(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816480
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】支承構成体の保管具、保管具付き支承構成体および支承構成体の保管方法
(51)【国際特許分類】
F16C 33/10 20060101AFI20151029BHJP
E01D 19/04 20060101ALI20151029BHJP
E04B 1/36 20060101ALI20151029BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20151029BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20151029BHJP
F16C 29/02 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
F16C33/10 Z
E01D19/04 A
E01D19/04 B
E04B1/36 Z
F16F15/02 L
F16C33/20
F16C29/02
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-165344(P2011-165344)
(22)【出願日】2011年7月28日
(65)【公開番号】特開2013-29151(P2013-29151A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕二
【審査官】
久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−041827(JP,A)
【文献】
特開2002−098189(JP,A)
【文献】
特開2006−257683(JP,A)
【文献】
特開2000−192961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00− 17/26
F16C 33/00− 33/28
E01D 19/04
F16F 15/02
E04B 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造物および下部構造物に各別に固定されるとともに互いに水平方向に相対的に摺動可能に配置される上下一対の支承構成体のうち、摺動面部の表面側部分に液状の潤滑剤が保持された一の支承構成体を保管する支承構成体の保管具であって、
前記潤滑剤を保持するとともに押圧されることにより該潤滑剤が染み出る保持部材と、
該保持部材が載置された不透液性部材と、
該不透液性部材との間に前記保持部材を挟み込むとともに、該保持部材の反対側から前記摺動面部の表面側部分が当接する透液性部材と、を備え、
前記保持部材および前記透液性部材は、前記一の支承構成体の自重により前記透液性部材を介して前記保持部材が押圧された状態で、該保持部材からの前記潤滑剤の染み出しが開始してから飽和に達するまでに要する時間よりも、該保持部材から染み出して前記透液性部材に染み込んだ潤滑剤の当該透液性部材からの染み出しが開始してから飽和に達するまでに要する時間が長くなるように構成されていることを特徴とする支承構成体の保管具。
【請求項2】
請求項1記載の支承構成体の保管具であって、
前記透液性部材を前記反対側から被覆するように、該透液性部材に剥離可能に固着された被覆部材を備えていることを特徴とする支承構成体の保管具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の支承構成体の保管具であって、
当該支承構成体の保管具の平面視において、前記保持部材は、前記不透液性部材および前記透液性部材よりも小さく、かつこれらの不透液性部材および透液性部材の外周縁部の内側に配置され、
これらの不透液性部材および透液性部材は、互いの外周縁部同士が全周にわたって接合された状態で、前記保持部材を挟み込んでいることを特徴とする支承構成体の保管具。
【請求項4】
上部構造物および下部構造物に各別に固定されるとともに互いに水平方向に相対的に摺動可能に配置される上下一対の支承構成体のうち、摺動面部の表面側部分に液状の潤滑剤が保持された一の支承構成体と、
請求項1記載の支承構成体の保管具と、を備え、
該支承構成体の保管具上に前記一の支承構成体が、前記透液性部材に前記反対側から前記摺動面部の表面側部分が当接し、該一の支承構成体の自重により前記透液性部材を介して前記保持部材が押圧されるように設置されてなることを特徴とする保管具付き支承構成体。
【請求項5】
上部構造物および下部構造物に各別に固定されるとともに互いに水平方向に相対的に摺動可能に配置される上下一対の支承構成体のうち、摺動面部の表面側部分に液状の潤滑剤が保持された一の支承構成体を保管する支承構成体の保管方法であって、
請求項1記載の支承構成体の保管具上に前記一の支承構成体を、前記透液性部材に前記反対側から前記摺動面部の表面側部分が当接し、該一の支承構成体の自重により前記透液性部材を介して前記保持部材が押圧されるように設置する設置工程を有することを特徴とする支承構成体の保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支承構成体の保管具、保管具付き支承構成体および支承構成体の保管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示すような、上部構造物および下部構造物に各別に固定されるとともに互いに水平方向に相対的に摺動可能に配置される上下一対の支承構成体を備える支承装置が知られている。これらの支承構成体のうち、少なくとも一方の支承構成体における摺動面部の表面側部分には、摺動面部の動摩擦係数を低減させる潤滑剤が保持されている。
ここで、上下一対の支承構成体を上部構造物および下部構造物に各別に固定し、当該支承装置を上部構造物と下部構造物との間に設置したときには、上部構造物の重量により、上側の支承構成体の摺動面部が下側の支承構成体の摺動面部に押し付けられることとなる。これにより、摺動面部に保持された潤滑剤の当該摺動面部からの脱離が抑制され、摺動面部の動摩擦係数が安定し易くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3563669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の支承装置では、摺動面部に潤滑剤が保持されてから、当該支承装置が上部構造物と下部構造物との間に設置されるまで、例えば各支承構成体の完成するタイミングが互いに異なること等により、各支承構成体を長期間にわたって各別に保管する必要がある場合、摺動面部に保持された潤滑剤が当該摺動面部から脱離し易く、摺動面部の動摩擦係数が大きく変動して支承装置の品質に影響を与えるおそれがある。
【0005】
なお、摺動面部から潤滑剤が脱離しても、摺動面部の動摩擦係数を安定させ易くするために、潤滑剤を摺動面部の表面側部分に、該摺動面部の表面から摺動面部の厚さ方向に大きく離れた位置に至るまで保持させ、該表面側部分に保持される潤滑剤の量を増やすことが考えられる。しかしながらこの場合、例えば、潤滑剤に高い浸透性や分散性を具備させるために潤滑剤に添加剤を添加したり、潤滑剤を摺動面部の表面側部分に加圧しながら注入したり等する必要があり、手間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡便な作業により、摺動面部からの潤滑剤の脱離を長期間にわたって抑制することができる支承構成体の保管具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る支承構成体の保管具は、上部構造物および下部構造物に各別に固定されるとともに互いに水平方向に相対的に摺動可能に配置される上下一対の支承構成体のうち、摺動面部の表面側部分に液状の潤滑剤が保持された一の支承構成体を保管する支承構成体の保管具であって、前記潤滑剤を保持するとともに押圧されることにより該潤滑剤が染み出る保持部材と、該保持部材が載置された不透液性部材と、該不透液性部材との間に前記保持部材を挟み込むとともに、該保持部材の反対側から前記摺動面部の表面側部分が当接する透液性部材と、を備え、前記保持部材および前記透液性部材は、
前記一の支承構成体の自重により前記透液性部材を介して前記保持部材が押圧された状態で、該保持部材からの前記潤滑剤の染み出しが開始してから飽和に達するまでに要する時間よりも、該保持部材から染み出して前記透液性部材に染み込んだ潤滑剤の当該透液性部材からの染み出しが開始してから飽和に達するまでに要する時間が長くなるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る保管具付き支承構成体は、上部構造物および下部構造物に各別に固定されるとともに互いに水平方向に相対的に摺動可能に配置される上下一対の支承構成体のうち、摺動面部の表面側部分に液状の潤滑剤が保持された一の支承構成体と、前記支承構成体の保管具と、を備え、該支承構成体の保管具上に前記一の支承構成体が、前記透液性部材に前記反対側から前記摺動面部の表面側部分が当接
し、該一の支承構成体の自重により前記透液性部材を介して前記保持部材が押圧されるように設置されてなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る支承構成体の保管方法は、上部構造物および下部構造物に各別に固定されるとともに互いに水平方向に相対的に摺動可能に配置される上下一対の支承構成体のうち、摺動面部の表面側部分に液状の潤滑剤が保持された一の支承構成体を保管する支承構成体の保管方法であって、前記支承構成体の保管具上に前記一の支承構成体を、前記透液性部材に前記反対側から前記摺動面部の表面側部分が当接
し、該一の支承構成体の自重により前記透液性部材を介して前記保持部材が押圧されるように設置する設置工程を有することを特徴とする。
【0010】
これらの発明によれば、支承構成体の保管具上に前記一の支承構成体を、透液性部材に前記反対側から摺動面部の表面側部分が当接するように設置すると、該一の支承構成体の自重により、透液性部材を介して保持部材が押圧されることとなり、潤滑剤が、保持部材から染み出した後に透液性部材に染み込み、該透液性部材を透過して透液性部材から染み出して摺動面部の表面側部分に供給され、該表面側部分に保持された潤滑剤の脱離が抑制される。このとき、保持部材からの潤滑剤の染み出しが開始してから飽和に達するまでに要する時間よりも、該保持部材から染み出して透液性部材に染み込んだ潤滑剤の当該透液性部材からの染み出しが開始してから飽和に達するまでに要する時間が長くなるように、保持部材および透液性部材が構成されているので、保持部材から染み出した潤滑剤が、透液性部材から一度に全量、染み出すのではなく、時間をかけて徐々に染み出して長期間にわたって摺動面部の表面側部分に供給され続けることとなる。
【0011】
以上より、支承構成体の保管具上に前記一の支承構成体を設置するという簡便な作業により、潤滑剤を、長期間にわたって摺動面部の表面側部分に供給させ続けることが可能になり、摺動面部からの潤滑剤の脱離を長期間にわたって抑制することができる。
【0012】
また、本発明に係る支承構成体の保管具では、前記透液性部材を前記反対側から被覆するように、該透液性部材に剥離可能に固着された被覆部材を備えていてもよい。
【0013】
この場合、前記被覆部材を備えているので、当該支承構成体の保管具上に前記一の支承構成体が設置されるまで、被覆部材により透液性部材を被覆しておくことで、保持部材に保持された潤滑剤が、透液性部材を透過して外部に漏出するのを抑制することができる。これにより、保持部材に潤滑剤を確実に保持させておくことが可能になり、摺動面部からの潤滑剤の脱離を長期間にわたって確実に抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る支承構成体の保管具では、当該支承構成体の保管具の平面視において、前記保持部材は、前記不透液性部材および前記透液性部材よりも小さく、かつこれらの不透液性部材および透液性部材の外周縁部の内側に配置され、これらの不透液性部材および透液性部材は、互いの外周縁部同士が全周にわたって接合された状態で、前記保持部材を挟み込んでいてもよい。
【0015】
この場合、不透液性部材および透液性部材の外周縁部同士が、互いに全周にわたって接合された状態で、不透液性部材および透液性部材が、保持部材を挟み込んでいるので、保持部材から染み出る潤滑剤が、透液性部材と不透液性部材との間を通って外部に漏出することを抑制することができる。これにより、潤滑剤を摺動面部の表面側部分に確実に供給することが可能になり、摺動面部からの潤滑剤の脱離を長期間にわたって確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡便な作業により、摺動面部からの潤滑剤の脱離を長期間にわたって抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る支承構成体の保管具を、好適に適用することができるすべり支承の側面図である。
【
図2】
図1に示すすべり支承の部分断面を含む平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る支承構成体の保管具の部分断面を含む平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る支承構成体の保管方法を説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る支承構成体の保管方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る支承構成体の保管具を、好適に適用することができるすべり支承(支承装置)を説明する。
図1に示すように、すべり支承10は、上部構造物Aおよび下部構造物Bに各別に固定されるとともに互いに水平方向に相対的に摺動可能に配置される上下一対の支承構成体11、12を備えており、上部構造物Aと下部構造物Bとの間に設置される。
【0019】
上下一対の支承構成体11、12のうち、下側の支承構成体である下沓11は、下部構造物B上に固定される固定板13と、該固定板13上に固定されたすべり板14と、すべり板14の上面にその全面にわたって形成されたすべり層(摺動面部)15と、を備えている。すべり板14は、例えばステンレス鋼などで形成されている。またすべり層15は、例えばポリ4フッ化エチレンを主成分とし芳香族ポリエステルを含有する組成物などで形成されるとともに、多数の微細空孔を有する多孔質構造となっている。
【0020】
また
図2に示すように、当該すべり支承10の平面視において、固定板13は矩形状、図示の例では正方形状に形成されるとともに、すべり板14は固定板13より小さい八角形状、図示の例では正八角形状に形成されている。そしてすべり板14は、固定板13と同軸に配置されており、固定板13の4つの角部はそれぞれ、すべり板14から三角形状に露出している。
【0021】
図1に示すように、上下一対の支承構成体11、12のうち、上側の支承構成体である上沓12は、上部構造物Aの下面に固定される板状のフランジ16と、フランジ16の下面に固定された積層ゴム17と、積層ゴム17の下面に固定され、すべり層15上に摺動可能に配置される板状のすべり部材(摺動面部)18と、を備えており、このすべり支承10は、いわゆる弾性すべり支承となっている。またフランジ16、積層ゴム17およびすべり部材18は、この順に小径になるとともに互いに同軸に配置されており、上沓12は多段柱状に形成されている。
【0022】
すべり部材18は、例えばポリ4フッ化エチレンを主成分とし芳香族ポリエステルを含有する組成物などで形成されるとともに、多数の微細空孔を有する多孔質構造となっている。また、すべり部材18において下方を向く表面は、下沓11のすべり層15において上方を向く表面に当接している。
【0023】
そして、すべり部材18の表面側部分には、すべり部材18の動摩擦係数を低減させる液状の潤滑剤が保持されている。本実施形態では、すべり部材18の動摩擦係数は、すべり部材18が潤滑剤を保持していない状態で、例えば約0.1〜0.2程度であるのに対し、すべり部材18が潤滑剤を保持した状態で、例えば約0.01〜0.02程度にまで低減され、すべり部材18が潤滑剤を保持することにより、例えば約1/5〜1/10程度に低減される。
なお潤滑剤としては、例えばシリコーンオイル単体、またはシリコーンオイルを主成分とした混合体等を採用することができる。さらに潤滑剤として、例えば、流動パラフィン、含フッ素オイル、オレイン酸、オレイルアルコール、およびオレイル酸エステル等も採用することができる。
【0024】
次に、
図3および
図4に示すように、本発明の一実施形態に係る支承構成体の保管具20を説明する。該支承構成体の保管具20は、前記上沓12を保管する。
【0025】
支承構成体の保管具20は、潤滑剤を保持するとともに押圧されることにより該潤滑剤が染み出る保持部材21と、該保持部材21が載置された不透液性部材22と、該不透液性部材22との間に保持部材21を挟み込むとともに、該保持部材21の反対側から前記上沓12のすべり部材18の表面側部分が当接する透液性部材23と、該透液性部材23を前記反対側から被覆するように、該透液性部材23に剥離可能に固着された被覆部材24と、を備えている。これらの保持部材21、不透液性部材22、透液性部材23および被覆部材24は、いずれも可撓性を具備するシート状に形成されており、当該支承構成体の保管具20は、シート状の部材が積層されてなる積層体となっている。
【0026】
保持部材21は、例えば、綿状パルプに粒状の高分子吸収体を混合してなる図示しない吸水コアを、透液性を具備する不織布シートで包み込んでなる複合体などにより構成されている。不透液性部材22は、例えば合成樹脂材料からなるシート体やフィルム体などにより構成されている。透液性部材23は、例えば透液性を具備する不織布シートおよびその他の多孔質構造物などにより構成されている。被覆部材24は、例えばシート状の基材の表面に粘着剤が配設されてなる離罫紙などにより構成されている。
【0027】
図3に示すように、当該支承構成体の保管具20の平面視において、保持部材21は、不透液性部材22および透液性部材23よりも小さく、かつこれらの不透液性部材22および透液性部材23の外周縁部22a、23aの内側に配置されている。本実施形態では、保持部材21、不透液性部材22、透液性部材23および被覆部材24は、前記平面視において、いずれも矩形状、図示の例では正方形状に形成されており、互いに同軸に配置されている。さらに前記平面視において、不透液性部材22、透液性部材23および被覆部材24は、同形同大であるとともに、保持部材21は、前記上沓12のすべり部材18よりも大きくなっている。
【0028】
また、不透液性部材22および透液性部材23は、互いの外周縁部22a、23a同士が全周にわたって接合された状態で、保持部材21を挟み込んでいる。不透液性部材22および透液性部材23の外周縁部22a、23a同士は、例えばホットラミネート処理などされることにより、熱溶着されている。
【0029】
ここで支承構成体の保持具20では、被覆部材24を剥離した状態で、透液性部材23を介して保持部材21を一定の静荷重で押圧すると、潤滑剤が、保持部材21から染み出す。保持部材21からの潤滑剤の染み出しは、当該染み出しが飽和に達し、前記一定の静荷重により押圧された状態では潤滑剤が更に染み出さなくなるまで継続される。
また、このように保持部材21から染み出した潤滑剤は、透液性部材23に染み込んだ後、該透液性部材23を透過して透液性部材23から染み出すこととなる。透液性部材23からの潤滑剤の染み出しも、当該染み出しが飽和に達し、前記一定の静荷重により押圧された状態では潤滑剤が更に染み出さなくなるまで継続される。
【0030】
そして本実施形態では、保持部材21および透液性部材23は、透液性部材23を介して保持部材21が押圧された状態で、保持部材21からの潤滑剤の染み出しが開始してから飽和に達するまでに要する時間(以下、第1時間という)よりも、該保持部材21から染み出して透液性部材23に染み込んだ潤滑剤の当該透液性部材23からの染み出しが開始してから飽和に達するまでに要する時間(以下、第2時間という)が長くなるように構成されている。またこのように、第1時間よりも第2時間が長いことにより、支承構成体の保持具20では、保持部材21からの潤滑剤の染み出しが開始してから飽和に達するまでの期間に、保持部材21から染み出す潤滑剤の単位時間あたりの平均染み出し量よりも、保持部材21から染み出して透液性部材23に染み込んだ潤滑剤の当該透液性部材23からの染み出しが開始してから飽和に達するまでの期間に、透液性部材23から染み出す潤滑剤の単位時間あたりの平均染み出し量が少なくなっている。
【0031】
図示の例では、これらの保持部材21および透液性部材23は、上沓12の自重により、透液性部材23を介して保持部材21が押圧された状態で、第1時間よりも第2時間が長くなるように構成されている。
さらに図示の例では、保持部材21および透液性部材23は、第2時間を調整することにより、第1時間よりも第2時間が長くなるように構成されている。なお第2時間は、例えば透液性部材23が多孔質構造物により構成されている場合、当該透液性部材23に形成された孔部の体積が、当該透液性部材23の全体の体積に対して占める割合などに基づいて調整することができる。
【0032】
次に、以上のように構成された支承構成体の保管具20を用いて前記上沓12を保管する支承構成体の保管方法について説明する。
【0033】
まず
図4および
図5に示すように、支承構成体の保管具20を、上沓12を設置する台部材31上に、不透液性部材22を台部材31側に向けて配置する配置工程を行うとともに、透液性部材23から被覆部材24を剥離させる剥離工程を行う。
その後、
図5に示すように、支承構成体の保管具20上に上沓12を、透液性部材23に前記反対側からすべり部材18の表面側部分が当接するように設置する設置工程を行う。これにより、支承構成体の保管具20上と上沓12とからなる保持具付き支承構成体30が形成される。
【0034】
ここで保持具付き支承構成体30では、上沓12の自重により、透液性部材23を介して保持部材21が押圧されることとなり、潤滑剤が、保持部材21から染み出した後に透液性部材23に染み込み、該透液性部材23を透過して透液性部材23から染み出してすべり部材18の表面側部分に供給され、該表面側部分に保持された潤滑剤の脱離が抑制される。このとき、前記第1時間よりも前記第2時間が長くなるように、保持部材21および透液性部材23が構成されているので、保持部材21から染み出した潤滑剤が、透液性部材23から一度に全量、染み出すのではなく、時間をかけて徐々に染み出して長期間にわたってすべり部材18の表面側部分に供給され続けることとなる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る支承構成体の保管具20、保持具付き支承構成体30および支承構成体の保管方法によれば、支承構成体の保管具20上に前記上沓12を設置するという簡便な作業により、潤滑剤を、長期間にわたってすべり部材18の表面側部分に供給させ続けることが可能になり、すべり部材18からの潤滑剤の脱離を長期間にわたって抑制することができる。
【0036】
また、前記被覆部材24を備えているので、当該支承構成体の保管具20上に前記上沓12が設置されるまで、被覆部材24により透液性部材23を被覆しておくことで、保持部材21に保持された潤滑剤が、透液性部材23を透過して外部に漏出するのを抑制することができる。これにより、保持部材21に潤滑剤を確実に保持させておくことが可能になり、すべり部材18からの潤滑剤の脱離を長期間にわたって確実に抑制することができる。
【0037】
また、不透液性部材22および透液性部材23の外周縁部22a、23a同士が、互いに全周にわたって接合された状態で、不透液性部材22および透液性部材23が、保持部材21を挟み込んでいるので、保持部材21から染み出る潤滑剤が、透液性部材23と不透液性部材22との間を通って外部に漏出することを抑え、潤滑剤をすべり部材18の表面側部分に確実に供給することが可能になり、すべり部材18からの潤滑剤の脱離を長期間にわたって確実に抑制することができる。
【0038】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、被覆部材24はなくてもよい。この場合、剥離工程を省略することができる。
また前記実施形態では、不透液性部材22および透液性部材23は、互いの外周縁部22a、23a同士が全周にわたって接合された状態で、保持部材21を挟み込んでいるものとしたが、これに限られない。
【0039】
また前記実施形態では、配置工程を有するものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、支承構成体の保管具20を台部材31上に配置しない状態で、支承構成体の保管具20上に上沓12を設置してもよい。
さらに前記実施形態では、保持部材21、不透液性部材22、透液性部材23および被覆部材24は、いずれも可撓性を具備するシート状に形成されているものとしたが、これに限られない。例えば、不透液性部材22が、高剛性材料で台状に形成されていてもよい。
【0040】
また前記実施形態では、保持部材21および透液性部材23は、第2時間を調整することにより、第1時間よりも第2時間が長くなるように構成されているものとしたが、これに限られず、第1時間を調整したり、第1時間および第2時間の両方を調整したりすることにより、第1時間よりも第2時間が長くなるように構成されていてもよい。
【0041】
また前記実施形態では、すべり支承10の上沓12のすべり部材18の表面側部分に、潤滑剤が保持されており、該上沓12を、支承構成体の保管具20を用いて保管するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、すべり支承10の下沓11のすべり層15の表面側部分に潤滑剤が保持されており、該下沓11を、支承構成体の保管具20を用いて保管してもよい。この場合、設置工程の際、支承構成体の保管具20上に下沓11を、透液性部材23に前記反対側からすべり層15の表面側部分が当接するように設置すればよい。
また、すべり層15およびすべり部材18の両表面側部分に潤滑剤が各別に保持されている場合、2つの支承構成体の保管具20を準備しておき、各支承構成体の保管具20により、下沓11および上沓12を各別に保管してもよい。
【0042】
さらにすべり支承10は、前記実施形態に示すものに限られず、上部構造物および下部構造物に各別に固定されるとともに互いに水平方向に相対的に摺動可能に配置される上下一対の支承構成体を備え、これらの上下一対の支承構成体のうちの少なくとも一方の摺動面部の表面側部分に、潤滑剤が保持されていればよい。例えば、すべり支承10がいわゆる剛すべり支承であり、上沓12が、積層ゴム17に代えて、例えば金属材料などからなる剛体を有していてもよい。さらに例えば、下沓11のすべり層15がなくてもよく、この場合、すべり板14を摺動面部とすることが可能である。
【0043】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0044】
A 上部構造物
B 下部構造物
11、12 支承構成体
15 すべり層(摺動面部)
18 すべり部材(摺動面部)
20 支承構成体の保管具
21 保持部材
22 不透液性部材
23 透液性部材
24 被覆部材
30 保持具付き支承構成体