(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明絶縁基材の一方の面側に、導電性極細繊維を含む繊維分散液を一方向αに沿って塗布して導電性極細繊維の2次元ネットワークを形成した後、該2次元ネットワークの上に、透明基体を含む透明基体塗料を塗布することにより透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、
前記透明導電層をパターン状に絶縁化して、アスペクト比が1超の複数の電極を、その長手方向が前記αと平行になるように形成する電極形成工程と、
を有することを特徴とする透明配線シートの製造方法。
電極形成工程における透明導電層のパターン状の絶縁化では、透明導電層にパターン状にレーザ光を照射して、透明基体を溶融することなく導電性極細繊維を蒸発、除去することを特徴とする請求項1に記載の透明配線シートの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、透明配線シートの製造の際には、電極に導通不良となる傷を生じることがあった。傷が生じたものは製品に含まれないように検査によって排除する必要があるが、透明なシートにおいては目視や光学的な検出手段では検出困難であるため、通常、電極に電流を流して導通検査を行っている。
しかし、従来の透明配線シートでは、電極に傷が生じているにもかかわらず、導通不良を検出できないことがあり、傷が生じたものが製品に含まれるおそれがあった。傷が生じた透明配線シートを用いた入力部材では、正しく座標を検出できないことがあった。
そこで、本発明は、導通不良を確実に検出できる透明配線シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。また、不良品が使用されず、正しく座標を検出できる入力部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、透明配線シートの製造の際に、透明基体塗料を塗布する際に生じる剪断応力によって、塗布方向に対して垂直に生じる傷が生じることを見出した。また、透明絶縁基材の片面に導電性極細繊維の分散液を塗布した後に、透明基体塗料を塗らずに一旦巻き取った場合には、導電性極細繊維が保護されていないため、塗布方向に対して垂直な傷が生じやすくなることを見出した。そして、前記配向した傷に平行に電極を設けた場合には、電極が断絶しないため、導通検査で導通不良を検出できなくなっていた。本発明者らは、これらの知見に基づき、電極の方向を検討して、以下の透明配線シートおよびその製造方法ならびにタッチパネル用入力部材を発明した。
【0006】
[1]透明絶縁基材と、該透明絶縁基材の一方の面側に設けられた透明導電層とを備え、平面視で中央に配置された入力エリアと、該入力エリアよりも外側に配置された引き回し配線エリアとを有し、入力エリア内の透明導電層がパターン状に絶縁化されて、複数の座標検出用の電極が形成されている透明配線シートであって、透明導電層は、導電性極細繊維を含む繊維分散液を一方向αに沿って塗布して導電性極細繊維の2次元ネットワークを形成した後、該2次元ネットワークの上に、透明基体を含む透明基体塗料を塗布することにより形成された層であり、前記電極は、繊維分散液の塗布方向と平行に形成されてアスペクト比が1超とされていることを特徴とする透明配線シート。
[2]引き回し配線エリアの透明導電層に、前記電極の一端に接続された中継用端子部が形成されていることを特徴とする[1]に記載の透明配線シート。
[3]引き回し配線エリアの透明導電層に、前記電極の他端に接続された検査用端子部が形成されていることを特徴とする[2]に記載の透明配線シート。
[4]透明導電層のパターン状に絶縁化された部分は、透明導電層にパターン状にレーザ光が照射されて、透明基体が溶融されることなく導電性極細繊維が蒸発、除去されていることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の透明配線シート。
[5]透明絶縁基材が長尺のフィルムであり、そのフィルムの長手方向が前記方向αであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の透明配線シート。
【0007】
[6]透明絶縁基材の一方の面側に、導電性極細繊維を含む繊維分散液を一方向αに沿って塗布して導電性極細繊維の2次元ネットワークを形成した後、該2次元ネットワークの上に、透明基体を含む透明基体塗料を塗布することにより透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、前記透明導電層をパターン状に絶縁化して、アスペクト比が1超の複数の電極を、その長手方向が前記αと平行になるように形成する電極形成工程と、を有することを特徴とする透明配線シートの製造方法。
[7]電極形成工程における透明導電層のパターン状の絶縁化では、透明導電層にパターン状にレーザ光を照射して、透明基体を溶融することなく導電性極細繊維を蒸発、除去することを特徴とする[6]に記載の透明配線シートの製造方法。
[8]前記透明絶縁基材として長尺のフィルムを用い、該フィルムの長手方向を前記方向αとすることを特徴とする[6]または[7]に記載の透明配線シートの製造方法。
【0008】
[9]座標検出用の第1電極が方向Xに沿って設けられた第1電極シートと、座標検出用の第2電極が前記方向Xに対して垂直な方向Yに沿って設けられた第2電極シートとを有し、第1電極と第2電極とが互いに絶縁されているタッチパネル用入力部材において、第1電極シートおよび第2電極シートの少なくとも一方は、[1]に記載の透明配線シートから得たものであることを特徴とするタッチパネル用入力部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の透明配線シートは、導通不良を確実に検出できる。
本発明の透明配線シートの製造方法によれば、導通不良を確実に検出できる透明配線シートを容易に製造できる。
本発明のタッチパネル用入力部材は、不良品が使用されず、正しく座標を検出できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<透明配線シート>
本発明の透明配線シートの一実施形態について説明する。
図1〜3に、本実施形態の透明配線シートを示す。本実施形態の第1透明配線シート1および第2透明配線シート2(以下、「第1透明配線シート」および「第2透明配線シート」を単に「透明配線シート」ということがある。)は、透明絶縁基材10と、透明絶縁基材10の一方の面に設けられた透明導電層20とを備え、平面視で中央付近の入力エリアA
1と、入力エリアA
1よりも外側に配置された引き回し配線エリアA
2とに区分されたものである。
なお、後述するように、第1透明配線シート1と第2透明配線シート2とは組み合わされてタッチパネル用の入力部材とされる。
また、本発明において、「透明」とは、JIS K7105に従って測定した光線透過率が50%以上のことを意味する。また、「絶縁」とは、電気抵抗値が1MΩ以上、好ましくは10MΩ以上のことであり、「導電」とは、電気抵抗値が1MΩ未満であることを意味する。
【0012】
(透明絶縁基材)
透明絶縁基材10の材質としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、アクリル樹脂などが挙げられる。
透明絶縁基材10の厚さは10〜250μmであることが好ましく、25〜188μmであることがより好ましい。透明絶縁基材10の厚さが前記下限値以上であれば、充分な強度・剛性を確保でき、前記上限値以下であれば、タッチパネルを容易に薄型化できる。
【0013】
(透明導電層)
透明導電層20は、層状の透明基体Bと、該透明基体Bの内部に2次元ネットワーク状に配置された導電性極細繊維Wとを含有している(
図4参照)。
入力エリアA
1内の透明導電層20には、第1絶縁ラインL
1が形成されて、複数の電極21が設けられている。具体的に、透明導電層20に第1絶縁ラインL
1が、方向αに沿って複数の略正方形状の導電部21aがその角で連結した電極形状が得られるように方向αに沿ってジグザグに形成されて、いわゆるダイヤモンドパターンの電極21が設けられている。電極21のアスペクト比は1超であり、5以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましい。また、電極21のアスペクト比は400以下であることが好ましい。ここで、アスペクト比は、電極の長さ/電極の平均幅である。アスペクト比が1の電極は投影型静電容量式のタッチパネルへの適用は困難である。
なお、隣接する互いに平行な電極21,21同士は導通していない。また、隣接する電極21,21同士の間には、第2絶縁ラインL
2が形成されて、電極21と導通しない微小導電部22が設けられている。入力エリアA
1内の、電極21および微小導電部22以外の部分は、電極21および微小導電部22と導通しない孤立導電部23となっている。
第1透明配線シート1の電極21と第2透明配線シート2の電極21とは、組み合わせて入力部材とした際に互いに重ならないように形成されている。
入力エリアA
1と引き回し配線エリアA
2との境界には、第3絶縁ラインL
3が形成されている。
【0014】
引き回し配線エリアA
2の透明導電層20には、入力エリアA
1から突出し、電極21の一端に電気的に接続された中継用端子部25が複数形成されている。中継用端子部25が形成されていると、後述する引き回し回路30を容易に且つ低抵抗に接続できる。
また、引き回し配線エリアA
2の透明導電層20には、入力エリアA
1から突出し、電極21の他端に電気的に接続された検査用端子部26が複数設けられている。ここで、検査用端子部26は、導電性物質を含むインキやペーストによって形成された低抵抗材料からなる。導電性物質としては特に制限されず、金属、導電性金属酸化物、導電性高分子などの粒子または繊維が挙げられる。検査用端子部26は検査用プローブとの接触抵抗を小さくできるため、検査用端子部26を用いて導通検査を行うことで、検査精度を向上させることができる。
【0015】
また、引き回し配線エリアA
2には、電極21で得られる信号を、各中継用端子部25から透明配線シート1,2の外部にある外部回路(図示せず)に接続するための引き回し回路30が複数本設けられている。引き回し回路30は、中継用端子部25に接続された引き回し配線31と、引き回し配線31に接続された外部接続用端子部32とを有している。また、引き回し回路30は、導電性物質を含むインキやペーストによって形成された低抵抗材料からなる。導電性物質としては特に制限されず、金属、導電性金属酸化物、導電性高分子などの粒子または繊維が挙げられる。
また、引き回し配線エリアA
2内の透明導電層20には、互いに隣接する引き回し回路30,30が透明導電層20を介して導通しないように絶縁する第4絶縁ラインL
4が、各引き回し回路30の近傍に形成されている。さらに、引き回し配線エリアA
2内の透明導電層20には、第5絶縁ラインL
5が格子状に形成されている。引き回し配線エリアA
2内の透明導電層20に格子状の第5絶縁ラインL
5が形成されていると、後述するように透明配線シート1,2を重ねてタッチパネルの入力部材とした際に、互いに隣接する引き回し回路30,30の間のクロストークを抑制できる。
【0016】
第1絶縁ラインL
1、第2絶縁ラインL
2、第3絶縁ラインL
3、第4絶縁ラインL
4および第5絶縁ラインL
5は、透明基体Bが溶融されることなく導電性極細繊維が蒸発、除去されて空隙Vが形成されたものであり(
図5参照)、透明基体は残っている。そのため、導電性極細繊維を含んでいる導電領域と光学的な特性がほぼ同等であるため、入力エリアA
1内のパターンは視認されにくくなっている。したがって、画像表示装置上に設置されるタッチパネル用入力部材として好適である。
【0017】
第1絶縁ラインL
1、第2絶縁ラインL
2、第3絶縁ラインL
3、第4絶縁ラインL
4および第5絶縁ラインL
5の幅は、照射するレーザ光の波長にもよるが、通常、10〜100μmである。幅100μmの絶縁ラインをレーザ照射により形成する場合には、複数回に分けて照射を行えばよい。
【0018】
透明導電層20に含まれる導電性極細繊維は、透明絶縁基材10の表面の面方向に沿い、その少なくとも一部が互いに接触し合う程度に密集して2次元網目状に配置されている。このような配置によって導電性極細繊維同士が互いに電気的に接続されることで、導電ネットワーク構造を形成している。
また、導電性極細繊維は、その殆どが透明基体の内部に埋設されているが、一部は透明基体の表面から突出している。
【0019】
導電性極細繊維としては、銅、白金、金、銀、ニッケル等からなる金属ナノワイヤや金属ナノチューブ、シリコンナノワイヤやシリコンナノチューブ、金属酸化物ナノチューブ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリル等の繊維状部材及びその金属被覆部材が挙げられる。これらのなかでも、透明性および導電性の点から、銀を主成分とする金属ナノワイヤ(銀ナノワイヤ)が好ましい。導電性極細繊維は、その直径が0.3〜100nm、長さが1μm〜100μmであることが好ましい。
【0020】
透明基体を形成する樹脂としては、透明な熱可塑性樹脂(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン)、熱や活性エネルギ線(紫外線、電子線、放射線)で硬化する透明な硬化性樹脂(メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケートなどのシリコーン樹脂)が挙げられる。
透明基体は、接着性および透明性の点から、透明絶縁基材10と同種の材料とすることが好ましい。例えば、透明絶縁基材がポリエチレンテレフタレートフィルムである場合には、透明基体としてポリエステル樹脂を選択することが好ましい。
【0021】
(外形マーク、位置決めマーク)
透明導電層20には、入力エリアA
1および引き回し配線エリアA
2を囲う視認可能な外形マーク27が設けられている。また、引き回し配線エリアA
2には、第1透明配線シート1と第2透明配線シート2とを重ねる際の位置合わせに用いる、視認可能な第1位置決めマーク28が設けられている。また、透明導電層20には、外形マーク27よりも外側に、引き回し回路30の印刷の際の位置合わせに用いる、視認可能な第2位置決めマーク29が設けられている。
【0022】
<透明配線シートの製造方法>
次に、上記透明配線シート1,2の製造方法について説明する。
本実施形態の透明配線シート1,2の製造方法は、透明導電層形成工程と電極形成工程とマーク形成工程と引き回し回路形成工程とを有する。
【0023】
(透明導電層形成工程)
透明導電層形成工程は、透明絶縁基材10の一方の面側に、導電性極細繊維を含む繊維分散液を一方向αに沿って塗布して導電性極細繊維の2次元ネットワークを形成した後、該2次元ネットワークの上に、透明基体を含む透明基体塗料を塗布することにより透明導電層を形成する工程である。
このときに用いる透明絶縁基材は、長尺のフィルムであってもよいし、枚葉のガラス板やフィルムであってもよいが、長尺のフィルムの場合には本発明の効果がとりわけ発揮されるため、好ましい。
透明絶縁基材として長尺フィルムを用いる場合には、
図6に示すように、透明絶縁基材の巻取りロール51から透明絶縁基材10を連続的に繰り出し、塗布装置52を用いて繊維分散液を連続的に塗布し、乾燥機53を用いて乾燥処理して、導電性極細繊維の2次元ネットワークが形成された繊維積層シート54を得る。その後、導電性極細繊維の2次元ネットワークの上に、塗布装置を用いて透明基体塗料を連続的に塗布した後、乾燥機を用いて乾燥処理することで透明導電層を形成して導電シート58を得る。このように繊維分散液を塗布した場合には、透明絶縁基材の長手方向が塗布方向となる。
あるいは、前記繊維積層シートを一旦巻き取り、
図6に示すように、改めて、繊維積層シートの巻取りロール55から繊維積層シート54を繰り出し、導電性極細繊維の2次元ネットワークの上に、塗布装置56を用いて透明基体塗料を連続的に塗布した後、乾燥機57を用いて乾燥処理することで透明導電層を形成してもよい。この場合でも、透明絶縁基材の長手方向が塗布方向となる。
なお、透明基体塗料の塗布方向は、透明絶縁基材の短手方向であっても構わない。スクリーン印刷等を適用すれば、透明基体塗料の塗布方向を透明絶縁基材の短手方向にすることは可能である。
【0024】
繊維分散液および透明基体塗料を塗布する際に使用する塗布装置52,56としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、キスコーター、ロールナイフコーター、バーコーター(ロッドコーター)等の塗工機や、スプレーもしくはスクリーン印刷機を用いることができる。これらの中でも、塗工機を用いた場合には、透明導電層に傷が発生しやすいので、本発明の効果がより発揮される。
乾燥機53,57としては、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、真空乾燥機等を適用することができる。
【0025】
(電極形成工程)
電極形成工程は、透明導電層20に、繊維分散液の塗布方向と平行に複数の電極21を形成する工程である。具体的に、電極形成工程では、透明絶縁基材10の片面に透明導電層20が形成された導電シート58をステージ上に配置した後、透明導電層20に、レーザ光発生手段より出射し、集光手段により集光したレーザ光を集光点が位置するように照射する。レーザ光の照射パターンは、第1絶縁ラインL
1、第2絶縁ラインL
2、第3絶縁ラインL
3、第4絶縁ラインL
4および第5絶縁ラインL
5が形成されるパターンとする。透明導電層20に第1絶縁ラインL
1を形成することによって複数の電極21を形成する。本製造方法では、繊維分散液の塗布方向(すなわち透明絶縁基材10の長手方向)と平行に電極21を形成する。ここでいう「平行」とは、繊維分散液の塗布方向と電極21の長手方向との角度が0°のことだけでなく、前記角度が±30°以内のことである。
また、第2絶縁ラインL
2を形成することによって微小導電部22および孤立導電部23を形成する。また、第3絶縁ラインL
3を形成することによって入力エリアA
1と引き回し配線エリアA
2の境界線を形成する。また、第4絶縁ラインL
4を形成することによって引き回し回路30,30間を絶縁する。また、第5絶縁ラインL
5を形成することによって引き回し配線エリアA
2に格子状の絶縁ラインを形成する。
電極形成工程において、目的のパターンでレーザ光を導電シート58に照射するためには、ガルバノミラーを用いてレーザ光を走査する方法、ステージを二次元的にスライドさせる方法などを適用することができる。
【0026】
電極形成工程において、導電シート58に形成する電極は、第1透明配線シートの電極21のみでもよいし、第2透明配線シートの電極21のみでもよいし、
図7に示すように、第1透明配線シートの電極21および第2透明配線シートの電極21の両方でもよい。導電シート58に形成する電極が、第1透明配線シートの電極21および第2透明配線シートの電極21の両方であると、歩留まりを向上させることができる。
なお、電極形成工程で使用される導電シート58は、長尺の導電シートから、切り出された枚葉のものであっても塗布方向αが判別できるように管理されていれば同様の効果を得ることができる。
【0027】
本製造方法で使用されるレーザ光は、YAGやYVO
4等のパルス状レーザ光、炭酸ガスレーザ等の連続発振レーザ光が挙げられる。中でも、簡便であることから、YAGやYVO
4等の波長1064nmもしくはその2次高調波を使用した532nm、パルス幅1〜200n秒のパルス状レーザ光が好ましい。また、レーザ照射痕を目立たせたくない用途に対しては、波長が1600〜600nmでパルス幅が10f〜100p秒の極短パルスレーザが好ましい。
パルス状レーザにおいては、レーザ光のスポットの位置を、スポット同士が重なるように少しずつ移動させながら、導電性基板に照射することが好ましい。
【0028】
透明導電層20においてレーザ光が照射された部分は、透明基体が溶融することなく導電性極細繊維が蒸発、除去されて空隙が形成される。この空隙では、導電性極細繊維同士の接触がなく、導電ネットワークが断絶しているため、絶縁ラインとなる。
【0029】
絶縁ラインの形成は、パルス状レーザで形成され、そのパルス幅は走査速度に比べて充分に短いため、集光スポットは略円形となり、絶縁ラインの幅は集光スポット径に等しくなる。
レーザ光の1パルスあたりの照射エネルギ密度は、レーザ光1パルスあたりの照射エネルギを集光スポット面積で除したものとして定義される。その値は、パルス幅が10f秒〜200n秒の範囲で、レーザ光の波長によらず、1×10
4〜1×10
5J/m
2となる。
また、連続する絶縁ラインを形成するためには、走査により移動して形成される個々の集光スポットが、互いにオーバーラップする必要があり、特に銀ナノワイヤを含む透明導電層では、銀ナノワイヤのみが確実に除去されて絶縁ラインの視認されにくさと絶縁の安定性を両立できる点では、オーバーラップ回数を1.5〜10回程度にすることが好ましい。また、外形マーク27、第1位置決めマーク28および第2位置決めマーク29など、視認されることを目的とする場合には、オーバーラップ回数を25回以上に設定するか、複数回の走査でオーバーラップ回数を25回以上にすることが好ましい。
【0030】
導電シートが配置されるステージとしては、光散乱性で不透明な板が好ましい。ここで、不透明とは、JIS K7105に従って測定した光線透過率が10%以下のことである。光散乱性で不透明な板としては、表面に凹凸が形成された板、内部にフィラーまたは空気を含有させた板、表面に着色インクが塗布された板などが挙げられる。
透明導電層20は透明であり、ピント(レーザ光の集光点)を合わせにくい。しかし、ステージとして光散乱性で不透明な板を用いる場合には、電極形成工程にて、不透明なステージを基準にしてピントを合わせることで、透明導電層20にピントを合わせてレーザ光を照射することができる。
また、ステージは、導電シートを固定するために、吸引可能になっていることが好ましい。
【0031】
(マーク形成工程)
マーク形成工程では、レーザ光を導電性基板に、外形マーク27、第1位置決めマーク28および第2位置決めマーク29が形成されるパターンで照射する。該工程では、外形マーク27、第1位置決めマーク28および第2位置決めマーク29を視認可能にするために、電極形成工程よりも高いエネルギでレーザ光を照射して透明基体を着色させる。電極形成工程よりも高いエネルギでレーザ光を照射する方法としては、レーザ光の走査速度を遅くする方法、レーザ光を同じ位置に複数回照射する方法、レーザ光の出力を上げる方法、長焦点距離の光学系により集光したレーザ光を照射する方法などが挙げられる。
なお、マーク形成工程は、どのタイミングでおこなってもよく、例えば、電極形成工程の前でも後でもよいし、電極形成工程の間でもよい。
【0032】
(引き回し回路形成工程)
引き回し回路形成工程は、引き回し配線エリアA
2に引き回し回路30を形成する工程である。具体的な引き回し回路30の形成方法としては、第4絶縁ラインL
4,L
4の間に導電性物質を含むインキやペーストを印刷または塗布する方法が挙げられる。印刷・塗布方法の中でも、スクリーン印刷法が好適である。通常、塗布後には、乾燥処理または焼成処理を施して、引き回し回路30を得る。これにより、長尺の透明配線シートを得る。
その後、所定のサイズに打ち抜いて、上記透明配線シート1,2を得る。
【0033】
(作用効果)
通常、透明配線シート1,2は、使用前に、電極21の両端間の電気抵抗を測定する導通検査を行う。繊維分散液の塗布方向に対して電極21を平行に形成した上記透明配線シート1,2において、塗布方向に対して垂直な傷が生じた場合には、電極21が断絶するため、導通検査において絶縁状態となり、導通不良を確実に検出できる。
なお、塗布方向に対して電極を垂直に形成した透明配線シート(すなわち本発明ではない透明配線シート)において、塗布方向に対して垂直な傷が生じた場合には、電極の面積が小さくなって電気抵抗が低下することはあっても導通状態のままであるため、導通不良を検出することが困難である。
【0034】
<タッチパネル用入力部材>
次に、上記透明配線シート1,2を用いたタッチパネル用入力部材(以下、「入力部材」という。)について説明する。
図8および
図9に示すように、本実施形態の入力部材100は、座標検出用の第1電極111が方向Xに沿って設けられた第1電極シート110と、座標検出用の第2電極121が前記方向Xに対して垂直な方向Yに沿って設けられた第2電極シート120と、表面側に配置された保護材130とを有する。第1電極シート110と第2電極シート120とは絶縁性の透明接着剤140によって接着されて、第1電極111と第2電極121とが互いに絶縁されている。また、第1電極シート110と保護材130とは絶縁性の透明接着剤150によって接着されている。
本実施形態では、第1電極シート110が上記第1透明配線シート1とされ、第2電極シート120が上記第2透明配線シート2とされている。したがって、第1電極111が第1透明配線シート1の電極21であり、第2電極121が上記第2透明配線シート2の電極21である。
保護材130としては、各種透明樹脂フィルム、ガラス板を用いることができる。
【0035】
この入力部材100を用いた座標検出では、電極を切り替えるスイッチ手段によって第2電極121の1つを選択し、矩形パルス発生装置から矩形パルスを入力し、第1電極111から発せられる微分パルス波形を観察する。スイッチ手段によって矩形パルスを入力する第2電極121を順次切り換え、各第1電極111からの微分パルス波形を観察する。また、電極を切り替えるスイッチ手段によって第1電極111の1つを選択し、矩形パルス発生装置から矩形パルスを入力し、第2電極121から発せられる微分パルス波形を観察する。スイッチ手段によって矩形パルスを送る第1電極111を順次切り換え、各第2電極121から出力される微分パルス波形を観察する。
タッチパネルの使用者が入力する際には、
図10に示すように、保護材130の表面(入力者側の表面)に指Fを接触させる。このとき、指Fと第1電極111との間に容量結合が形成され、指Fと第2電極121との間に、第1電極111を介して容量結合が形成される。
指Fが接触している部分では、第1電極111と第2電極121との間の結合容量が大きくなる。そのため、指Fの近傍の第1電極111または第2電極121から得られる微分パルス波形は大きくなる。この微分パルス波形の変動を検知することにより、X座標およびY座標を求めることができる。
【0036】
上記入力部材100では、導通検査によって確実に不良品を排除できる上記透明配線シート1,2から得た第1電極シート110および第2電極シート120を用いるため、正しく座標を検出できる。
【0037】
<他の実施形態>
なお、本実施形態は、上記実施形態に限定されない。
例えば、電極の形状は、複数の略正方形状の導電部がそのコーナー部で連結した形状である必要はなく、複数の略円形状の導電部が連結した形状や、単なる矩形状でもよい。
また、低抵抗材料からなる引き回し回路は省略されても構わない。低抵抗材料からなる引き回し回路が省略された場合には、引き回し配線エリアの透明導電層を、引き回し配線が形成されるようにレーザ光によって加工すればよい。
また、本発明の透明配線シートは、引き回し配線エリアの透明導電層に中継用端子部が形成されていなくてもよいし、検査用端子部が形成されていなくてもよい。
また、透明導電層のパターン状に絶縁化された部分は、レーザ光の照射によって導電性極細繊維を蒸発、除去させたものでなくてもよい。例えば、導電性極細繊維を切断して絶縁化したものでもよい。
また、上記実施形態の透明配線シート1,2はそのまま電極シートとして使用できるものであったが、本発明の透明配線シートは、引き回し配線エリアよりも外側に余白エリアを有する長尺の透明配線シートであってもよい。すなわち、上記製造方法における打ち抜き前の長尺の透明配線シートも本発明の透明配線シートに含まれる。
【0038】
また、本発明の入力部材は、第1電極シートおよび第2電極シートの一方が本発明の透明配線シートでなくてもよい。
また、本発明の透明配線シートを用いた他の入力部材として、透明絶縁基材と、該透明絶縁基材の両面側に設けられた透明導電層とを備え、入力エリア内の各透明導電層にアスペクト比1超の電極が形成されたものが挙げられる。この入力部材における透明導電層は上記と同様に形成され、一方の電極と他方の電極とは互いに垂直に配置され、一方の電極のみが繊維分散液の塗布方向と平行になる。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
ロール状に巻かれた厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を繰り出し、その片面に、ダイコーターを用いて、銀ナノワイヤ分散液(Cambrios社製ClearOhm)の希釈液を連続的に塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤを、赤外線乾燥機を用いて乾燥して繊維積層シートを作製し、これを巻き取った。
次いで、巻き取られた繊維積層シートを繰り出し、紫外線硬化性アクリル樹脂を、ダイコーターを用いて塗布し、紫外線照射により硬化して透明導電層を形成した後、PETフィルムの露出面に保護フィルムを重ね合わせ、巻き取った。これにより得た導電シートの表面抵抗は130Ω/□、光線透過率は95%であった。
得られた導電シートに、アスペクト比1超の第1電極が形成された第1電極シートになる領域と、第1電極に対して垂直なアスペクト比1超の第2電極が形成された第2電極シートになる領域とが形成されるように、レーザ光を照射して絶縁ラインを形成して、長尺の透明配線シートを得た。このとき、塗布方向(PETフィルムの長手方向)に沿って第1電極、第2電極を設けた。また、導電性ペーストのスクリーン印刷により、第1電極および第2電極の各々の一端には中継用端子部を形成し、他端には検査用端子部を設けた。
得られた透明配線シートにおいて、7個の第1電極シートになる領域に人為的に透明配線シートの短手方向に沿って傷を付けて試験用シートを7個作製し、これらについて電極の導通検査をした。導通検査は中継用端子部と検査用端子部との間の電気抵抗を測定することにより行った。導通検査の結果、7個の試験用シートのすべてにおいて導通不良(抵抗値100kΩ以上)を検出できた。
【0040】
また、上記の傷を付けた7個の第1電極シートを打ち抜き、これを、前記長尺の透明配線シートから打ち抜いた良品の7個の第2電極シートに貼り合せて7個の入力部材を作製した。なお、第1電極シートの露出面側には保護材として厚さ50μmのPETフィルムを貼り合せた。
次いで、第1電極シートの外部接続用端子部に100kΩの抵抗器を接続してプルダウンし、第2電極シートの外部接続用端子部から矩形パルス波形(周波数15kHz、電圧15V)を入力し、第1電極シートの外部接続用端子部から出力されるパルス波形を、オシロスコープを用いて観察した。
第1電極シート上のPETフィルムに指を接触させたところ、7個の入力部材のいずれにおいても、波形に変化が見られない領域もしくは波形がやや変化する領域が存在することが確認された。
【0041】
(比較例1)
導電シートの短手方向に沿って電極を形成したこと以外は実施例1と同様にして、長尺の透明配線シートを作製した。得られた透明配線シートにおいて、9個の第1電極シートになる領域に人為的に透明配線シートの短手方向に沿って傷を付けて試験用シートを9個作製し、これらについて電極の導通検査をした。その結果、導通不良を検出できたものは3個のみであった。なお、これらの不良サンプルを用いて、実施例1と同様に、入力部材を作製し、動作テストをしたところ、指が入力部材に接触してもパルス波形に変化が見られない領域が存在することが確認された。
また、導通不良が検出されなかった6個の試験用シートを用いて、実施例1と同様に、入力部材を作製し、動作テストをしたところ、4個のシートでは傷があるにもかかわらずパルス波形に異常が見られず、2個のシートでは、指が入力部材に接触した際のパルス波形変化が小さい領域が存在するのみであった。