特許第5816456号(P5816456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5816456異方性導電接続材料、フィルム積層体、接続方法及び接続構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816456
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】異方性導電接続材料、フィルム積層体、接続方法及び接続構造体
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20151029BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20151029BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20151029BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20151029BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20151029BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   C09J201/00
   C09J4/02
   C09J11/06
   C09J9/02
   H01B1/20 D
   H01R11/01 501A
   H01R11/01 501C
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-107457(P2011-107457)
(22)【出願日】2011年5月12日
(65)【公開番号】特開2011-204685(P2011-204685A)
(43)【公開日】2011年10月13日
【審査請求日】2014年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 恭志
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/046189(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/121266(WO,A1)
【文献】 特開2006−160861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H01B 1/20− 1/24、5/16
H01R 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子が接着剤中に分散されてなる異方性導電接続材料において、
上記接着剤は、膜形成材料と、アクリル化合物と、有機過酸化物と、アミン化合物とを含有し、
上記アミン化合物がシアノ基を有するイミダゾール化合物であり、上記アクリル化合物30質量部に対して、0.1〜5質量部含有されていることを特徴とする異方性導電接続材料。
【請求項2】
該異方性導電接続材料は、フィルム状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の異方性導電接続材料。
【請求項3】
剥離フィルム上に、導電性粒子が接着剤中に分散されてなる異方性導電接続層が形成されたフィルム積層体において、
上記接着剤は、膜形成材料と、アクリル化合物と、有機過酸化物と、アミン化合物とを含有し、
上記アミン化合物がシアノ基を有するイミダゾール化合物であり、上記アクリル化合物30質量部に対して、0.1〜5質量部含有されていることを特徴とするフィルム積層体。
【請求項4】
基板の端子と電子部品の端子とを異方性導電接続層により接続する接続方法において、
上記基板の端子上に、導電性粒子が接着剤中に分散されてなる異方性導電接続層を形成する接着層形成工程と、
上記異方性導電接続層を介して、上記電子部品の端子が上記基板の端子と対向するように上記電子部品を上記基板上に搭載する搭載工程と、
上記電子部品の上面から加圧ヘッドで加熱、加圧して、搭載した上記電子部品を上記基板に対して加圧し、上記基板の端子と上記電子部品の端子とを上記異方性導電接続層の上記導電性粒子を介して電気的に接続する接続工程とを有し、
上記異方性導電接続層の接着剤は、膜形成材料と、アクリル化合物と、有機過酸化物と、アミン化合物とを含有し、上記アミン化合物がシアノ基を有するイミダゾール化合物であり、上記アクリル化合物30質量部に対して、0.1〜5質量部含有されていることを特徴とする接続方法。
【請求項5】
基板の端子と電子部品の端子との間に異方性導電接続層を介在させて、上記基板と上記電子部品とを接続及び導通した接続構造体において、
上記異方性導電接続層は、導電性粒子が接着剤中に分散されてなり、
上記接着剤は、膜形成材料と、アクリル化合物と、有機過酸化物と、アミン化合物とを含有し、
上記アミン化合物がシアノ基を有するイミダゾール化合物であり、上記アクリル化合物30質量部に対して、0.1〜5質量部含有されていることを特徴とする接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフレキシブルプリント配線板や半導体素子等の電子部品を配線板に実装する際に使用する異方性導電接続材料、剥離フィルム上に異方性導電接続層が形成されたフィルム積層体、異方性導電接続層を用いて電子部品と配線板とを接続する接続方法及びこの接続方法により得られた接続構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大画面テレビジョン装置に代表されるように、液晶画面の大型化が進んでいる。このような状況の中、電子部品と配線板とを異方性導電フィルムで接続する際に、熱応力の影響を抑えるための低温硬化、及び生産性の向上を図るためのタクトタイムの短縮化が求められている。現在、160℃−4secまで低温、短時間化が実現できている。しかしながら、更に、140℃−4secまで低温化することが求められている。
【0003】
このような要求を満足するため、電子部品と配線板との接続には、アクリレートを有機過酸化物によりラジカル重合させて、配線板と電子部品とを接着し、導通するアクリル系の異方性導電フィルムが使用されている。
【0004】
アクリル系の異方性導電フィルムには、主に硬化成分となるラジカル重合性物質の(メタ)アクリレートと、膜成分となる高分子材料と、硬化触媒となる有機過酸化物と、導電性粒子とが含有されている。例えば、ラジカル重合性物質としてエポキシアクリレートオリゴマーと、光照射によって活性ラジカルを発生するビスイミダゾール類と、導電性粒子とを含有した異方性導電フィルムがある(例えば、特許文献1参照。)。このようなアクリル系の異方性導電フィルムは、エポキシ系の異方性導電フィルムとは反応が異なり、反応過程で接着性が得られる水酸基を発生することがないことから接着性が低下するといった問題が生じる。
【0005】
そこで、アクリル系の異方性導電フィルムでは、硬化成分としてリン酸基含有アクリレートやウレタンアクリレートを添加することで接着強度を向上させている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、リン酸基含有アクリレートを添加した場合には、ポリイミドや金属配線等への接着性は向上するが、不純物や分解して発生するリン酸が配線を腐食してしまう。このため、アクリル系の異方性導電フィルムでは、リン酸基含有アクリレートを少量しか添加することができず、電子部品と配線板との接着や導通性において十分な効果を得ることができない。
【0007】
また、ウレタンアクリレートを添加する場合には、通常使用されるウレタンアクリレートは応力緩和性も考慮にいれて分子量が大きいウレタンアクリレートを使用することが多いが、分子量が大きいと粘度が高くなる。
【0008】
通常、図5(A)に示すように、端子40が形成された配線板41上に、異方性導電フィルム42を貼り合せ、この異方性導電フィルム42上に電子部品43を搭載する。そして、図5(B)に示すように、電子部品43を加熱、押圧し、異方性導電フィルム42を硬化させ、導電性粒子44を介して配線板41の端子40と電子部品43の端子45とを電気的に接続させることができる。
【0009】
一方、ウレタンアクリレートを添加した異方性導電フィルム46では、図6に示すように、配線板41と電子部品43との接着や導通性が不十分となってしまう。図6(A)に示すように、端子40が形成された配線板41上に、異方性導電フィルム46を貼り合せ、この異方性導電フィルム46上に電子部品43を搭載し、配線板41に対して電子部品43を加熱、加圧する際に、配線板41の端子40と電子部品43の端子45との間で電気的接続が取れる前に異方性導電フィルム46の接着剤が固まってしまう先硬化の問題が発生する。これにより、配線板41の端子40と電子部品43の端子45との間から接着剤が排除されず、端子間の導通が得られなくなる。そこで、分子量が小さいウレタンアクリレートを使用した場合には、配線板41と電子部品43との接着力が上がらず、十分な効果を得ることができない。
【0010】
したがって、配線板と電子部品とを低温硬化及び生産性の向上を図ることができるアクリル系の異方性導電フィルムで接続する方法において、接続強度及び導通の信頼性が高い接続をすることができる方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−283985号公報
【特許文献2】特開2003−313533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、基板及び電子部品の接続において、接続強度及び導通の信頼性を向上させることができる異方性導電接続材料、剥離フィルム上に異方性導電接続層を形成したフィルム積層体、異方性導電接続層を用いて電子部品と配線板とを接続する接続方法及びこの接続方法によって得られた接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成する本発明に係る異方性導電接続材料は、導電性粒子が接着剤中に分散されてなり、接着剤は、膜形成材料と、アクリル化合物と、有機過酸化物と、アミン化合物とを含有し、アミン化合物がシアノ基を有するイミダゾール化合物であり、アクリル化合物30質量部に対して、0.1〜5質量部含有されていることを特徴とする。
【0014】
上述した目的を達成する本発明に係るフィルム積層体は、剥離フィルム上に、導電性粒子が接着剤中に分散されてなる異方性導電接続層が形成されてなり、接着剤は、膜形成材料と、アクリル化合物と、有機過酸化物と、アミン化合物とを含有し、アミン化合物がシアノ基を有するイミダゾール化合物であり、上記アクリル化合物30質量部に対して、0.1〜5質量部含有されていることを特徴とする。
【0015】
上述した目的を達成する本発明に係る接続方法は、基板の端子と電子部品の端子とを異方性導電接続層により接続する方法であり、基板の端子上に、導電性粒子が接着剤中に分散されてなる異方性導電接続層を形成する接着層形成工程と、異方性導電接続層を介して、電子部品の端子が基板の端子と対向するように電子部品を基板上に搭載する搭載工程と、電子部品の上面から加圧ヘッドで加熱、加圧して、搭載した電子部品を上記基板に対して加圧し、基板の端子と電子部品の端子とを異方性導電接続層の導電性粒子を介して電気的に接続する接続工程とを有し、異方性導電接続層の接着剤は、膜形成材料と、アクリル化合物と、有機過酸化物と、アミン化合物とを含有し、アミン化合物がシアノ基を有するイミダゾール化合物であり、上記アクリル化合物30質量部に対して、0.1〜5質量部含有されていることを特徴とする。
【0016】
上述した目的を達成する本発明に係る接続構造体は、基板の端子と電子部品の端子との間に異方性導電接続層を介在させて、基板と電子部品とを接続導通したものであり、異方性導電接続層は、導電性粒子が接着剤中に分散されてなり、接着剤は、膜形成材料と、アクリル化合物と、有機過酸化物と、アミン化合物とを含有し、アミン化合物がシアノ基を有するイミダゾール化合物であり、上記アクリル化合物30質量部に対して、0.1〜5質量部含有されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、異方性導電接続材料や異方性導電接続層の接着剤に、膜形成材料と、アクリル樹脂と、有機過酸化物と、アミン化合物とを含有し、アミン化合物として環状の第3級アミン化合物を含有することにより、導通抵抗が高くならず、接着力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を適用したフィルム積層体の断面図である。
図2】基板とICチップとを異方性導電フィルムで接続した接続構造体の断面図である。
図3】実施例の導通抵抗を測定する際に使用した接続構造体の斜視図である。
図4】実施例の接着強度試験に使用した接続構造体の斜視図である。
図5】一般的なアクリル系異方性導電フィルムで電子部品と配線板とを接続する方法を説明する断面図であり、(A)は、配線板に貼付けた異方性導電フィルム上に電子部品を搭載し、加熱、加圧している状態を示す断面図であり、(B)は、配線板と電子部品とを異方性導電フィルムで接着した状態を示す断面図である。
図6】ウレタンアクリレートを含有する異方性導電フィルムで電子部品と配線板とを接続する方法を説明する断面図であり、(A)は、配線板に貼付けた異方性導電フィルム上に電子部品を搭載し、加熱、加圧している状態を示す断面図であり、(B)は、配線板と電子部品とを異方性導電フィルムで導通していない状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明が適用された異方性導電接続材料、フィルム積層体、接続方法及び接続構造体の実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1. 異方性導電接続材料・フィルム積層体
2. 接続構造体・接続方法
3. 実施例
【0020】
<1. 異方性導電接続材料・フィルム積層体>
異方性導電接続材料は、例えば基板の端子と電子部品の端子との間に介在し、基板と電子部品とを接続して導通させるものである。このような異方性導電接続材料は、導電性粒子を含有するフィルム状の異方性導電接着フィルム又はペースト状の異方性導電接着ペーストである。本願では、異方性導電接着フィルム又は異方性導電接着ペーストを「異方性導電接続材料」と定義する。以下では、異方性導電接着フィルムを例に挙げて説明する。
【0021】
フィルム積層体1は、図1に示すように、通常、基材となる剥離フィルム2上に異方性導電接続層となる異方性導電フィルム3が積層されたものである。
【0022】
剥離フィルム2は、例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等にシリコーン等の剥離剤を塗布してなるものである。異方性導電フィルム3は、この剥離フィルム2により形状が維持されている。
【0023】
異方性導電フィルム3は、膜形成材料と、硬化成分としてアクリル樹脂と、硬化剤として有機過酸化物と、アミン化合物とを少なくとも含有する接着剤(バインダ)4に導電性粒子5が分散されたものである。この異方性導電フィルム3は、剥離フィルム2上にフィルム状に形成されている。
【0024】
膜形成樹脂としては、平均分子量が10000〜80000程度の樹脂が好ましい。膜形成樹脂としては、例えばフェノキシ樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹等の各種の樹脂が挙げられる。中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が特に好ましい。膜形成樹脂の含有量は、100質量部の接着剤4に対して、通常30〜80質量部、好ましくは40〜70質量部である。
【0025】
硬化成分としては、ラジカル重合性樹脂であり、熱硬化性樹脂のアクリル樹脂を用いる。アクリル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じてアクリル化合物、液状アクリレート等を適宜選択することができる。例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等を挙げることができる。なお、アクリレートをメタクリレートにしたものを用いることもできる。
【0026】
硬化成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。硬化成分の含有量は、100質量部の接着剤4に対して、通常10〜60質量部、好ましくは20〜50質量部である。
【0027】
なお、接着剤4には、エポキシ樹脂を硬化成分として含有させていない。接着剤4には、後述するように接着力を上げるためにアミン化合物を含有させていることから、エポキシ樹脂を含有していると、エポキシの反応が進行して増粘するため、正常に基板と電子部品とを接続することができず、接着強度が低下し、導通抵抗が上昇してしまうからである。
【0028】
硬化剤には、ラジカル開始重合剤となるものであり、有機過酸化物を用いる。有機過酸化物としては、例えば、ラウロイルパーオキサイド、ブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド等を挙げることができる。硬化剤の含有量は、100質量部の接着剤4に対して、通常0.1〜30質量部、好ましくは1〜20質量部である。
【0029】
アミン化合物は、接着剤4の接着力を向上させるものである。アミン化合物としては、シラノール基やビニル基等により変性されていないものを用いる。具体的に、アミン化合物としては、環状の第3級アミン化合物であり、イミダゾール化合物等を挙げることができる。環状の第3級アミン化合物としては、イミダゾール化合物が好ましく、中でもシアノ基を有するイミダゾール化合物が特に好ましく、シアノ基を有するイミダゾール化合物では極性が上がるため、接着強度をより高くすることができる。アミン化合物の配合量は、アクリル樹脂30質量部に対して、0.1〜5質量部とすることが好ましく、0.1質量部よりも少ない場合には、異方性導電フィルム3の接着力が十分に上がらず、一方、5質量部よりも多い場合には、接続信頼性が低下してしまう。アミン化合物としてイミダゾール化合物を使用する場合、イミダゾール化合物の含有量は、アクリル樹脂30質量部に対して、0.5質量部〜5質量部とすることによって、より接着強度を高くすることができるので好ましい。
【0030】
以上のような構成からなる接着剤4では、アミン化合物を添加すると、通常その極性により金属密着性が上がるといわれているが、アミン化合物により重合が開始する材料が含有されていないので、反応後の立体障害が起きにくく、アミン化合物を効果的に使用でき、異方性導電フィルム1の接着力を上げることができる。
【0031】
また、接着剤4では、アミン化合物を触媒として使用した場合、例えば、反応性が早く、硬化反応が進行して使用前における接着剤4の保存安定性に影響を与え、製品寿命が短くなるような2−メチルイミダゾールを使用した場合であっても、異方性導電フィルム3の製品寿命に影響を与えることなく使用できる。
【0032】
なお、接着剤4には、シランカップリング剤を含有させてもよい。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等を挙げることができる。シランカップリング剤を添加することにより、有機材料と無機材料との界面における接着性を向上させることができる。
【0033】
接着剤4に含有させる導電性粒子5としては、異方性導電フィルム3において使用されている公知の何れの導電性粒子を挙げることができる。導電性粒子5としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、或いは、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートしたもの等が挙げられる。また、導電性粒子5としては、樹脂粒子の表面に金属をコートしたものも用いることができ、樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を挙げることができる。
【0034】
導電性粒子5の平均粒径は、接続信頼性の観点から、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜10μmである。また、接着剤4中の導電性粒子5の平均粒子密度は、接続信頼性及び絶縁信頼性の観点から、好ましくは1000〜50000個/mm、より好ましくは3000〜30000個/mmである。
【0035】
このような構成からなるフィルム積層体1は、トルエンや酢酸エチル等の溶媒に、上述した接着剤4を溶解させ、導電性粒子5を分散させた接着剤溶液を作製し、この接着剤溶液を剥離性を有する剥離フィルム2上に所望の厚さとなるように塗布し、乾燥して溶媒を除去し、異方性導電フィルム3を形成することによって製造することができる。
【0036】
なお、フィルム積層体1は、このような剥離フィルム2上に異方性導電フィルム3を形成した構成に限定されず、異方性導電フィルム3に例えば接着剤4のみからなる絶縁性樹脂層(NCF:Non Conductive Film層)を積層するようにしてもよい。
【0037】
また、フィルム積層体1は、異方性導電フィルム3の剥離フィルム2が積層された面とは反対の面側にも剥離フィルムを設ける構成としてもよい。
【0038】
以上のような構成からなるフィルム積層体1の異方性導電フィルム3は、ラジカル系異方性導電フィルムであり、膜形成樹脂としてフェノキシ樹脂やウレタン樹脂等を含有し、硬化成分としてアクリル樹脂を含有し、ラジカル開始重合剤として有機過酸化物を含有し、これらと共に接着剤4の接着力を向上させるアミン化合物が含有されていることによって、抵抗が上がることなく高い接着強度が得られる。
【0039】
また、フィルム積層体1の異方性導電フィルム3では、イミダゾール化合物等のアミン化合物によってアニオン重合するようなエポキシ樹脂が接着剤4に含有されておらず、アミン化合物がラジカル重合開始剤として使用されないため、接着剤4を高めるものとして使用することができ、アミン化合物の効果を発揮させることができる。
【0040】
<2.接続構造体・接続方法>
次に、この異方性導電フィルム3を用いて基板の端子と電子部品の端子とを導通して接続する接続方法及びこれにより製造される接続構造体について説明する。
【0041】
図2に示す接続構造体10は、例えば基板としてリジッド配線板11と電子部品としてICチップ12とを異方性導電フィルム3で機械的及び電気的に接続固定したものである。この接続構造体10は、リジッド配線板11の端子13とICチップ12の端子14とが導電性粒子5によって電気的に接続されている。
【0042】
この接続構造体10の製造方法は、リジッド配線板11の端子13上に、異方性導電接続層となる異方性導電フィルム3を貼り付ける接着層形成工程と、異方性導電フィルム3を介して、ICチップ12の端子14がリジッド配線板11の端子13と対向するように、ICチップ12をリジッド配線板11上に搭載する搭載工程と、ICチップ12の上面から加圧ヘッドを加熱、加圧して、搭載したICチップ12をリジッド配線板11に対して加熱しながら加圧し、リジッド配線板11の端子13とICチップ12の端子14とを異方性導電性フィルム3の導電性粒子5を介して電気的に接続する接続工程とを有する。
【0043】
先ず、接着層形成工程は、リジッド配線板11上の端子13におけるICチップ12の端子14と接続する位置にフィルム積層体1の異方性導電フィルム3がリジッド配線板11の端子13側となるように置き、剥離フィルム2を剥がし取り、異方性導電フィルム3のみとした後、端子13に異方性導電フィルム3を貼付ける。この貼付けは、異方性導電フィルム3に含まれる熱硬化性樹脂成分が硬化しない温度で行い、例えば僅かに加圧しながら70℃〜100℃程度の温度で、0.5秒〜2秒程度加熱する。これにより、異方性導電フィルム3がリジッド配線板11の端子13上に位置決め固定される。
【0044】
次に、異方性導電フィルム3上にICチップ12を搭載する搭載工程を行う。搭載工程では、異方性導電フィルム3の位置合わせ状態を確認し、位置ずれ等が生じていない場合には、異方性導電フィルム3上にICチップ12の端子14が位置し、リジッド配線板11の端子13とICチップ12の端子14が対向するように、ICチップ12を異方性導電フィルム3を介してリジッド配線11上に搭載する。
【0045】
次に、リジッド配線板11とICチップ12とを機械的及び電気的に接続する接続工程を行う。接続工程は、加熱及び加圧可能な加圧ヘッドでICチップ12の上面からICチップ12をリジッド配線板11に対して加熱しながら加圧し、異方性導電フィルム3を硬化させ、リジッド配線板11の端子13とICチップ12の端子14とを導電性粒子5を介して電気に接続し、リジッド配線板1とICチップ12とを異方性導電フィルム3で機械的に接続する。
【0046】
この接続工程の条件は、加熱温度が異方性導電フィルム3に含まれる熱硬化性樹脂の硬化温度以上の温度であり、端子13、14間から接着剤4が排除され、導電性粒子5を挟持し得る圧力で加圧する。これにより、リジッド基板11とICチップ12とが異方性導電フィルム3を介して電気的及び機械的に接続される。温度及び加圧の具体的な条件としては、温度130℃〜150℃程度、圧力1MPa〜100MPa程度である。
【0047】
以上のように製造された接続構造体10は、異方性導電フィルム3に膜形成樹脂としてフェノキシ樹脂やウレタン樹脂等が含有され、硬化成分としてアクリル樹脂が含有され、ラジカル開始重合剤として有機過酸化物が含有され、これらと共に接着剤4の接着力を向上させるアミン化合物が含有されていることによって、異方性導電フィルム3の接着強度を高く、リジッド配線板11とICチップ12の機械的な接続強度が高いだけではなく、リジッド基板11の端子13とICチップ12の端子14との電気的な接続強度も高いものである。
【0048】
また、この接続構造体10では、異方性導電フィルム3にエポキシ樹脂が含有されていないため、異方性導電フィルム13が増粘せず、リジッド配線板11とICチップ12との間で接続不良が発生することも防止できている。したがって、この接続構造体10は、リジッド配線板11とICチップ12との接続強度が高く、導通の信頼性が高いものである。
【0049】
また、接続構造体10の基板としては、リジッド配線板11に限定されず、端子を有する絶縁性基板であれば何れのものであってもよく、端子を設けたガラス基板、プラスチック基板、ガラス強化エポキシ基板等を挙げることができる。
【0050】
また、電子部品としては、ICチップ12に限らず、他の電子部品であってもよい。例えば、LSI(Large Scale Integration)チップ等のICチップ以外の半導体チップやチップコンデンサ等の半導体素子、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible printed circuits)、液晶駆動用半導体実装材料(COF:Chip On Film)等を挙げることができる。
【0051】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明が前述の実施の形態に限定されるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0052】
<3.実施例>
次に、本発明の具体的な実施例について、実際に行った実験結果に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
<フィルム積層体の作製>
先ず、有機溶媒として酢酸エチル、トルエンを用い、この有機溶媒に下記の表1、表2に示す配合の膜形成材料、硬化成分、有機過酸化物、アミン化合物を固形分50%となるようにして溶解した混合溶液を作製した。次に、この混合溶液を厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、70℃で5分間乾燥して、フィルム状に形成したフィルム積層体のサンプルを作製した。実施例1〜実施例6及び比較例1〜比較例3における異方性導電フィルム材料の配合は、表1、表2に示すように行った。なお、下記に示す評価を行う際には、厚みが20μmとなるように調整したものを使用した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
実施例1〜実施例6及び比較例1〜比較例3の異方性導電フィルムについて、導通抵抗測定及び接着強度試験を行った。
【0057】
<導通抵抗測定>
導通抵抗測定の試験は、次のようにして図3に示す接続構造体20を作製し、導通抵抗を測定した。先ず、0.7mm厚のガラスに透明導電膜(ITO膜)21aを付けたITOガラス21に、各実施例及び各比較例の異方性導電フィルム22を貼付け、その上にフレキシブル配線基板(FPC)23を搭載した。フレキシブル配線基板23は、サイズは20mm×40mm×総厚み46μmであり、PI/Cu=38μm/8μm、ピッチ50μmで導通測定用配線を形成した測定用の特性評価用素子を使用した。次に、加圧ヘッドでフレキシブル配線基板23をITOガラス21側に、温度160℃、圧力4MPaの条件で4秒間加圧しながら加熱し、異方性導電フィルム22を硬化させて、プリント配線基板23とITOガラス21とを導通させた接続構造体20を作製した。
【0058】
そして、この各実施例及び比較例の接続構造体20について、60℃/95%RH環境下に500時間放置後(エージング後)の導通抵抗値を評価した。導通抵抗値は、デジタルマルチメーターを用いて、4端子法にて電流1mAを流したときの導通抵抗値を測定した。エージング後の導通抵抗値が5Ω以下である場合には、抵抗が低いものとする。
【0059】
<接着強度試験>
接着強度試験は、図4に示す接続構造体30を作製して行った。接続構造体30には、上述した導通抵抗測定と同じ構成のITOガラス31及びフレキシブルプリント配線基板32を使用した。ITOガラス31とフレキシブルプリント配線基板32との間に各実施例及び比較例の異方性導電フィルム33を介在させ、上述した導通抵抗測定と同じ温度及び加熱条件でITOガラスとフレキシブルプリント配線基板32とを機械的及び電気的に接続し、接続構造体30を作製した。そして、この各実施例及び比較例の接続構造体30について、フレキシブルプリント配線基板32の中央部分を幅10mmで切取り、切取った部分から露出した異方性導電フィルム33を引張試験機(テンシロン、オリエンテック社製)を用いて、剥離速度50mm/分、90度(Y軸方向)に引き上げ、接着強度を測定した。接着強度が4N/cm以上である場合には、接着強度が高いものとする。
【0060】
表1に示す結果から、異方性導電フィルムにイミダゾール化合物が含有されている実施例1〜実施例6では、イミダゾールの極性により異方性導電フィルムの接着力が高くなり、ITOガラスとフレキシブルプリント配線基板との密着力が増して、接着強度が4N/cm以上と高くなった。また、シアノ基を有するイミダゾール化合物を含有した実施例2及び実施例3では、接着強度が高く、実施例2に示すように、イミダゾールの含有量が0.5重量部と少なくても接着強度が高くなった。
【0061】
一方、比較例1では、異方性導電フィルムにエポキシ樹脂が含有されているため、イミダゾール化合物が硬化剤として消費されてしまい、接着強度が低下し、また抵抗が大きくなった、比較例2では、アミン化合物として2官能第1級アミンを用いているため、接着強度が十分に向上せず、また抵抗が大きくなった。比較例3では、アミン化合物として直鎖状の第3級アミン化合物を用いているため、接着強度が十分に向上しなかった。
【符号の説明】
【0062】
1 フィルム積層体、2 剥離フィルム、3 異方性導電フィルム、4 接着剤、5 導電性粒子、10 接続構造体、11 リジッド配線板、12 ICチップ、13 端子、14 端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6