特許第5816259号(P5816259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5816259腫瘍治療用の新規なpan−CDK阻害剤の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816259
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】腫瘍治療用の新規なpan−CDK阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/505 20060101AFI20151029BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20151029BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20151029BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20151029BHJP
   C07D 239/47 20060101ALN20151029BHJP
【FI】
   A61K31/505
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P43/00 111
   !C07D239/47 Z
【請求項の数】16
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2013-501789(P2013-501789)
(86)(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公表番号】特表2013-523680(P2013-523680A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】EP2011054733
(87)【国際公開番号】WO2011120922
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2014年3月27日
(31)【優先権主張番号】102010014426.6
(32)【優先日】2010年4月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512137348
【氏名又は名称】バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ・リュッキング
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト・ジーマイスター
(72)【発明者】
【氏名】アンツェ・マルグレート・ヴェングナー
【審査官】 牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/046035(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/037800(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/140957(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/071455(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第04029650(DE,A1)
【文献】 国際公開第99/019305(WO,A1)
【文献】 国際公開第01/014375(WO,A1)
【文献】 国際公開第02/004429(WO,A1)
【文献】 国際公開第00/039101(WO,A1)
【文献】 国際公開第02/096888(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00− 31/80
A61P 35/00− 35/04
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
[式中、
Xは−O−または−NH−を表し、
はメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル基を表し、
およびRは、相互に独立して、水素、メチルまたはエチル基を表し、および
はC−C−アルキル基またはC−C−シクロアルキル環を表す]
の化合物またはその生理学的に許容される塩またはジアステレオマーを含む、腫瘍を治療するための医薬組成物。
【請求項2】
一般式(I)にて、
Xが−O−または−NH−を表し、
がメチル基を表し、
がメチル基を表し、
が水素またはメチル基を表し、および
がメチルまたはエチル基を表すか、またはシクロプロピル環を表す、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
− (RS)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド
− (RS)−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミド
− (RS)−S−(4−{[4−{[(R)−2−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミド
− (RS)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド
− (RS)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(R)−2−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド
− (RS)−S−エチル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド
− (RS)−S−エチル−S−(4−{[4−{[(R)−2−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド
− (RS)−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミド
− (RS)−S−(4−{[4−{[(1R)−2−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミド
またはその生理学的に許容される塩またはジアステレオマーを含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
腫瘍が、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、悪性黒色腫および他の皮膚腫瘍、小細胞気管支癌、非小細胞気管支癌、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、白血病またはリンパ腫である、請求項1ないし3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
腫瘍が、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、小細胞気管支癌、または子宮頸癌である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
(RS)−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミドまたはその生理学的に許容される塩またはジアステレオマーを含む、多剤耐性の子宮頸癌、結腸直腸、小細胞気管支癌、乳癌、およびシスプラチン耐性の卵巣癌を治療するための医薬組成物。
【請求項7】
(RS)−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミドまたはその生理学的に許容される塩またはジアステレオマーを含む、腫瘍を治療するための医薬組成物。
【請求項8】
(RS)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミドを含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項9】
(R)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミドを含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項10】
(S)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミドを含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項11】
(RS)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミドまたはその生理学的に許容される塩またはジアステレオマーを含む、腫瘍を治療するための医薬組成物。
【請求項12】
(R)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミドまたはその生理学的に許容される塩またはジアステレオマーを含む、腫瘍を治療するための医薬組成物。
【請求項13】
(S)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミドまたはその生理学的に許容される塩またはジアステレオマーを含む、腫瘍を治療するための医薬組成物。
【請求項14】
(RS)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミドまたはその生理学的に許容される塩またはジアステレオマーを含む、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、悪性黒色腫および他の皮膚腫瘍、小細胞気管支癌、非小細胞気管支癌、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、白血病またはリンパ腫を治療するための医薬組成物。
【請求項15】
(R)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミドまたはその生理学的に許容される塩またはジアステレオマーを含む、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、悪性黒色腫および他の皮膚腫瘍、小細胞気管支癌、非小細胞気管支癌、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、白血病またはリンパ腫を治療するための医薬組成物。
【請求項16】
(S)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミドまたはその生理学的に許容される塩またはジアステレオマーを含む、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、悪性黒色腫および他の皮膚腫瘍、小細胞気管支癌、非小細胞気管支癌、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、白血病またはリンパ腫を治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は腫瘍治療用の新規なpan−CDK阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
新規なpan−CDK阻害剤はスルホンアミド置換のアニリノピリミジン誘導体より選択される。
【0003】
新規なpan−CDK阻害剤およびその製造方法がPCT出願のPCT/EP2009/007247に記載されており、本願にて言及されているその開示は出典を明示することにより本願明細書の一部とされる。
【0004】
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は細胞周期の調節にて重要な役割を果たしている一連の酵素であるため、該酵素は小型阻害分子を開発するための特に関心のある標的である。CDKの選択的阻害剤は癌または細胞増殖の障害により惹起される他の障害を治療するのに使用され得る。
【0005】
ピリミジンおよびアナログが、活性化合物として、例えば、2−アニリノピリミジン(DE4029650)が殺真菌剤として、または置換ピリミジン誘導体(WO99/19305)が神経学的障害または神経変性障害を治療するものとして既に記載されている。高多様性のピリミジン誘導体、例えば2-アミノ-4-置換のピリミジン(WO01/14375)、プリン(WO99/02162)、5-シアノピリミジン(WO02/04429)、アニリノピリミジン(WO00/12486)および2-ヒドロキシ-3-N,N-ジメチルアミノプロポキシピリミジン(WO00/39101)がCDK阻害剤として記載されている。
【0006】
WO02/096888およびWO03/076437は、特に、CDKに関して阻害活性を有するピリミジン誘導体を開示する。
【0007】
フェニルスルホンアミド基を含有する化合物は、ヒトカルボアンヒドラーゼ(特に、カルボアンヒドラーゼ−2)として知られており、とりわけ緑内障を治療するための利尿剤として使用される。スルホンアミドの窒素原子および酸素原子が水素結合を介してカルボアンヒドラーゼ−2の活性中心にあるZn2+イオンおよびアミノ酸Thr199に結合し、そうしてその酵素機能を遮断する(A. Casini、F. Abbate、A. Scozzafava、C.T. Supuran、Bioorganic. Med. Chem. Lett. 2003, 1, 2759)。フェニルスルホンアミド基を含有するCDK阻害剤の臨床的使用は、カルボアンヒドラーゼを阻害し、副作用スペクトルをもたらす可能性があるため、制限され得る。
【0008】
活性なスルホキシイミン化合物の例が、殺真菌剤としてのスルホンイミドイル修飾トリアゾール(H. Kawanishi、H. Morimoto、T. Nakano、T. Watanabe、K. Oda、K. Tsujihara、Heterocycles 1998, 49, 181)または除草剤および農薬としてのアリールアルキルスルホキシイミン(Shell International Research, Ger. P. 2129678)である。
【0009】
WO2005/037800はサイクリン依存性キナーゼの阻害剤として有効なスルホキシイミン置換のアニリノピリミジン誘導体を開示する。例示として、ピリミジンの5位が置換されていないか、またはハロゲンで、特に臭素で置換されている構造式が挙げられている。具体的に開示されている構造式はいずれも5−トリフルオロメチル置換基を有しなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明の目的は、この従来技術をベースとして、CDKを強く阻害するだけでなく、腫瘍増殖を効果的に阻害する化合物を提供することである。強力なCDK阻害は、腫瘍を効果的に阻害するための必須条件であるが、十分な前提条件ではない。腫瘍の阻害には、構造上のさらなる特性、例えば腫瘍細胞内に浸透する能力が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この度、一般式(I):
【化1】
[式中、
Xは−O−または−NH−を表し、
はメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル基を表し、
およびRは、相互に独立して、水素、メチルまたはエチル基を表し、および
はC−C−アルキル基またはC−C−シクロアルキル環を表す]
で示される化合物およびその生理学的に許容される塩、ジアステレオマーおよびエナンチオマーが、CDKを強力に阻害するだけでなく、腫瘍増殖を特に効果的に阻害することが見出された。
【0012】
Xが−O−を表す化合物は、簡単には、式(Ia):
【化2】
で示される。
【0013】
Xが−NH−を表す化合物は、簡単には、式(Ib):
【化3】
で示される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願は、以下の定義に基づく:
【0015】
−C−アルキル
−C−アルキル基は、各場合において、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチルまたはヘキシル基などの直鎖または分岐したアルキル基として定義される。
【0016】
−C−シクロアルキル
−C−シクロアルキル環はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチル環として定義される。
【0017】
一般式(I)において、Xは−O−または−NH−を表してもよい。
【0018】
好ましくは、Xは−O−を表す。
【0019】
一般式(I)において、Rはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル基を表してもよい。
【0020】
好ましくは、Rはメチル基を表す。
【0021】
一般式(I)において、RおよびRは、相互に独立して、水素、メチルまたはエチル基を表してもよい。
【0022】
好ましくは、RおよびRは、相互に独立して、水素またはメチル基を表してもよい。
【0023】
特に好ましくは、Rはメチル基を表し、Rは水素またはメチル基を表す。
【0024】
一般式(I)において、RはC−C−アルキル基またはC−C−シクロアルキル環を表す。
【0025】
好ましくは、Rはメチルまたはエチル基を表すか、またはシクロプロピル環を表す。
【0026】
一般式(I)で示される好ましい下位群の化合物は、
Xが−O−または−NH−を表し、
がメチル基を表し、
がメチル基を表し、
が水素またはメチル基を表し、
がメチルまたはエチル基を表すか、またはシクロプロピル環を表す。
化合物およびその生理学的に許容される塩、ジアステレオマーおよびエナンチオマーである。
【0027】
以下の個々の化合物およびそのエナンチオマー、ジアステレオマーおよび生理学的に許容される塩を本願発明に従って使用することが最も好ましい:
−(RS)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド、
−(RS)−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミド、
−(RS)−S−(4−{[4−{[(R)−2−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミド、
−(RS)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド、
−(RS)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(R)−2−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド、
−(RS)−S−エチル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド、
−(RS)−S−エチル−S−(4−{[4−{[(R)−2−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド、
−(RS)−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミド、
−(RS)−S−(4−{[4−{[(1R)−2−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミド。
【0028】
本願発明はまた、該化合物の生理学的に許容される塩の使用を包含する。
【0029】
本願発明の化合物の生理学的に許容される塩として、鉱酸、カルボン酸およびスルホン酸の酸付加塩、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩が挙げられる。
【0030】
本願発明の化合物の生理学的に許容される塩はまた、一例として、好ましくは、アルカリ金属塩(例、ナトリウムおよびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウムおよびマグネシウム塩)およびアンモニアあるいは、一例として、好ましくはエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、アルギニン、リジン、エチレンジアミンおよびN−メチルピペリジンなどの1ないし16個のC原子を有する有機アミンより誘導されるアンモニウム塩などの通常の塩基の塩を包含する。
【0031】
本願発明はさらには少なくとも1つの本願発明の化合物および少なくとも1または複数のさらなる活性化合物を含む、特に腫瘍障害の治療および/または予防のための医薬を提供する。
【0032】
本願発明の化合物は全身的および/または局所的に作用しうる。この目的のために、該化合物は、例えば、経口的に、非経口的に、経肺的に、経鼻的に、舌下的に、舌側に、頬側に、直腸的に、皮膚を介して、経皮的に、接続的に、経眼的になどの、あるいは移植片またはステントとして、適当な方法にて投与され得る。
【0033】
これらの投与経路では、本願発明の化合物は適当な投与形態にて投与され得る。
【0034】
従来技術に従って作用し、本願発明の化合物を迅速に、および/または修飾された形態にて放出する投与形態であって、本願発明の化合物を結晶形態、および/または非晶質形態および/または溶解形態にて含む、例えば、錠剤(被覆されていない、または被覆された錠剤、例えば本願発明の化合物の放出を制御するのに、腸溶性、徐溶性または不溶性コーティング剤で被覆された錠剤)、口腔にて速やかに崩壊する錠剤またはフィルム/ウェハー、フィルム/凍結乾燥体、カプセル(例えば、ハードゼラチンカプセルまたはソフトゼラチンカプセル)、糖衣錠、顆粒、ペレット、散剤、エマルジョン、懸濁液、エアロジルまたは液剤が、経口投与に適する。
【0035】
非経口投与は、吸収工程を迂回して(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、髄腔内または脊椎内にて)、または吸収工程を伴って(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内にて)行われうる。非経口投与では、適当な投与形態は、とりわけ、液剤、懸濁液、エマルジョン、凍結乾燥体または滅菌散剤の形態の注射および注入製剤である。
【0036】
他の投与経路には、例えば、吸入用の医薬形態(とりわけ、散剤吸入装置、噴霧装置)、点鼻剤、点鼻液、鼻腔用スプレー;舌側に、舌下的に、または頬側に適用される錠剤、フィルム/ウェハーまたはカプセル、坐剤、耳または眼用調製物、膣用カプセル、水性懸濁液(ローション、振盪ローション)、親油性懸濁液、軟膏、クリーム、経皮性治療システム(例えば、パッチなど)、乳液、ペースト、泡沫剤、散布剤、移植片またはステントが適している。
【0037】
本願発明の化合物は上記した投与形態に変換され得る。このことは、不活性な、非毒性の医薬上許容される補助剤と混合することにより、自体公知の方法にて行われてもよい。これらの補助剤は、とりわけ、担体(例、微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例、液体ポリエチレングリコール)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例、ドデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ポリオキシスルビタン)、結合剤(例、ポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例、アルブミン)、安定化剤(例、例えばアスコルビン酸などの酸化防止剤)、着色剤(例、例えば酸化鉄などの顔料)および矯味矯臭剤を包含する。
【0038】
本願発明はさらには、本願発明の少なくとも1つの化合物と、通常、1または複数の不活性な非毒性の医薬的に適当な補助剤とを含む医薬、およびその上記した目的のための使用を提供する。
【0039】
本願発明の医薬品を得るための処方は、活性な化合物を製薬技術にて一般的に使用される賦形剤と一緒に所望の投与形態に変換することにより自体公知の方法にて行われる。
【0040】
この関連にて利用され得る補助剤は、例えば、担体物質、増量剤、崩壊剤、結合剤、保湿剤、平滑剤、吸収剤および吸着剤、希釈剤、溶媒、共溶媒、乳化剤、可溶化剤、マスキングフレーバー、着色剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、浸透圧を改変するための塩または緩衝剤である。
【0041】
この関連において、Remington's Pharmaceutical Science、第15版、Mack Publishing Company、East Pennsylvania (1980)を参酌すべきである。
【0042】
医薬処方は、
例えば、錠剤、コート錠、ピル、坐剤、カプセル、経皮システムのような固体形態、または
例えば、軟膏、クリーム、ゲル、坐剤、エマルジョンのような半固体形態、または
例えば、液剤、チンキ剤、懸濁液または乳化液のような液体形態
であってもよい。
【0043】
本願発明の関連での補助剤は、例えば、塩、糖類(単糖、二糖、三糖、オリゴ糖および/または多糖類)、蛋白、アミノ酸、ペプチド、脂肪、ワックス、油、炭化水素およびその誘導体であってもよく、その補助剤は天然起源であってもよく、あるいは合成で、または一部合成であってもよい。
【0044】
特に、錠剤、コート錠、カプセル、ピル、散剤、顆粒、トローチ、懸濁液、エマルジョンまたは液剤が経口投与に適する。
【0045】
特に、懸濁液、エマルジョン、とりわけ液剤が非経口投与に適する。
【0046】
本願発明は腫瘍障害を予防および治療するための式(I)の化合物の使用に関する。
【0047】
式(I)の化合物は、特に細胞増殖および/または細胞分裂の阻害または減少、および/またはアポトーシスの誘発のために使用され得る。
【0048】
本願発明の化合物は、特に、例えば、
−乾癬、
−ケロイドおよび他の皮膚過形成、
−良性前立腺肥大(BPH)、
−充実性腫瘍、および
−血液系腫瘍
などの過増殖性障害の治療に適する。
【0049】
本願発明に従って治療され得る充実性腫瘍は、例えば、乳房、呼吸器、脳、生殖器、胃腸管、尿生殖器、眼、肝臓、皮膚、頭頚部、甲状腺、副甲状腺、骨および結合組織の腫瘍、およびこれら腫瘍の転移癌である。
【0050】
本願発明に従って治療され得る血液学的腫瘍は、例えば、多発性骨髄腫、リンパ腫または白血病である。
【0051】
治療され得る乳房腫瘍は、例えば:
−ホルモン受容体反応が陽性である乳癌
−ホルモン受容体反応が陰性である乳癌
−Her−2陽性乳癌
−ホルモン受容体およびHer−2が陰性の乳癌
−BRCA関連の乳癌
−炎症性乳癌
である。
【0052】
治療され得る呼吸器腫瘍は、例えば、
−非小細胞気管支癌
−小細胞気管支癌
である。
【0053】
治療され得る脳の腫瘍は、例えば、
−神経膠腫
−膠芽細胞腫
−星状細胞腫
−髄膜腫
−髄芽細胞腫
である。
【0054】
治療され得る男性生殖器の腫瘍は、例えば、
−前立腺癌
−悪性精巣腫瘍
−陰茎癌
である。
【0055】
治療され得る女性生殖器の腫瘍は、例えば、
−子宮内膜癌
−子宮頸癌
−卵巣癌
−膣癌
−外陰癌
である。
【0056】
治療され得る胃腸管の腫瘍は、例えば、
−結腸直腸癌
−肛門癌
−胃癌
−膵臓癌
−食道癌
−胆嚢癌
−小腸癌
−唾液腺癌
−神経内分泌腫瘍
−消化管間質腫瘍
である。
【0057】
治療され得る尿生殖器の腫瘍は、例えば、
−膀胱癌
−腎細胞癌
−腎盂および下部尿路癌
である。
【0058】
治療され得る眼腫瘍は、例えば、
−網膜芽細胞腫
−眼内黒色腫
である。
【0059】
治療され得る肝臓の腫瘍は、例えば、
−肝細胞癌
−胆管細胞癌
である。
【0060】
治療され得る皮膚の腫瘍は、例えば、
−悪性黒色腫
−基底細胞腫
−棘細胞癌
−カポジ肉腫
−メルケル細胞癌
である。
【0061】
治療され得る頭頚部の腫瘍は、例えば、
−咽頭癌
−咽頭および口腔の癌
である。
【0062】
治療され得る肉腫は、例えば、
−軟部組織の肉腫
−骨肉腫
である。
【0063】
治療され得るリンパ腫は、例えば、
−非ホジキンリンパ腫
−ホジキンリンパ腫
−皮膚リンパ腫
−マントル細胞リンパ腫
−中枢神経系のリンパ腫
−AIDS関連リンパ腫
である。
【0064】
治療され得る白血病は、例えば、
−急性骨髄性白血病
−慢性骨髄性白血病
−急性リンパ性白血病
−慢性リンパ性白血病
−ヘアリー細胞白血病
である。
【0065】
有利には、式(I)の化合物は、乳癌、特にホルモン受容体陰性の、ホルモン受容体陽性の、またはBRCA関連の乳癌、およびまた膵臓癌、腎臓癌、悪性黒色腫および他の皮膚腫瘍、小細胞気管支癌、非小細胞気管支癌、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、白血病またはリンパ腫の治療に用いられ得る。
【0066】
式(I)の化合物は、乳癌、特にエストロゲン受容体陰性乳癌、卵巣癌、特にシスプラチン耐性卵巣癌、結腸直腸癌、小細胞気管支癌または子宮頸癌、特に多剤耐性子宮頸癌の治療に用いることができ、特に有利である。
【0067】
これらの障害は、人間にて十分に特徴付けられるが、他の哺乳動物でも生じている。
【0068】
本願発明は腫瘍の治療用医薬として本願発明の一般式(I)の化合物の使用を提供する。
【0069】
本願発明はさらには、本願発明の一般式(I)の化合物の、腫瘍治療用医薬の調製のための使用を提供する。
【0070】
本願発明はさらには、本願発明の化合物の、増殖性工程に付随する障害を治療するための使用を提供する。
【0071】
本願発明の化合物は、それ自体で、または要すれば、1または複数の他の薬理学的に活性な物質と組み合わせて、この組み合わせが望ましくない、および許容できない副作用に至らない限り、利用され得る。したがって、本願発明はさらには、本願発明の少なくとも1つの化合物と、上記した疾患の治療および/または予防のための、1または複数のさらに活性な化合物を含む医薬を提供する。
【0072】
例えば、本願発明の化合物は、癌障害の治療のための既知の抗過増殖性、細胞増殖抑制性または細胞傷害性物質と合わせられ得る。本願発明の化合物と、癌療法にて慣用的に使用される他の物質、あるいはまた放射線療法との併用が特に示される。
【0073】
例示として言及され得る適当な組み合わせの活性化合物が:
アブラキサン、アフィニトール、アルデスロイキン、アレンドロン酸、アルファフェロン、アリトレチノイン、アロプリノール、アロプリム、アロキシ、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アミホスチン、アムルビシン、アムサクリン、アナストロゾール、アンズメット、アラネスプ、アルグラビン、アルセニックトリオキシド、アロマシン、5−アザシチジン、アザチオプリン、BCGまたはタイスBCG、ベスタチン、ベータメタゾンアセテート、ベータメタゾンナトリウムホスフェート、ベキサロテン、ブレマイシンサルフェート、ブロクスウリジン、ボルテゾミブ、ブソルファン、カルシトニン、カムパス、カペシタビン、カルボプラチン、カソデックス、セフェゾン、セルモロイキン、セルビジン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロン酸、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノキソーム、デカドロン、デカドロンホスフェート、デレストゲン、デニロイキンジフチトックス、デポメドロール、デストレリン、デキスラゾキサン、ジエチルスチルベストロール、ジフルカン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドロナビノール、DW−166HC、エリガード、エリテック、エレンス、エメンド、エピルビシン、エポチン−アルファ、エポゲン、エプタプラチン、エルガミソール、エストレース、エストラジオール、エストラムスチンナトリウムホスフェート、エチニルエストラジオール、エチオール、エチドロン酸、エトポホス、エトポシド、ファドロゾール、ファルストン、フィルグラスチム、フィナステリドフリグラスチム、フロクリジン、フルコナゾール、フルダラビン、5−フルオロデオキシウリジンモノホスフェート、5−フルオルウラシル(5−FU)、フルオキシメステロン、フルタアミド、フルメスタン、ホステアビン、ホテムスチン、フルベストラン、ガンマガード、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、グレーベック、グリアデル、ゴセレリン、グラニセトロンヒドロクロリド、ヒストレリン、ヒカムチン、ヒドロコルトン、エリスロ−ヒドロキシノニルアデニン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブチウレキセタン、イダルビシン、イフォスファミド、インターフェロン−アルファ、インターフェロン−アルファ−2、インターフェロン−アルファ−2α、インターフェロン−アルファ−2β、インターフェロン−アルファ−n1、インターフェロン−アルファ−n3、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ−1α、インターロイキン−2、イントロンA、イレッサ、イリノテカン、キトリル、ラパチニブ、レンチナンサルフェート、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、ロイプロリドアセテート、レバミソール、レボ葉酸カルシウム塩、レボチロイド、レボキシル、ロムスチン、ロニダミン、マリノール、メクロレタミン、メコバラミン、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲストロールアセテート、メルファラン、メネスト、6−メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、メトビックス、ミルテホシン、ミトシクリン、ミトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、モデレナール、マイオセット、ネダプラチン、ニューラスタ、ニューメガ、ニューポジェン、ニルタアミド、ノルバデックス、NSC−631570、OCT−43、オクトレオチド、オンダンセトロンヒドロクロリド、オラプレッド、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペジアプレッド、ペガスパルガーゼ、ペガシス、ペントスタチン、ピシバニル、ピロカルピンヒドロクロリド、ピラルビシン、プリカマイシン、ポルフィメルナトリウム、プレドニムスチン、プレドニソロン、プレドニゾン、プレマリン、プロカルバジン、プロクリト、ラルチトレックスド、RDEA119、レビフ、レニウム−186エチドロネート、リツキシマブ、ロフェロン−A、ロムルチド、サラゲン、サンドスタチン、サルグラモスチン、セムスチン、シゾフィラン、ソブゾキサン、ソル−メドロール、ストレプトゾシン、ストロンチウム−89クロリド、シントロイド、タモキシフェン、タムスロシン、タソネルミン、タストラクトン、タキソテル、テセロイキン、テモドロミド、テニポシド、テストステロンプロピオネート、テストレッド、チオグアニン、チオテパ、チロトロピン、チルドロン酸、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、タスツズマブ、トレオサルファン、トレチノイン、トレキサール、トリメチルメラミン、トリメトレキセート、トリプトレリンアセテート、トリプトレリンパモエート、UFT、ウリジン、バルルビシン、ベスナリノン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビルリジン、ジネカード、ジノスタチン−スチマラマー、ゾフラン;ABI−007、アコルビフェン、アクチムン、アフィニタック、アミノプテリン、アルドキシフェン、アソプリスニル、アタメスタン、アトラセンタン、BAY43−9006(ソラフェニブ)、アバスチン、CCI−779、CDC−501、セレブレックス、セツキシマブ、クリスナトール、シプロテロンアセテート、デシタビン、DN−101、ドキソルビシン−MTC、dSLIM、ヅタステリド、エドテカリン、エフロルニチン、エクサテカン、フェンレチニド、ヒスタミンジヒドロクロリド、ヒストレリンヒドロゲルインプラント、ホルミウム−166DOTMP、イバンドロン酸、インターフェロン−ガンマ、イントロン−PEG、イクサベピロン、キーホールリンペットヘモシアニン、L−651582、ランレオチド、ラソフォキシフェン、リブラ、ラナファルニブ、ミプロキシフェン、ミノドロネート、MS−209、リポソームMTP−PE、MX−6、ナファレリン、メソルビシン、ネオバスタット、ノラトレキシド、オブリメルセン、オンコ−TCS、オシデン、パクリタキセルポリグルタメート、パミドロネートジナトリウム、PN−401、QS−21、クアゼパム、R−1549、ラロキシフェン、ランピルナス、13−シス−レチノイン酸、サトラプラチン、セオカルシトール、T−138067、テルセバ、タキソプレキシン、チモシン−アルファ−1、チアゾフリン、チピファルニブ、チラパザミン、TLK−286、トレミフェン、トランスMID−107R、バルスポドール、バプレオチド、バタラニブ、ボルテポルフィン、ベンフルニン、Z−100、ドレドロン酸およびこれらの混合物
である。
【0074】
好ましい実施態様において、本願発明の化合物は、一例としてであって、以下の一群:
アブラキサン、アミノグルテチミド、L−アスパラギナーゼ、アザチオプリン、5−アザシチジン、ブレオマイシン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、コラスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエチルスチルベストロール、2',2'−ジフルオロデオキシシチジン、ドセタキセル、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、エポチロンおよびその誘導体、エリスロ−ヒドロキシノニルアデニン、エチニルエストラジオール、エトポシド、フルダラビンホスフェート、5−フルオロdeオキシウリジン、5−フルオロデオキシウリジンモノホスフェート、5−フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシウレア、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、イダルビシン、イフォスファミド、インターフェロン、イリノテカン、ロイコボリン、ロミスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲストロールアセテート、メルファラン、6−メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、ミトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、パクリタキセル、ペントスタチン、N−ホスホノアセチルL−アスパルテート(PALA)、プリカマイシン、プレドニソロン、プレドニソン、プロカルバジン、ラロキシフェン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモシキフェン、テニポシド、テストステロンプロピオネート、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トリメチルメラミン、ウリジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビン
に含まれない、過剰増殖拮抗剤と組み合わせることができる。
【0075】
本願発明の化合物はまた、極めて有望な方法にて、抗体(例、アバスチン、リツキサン、エルビタックス、ヘルカプチン、セツキシマブ)および組換え蛋白などの生物学的治療薬と合わせることもできる。
【0076】
本願発明の化合物はまた、例えば、アバスチン、アキシチニブ、レゴラフェニブ、レセンチン、ソラフェニブまたはスニチニブなどの血管形成に拮抗する他の治療法と組み合わせて陽性作用を達成してもよい。プロテオソームの、およびmTORの阻害剤、およびアンチホルモンおよびステロイド代謝性酵素阻害剤との組み合わせが、その副作用の特性が好ましい点で特に適している。
【0077】
一般に、本願発明の化合物と、細胞増殖抑制または細胞傷害性作用を有する他の薬剤と組み合わせて、以下の目的:
・ 腫瘍の成長を鈍化させる活性、その大きさを縮小する活性、あるいは個々の活性化合物での処置と比較して完全に排除する活性の改善;
・ 単剤療法での投与量よりもより低い用量を用いる化学療法を用いる可能性;
・ 単剤投与と比べて副作用の少ないより耐性な療法の可能性;
・ 広域スペクトルの腫瘍疾患の治療の可能性;
・ 療法に対してより速い応答速度の達成;
・ 現在の標準的な療法と比べて患者の生存期間の長期化
が追求されうる。
【0078】
その上さらに、本願発明の化合物は、放射線療法および/または外科的介入と組み合わせて利用され得る。
【0079】
本願発明の化合物の調製
本願発明の化合物の調製は、PCT/EP2009/007247に包括的に記載されており、その開示は本願明細書にて言及されており、出典明示により本願明細書の一部とされる。
【0080】
調製の原理:
式(Ia)の化合物(4−O誘導体)の調製
【0081】
本願発明の化合物は、以下の工程:
a)式(IVd)の化合物を酸化して、式(IVc)のスルホキシドを得、
【化4】
)式(IVc)のスルホキシドを直接イミノ化して、式(IVa)の保護されたスルホキシイミンを得るか、または
【化5】
)式(IVc)のスルホキシドをイミノ化して、式(IVb)の保護されていないスルホキシイミンを得、その後で保護基を導入して、式(IVa)の化合物を得、
【化6】
c)式(IVa)の化合物を還元し、式(IV)の化合物を得、
【化7】
d)式(VI)のモノ保護された(PG=保護基)ジオールと反応させることで、2,4−ジクロロ−5−ヨードピリミジン(VII)の4−位に官能基を導入し、式(Va)の中間体を形成させ、
【化8】
e)5−CF中間体(V)を調製し、
【化9】
f)式(IV)および(V)の化合物をカップリングさせて、式(III)の中間体を得、
【化10】
g)保護基(PG)を除去して式(II)の化合物とし、
【化11】
h)スルホキシイミン上の保護基を除去して、式(Ia)の化合物とし、
【化12】
ここで、置換基R、R、RおよびRは一般式(I)の記載と同意義である、
により特徴付けられる方法により調製され得る。
【0082】
一般式(Ib)の化合物(4−N誘導体)の調製
【0083】
本願発明の化合物は、以下の工程:
a)式(IVd)の化合物を酸化して、式(IVc)のスルホキシドを得、
【化13】
)式(IVc)のスルホキシドを直接イミノ化して、式(IVa)の保護されたスルホキシイミンを得るか、または
【化14】
)式(IVc)のスルホキシドをイミノ化して、式(IVb)の保護されていないスルホキシイミンを得、その後で保護基を導入して、式(IVa)の化合物を得、
【化15】
c)式(IVa)の化合物を還元し、式(IV)の化合物を得、
【化16】
d)式(VIa)のアミンと反応させることで、2,4−ジクロロ−5−トリフルオロメチルピリミジン(VIIb)の4−位に官能基を導入し、式(Vb)の中間体を形成させ、
【化17】

e)式(Vb)および(IV)の化合物をカップリングさせて、式(IIb)の中間体を得、
【化18】
f)スルホキシイミン上の保護基を除去して、式(Ib)の化合物とし、
【化19】

ここで、置換基R、R、RおよびRは一般式(I)の記載と同意義である、工程により調製され得る。
【0084】
実施例1
(RS)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド
【化20】
【0085】
実施例1の調製はPCT/EP2009/007247の実施例1に従って実施される。
【0086】
ジアステレオマー混合物を分取性HPLCに付して純粋な立体異性体に分離した:
カラム:キラルパックIA 5μ 250x30mm
移動相:ヘキサン/エタノール 8:2
流速:40.0ml/分
検出器:UV 254nm
温度:室温
保持時間:10.8−13.4分;立体異性体1(=実施例1−SI−1)
13.6−18.5分;立体異性体2(=実施例1−SI−2)
【0087】
実施例2
(RS)−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミド
【化21】
【0088】
実施例2の調製はPCT/EP2009/007247の実施例2に従って実施される。
【0089】
ジアステレオマー混合物を分取性HPLCに付して純粋な立体異性体に分離した:
カラム:キラルパックIC 5μ 250x20mm
移動相:ヘキサン/エタノール 8:2
緩衝液:ヘキサン/0.1%DEA
流速:25.0ml/分
検出器:UV 280nm
温度:室温
保持時間:9.5−12.1分;立体異性体1(=実施例2−SI−1)
13.1−16.0分;立体異性体2(=実施例2−SI−2)
【0090】
実施例3
(RS)−S−(4−{[4−{[(R)−2−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル]オキシ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミド
【化22】
【0091】
実施例3の調製はPCT/EP2009/007247の実施例3に従って実施される。
【0092】
残渣をHPLCに付して精製した。この操作により31mg(0.07ミリモル;收率:14%)の生成物を得た。
【0093】
実施例4
(RS)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド
【化23】
【0094】
実施例4の調製はPCT/EP2009/007247の実施例4に従って実施される。
【0095】
ジアステレオマー混合物を分取性HPLCに付して純粋な立体異性体に分離した:
カラム:キラルパックIA 5μ 250x20mm
移動相:ヘキサン/2−プロパノール 50:50
緩衝液:ヘキサン/0.1%DEA
流速:15.0ml/分
検出器:UV 254nm
温度:室温
保持時間:5.9−6.6分;立体異性体1(=実施例4−SI−1)
7.1−8.8分;立体異性体2(=実施例4−SI−2)
【0096】
実施例5
(RS)−S−シクロプロピル−S−(4−{[4−{[(R)−2−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド
【化24】
【0097】
実施例5の調製はPCT/EP2009/007247の実施例5に従って実施される。
【0098】
ジアステレオマー混合物を分取性HPLCに付して純粋な立体異性体に分離した:
カラム:キラルパックAD−H 5μ 250x20mm
移動相:ヘキサン/2−プロパノール 60:40
緩衝液:ヘキサン/0.1%DEA
流速:20.0ml/分
検出器:UV 280nm
温度:室温
保持時間:5.1−6.3分;立体異性体1(=実施例5−SI−1)
8.0−10.8分;立体異性体2(=実施例5−SI−2)
【0099】
実施例6
(RS)−S−エチル−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル] アミノ}フェニル)スルホキシイミド
【化25】
【0100】
実施例6の調製はPCT/EP2009/007247の実施例6に従って実施される。
【0101】
ジアステレオマー混合物を分取性HPLCに付して純粋な立体異性体に分離した:
カラム:キラルパックAD−H 5μ 250x20mm
移動相:ヘキサン/2−プロパノール 60:40
緩衝液:ヘキサン/0.1%DEA
流速:20.0ml/分
検出器:UV 280nm
温度:室温
保持時間:6.2−6.8分;立体異性体1(=実施例6−SI−1)
7.2−8.9分;立体異性体2(=実施例6−SI−2)
【0102】
実施例7
(RS)−S−エチル−S−(4−{[4−{[(R)−2−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)スルホキシイミド
【化26】
【0103】
実施例7の調製はPCT/EP2009/007247の実施例7に従って実施される。
【0104】
ジアステレオマー混合物を分取性HPLCに付して純粋な立体異性体に分離した:
カラム:キラルパックAD−H 5μ 250x20mm
移動相:A:ヘキサン B:2−プロパノール
緩衝液:ヘキサン/0.1%DEA
勾配:20→40%B(20')+40%B(5')
流速:10.0ml/分
検出器:UV 280nm
温度:室温
保持時間:17.5−19.8分;立体異性体1(=実施例7−SI−1)
20.1−22.0分;立体異性体2(=実施例7−SI−2)
【0105】
実施例8
(RS)−S−(4−{[4−{[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミド
【化27】
【0106】
実施例8の調製はPCT/EP2009/007247の実施例8に従って実施される。
【0107】
ジアステレオマー混合物を分取性HPLCに付して純粋な立体異性体に分離した:
カラム:キラルパックIC 5μ 250x20mm
移動相:ヘキサン/エタノール 50:50
緩衝液:ヘキサン/0.1%DEA
流速:20.0ml/分
検出器:UV 254nm
温度:室温
保持時間:5.1−5.8分;立体異性体1(=実施例8−SI−1)
6.1−6.7分;立体異性体2(=実施例8−SI−2)
【0108】
実施例9
(RS)−S−(4−{[4−{[(1R)−2−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル]アミノ}−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イル]アミノ}フェニル)−S−メチルスルホキシイミド
【化28】
【0109】
実施例9の調製はPCT/EP2009/007247の実施例9に従って実施される。
【0110】
ジアステレオマー混合物を分取性HPLCに付して純粋な立体異性体に分離した:
カラム:キラルパックIC 5μ 250x20mm
移動相:ヘキサン/エタノール 80:20
流速:30.0ml/分
検出器:UV 254nm
温度:室温
保持時間:6.0−6.7分;立体異性体1(=実施例9−SI−1)
7.1−8.9分;立体異性体2(=実施例9−SI−2)
【0111】
実施例10
10.1 アッセイ1:CDK1/CycBキナーゼアッセイ
【0112】
バキュロウイルス感染の昆虫細胞(Sf9)より精製された組換えCDK1およびCycB−GST融合蛋白を、ProQinase GmbH, Freiburg, Germanyより購入した。キナーゼ基質として使用されるヒストンIIISはSigma社が販売している。
【0113】
CDK1/CycB(200ng/測定点)を、アッセイ緩衝液[50mM トリス/HCl pH8.0、10mM MgCl、0.1mM Naオルト−バナデート、1.0mM ジチオスレイトール、0.5μM アデノシントリホスフェート(ATP)、10μg/測定点のヒストンIIIS、0.2μCi/測定点の33P−ガンマATP、0.05%NP40、1.25%ジメチルスルホキシド]中、種々の濃度の試験物質(0μM、および0.01−100μMの範囲内)の存在下、22℃で10分間インキュベートした。EDTA溶液(250mM、pH8.0、15μl/測定点)を添加して反応を停止させた。
【0114】
各反応混合物から、15μlの混合物をP30フィルターストリップ(Wallac社製)に加え、取り込まれていない33P−ATPを、0.5%リン酸にて、各10分間で3回、該フィルターストリップを洗浄することで取り除いた。フィルターストリップを70℃で1時間乾燥させた後、該フィルターストリップをシンチレーターストリップ(Wallac社製、MeltiLex(登録商標))でカバーし、90℃で1時間加熱処理した。取り込まれた33P(基質リン酸化)の量をガンマ線測定装置(Wallac)でシンチレーション測定を行うことで決定した。決定されたデータを0%阻害(阻害剤なしでの酵素反応)および100%阻害(酵素を除くすべてのアッセイ成分)に標準化した。自社のソフトウェアを用いる4−パラメータフィットによりIC50値を決定した。
【0115】
10.2 アッセイ2:CDK2/CycEキナーゼアッセイ
【0116】
バキュロウイルス感染の昆虫細胞(Sf9)より精製された組換えCDK2およびCycE−GST融合蛋白を、ProQinase GmbH, Freiburg, Germanyより購入した。キナーゼ基質として使用されるヒストンIIISはSigma社が販売している。
【0117】
CDK2/CycE(50ng/測定点)を、アッセイ緩衝液[50mM トリス/HCl pH8.0、10mM MgCl、0.1mM Naオルト−バナデート、1.0mM ジチオスレイトール、0.5μM アデノシントリホスフェート(ATP)、10μg/測定点のヒストンIIIS、0.2μCi/測定点の33P−ガンマATP、0.05%NP40、1.25%ジメチルスルホキシド]中、種々の濃度の試験物質(0μM、および0.01−100μMの範囲内)の存在下、22℃で10分間インキュベートした。EDTA溶液(250mM、pH8.0、15μl/測定点)を添加して反応を停止させた。
【0118】
各反応混合物から、15μlの混合物をP30フィルターストリップ(Wallac社製)に加え、取り込まれていない33P−ATPを、0.5%リン酸にて、各10分間で3回、該フィルターストリップを洗浄することで取り除いた。フィルターストリップを70℃で1時間乾燥させた後、該フィルターストリップをシンチレーターストリップ(Wallac社製、MeltiLex(登録商標))でカバーし、90℃で1時間加熱処理した。取り込まれた33P(基質リン酸化)の量をガンマ線測定装置(Wallac)でシンチレーション測定を行うことで決定した。決定されたデータを0%阻害(阻害剤なしでの酵素反応)および100%阻害(酵素を除くすべてのアッセイ成分)に標準化した。自社のソフトウェアを用いる4−パラメータフィットによりIC50値を決定した。
【0119】
10.3 アッセイ3:VEGF受容体−2キナーゼアッセイ
【0120】
組換えVEGF受容体チロシンキナーゼ−2を、バキュロウイルス感染の昆虫細胞(Sf9)からのGST融合蛋白として精製した。キナーゼ基質として用いられるポリ−(Glu4Tyr)をSigma社より購入した。
【0121】
VEGF受容体チロシンキナーゼ(90ng/測定点)を、30μlのアッセイ緩衝液[40mM トリス/HCl pH5.5、10mM MgCl、1mM MnCl、3μM Naオルト−バナデート、1.0mM ジチオスレイトール、8μM アデノシントリホスフェート(ATP)、0,96μg/測定点のポリ−(Glu4Tyr)、0.2μCi/測定点の33P−ガンマATP、1.4%ジメチルスルホキシド]中、種々の濃度の試験物質(0μM、および0.001−30μMの範囲内)の存在下、22℃で10分間インキュベートした。EDTA溶液(250mM、pH8.0、15μl/測定点)を添加して反応を停止させた。
【0122】
各反応混合物から、15μlの混合物をP30フィルターストリップ(Wallac社製)に加え、取り込まれていない33P−ATPを、0.5%リン酸にて、各10分間で3回、該フィルターストリップを洗浄することで取り除いた。フィルターストリップを70℃で1時間乾燥させた後、該フィルターストリップをシンチレーターストリップ(Wallac社製、MeltiLex(登録商標))でカバーし、90℃で1時間加熱処理した。取り込まれた33P(基質リン酸化)の量をガンマ線測定装置(Wallac)でシンチレーション測定を行うことで決定した。決定されたデータを0%阻害(阻害剤なしでの酵素反応)および100%阻害(酵素を除くすべてのアッセイ成分)に標準化した。自社のソフトウェアを用いる4−パラメータフィットによりIC50値を決定した。
【0123】
10.4 アッセイ4:増殖アッセイ
【0124】
例1:増殖アッセイ
【0125】
培養されたヒト腫瘍細胞(初めにATCCより入手、HeLa−MaTuおよびHeLa−MaTu−ADR、初めにEpo GmbH、Berlin、Germanyより入手)を、細胞株の増殖速度に応じて、200μlの増殖培地(DMEM/HAMS F12、2mM L−グルタミン、10%ウシ胎仔血清)中、96ウェルプレートにて、1000〜5000細胞/測定点の密度でプレートに付した。24時間後、一のプレート(ゼロポイントプレート)では細胞をクリスタルバイオレットで染色し(下記参照)、それに対して他のプレートでは培地を新たな培地(200μl)と置き換え、そこに試験物質を種々の濃度(0μM、および0.01−30μMの範囲;溶媒、ジメチルスルホキシドの最終濃度は0.5%であった)で添加した。該細胞を試験物質の存在下で4日間インキュベートした。細胞をクリスタルバイオレットで染色することで細胞増殖を測定し:20μl/測定点の11%グルタルデヒド溶液を室温で15分間添加することで細胞を固定した。該固定細胞を水で3回洗浄した後、該プレートを室温で乾燥させた。100μl/測定点の0.1%クリスタルバイオレット溶液(酢酸を添加してpHを3に調節)を添加して細胞を染色した。染色した細胞を水で3回洗浄した後、該プレートを室温で乾燥させた。100μl/測定点の10%酢酸溶液を添加することで染料を溶解させた。595nmの波長でその消滅を測光的に測定した。細胞増殖における変化の割合を、測定された値をゼロポイントプレートの消滅値(=0%)および未処理(0μM)細胞の消滅値(=100%)に標準化させることで計算した。測定データは0%阻害(阻害剤なしでの細胞培養)および100%阻害(ゼロポイントプレート)に標準化された。自社のソフトウェアを用いる4−パラメータフィットによりIC50値を決定した。
【0126】
例示にて、表示される適応症を表す、以下の細胞株にて物質を試験した:
【0127】
【表1】
【0128】
10.5 インビボ実験
【0129】
細胞培養にて増殖した腫瘍細胞を雌および雄のNMRIヌードマウスの横腹に皮下的に移植した。腫瘍が約20mmの大きさまで成長すると同時に処理を開始した。該群の一にて腫瘍が約150mmの大きさに達すると同時に研究を終えた。
【0130】
次の試験群を用いた:
【0131】
ビヒクル群:可溶化剤 (40%PEG400/60%水)での処理
処理群:10.8で具体的に示されている処理
【0132】
該研究はヒト腫瘍実験の実施例化合物2−SI−2での処理に対する初期応答を測定するために設計された。腫瘍増殖阻害(TGI)%は、以下の式:100x[1−(処理群の腫瘍重量/ビヒクル群の腫瘍重量)]を用いて、研究の終わりに腫瘍重量(TGITW)から計算するか、またはビヒクル群が終了となる日に、以下の式:100x[1−(測定の日の処理群の腫瘍面積−処理前の処理群の腫瘍面積)/(測定の日のビヒクル群の腫瘍面積−処理前のビヒクル群の腫瘍面積)を用いて腫瘍面積(TGITA)より計算される。50%より大きい腫瘍増殖阻害の場合、該処理は効果的であると考えられた。
【0133】
実施例化合物2−SI−2を、表示される適応症を表す、以下のインビボ腫瘍実験にて試験した:
【表2】
【0134】
10.6 酵素アッセイの結果
【表3】
【0135】
10.7 増殖アッセイの結果
【表4】
【0136】
増殖アッセイの結果は、実施例化合物が、公表されている一定の特性を有する、多数の異なるヒト腫瘍細胞にて効能があることを明らかにする。これらのデータは、充実性ならびに種々の組織型の血液学的腫瘍障害に対して実施例化合物が広範囲に適用可能であることを示す。
【0137】
10.8 インビボ腫瘍実験の結果
【0138】
10.8.1 子宮頸癌実験
【0139】
研究:
HeLa−Matuヒト子宮頸癌異種移植片実験における効能
【0140】
試験システム:
雌NMRIヌードマウスに移植されたHeLa−Matuヒト子宮頸癌細胞
【0141】
投与形態:
経口(胃管)
【0142】
処方
a) 水中40%(v/v)PEG400中、0.05mg/ml、0.10mg/ml、0.15mg/ml、0.2mg/mlの実施例2−SI−2
b) 水中40%(v/v)PEG400中、0.15mg/ml、0.2mg/ml、0.25mg/mlの実施例2−SI−2
【0143】
投与量および処置プロトコル:
a) 0.5〜2.0mg/kg(1.5〜6.0mg/m)、一日当たり1回
b) 1.5〜2.5mg/kg(4.5〜7.5mg/m)、連続して2日間、つづいて処置のない日を5日間、一日当たり2回
【0144】
有意な結果
a) TGITW :2.0mg/kgで97%
b) TGITW:2.5mg/kgで98%、腫瘍退行の徴候
【0145】
10.8.2 多剤耐性子宮頸癌実験
【0146】
研究:
HeLa−Matu−ADR Res.異種移植片実験における効能
【0147】
試験システム:
雌NMRIヌードマウスに移植されたHeLa−Matu−ADR多剤耐性ヒト子宮頸癌細胞
【0148】
投与形態:
経口(胃管)
【0149】
処方
a) 水中40%(v/v)PEG400中、0.15mg/ml、0.20mg/mlの実施例2−SI−2
b) 水中40%(v/v)PEG400中、0.20mg/ml、0.25mg/mlの実施例2−SI−2
【0150】
投与量および処置プロトコル:
a) 1.5および2.0mg/kg(4.5および6.0mg/m)、一日当たり1回
b) 2.0および2.5mg/kg(6.0および7.5mg/m)、連続して2日間、つづいて処置のない日を5日間、一日当たり2回
【0151】
有意な結果
a) TGITW :2.0mg/kgで97%
b) TGITW:2.5mg/kgで90%、腫瘍退行の徴候
【0152】
10.8.3 結腸癌実験
【0153】
研究:
HCT116ヒト結腸直腸異種移植片実験の効能
【0154】
試験システム:
雌NMRIヌードマウスに移植されたHCT116ヒト結腸直腸腫瘍細胞
【0155】
投与形態:
経口(胃管)
【0156】
処方
a) 水中40%(v/v)PEG400中、0.15mg/ml、0.20mg/mlの実施例2−SI−2
b) 水中40%(v/v)PEG400中、0.20mg/ml、0.25mg/mlの実施例2−SI−2
c) 水中40%(v/v)PEG400中、0.40mg/ml、0.50mg/ml、0.60mg/mlの実施例2−SI−2
【0157】
投与量および処置プロトコル:
a) 1.5および2.0mg/kg(4.5および6.0mg/m)、一日当たり1回
b) 2.0および2.5mg/kg(6.0および7.5mg/m)、連続して2日間、つづいて処置のない日を5日間、一日当たり2回
c) 4.0〜6.0mg/kg(12〜18mg/m)、連続して2日間、つづいて処置のない日を5日間、一日当たり1回
【0158】
有意な結果
a) TGITW:2.0mg/kgで67%
b) TGITW:2.5mg/kgで57%、腫瘍退行の徴候
c) TGITW:5.0mg/kg83%
【0159】
10.8.4 小細胞肺癌実験
【0160】
研究:
NCI−H69ヒト小細胞肺癌実験における効能
【0161】
試験システム:
雌NMRIヌードマウスに移植されたNCI−H69ヒト小細胞肺腫瘍細胞
【0162】
投与形態:
経口(胃管)
【0163】
処方
a) 水中40%(v/v)PEG400中、0.20mg/mlの実施例2−SI−2
b) 水中40%(v/v)PEG400中、0.25mg/mlの実施例2−SI−2
【0164】
投与量および処置プロトコル:
a) 2.0mg/kg(6.0mg/m)、一日当たり1回
b) 2.5mg/kg(7.5mg/m)、連続して2日間、つづいて処置のない日を5日間、一日当たり2回
【0165】
有意な結果
a) TGITA(ビヒクル群が終わった日に測定):2.0mg/kgで99%
b) TGITA:2.5mg/kgで110%
【0166】
10.8.5 小細胞肺癌実験
【0167】
研究:
NCI−H146ヒト小細胞肺癌実験における効能
【0168】
試験システム:
雌NMRIヌードマウスに移植されたNCI−H146ヒト小細胞肺癌細胞
【0169】
投与形態:
経口(胃管)
【0170】
処方
a) 水中40%(v/v)PEG400中、0.20mg/mlの実施例2−SI−2
b) 水中40%(v/v)PEG400中、0.20mg/mlの実施例2−SI−2
【0171】
投与量および処置プロトコル:
a) 2.0mg/kg(6.0mg/m)、一日当たり1回.
b) 2.0mg/kg(6.0mg/m)、連続して2日間、つづいて処置のない日を5日間、一日当たり2回
【0172】
有意な結果
a) TGITW:2.0mg/kgで95%
b) TGITW:2.0mg/kgで82%
【0173】
10.8.6 小細胞肺癌実験
【0174】
研究:
NCI−H82ヒト小細胞肺腫瘍実験における効能
【0175】
試験システム:
雌NMRIヌードマウスに移植されたNCI−H82ヒト小細胞肺腫瘍細胞
【0176】
投与形態:
経口(胃管)
【0177】
処方
a) 水中40%(v/v)PEG400中、0.17mg/mlの実施例2−SI−2
【0178】
投与量および処置プロトコル:
a) 1.7mg/kg(5.1mg/m)、連続して3日間、つづいて処置のない日を4日間、一日当たり2回
【0179】
有意な結果
a) TGITW:1.7mg/kgで86%
【0180】
10.8.7 小細胞肺癌実験
【0181】
研究:
NCI−H526ヒト小細胞肺腫瘍実験における効能
【0182】
試験システム:
雌NMRIヌードマウスに移植されたNCI−H526ヒト小細胞肺腫瘍細胞
【0183】
投与形態:
経口(胃管)
【0184】
処方
a) 水中40%(v/v)PEG400中、0.20mg/mlの実施例2−SI−2
b) 水中40%(v/v)PEG400中、0.20mg/mlの実施例2−SI−2
c) 水中40%(v/v)PEG400中、0.15mg/mlの実施例2−SI−2
d) 水中40%(v/v)PEG400中、0.17mg/mlの実施例2−SI−2
【0185】
投与量および処置プロトコル:
a) 2.0mg/kg(6.0mg/m)、一日当たり1回
b) 2.0mg/kg(6.0mg/m)、連続して2日間、つづいて処置のない日を5日間、一日当たり2回
c) 1.5mg/kg(4.5mg/m)、連続して3日間、つづいて処置のない日を4日間、一日当たり2回
d) 1.7mg/kg(5.1mg/m)、連続して3日間、つづいて処置のない日を4日間、一日当たり2回
【0186】
有意な結果
a) TGITW:2.0mg/kgで98%
b) TGITW:2.0mg/kgで72%
c) TGITW:1.5mg/kgで79%
d) TGITW:1.7mg/kgで88%
【0187】
10.8.8 乳癌実験
【0188】
研究:
MDA−MB231ヒト乳房腫瘍実験における効能
【0189】
試験システム:
雌NMRIヌードマウスに移植されたMDA−MB231ヒト乳房腫瘍細胞
【0190】
投与形態:
経口(胃管)
【0191】
処方
a) 水中40%(v/v)PEG400中、0.20mg/mlの実施例2−SI−2
b) 水中40%(v/v)PEG400中、0.25mg/mlの実施例2−SI−2
c) 水中40%(v/v)PEG400中、0.15mg/mlの実施例2−SI−2
d) 水中40%(v/v)PEG400中、0.17mg/mlの実施例2−SI−2
【0192】
投与量および処置プロトコル:
a) 2.0mg/kg(6.0mg/m)、一日当たり1回
b) 2.5mg/kg(7.5mg/m)、連続して2日間、つづいて処置のない日を5日間、一日当たり2回
c) 1.5mg/kg(4.5mg/m)、連続して3日間、つづいて処置のない日を4日間、一日当たり2回
d) 1.7mg/kg(5.1mg/m)、連続して3日間、つづいて処置のない日を4日間、一日当たり2回
【0193】
有意な結果
a) TGITA(ビヒクル群の終了の日に測定):2.0mg/kgで92%
b) TGITA:2.5mg/kgで76%
c) TGITA:1.5mg/kgで70%
d) TGITA:1.7mg/kgで70%
【0194】
10.8.9 卵巣癌実験
【0195】
研究:
A2780−シスヒト卵巣腫瘍実験における効能
【0196】
試験システム:
雌NMRIヌードマウスに移植されたA2780−シスプラチン耐性ヒト卵巣腫瘍細胞
【0197】
投与形態:
経口(胃管)
【0198】
処方
a) 水中40%(v/v)PEG400中、0.20mg/mlの実施例2−SI−2
b) 水中40%(v/v)PEG400中、0.15mg/mlの実施例2−SI−2
c) 水中40%(v/v)PEG400中、0.17mg/mlの実施例2−SI−2
【0199】
投与量および処置プロトコル:
a) 2.0mg/kg(6.0mg/m)、一日当たり1回
b) 1.5mg/kg(4.5mg/m)、連続して3日間、つづいて処置のない日を4日間、一日当たり2回
c) 1.7mg/kg(5.1mg/m)、連続して3日間、つづいて処置のない日を4日間、一日当たり2回
【0200】
有意な結果
a) TGITW:2.0mg/kgで85%
b) TGITW:1.5mg/kgで88%
c) TGITW:1.7mg/kgで92%
【0201】
実施例化合物2−SI−2を用いる単剤療法での治療実験の結果は、ヒト子宮頚部腫瘍、小細胞気管支腫瘍、結腸直腸腫瘍、乳房腫瘍および卵巣腫瘍の動物実験における実施例化合物の腫瘍増殖阻害活性を確認するものである。実施例化合物は、一日1回および一日に複数回の投与を含め、治療のない期間からなるか、または常に治療しながら管理する、種々の投与プロトコルにてその効能を示す。意外にも、該化合物は、臨床的使用が承認されている細胞増殖抑制薬の処置に対して、仮にあったとしてもあまり応答しない腫瘍実験に対してさえ効能がある。