(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816166
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】故障の処理方法および処理装置
(51)【国際特許分類】
B64D 47/00 20060101AFI20151029BHJP
【FI】
B64D47/00
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-513656(P2012-513656)
(86)(22)【出願日】2010年6月1日
(65)【公表番号】特表2012-528760(P2012-528760A)
(43)【公表日】2012年11月15日
(86)【国際出願番号】FR2010051067
(87)【国際公開番号】WO2010139894
(87)【国際公開日】20101209
【審査請求日】2013年5月13日
(31)【優先権主張番号】0902641
(32)【優先日】2009年6月2日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509347273
【氏名又は名称】エアバス オペラシオン ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ
(73)【特許権者】
【識別番号】503172666
【氏名又は名称】エアバス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】バンサン グロ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック マルティネ
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼ デクノート
(72)【発明者】
【氏名】アルノー ドゥインス
【審査官】
鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05014220(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0312783(US,A1)
【文献】
特開2004−352071(JP,A)
【文献】
特開2004−274844(JP,A)
【文献】
特開2001−206295(JP,A)
【文献】
特開2002−370697(JP,A)
【文献】
特開2009−274588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
故障を検出し且つ識別する手段を含む故障処理装置において、識別された故障の少なくともいくつかについて、
複数のフライト中の同じ識別情報を有する故障の発生履歴を記憶する手段と、
既定の持続時間内の航空機の利用可能性に対する、識別された各故障の影響を決定する手段と、
1回のフライト中に検出された各故障を、前記履歴および影響に応じた階層的属性に関連付ける手段と、
前記階層的属性のいくつかに関連付けられた識別済み故障を表示する手段と
をさらに含むことを特徴とする、故障処理装置。
【請求項2】
少なくとも1回の前のフライト中の故障の履歴に応じて、永続的ステータスまたは間欠的ステータスという、各々の識別済み故障のステータスを決定する手段をさらに含み、1回のフライト中に検出された各故障を階層的属性に関連付ける前記手段は、前記階層的属性が前記ステータスに応じたものとなるように適合されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
永続的ステータスまたは間欠的ステータスという、各々の識別済み故障のステータスを決定する前記手段は、各々の識別済み故障メッセージのクラスを使用することを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
地上ツールから故障の出現履歴を受信する手段をさらに含み、故障の出現履歴を記憶する手段が前記履歴を記憶することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
航空機の利用可能性に対する識別された各故障の影響を決定する前記手段は、各々の識別済み故障のクラスを使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
1回のフライト中に検出された各故障を階層的属性に関連付ける前記手段は、前記階層的属性が、航空機のフライトを禁じるような影響をもつ故障を表わすように適合されており、前記表示手段は前記故障を表示するように適合されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
1回のフライト中に検出された各故障を階層的属性に関連付ける前記手段は、前記階層的属性が、規定の持続時間内にステータスが永続的となった場合に航空機のフライトを禁じるような影響をもつ故障を表わすように適合されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
1回のフライト中に検出された各故障を階層的属性に関連付ける前記手段は、前記階層的属性が、航空機が最近行なった第2の既定回数のフライトのうちの少なくとも第1の既定回数のフライト中に発生した故障を表わすように適合されており、前記表示手段は前記故障を表示するように適合されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1および/または第2の既定回数は、故障の識別情報に応じたものであることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
1回のフライト中に検出された各故障を階層的属性に関連付ける前記手段は、前記階層的属性が、まだ発生していない別の故障と組合わさって航空機のフライトを禁じる可能性のある故障を表わすように適合されており、前記表示手段は前記故障を表示するように適合されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
1回のフライト中に検出された各故障を階層的属性に関連付ける前記手段は、前記階層的属性が、規定のフライト時間数の後に航空機のフライトを禁じる可能性のある故障を表わすように適合されており、前記表示手段は前記故障を表示するように適合されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置を含むことを特徴とする、航空機。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置を含むことを特徴とする、地上の故障処理システム。
【請求項14】
検出及び識別の手段によって検出され且つ識別された故障を処理する方法において、前記識別された故障の少なくともいくつかについて、
複数のフライト中の同じ識別情報を有する故障の発生履歴を記憶するステップと、
既定の持続時間内の航空機の利用可能性に対する、識別された各故障の影響を決定するステップと、
1回のフライト中に検出された各故障を、前記履歴および影響に応じた階層的属性に関連付けるステップと、
前記階層的属性のいくつかに関連付けられた識別済み故障を表示するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障の処理方法および処理装置に関する。本発明は、詳細には、航空機内の故障処理に適用される。
【背景技術】
【0002】
航空機に搭載された故障検出システムは、システム間で相互に監視を行うと同時に、これらのシステムに情報を提供する他のアビオニクスシステムも監視する。この監視の間、搭載された故障検出システムは、「CMS」(「Central Maintenance System」の頭字語)とも呼ばれる中央メンテナンスシステムに対して故障を表わす信号を送り、このシステムは各フライトについて、PFR(「Post Flight Report」(飛行後レポート)の頭文語)と呼ばれるリストであるこれら全ての故障のリストを作成する。
【0003】
故障は、その重大度に応じて1つのクラスに関連付けられる。
【0004】
故障リストつまりPFRは、航空機が送信する全ての故障を実時間で受信する地上で使用されるツールであるAIRMAN(登録商標)を利用して、あるいはコックピットに専用に設けられたスクリーン上でメンテナンスシステム(CMS)を用いてPFRを見ることでフライトの終了時に直接航空機内で、航空会社によって活用される。
【0005】
航空機内には増々多くの電子装置が存在し、したがって故障そして故障検出システムの数も増々多くなっている。平均して各フライトで、今日およそ40件の故障がメンテナンスシステムにより報告されている。この件数は多すぎて、2時間未満の場合もある航空機のストップオーバーの間にこれら全ての故障を処理することは不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これら難点を改善するために、航空機が再離陸する前に優先的に修理しなければならない最も関連性のある故障を抽出し又は強調表示することを目的としている。この場合、他の故障の修理は、航空会社の裁量に委ねられ、必要であればより長時間のストップオーバー中にまたは計画メンテナンス作業の際に補正されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明は、第1の態様によれば、故障を検出し且つ識別する手段を含む故障処理装置において、識別された故障の少なくともいくつかについて、
複数のフライト中の同じ識別情報を有する故障の発生履歴を記憶する手段と、
既定の持続時間内の航空機の利用可能性に対する、識別された各故障の影響を決定する手段と、
1回のフライト中に検出された各故障を、履歴および影響に応じた階層的属性に関連付ける手段と、
階層的属性のいくつかに関連付けられた識別済み故障を表示する手段と
をさらに含むことを特徴とする、故障処理装置を目的としている。
【0008】
こうして、PFRの故障全体の中のいくつかの故障の存在を、例えばスクリーン上での表示、鮮やかな色で強調するラインマーキング、ラベルまたは「タグ」の付加などにより強調表示することによってメンテナンス担当者に認識させることができる。このようにして、会社はストップオーバー中に処理すべき重大な故障全てを識別することからメンテナンスは最適化され、これによって会社は、本質的に時間を節約することができる。
【0009】
詳細な特徴によると、以上で簡潔に説明したような本発明の目的である装置は、少なくとも1回の前のフライト中の故障の履歴に応じて、永続的ステータスまたは間欠的ステータスという、各々の識別済み故障のステータスを決定する手段をさらに含み、1回のフライト中に検出された各故障を階層的属性に関連付ける手段は、階層的属性がステータスに応じたものとなるように適合されている。
【0010】
これらの措置によって、重要度が比較的低い間欠的故障を永続的故障から分離し、結果としてこれら永続的故障をより良く処理することができる。
【0011】
詳細な特徴によると、永続的ステータスまたは間欠的ステータスという、各々の識別済み故障のステータスを決定する手段は各々の識別済み故障のクラスを使用する。
【0012】
詳細な特徴によると、本発明の目的である装置は、さらに、地上ツールから故障の出現履歴を受信する手段を含み、同一の識別情報を有する故障の出現履歴を記憶する手段は、履歴を記憶する。
【0013】
これら措置によって、階層化された故障リストを、故障処理手段の中央メンテナンスシステムから照会することができる。
【0014】
詳細な特徴によると、航空機の利用可能性に対する、各故障の影響を決定する手段は、各々の識別済み故障のクラスを使用する。
【0015】
詳細な特徴によると、1回のフライト中に検出された各故障を階層的属性に関連付ける手段は、階層的属性が、航空機のフライトを禁じるような影響をもつ故障を表わすように適合されており、表示手段は故障を表示するように適合されている。
【0016】
詳細な特徴によると、1回のフライト中に検出された各故障を階層的属性に関連付ける手段は、階層的属性が、規定の時間内にステータスが永続的となった場合に航空機のフライトを禁じるような影響をもつ故障を表わすように適合されている。
【0017】
このようにして、過誤故障、過度に感度の高い監視に起因する故障、間欠的故障または特定の航空機の構成に関係する故障(例えば、エンジン始動または電気的過渡現象の際)または特殊なフライト条件に関係する故障は個別に処理される。
【0018】
詳細な特徴によると、1回のフライト中に検出された各故障を階層的属性に関連付ける手段は、航空機によって最近行なわれた第2の既定回数のフライトのうちの少なくとも第1の既定回数のフライト中に発生した故障を階層的属性が表わすように適合されており、表示手段は故障を表示するように適合されている。
【0019】
詳細な特徴によると、第1および/または第2の既定回数は、故障の識別情報に応じたものである。
【0020】
詳細な特徴によると、1回のフライト中に検出された各故障を階層的属性に関連付ける手段は、階層的属性が、まだ発生していない別の故障と組合わさって航空機のフライトを禁じる可能性のある故障を表わすように適合されており、表示手段は故障を表示するように適合されている。
【0021】
詳細な特徴によると、1回のフライト中に検出された各故障を階層的属性に関連付ける手段は、階層的属性が、規定のフライト時間数の後に航空機のフライトを禁じる可能性のある故障を表わすように適合されており、表示手段は故障を表示するように適合されている。
【0022】
フライト時間数を制限するフライト続行権に関連付けられる故障が存在する。これらの故障が検出された場合、航空機は例えば1000時間飛行する権利を有する。これらの措置によって、制限された飛行持続時間に達したことを表わす警報より前(例えば許可された飛行持続時間の終了から200時間前)に故障を表示し、こうしてこの故障を修理する緊急メンテナンスを予告して航空機が地上に足止めされるのを回避することができる。
【0023】
第2の態様によれば、本発明は、以上で簡潔に説明したような本発明の目的である装置を含むことを特徴とする航空機を目的としている。
【0024】
第3の態様によれば、本発明は、以上で簡潔に説明したような本発明の目的である装置を含むことを特徴とする、地上の故障処理システムを目的としている。
【0025】
第4の態様によれば、本発明は、検出及び識別の手段により検出され且つ識別された故障を処理する方法において、識別された故障の少なくともいくつかについて、
複数のフライト中の同じ識別情報を有する故障の発生履歴を記憶するステップと、
既定の持続時間内の航空機の利用可能性に対する、識別された各故障の影響を決定するステップと、
1回のフライト中に検出された各故障を、履歴および影響に応じた階層的属性に関連付けるステップと、
階層的属性のいくつかに関連付けられた識別済み故障を表示するステップと
を含むことを特徴とする方法を目的としている。
【0026】
この航空機、この地上システムおよびこの方法の利点、目的並びに詳細な特徴は、以上で簡潔に説明したような本発明の目的である装置のものと類似していることから、ここでこれらについて再度言及することはしない。
【0027】
本発明の他の利点、目的および詳細な特徴は、添付図面を参照しながら、全く限定的ではなく説明を目的として行なわれている以下の記述から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の目的である航空機内の本発明の目的である装置の詳細な実施形態、および地上の機器との通信を概略的に示している。
【
図2】本発明の目的である方法の詳細な実施形態において実施されるステップを概略的に表わしている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、故障検出手段110、各フライトについて、PFR(「Post Flight Report」(飛行後レポート)の頭文語)と呼ばれるリストであるこれら全ての故障のリストを作成する「CMS」(「Central Maintenance System」の頭字語)とも呼ばれる中央メンテナンスシステム115、そして中央メンテナンスシステム115に接続された送受信機120を搭載した航空機105が見られる。
【0030】
中央メンテナンスシステム115は中央処理装置125および不揮発性メモリー130を含んでいる。
【0031】
地上つまり一般的には空港では、送受信機135が、送受信機120、データ記憶装置140、およびAIRMANツール145と通信する。
【0032】
データ記憶装置140は、装置にデータを送信する航空機からの全ての受信情報を保存する。AIRMANツール145によって、公知の態様で故障の出現履歴を決定できる。
【0033】
一方、CMSは、送受信機120および135を介して各故障の識別情報、すなわち故障のクラスを含めた各故障の発生および所与の時間範囲にわたる航空機の利用可能性に対する各故障の影響を表わす情報を送る。
【0034】
AIRMANは、各故障をその履歴に関連付け、前記発生故障の持続時間および各々の識別済み故障の履歴に応じた、永続的または間欠的というそのステータスと共に、各故障の識別情報をCMSに戻す。
【0035】
各故障のクラス、履歴、影響および/またはステータスを含めた識別情報に基づいて、AIRMAN地上ツールは、
図2を参照して説明されるように、各々の識別済み故障に対する階層的属性を決定する。
【0036】
第1の実施形態において、航空機に搭載された不揮発性メモリー130は、本発明の目的である方法のステップ例えば
図2に例示されているステップを実行するプログラムを保存し、中央処理装置125がこのプログラムの命令を実行する。メモリー130および中央メンテナンスシステム115の中央処理装置125はこうして以下のものを共に構成する。
複数のフライト中の同じ識別情報を有する故障の発生履歴を記憶する手段と、
既定の(今後の)持続時間内の航空機の利用可能性に対する識別された各故障の影響を決定する手段と、
1回のフライト中に検出された各故障を、履歴および影響に応じた階層的属性に関連付ける手段と、
階層的属性のいくつかに関連付けられた識別済み故障を表示する手段。
【0037】
第2の実施形態において、地上側では、AIRMANツールが、本発明の目的である方法のステップ例えば
図2に例示されたステップを実行するプログラムを保存し、このプログラムの命令を実行する。こうして、AIRMANツールは以下の手段を構成する。
複数のフライト中の同じ識別情報を有する故障の発生履歴を記憶する手段と、
既定の(今後の)持続時間内の航空機の利用可能性に対する識別された各故障の影響を決定する手段と、
1回のフライト中に検出された各故障を、履歴および影響に応じた階層的属性に関連付ける手段と、
階層的属性のいくつかに関連付けられた識別済み故障を表示する手段。
【0038】
ストップオーバーの際または乗務員の要請に応じた故障リストの表示に際して、故障リストは、表示された故障に関連付けられた階層的属性を表わす。例えば、既定の値よりも大きい階層的属性に関連付けられた故障のみが表示される。別の実施例によると、既定の数の故障だけが、逓減的階層的属性順序で表示される。
【0039】
この態様では、航空機を運用している航空会社は、ストップオーバー中に処理すべき重大な故障全てを識別することからストップオーバーの際に行なわれるメンテナンスは最適化され、こうして航空会社には、先行技術のPFRと比べた本質的な時間の節約が提供される。
【0040】
換言すると、本発明を実施することで、例えば、永続的ステータスを有し直ちに地上に航空機を足止めし得る重大な故障(これらのクラスによる)または、これら故障が連続する数回のフライト以来存在しているという制約を付加して数時間のフライト内でこの航空機を足止めし得ると考えられる故障をPFRから抽出することが可能になる。こうしてこのアルゴリズムは、過誤故障、過度に感度の高い監視に起因する故障、間欠的故障または特定の航空機の構成に関係する故障または特殊なフライト条件に関係する故障である可能性のある故障を別途処理することを可能とする。
【0041】
図2は、本発明の目的である方法の詳細な一実施形態において実施されるステップを詳細に示している。
【0042】
ステップ205では、航空機の異なるセンサーがパラメータを測定し、これらのパラメータは、搭載された計算機(図示せず)に集約される。ステップ210では、これらの搭載型計算機は、これらパラメータの値を記憶し、例えばいくつかの限界値と比較することなどによってこれら値を処理し、処理によって故障を検出する。ここで、「故障」という用語には機能異常も包含されている点に留意されたい。
【0043】
一部の商用機に有効である以下の4つの故障タイプが識別される。
【0044】
第1の故障タイプは、コックピット内のパイロットが知覚できる効果を生成する故障である、いわゆる「コックピット効果をもつ」故障に関するものである。すなわち、例えば航空機機能を制御する計算機のECAM(「Electronic Centralised Aircraft Monitor」の頭字語(電子式集中機体監視))メッセージがそれである。ECAMメッセージは、コックピットのスクリーンの1つに、3つのタイプの警報(warning(警告)、caution(注意)、recommandation(勧告)/adrisory(助言))、局所的警報、音響または欠如パラメータ(「XX」)を提示し得る。これら故障は多くの場合「クラス1」または「コックピットアイテム」の故障と呼ばれる。
【0045】
第2の故障タイプは、いわゆる「キャビン効果をもつ」故障に関するものである。これは、航空機のキャビン内で効果を生じさせるものの安全性に対する帰結はなく、乗客の快適性のみに帰結をもたらすあらゆる故障である(例えばトイレの故障)。これら故障は多くの場合「クラス3」または「キャビンアイテム」の故障と呼ばれる。
【0046】
第3の故障タイプは、即時的な効果を一切呈さないが、より長期的な効果を有し得る故障に関するものである。すなわち、
コックピット効果もキャビン効果もないが、安全性の理由から所与の期間内に修理しなくてはならない全ての故障。これら故障は、多くの場合「クラス4」の故障と呼ばれる(例えばエンジンオイルレベルの低下に関係するもの)。
コックピット効果もキャビン効果もなく、安全性に対する帰結も時間的制限もないが、他の1つ以上の故障と組合わさった場合にコックピット効果またはキャビン効果を生成し得る全ての故障(AFDX(「Avionics Full Duplex(アビオニクス全二重)」の頭文語)ネットワークのスイッチ(「switch」)の冗長性喪失など)。これら故障は、多くの場合、「クラス5」または「ペンディングアイテム」の故障と呼ばれる。
【0047】
第4の故障タイプは、直接的な効果をもたらさないが、航空機の性能に影響を及ぼし得る故障、または「マイナー」故障と呼ばれるものに関する。これは、コックピット効果もキャビン効果もなく、安定性に対する帰結も時間的制限もないが、航空機の性能に対する帰結、特に運用コストの観点から見た帰結を有する全ての故障である。これら故障は多くの場合、「クラス6」または「マイナーアイテム」の故障と呼ばれる。
【0048】
ステップ215では、検出された故障のリストを再度取上げるPFRレポートが、中央メンテナンスシステムCMSの計算機(または中央処理装置)によって作成される。ステップ220では、PFR故障レポートが、フライト中およびフライト後に地上に伝送される。FWS(「Flight Warning System」の頭字語、つまりフライト警報システム)が発する警報など、一部の故障はパイロットにも提示されるという点に留意されたい。
【0049】
ステップ225では、AIRMANツールは、フライト中および地上で航空機から受けとったPFRレポートを収集し、これをメモリーに記憶する。
【0050】
本発明によると、ステップ235では、故障全体が識別され、その出現履歴、既定の(今後の)時間的間隔内における航空機の利用可能性に対する故障の影響に応じてこれらの故障が強調表示される。
【0051】
このために、ステップ235では、前のフライトで発生した全ての故障が記録される、その航空機に固有の履歴が使用される。コードにより識別された所与の故障が再び現われると、ツールは、フライト番号及びその日付と関連付けられたそのコードと共に改めてそれを記録する。
【0052】
ステップ235では、各々の故障について、少なくとも1回の前のフライトについての故障履歴に応じてその永続的または間欠的ステータスを決定する。
【0053】
ステップ240では、最近のx回のフライトについて出現した故障全体を調査する。なおxは既定の数である。この基準は、最近のx回のフライトについての出現履歴基準と呼ばれる。ツールは、前のフライトの故障をメモリーに保ち、故障が存在する各フライト毎に1を増分する。
【0054】
ステップ245では、故障を、その履歴に関する基準に応じて選択する。例えば、計数器がフライト数xと等価の故障数を示した場合、この故障が選択される。同様にして、最近のy回のフライトのうち、x回のフライトに存在する故障数を調査することができる。なお、ここでyはx以上の既定の数である。
【0055】
ステップ250では、(即時も含む)所与の範囲内で航空機を足止めし得る故障を選択する。
【0056】
ステップ255では、(間欠的とみなされる故障と区別するため)永続的とみなされるステータスをもつ故障を選択する。
【0057】
ステップ250および255を実際に実施するためには、直接航空機のメンテナンスシステムに由来する情報および各故障メッセージクラス(1、3、5、6)からの情報ならびに、生成されたコックピット効果(Warning、Caution等)を用いてメンテナンスシステムによって行なわれる相関が使用される。この相関は、本質的に時間的に行なわれる。
【0058】
より一般的には、故障は、以上で示された基準全体またはこれら基準のあらゆる組合せまたは並置に応じて選択される。「組合せ(combinaison)」というのは、ステップ245〜255の2つまたは3つの基準を満たす故障のみを取り上げることを意味し、「並置(juxtaposition)」とは、いずれか一つの基準を満たす故障のみを取り上げることを意味する。
【0059】
1つの故障が選定された基準の公式を満たす場合、ステップ260で警報が生成される。一実施形態によると、フライト中に発生した故障のリスト中で選択された故障のみが強調表示される。
【0060】
こうして、メンテナンスチームには、表示されまたは強調表示された各々の故障が真に処理すべき故障であることがわかる。したがってメンテナンスチームはより迅速に自らの介入計画を作成することができる。
【0061】
変形形態として、ステップ245〜255の間において、以下の故障が選択される。
「コックピットアイテム」のうち、1つの警報に関係する故障または最近の5回のフライト中に発生した故障、
「キャビンアイテム」のうち、最近の5回のフライト中に発生した故障、
「ペンディングアイテム」のうち、今後200時間未満のフライトにおいて1回の警報を生成する故障、または、別の故障に組合わされた場合に警報を開始させるはずであり、かつ最近の5回のフライト中に発生した故障、および
「マイナーアイテム」のうち、最近の10回のフライト中に発生した故障。
【0062】
以下では、「ペンディングアイテム」についての補足的説明を記す:
「タイマー」(フライト持続時間測定用クロック)に関連付けられる故障が存在する。これらの故障が検出された場合、航空機は、例えば1000時間などの既定の持続時間中飛行する権利を有する。「タイマー」は、航空機によって飛行される時間としてカウントされる。「タイマー」がゼロに到達した時点で「メンテナンスタイムリミット」の警報が、コックピットでECAM(「Electronic Centralised Aircraft Monitoring」の頭字語(集中航空機電子監視))に対し発せられ、こうして乗務員には、この故障の修理が完了するまでは飛行は不能である(「Minimum Equipment List」(つまり最低機器リスト)の頭字語であるMELに基づく場合以外)との警告を受ける。したがって、ここで提案される変形形態は、警報が現われる以前(例えばタイマーが200時間を表示する時)に故障を強調表示することができ、こうしてこの故障の修理が緊急であることをメンテナンスに予告し、こうして航空機が地上に足止めされるのを回避することができる。
同様に、別の識別済み故障が同時に発生した場合にのみ警報を開始させる故障も存在する。この場合、1つの故障しか存在しないため、乗務員は、搭乗する航空機上にいかなる効果も見い出さない。一方、航空機は、航空機を足止めする可能性のある警報にごくわずかだけさらされた状態となる。本発明の変形形態を実施することで、2つの故障が同時に存在しその結果として発せられた警報のために航空機が足止めされる危険性を減少させるような形で、適正な期間内に最初の故障を修理することが想定されている。
【0063】
AIRMANツールからPFRへのアクセスの場合、ステップ265で、このツールは、その航空機専用のスクリーン上に、関係する航空機の識別情報および表示された情報の受信日を表示する。特定的インデックスタブにより、階層化されたPFRを表示することが可能となる。すなわちこのPFRでは、選択された故障はその階層的属性に応じて強調表示される。
【0064】
CMSからのPFRへのアクセスの場合、同じデータが乗務員またはメンテナンスチームに提供される。
【0065】
ステップ270でメンテナンスチームは、着陸後またはフライト中に航空機に介入して、ステップ265を参照して記述された地上ツールの特定的インデックスタブを使用することによって、航空機がひとたび目的地に到着したならば地上で行なうべきメンテナンス行動の準備をする。
【0066】
以上の記述を読むことで理解できるように、本発明を実施することにより、或る種の故障の存在についてメンテナンス担当者の注意が喚起される。こうして、或る種の故障がPFRの故障全体の中で強調表示される(スクリーン表示、鮮やかな色でのラインマーキング、タブまたはラベルの付加等)。これら故障は、航空機のメーカーまたは事業者によって、ストップオーバー時にメンテナンスチームが処理しなければならない重大な故障とみなされる。航空会社のメンテナンスに関する政策は非常に多様であることから、これは単に1つの補助対策にすぎない。実際、ストップオーバー時に航空機のフライトを禁じる故障のみを補正すればよいとする会社もあれば、乗客の快適性にとって重大な故障がそれに加わる会社もあり、さらには可能なかぎり多くの故障を処理すべきであるとする会社もある。