(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816274
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】改良された外輪軸方向保持手段が装着された航空機ターボジェット用転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F01D 25/16 20060101AFI20151029BHJP
F02C 7/06 20060101ALI20151029BHJP
F16C 35/077 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
F01D25/16 A
F01D25/16 B
F02C7/06 Z
F16C35/077
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-512979(P2013-512979)
(86)(22)【出願日】2011年5月31日
(65)【公表番号】特表2013-528742(P2013-528742A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】FR2011051244
(87)【国際公開番号】WO2011151592
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2014年5月15日
(31)【優先権主張番号】1054283
(32)【優先日】2010年6月2日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】スネクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンテユーヌ,セルジユ・ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ブロー,ミシエル
【審査官】
橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06413046(US,B1)
【文献】
特開2006−077764(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01653051(EP,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01916431(EP,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第02752024(FR,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第02888621(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D13/00−15/12
23/00−25/36
F02C1/00−9/58
F16C35/00−39/06
43/00−43/08
F23R3/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機ターボジェットのための構造(40)であって、
外輪(46)を含む転がり軸受(12a)と、
前記外輪を包囲する軸受ブラケット(14a)と、
外輪と軸受ブラケットとの間に介在する保持リング(44)と、
外輪を軸受ブラケットに接続する手段であって、
軸受ブラケット上に実装された取り付けフランジ(50)と、
第一に外輪に、そして第二に取り付けフランジに取り付けられた、可撓性接続手段(52)と、を含む手段とを含み、
前記構造は、前記可撓性接続手段が破砕した場合に外輪の軸方向保持を可能にする手段も含み、
前記外輪の軸方向保持を可能にする手段は、
保持リング(44)にしっかり取り付けられ、前記可撓性接続手段(52)が破砕した場合に軸受ブラケット(14a)に対してこの保持リングを軸方向に保持することが可能な、第一停止手段(54)と、
保持リング(44)にしっかり取り付けられ、前記可撓性接続手段が破砕した場合に、この保持リングに対して外輪(46)を軸方向に保持することが可能な、第二停止手段(64)とを含み、
前記第二停止手段は互いに対して円周方向に離間した複数のスラグ(64)の形態を取り、各々は前記保持リング(44)内に設けられたスラグ挿入開口部(66)内に保持され、前記スラグ(64)は、溝(68)の底部に出現する、複数の半径方向間隙スルーホール(72)を備える前記外輪(46)上に設けられた前記溝内に位置する半径方向内側末端を有し、前記スラグ(64)の各々は、前記溝の底部の全部(70)の半径方向反対側に位置していることを特徴とする、構造。
【請求項2】
前記スラグ(64)の各々が、取り付けフランジ(50)から半径方向反対側に位置することを特徴とする、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記可撓性接続手段が、各々がU字型であって半径方向面内に位置する、互いに対して円周方向に離間した複数のスピンドル(52)の形態を取ることを特徴とする、請求項1または2に記載の構造。
【請求項4】
前記第一停止手段が、軸受ブラケット(14a)と前記取り付けフランジ(50)との間に軸方向に位置するスカート(54)の形態を取ることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の構造。
【請求項5】
前記スカート(54)が、前記軸受ブラケットに対する保持リングの回転を制限/防止するために、互いに対して円周方向に離間し、前記軸受ブラケット(14a)にしっかり取り付けられたキャッチ(58)と協働する、刻み目(56)を有することを特徴とする、請求項4に記載の構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の航空機ターボジェットのための構造(40)を実装する方法であって、
外輪に設けられた間隙穴(72)の各々を保持リング(44)に設けられたスラグ挿入開口部(66)と半径方向に位置合わせするように、保持リング内に外輪(46)を挿入するステップと、
各スラグ(64)の半径方向内側末端を前記外輪の溝(68)内に配置するように、スルーホール(72)を通じてスラグ挿入開口部(66)にスラグ(64)を挿入するステップと、
各スラグ(64)が前記溝の底部の全部(70)から半径方向反対側に配置されるように、外輪(46)を回転するステップと、
取り付けフランジ(50)を軸受ブラケット(14a)に実装するステップと、を含む方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の構造(40)を含む航空機ターボジェット(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機ターボジェットの分野に関し、より具体的には、ファンブレードの喪失によって生じる不平衡に対応するためにこれらのターボジェット内に実装される手段に関する。この問題は、とりわけ欧州特許第1653051号明細書、欧州特許第1916431号明細書、仏国特許第2752024号明細書、および仏国特許第2888621号明細書で取り組まれている。
【背景技術】
【0002】
1つ以上のファンブレードの喪失は、通常、ブレードを保持するファンロータ内の大きな不平衡を招き、この不平衡はターボジェットの構造の完全性を危険に曝しやすい。この問題に対応するために、および構造を保護するために、半径方向力伝達路に可溶域を設けることが知られている。
【0003】
可溶性機械的接続は、たとえばファンロータに最も近い2つの転がり軸受の外輪と、ターボジェットケーシングとの間に設けられる。これらの機械的接続は、通常飛行構成では半径方向力に耐えられるような、そして少なくとも1つのファンブレードの喪失時には、この喪失によって生じた不平衡の後に破砕するような、寸法になっている。このシステムは「機械的分離システム」としても知られている。
【0004】
これら2つの破砕に続いて、最初に実装された3つのうちの、単一の転がり軸受は、駆動シャフトを中心にし続ける。この単一の心出しではターボジェットの完全性を維持するのに不十分なので、中間軸受をケーシングに接続する手段は、ケーシング上に実装されて保持部を中心とする、追加保持部から半径方向反対側に位置する保持部を含む。可溶性機械的接続の破砕前には、この保持部およびこの追加保持部は、互いに半径方向距離だけ離れたままであり、したがって機能していない。逆に、ファンブレードの喪失に続く可溶性機械的接続の破砕後には、半径方向応力を受けた保持部は、追加保持部と接触して、その後、ファンロータのすりこぎ運動および追加保持部との接触の複合効果の下、後者に対する運動を受けるように、設計されている。保持部および追加保持部がそれぞれ異なるサイズの2つの環状軌道の形状を有するとき、保持部の相対運動は、追加保持部上での後者の転動である。したがって、この転動の間、保持部の回転軸は追加保持部に対して運動しており、これはケーシングに取り付けられたままである。
【0005】
上述のような設計は、可能な限り速い機械的分離を生じるようになっている。設計は、たとえば、ファンブレードの喪失の瞬間と可溶性機械的接続の破砕の瞬間との間で、1ミリ秒程度の持続時間を超過しないようになっている。
【0006】
分離時間と称されるこの期間の間、転がり軸受の外輪、具体的にはファンに最も近い2つの転がり軸受の外輪は、非常に高い半径方向荷重を受ける。これらの半径方向荷重の結果は、外輪と、これが位置する円筒形の筐体との間の間隙の狭窄であり、そこでこの筐体は一般的に保持リングによって定義されており、これ自体が可溶的にターボジェットケーシングに接続された軸受ブラケットに取り付けられている。間隙がゼロまで減少されられると、外軌道輪は、ファンロータのすりこぎ運動およびこの同じ保持リングとの接触の複合効果の下、保持リングに対する運動を受ける。より具体的には、外輪の相対運動は、保持リングによって定義された円形断面の円筒形の筐体上の、後者の転動である。したがって、この転動の間、外輪の軸は保持リングに対して運動しており、これは軸受ブラケットに対して固定したままである。しかしとりわけ、保持リング上の外軌道輪の転動は、これらの要素の間の相対的な接線/円周変位を招き、これはその間に慣例的に実装される可撓性接続手段を損傷する可能性がある。
【0007】
したがって、これら可撓性接続手段の破砕は、排除されることは不可能である。しかしながら、これらの手段が破砕した場合には、デブリが放出されるのを防止するために、外軌道輪は軸方向に保持されなければならない。加えて、その軸方向保持は、機械的分離の瞬間まで、保持リング上のその転動が継続できるようにする。
【0008】
先行技術より、軸受ブラケットとリングの上流末端との間に、外輪の軸方向保持手段を介在させることが、知られている。実際、軸受ブラケットの前方末端上へのボルト留めによって実装された複数のスペーサを有するという選択がなされてもよく、これらは外輪の前方末端と協働する。この技術的解決法は、軸受ブラケットに取り付けられたスペーサに停止面を提供するために、とりわけ外軌道輪を前方に延伸させる必要性のため、障害を招くことおよび実質的な総質量において、批判される可能性がある。実際、この前方へのリング延伸は、保持リングを包囲する軸受ブラケットに取り付けられた停止スペーサを受容する目的で、後者がこれを保持する保持リングを越えて延伸する必要性によって、正当化される。
【0009】
外軌道輪の前方への延伸は、すでに非常に密度の高いターボジェットのこの領域における障害の問題のため、実現不可能な場合がある。
【0010】
保持リングの軸方向寸法およびリングの部分の軸方向寸法を減少させてこの保持リングを保持できるようにする可能性が実際に存在するが、しかしこの減少は、機械的に弱すぎる実装を招く可能性がある。加えて、環状油膜による減衰システムが保持リングと外輪との間に設計されている好ましいケースでは、これはまた、この膜の軸方向寸法も減少させることになり、したがって外軌道輪の減衰効果の低減を暗示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1653051号明細書
【特許文献2】欧州特許第1916431号明細書
【特許文献3】仏国特許第2752024号明細書
【特許文献4】仏国特許第2888621号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、少なくとも部分的に、先行技術の実施形態と比較して、上述の不都合に対する解決法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これを達成するために、本発明の目的の1つは、航空機ターボジェットのための構造であって、
−外輪を含む転がり軸受と、
−前記外輪を包囲する軸受ブラケットと、
−外軌道輪と軸受ブラケットとの間に介在する保持リングと、
−外輪を軸受ブラケットに接続する手段であって、
−軸受ブラケット上に実装された取り付けフランジと、
−第一に外軌道輪に、そして第二に取り付けフランジに取り付けられた、可撓性接続手段と、を含む手段とを含み、
前記構造は、前記可撓性接続手段が破砕した場合に外軌道輪の軸方向保持を可能にする手段も含み、
本発明によれば、前記外輪の軸方向保持を可能にする手段は、
−保持リングにしっかり取り付けられ、前記可撓性接続手段が破砕した場合に軸受ブラケットに対してこの保持リングを軸方向に保持することが可能な第一停止手段と、
−保持リングにしっかり取り付けられ、前記可撓性接続手段が破砕した場合に、この保持リングに対して外輪を軸方向に保持することが可能な第二停止手段と、を含む、構造である。
【0014】
加えて、前記第二停止手段は、互いに対して円周方向に離間した複数のスラグの形態を取り、ここで各スラグは前記保持リングに設けられたスラグ挿入開口部に保持され、前記スラグは、溝の底部に出現する、複数の半径方向間隙スルーホールを備える前記外軌道輪上に設けられた前記溝内に位置する半径方向内側末端を有し、前記スラグの各々は、前記溝の底部の全部の半径方向反対側に位置している。
【0015】
したがって本発明は、保持リングを通じて軸方向に保持されている外輪を伴うという点において、際立っている。これは、全体として、特に外輪の軸方向長さの減少のため、上述の先行技術の解決方法と比較して、障害の減少、および構造の総質量の減少を招くが、しかしこれは保持リング内のリングの機械的実装を弱めない。
【0016】
さらに、以下に説明されるように、半径方向開口部は、保持リング上へのスラグの容易な実装を可能にするが、その一方で溝底部の全部は、動作中に、これらスラグの半径方向内部に向かう抜けが、防止されるようにする。
【0017】
前記第一停止手段は好ましくは、軸受ブラケットと前記取り付けフランジとの間に軸方向に装着されたスカートの形態を取る。このスカートは、両方向への軸方向変位を制限/防止する、2つの上述の要素の間に間隙を備えてまたは備えずに、位置してもよい。
【0018】
このような構成において、前記スカートが、前記軸受ブラケットに対する保持リングの回転を制限/防止するために、互いに対して円周方向に離間し、前記軸受ブラケットにしっかり取り付けられたキャッチと協働する刻み目を有することもまた、優先的に設けられる。
【0019】
前記スラグの各々は好ましくは、取り付けフランジから半径方向反対側に配置される。この構成はまた、動作中に、これらスラグの半径方向外部に向かう抜けも、防止されるようにする。
【0020】
本発明の別の目的は、上記で定義された航空機ターボジェットのための構造を実装する方法であって、
−リングに設けられた間隙穴の各々を保持リングに設けられたスラグ挿入開口部と半径方向に位置合わせするように、保持リング内に外軌道輪を挿入するステップと、
−各スラグの半径方向内側末端を前記外輪の溝内に配置するように、スルーホールを通じてスラグ挿入開口部にスラグを挿入するステップと、
−各スラグが前記溝の底部の全部から半径方向反対側になるように、外軌道輪を回転するステップと、
−取り付けフランジを軸受ブラケットに実装するステップと、を含む方法である。
【0021】
最後に、本発明の別の目的は、上述のような構造を含む航空機ターボジェットである。
【0022】
本発明の別の利点および特徴は、以下の非限定的詳細開示において明らかとなるだろう。
【0023】
本記載は、以下の添付図面を参照してなされる:
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の好適な実施形態による、ターボジェットの一部分の模式的長手方向断面図である。
【
図2】ファンブレードの喪失に続く軸受の機械的分離の後に採用されるものなどの構成におけるターボジェットを備える、
図1のものと類似の図である。
【
図3】
図1および2に示されるターボジェットの構造のより詳細な断面図であり、ここでこの構造は、具体的にはファンに最も近い転がり軸受を含み、本発明の好適な実施形態の形で示される。
【
図6】
図5の転がり軸受の外輪と、このリングを軸受ブラケットに取り付けるフランジとの間の、可撓性接続手段の部分斜視図である。
【
図7a】軸受の機械的分離の前の外軌道輪の運動を示す模式図である。
【
図7b】軸受の機械的分離の前の外軌道輪の運動を示す模式図である。
【
図8a】
図3から7bに示される構造の好適な実装方法のステップを示す模式図である。
【
図8b】
図3から7bに示される構造の好適な実装方法のステップを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照すると、本発明の好適な実施形態による、航空機用ターボジェット1の一部分が、模式的に示されている。
【0026】
従来、このターボジェット1は、ファンブレード6を保持するファンロータ4の中心となっている長手軸2、ならびにファンディスクとも称される、ロータ4とともに回転するように堅く実装された駆動シャフト8を、有する。
【0027】
ターボジェット1はまた、固定された剛性のあるケースを形成するケーシング10も含み、このケーシングは
図1に非常に模式的に示されている。シャフト8を保持および案内するために、軸2の方向で互いに対して離間した、3つの転がり軸受があり、これらの軸受は前方から後方に向かって、それぞれ12a、12b、および12cの符号が付けられている。
【0028】
これら3つの転がり軸受の各々の外輪は、14a、14b、および14cの参照番号がそれぞれ付された接続手段によって、ケーシング10に取り付けられている。
図1に模式的に示されたように、これら接続手段の各々は、ロータ4の最も近くに位置する2つの前部軸受12a、12bの場合と同様に、直接ケーシングに、またはこのケーシングの内部伸長部に外輪を接続する、環状構造を形成する軸受ブラケットの形態を取る。
【0029】
最前部軸受12aおよび最後部軸受12cは各々が半径方向力を伝達するように設計されており、その一方で中間転がり軸受12bもまた、シャフト8を軸方向に保持するように設計されている。
【0030】
2つの前部軸受12a、12bについて、これらの軸受ブラケット14a、14bの各々は、可溶性機械的接続16a、16bによってケーシング10に接続されている。これらの接続は、たとえばネジを用いてなされ、その数、寸法、および位置が、以下に説明される所望の可溶特性を付与するように選択される。
【0031】
ケーシング10上の中間軸受12bの外輪18の軸受ブラケット14bは、軸2を中心とする環状軌道22を形成する保持部20を含むという、付加的な特徴を有する。この環状軌道22は、半径方向外部に向かって位置合わせされ、ケーシング10上に実装された追加保持部24から半径方向反対側に配置されている。より具体的には、この部分24は追加軌道26を含み、これもまた環状であり、軸2を中心としている。したがって、通常飛行構成において、
図1に模式的に示されるように、軌道26は軌道22の周りにある程度の距離を空けて配置され、これらが互いに協働しないようになっている。軌道22、26は互いに半径方向距離だけ離れ、その全周にわたってほぼ一定な環状空隙34を形成するので、両方の部分20、24によって構成される保持手段はこのように機能しないままである。
【0032】
この通常構成において、可溶性機械的接続16a、16bは、前部軸受12a、12bによって伝達される半径方向力に耐えるために十分に耐久性があり、これらはターボジェットの長手軸2内にシャフト8の回転を維持するために使用される。
【0033】
1つ以上のファンブレード6の喪失を招く例外的な問題の場合には、ロータ4は不平衡に曝され、これはターボジェットの構造に、具体的には軸受ブラケット14a、14b、および14cに、極端に高い半径方向力を引き起こす。
【0034】
先に述べられたように、2つの可溶性機械的接続16a、16bは、その大きさが事前定義可能な、これら極端に高い半径方向力をブラケット14a、14bが受けたときに、破砕するように設計されている。
図2を参照すると、これら破砕のほぼ直接的な結果は、不平衡に曝されているロータ4を保持するシャフト8が半径方向の偏りを受けることであり、半径方向間隙34をゼロに減少させた後、追加軌道26と接触するまで、この偏りが軌道22をブラケット14bとともにやはり半径方向に移動させる。その後軌道22、26の間に点状接触36が確立されるが、これらは
図4に模式的に示されるように、最初は分離していた。
【0035】
一旦接触が確立されると、シャフト8の半径方向の偏りは止められる。このシャフトはその後、当業者にとって周知の方式で、その間に自身の軸の周りを回転し続けて長手軸2の周りも回転する間、そこから角度ずれしたままとなる、すりこぎ運動を受ける。この点に関して、後部軸受12cはこのシャフト8を案内し続けて、散発的にこの中心を軸2に合わせ続けることが、求められる。
【0036】
シャフト8およびそのロータ4のすりこぎ運動は、保持部20、24の接触と相まって、保持部20に追加保持部24に対する運動を与える。
【0037】
この相対運動は、より大きい直径の固定軌道26上の軌道22の、非常に高い接触力による摺動を習慣的に伴わない、転動である。
【0038】
上述のような設計は、可能な限り速い機械的分離を生じるようになっている。設計は、たとえば、ファンブレード6の喪失の瞬間と可溶性機械的接続16a、16bの破砕の瞬間との間で、1ミリ秒程度の持続時間を超過しないようになっている。
【0039】
より具体的には、本発明は、以下に詳細に記載されるように、機械的分離の前にターボジェットへの損傷の危険性を制限しようとする。実際、分離時間の間、両方の転がり軸受の外輪、具体的にはファンに最も近い軸受12aの外輪は、非常に高い半径方向荷重を受ける。
【0040】
現時点で
図3から
図6を参照すると、その核が前部軸受12aによって構成されている、ターボジェットの構造40が見られる。この構造40は、軸2を中心とする孔42を定義する、環状軸受ブラケット14aも含む。この孔は、軸2を中心とするスリーブまたは金属リングの形状を有する保持リング44をしっかりと保持し、これ自体が孔45を定義して、そこで軸受12aの外輪46が保持される。したがって保持リング44は、ブラケット14aの孔42とリング46との間に半径方向に介在し、これが内部で軸受のローラ48を保持する。
【0041】
外輪46は、互いに対して軸方向に離間し、その各々が保持リング44によって定義された孔45との密封接続を行う、2つの環状金属シールまたはセグメント47を保持する。好ましくは鋳鉄で作られた、これらシール47の間には、リング46の外面と孔45との間の環状間隙があり、この間隙は、減衰システムを構成する環状油膜49を形成するために、油で満たされている。「スクイズ膜」とも称されるこのシステムは、リング46の、本質的に半径方向の、振動を減衰可能にする。実例として、油は従来、
図3に示されるポート61によって供給される。
【0042】
リング46とブラケット14aとの間には、接続手段が設けられている。これらの手段はまず、軸2を中心とし、ブラケット14aの下流側にボルト留めによって実装された、取り付けフランジ50を含む。このフランジ50はその後、外輪46の後部末端から半径方向反対側に、そしてある程度の距離を空けて、位置決めされる。これらを接続するために、たとえば、
図3および
図6に示されるように、互いに対して円周方向に離間した複数のスピンドル52の形態の、可撓性手段が設けられる。たとえばU字型であって半径方向面内に位置するこれらスピンドル52の各々は、好ましくは溶接によって、その後部末端で底部によって接続され、その2つの前部末端がそれぞれフランジ50およびリング46の後部末端に取り付けられている、2つの側枝を有する。これらのスピンドル52は、孔45内のリング46の半径方向間隙を許容し、油膜49によって軸受12aを減衰する。
【0043】
その後部末端において、保持リング44は、外部に向かって半径方向に伸長し、互いに対して円周方向に離間した刻み目56を定義する、スカート54を有する。半径方向外部に向かって開放しているこれら刻み目56の各々は、軸受ブラケット14aの下流側から後方に向かって軸方向に突起しているキャッチ58を保持し、これらキャッチ58はこれにしっかり取り付けられている。
図4に示されるように、刻み目56とキャッチ58との間の接続によって設けられる機械的接続は、ブラケット14aの孔42内の保持リング44の軸2内での回転を防止/制限する。
【0044】
図3は、歯付きスカート54が、ショルダを用いて、ブラケット14aの下流側と、フランジ50上に設けられた軸方向環状停止面60との間で軸方向に保持されることを、示す。間隙を伴ってまたは伴わずに実現される、スカート54のこの軸方向クランプ締めは、スカートが、両方の軸方向で、ブラケット14aおよびフランジ50に対して軸方向に保持されることを、可能にする。したがってスカート54は第一停止手段を形成し、これは保持リングをしっかり取り付け、特に、スピンドル52が破砕した場合には、軸受ブラケット14aに対してこの保持リング44を軸方向に保持することができる。
【0045】
保持リング44はまた、互いに対して円周方向に離間したスラグ64が装着された、環状後方延伸部62も有する。
図3および
図5に見られるように、各スラグ64は、伸長部62内に設けられた挿入開口部66内に保持される。これらは、たとえば強制によってまたはネジ留めによってなど、当業者にとって適切と思われるいずれの方法で実装されてもよい。
【0046】
各スラグ64は、その半径方向内側末端がリング46の後部末端に設けられた溝68内に保持された状態で、ほぼ半径方向に位置合わせされ、半径方向外部に向かって開放している。
図5において最もよく見えるように、各スラグ64の半径方向内側末端は、溝底部の全部70から半径方向反対側に配置されていることがわかる。実際、全部がリング46を横断する複数の半径方向間隙穴72の存在によって妨げられるので、この溝底部は完全にその環状周全体に沿っているわけではない。互いに対して円周方向に離間し、そのためその各々が溝の底部に出現する、全部70の2つの部分の間のこれらの穴72は、以下に説明されるように、スラグ64が実装され得るようにする。
【0047】
加えて、各スラグ64の半径方向外側末端は、取り付けフランジ50から半径方向反対側に配置されている。このため、軸5の周りに規則的に位置するスラグ64は、両半径方向で包囲され、これが、環状伸長部62との接続の偶発的破砕の際に、これらの喪失を防止する。
【0048】
軸2を中心とする溝68の2つの側面の間に間隙を備えてまたは備えずにクランプ締めされたスラグ64は、両方の軸方向で、軸受の外輪46に対して軸方向に、保持リング62の環状伸長部が保持されることを可能にする。したがってこれらのスラグ64は、保持リングにしっかり取り付けられ、特にスピンドル52が破砕した場合に、この保持リング44に対して軸受の外輪46を軸方向に保持することが可能な、第二停止手段を形成する。
【0049】
図7aおよび
図7bは、分離時間中の、軸受の機械的分離の前、およびファンブレードの喪失の後の、軸受の外輪46の運動を模式的に示す。これらの図には、外輪46が保持リングの孔45上を転がる間、保持リングおよびリングのいずれか2点をそれぞれ記号で示す、2つの十字76の間の相対位置の変化によって示されるように、これら2つの要素の間に接線/円周相対変位が同時に形成されることが示されている。この接線/円周相対変位は、適用可能であれば、破砕するまで損傷を受ける可能性のある、可撓性接続スピンドル52の円周方向加圧を引き起こす。
【0050】
可撓性スピンドル52のこのような偶発的破砕が発生した場合には、前部軸受の外輪46はもはやこれらの損傷したスピンドルによって軸方向に保持されないが、しかしその役割は上述の第一および第二停止手段によって取り込まれ、これらは共同で、軸受ブラケット14aに対する、リング46および軸受12a全体の軸方向の保持を実現することができる。
【0051】
実例として、スピンドル52のこのような破砕の箇所は、たとえば小区画の一部について、事前定義可能であることは、注目される。この箇所は、破砕後に、スラグ64がリング46の後部末端によって、および取り付けフランジ50によって、半径方向に包囲され続けるように、選択される。
【0052】
この偶発性軸方向保持のため、外輪46は、軸受の機械的分離の瞬間まで保持リングの孔45上を転がり続けることができ、その瞬間からこのリング46はもはや軸方向に加圧されず、破損の危険性がなくなる。実際、軸受が機械的に分離した後、
図2を参照して先に記載されたように、半径方向力は事実上、中間軸受12bを通じて伝達する。
【0053】
図8aおよび
図8bは、
図3から
図7bに示される構造40を実装する方法を、模式的に表す。
【0054】
保持リング44はまず、ブラケット14aの孔42にきつく実装される。2つの要素の間の相対角度位置は、実装後に、キャッチ58が保持リング54のスカートの刻み目56内に保持されるように、選択される。
【0055】
この後、軸受の外輪46は、これら2つの要素の間の軸方向相対変位によって、保持リングの孔45内に挿入される。この挿入は、
図8aに模式的に示されるように、リング46に設けられた間隙穴72の各々を保持リング内に設けられたスラグ挿入開口部66に半径方向に位置合わせするように、実行される。この同じ図には、スラグ64をスラグ挿入開口部66に挿入するステップと、間隙穴72を通過するステップとを含む、その後のステップが示される。したがって各スラグ64は、その関連する挿入開口部66に保持されるまで、外部に向かって半径方向に、穴72を横断する。この最終位置において、スラグ64は、その半径方向内側末端が外輪の溝68内に保持されており、横断した穴72から完全に抜き出される。
【0056】
この後、
図8bに模式的に示されるように、外輪46は、各スラグ64が溝の底部の全部70から半径方向反対側に配置されるように、回転させられる。こうして、間隙穴72から半径方向反対側になる代わりに、スラグ64は全部70の反対側に配置され、内部に向かう半径方向停止部を形成する。したがってリング46の回転は、スラグ64を係止する動作と類似している。
【0057】
最後に、取り付けフランジ50が、ボルト留めによって軸受ブラケット14a上に実装される。
【0058】
実装は、2つのスピンドル52の間で接線/円周方向に各スラグ64が配置されるように実行されることが、求められる。これは、たとえば、作業者が容易にアクセス可能な、2つのスピンドル52の間に囲まれた接線空間から、フランジ50とリング46との間に軸方向に挿入されなければならない、スペーサなどを用いて、これらスラグの存在の改良型検査が実行されることを、可能にする。
【0059】
当然ながら、単に非限定例として記載された本発明に対し、当業者によって様々な変更がなされ得る。