胞または内皮細胞(例えば、CD31+)の調製後、細胞集団から
、さらにまたは実質的に分化された細胞(例えば、造血前駆細胞、内皮細胞など)の1つまたは複数の亜集団を実質的に精製または分離することが望ましいかもしれない。フローサイトメトリー(FACSなど)または磁性活性化細胞分取を使用した細胞の分離方法を使用して、
不均一な細胞集団から造血細胞を分離することができる。
【0131】
A.磁性活性化細胞分取(MACS)
CD34+、CD43+、CD31+、および/またはCD45+細胞を、磁性活性化細胞分取器(MACS)を使用して分化したhESCから単離することができる。MACSは、典型的には、カラム
にわたって、細胞を分離するための磁性ビーズと組み合わせて抗体(抗CD34抗体など)を使用する。MACSは、一定の実施形態では、FACSと比較して細胞に対して穏やかであり、細胞生存度および完全性に好ましい影響を及ぼし得る。これはおそらくFACSに関連する細胞のレーザー照射に起因する。
【0132】
種々のMACS製品は市販されている(MACS MicroBeads(商標)カラムまたはAutoMACS(商標)(Miltenyi Biotec,CA,USA)(製造者の説明書にしたがって使用することができる)が含まれる)。PBS/0.5%BSA(EDTAなし)を、細胞単離のための緩衝液として使用することができる。いくつかの実験では、死細胞除去キット(Miltenyi Biotec)を使用して、CD34+細胞の単離前に死細胞を除去することができる。必要に応じて、MACSカラムを繰り返し使用することができる。
【0133】
B.FACS
蛍光標示式細胞分取(FACS)を使用して、CD34+細胞を分離することもできる。FACSは、例えば、細胞を分離するための蛍光タグを含む抗CD34抗体への結合に起因する細胞によって示される蛍光の程度を使用する。このような方法で、FACSを使用して不均一な細胞集団から造血CD34+細胞を分離することができる。
【0134】
例えば、以下のプロトコールを使用してFACSを実施し、造血細胞を定量することができる。1%FBSまたは0.5%BSAを含むPBS中で細胞を調製し、モノクローナル抗体(mAb)の組み合わせ(CD31−PE(クローンWM−59)、CD34−APC(クローン581、8G12)、CD45−FITC(クローンHI30)(全てBD PharMingen製)、およびKDR−PE(クローン89106)(R&D system)など)
を用いて4℃で15〜30分間標識することができる。50倍希釈の特異的抗体および200倍希釈のIgGコントロールを使用することができる。サンプルをFACSCalisbur(商標)(Becton−Dickson,New Jersey,U.S.A.)によって分析することができる。
【0135】
IX.バイオリアクターおよびロボット自動化
幹細胞の培養および/または胚性幹細胞からの造血前駆細胞の分化のための1つまたは複数の工程を自動化することができる。ロボット自動化または他の自動化を使用した過程の自動化により、細胞をより
効率的且つ経済的に産生、培養、および分化する方法を得ることが可能である。例えば、ロボット自動化を
、ヒト胚性幹細胞の培養、継代、培地の添加、分化培地の添加、分化培地での培養、および細胞型の分離(例えば、磁性分離またはFACSの使用)
の1つまたは複数と併せて使用することができる。
【0136】
バイオリアクターを本発明と併せて使用して、本発明にしたがって細胞(例えば、ヒト胚性幹細胞、CD34+細胞、造血細胞など)を培養、維持、および/または分化することもできる。バイオリアクターにより、大量の細胞を産生するための過程の「スケールアップ」が可能という利点が得られる。種々のバイオリアクター(
バッチバイオリアクター、
フェドバッチバイオリアクター、連続バイオリアクター(例えば、連続撹拌タンクリアクターモデル)、および/またはケモスタットが含まれる)を本発明と共に使用す
ることができる。
【0137】
例えば、スピナーフラスコを使用して、多能性細胞を維持および/または分化するための方法をスケールアップして、多数の細胞を生成することができる。一定の実施形態では、以下のプロトコールを使用してスピナーフラスコ中でのEB形成を促進することができる:未分化のhESCおよびiPSCを、マトリゲルコーティングしたプレート上での無フィーダー成長に適合させ、例えば、約37℃で約5分間のTrypLE処理を使用してコンフルエンスで採取することができる。細胞を、約20%BIT9500(Stem Cell Technologies)または血清代替物−3(Sigma Aldrich)、約1%NEAA、約1mM L−グルタミン、および約0.1mMメルカプトエタノール、約0.75%BSA、約50ug/mlアスコルビン酸、および約1μM ROCKインヒビター(例えば、H−1152)を補足したIMDMを含むEB基本培地中で採取することができる。次いで、細胞を、約50〜200万個/mlの密度でスピナーフラスコ(例えば、125mlコーニング)中に入れることができる。スピナーを30〜40rpmで一晩に設定してEB形成を促進することができる。あるいは、細胞を、低付着プレート中に静止条件下で24時間置くことができる。一般に、使用した特定のスピナーフラスコまたはバイオリアクターに応じて細胞密度および/またはスピナーフラスコの移動速度を変化させることができると認識される。培養約12〜24時間後、細胞を、例えば、約60RPMの速度で回転し
ているスピナーフラスコ中の磁性撹拌プラットフォーム上のサイトカインを含むがROCKインヒビターを含まないEB分化培地中に入れることができる。スピナーフラスコのサイドキャップを緩めて気体を移動させることができる。細胞を、約50ng/ml骨形成因子(BMP−4)、約50ng/ml血管(vasular)内皮成長因子(VEGF)、および約25ng/mlゼブラフィッシュFGF−2を補足したEB基本培地中に入れることができる。分化約4日目に、懸濁したEB凝集体がフラスコの底部に15〜20分間沈殿することができるようにスピナーフラスコを静止させたままにすることによって細胞に補給することができる。次いで、消費した培地を吸引することができる(例えば、125mlスピナー中に約20mLが残存する)。次いで、細胞を穏やかに旋回させ、約50ng/ml骨形成因子(BMP−4)、約50ng/ml血管(vasular)内皮成長因子(VEGF)、および約25ng/mlゼブラフィッシュFGF−2を含む新鮮な培地を細胞に添加することができる。実質的により高いか低い回転速度を使用することができると予測されるにもかかわらず、スピナーフラスコを、全造血分化過程を通して約40〜60rpmの速度に設定することができる。分化約5〜6日目に、消費した培地を上記のように吸引し、細胞を、例えば、(1)約25ng/mlのFlt−3リガンド、約10mg/mlのIL−3、および約10ng/ml GMCSF、または(2)約25ng/mlのFlt−3リガンド、約25ng/mlのSCF、約25ng/mlのTPO、約10ng/ml IL−3、および約10ng/ml IL−6のいずれかを補足したEB基本培地中に入れることができる。消費した培地を、約8日目および10日目
に上記のように吸引することができる。EB培養物を、分化約12日目に採取することができる。細胞を、表面マーカー(例えば、CD34+、CD45+、CD43+、CD41+、CD235a+、CD31+)の表現型発現について染色して、集団の造血前駆体含有量を定量することができる。以下の実施例に示すように、これらのアプローチを首尾よく使用して種々の細胞系列(例えば、赤血球、巨核球、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞、顆粒球)を生成することができ、iPS細胞またはhESCを使用して類似の結果を得ることができる。
【0138】
本発明との使用を特に想定したロボット自動化は、例えば、Tecan(CA,USA)から得ることができる。ロボ
ティクスは、液体操作ツール(サンプル間の繰越し汚染を最小にするためのキャップ貫通プローブおよび使い捨てチップなど)を含むことができる。種々の実施形態では、ロボティクスを、1つまたは複数の細胞培養用のバイオリアクターと併せて(例えば、hESCの維持または成長、hESCの造血細胞への分化、または造血細胞の次の系列(赤血球など)への分化の間に)使用することができる。以下の実施例に示すように、造血前駆細胞の維持および生成のための条件を、Tecan Cellerity(商標)システム(産業的に関連するロボットプラットフォーム)を使用して少なくとも部分的または完全に自動化することができる。Tecan Cellerity(商標)は、Tecan液体操作ロボット(Freedom EVO 200)、自動化インキュベーター(Storex500)(500 Roboflasks(商標)
用の容量)、培地保存用冷却装置、Cedex細胞カウンター、懸濁細胞の増殖および播種用のスピナーフラスコ、ならびにプレートおよび8チャネル固定チップピペットを操作するためのROMAロボットアームを備えている。EB分化プロトコールの一部、本質的に全て、または全てを自動化することができる。例えば、分化12日目に、細胞をTecan Cellerityシステムによって採取し、マーカーの細胞表面染色のために手作業で洗浄することができる。染色後、細胞を、Accuriフローサイトメーターに接続したHypercytを使用して分析することができる。この過程を、造血前駆体集団の高処理スクリーニングのために使用することができる。一定の実施形態では、未分化のhESCまたはiPSCを、上記の方法によって、例えば、マトリゲル(商標)コーティングしたロボフラスコ(Corning)を使用してロボット上で培養することができる。EBの維持、播種、補給、および/または採取を、例えば、Tecan Cellerity(商標)システムを使用して、部分的または完全に自動化することができる。このロボットはスピナーフラスコを含める収容力を有し、またはバイオリアクターを使用して多数の細胞を生成することができる。
【0139】
一定の実施形態では、本発明の方法を小型化または「スケールダウン」する
ことが有用であり得る。これらのアプローチは、例えば、方法が、例えば、細胞の特定の系列への脱分化または分化を促進することができる化合物の高処理スクリーニングを含む場合、特に有用であり得る。高処理スクリーニングを使用して、候補物質の1つまたは複数の性質(例えば、毒性、分化を促進または軽減する能力など)を評価することもできる。方法の小型化は、低付着プレート(例えば、96ウェルプレート)および/または低酸素(例えば、約25%O
2または約5%O
2未満)条件下での細胞培養の使用を含むことができる。一定の実施形態では、以下の方法を使用することができる:マトリゲルコーティングしたプレート上での無フィーダー成長に適合させた未分化のhES
CまたはiPS
Cに、約0.1ng/mlTGFおよび約20ng/mlゼブラフィッシュFGFを補足した成長因子を含まないTeSRを使用して24時間
、前条件付けすることができる。細胞を、例えば、約37℃で約5分間のTrypLE処理を使用してコンフルエンスで採取することができる。細胞を、約20%BIT9500または血清代替物−3、約1%NEAA、約1mM L−グルタミン、および約0.1mMメルカプトエタノール、約0.75%BSA、約50μg/mlアスコルビン酸、および約1μM ROCKインヒビター(例えば、H−1152)を補足したIMDMを含むEB基本培地中で採取することができる。EB形成を開始させるために、細胞を、ROCKインヒビターを含むEB基本培地中に約10万個
の細胞/ウェルの密度で低付着96ウェルプレート中に入れることができる。正確な細胞の使用濃度を類似の結果を達成するために変化させることができると予測される。EB形成を、低O
2条件でプレートをインキュベートすることによって容易にすることもできる。約12〜24時間後、細胞を、約50ng/ml骨形成因子(BMP−4)、約50ng/ml血管(vasular)内皮成長因子(VEGF)、および約25ng/mlゼブラフィッシュFGF−2を含むEB分化培地中に入れることができる。例えば、96ウェルプレート中のウェルあたり約300μlの培地を使用することができる。分化約3〜4日目に、消費培地体積の半分(例えば、100〜150μl)を穏やかに除去し、且つ同体積の新鮮な培地を添加することによって、細胞に培地の半分を補給することができる。分化約5〜6日目に、消費した培地を上記のように吸引することができ、細胞を、例えば、(1)約25ng/mlのFlt−3リガンド、約10mg/mlのIL−3、および約10ng/ml GMCSF、または(2)約25ng/mlのFlt−3リガンド、約25ng/mlのSCF、約25ng/mlのTPO、約10ng/ml IL−3、および約10ng/ml IL−6を含む培地のいずれかを補足したEB基本培地中に入れることができる。上記のように、分化約8日目および10日目に、分化EB培養物に新鮮な培地を半分補給することができる。分化約12日目に、EB培養物を採取することができる。以下の実施例に示すように、これらのアプローチを首尾よく使用して種々の細胞系列(例えば、赤血球、巨核球、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞、顆粒球)を生成することができ、iPS細胞またはhESCを使用して類似の結果を得ることができる。
【0140】
本発明の方法を、ロボット自動化を使用して、プレートに単一の細胞を付着させるように細胞を誘導するために培地中にROCKインヒビターHA100および/またはH1152を含めることによって
、単一細胞アッセイで使用することができる。ロボットでの培養系への小分子HA100またはH1152またはY−27632の添加により、多能性細胞(ES、hESC、およびiPS細胞が含まれる)の生存度を非常に改善することができる。一定の実施形態では、TeSR培地中での多能性細胞の生存を、特に細胞をタンパク質分解的または機械的に凝集塊に分離するか個別化した後に
、ROCKインヒビターまたはPKCインヒビターを含めることによって改善することができる。ROCKインヒビターは、個別化したhES細胞の表面への付着および成長を促進することができる。多能性細胞の維持または増殖および造血前駆細胞または特異的造血系列への分化の過程のいくつかまたは全てを自動化することができる。自動化方法の一部または全部は、特定条件を使用することができる。
【0141】
X.キット
本発明はまた、本発明で用いるキットを意図する。例えば、キットは、1つまたは複数の密封バイアル中に本明細書中に記載の分化培地を含むことができる。キットは、細胞(多能性幹細胞、前駆細胞、造血前駆細胞、または内皮前駆細胞など)を含むことができる。
【0142】
キットはまた、前駆細胞(造血前駆細胞または内皮前駆細胞など)の産生のための説明書を含むことができる。あるいは、説明書は、造血細胞、内皮細胞、肥満細胞、樹状細胞、巨核球、顆粒球、マクロファージ、または赤血球の産生を指示することができる。
【0143】
適切なキットは、適切な容器および包装材料(管、バイアル、ならびに収縮包装および中空成形包装が含まれる)中に本発明で用いる種々の試薬を含む。本発明のキット中に含めるのに適切な材料には、1つまたは複数の本明細書中に記載の特定培地および1つまたは複数の細胞が含まれるが、これらに限定されない。ここで、細胞は、
多能性細胞または本明細書中に示す方法にしたがって少なくとも部分的に分化した多能性細
胞である。一定の好ましい実施形態では、複数の多能性細胞または少なくとも部分的に分化した細胞を、本発明のキット中に含む。
【0144】
XI.スクリーニングアッセイ
本発明は、スクリーニングアッセイ(多能性幹細胞の前駆細胞への分化を促進する能力についての候補物質の同定に有用なスクリーニングアッセイなど)を意図する。例えば、造血細胞、造血前駆細胞、および/または内皮細胞を使用して、候補物質の薬理学および/または毒性学を評価することができる。したがって、本明細書中に記載の方法によって分化した細胞を使用したスクリーニング方法を使用して、細胞に影響を及ぼし得る疾患に関連する1つまたは複数の症状を緩和することができる治療化合物を同定することができる。他の実施形態では、分化細胞を利用して、細胞に有毒な化合物を同定することができる。あるいは、スクリーニング法は、細胞の分化または脱分化を促進することができる候補物質に細胞を曝露する工程を含むことができる。
【0145】
本明細書中で使用する場合、用語「候補物質」は、多能性幹細胞の前駆細胞への分化を促進する任意の物質をいう。候補物質には、天然に存在する化合物のフラグメントまたは一部が含まれ
得、または、候補物質は、そうでなければ不活性な公知の化合物の活性な組み合わせとしてのみ見出され得る。1つの実施形態では、候補物質は小分子である。さらに他の実施形態では、候補物質には、有機小分子、そのペプチドまたはフラグメント、ペプチド様分子、核酸、ポリペプチド、ペプチド模倣物、炭水化物、脂質、タンパク質、酵素、塩、アミノ酸、ビタミン、マトリックス成分、インヒビター、抗生物質、抗体、抗体フラグメント、ミネラル、脂質、または他の有機(炭素含有)分子または無機分子が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0146】
XII.薬学的調製物
本明細書中に記載の方法にしたがって分化したか、本明細書中に記載の方法にしたがって分化した細胞に由来する細胞を薬学的調製物中に含め、被験体(ヒト患者など)に投与することができる。薬学的調製物を、一定の実施形態では、非経口または静脈内に投与することができる。
【0147】
本発明の薬学的組成物は、有効量の1つまたは複数の造血細胞、骨髄性細胞、もしくは赤血球系細胞、または薬学的に許容可能なキャリア中に溶解または
分散したさらなる薬剤を含む。句「薬学的または薬理学的に許容可能な」は、必要に応じて動物(例えば、ヒトなど)に投与した場合に有害反応、アレルギー反応、または他の副作用を生じない分子的実体および組成物をいう。少なくとも1つの造血細胞、骨髄性細胞、もしくは赤血球系細胞またはさらなる有効成分を含む薬学的組成物の調製は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.
,University of the Sciences in Philadelphia(本明細書中で参考として援用される)に例示のように、本開示を考慮して当業者に公知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)投与のために、調製物はFDA Office of Biological Standardsが定める無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度の標準を満たさなければならないと理解されるであろう。一般に、薬学的調製物を、典型的には、処方物中に存在する種々の造血細胞、骨髄性細胞、もしくは赤血球系細胞の生存性が促進されるように処方すると認識されるであろう。例えば、一定の実施形態では、組成物は、ヒト患者への静脈内投与のために溶液中に赤血球を含むことができる。
【0148】
本発明は、さらに、本明細書中に開示の方法によって得た薬学的有効量の前駆細胞、造血細胞、または内皮細胞を被験体に投与することにより、疾患、障害、または損傷を処置する方法を意図する。本発明のこれらの組成物の投与は、標的組織がその経路を介して利用可能である限り、任意の一般的経路による投与であろう。これには、全身的または非経口方法(静脈内注射、脊髄内注射、または脳内、皮内、皮下、筋肉内、もしくは腹腔内方法が含まれる)による投与が含まれる。治療の性質に応じて、投与はまた、経口、鼻、口内、直腸、膣、または局所手段による投与であり得る。
【0149】
本明細書中に開示の方法によって処置することができる疾患または障害には、脈管の疾患または障害、免疫学的疾患または障害、神経の疾患または障害、血液の疾患または障害、または損傷が含まれるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0150】
XIII.実施例
以下の実施例を、本発明の好ましい実施形態を証明するために含める。以下の実施例中に開示の技術が本発明者によって本発明の実施で十分に機能することが発見された技術を示し、したがって、その実施に好ましい様式を構成すると見なすことができると当業者は認識すべきである。しかし、当業者は、本開示を考慮して、開示の特定の実施形態で多数の変更形態を得ることができ、本発明の精神および範囲を逸脱することなく同様または類似の結果を依然として得ることができると認識すべきである。
【0151】
実施例1
EBの作製:マトリゲル(商標)コーティングしたプレート上での無フィーダー成長に適合させた未分化のhESCおよびiPSCを、37℃で10分間のコラゲナーゼIV(1mg/ml)処理を使用してコンフルエンスで採取した。インキュベーション後にウェルを洗浄してコラゲナーゼを洗い流し、EB基本培地中へのウェルの掻爬によってEBを形成させた。翌日、培地を、異なるサイトカイン処方物を含むEB分化培地と交換した。
【0152】
マトリゲル(商標)コーティングしたプレート上での無フィーダー成長に適合させた未分化のhESCおよびiPSCを、37℃で6分間のTrypLE(商標)処理を使用してコンフルエンスで採取した。ウェル中のTrypLE(商標)を、1μM ROCKインヒビター、ダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含む「EB基本培地」を使用して中和した。細胞を回収し、1μM ROCKインヒビター、ダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地で洗浄した。細胞を計数して生存度をチェックし、1μM ROCKインヒビター、ダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地中の
、低付着プレート中に
入れた。翌日、培地を、異なるサイトカイン処方物を含むEB分化培地と交換した。
【0153】
EB形成および分化プロトコール:上記酵素を使用してEB形成を促進するために、細胞を、20%BIT9500(Stem Cell Technologies)、1%NEAA、1mM L−グルタミン、および0.1mMメルカプトエタノール(全てInvitrogen,Carlsbad,CA)、0.75%BSA、50ug/mlアスコルビン酸を補足したIMDMを含む「EB基本培地」中での一晩のインキュベーションのために6ウェル低付着プレートに移した。翌日、細胞を各ウェルから回収し、遠心分離した。細胞を、以下の成長因子およびサイトカインを補足したEB基本培地からなる「EB−分化培地」に
再懸濁した:50ng/ml骨形成因子(BMP−4)、50ng/ml血管内皮成長因子(VEGF)、25ng/ml幹細胞因子(SCF);25ng/ml Flt−3リガンド(Flt−3L)、10ng/mlインターロイキン−3(IL−3)、10ng/mlインターロイキン−6(IL−6)、20ng/ml顆粒球コロニー刺激因子(G−CSFまたはGCSF);20ng/ml顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSFまたはGMCSF)、0.2U/mlエリスロポエチン(EPO)、25ng/mlトロンボポエチン(Thrombopoieitin)(TPO)(全てR&D Systems,Minneapolis,MN)、および25ng/mlゼブラフィッシュFGF−2。EBを15mL管に移し、凝集体を5分間沈殿させることによって4日毎に培地を交換した。上清を吸引し、新鮮な分化培地と交換した。あるいは、細胞に、半量の新鮮な培地を2日毎に補給した。
分化過程の間の異なる時点で細胞を採取し、フローサイトメトリーによって表現型を評価し、CFUアッセイを使用して機能的能力を評価した。
【0154】
フローサイトメトリー:細胞を各ウェル/条件から回収し、培地で1回洗浄した。細胞ペレットを、TrypLE(商標)または0.5%トリプシンを使用して37℃のインキュベーター中で5〜10分間消化し、その後に培地で洗浄し、70μm細胞ストレーナーに通した。細胞をPBS−FBS含有FACS緩衝液に
再懸濁し、計数して細胞生存度を評価し、以下の蛍光色素
結合体化モノクローナル抗体で染色した:抗ヒトCD43(1G10)、抗ヒトCD31(WM−59)、抗ヒトCD41(HIP8);抗ヒトCD45(HI30)、および抗ヒトCD34(581、8G12)(BD Biosciences San Jose,CA);抗ヒトflk−1(89106)、(R&D Systems,Minneapolis,MN製)。非生存細胞を、7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD、BD Biosciences)を使用して排除した。生細胞分析を、FACSCalibur(商標)またはAccuriフローサイトメーターおよびCell Questソフトウェアによって行った。
【0155】
クローン原性造血前駆体アッセイ(CFUアッセイ):EBを、TryplEまたは0.5%トリプシン/EDTAを使用して単一細胞懸濁液に分散させた。生細胞を定量し、プレート
に入れ(50,000〜300,000細胞/mL)、幹細胞因子(SCF)50ng/mL、エリスロポエチン(EPO)3U/mL、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)10ng/mL、インターロイキン−3(IL−3)10ng/mLを含むヒトメチルセルロース完全培地(R&D Systems,Minneapolis,MN)を使用して、湿室中で造血CFCについてアッセイした。14日後、コロニーをその形態学にしたがってスコアリングし、プレート
に入れた10
5個の細胞あたりのコロニー数を定量した。血清含有または無血清のMethoCult(商標)培地(Stem Cell Technologies)を使用して、コロニーを生成することができる。
【0156】
サイトスピン
(Cytopspin):製造者の説明書にしたがって、細胞を固定し、ライト・ギムザ試薬(Hema3
染色;Fisher Scientific,Hampton,NH)で染色した。
【0157】
実施例2
ヒト胚性幹細胞(hESC)またはiPSCのin vitro凝集により、
胚様体(EB)と呼ばれるクラスターが誘導され、内胚葉系列、中胚葉系列、および外胚葉系列を示す細胞
への分
化が可能
になる
。EB形成
についてのこの確率過程
を、外因性成長因子の添加によって
、造血前駆細胞型を生成する
ように導くことができる。
【0158】
本発明者は、分化の9〜13日目に細胞表面上にCD43+、CD34+、CD31+、およびCD45+を発現する造血前駆細胞を生成するための5つの不可欠なサイトカイン組を使用した新規の無フィーダー且つ無血清の特定のEBベースの造血分化プロトコールを確立した。前駆細胞型の生成効率は、2つのヒトhESCおよび4つのiPSCにわたって5〜8%であった。分化過程中に200〜1000細胞/凝集体、低酸
素、および再凝集工程を使用して形成されたEBは、造血前駆細胞型の生成を好む。
【0159】
本方法は、5つのサイトカインの存在下での培養16〜24日後に細胞表面上にCD31、CD43、およびCD45を
共発現する骨髄性前駆細胞を効率よく生成することができる。あるいは、造血前駆細胞を単離することができ、
これは、各特異的細胞系列のための特殊化サイトカイン富化培地処方物に入れた場合に巨核球系列、赤血球系列、および骨髄細胞系列にさらに分化することができる(例えば、未熟から成熟の多形核顆粒球、マクロファージ、樹状細胞)。
【0160】
胚性幹細胞
未分化ヒト胚性幹細胞株(hESC)および誘導多能性幹細胞株iPSCを、15%KO−血清サプリメント(Invitrogen)、1%非必須アミノ酸(NEAA)、1mM L−グルタミン(全てInvitrogen,Carlsbad,CA製)、0.1mMβ−メルカプトエタノール(Sigma−Aldrich,St.Louis)を補足したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)/ハムF−12培地(F12)中での照射マウス胚線維芽細胞(MEF)との共培養によって維持した。培地に、hESCについては4ng/mlゼブラフィッシュ塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を補足し、iPSCについては100ng/mlヒト塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を補足した。
【0161】
照射マウス胚線維芽細胞上で成長させ
たか、MEF馴化培地(MEF−CM)またはmTeSR培地を使用して維持したマトリゲル(商標)コーティングしたプレート上での無フィーダー成長に適合させた未分化のhESCおよびiPSCを、EB分化プロトコールのための出発物質として使用した。
【0162】
分化前の細胞の前条件付け
mTeSR培地を使用してマトリゲルコーティングしたプレート上で維持したhESCおよびiPSC
細胞を、分化開始前に前条件付け工程に供した。前条件付け工程は1〜3日の間で変動した。
【0163】
0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を補足したX−vivo 15(Cambrex)または0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を補足した
が成長因子を欠くmTeSR(「mTeSR−GF」)を、EB分化開始前の前条件付け工程のために使用した。
【0164】
EB形成のための細胞の採取
方法1:MEF上で成長
しているか、マトリゲルコーティングしたプレート上で
の無フィーダー成長に適合させた未分化のhESCおよびiPSCを、37℃で10分間のコラゲナーゼIV(1mg/ml)処理を使用してコンフルエンスで採取した。インキュベーション後にウェルのコラゲナーゼを洗い流し、EB基本培地中でのウェルの掻爬によってEBを形成させた。翌日、培地を、異なるサイトカイン処方物を含むEB分化培地と交換した。
【0165】
方法2:マトリゲル(商標)コーティングしたプレート上での無フィーダー成長に適合させた未分化のhESCおよびiPSCを、37℃で6分間のTrypLE(商標)処理を使用してコンフルエンスで採取した。ウェル中のTrypLE(商標)を、1μM ROCKインヒビター(H−1152)または10μM ROCKインヒビター(Y−27632)、ダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地を使用して中和した。細胞を回収し、1μM〜10μM ROCKインヒビター、ダイズトリプシンインヒビター(0.25〜0.5mg/ml)を含むEB基本培地で洗浄した。細胞個別化のためにトリプシンを使用した場合にダイズトリプシンインヒビターを含めた。TrypLEを使用して細胞を個別化した場合、ダイズトリプシンインヒビターを排除することができる。細胞を計数して生存度をチェックし、1μM〜10μM ROCKインヒビター、ダイズトリプシンインヒビター(0.25〜0.5mg/ml)を含むEB基本培地中の低付着プレート中に
入れた。翌日、培地を、異なるサイトカイン処方物を含むEB分化培地と交換した。
【0166】
EB形成および分化プロトコール
上記酵素を使用してEB形成を促進するために、細胞を、
mTeSR培地または20%BIT9500(Stem Cell Technologies)、1%NEAA、1mM L−グルタミン、および0.1mMメルカプトエタノール(全てInvitrogen,Carlsbad,CA製)、0.75%BSA、50ug/mlアスコルビン酸を補足したIMDMを含
むEB基本培地中で一晩のインキュベーションのために6ウェル低付着プレートに移した。翌日、細胞を各ウェルから回収し、遠心分離した。細胞をEB−分化培地に再懸濁した。EB−分化培地は、以下の成長因子およびサイトカインを補足したEB基本培地からなる:50ng/ml骨形成因子(BMP−4)、50ng/ml血管内皮成長因子(VEGF)、25ng/ml幹細胞因子(SCF);25ng/ml Flt−3リガンド(Flt−3L)、10ng/mlインターロイキン−3(IL−3)、10ng/mlインターロイキン−6(IL−6)、20ng/ml顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);20ng/ml顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、0.2U/mlエリスロポエチン(EPO)、25ng/mlトロンボポエチン(TPO)(全てR&D Systems,Minneapolis,MN製)、および25ng/mlゼブラフィッシュFGF−2。EBを15mL管に移し、凝集体を5分間沈殿させることによって4日毎に培地を交換した。上清を吸引し、新鮮な分化培地と交換した。あるいは、細胞に、半量の新鮮な培地を2日毎に補給した。
分化過程の間の異なる時点で細胞を採取し、フローサイトメトリーによって表現型を評価し、CFUアッセイを使用して機能的能力を評価した。
【0167】
EBを15mL管に移し、凝集体を5分間沈殿させることによって4日毎に培地を交換したか、48時間毎に培地を半分ずつ交換した。上清を吸引し、新鮮な分化培地と交換した。
【0168】
結果
mTesRに適合させたhESC由来のmTESR培地中で作製したEB
から、照射マウス胚線維芽細胞上で維持したか、mTeSRの代わりにMEF馴化培地を使用して維持したマトリゲル(商標)コーティングしたプレート上での無フィーダー成長に適合させたhESCおよびiPSCから作製したEBと比較して、分化16日後により低い頻度(4%未満)の造血前駆体が明らかとなった。後者の条件により、10〜15%の造血前駆細胞が生成された。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、mTeSR培地中のより高いレベルのTGF−βは、最も原始的な幹細胞/前駆細胞に対して優先的な成長阻害効果を発揮することができる。
【0169】
サイトカインの存在は、hESCおよびiPSCの両方の無血清造血分化過程を誘導するのに不可欠であることが認められた。最初のサイトカイン処方物は、EB分化培地中に列挙した11種のサイトカインを含んでいた。造血前駆細胞の頻度は、血清およびサイトカインの非存在下で0.5〜2%であり、サイトカインを含まない血清の存在下で2〜10%であった。造血前駆細胞の頻度は、血清の非存在下且つサイトカインの存在下で16日間の分化
の後、10〜40%であった。サイトカインを含む培地への血清の添加によ
る、前駆細胞の増加はわずかであった。したがって、無血清でサイトカイン豊富なEB分化培地は、mTeSR培地を使用し
てマトリゲルコーティングしたプレート上で維持し、MEF−CMを使用して前条件付けしたhESCおよびiPSC
、ならびに照射マウス胚線維芽細胞上で維持したhESCおよびiPSCから
、造血前駆細胞を生成することができた。
【0170】
EB分化の16〜18日間の
分化終了時の細胞の主な表現型は、CD45+、CD43+、およびCD31+細胞であった。CFUアッセイにより、顆粒球(例えば、好酸球、好塩基球、好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞)を生成することができる骨髄前駆体の存在が明らかとなった。
【0171】
図1は、継代数50(A)および40(B)でのH1 ESCの造血分化を示す。両hESCを、mTeSRを使用してマトリゲル(商標)上で10継代維持した。hESCを、造血分化開始前にMEF−CMを使用して3日間前条件付けした。コラゲナーゼを使用して細胞を採取し、無血清サイトカイン富化培地を使用してEB分化させた。EB細胞を、造血前駆細胞型(CD43、CD34、CD45、CD31、およびCD41)の存在について異なる時点でのフローサイトメトリーによって分析した。値は、3つの個別の実験の平均SEMを示す。
【0172】
FGF−2およびTGF−β量を減少させた特定培地中での細胞の前条件付けによって造血分化が改善された。
図2は、mTESRを使用して維持したマトリゲル(商標)上での無フィーダー成長に適合させたhESCおよびiPSCのための前条件付け特定培地への曝露によって
、その後の造血分化が増大することを示す。より具体的には、マトリゲル(商標)コーティングしたプレート上での無フィーダー成長に適合させたH1 hESCを、MEFCM、または0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を補足したX−vivo 15、または0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を補足したmTeSR(成長因子を欠く)のいずれかを使用して3日間前条件付けした。前条件付け培地を、3日間にわたって毎日交換した。コラゲナーゼを使用して細胞を採取し、EB基本培地中への掻爬によってEBを形成させた。EB基本培地へのプレーティングの24時間後に11種のサイトカインを含むEB分化培地に細胞を移した。分化12日目に細胞を採取し、細胞の表現型をフローサイトメトリーによって定量した。
【0173】
前条件付け時間枠を1日間もの短さにし
ても、依然として造血分化を改善することができることがさらに認められた。低レベルのTGF−β(0.1ng/ml)およびFGF−2(20ng/ml)を補足した成長因子を欠くmTeSR(mTeSR−GF)は好ましい前条件付け培地である。トリプシン(例えば、TrypLE(商標))を使用し
て個別化または
小さな凝集塊に分離されたEBに
ついても、前条件付けの有利な影響
が認められると予測される。
【0174】
実施例3
造血前駆体を、hESCおよびiPSCの単一細胞懸濁液から産生した。単一細胞懸濁液(すなわち、個
別化した細胞)を、トリプシン消化によって産生した。
単一細胞からEBを作製するために使用した方法
mTESRを使用して維持したマトリゲル上での無フィーダー成長に適合させたhESCおよびiPSCを、0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を含むmTesR−GFの存在下で3日間前条件付けした。単一細胞からの分化を開始させるために、培養物をTrypLE(商標)Select(Invitrogen)で6分間処理し、細胞懸濁液を、(1)単純なEB基本培地、(2)PVAを含むEB基本培地、(3)0.5%PVAおよび1μM H1152、または10μM Y27632 ROCKインヒビターを含むEB基本培地、または(4)1uM H1152 ROCKインヒビターのみを含むEB基本培地中に回収した。細胞を回収し、1回洗浄し、37℃で低付着プレート上の各培地処方物中に
入れた。EB形成状態を、18〜24時間後に位相差顕微鏡下でチェックした。
【0175】
【表3-1】
造血分化に必要なサイトカイン
サイトカインマトリックス実験プロトコール:mTESRを使用して維持したマトリゲル上での無フィーダー成長に適合させたhESCを、0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を含むX−vivo−15の存在下で3日間前条件付けした。細胞を、37℃で6分間のTrypLEを使用して採取した。TrypLE(商標)を、1μM ROCKインヒビター(H−1152)、ダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地を使用して中和した。細胞を、1μM ROCKインヒビターおよびダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地で1回洗浄した。細胞を、1μM ROCKインヒビターおよびダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地中の低付着プレート中に
入れた。翌日、培地を、異なるサイトカイン処方物を含むEB基本培地と交換した。
【0176】
サイトカインの使用濃度は以下である:25ng/ml BMP−4、25ng/ml VEGF、25ng/ml SCF、25ng/ml Flt−3L、10ng/ml IL−3、10ng/ml IL−6、20ng/ml G−CSF;20ng/ml GM−CSF、0.2U/ml EPO、10ng/ml TPO、および10ng/mlゼブラフィッシュFGF−2。
【0177】
使用したサイトカイン組み合わせを、以下の表3に列挙する。EB培養物に、2日毎に半量の新鮮な分化培地を補給した。EB培養物を、分化8、12、および17日目に採取した。EB培養物を、全細胞を遠心沈殿し、TrypLE(商標)または0.5%トリプシンを使用してEBを消化することによって採取した。前駆細胞型の表現型をフローサイトメトリーによって分析し、細胞をCFUアッセイのためにメチルセルロース培地中に
入れた。「FLT3」は、以下のFlt3リガンドをいう。
【0178】
【表3-2】
これらの異なる組み合わせに基づいたこれらの結果を、以下の表4に示す。以下に列挙するように、成長因子のこれらの異なる組み合わせにおける培養に起因する細胞を評価して、種々の細胞表面マーカーの発現を決定した。
【0179】
【表4】
EBサイトカイン混合物中の11種のサイトカインのうち、5種のサイトカイン組(BMP4、VEGF、IL−3、Flt−3、GMCSF)が、無血清造血分化プロトコールの実施に特に有効であるか不可欠であることが同定された。5種のサイトカインのうち、BMP−4およびVEGFはEB分化の間の全ての時点で有意な役割を果たすようであった一方で、GMCSFおよびIL−3はEB分化の後期段階で役割を果たすようであった。
【0180】
造血分化の各時点の終了時にコロニー形成アッセイを行った。CFUアッセイにより、5種のサイトカイン組み合わせによって全ての時点で11種のサイトカインカクテルに類似する総コロニー数が得られることが明らかとなった。GEMMコロニーの頻度(3〜5/10
5細胞)は、EB分化12日目で11種のサイトカイン組み合わせと5種のサイトカイン組み合わせとの間で類似していた。5種のサイトカインを含むEB分化培地を使用して、hESCおよびiPSCから造血前駆細胞を首尾よく生成した。
【0181】
5種のサイトカインを含むEB分化培地は、hESCおよびiPSCから造血前駆細胞を生成するのに十分であった。mTESRを使用して維持したマトリゲル(商標)上での無フィーダー成長に適合させたhESCおよびiPSCを、0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を含むmTesR−GFまたはX−vivo 15の存在下で3日
間前条件付けした。
【0182】
造血分化のためのサイトカインの使用濃度の決定
実験プロトコール:mTESRを使用して維持したマトリゲル上での無フィーダー成長に適合させたhESCを、0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を含むmTeSR−GFの存在下で3日間前条件付けした。細胞を、37℃で6分間のTrypLE(商標)を使用して採取した。TrypLE(商標)を、1μM ROCKインヒビターおよびダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地を使用して中和した。細胞を、1μM ROCKインヒビター(H−1152)、ダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地で1回洗浄した。細胞を、1μM ROCKインヒビター、ダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地中の低付着プレート中に100万個
の細胞/mlの細胞密度で
入れた。翌日、培地を、異なる濃度の5種のサイトカインを含むEB基本培地に交換した。サイトカインの使用濃度は以下である:BMP−4、VEGF、SCF、FLT−3リガンド(50〜25ng/mlの範囲);IL−3、GM−CSF(10〜20ng/mlの範囲)。
【0183】
EB培養物に2日毎に半量の新鮮な分化培地を補給した。EB培養物を、分化9日および12日目に採取した。EB培養物を、全細胞を遠心沈殿し、TrypLE(商標)または0.5%トリプシンを使用してEBを消化することによって採取した。前駆細胞型の表現型をフローサイトメトリーによって分析し、細胞をCFUアッセイのためにメチルセルロース培地中に
入れた。
【0184】
結果(5種サイトカインの用量組み合わせ)
結果は、造血前駆細胞を生成させ
る5種の必須サイトカインの
おおよその最適用量がBMP4、VEGF、およびFlt−3リガンドについては25ng/ml、IL−3およびGMCSFについては10ng/mlであることを示す。サイトカインのこの組み合わせにより、EB分化12日目に、
多分化能GEMMコロニー(3〜5/105細胞)を生成する造血前駆体を生成する
ことができる。
EB培養物の再凝集によって造血が増大する
無血清で12日間のEB分化プロトコールを、分化プロトコール中に再凝集工程を含めることによってさらに最適化した。
【0185】
実験プロトコール:mTESRを使用して維持したマトリゲル上での無フィーダー成長に適合させたhESCを、0.1ng/ml TGFおよび20ng/ml FGF−2を含むmTeSR−GFの存在下で2日間前条件付けした。細胞を、37℃で6分間のTrypLEを使用して採取した。TrypLE(商標)を、1μM ROCKインヒビターを含むEB基本培地を使用して中和した。細胞を、1μM ROCKインヒビター、ダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地で1回洗浄した。細胞を、1μM ROCKインヒビター(H−1152)およびダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地中の低付着プレート中に12〜24時間
入れた。
【0186】
翌日、培地を、BMP−4およびVEGFを共に25ng/ml含むEB基本培地に交換した。細胞を、最初のサイトカイン組中で4、5、または6日間分化
させた。EB培養物を、その後
、2種のサイトカインの最初のパルス後さらに4、5、または6日間IL−3/GMCSF/FLT−3リガンドに曝露した。最初のサイトカイン組から他の組への移行中に、1組のEBをTrypLE(商標)を使用して消化し、第2の培地中で再凝集させた一方で、脱凝集工程を行わずに他の組を第2の培地中に入れた。分化過程を通して、EB培養物に、2日毎に半量の新鮮な分化培地を補給した。EB培養物を、EB分化9、10、11、および14日目に採取した。実験終了時に、EB培養物を、全細胞の遠心沈殿およびTrypLE(商標)または0.5%トリプシンでのEBの消化によって採取した。前駆細胞型の表現型をフローサイトメトリーによって分析し、細胞をCFUアッセイのためにメチルセルロース中に入れた。
【0187】
結果
EB培養物の部分的再凝集によって造血分化が増加した。最初の4〜5日間のBMP4およびVEGFの存在
、およびその後の次の7〜8日間のIL−3/Flt3リガンド/GMCSFの添加により、CD43+、CD34+、CD45+、およびCD31+を発現する最も多数の造血前駆体(10%超)が得られた。
【0188】
コロニー形成アッセイの結果は、フローサイトメトリー分析によって得られたデータによく似ていた。最初の4〜5日間BMP4およびVEGFをパルスし、その後に次の7〜8日間IL−3/FLT3リガンド/GMCSFを添加したEB培養物により、最高のコロニー形成単位が明らかとなった。総CFU値は、再凝集工程後、100超から250まで上昇した。GEMM保有コロニーの頻度は、3〜5/10
5から15〜20/10
5細胞に急上昇した。
【0189】
実施例4
EBサイズは造血分化に影響を及ぼし得る。
【0190】
mTESRを使用して維持したマトリゲル上での無フィーダー成長に適合させたhESCを、0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を含むmTeSR−GFの存在下で2日間前条件付けした。細胞を、37℃で6分間のTrypLEを使用して採取した。TrypLE(商標)を、10μM Y−27632 ROCKインヒビター、ダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地を使用して中和した。細胞を、1μM ROCKインヒビター、ダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地で1回洗浄した。
【0191】
生細胞数を決定し、所望の細胞数を、製造者の説明書にしたがってAggreWell(商標)プレートの各ウェルに入れた:1.2×10
5細胞をプレート
に入れて100細胞凝集体EBを得た。2.4×10
5細胞をプレート
に入れて200細胞凝集体EBを得た。6×10
5細胞をプレート
に入れて500細胞凝集体EBを得た。1.2×10
6細胞をプレート
に入れて1000細胞凝集体EBを得た。2.4×10
6細胞をプレート
に入れて2000細胞凝集体EBを得た。3.6×10
6細胞をプレート
に入れて2000細胞凝集体EBを得た。4.8×10
6細胞をプレート
に入れて2000細胞凝集体EBを得た。
【0192】
細胞を、1μM ROCKインヒビター(H−1152)、ダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地中のAggreWell(商標)(製造者の説明書を使用)
プレートに入れて、18〜24時
間EBを形成させた。細胞を低付着プレートに移し、写真撮影して種々の細胞数を使用して形成させたEBのサイズを測定した。
【0193】
EB培養物を、5種サイトカイン(BMP4/VEGF/IL−3/FLT−3リガンド/GMCSF)を含む培地中で分化させた。EB培養物に、2日毎に5種全てのサイトカインを含む半量の新鮮な分化培地を補給した。分化11日目に、EB培養物を採取した。実験終了時に、EB培養物を、全細胞の遠心沈殿およびTrypLE(商標)または0.5%トリプシンでのEBの消化によって採取し、CD43値をフローサイトメトリーによって定量した。
図3に示すように、EBサイズとCD43発現との間の相関関係が認められた。
【0194】
限定数の細胞を含むH1 hESC凝集体を、EB基本培地中のAggreWell(商標)プレート(Stem cell technologies、製造者の説明書を使用)中で18〜24時間形成させた。細胞を後に低付着プレートに移し、μM単位
で、異なる細胞数によって生成されたEBサイズを、顕微鏡上のスケールバーを使用して記録した。EBを含む細胞数およびEBの凝集体サイズを、分化開始前に定量した。EB培養物を、BMP4/VEGF/IL−3/FLT−3リガンド/GMCSFの存在下で11日間分化
させた。実験終了時に、EB培養物を、TrypLE(商標)を使用したEBの個別化によって採取し、CD43値をフローサイトメトリーによって定量した。
【0195】
結果
造血分化のための至適細胞数は、100〜250μ
mの
寸法がある200〜1000細胞/凝集体である。1000μ
m超の
寸法があるより多数の細胞凝集体(2000個超)は、造血前駆細胞の生成を
促進しなかった。
【0196】
実施例5
低酸
素条件によって造血分化が増大する
mTeSRを使用して維持したマトリゲル上での無フィーダー成長に適合させたH1 hESCを、0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を含むmTeSR−GFの存在下で2日間前条件付けした。細胞を、TrypLE(商標)を使用して採取し、1μM ROCKインヒビター(H−1152)およびダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地中の低付着プレート中に100万細胞/mlの細胞密度で12〜24時間
入れた。
【0197】
EB培養物を、5種のサイトカイン(BMP4/VEGF/IL−3/FLT−3リガンド/GMCSF)を含む培地中で分化させた。EB培養物に、2日毎に5種全てのサイトカインを含む半量の新鮮な分化培地を補給した。EB培養物を、再凝集工程を行わずに分化8、12、および16日目に採取した。実験終了時に、EB培養物を、全細胞の遠心沈殿およびTrypLE(商標)または0.5%トリプシンでのEBの消化によって採取し、造血に関連する種々の表面マーカーの表現型発現を、フローサイトメトリーによって定量した。
【0198】
結果
EB培養物
は、高酸素条件下と比較した場合、低酸
素条件下で
、CD43、CD31、CD45、CD3
4発現
細胞の生成率がより高かった。この影響は、EB分化8日後でより明白であった。総細胞数は、両条件下で類似していた。
【0199】
マトリゲルコーティングしたプレート上での無フィーダー成長に適合させたH1 hESCを、0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を補足したmTeSR−GFを使用して2日間前条件付けした。細胞を、ROCKインヒビターの存在下でTrypLE(商標)を使用して採取した。EBを、低(5%O
2)および高(20%O
2)酸素条件下でVEGF、BMP4、IL−3、GMCSF、およびFlt−3リガンドを含むEB分化培地に移した。細胞を分化の8、11、および16日目に採取し、細胞の表現型をフローサイトメトリーによって定量した。
【0200】
造血前駆体の生成効率
mTeSR(商標)を使用して維持したマトリゲル(商標)上での無フィーダー成長に適合させたH1 hESCおよびiPSCを、0.1ng/ml TGFおよび20ng/ml FGF−2を含むmTeSR−GFの存在下で2日間前条件付けした。細胞をTrypLE(商標)を使用して採取した。生細胞数を評価し、細胞を、100万細胞/mlの密度でプレート
に入れた。
【0201】
細胞を、1μM ROCKインヒビター(H−1152)およびダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地中の低付着プレート中に24時間
に入れた。EB培養物を、2工程の分化過程で分化するように誘導した。培養物を、BMP4およびVEGFを含む培地中に低酸
素条件下で4日間入れた。EB培養物を、分化5日目にTrypLEを使用して再凝集
させ、(1)IL−3、FLT−3リガンド、GMCSF;(2)IL−3、FLT−3リガンド、SCF;または(3)IL−3、FLT−3リガンド、TPOのいずれかを有する第2の分化培地中に低酸
素条件下でさらに7日間入れた。EB培養物に、2日毎に半量の新鮮な分化培地を補給した。EB培養物を、分化12日目に採取した。実験終了時に、EB培養物を、全細胞を遠心沈殿し、TrypLE(商標)または0.5%トリプシンを使用してEBを消化することによって採取した。実験終了時の総生細胞数を評価した。造血に関連する種々の表面マーカーの表現型発現を、フローサイトメトリーによって定量した。造血前駆細胞(CD43+/CD34+)の比率および絶対数を定量した。したがって、造血前駆細胞の生成効率を、初期細胞数を分化実験終了時の造血前駆体の生成数で割ることによって決定した。
【0202】
結果:2工程EB分化プロトコールを使用したhESCおよびiPSCからの造血前駆体集団の生成効率は、5〜8%であることが認められた。結果を
図5に示す。
【0203】
実施例6
上記EB分化プロトコールを使用して生成した造血前駆細胞は、赤血球前駆体、巨核球、マクロファージ、単球、および樹状細胞を生成することができることが見出された。具体的には、mTESRを使用して維持したマトリゲル上での無フィーダー成長に適合させたH1 hESCおよびiPSCを、0.1ng/ml TGFおよび20ng/ml FGF−2を含むmTeSR−GFの存在下で2日間前条件付けした。TrypLEを使用して細胞を採取した。全細胞株についての生細胞数を評価した。
【0204】
細胞を、1μM ROCKインヒビター(H−1152)およびダイズトリプシンインヒビター(0.25mg/ml)を含むEB基本培地中の低付着プレート中に100万細胞/mlの細胞密度で24時間
入れた。EB培養物を、2工程の分化過程で分化するように誘導した。培養物を、BMP4およびVEGFを含む培地中に4日間入れた。EB培養物を、5日目にTrypLEを使用して再凝集
させ、(1)IL−3、FLT−3リガンド、GMCSF;(2)IL−3、FLT−3リガンド、SCF、または(3)IL−3、FLT−3、TPOのいずれかを含む第2の分化培地中にさらに7日間入れた。EB培養物に、2日毎に半量の新鮮な分化培地を補給した。低酸
素条件下で全12日間の分化を行った。EB培養物を、分化12日目に採取した。実験終了時に、EB培養物を、全細胞を遠心沈殿し、TrypLE(商標)または0.5%トリプシンを使用してEBを消化することによって採取した。実験終了時の総細胞数を評価した。100万個のhESCは、80,000個の造血前駆細胞を生成することができた。
【0205】
IL−3、FLT−3、GMCSF組(1)由来の前駆体を、200ng/ml GMCSFを含む培地中に8日間入れた。これらの細胞を、以下にさらに分化させた:(1)M−CSF(10ng/ml)およびIL−1β(20ng/ml)を含む培地中に細胞を2週間入れることによってマクロファージに分化させるか、(2)20ng/ml GMCSFおよび20ng/ml IL−4を含む培地中に細胞を入れることによって樹状細胞に分化させた。100万個のhESCは、20万個の樹状細胞を生成することができた。全系列の分化実験を、非低酸素
の酸素濃度(約20%)で行った。
【0206】
巨核球を、IL−3、FLT−3リガンド、SCF組(2)由来の前駆細胞を(100ng/ml、TPO、SCF、FLT−3、20%BIT9500)を含むMK3培地に入れることによって産生した。肥満細胞を、MK3増殖培地およびその後の5ng/ml SCF、5ng/ml IL−6を含む培地中での前駆体の増殖によって産生した。100万個のhESCは、6万〜120万個の巨核球を生成することができ
た。系列分化実験を、非低酸素の酸素濃度(約20%
)で行った。
【0207】
赤血球前駆体を、IL−3、FLT−3 SCF TPO由来の前駆体をヒドロコルチゾン(10−6M)ホロトランスフェリン、エキサイト
(ExCyte)を含む培地中に入れることによって生成した。系列分化実験を、酸素正常状態(約20%酸素)条件下で行った。ヒトAB血清
の補足および低酸
素条件により、赤血球前駆体の収量が増大した。これらの方法を使用して、培養で100万個のhESCをおよそ1
億個の赤芽球に増殖
させた。
スピナーフラスコを使用したEB分化プロトコールのスケールアップ
細胞を、分化前に最初に前条件付けした。マトリゲルコーティングしたプレート上での無フィーダー成長に適合させた未分化のhESCおよびiPSCを、0.1ng/ml TGFおよび20ng/mlゼブラフィッシュFGFを補足した成長因子を含まないTeSRを使用して24時間個別に前条件付けした。
【0208】
細胞を、37℃で5分間のTrypLE(商標)処理を使用してコンフルエンスで採取した。細胞を、20%BIT9500(Stem Cell Technologies)、または血清代替物 3( Sigma Aldrich)、1%NEAA、1mM L−グルタミン、および0.1mMメルカプトエタノール(全てInvitrogen,Carlsbad,CA製)、0.75%BSA、50μg/mlアスコルビン酸、および1μM ROCKインヒビター(H−1152)を補足したIMDMを含むEB基本培地中に回収した。
【0209】
次いで、細胞を、50万個〜200万細胞/mlの密度で125mlのコーニングスピナーフラスコ中に入れた。スピナーを、EB形成を促進するために、30〜40rpmで一晩に設定した。あるいは、細胞を、低付着プレート中の低付着コーニングフラスコ中に静止条件下で24時間置くことができる。細胞を最初に12〜24時間培養した場合、細胞生存が改善された。12〜24時間後、細胞を、速度60RPMの電磁式撹拌プラットフォーム上のスピナーフラスコ中のROCKインヒビター
含まずサイトカインを含むEB分化培地中に入れた。スピナーフラスコを25〜30RPMで最初の12〜24時間維持した場合にEBが生成し、次いで、その後の分化のために40〜60に増加させた。スピナーフラスコのサイドキャップを緩めてガスを移動させた。細胞を、50ng/ml骨形成因子(BMP−4)、50ng/ml、血管(vasular)内皮成長因子(VEGF)、および25ng/mlゼブラフィッシュFGF−2を補足したEB基本培地中に入れた。
【0210】
分化4日目に、細胞に、懸濁したEB凝集体がフラスコの底部に15〜20分間沈殿することができるように細胞培養フード中にスピナーフラスコを設置することによって補給した。消費した培地を吸引した(125mlスピナーについて約20mL
残した)。細胞を穏やかに旋回させ、50ng/ml骨形成因子(BMP−4)、50ng/ml、血管(vasular)内皮成長因子(VEGF)、および25ng/mlゼブラフィッシュFGF−2を含む新鮮な培地を細胞に添加した。スピナーフラスコを、全造血分化過程を通して、60rpmの速度に設定した。
【0211】
分化5〜6日目に、消費した培地を上記のように吸引し、細胞を、(1)25ng/mlのFlt−3リガンド、10mg/mlのIL−3、および10ng/ml GMCSF、または(2)25ng/mlのFlt−3リガンド、25ng/mlのSCF、25ng/mlのTPO、10ng/ml IL−3、および10ng/ml IL−6のいずれかを補足したEB基本培地中に入れた。消費した培地を、8日目および10日目
に上記のように吸引した。
【0212】
EB培養物を、分化約12日目に採取した。分析終了時に、総細胞数を定量した。細胞を、表面マーカー(CD34+、CD45+、CD43+、CD41+、CD235a+、CD31+)の表現型発現について染色して、集団の造血前駆体数を定量した。表5は、H1 ES細胞を使用して種々の細胞密度で生成したスピナーデータをまとめている。類似の結果を、iPS細胞を使用して得た。スピナーフラスコにおけるEB分化過程の概要および得られた結果を
図6に示す。造血前駆体は、異なる系列に属する種々の細胞型(赤芽球、巨核球、樹状細胞、肥満細胞、顆粒球、およびマクロファージが含まれる)を生成することができた。
【0213】
【表5】
実施例7
96ウェルプレートを使用したEB分化の小型化:
マトリゲルコーティングしたプレート上での無フィーダー成長に適合させた未分化のhESCおよびiPSCを、0.1ng/ml TGFおよび20ng/mlゼブラフィッシュFGFを補足した成長因子を含まないTeSRを使用して24時間個別に前条件付けした。細胞を、37℃で5分間のTrypLE処理を使用してコンフルエンスで採取した。細胞を、20%BIT9500(Stem Cell Technologies)または血清代替物−3(Sigma Aldrich)、1%NEAA、1mM L−グルタミン、および0.1mMメルカプトエタノール(全てInvitrogen,Carlsbad,CA製)、0.75%BSA、50μg/mlアスコルビン酸、および1μM ROCKインヒビター(H−1152)を補足したIMDMを含むEB基本培地中に回収した。
【0214】
細胞を、ROCKインヒビターを含むEB基本培地中の低付着96ウェルプレート中に10万細胞/ウェルの密度で入れた。EB形成を、低酸素(5%O
2)条件下でプレート
に入れた細胞をインキュベートすることによって
促進した。12〜24時間後、細胞を、50ng/ml骨形成因子(BMP−4)、50ng/ml、血管(vasular)内皮成長因子(VEGF)、および25ng/mlゼブラフィッシュFGF−2を含むEB分化培地中に入れた。96ウェルプレートのウェルあたりおよそ300μlの培地を使用した。
【0215】
分化3〜4日目に、消費した培地の半分の体積(100〜150μl)を穏やかに除去し、50ng/ml骨形成因子(BMP−4)、50ng/ml血管(vasular)内皮成長因子(VEGF)、および25ng/mlゼブラフィッシュFGF−2を含む同体積の新鮮な培地を細胞に添加することによって、細胞に半分の培地を補給した。
【0216】
分化5〜6日目に、消費した培地を上記のように吸引し、細胞を、(1)25ng/mlのFlt−3リガンド、10mg/mlのIL−3、および10ng/ml GMCSF、または(2)25ng/mlのFlt−3リガンド、25ng/mlのSCF、25ng/mlのTPO、10ng/ml IL−3、および10ng/ml IL−6を含む培地のいずれかを補足したEB基本培地中に入れた。分化EB培養物に、上記のように分化8日目および10日目に半量の新鮮な培地を補給した。
【0217】
EB培養物を、分化12日目に採取した。分析終了時に、総細胞数を定量した。細胞を、表面マーカー(CD34+、CD45+、CD43+、CD41+、CD235a+、CD31+)の表現型発現について染色して、集団の造血前駆体数を定量した。H1 ES細胞を使用して作成したデータを
図7にまとめている。iPS細胞を使用して類似の結果を得た。
【0218】
図7に示すように、100000個の細胞を、低付着96ウェルプレート上に
置いた。細胞を、サイトカイン(BMP4/VEGF/FGF)の存在下にて低酸素(5%O
2)条件下で最初の4〜5日間分化させ、サイトカイン(SCF/FLt−3/TPO/IL−3/IL−6)の存在下にて低酸素(5%O
2)条件下で次
の7〜8日間分化させた。分化
の12日
間の後に細胞を採取し、HPCをフローサイトメトリーによって定量した。
【0219】
実施例8
ロボット自動化
Tecan Cellerityシステム(産業的に関連するロボットプラットフォーム)を使用した造血前駆細胞の維持および生成のための条件。実施例8で使用したプロトコールに基づいて、分化12日目に、Tecan Cellerityシステムによって細胞を採取し、マーカーの細胞表面染色
のために手作業で洗浄した。染色後、細胞を、Accuriフローサイトメーターに接続したHypercytを使用して分析した。
【0220】
実施例9
多能性細胞からの内皮細胞の生成
マトリゲルコーティングしたプレート上での無フィーダー成長に適合させた未分化のhESCおよびiPSCを、0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/mlゼブラフィッシュFGF−2を補足した成長因子を含まないTeSRを使用して24時間個別に前条件付けした。細胞を、37℃で5分間のTrypLE処理を使用してコンフルエンスで採取した。細胞を、20%BIT9500(Stem Cell Technologies)または血清代替物−3(Sigma Aldrich)、1%NEAA、1mM L−グルタミン、および0.1mMメルカプトエタノール(全てInvitrogen,Carlsbad,CA製)、0.75%BSA、50μg/mlアスコルビン酸、および1μM ROCKインヒビター(H−1152)を補足したIMDMを含むEB基本培地中に回収した。細胞を、EB形成を
促進するために100〜200万細胞/mlの密度で低付着プレート中に入れた。
【0221】
EB分化を誘導するために、以下のプロトコールを使用した。12〜24時間後、細胞をプレートから回収し、1000rpmで5分間遠心沈殿した。細胞を、50ng/ml骨形成因子(BMP−4)、50ng/ml血管(vasular)内皮成長因子(VEGF)、および50ng/mlゼブラフィッシュFGF−2を補足したEB基本培地に再懸濁した。
【0222】
EB分化4日目に、細胞を、プレートを傾斜させることによって沈殿させた。上清培地の半分を吸引し、50ng/ml血管(vasular)内皮成長因子(VEGF)および50ng/mlゼブラフィッシュFGF−2をそれぞれ含む新鮮な分化培地と置換した。
【0223】
EB分化7日目に、EB培養物を、VEGF、FGF、EGF、IGF、アスコルビン酸、およびFBSを含む内皮分化培地(Lonzaカタログ番号CC3202,Basel,Switzerland)または50ng/ml血管(vasular)内皮成長因子(VEGF)および50ng/mlゼブラフィッシュFGF−2を含む新鮮な分化培地中に入れた。
【0224】
細胞を、分化10日目に内皮細胞の存在について分析した。細胞を回収し、コニカルチューブ中に遠心沈殿させた。細胞ペレットを、TrypLE(商標)セレクトまたは0.5%トリプシンを使用して37℃で5分間消化した。細胞を、FACS緩衝液を含むPBS−FBSに再懸濁し、細胞数および生存状態を決定した。細胞を、蛍光色素
結合体化モノクローナル抗体である抗ヒトCD31(WM−59)および抗ヒトCD105で染色した。非生存細胞を、ヨウ化プロピジウム(50μg/ml)を使用して排除した。生細胞分析を、FACSCalibur(商標)またはAccuri(商標)フローサイトメーターで行った。
図8は、EB分化10日目のCD31+細胞の生成を示す。
【0225】
内皮細胞の精製:EBを単一細胞懸濁液
へと分散させ、製造者の説明書にしたがって抗CD31マイクロビーズ(Milenyiカタログ番号130−091−935)を使用して精製した。磁
性分取
後に得られた集団は、(CD31+CD105+)内皮細胞
の精製された集団
を生じた。内皮細胞を、アセチル化LDLの取り込み、フォンウィルブランド因子染色の発現、およびマトリゲルチューブ形成アッセイについて試験した。マトリゲルチューブ形成アッセイは、iPSC由来の内皮細胞の首尾のよい生成を示した。
【0226】
実施例10
EB分化培地中にFGF−2を含めることによって造血前駆細胞の分化効率を増加させることができる
hESCおよびiPSCの分化を、以下の条件下で個別に評価した。細胞を、0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を補足した成長因子を含まないTeSR中で1日間前条件付けした。100万細胞/mlの細胞密度
において、EBを、1μM ROCKインヒビターを補足したEB基本培地(20%BIT−9500、0.75%BSA、50μg/mlのアスコルビン酸(acscorbic acid)、グルタミン(glutamnine)、NEAA、および0.1mMモノチオグリセロールを補足したIMDM)中で作製した。
【0227】
12〜24時間後、細胞を、以下の改変EB分化培地のうちの1つに入れた:(A) 25ng/ml BMP4、25ng/ml VEGF、0ng/ml FGF−2;(B)25ng/ml BMP4、25ng/ml VEGF、10ng/ml FGF−2;(C)50ng/ml BMP4、50ng/ml VEGF、25ng/ml FGF−2。EB培養物に、分化過程を通して4日毎に半量を補給した。EB培養物は、分化4〜5日目に部分的に再凝集
させた。次いで、EB培養物を、25ng/ml FLt−3リガンド、10ng/ml IL−3、および10ng/mlのGMCSFを含む培地に入れた。EB培養物に、分化過程を通して4日毎に半量を補給した。
【0228】
EB培養物を分化12日目に採取し、CD34、CD43、CD45、CD31、CD41、およびCD235a(Gly−a)の発現率を定量した。HPCの生成効率を、EB分化12日目のCD34+/CD43+二重陽性細胞の絶対数を開始時のES/iPS細胞数で割ることによって決定した。
【0229】
結果:EB1分化におけるFGF−2の補足により、過程の効率がiPSC(iPS−SONL)について6〜12%およびhESC(H1 ES細胞)について8〜21%増加した。
図9は、hESC(H1)およびiPSC(SONL)細胞株におけるFGF補足を使用した効率の増加をまとめている。
図10は、(50ng/ml BMP4、50ng/ml VEGF、および25ng/mlのFGF−2)を含む改変EB1培地の存在下での種々のiPS細胞株の全分化を示す。
【0230】
実施例11
EB分化培地へのTPO、IL−6、およびIL−3の含有
hESCおよびiPSCを、0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を補足した成長因子を含まないTeSR中で1日間個別に前条件付けした
。EBを、1μM ROCKインヒビター(H−1152)を補足したEB基本培地(20%BIT−9500、0.75%BSA、50μg/mlのアスコルビン酸(acscorbic acid)、グルタミン(glutamnine)、NEAA、および0.1mMモノチオグリセロールを補足したIMDM)中での細胞
(100万〜200万細胞/mlの細胞密度)の次の培養によって生成した。12〜24時間後、細胞を、50ng/ml BMP4、50ng/ml VEGF、25ng/ml FGF−2を補足したEB基本培地中に入れた。EB培養物に、分化過程を通して4日毎に半量を補給した。EB培養物は、分化4〜5日目に部分的に再凝集した。
【0231】
次いで、EB培養物を、(A)25ng/ml Flt−3リガンド、10ng/ml GMCSF、10ng/ml IL−3;(B)100ng/ml Flt−3リガンド、100ng/ml SCF、100ng/ml TPO、10ng/ml IL−3、10ng/ml IL−6;(C)50ng/ml Flt−3リガンド、50ng/ml SCF、50ng/ml TPO、10ng/ml IL−3、10ng/ml IL−6;または(D)25ng/ml Flt−3リガンド、25ng/ml SCF、25ng/ml TPO、10ng/ml IL−3、10ng/ml IL−6のいずれかを補足したEB基本培地であった第2のEB培地(「EB2」)中で培養した。
【0232】
EB培養物に、分化過程を通して4日毎に半量を補給し、EB培養物を、分化12日目に採取した。CD34、CD43、CD45、CD31、CD41、およびCD235a(Gly−a)のそれぞれの細胞発現率を定量した。造血前駆細胞(HPC)の生成効率を、EB分化12日目のCD34+/CD43+二重陽性細胞の絶対数を開始時のES/iPS細胞数で割ることによって決定した。
【0233】
結果:EB2培地へのTPO、IL−6、およびSCFの補足により、HPCの生成効率がiPS−SONLについて15〜55%さらに増加した。H1 ES細胞は、21〜28%の増加が明らかとなった。
図11に示すように、上記の改変EB2培地を使用してhESC(H1)およびiPS(SONL)細胞株においてHPCへの分化の増加が認められた。
図12は、(H1)およびiPS(SONL)細胞株における改変EB2組み合わせ(D)を使用した効率の増加を示す。血清代替物3(Sigma)は、分化過程の血清代替物としてBIT−9500より優れていることが認められた。
【0234】
実施例12
分化培養条件における低酸
素および酸素正常状態の評価
mTeSRを使用し
てマトリゲルコーティングしたプレート上での無フィーダー成長に適合させた未分化のhESCおよびiPSCを、5%O
2(低酸
素)および20%O
2(酸素正常状態)条件の存在下で少なくとも5
継代維持した。
【0235】
EB分化を、以下の条件下で評価した:
(A)酸素正常状態条件下での未分化細胞の維持および酸素正常状態条件下での12日間のEB分化(「N−N」);
(B)酸素正常状態条件下での未分化細胞の維持および低酸
素条件下での12日間のEB分化(「N−H」);
(C)低酸
素条件下での未分化細胞の維持および酸素正常状態条件下での12日間のEB分化(「H−N」);
(D)低酸
素条件下での未分化細胞の維持および低酸
素条件下での12日間のEB分化(「H−H」)。
【0236】
細胞を、0.1ng/ml TGF−βおよび20ng/ml FGF−2を補足した成長因子を含まないTeSR中で1日間前条件付けした。12〜24時間後、100万細胞/mlの細胞密度の細胞を、上記の実施例に記載のように50ng/ml BMP4、50ng/ml VEGF、25ng/ml FGF−2を含む改変されたEB基本培地中に入れた。EB培養物に、分化過程を通して4日毎に半量を補給した。EB培養物は、分化4〜5日目に部分的に再凝集した。次いで、EB培養物を、25ng/ml Flt−3リガンド、25ng/ml SCF、25ng/ml TPO、10ng/ml IL−3、10ng/ml IL−6を補足したEB基本培地中でさらに培養した。EB培養物に、分化過程を通して4日毎に半量を補給した。
【0237】
EB培養物を分化12日目に採取し、CD34、CD43、CD45、CD31、CD41、およびCD235a(Gly−a)をそれぞれ発現した細胞の比率を定量した。HPCの生成効率を、EB分化12日目のCD34+/CD43+二重陽性細胞の絶対数を開始時のES/iPS細胞数で割ることによって決定した。
【0238】
結果:
図13は、酸素正常状態条件および低酸
素条件でのiPS細胞からのHPCの生成を示す。EB分化は、低酸
素条件および酸素正常状態条件下で
行われた。EB分化を低酸
素条件で行った場合、より高いHPCレベルが認められた。低酸
素条件下での未分化のES/iPS細胞の維持は、分化過程にいかなる有意な利点も付加しなかった。グルコホリンA発現細胞は、酸素正常状態条件下で減少した。
【0239】
本明細書中に開示され
た全ての方法および組成物、ならびに特許請求の範囲に記載の全ての方法および組成物を、本開示を考慮して過度の実験を行うことなく作製および実施することができる。本発明の組成物および方法が好ましい実施形態の立場から記載されているが、本発明の概念、精神、および範囲を逸脱することなく、変更形態を、本明細書中に記載の方法および組成物に、ならびに方法の工程または一連の工程で適用することができることが当業者に明らかであろう。より具体的には、化学的
、および生理学的に関連する一定の薬剤を本明細書中に記載の薬剤の代わりに使用することがで
き、同一または類似の結果が達成されるであろうということが明らかであろう。当業者に明らかな全てのかかる類似の代替形態および修正形態は、添付の特許請求の範囲に定義の本発明の精神、範囲、および概念の範囲内であると考えられる。
【0240】
参考文献
以下の参考文献は、これらが本明細書中に記載の
ものを補足する例示的手順または他
の詳説を提供する範囲で、本明細書中で具体的に参考として援用される。
【0241】
【化4】
【0242】
【化5】