(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電解質の両側に一対の電極が配設される電解質・電極構造体とセパレータとを有する発電セルが積層されるとともに、前記セパレータには、発電面に沿って反応ガスを流す反応ガス流路及び冷却媒体を流す冷却媒体流路と、前記反応ガス流路に連通し且つ積層方向に貫通する反応ガス連通孔、及び前記冷却媒体流路に連通し且つ前記積層方向に貫通する冷却媒体連通孔が形成される積層体を備え、前記積層体の両端には、ターミナルプレート、絶縁プレート及びエンドプレートが配設される燃料電池スタックであって、
前記積層体の積層方向の少なくとも一方の端部に、前記積層体と前記ターミナルプレートとの間に位置し、前記発電セルに対応して配設される端部セルを備え、
前記端部セルは、前記発電セルを構成する前記セパレータと同一構成の端部セパレータを有し、
前記セパレータ及び前記端部セパレータは、前記冷却媒体流路と前記冷却媒体連通孔とを連結する連結流路がシール部材により形成されるとともに、前記連結流路は、内側シールラインと外側シールラインとの間で内側流路部と外側流路部とに2分割され、
前記端部セパレータにのみ、前記内側流路部と前記外側流路部との間に位置して前記冷却媒体流路と前記冷却媒体連通孔とを閉塞する別体の凸状閉塞シールが設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
請求項1記載の燃料電池スタックにおいて、前記端部セルは、前記電解質に対応する導電性プレートを有するダミー電解質・電極構造体を備えることを特徴とする燃料電池スタック。
【背景技術】
【0002】
一般的に、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池は、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ触媒層(電極触媒層)とガス拡散層(多孔質カーボン)とからなるアノード電極及びカソード電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。この燃料電池は、所定の数だけ積層して燃料電池スタックを構成するとともに、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
ところで、燃料電池スタックでは、外部への放熱により他の発電セルに比べて温度低下が惹起され易い発電セルが存在している。例えば、積層方向端部に配置されている発電セル(以下、端部発電セルともいう)は、例えば、各発電セルによって発電された電荷を集める電力取り出し用ターミナルプレート(集電板)や、積層された発電セルを保持するために設けられたエンドプレート等からの放熱が多く、上記の温度低下が顕著になっている。
【0004】
この温度低下によって、端部発電セルでは、燃料電池スタックの中央部分の発電セルに比べて結露が発生し易く、生成水の排出性が低下して発電性能が低下するという不具合が指摘されている。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている燃料電池スタックが知られている。この特許文献1は、電解質の両側に一対の電極を設けた電解質・電極構造体を有し、前記電解質・電極構造体がセパレータにより挟持された発電セルを複数積層した積層体を備える燃料電池スタックに関するものである。この燃料電池スタックは、積層体の積層方向の少なくとも一方の端部に配設されるダミーセルを備え、前記ダミーセルは、電解質・電極構造体に対応する導電性プレートと、前記導電性プレートを挟持するとともに、前記発電セルを構成する前記セパレータと同一のセパレータとを備えている。
【0006】
そして、発電セル間には、冷却媒体流路が形成される一方、積層体の端部に配設される発電セルとダミーセルとの間には、前記冷却媒体流路に対応して断熱空間部が形成されている。このため、低温始動時の端部セルの昇温遅れ及び前記端部セルの電圧降下を有効に阻止することができる、としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1では、ダミーセルを構成するセパレータは、冷却媒体流路と冷却媒体連通孔(冷却媒体をセパレータの積層方向に流通させる連通孔)との連通部位に薄板状の遮蔽部材を配設することにより、前記冷却媒体流路を閉塞された断熱空間部として構成している。
【0009】
ところで、セパレータとして、金属プレートにシール部材を一体成形した金属セパレータが使用されている。その際、金属セパレータには、冷却媒体流路と冷却媒体連通孔との連通部位に、シール部材を凹凸状に形成した連結流路を設ける場合がある。具体的には、複数の凸状部を設けることにより、前記凸状部間に溝部(凹状部)が形成され、複数の前記溝部が連結流路を構成している。
【0010】
しかしながら、このような連結流路を閉塞するためには、薄板状の遮蔽部材により対応することができない。従って、金属プレートにシール部材を一体成形する際、連通部位を前記シール部材の一部で閉塞する必要があり、専用の成形装置(金型)が用いられている。これにより、他種類の成形装置を用意しなければならず、セパレータの製造コストが高騰するという問題がある。
【0011】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単且つ経済的な構成で、所望の端部セルを形成することが可能な燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電解質の両側に一対の電極が配設される電解質・電極構造体とセパレータとを有する発電セルが積層されるとともに、前記セパレータには、発電面に沿って反応ガスを流す反応ガス流路及び冷却媒体を流す冷却媒体流路と、前記反応ガス流路に連通し且つ積層方向に貫通する反応ガス連通孔、及び前記冷却媒体流路に連通し且つ前記積層方向に貫通する冷却媒体連通孔が形成される積層体を備え、前記積層体の両端には、ターミナルプレート、絶縁プレート及びエンドプレートが配設される燃料電池スタックに関するものである。
【0013】
この燃料電池スタックでは、積層体の積層方向の少なくとも一方の端部に、前記積層体とターミナルプレートとの間に位置し、発電セルに対応して配設される端部セルを備えている。端部セルは、発電セルを構成するセパレータと同一構成の端部セパレータを有し、前記セパレータ及び前記端部セパレータは、冷却媒体流路と冷却媒体連通孔とを連結する連結流路がシール部材により形成されている。
【0014】
連結流路は、内側シールラインと外側シールラインとの間で内側流路部と外側流路部とに2分割されている。そして、端部セパレータにのみ、内側流路部と外側流路部との間に位置して冷却媒体流路と冷却媒体連通孔とを閉塞する別体の凸状閉塞シールが設けられている。
【0015】
また、この燃料電池スタックでは、端部セルは、電解質に対応する導電性プレートを有するダミー電解質・電極構造体を備えることが好ましい。
【0016】
さらに、この燃料電池スタックでは、電解質・電極構造体は、一方の電極が他方の電極及び電解質よりも平面寸法が小さく設定されるとともに、内側シールラインは、前記電解質と
前記一方の
電極側のセパレータとの間に配置され、且つ、外側シールラインは、一対のセパレータ間に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、端部セルは、発電セルを構成するセパレータと同一構成の端部セパレータを使用し、前記端部セパレータは、2分割された連結流路を構成する内側流路部と外側流路部との間に位置して別体の凸状閉塞シールを設けるだけでよい。
【0018】
このため、セパレータの共用化を図ることができ、成形装置を削減することが可能になる。しかも、冷却媒体流路を確実に閉塞することができる。これにより、燃料電池スタック全体を経済的且つ良好に構成することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1及び
図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタック10は、複数の発電セル12が立位姿勢で水平方向(矢印A方向)に積層された積層体14を備える。積層体14の積層方向(矢印A方向)一端には、第1端部セル(ダミーセル)16aが配設されるとともに、前記積層体14の積層方向他端には、第2端部セル(ダミーセル)16bが配設される。
【0021】
第1端部セル16aには、ターミナルプレート20a、絶縁プレート22a及びエンドプレート24aが外方に向かって、順次、配設される。第2端部セル16bには、後述する第2金属セパレータ84、ターミナルプレート20b、絶縁プレート22b及びエンドプレート24bが外方に向かって、順次、配設される。
【0022】
燃料電池スタック10は、例えば、長方形に構成されるエンドプレート24a、24bを端板として含む箱状ケーシング(図示せず)により一体的に保持され、あるいは、矢印A方向に延在する複数のタイロッド(図示せず)により一体的に締め付け保持される。
【0023】
ターミナルプレート20a、20bの略中央には、積層方向外方に延在する端子部26a、26bが設けられる。端子部26a、26bは、絶縁性筒体28に挿入されてエンドプレート24a、24bの外部に突出する。絶縁プレート22a、22bは、絶縁性材料、例えば、ポリカーボネート(PC)やフェノール樹脂等で形成されている。
【0024】
絶縁プレート22a、22bは、中央部に矩形状の凹部30a、30bが設けられるとともに、この凹部30a、30bの略中央に孔部32a、32bが形成される。凹部30a、30bには、ターミナルプレート20a、20bが収容され、前記ターミナルプレート20a、20bの端子部26a、26bが絶縁性筒体28を介装して孔部32a、32bに挿入される。
【0025】
エンドプレート24a、24bの略中央部には、孔部32a、32bと同軸的に孔部34a、34bが形成される。エンドプレート24a、24bには、後述する酸化剤ガス供給連通孔42a、燃料ガス供給連通孔44a、2つの冷却媒体供給連通孔46a、燃料ガス排出連通孔44b、2つの冷却媒体排出連通孔46b及び酸化剤ガス排出連通孔42bの内壁を囲繞して絶縁グロメット35が装着される。
【0026】
発電セル12は、
図3に示すように、電解質膜・電極構造体36と、この電解質膜・電極構造体36を挟持する第1金属セパレータ38及び第2金属セパレータ40とを備える。
【0027】
第1金属セパレータ38及び第2金属セパレータ40は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属薄板により構成される。金属薄板は、波形状にプレス加工することにより、鉛直断面凹凸形状に成形される。
【0028】
第1金属セパレータ38及び第2金属セパレータ40は、横長形状を有するとともに、短辺が重力方向(矢印C方向)に延在し且つ長辺が水平方向(矢印B方向)に延在する(水平方向の積層)ように構成される。なお、短辺が水平方向に延在し且つ長辺が重力方向に延在するように構成してもよく、また、セパレータ面が水平方向に向かう(鉛直方向の積層)ように構成してもよい。
【0029】
発電セル12の長辺方向(矢印B方向)の一端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス供給連通孔42aと、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔44aとが設けられる。
【0030】
発電セル12の長辺方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを排出するための燃料ガス排出連通孔44bと、酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔42bとが設けられる。
【0031】
発電セル12の短辺方向(矢印C方向)の両端縁部一方には、矢印A方向に互いに連通して、冷却媒体を供給するための2つの冷却媒体供給連通孔46aが設けられる。発電セル12の短辺方向の両端縁部他方には、冷却媒体を排出するための2つの冷却媒体排出連通孔46bが設けられる。
【0032】
電解質膜・電極構造体36は、例えば、フッ素系又は炭化水素系の固体高分子電解質膜48と、前記固体高分子電解質膜48を挟持するカソード電極50及びアノード電極52とを備える。
【0033】
カソード電極50及びアノード電極52は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層(図示せず)とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜48の両面に形成される。
【0034】
第1金属セパレータ38の電解質膜・電極構造体36に向かう面38aには、酸化剤ガス供給連通孔42aと酸化剤ガス排出連通孔42bとを連通する酸化剤ガス流路54が形成される。酸化剤ガス流路54の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数のエンボスを有する入口バッファ部56a及び出口バッファ部56bが設けられる。
【0035】
図4に示すように、第2金属セパレータ40の電解質膜・電極構造体36に向かう面40aには、燃料ガス供給連通孔44aと燃料ガス排出連通孔44bとを連通する燃料ガス流路58が形成される。燃料ガス流路58の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数のエンボスを有する入口バッファ部60a及び出口バッファ部60bが設けられる。
【0036】
図5に示すように、第2金属セパレータ40の面40bと第1金属セパレータ38の面38bとの間には、冷却媒体供給連通孔46a、46aと冷却媒体排出連通孔46b、46bとに連通する冷却媒体流路62が形成される。冷却媒体流路62は、電解質膜・電極構造体36の電極範囲に亘って冷却媒体を流通させるとともに、前記冷却媒体流路62の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ入口バッファ部64a及び出口バッファ部64bが設けられる。
【0037】
図3に示すように、第1金属セパレータ38の面38a、38bには、この第1金属セパレータ38の外周端縁部を周回して第1シール部材66が一体成形される。第2金属セパレータ40の面40a、40bには、この第2金属セパレータ40の外周端縁部を周回して第2シール部材68が一体成形される。
【0038】
第1シール部材66及び第2シール部材68としては、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材等の弾性を有するシール部材が用いられる。
【0039】
第1シール部材66は、第1金属セパレータ38の面38a、38bにセパレータ面方向に沿って均一な厚さを有して平坦状に設けられる平坦状シール部66aと、前記平坦状シール部66aからセパレータ面方向に交差する方向(積層方向)に突出する凸状シール部66bとを有する。
【0040】
第1金属セパレータ38の面38aには、第1シール部材66を切り欠いて酸化剤ガス供給連通孔42aと酸化剤ガス流路54とを連通する複数の連結通路70aが形成される。面38aには、第1シール部材66を切り欠いて酸化剤ガス排出連通孔42bと酸化剤ガス流路54とを連通する複数の連結通路70bが形成される。
【0041】
第2シール部材68は、第2金属セパレータ40の面40a、40bにセパレータ面方向に沿って均一な厚さを有して平坦状に設けられる平坦状シール部68aと、前記平坦状シール部68aからセパレータ面方向に交差する方向(積層方向)に突出する凸状シール部68bとを有する。
【0042】
図4に示すように、第2金属セパレータ40の面40aには、第2シール部材68を切り欠いて燃料ガス供給連通孔44aと燃料ガス流路58とを連通する複数の連結通路72aが形成される。面40aには、第2シール部材68を切り欠いて燃料ガス排出連通孔44bと燃料ガス流路58とを連通する複数の連結通路72bが形成される。
【0043】
図3及び
図5に示すように、第2金属セパレータ40の面40bには、第2シール部材68を構成する内側凸状シール部68bi及び外側凸状シール部68boが設けられる。内側凸状シール部68biは、冷却媒体流路62を周回する一方、外側凸状シール部68boは、第2金属セパレータ40の外周縁部を周回する。
【0044】
図5に示すように、面40bには、第2シール部材68を介して、一対の冷却媒体供給連通孔46a、46aと冷却媒体流路62とを連通する入口連結流路74と、一対の冷却媒体排出連通孔46b、46bと前記冷却媒体流路62とを連通する出口連結流路76とが設けられる。
【0045】
入口連結流路74は、内側凸状シール部68biに一体成形される複数本の内側ガイド部(凸部)75a間に設けられる内側流路部74aと、外側凸状シール部68boに一体成形され、各内側流路部74aからそれぞれ所定の間隔だけ離間する複数本の外側ガイド部(凸部)75b間に設けられる外側流路部74bとを有する。内側流路部74a及び外側流路部74bは、矢印C方向に所定の長さを有して延在する。
【0046】
入口連結流路74では、切り欠き部位を設けて内側流路部74aと外側流路部74bとに2分割することにより、シール性を向上させることができる。内側流路部74aから外側流路部74bに亘ってシール部が一体で構成されると、変形し難くなり、シール性が低下するおそれがあるからである。以下に説明する出口連結流路76でも、同様である。
【0047】
内側凸状シール部68biにより内側シールライン78aが形成されるとともに、外側凸状シール部68boにより外側シールライン78bが形成される。内側流路部74aは、内側シールライン78aに沿って設けられる一方、外側流路部74bは、外側シールライン78bに沿って設けられる。
【0048】
出口連結流路76は、内側凸状シール部68biに一体成形される複数本の内側ガイド部(凸部)77a間に設けられる内側流路部76aと、外側凸状シール部68boに一体成形され、各内側流路部76aからそれぞれ所定の間隔だけ離間する複数本の外側ガイド部(凸部)77b間に設けられる外側流路部76bとを有する。内側流路部76aは、内側シールライン80aに沿って形成されるとともに、外側流路部76bは、外側シールライン80bに沿って形成される。内側流路部76a及び外側流路部76bは、矢印C方向に所定の長さを有して延在する。
【0049】
図6に示すように、第1端部セル16aは、ダミー電極構造体82と、前記ダミー電極構造体82を挟持する第1金属セパレータ38及び第2金属セパレータ(端部セパレータ)84とを備える。
【0050】
ダミー電極構造体82は、固体高分子電解質膜48に対応する金属プレート86と、前記金属プレート86を挟持するカソード側カーボンペーパ88及びアノード側カーボンペーパ90とを備える。カソード側カーボンペーパ88は、カソード電極50を構成するガス拡散層に対応する一方、アノード側カーボンペーパ90は、アノード電極52を構成するガス拡散層に対応する。
【0051】
第2金属セパレータ84は、第2金属セパレータ40と同様に構成されており、それぞれ同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0052】
第2金属セパレータ84は、ダミー電極構造体82側の面84aが、第2金属セパレータ40の面40aと同一に構成される。第2金属セパレータ84の面84bには、
図7に示すように、上部側の入口連結流路74及び出口連結流路76に沿って別体の凸状上側閉塞シール92aが設けられる。上側閉塞シール92aは、入口バッファ部64aの上部近傍から出口バッファ部64bの上部近傍まで、矢印B方向に延在する長尺なライン状を有する。
【0053】
図7〜
図9に示すように、第2金属セパレータ84では、通常の発電セル12用のセパレータを用いて、内側シールライン80aと外側流路部76bとの間に、上側閉塞シール92aが設けられている。上側閉塞シール92aは、第2シール部材68を構成する内側凸状シール部68bi及び外側凸状シール部68boと同一高さに設定されるとともに(
図8参照)、前記第2シール部材68を構成する内側ガイド部77a及び外側ガイド部77bと同一高さに設定される(
図9参照)。
【0054】
上側閉塞シール92aは、内側流路部74aと外側流路部74bとの間に位置し、冷却媒体流路62と上部側の冷却媒体供給連通孔46aとを閉塞する一方、内側流路部76aと外側流路部76bとの間に位置し、前記冷却媒体流路62と上部側の冷却媒体排出連通孔46bとを閉塞する。上側閉塞シール92aは、一端側が内側流路部74aと外側流路部74bとの間に配置されるとともに、他端側が内側流路部76aと外側流路部76bとの間に配置される(
図7及び
図9参照)。上側閉塞シール92aは、上部側の冷却媒体供給連通孔46aと上部側の冷却媒体排出連通孔46bとの間で、内側凸状シール部68biと外側凸状シール部68boとの間に配置される(
図7及び
図8参照)。
【0055】
第2金属セパレータ84の面84bには、下部側の入口連結流路74及び出口連結流路76に沿って別体の凸状下側閉塞シール92bが設けられる。下側閉塞シール92bは、入口バッファ部64aの下部近傍から出口バッファ部64bの下部近傍まで、矢印B方向に延在する長尺なライン状を有する。
【0056】
下側閉塞シール92bは、内側ガイド部(凸部)75a間に設けられる内側流路部74aと外側ガイド部(凸部)75b間に設けられる外側流路部74bとの間に位置し、冷却媒体流路62と下部側の冷却媒体供給連通孔46aとを閉塞する一方、内側ガイド部(凸部)77a間に設けられる内側流路部76aと外側ガイド部(凸部)77b間に設けられる外側流路部76bとの間に位置し、前記冷却媒体流路62と下部側の冷却媒体排出連通孔46bとを閉塞する。下側閉塞シール92bは、一端側が内側流路部74aと外側流路部74bとの間に配置されるとともに、他端側が内側流路部76aと外側流路部76bとの間に配置される。下側閉塞シール92bは、下部側の冷却媒体供給連通孔46aと下部側の冷却媒体排出連通孔46bとの間で、内側凸状シール部68biと外側凸状シール部68boとの間に配置される。
【0057】
上側閉塞シール92a及び下側閉塞シール92bは、第2シール部材68とは別体に形成される。実質的には、発電セル12を構成する第2金属セパレータ40が製造された後、前記第2金属セパレータ40に上側閉塞シール92a及び下側閉塞シール92bが接着されることにより、第1端部セル16aを構成する端部セパレータである第2金属セパレータ84が製造される。上側閉塞シール92a及び下側閉塞シール92bは、例えば、シリコーンやEPDM等で構成される。
【0058】
図2に示すように、第2端部セル16bは、ダミー電極構造体82と、前記ダミー電極構造体82を挟持する第1金属セパレータ38及び第2金属セパレータ40とを備える。第2金属セパレータ40に隣接して端部セパレータである第2金属セパレータ84が配設され、前記第2金属セパレータ84は、ターミナルプレート20b及び絶縁プレート22bに当接する。
【0059】
このように構成される燃料電池スタック10の動作について、以下に説明する。
【0060】
先ず、
図1に示すように、酸化剤ガス供給連通孔42aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス供給連通孔44aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、一対の冷却媒体供給連通孔46aには、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0061】
このため、
図3に示すように、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給連通孔42aから第1金属セパレータ38の酸化剤ガス流路54に導入される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路54に沿って矢印B方向(水平方向)に移動し、発電面である電解質膜・電極構造体36のカソード電極50に供給される。
【0062】
一方、燃料ガスは、燃料ガス供給連通孔44aから第2金属セパレータ40の燃料ガス流路58に供給される。燃料ガスは、
図4に示すように、燃料ガス流路58に沿って水平方向(矢印B方向)に移動し、発電面である電解質膜・電極構造体36のアノード電極52に供給される(
図3参照)。
【0063】
従って、電解質膜・電極構造体36では、カソード電極50に供給される酸化剤ガスと、アノード電極52に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0064】
次いで、電解質膜・電極構造体36のカソード電極50に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出連通孔42bに沿って矢印A方向に排出される。一方、電解質膜・電極構造体36のアノード電極52に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス排出連通孔44bに沿って矢印A方向に排出される。
【0065】
また、一対の冷却媒体供給連通孔46aに供給された冷却媒体は、
図3に示すように、第1金属セパレータ38及び第2金属セパレータ40間の冷却媒体流路62に導入される。冷却媒体は、一旦矢印C方向(重力方向)内方に沿って流動した後、矢印B方向(水平方向)に移動して電解質膜・電極構造体36を冷却する。この冷却媒体は、矢印C方向外方に移動した後、一対の冷却媒体排出連通孔46bに排出される。
【0066】
この場合、第1の実施形態では、積層体14の積層方向両端部に、第1端部セル16a及び第2端部セル16bが配設されている。このため、第1端部セル16a及び第2端部セル16bでは、冷却媒体流路62が閉塞された断熱空間を構成している。従って、特に、低温始動時に積層体14の端部に配置されている発電セル12の昇温遅れや、前記発電セル12の電圧低下を有効に阻止することができる。
【0067】
しかも、第1端部セル16aは、
図6及び
図7に示すように、発電セル12を構成する第2金属セパレータ40と同一構成の端部セパレータである第2金属セパレータ84を使用している。具体的には、発電セル12を構成する第2金属セパレータ40が製造された後、前記第2金属セパレータ40に別部材である上側閉塞シール92a及び下側閉塞シール92bが接着等により固定されることにより、第1端部セル16aを構成する第2金属セパレータ84が製造されている。
【0068】
その際、上側閉塞シール92aは、内側流路部74aと外側流路部74bとの間に配置されるだけで、冷却媒体流路62と上部側の冷却媒体供給連通孔46aとを閉塞することができる。さらに、上側閉塞シール92aは、内側流路部76aと外側流路部76bとの間に配置されるだけで、冷却媒体流路62と上部側の冷却媒体排出連通孔46bとを閉塞することが可能になる。従って、上側閉塞シール92aは、第2金属セパレータ84の所望の部位に、簡単な作業で良好に設けることができ、作業性が有効に向上するという利点がある。
【0069】
同様に、下側閉塞シール92bは、内側流路部74aと外側流路部74bとの間に配置されるだけで、冷却媒体流路62と下部側の冷却媒体供給連通孔46aとを閉塞することができる。さらに、下側閉塞シール92bは、内側流路部76aと外側流路部76bとの間に配置されるだけで、冷却媒体流路62と下部側の冷却媒体排出連通孔46bとを閉塞することが可能になる。従って、下側閉塞シール92bは、第2金属セパレータ84の所望の部位に、簡単な作業で良好に設けることができ、作業性が有効に向上するという利点がある。
【0070】
これにより、第1端部セル16aは、発電セル12とセパレータの共用化を図ることができ、前記セパレータの成形装置を削減することが可能になる。しかも、冷却媒体流路62を確実に閉塞することができる。このため、燃料電池スタック10全体を経済的且つ良好に構成することが可能になる。
【0071】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタックを構成する端部セル100の要部分解斜視説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池スタック10を構成する第1端部セル16aと同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0072】
端部セル100は、ダミー電極構造体82と、前記ダミー電極構造体82を挟持する第1金属セパレータ38及び第2金属セパレータ(端部セパレータ)102とを備える。
【0073】
第2金属セパレータ102は、上記の第2金属セパレータ84と略同一に構成される。第2金属セパレータ102では、2分割された上側閉塞シール92a1及び92a2と、2分割された下側閉塞シール92b1及び92b2とが設けられる。
【0074】
図11に示すように、上側閉塞シール92a1は、外側ガイド部75bに密着して液密性を確保した状態で、入口バッファ部64aの上部近傍から冷却媒体流路62の流れ方向中央近傍まで、矢印B方向に延在する長尺なライン状を有する。上側閉塞シール92a2は、外側ガイド部77bに密着して液密性を確保した状態で、出口バッファ部64bの上部近傍から冷却媒体流路62の流れ方向中央近傍まで、矢印B方向に延在する長尺なライン状を有する。上側閉塞シール92a1と上側閉塞シール92a2とは、内側凸状シール部68biと外側凸状シール部68boとの間で互いに所定の間隔だけ離間して配置される。
【0075】
下側閉塞シール92b1は、外側ガイド部75bに密着して液密性を確保した状態で、入口バッファ部64aの下部近傍から冷却媒体流路62の流れ方向中央近傍まで、矢印B方向に延在する長尺なライン状を有する。下側閉塞シール92b2は、外側ガイド部77bに密着して液密性を確保した状態で、出口バッファ部64bの下部近傍から冷却媒体流路62の流れ方向中央近傍まで、矢印B方向に延在する長尺なライン状を有する。下側閉塞シール92b1と下側閉塞シール92b2とは、内側凸状シール部68biと外側凸状シール部68boとの間で互いに所定の間隔だけ離間して配置される。
【0076】
このように構成される第2の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、2分割された上側閉塞シール92a1及び92a2と、2分割された下側閉塞シール92b1及び92b2とを設けており、これらの接着時の作業性が一層向上するという利点がある。
【0077】
図12は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタックを構成する発電セル120の要部分解斜視説明図である。
【0078】
発電セル120は、電解質膜・電極構造体122と、この電解質膜・電極構造体122を挟持する第1金属セパレータ38及び第2金属セパレータ124とを備える。電解質膜・電極構造体122は、固体高分子電解質膜48と、前記固体高分子電解質膜48を挟持するアノード電極(一方の電極)52及びカソード電極(他方の電極)50とを備える。アノード電極52は、カソード電極50及び固体高分子電解質膜48よりも小さな平面寸法(表面積)を有し、所謂、段差MEAを構成する。
【0079】
第2金属セパレータ124には、燃料ガス供給連通孔44aを燃料ガス流路58に連通する供給孔部126と、前記燃料ガス流路58を燃料ガス排出連通孔44bに連通する排出孔部128とが形成される。
【0080】
図13に示すように、発電セル120では、内側シールライン78a、80aは、電解質膜・電極構造体122を構成する固体高分子電解質膜48と第2金属セパレータ124との間に対応して配置され、且つ、外側シールライン78b、80bは、前記電解質膜・電極構造体122の外方に位置し前記第2金属セパレータ124と第1金属セパレータ38との間に対応して配置される。
【0081】
図示しないが、第3の実施形態では、端部セルは、発電セル120を構成する電解質膜・電極構造体122に対応するダミー電極構造体と、前記ダミー電極構造体を挟持する第1金属セパレータ38及び第2金属セパレータ(端部セパレータ、第2金属セパレータ124に上側閉塞シール及び下側閉塞シールを個別に設けた構成)とを備える。
【0082】
従って、第3の実施形態では、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。