(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816283
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】流体脱気装置及び流体の脱気方法
(51)【国際特許分類】
B01D 19/00 20060101AFI20151029BHJP
B29C 47/76 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
B01D19/00 G
B29C47/76
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-526428(P2013-526428)
(86)(22)【出願日】2011年8月29日
(65)【公表番号】特表2013-536753(P2013-536753A)
(43)【公表日】2013年9月26日
(86)【国際出願番号】EP2011064808
(87)【国際公開番号】WO2012028573
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2013年4月24日
(31)【優先権主張番号】102010039959.0
(32)【優先日】2010年8月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】カムケ、インゴ
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭42−4187(JP,B1)
【文献】
特開2006−27012(JP,A)
【文献】
特開平10−113504(JP,A)
【文献】
特開平7−328315(JP,A)
【文献】
特表2002−512282(JP,A)
【文献】
特開平4−313301(JP,A)
【文献】
特開平4−313307(JP,A)
【文献】
特開昭62−5356(JP,A)
【文献】
実開昭57−25711(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00
B29C 47/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂の供給のための流体供給要素(12)と、
樹脂の排出のための流体排出要素(310)と、
流体供給要素(12)と流体排出要素(310)との間において樹脂が通過して、樹脂内の気泡を破壊するための、不織材料として構成された少なくとも1つの第1の構造要素(100)を備え、前記流体供給要素(12)を通って樹脂が注ぎ込まれる第1のチャンバー(150)とを有し、さらに、
第1のチャンバー(150)に隣接し、かつメッシュとして構成され樹脂が通過する少なくとも1つの第2の構造要素(180)を備える、第2のチャンバー(160)と、
第2のチャンバー(160)に隣接し、流体供給要素(12)と流体排出要素(310)との間において樹脂がその上を超えて通過するプロフィル要素(220)として少なくとも1つの凸状要素(220)を備える第3のチャンバー(190)とを有する、
樹脂から気体を連続的に除去するための流体脱気装置。
【請求項2】
第1と第2のチャンバー(150、160)の間の分割壁が少なくとも1つの第1の隙間(200)を有する請求項1の装置。
【請求項3】
第2と第3のチャンバー(160、190)の間の第2の分割壁が、少なくとも1つの第2の隙間(201)を含む請求項1の装置。
【請求項4】
流体脱気装置を旋回させるための旋回式取付機構(300)を含む、請求項1〜3のうちの一つの装置。
【請求項5】
前記流体排出要素(310)の周囲に配置されたメッシュ要素(320)をさらに含む、請求項1〜4のうちの一つの装置。
【請求項6】
次の工程を含む、樹脂から気体を連続的に除去する方法:
樹脂を供給する工程、
第1のチャンバー(150)において不織材料として構成された少なくとも1つの構造要素(100)に樹脂を通過させることによって、及び、第1のチャンバー(150)に隣接する第2のチャンバー(160)においてメッシュとして構成された第2の構造要素に樹脂を通過させることによって、樹脂内の泡を破壊する工程、及び
第3のチャンバー(190)において凸状要素として構成された少なくとも1つのプロフィル要素の上を超えて樹脂を通過させる工程、及び
樹脂を排出する工程。
【請求項7】
次の工程を含む、風力エネルギ装置のロータ翼羽根を製造する方法:
請求項1〜5のうちの一つの流体脱気装置を使用して気体を除去されるべき樹脂から気体を除去する工程、及び
前記流体脱気装置によって気体を除去された樹脂から風力エネルギ装置のロータ翼羽根を製造する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体から気体を除去するための装置及び方法に関する。
【0002】
合成樹脂は、合成繊維(強化)複合材の構成部品(ないし要素)の生産において使用される。その際において、樹脂は、構造を弱めるように材料に対して影響を及ぼすので、空気含有ないし気泡はできるだけないことが重要である。
【0003】
したがって、樹脂から気体を除去しなければならない。従来は、樹脂は撹拌容器に導入されて、真空の下で撹拌される。その場合、材料の脱気は、表面に近い領域においてだけで起こる。
【0004】
樹脂脱気のための更なる一変形例は、いわゆる薄層脱気操作によって代表される。すでに上述のとおりに、脱気は特に表面で起きるが、一方、樹脂の高い粘性のために、気体の泡は、ごくゆっくりと深みから表面に上昇することが許されるだけである。したがって、脱気は困難である。それによって、長い滞留時間を必要とする。
【0005】
その代わりとして、樹脂脱気を許容する半透過性の薄膜を使用することも可能である。
【0006】
一般的な技術水準として、WO 2003/064 144 A1及びUS No 3 229 449 Aに注意が向けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2003/064 144 A1
【特許文献2】US No 3 229 449 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、樹脂からの改良された連続的な脱気を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その課題は、請求項1による、樹脂から気体を除去するための装置と、請求項
6による、樹脂から気体を除去する方法によって、達成される。なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は、専ら理解を助けるためであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【0010】
このように、流体、特に樹脂から気体を除去するための流体脱気装置が提供される。前記装置は、流体の供給のための流体供給要素と、流体の排出のための流体排出要素を備えている。前記供給要素と前記排出要素の間には、流体が通って流れる時に、前記流体内の気泡を破壊するための少なくとも一つの構造要素(Strukturelement)がある。それに加え、又は、その代わりに、少なくとも1つのプロフィル要素(Profil-Element)を備えることができ、その上を超えて流体は流れなければならない。流体脱気装置は、さらに、前記流体供給要素によって流体が送り込まれる第1のチャンバーを有する。前記第1のチャンバーは、不織材料として構成された少なくとも一つの第1の構造要素を備える。前記装置は、さらに、前記第1のチャンバーに隣接する第2のチャンバーを備える。前記第2のチャンバーは、メッシュ(ないし格子Gitter)として構成された流体が通過する第2の構造要素を備える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
更なる視点では、第1と第2のチャンバーの間に分割壁がある。分割壁は、少なくとも1つの隙間を有する。
【0012】
本発明の更なる視点では、前記装置は、前記第2のチャンバーに隣接し少なくとも1つの凸面要素(konvexes Element)を備える第3のチャンバーを有する。
【0013】
本発明の更なる視点では、前記第2のチャンバーと前記第3のチャンバーの間に分割壁があり、それは少なくとも一つの隙間を有する。
【0014】
本発明の更なる視点では、前記装置は、前記装置を旋回させるための旋回軸を備える。
【0015】
本発明の更なる視点では、前記装置は、前記流体排出要素のまわりに配置されるメッシュ要素を備える。
【0016】
本発明は、また、流体、特に樹脂から気体を除去する方法に関する。その目的のため、流体が供給され、前記流体内の気泡は、前記流体を少なくとも1つの構造要素を通過させることによって、及び/又は、前記流体を少なくとも1つのプロフィル要素の上を超えて通過させて、流体内の気泡が破壊される。次いで、前記流体は、排出されることができる。
【0017】
本発明は、また、流体から気体を除去する装置で気体を除去された樹脂によって製造される風力エネルギ装置のロータ翼羽根に関する。
即ち、本発明は、次の工程を含む、風力エネルギ装置のロータ翼羽根を製造する方法を提供する。
前記本発明の流体脱気装置を使用して気体を除去されるべき樹脂から気体を除去する工程、及び
前記流体脱気装置によって気体を除去された樹脂から風力エネルギ装置のロータ翼羽根を製造する工程。
【0018】
本発明は、以下、実施態様によって、実施例を通して、図面を参照して、より一層詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、樹脂脱気装置の模式的断面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施態様による、脱気装置の第1の端の模式的断面図を示す。
【
図3】
図3は、
図1の脱気装置の第1と第2のチャンバーの間の遷移領域の模式的断面図を示す。
【
図4】
図4は、
図1の脱気装置の第2のチャンバーと第3のチャンバーの間の更なる遷移領域の模式的断面図を示す。
【
図5】
図5は、前記脱気装置の第3のチャンバーの端の詳細にされた部分の模式的断面図を示す。
【実施例】
【0020】
図1は、第1の実施例による、樹脂脱気装置の模式的断面図を示す。この装置は、脱気の役に立ち、その点で、旋回式取付機構(Schwenklager)300を備え、それを介して脱気装置は(傾斜角度)調節されることが可能である。樹脂の流量は、傾きの程度によって調節されることができる。その場合、装置の傾きは、1%と10%の間で設定されることができ、樹脂層の厚さと、真空における滞留時間と、したがって最終的には脱気品質を決定する。
【0021】
気体を除去されるべき樹脂は、継手(供給要素)12を通して第1のチャンバー150に導入される。排出部(流体排出要素)310を通って流出するように、前記樹脂は、それから、第2のチャンバー160を通って第3のチャンバー190に流入する。第1と第2のチャンバー150、160の間の第1の壁210の第1の隙間ないし開口200を通して流れるように、第1のチャンバー150において、樹脂は、供給継手12から流入し、不織材料(フリース)100を通って第1のチャンバー150の底を流れる。複数のメッシュ(Gitter)180は、第2のチャンバーに位置する。樹脂の中の気泡が除去されることができるように、樹脂はメッシュ180を通って流れなければならない。樹脂は、第2と第3のチャンバー160、190の間の第2の壁211の第2の隙間ないし開口201を通って第3のチャンバー190に流入する。複数のプロフィル部材(Profile)220は、第3のチャンバー190に備えられ、その上を超えて樹脂が流れる。このように、前記樹脂の領域、即ち、表面に近い領域は、第3のチャンバーにおいて拡張され、そしてそれは脱気において肯定的な影響を持っている。排出部310は、第3のチャンバーの端に配設され、脱気された樹脂は、前記排出部を通って流出する。
【0022】
図2は、
図1の脱気装置の第1の端の模式的断面図(詳細
図F)を示す。樹脂は、供給手段(継手)12を通って、容器、即ち、第1のチャンバー150に導入される。不織材料(Vliesstoff)100の少なくとも一層は、供給継手12の下に配設される。その場合、不織材料100は、樹脂がそれを通してゆっくり流れることができるような構成でなければならない。かくして、第1の気泡は、不織材料の構造によって、樹脂から早くも除去されることができる。このようにして、樹脂は、不織材料100を通り、そして第1の壁210における第1の隙間ないし開口200を通り、第1のチャンバー150から第2のチャンバー160に流入する。
【0023】
図3は、
図1におけるE部、即ち、
図1における第1と第2のチャンバー150、160の間の遷移領域の詳細図を示す。第2のチャンバー160の最上部と底にそれぞれ配列された複数(ないし多数)の横断壁部材(ないし控え壁Querstrebe)170が、第2のチャンバー160に配置される。たとえば数ミリメートルのメッシュ寸法(開口径)を持つメッシュ(Gitter)180は、それぞれの横断壁部材170と横断壁部材170の間に張設されている。第1の壁210の第1の開口200を通って第2のチャンバーに流入する樹脂は、前記チャンバーの底の第1の横断壁部材170を乗り越えなければならない。そして、前記樹脂は、このように前記横断壁部材170を乗り超えて流れる。前記横断壁部材170から流れ落ちる際に、前記樹脂は、メッシュ180を通過して流れなければならない。そのうえ、横断壁部材170は、第2のチャンバー160の底に隙間(複数)206を任意に持つことができる。したがって、横断壁部材170の配設は、前記樹脂の表面積の大きさが増加するように、前記樹脂が横断壁部材170において上方へ流れるようにする。そして、それは改善された脱気に帰着する。さらに、横断壁部材170から流れ落ちるとき、前記樹脂は、前記樹脂の更なる脱気を引き起こすメッシュ180を通って流れなければならない。
【0024】
その際、第1の隙間200は、気泡が表面の近くの領域に移動されるように、そこを通過して流れる比較的に薄い樹脂層を達成するために、比較的狭く選択することができる。粘度又は流量は、温度によって調節されることができる。メッシュ180は、また、多層構造であることができる。そのような場合メッシュ構造は、前記メッシュが前記樹脂によって分解するように攻撃されないか又は溶解しない、ということが保証される限り、プラスチック繊維又は金属で製造されることができる。このように、メッシュ構造は、樹脂脱気に関して1つのパラメータを成す。横断壁部材170は、その左側のチャンバー160の底で直接終端する(に達する)必要は必ずしもない。しかし、樹脂脱気のスループット(処理能力)率が増加することが可能であるように、左側の(各)チャンバー160の底と横断壁部材との間に隙間206を設けることもできる。
【0025】
図4は、
図1におけるDの部分(丸囲い)、即ち、第2のチャンバー160と、前記第2のチャンバーの左側で前記第2のチャンバーに隣接する第3のチャンバー190の間の遷移領域の詳細図を示す。第2のチャンバー160と第3のチャンバー190の間の第2の分割壁211は、その下側に第2の隙間201を再び有する。このように、前記樹脂は、再び、薄い第2の隙間201を通って流れさせられ、それによって、表面積又は表面に近い領域はサイズがさらに大きくなる。
【0026】
プロフィル部材(即ち、形部材)220は、前記樹脂が前記形部材の上を超えて流れなければならないように、第3のチャンバー190に配置されている。そのため、このことは、前記樹脂の表面積又は表面に近い領域のさらなる増加を与える。有利にも、形部材220は、前記樹脂がその上を流れることができるように、さかさまに配置される。形部材は、凸状の形状であることが可能である。第3のチャンバー190は、それぞれ隙間202−205を有する複数の分割壁212−215によって分割されることが可能である。少なくとも一つの形部材220が、分割された(小)チャンバーの各々に配置される。(小)チャンバーの間又はさらなるチャンバー190における分割された部分の間の隙間202−205はかなり非常に狭いという事実は、前記樹脂が前記隙間の前に蓄積(滞流)可能なように、ごく少量の樹脂が隙間202−205を通って流れるということを意味する。即ち、樹脂の蓄積物230が発生する。薄い樹脂膜だけが形部材220の稜端部(角部)の上を流れるので、表面近くの領域の大きさが増加し、そしてそれは脱気に関してポジティブな影響を持つ。
【0027】
図5は、
図1におけるH部分、即ち、第3のチャンバー190の左側の端の左側の部分の詳細図を示す。底に配置されるのではなく、一番上の樹脂層だけがすくい取られるように上方に配置される排出短管(継手)310がここで示される。そのうえ、更なるメッシュ320が、前記樹脂から更なる気泡を除去するためにさらに存在することができる。
【0028】
前記樹脂からの著しくも90%超の脱気は、そのような装置で達成されることができる。装置全体は、真空下で作動される。気圧は、その点においておよそ10mbarである。
【0029】
上記の流体脱気装置で気体を除去された樹脂は、風力エネルギ装置ロータ翼羽根の製造のために使用されることができる。あるいは、前記流体脱気装置で脱気された樹脂は、風力エネルギ装置の他の構成要素の製造のためにも使用されることができる。