(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0010】
(第一の実施形態)
図1は、第一の実施形態に係る電子装置1の構成図である。本実施形態の電子装置1は、例えば車載用の電子制御ユニット(ECU:Engine Control Unit)である。
【0011】
図1の電子装置1は、電流のスイッチング機能を有するパワーモジュール100、パワーモジュール100内のワイヤ50の切断を検出する破断検出部210を有するCPU(Central Processing Unit)等の演算装置200、不揮発性メモリやHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置300を備える。また、パワーモジュールの故障または故障直前の状態であることを音等により外部、例えばユーザに知らせるアラームやディスプレイ、電気信号等の出力装置400を備える。
【0012】
図2は、パワーモジュール100の概略図である。
図2(a)は、パワーモジュール100の断面図、
図2(b)は、
図2(a)中の矢印A方向よりパワーモジュール100を俯瞰した図である。
【0013】
図2のパワーモジュール100は、筐体10、絶縁基板20、第1素子30、第2素子40、ワイヤ50としての、第1ワイヤ50a,c,d,fおよび第2ワイヤ50b,e、シリコーンゲル60を備える。
【0014】
筐体10は、パワーモジュール100のケースであり、材質としては例えば樹脂材料を用いる。この筐体10内には、絶縁基板20、第1素子30、第2素子40、第1ワイヤ50a,c,d,fおよび第2ワイヤ50b,e、シリコーンゲル60が収納されている。
【0015】
絶縁基板20は、例えばセラミック等の材料により形成される絶縁性の配線基板である。絶縁基板20の表面は、銅やタングステン等の導電性材料で配線パターンが形成されており、パワーモジュール100内部での電気的な接続やパワーモジュール100内部と外部との電気的な接続を確保する役割を持つ。絶縁基板20の表面には、複数の電極21がy軸方向に沿って形成されている。
【0016】
第1素子30は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー素子である。第1素子30は、はんだ接合等により絶縁基板20に接合されている。第1素子30の表面には、複数の電極31,32がy軸方向に沿って形成されている。このとき、複数の電極21と複数の電極32とは、y軸方向にそれらの間隙および位置を揃えて配置され、x軸方向に対向する電極21と電極32とは略平行に電極対を形成するよう配置されている。ここで、略平行に配置された電極対のうち、
図2(b)のy軸方向上側および下側の電極対がそれぞれ第1電極対および第2電極対であり、それら第1電極対および第2電極間に、略平行に設けられる電極対が第3電極対となる。
【0017】
第2素子40は、例えば整流作用を有するダイオードである。第2素子40は、はんだ接合等により絶縁基板20に接合されている。第2素子40の表面には、複数の電極41がy軸方向に沿って形成されている。このとき、第1素子30上の複数の電極31と第2素子40の複数の電極41とは、y軸方向にそれらの間隙および位置を揃えて配置され、x軸方向に対向する電極31と電極41とは略平行に電極対を形成するよう配置されている。ここで、略平行に配置された電極対のうち、
図2(b)のy軸方向上側および下側の電極対がそれぞれ第4電極対および第5電極対であり、それら第4電極対および第5電極間に、略平行に設けられる電極対が第6電極対となる。
【0018】
なお、第2素子40は、ダイオードに限られず、第1素子30と電気的に接続される様々な素子を対象とすることができる。また、略平行とは、各電極対の電極間の距離の範囲で、電極対同士が交差しない程度であればよい。
【0019】
第1ワイヤ50d,fは、第1電極対の電極間および第2電極対の電極間をそれぞれ電気的に接続する導電性の部材であり、第1ワイヤa,cは、第4電極対の電極間および第5電極対の電極間をそれぞれ電気的に接続する導電性の部材である。また、第2ワイヤ50eは、第3電極対の電極間を電気的に接続する導電性の部材であり、第2ワイヤbは、第6電極対の電極間を電気的に接続する導電性の部材である。すなわち、本実施の形態では、第1ワイヤおよび第2ワイヤのうち50a,b,cは、第1素子30と第2素子40を電気的に接続する導電性の部材、また、50d,e,fは、第1素子30と絶縁基板20を電気的に接続する導電性の部材である。ワイヤ50の材質としては、例えばアルミニウム等を用いることができる。また、第1ワイヤ50a,c,d,fおよび第2ワイヤ50b,eはz軸方向に凸の形状を有している。
【0020】
第1ワイヤ50a,c,d,fおよび第2ワイヤ50b,eと各電極とは、例えば超音波接合等により接合されている。
【0021】
シリコーンゲル60は、筐体10内に充填され、少なくとも第1ワイヤ50a,c,d,fおよび第2ワイヤ50b,eを被覆している。シリコーンゲル60は、隣接するワイヤ同士の接触によるショートや、湿気等の環境変動による劣化、特性変動を防ぐ。
【0022】
なお、ここではシリコーンゲルを例に説明をしているが、少なくとも絶縁性の性質を有し、かつ振動によるワイヤの移動を防止するための機械的強度、例えばヤング率1kPa〜1MPaのゲル状の部材であればよい。
【0023】
図1の破断検出部210は、絶縁基板20の配線を介して、第1ワイヤ50a,cの少なくとも一方または第1ワイヤ50d,fの少なくとも一方にそれぞれ電気的に接続される。破断検出部210は、第1ワイヤ50a,c,d,fの破断(破断直前の状態も含む)を検出する。破断の検出は、破断検出部210は、微弱な電流(例えば、0.01A程度)を破断検出部210と接続される第1ワイヤ50a,c,d,fに対して流す。そして、第1ワイヤ50a,c,d,fの電気特性(例えば、電気抵抗、インピーダンス等)を測定し、既定の閾値と比較することにより第1ワイヤ50a,c,d,fが破断したこと、または破断直前の状態であることを検出する。検出は、逐次行うものであってもよいし、定期的に行うものであってもよい。たとえば、電源の供給が開始または終了するタイミングで検出を行い、それ以外の時間は定期的に検出を行うことにより、使用開始直後と終了の状態と、使用中の状態を時系列的に検出することもできる。
【0024】
例として、破断検出部210が電気抵抗を測定する場合には、予め記憶装置300に記憶させる電気抵抗の第1閾値および第1閾値よりも大きい第2閾値と比較する。このとき、測定により得られる電気抵抗が第1閾値以上第2閾値未満の場合に、第1ワイヤ50a,c,d,fは破断直前の状態であると検出する。また、第2閾値以上の場合に、第1ワイヤ50a,c,d,fは破断状態であると検出する。なお、閾値の設定(例えば電気抵抗の逆数等)によっては、閾値以下の場合に検出するものであってもよい。また、閾値より大きい(または閾値より小さい)場合に検出するものであってもよい。このとき、破断検出部210は、電子装置1が故障、または故障直前の状態にあるものと判定する。また、出力装置400は、破断検出部210の判定結果をユーザや外部の機器に対して知らせる。
【0025】
電子装置1に対して振動等の外力が作用すると、シリコーンゲル60は、慣性力により筐体10内を振動する。この際のシリコーンゲル60の移動に引きずられる形で第1ワイヤ50a,c,d,fおよび第2ワイヤ50b,eが変形する。特に、第1ワイヤ50a,c,d,fおよび第2ワイヤ50b,eの延伸方向に対して略垂直な方向(
図2(b)のy軸方向)に振動が作用する際に、各ワイヤは大きく変形する。また、ワイヤ50の配置密度が高い領域と、低い領域とではシリコーンゲル60の移動量に差があり、密度が低い領域でシリコーンゲル60はより大きく移動する。すなわち、隣接するワイヤ50間の延伸方向とは垂直な方向の距離に比べて、複数平行に配置されるワイヤ50の中で外側に配置される第1ワイヤ50a,c,d,fと筐体10の内壁との距離が大きい場合には、第1ワイヤ50a,c,d,fは第2ワイヤ50b,eより大きく変形することになる。ここで、配置密度の高低としては、隣接するワイヤ50間の距離の大小として定義することができる。すなわち、隣接するワイヤ50間の距離が大きければ大きいほど配置密度は低く、ワイヤ50間の距離が小さければ小さいほど配置密度は高くなる。また、隣接するワイヤ50がない場合には、延伸方向とは垂直な方向に最も近い筐体10の内壁との距離の大小として定義することができる。
【0026】
そこで、前述のように第1ワイヤ50a,c,d,fを、破断検出部210と接続される破断検出用のワイヤ(ダミーワイヤ)とすることで、この第1ワイヤ50a,c,d,fの破断を検出する。この際、第2ワイヤ50b,eを電子装置1で機能上必要となるワイヤ(信号線)とする。その結果、ダミーワイヤとしての第1ワイヤ50a,c,d,fの破断を検出することで、信号線としての第2ワイヤ50b,eの破断の危険性があることを事前に推定することができる。また、第2ワイヤ50b,eが破断に近い状態にあることをユーザや外部の機器に知らせることができる。
【0027】
なお、本実施形態では、外側に配置される第1ワイヤ50a,c,d,fすべてを破断検出用のダミーワイヤとして説明したが、第1ワイヤ50a,c,d,fのいずれか、例えばワイヤ50a,dを破断検出用のダミーワイヤとして使用することができる。この際は、残りのワイヤ50c,fを信号線とすることも可能である。また、破断検出用のダミーワイヤは信号線を兼ねるものであってもよいし、信号線とは電気的に独立するものであってもよい。
【0028】
また、各電極としてはy軸方向に沿って複数設けられるものを例に説明をしたが、各電極対の一方の電極が一体に、かつ各電極対の他方の電極が一体に形成される、すなわち、電極21,31,32,41がそれぞれ一体に形成されるものであってもよい。
【0029】
本実施形態の電子装置1によれば、第1ワイヤの破断検出により、事前に第2ワイヤの破断を判定することができ、ワイヤ(信号線)の接続信頼性を向上させることができる。また、電子装置1が性能劣化または使用不能に陥る前に、電子装置1の状態をユーザや外部の機器に知らせることが可能となる。
【0030】
(第二の実施形態)
図3は、第二の実施形態に係る電子装置2の構成図である。また、
図4は、パワーモジュール500の概略図である。
図4(a)は、パワーモジュール500の断面図、
図4(b)は、
図4(a)中の矢印B方向にパワーモジュール500を俯瞰した図である。なお、
図1の電子装置2、および
図2のパワーモジュール100と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0031】
本実施形態では、パワーモジュール500が負荷センサ70を、演算装置600が寿命推定部610をさらに備える点で
図1の電子装置1とは異なる。寿命推定部610は、算出部610a、推定部610bを備える。
【0032】
一般に、ワイヤ50に用いられているアルミニウム等の金属には、ひずみ振幅Δεと、破断までのひずみ振幅Δεの繰り返し数N
fとの間には、次式で示される関係が存在する。
【数1】
【0033】
ここで、α、βは材料の疲労特性を表すパラメータであり、材料により固有の値を有する。一般的な金属材料では、βは0.4〜0.7程度の値をとる。
【0034】
本実施形態では、事前のシミュレーションや実験等により、ワイヤ50に作用する負荷(温度振幅や加速度振幅)とワイヤ50に発生するひずみ振幅との関係を調べておき、記憶装置300に格納しておく。そして、負荷センサ70が検出する負荷の時間履歴を用いて、ワイヤ50の寿命を高精度に推定する。本実施形態では、記憶装置300には、温度振幅をひずみ振幅に変換するための関係式が格納されている。
【0035】
負荷センサ70は、例えばパワーモジュール500(筐体10)内に設けられ、パワーモジュール500内部のワイヤ50に作用する負荷の時間履歴を検出する。なお、ここでの負荷とは、ワイヤ50の内部応力変化(またはひずみ変化)に影響を与え得る、すなわちワイヤ50に対して金属疲労を与える負荷であり、例えば温度や加速度等である。負荷センサ70としては、例えばパワーモジュール500内の温度の時間履歴を検出するサーミスタや、ワイヤ50に対して作用する加速度の時間履歴を検出する静電容量型等のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)加速度センサ等を用いることができる。なお、負荷センサ70が検出した負荷の時間履歴情報は記憶装置300に格納する。以下では、負荷センサ70としては、例としてサーミスタが用いられる。
【0036】
寿命推定部610は、破断検出部210が第1ワイヤ50a,c,d,fいずれかの破断を検出した後、負荷センサ70が検出する温度の時間履歴情報と、記憶装置300に予め格納されている温度振幅をひずみ振幅に変換する関係式とを用いて、ワイヤ50の寿命を推定する。
【0037】
以下、
図7のフローチャートを参照して、寿命推定部610の動作について説明する。
【0038】
算出部610aは、負荷センサ70から得られる温度の時間履歴情報に対して、例えばサイクルカウント等のアルゴリズムを適用することで、
図5に示すように温度の振幅と数をカウントする。また、記憶装置300に格納されているテーブルを参照して、
図6に示すように
図5と同様の温度振幅をひずみ振幅に変換する(S101)。
【0039】
算出部610aは、記憶装置300から得られるパラメータα、β、
図6のように得られるひずみ振幅を用いて、ワイヤ50の疲労度合いを示す疲労度Dを、例えば次式により算出する(S102)。ただし、次式におけるインデックスiは、1以上n以下の整数である。
【数2】
【0040】
ここで、疲労度Dが1に近づくとワイヤ50は破断する(または破断に近い状態である)と考えられるために、推定部610bは、疲労度Dを既定の閾値(例えば20%の安全率を見込んだ場合には、0.8)と比較することにより、ワイヤ50の寿命を推定する(S103)。なお、寿命を推定するとは、例えば疲労度Dが閾値以上の場合には、ワイヤ50が破断直前の状態である(寿命である)と判定することを言う。なお、閾値の取り方(例えば疲労度の逆数等)によっては、閾値以下の場合に寿命を判定するものであってもよい。また、閾値より大きい(または閾値より小さい)場合に判定するものであってもよい。
【0041】
疲労度Dが閾値以上の場合には、出力装置400は、パワーモジュール500が故障または故障直前であることをユーザや外部の機器に対して知らせる(S104)。疲労度Dが閾値より小さい場合には、再度S101に戻り、S101乃至S103のステップを繰り返し行う。なお、以上の処理(S101乃至S104)は、信号線50b,eのみに対して行うものであってもよいし、破断していないダミーワイヤを含めたワイヤ50に対して行うものであってもよい。
【0042】
本実施形態の電子装置2によれば、ワイヤの寿命を推定することができ、ワイヤ(信号線)の接続信頼性を向上させることができる。
【0043】
(第三の実施形態)
図8は、第三の実施形態に係る電子装置3の構成図である。なお、
図3の電子装置2と同様の構成には同一の符号を付して、説明は省略する。
【0044】
負荷センサ70の検出誤差や、ワイヤ50の個体差等の影響により、寿命推定部610が算出する疲労度が、予め予測された破断までの疲労度である1に達する前後に第1ワイヤ50a,c,d,fが破断する場合がある。
【0045】
本実施形態では、寿命推定部620は、破断検出部210が第1ワイヤ50a,c,d,fいずれかの破断を検出した後、予め予測された第1ワイヤ50a,c,d,fの破断までの疲労度に基づいて誤差を修正した疲労度を用いて、ワイヤ50の寿命を高精度に推定する。寿命推定部620は、算出部620a、推定部620bを備える。なお、破断までの疲労度は記憶装置300に記憶しておくことができる。
【0046】
ここでは、ダミーワイヤ50aが破断した場合を例に説明する。なお、以下では、ダミーワイヤ50aが破断した時点におけるワイヤ50a〜fの疲労度をD
a〜D
fと表す。
【0047】
以下、
図9のフローチャートを参照して、寿命推定部620の動作について説明する。
【0048】
算出部620aは、負荷センサ70から得られる温度の時間履歴情報に対して、第二の実施形態と同様に例えばサイクルカウント等のアルゴリズムを適用することで、温度振幅をひずみ振幅に変換する(S201)。そして、算出部620aは、ダミーワイヤ50aが破断した時点において、記憶装置300から得られるパラメータα、βを用いて、破断したダミーワイヤ50aの疲労度D
aを算出する(S202)。
【0049】
この際、予め予測された破断までの疲労度は本実施形態では1なので、疲労度D
aの逆数1/D
aが疲労度D
aの誤差の割合となる。そこで、算出部620aは、破断したダミーワイヤ50a以外のワイヤ50b〜50fの疲労度D
b〜D
fにも、同様の割合で誤差があるものと仮定して、ワイヤ50b〜50fの疲労度D
b〜D
fの誤差を修正する。
【0050】
具体的には、算出部620aは、破断したダミーワイヤ50aに対して算出される疲労度D
aの逆数1/D
aを誤差として算出する(S203)。また、その他のワイヤ50b〜50fに対しても同様に疲労度D
b〜D
fを算出する(S204)。そして、疲労度D
b〜D
fに対して、誤差1/D
aを乗算することで、修正された疲労度D
b’〜D
f’を算出する(S205)。推定部620bは、この修正された疲労度D
b’〜D
f’と、閾値とを比較することで、ワイヤ50b〜50fの寿命を推定する(S206)。修正された疲労度D
b’〜D
f’の算出は、D
aが1以下の場合のみに行ってもよい。D
aが1以下の場合のみ疲労度を修正することにより、修正された疲労度D
b’〜D
f’は対応するD
b〜D
fに対して必ず大きい値になり、より安全側(短寿命側)の寿命推定をすることができる。
【0051】
修正された疲労度D
b’〜D
f’が閾値以上の場合には、出力装置400は、パワーモジュール500が故障または故障直前であることをユーザや外部の機器に対して知らせる(S207)。
【0052】
修正された疲労度D
b’〜D
f’が閾値より小さい場合には、再度S201に戻り、S201、S204、S205のステップ(点線)を繰り返し行う。
【0053】
本実施形態の電子装置3によれば、誤差の修正された疲労度を用いることで、ワイヤの寿命を高精度に推定することが可能になる。
【0054】
(変形例)
変形例に係るワイヤ50は、パワーモジュール600のワイヤ50が、第1ワイヤ50a,c,d,fと、第2ワイヤ50b,eとでは異なる形状を有している。電子装置の機能を担う第2ワイヤ50b,eの接続信頼性を優先的に向上させるためには、第1ワイヤ50a,c,d,fが第2ワイヤ50b,eよりも先に破断することが好ましい。
【0055】
そこで、本変形例では、シリコーンゲル60の移動に伴い、第2ワイヤ50b,eに比べて第1ワイヤ50a,c,d,fがより大きく変形するように、第2ワイヤ50b,eよりも負荷を受けやすい形状であるか、またはワイヤ50b,eよりも低い剛性を有する第1ワイヤ50a,c,d,fを用いる。
【0056】
図10(a)の例では、第1ワイヤ50a,c,d,fの高さHを第2ワイヤ50b,eの高さhよりも高くすることにより、第1ワイヤ50a,c,d,fが周囲のシリコーンゲルから受ける力をより受けやすい形状にしている。なお、ここでの高さとしては、例えば各電極の表面から、凸状のワイヤ50の頂点までのz軸方向の距離を用いる。
【0057】
また、
図10(b)の例では、第1ワイヤ50a,c,d,fの一部に錘80を設けることにより、第1ワイヤ50a,c,d,fの質量を増やし、外力による慣性力をより受けやすい形状にしている。錘80は、第1ワイヤ50a,c,d,fに金属を溶着して設けられるものであってもよいし、第1ワイヤ50a,c,d,fの太さを部分的に太くすることにより設けられるものであってもよい。
【0058】
また、
図10(c)のように、各電極と第1ワイヤ50との接続部におけるワイヤ50a,c,d,fの曲率半径Rを、第2ワイヤ50b,eの曲率半径Rよりも小さくすることで、第1ワイヤ50a,c,d,fの剛性を低くしても良い。
【0059】
以上説明した少なくとも1つの実施形態の電子装置によれば、ワイヤの接続信頼性を向上させることが可能となる。
【0060】
これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0061】
以下に、本願原出願の特許査定時の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0062】
[1] 第1電極対と、前記第1電極対に対して略平行に設けられる第2電極対と、前記第1電極対および前記第2電極対間に、前記第1電極対および前記第2電極対に対して略平行に設けられる第3電極対と、前記第1電極対の電極間および前記第2電極対の電極間をそれぞれ電気的に接続する第1ワイヤと、前記第3電極対の電極間を電気的に接続する第2ワイヤと、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤを被覆するゲルと、前記第1ワイヤの少なくとも一方の破断を検出する第1検出部と、を備える電子装置。
【0063】
[2] 前記第1電極対、前記第2電極対および前記第3電極対は、各電極対の一方の電極が一体に、かつ各電極対の他方の電極が一体に設けられる[1]に記載の電子装置。