特許第5816215号(P5816215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧

特許5816215壁面緑化大気浄化装置およびこれを用いたシステム
<>
  • 特許5816215-壁面緑化大気浄化装置およびこれを用いたシステム 図000002
  • 特許5816215-壁面緑化大気浄化装置およびこれを用いたシステム 図000003
  • 特許5816215-壁面緑化大気浄化装置およびこれを用いたシステム 図000004
  • 特許5816215-壁面緑化大気浄化装置およびこれを用いたシステム 図000005
  • 特許5816215-壁面緑化大気浄化装置およびこれを用いたシステム 図000006
  • 特許5816215-壁面緑化大気浄化装置およびこれを用いたシステム 図000007
  • 特許5816215-壁面緑化大気浄化装置およびこれを用いたシステム 図000008
  • 特許5816215-壁面緑化大気浄化装置およびこれを用いたシステム 図000009
  • 特許5816215-壁面緑化大気浄化装置およびこれを用いたシステム 図000010
  • 特許5816215-壁面緑化大気浄化装置およびこれを用いたシステム 図000011
  • 特許5816215-壁面緑化大気浄化装置およびこれを用いたシステム 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816215
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】壁面緑化大気浄化装置およびこれを用いたシステム
(51)【国際特許分類】
   A01G 1/00 20060101AFI20151029BHJP
   A01G 9/02 20060101ALI20151029BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   A01G1/00 301C
   A01G9/02 D
   A01G9/02 103W
   A01G7/00 601Z
   A01G7/00 602A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-68226(P2013-68226)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-138577(P2014-138577A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2013年11月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-276647(P2012-276647)
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】西部 洋晴
(72)【発明者】
【氏名】天保 美咲
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/085439(WO,A1)
【文献】 特開平07−107862(JP,A)
【文献】 特開2004−041095(JP,A)
【文献】 特表2002−541868(JP,A)
【文献】 特開2010−213599(JP,A)
【文献】 特表2008−504042(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0199241(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0289839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 1/00
A01G 7/00
A01G 9/00 − 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に植物が植えられる植物生育基盤と、この植物生育基盤の他の片面に沿う通気層を形成した通気層形成部材とを有し、前記植物生育基盤と前記通気層との間に通気性部材を介在させ、前記植物生育基盤を複数の区画に分けて各区画毎に植物生育基盤材を支持する部材を設け、前記植物生育基盤内に、前記植物生育基盤を複数の区画に分けて各区画毎に植物生育基盤材を支持する部材として、通水可能な区画内土壌支持材を介在させ、前記植物生育基盤および通気層に渡って外周を囲む外周フレームを設け、前記通気層形成部材は、前記外周フレームにおける前記通気層の厚さの部分と、前記外周フレームの前記植物生育基盤と反対側の開口部分を覆う裏面板とでなる薄箱状とした壁面緑化大気浄化装置。
【請求項2】
片面に植物が植えられる植物生育基盤と、この植物生育基盤の他の片面に沿う通気層を形成した通気層形成部材とを有し、前記植物生育基盤と前記通気層との間に通気性部材を介在させ、前記植物生育基盤を複数の区画に分けて各区画毎に植物生育基盤材を支持する部材を設け、前記通気層形成部材に、隣合う壁面緑化大気浄化装置の通気層と連通させる連通口を設けた壁面緑化大気浄化装置。
【請求項3】
請求項に記載の壁面緑化大気浄化装置において、前記植物生育基盤内に、前記植物生育基盤を複数の区画に分けて各区画毎に植物生育基盤材を支持する部材として、通水可能な区画内土壌支持材を介在させた壁面緑化大気浄化装置。
【請求項4】
請求項に記載の壁面緑化大気浄化装置において、前記植物生育基盤および通気層に渡って外周を囲む外周フレームを設け、前記通気層形成部材は、前記外周フレームにおける前記通気層の厚さの部分と、前記外周フレームの前記植物生育基盤と反対側の開口部分を覆う裏面板とでなる薄箱状とした壁面緑化大気浄化装置。
【請求項5】
請求項に記載の壁面緑化大気浄化装置において、前記植物生育基盤を複数の区画に分けて各区画毎に植物生育基盤材を支持する部材として、個々の区画の植物生育基盤部分の外周を囲む個別フレームを設け、これら各植物生育基盤部分と前記個別フレームとで緑化ユニットを構成する壁面緑化大気浄化装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の壁面緑化大気浄化装置において、前記通気層内に被浄化空気を送り込むファンを設けた壁面緑化大気浄化装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の壁面緑化大気浄化装置を、互いに端面で接して複数並べて設け、複数の前記壁面緑化大気浄化装置の前記通気層へ被浄化空気を送り込むファンを設けた壁面緑化大気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、壁面を緑化する機能と大気を清浄化する機能とを備えた壁面緑化大気浄化装置、およびこれを用いたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
壁面緑化大気浄化装置は、立面となる壁面で緑化および大気の清浄を行うため、広い床面積を取らずに効率良く緑化および大気の清浄化を行える利点がある。従来、この種の壁面緑化大気浄化装置では、前面側に植物が植えられる複数の箱を互いに隣合うように配置することで壁面緑化を図り、ファンによって吸引される被浄化空気を、ダクトを介して前記各箱の背面へ送り込む構成とされている。送り込まれた被浄化空気は、各箱内を満たす土壌層等の植物生育基盤を通過することで浄化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5001148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来例の構成では、以下のような問題点が有る。
・緑化部となる各箱に被浄化空気を送り込むために多数のダクトが必要となる。
・ダクトから排出される被浄化空気を箱内に均等に押し込むために、箱の背面側に分散用の背面パネル等が別途必要である。
・ダクトが箱から露出していて経年劣化し、ダクトのメンテナンスが必要になる。
・ダクトの配管スペースが緑化部となる箱よりも大きくなる場合があり、壁面に密接して設置できない。
【0005】
この発明の目的は、被浄化空気を送り込むためのダクトを少なくし、または無くすことができ、壁面に対して大きく突出せずに設置できる壁面緑化大気浄化装置、およびこれを用いたシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の壁面緑化大気浄化装置は、片面に植物が植えられる植物生育基盤と、この植物生育基盤の他の片面に沿う通気層を形成した通気層形成部材とを有し、前記植物生育基盤と前記通気層との間に通気性部材を介在させ、前記植物生育基盤を複数の区画に分けて各区画毎に植物生育基盤材を支持する部材を設けたことを基本構成とする。
【0007】
この構成によると、植物生育基盤に沿った通気層を形成する通気層形成部材を設け、通気層と植物生育基盤とを通気性部材で仕切ったため、被浄化空気を送り込むためのダクトを少なくし、または無くすことができる。前記通気層内で被浄化空気が植物生育基盤の背面全体に分散するため、背面側に分散用の別部材のパネル等を設けることも不要となる。通気層は植物生育基盤の背面の全体に渡って設けられるため、薄くても十分な通気が可能であり、通気層を設けても、壁面緑化大気浄化装置の全体の厚さが、あまり厚くならない。このように通気層が薄くでき、またダクトの配管スペースを背面に大きく取ることが不要なため、壁面から大きく突出せずに設置することができる。通気層への被浄化空気の送りを、通気層の端面に連通させたダクトから行うようにするか、またはこの壁面緑化大気浄化装置内に装備したファンから通気層へ直接に送るようにした場合は、壁面に密着してこの壁面緑化大気浄化装置が設置でき、壁面からの突出幅をより一層小さくできる。また、前記植物生育基盤を複数の区画に分けて各区画毎に植物生育基盤材を支持する部材を設けたため、土壌等の植物生育基盤材をその占有空間に偏りなく均等に分散させることができる。
【0008】
この発明において、前記植物生育基盤内に、前記植物生育基盤を複数の区画に分けて各区画毎に植物生育基盤材を支持する部材として、通水可能な区画内土壌支持材を介在させても良い。区画内土壌支持材が通水可能な部材であると、区画を超えて灌水を行き渡らせることができるため、灌水が容易になる。
【0009】
このように区画内土壌支持材を設ける場合に、前記植物生育基盤および通気層に渡って外周を囲む外周フレームを設け、前記通気層形成部材は、前記外周フレームにおける前記通気層の厚さの部分と、前記外周フレームの前記植物生育基盤と反対側の開口部分を覆う裏面板とでなる薄箱状としても良い。
通気層形成部材を薄箱状とすることで、コンパクトで、かつ複雑にダクトが並ぶことのない整然とした形状となる。
【0010】
この発明において、前記植物生育基盤を複数の区画に分けて各区画毎に植物生育基盤材を支持する部材として、個々の区画の植物生育基盤部分の外周を囲む個別フレームを設け、これら各植物生育基盤部分と前記個別フレームとで緑化ユニットを構成しても良い。
壁面緑化システムの多くは、例えば300〜500mm角のユニットを連結するものであり、そのユニット一つ毎に通気層形成部材を設けるのでは、施工面,コスト面で効率が悪い。しかし、この発明では一つの通気層形成部材に対して複数の緑化ユニットを並べ、通気層形成部材を複数の緑化ユニットに共用させるため、施工面,コスト面で効率の良いものとなる。また、上記のような緑化ユニットを並べる構成とすることで、一般に市販されている緑化ユニットを、この壁面緑化大気浄化装置に利用することが容易となり、より一層の低コスト化が図れる。
【0011】
この発明の他の壁面緑化大気浄化装置は、前記基本構成において、前記通気層形成部材に、隣合う壁面緑化大気浄化装置の通気層と連通させる連通口を設ける。
この連通口を設けることで、複数の壁面緑化大気浄化装置を、ダクトを用いずに前記連通口で連通させることができる。このため、広い面積に渡って壁面緑化大気浄化装置を配置する場合に、隣合う壁面緑化大気浄化装置を互いに接して配置でき、その場合にも壁面緑化大気浄化装置の背面等に装置の相互間を接続するダクトが不要となる。
【0012】
この発明において、前記通気層内に被浄化空気を送り込むファンを設けても良い。
この構成の場合、ファンによって吸引された被浄化空気は通気層内に直接に送り込まれるので、ダクトは全く不要となる。
【0013】
この発明の壁面緑化大気浄化装置システムは、この発明の壁面緑化大気浄化装置を、互いに端面で接して複数並べて設け、複数の前記壁面緑化大気浄化装置の前記通気層へ被浄化空気を送り込むファンを設けたものである。
この構成によると、複数の壁面緑化大気浄化装置が並ぶことで、より広い壁面緑化が行え、また大気浄化の能力が増大する。壁面緑化大気浄化装置を複数並べても、各壁面緑化大気浄化装置が植物生育基盤の背面に沿う通気層を有しているため、被浄化空気を植物生育基盤へ送り込むためのダクトを少なくし、または無くすことができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の壁面緑化大気浄化装置は、片面に植物が植えられる植物生育基盤と、この植物生育基盤の他の片面に沿う通気層を形成した通気層形成部材とを有し、前記植物生育基盤と前記通気層との間に通気性部材を介在させ、前記植物生育基盤を複数の区画に分けて各区画毎に植物生育基盤材を支持する部材を設けた基本構成を有するため、被浄化空気を送り込むためのダクトを少なくし、または無くすことができ、壁面に対して大きく突出せずに設置できる。また、前記植物生育基盤内に、前記植物生育基盤を複数の区画に分けて各区画毎に植物生育基盤材を支持する部材として、通水可能な区画内土壌支持材を介在させ、さらに前記植物生育基盤および通気層に渡って外周を囲む外周フレームを設け、前記通気層形成部材は、前記外周フレームにおける前記通気層の厚さの部分と、前記外周フレームの前記植物生育基盤と反対側の開口部分を覆う裏面板とでなる薄箱状としたたため、区画を超えて灌水を行き渡らせることができ、灌水が容易になり、またコンパクトで、かつ複雑にダクトが並ぶことのない整然とした形状となる
この発明の他の壁面緑化大気浄化装置は、上記基本構成において、前記通気層形成部材に、隣合う壁面緑化大気浄化装置の通気層と連通させる連通口を設けたため、複数の壁面緑化大気浄化装置を、ダクトを用いずに前記連通口で連通させることができる。このため、広い面積に渡って壁面緑化大気浄化装置を配置する場合に、隣合う壁面緑化大気浄化装置を互いに接して配置でき、その場合にも壁面緑化大気浄化装置の背面等に装置の相互間を接続するダクトが不要となる。
【0015】
この発明の壁面緑化大気浄化装置システムは、この発明の壁面緑化大気浄化装置を、互いに端面で接して複数並べて設け、複数の前記壁面緑化大気浄化装置の前記通気層へ被浄化空気を送り込むファンを設けたため、より広い壁面緑化が行え、大気浄化の能力も増大する。また、ダクトを少なくし、または無くすことができ、壁面に対して大きく突出せずに設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の第1の実施形態にかかる壁面緑化大気浄化装置の縦断面図である。
図2】同壁面緑化大気浄化装置の壁面への取付け状態を示す縦断面図である。
図3】同壁面緑化大気浄化装置の植物生育基盤を除いて示す縦断面図である。
図4】同壁面緑化大気浄化装置を複数並べて構成した壁面緑化大気浄化装置システムの一例を示す縦断面図である。
図5】壁面緑化大気浄化装置システムの他の例を示す正面図である。
図6】この発明の他の実施形態にかかる壁面緑化大気浄化装置の縦断面図である。
図7】(A)はこの発明のさらに他の実施形態にかかる壁面緑化大気浄化装置の縦断面図、(B)はその正面図である。
図8】(A)はこの発明のさらに他の実施形態にかかる壁面緑化大気浄化装置の縦断面図、(B)はその正面図である。
図9】(A)はこの発明のさらに他の実施形態にかかる壁面緑化大気浄化装置の縦断面図、(B)はその正面図である。
図10】この発明のさらに他の実施形態に係る壁面緑化大気浄化装置の概略斜視図である。
図11】同壁面緑化大気浄化装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図3と共に説明する。この壁面緑化大気浄化装置1は、図1に縦断面図で示すように、片面に植物20が植えられる土壌層などの植物生育基盤2と、この植物生育基盤2の他の片面に沿う通気層3を形成した通気層形成部材4とを有する壁パネル状である。植物生育基盤2の前記片面側が緑化部分となる。植物生育基盤2と通気層3との間には通気性部材の一種であるメッシュ材5が介在させられる。植物生育基盤2の植物20が植えられる片面も、別のメッシュ材15で覆われる。植物生育基盤2内には、この植物生育基盤2を複数の区画に分けて区画内の土壌の荷重を支持する通水可能な区画内土壌支持材6が介在させられる。前記区画内土壌支持材6は例えばメッシュ材からなる。この区画内土壌支持材6を介在させることにより、植物生育基盤2を構成する土壌を、植物生育基盤2の占有空間に偏りなく均等に分散させることができる。植物生育基盤2を構成する土壌としては、例えば軽量土壌が用いられるが、このほかセラミックなどを用いても良い。前記メッシュ材5,15、および区画内土壌支持材6は、例えば、メッキ加工したワイヤーを縦横に編んだワイヤーメッシュ等からなる。
【0018】
なお、植物生育基盤2に用いる植物生育基盤材は、自然土壌の他に、バーク堆肥、ピートモス、ココイアダスト等の有機物系土壌改良材、或いはパーライト、バーミキューライト等の無機系土壌改良材等の様々な一般に流通する資材を適宜組み合わせた層としても良い。また、植物生育基盤2は、土壌の他に通気性を有するスポンジ状やフェルト状材であっても良い。
【0019】
植物生育基盤2および通気層3に渡る外周は、方形の外周フレーム7で囲まれる。前記通気層形成部材4は、外周フレーム7における通気層3の厚さの部分7aと、外周フレーム7の植物生育基盤2とは反対側の開口部分を覆う裏面板8とでなる薄箱状とされている。通気層3は、装置外に設置されるファン9とダクト10を介して連通させられる。これにより、装置外の被浄化空気がファン9により吸引されダクト10を経て通気層3内へ送り込まれる。送り込まれた被浄化空気は植物生育基盤2を通過することで浄化される。ダクト10は、図示の例では通気層3に裏面で連結させているが、通気層3の側端面や上下面等で連通させても良い。
【0020】
この壁面緑化大気浄化装置1の大きさの一例を説明する。図3は土壌を除いた状態を示す。全体の厚さ(奥行き)Dは、200mm、通気層3の厚さは50mmであり、高さHは、2250mmである。幅(図示せず)は、例えば、建物のモジュールの1/2の整数倍であり、445mm〜1820mmである。なお、この寸法例は一例であり、任意に設計すれば良い。
【0021】
この壁面緑化大気浄化装置1は、図2に縦断面図で示すように、植物生育基盤2の植物20が植えられた片面側が前面となるように、建物の壁面21に沿って配置され、支持部材22を介して壁面21に取付けられる。このように取付けることで、植物生育基盤2の片面に植えられる植物20により壁面21の緑化が図られる。
【0022】
この構成の壁面緑化大気浄化装置1によると、このように、片面に植物20が植えられる植物生育基盤2と、この植物生育基盤2の他の片面に沿う通気層3を形成した通気層形成部材4とを有する壁パネル状であり、植物生育基盤2と通気層3との間にメッシュ材5を介在させたため、通気層3を1本のダクト10で装置外のファン9に連通させるだけで、ファン9によって吸引される被浄化空気を通気層3内に導入し、これを植物生育基盤2の全域に行き渡らせることができる。これにより、被浄化空気を送り込むためのダクト10を最小限にできることから、ダクト10の配管スペースを極力少なくでき、建物の壁面21に略接して壁面緑化大気浄化装置1を設置でき、またダクト10のメンテナンも殆ど必要なくなる。ダクト10をこの壁面緑化大気浄化装置1の側端面で通気層3と連通するようにした場合は、背面を建物の壁面21に密接させて設置することも可能となる。
【0023】
図4は、この発明の他の実施形態の縦断面図を示す。この実施形態では、前記壁面緑化大気浄化装置1を、互いに端面で接するように複数並べて設けることで、壁面緑化大気浄化装置システム11を構成している。ここでは、2つの壁面緑化大気浄化装置1を縦に並べて設けている。上下の壁面緑化大気浄化装置1,1が互いに接する端面となる各外周フレーム7には、互いの通気層3を連通させる連通口12が設けられる。装置外に設置されるファン9は、1本のダクト10を介して一方の壁面緑化大気浄化装置1(ここでは上側の壁面緑化大気浄化装置1)の通気層3に連通させられる。これにより、ファン9の吸引した被浄化空気はダクト10から一方の壁面緑化大気浄化装置1の通気層3内へ、さらには前記連通口12を経て他方の壁面緑化大気浄化装置1の通気層3内へと送り込まれる。各壁面緑化大気浄化装置1による作用効果は、図1に示した実施形態の場合と同様である。
【0024】
このように、壁面緑化大気浄化装置システム11を構成することにより、同一規格の壁面緑化大気浄化装置1を複数並べることで、1つの壁面緑化大気浄化装置1が担う壁面面積の数倍の壁面の緑化と大気浄化とが可能となる。
【0025】
図5は、この発明のさらに他の実施形態の正面図を示す。この実施形態では、植物生育基盤2を縦横の区画内土壌支持材6で9つの区画に区分した1つの壁面緑化大気浄化装置1と、植物生育基盤2を区画内土壌支持材6で3つの区画に区分した他の1つの壁面緑化大気浄化装置1とを横並びに設置している。個々の壁面緑化大気浄化装置1では、各区画は裏面の通気層3で連通している。
2つの壁面緑化大気浄化装置1,1は、互いの隣接面に図4の例と同様な連通口12(図5には図示せず)が設けられているが、その境界が縦長の仕切板13で仕切られることで、通気層3が互いに遮断されている。この場合、各壁面緑化大気浄化装置1ごとの通気層3が、個別のダクト10を介して装置外のファン9に連通させてある。各壁面緑化大気浄化装置1では、それらの通気層3を経て植物生育基盤2の全区画に被浄化空気が行き渡る。各壁面緑化大気浄化装置1による作用効果は、図1に示した実施形態の場合と同様である。
【0026】
この実施形態においても、隣合う2つの壁面緑化大気浄化装置1,1の通気層3を、図4の実施形態のように連通口12で連通させることで、1つの壁面緑化大気浄化装置システム11を構成しても良い。このように、通気層3を連続させることで、上下左右のどちらにでも通気させることができ、また仕切板13によって制限することもできる。
【0027】
図6は、この発明のさらに他の実施形態の縦断面図を示す。この実施形態では、図1に示す壁面緑化大気浄化装置1において、植物生育基盤2の区画内土壌支持材6で複数に分けられた区画のうち、一部の区画を土壌の充填されない空区画14としたものである。空区画14における通気層3との仕切り材となるメッシュ材5の部分には密閉板16が設けられ、これにより通気層3内に導入された被浄化空気がメッシュ材5から空区画14を経て外部に洩れないようにされる。このように、植物生育基盤2となる区画の一部を空区画14とすることにより、緑化部の一部を非緑化部とすることができ、例えば緑化部と非緑化部の組み合わせにより、所望のモザイク模様の施された緑化壁面とすることができる。
なお、空区画14内の上端付近に位置して、区画内土壌支持材6の下面に対向する水受け〈図示せず〉を設けても良い。
【0028】
図7(A),(B)は、この発明のさらに他の実施形態の縦断面図および正面図を示す。この実施形態では、図1に示す壁面緑化大気浄化装置1において、植物生育基盤2となる複数区画のうちの一部の区画を図6の実施形態のように空区画14とし、通気層3内に被浄化空気を送り込むファン9を前記空区画14内に設けている。この空区画14内には、ファン9の他に、このファン9を制御する電源制御盤17が設けられる。また、ここでは、植物生育基盤2の上下の区画のうち、下側の区画がファン9および電源制御盤17の設置される空区画14とされているので、灌水した水が植物生育基盤2を通って空区画14に滴下してくるのを受ける水受け部18が空区画14の上部側に設けられている。
【0029】
この実施形態の場合、ファン9によって吸引された被浄空気は通気層3内に直接に送り込まれるので、図1の実施形態のようなダクト10は全く不要となる。その他の作用効果は、図1の実施形態の場合と同様である。
【0030】
図8(A),(B)は、この発明のさらに他の実施形態の縦断面図および正面図を示す。この実施形態では、図7に示す壁面緑化大気浄化装置1において、区画内土壌支持材6で複数に分けられる植物生育基盤2の区画が、上下に4段、左右に3段の合計12区画とされ、それらの区画のうち最下段の3つの区画がそれぞれファン9を設けた空区画14とされている。各空区画14内のファン9は、それぞれその上に縦に並ぶ3区画分の植物生育基盤2に対応する通気層3内に被浄化空気を送り込むようにされる。すなわち、植物生育基盤2に沿って設けられる通気層3は、縦に並ぶ3区画分を1つのエリアとして3つのエリアに仕切り板(図示せず)等で区分けされている。
【0031】
なお、通気層3の厚み寸法を50mmとすると、通気層3は、1つのファン9に対して10m程度までの緑化面積(植物生育基盤2の面積)を負担できるので、上記した縦に並ぶ3区画の合計面積が10m 程度であれば十分に対応できる。すなわち、ファン9の規模によって任意の緑化面積を負担できるので、その任意の緑化面積以内であれば対応できる。各空区画14のうち中央の空区画14には、3つのファン9の全てを制御する電源制御盤17が設けられる。また、各空区画14の上部側には水受け部18がそれぞれ設けられる。その他の構成および作用効果は、図7の実施形態の場合と同様である。
【0032】
図9(A),(B)は、この発明のさらに他の実施形態の縦断面図および正面図を示す。この実施形態では、図7に示す壁面緑化大気浄化装置1において、区画内土壌支持材6で複数に分けられる植物生育基盤2の区画が、上下に3段、左右に3段の合計9区画とされ、それらの区画のうち中央の1区画がファン9を設けた空区画14とされている。空区画14内のファン9は、周囲に並ぶ8区画分の植物生育基盤2に対応する通気層3内に被浄化空気を送り込むようにされる。同じ空区画14内には、ファン9を制御する電源制御盤17と、水受け部18とが設けられる。その他の構成および作用効果は、図7の実施形態の場合と同様である。
【0033】
図10図11は、この発明のさらに他の実施形態に係る壁面緑化大気浄化装置を示す。この例は、一つの通気層形成部材4Aの前面に複数の緑化ユニット2Aを上下左右に並べて構成される。各緑化ユニット2Aは、前後が開口した箱状の個別フレーム31内に土壌等の植物生育基盤材を充填したものである。すなわち、この例は、植物生育基盤2を複数の区画に分けて各区画毎に植物生育基盤材を支持する部材として、個々の区画の植物生育基盤部分2aの外周を囲む個別フレーム31を設けたものである。個別フレーム31には、通気層形成部材4Aの通気層3と植物生育基盤2との間に介在するメッシュ材5、および植物を植える面のメッシュ材15が両面にそれぞれ設けられている。緑化ユニット2Aは、密に並べても良く、また隙間を介して並べても良い。隙間を介して並べた場合、隣合う緑化ユニット2Aの間の隙間を塞ぐスペーサ33を設けても良い。緑化ユニット2Aの寸法例を示すと、1辺が300〜500mmの正方形である。
【0034】
通気層形成部材4Aは、この例では、植物生育基盤2の外周を囲む部分はなく、通気層3のみを形成する薄箱状の部材である。通気層形成部材4Aは、前面が開放され、背面にダクト10が、通気層3と連通状態に接続される。通気層形成部材4Aは、例えば鉄骨腕木32を介して建物の壁面等に設置される。
なお、緑化ユニット2Aは、この例では上下左右に並べているが、左右にのみ複数並べて設けても良く、また上下にのみ複数並べても良い。この実施形態において、特に説明した事項の他は、第1の実施形態と同様である。
【0035】
この構成の場合のように、植物生育基盤2に一般的な緑化ユニット2Aを用いることができ、また施工面、コスト面で優れたものとなる。壁面緑化システムの多くは、例えば300〜500mm角のユニットを連結するものであり、そのユニット一つ毎に通気層形成部材を設けるのでは、施工面,コスト面で効率が悪い。しかし、この実施形態では、一つの通気層形成部材4Aに対して複数の緑化ユニット2Aを並べ、通気層形成部材4Aを複数の緑化ユニット2Aに共用させるため、施工面,コスト面で効率の良いものとなる。また、上記のような緑化ユニット2Aを並べる構成とすることで、一般に市販されている緑化ユニットを、この壁面緑化大気浄化装置に利用することが容易となり、より一層の低コスト化が図れる。
【0036】
なお、図10図11の構成の壁面緑化大気浄化装置を、図4図9の各例と同様に連結して壁面緑化大気浄化システムを構成してもよい。
【0037】
なお、前記各実施形態では、植物生育基盤2の前面をメッシュ材15で覆う構成としたが、メッシュ材15の代わりに、植物生育基盤2の前面を壁面緑化前面パネル(図示せず)で覆っても良い。壁面緑化前面パネルは、植物が出る穴が予め開けられたものであっても良く、または、外周の一部に切れ目を入れることにより形成された突片を、外周のうちの切れ目の入っていない箇所で折り曲げることで、植物が出る穴を開けるものであっても良い。
【符号の説明】
【0038】
1…壁面緑化大気浄化装置
2…植物生育基盤
2A…緑化ユニット
2a…植物生育基盤部分
3…通気層
4…通気層形成部材
4A…通気層形成部材
5…メッシュ材(通気性部材)
6…区画内土壌支持材
7…外周フレーム
8…裏面板
9…ファン
10…ダクト
11…壁面緑化大気浄化装置システム
12…連通口
20…植物
31…個別フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11