(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
CIGS(Copper−Indium−Gallium−Selenium)、CIS(Copper− Indium−Selenium,)、CdTe(Cadmium−Tellur)等の化合物系太陽電池、アモルファスSi等の薄膜系太陽電池、それらを複数層積層させたハイブリッド型太陽電池、及び、有機EL(Electroluminescence)照明には、CIGS層、CIS層、CdTe層、アモルファスSi層や有機EL層等を強度的に支える目的で、基材と呼ばれる土台が使用される。
【0003】
従来、上記基材として、特許文献1に記載のように、ガラス基材が使用されることが多かった。しかし、ガラスは割れやすいので、一定の強度を確保するため、厚膜化する必要があった。ガラスを厚膜化すると、太陽電池や、有機EL照明そのものが重くなってしまう。
【0004】
一方、近年、上記基材として、ガラス基材に代わって、割れにくく、そして、薄膜化に適している金属箔を使用することが試みられている。基材用である金属箔には、耐食性、表面平滑性、及び、弾塑性変形性の何れもが良好であることが要求される。
【0005】
上記耐食性は、基材として用いる金属箔が、屋外環境で20年ともいわれる長期間曝されることを可能とするために必要とされる。
【0006】
上記表面平滑性は、基材表面に存在する突起状欠陥によって、基材上に積層される太陽電池層や有機EL層が、物理的な損傷を受けることを避けるために必要とされる。基材表面は、突起状欠陥を有さない平滑な表面であることが望まれる。
【0007】
上記弾塑性変形性は、硬質なガラス基材では不可能であった、基材用金属箔のロール形状への巻き取りを可能とするために必要とされる。その結果、Batch処理による製造を、Roll to Roll処理による連続的な製造へ変更できれば、太陽電池や有機ELの製造コストを大幅に低減できる。
【0008】
基材用金属箔として、一般的に、耐食性に優れるステンレス(SUS)箔の使用が進められている。特許文献2に記載されるように、SUS箔上に、更に有機被膜を形成した基材が使用されることもある。
【0009】
SUS箔は、優れた耐食性を有しているため、基材用金属箔として用いられる。しかし、SUS箔は、材料が高価であるという問題を有する。加えて、SUS箔は、硬度が高く圧延が容易ではないので、製造コストが高くなるという問題も有している。そのため、ガラス基材と比べると、現状、その使用はさほど広まっていない。
【0010】
一方、普通鋼(炭素鋼)箔は、SUSよりも、材料自体が安価であり、そして、高い塑性変形能を有しているので、製造コストも大幅に低減することができる。しかし、普通鋼箔そのままでは、基材用金属箔として要求される、耐食性を満足できない。基材用金属箔に要求される上記特性を満足する普通鋼箔が利用可能となれば、太陽電池及び有機ELの製造コストを大幅に低減することが可能となる。よって、現在、その開発が強く待望されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。初めに、基材用金属箔の技術構成と数値限定理由とについて詳細に説明する。
【0016】
普通鋼(炭素鋼)の耐食性を向上させるために、普通鋼にAl含有めっきを施す。このAl含有めっきにより、鋼層上にAl含有金属層が配される。このAl含有金属層により、基材用金属箔として要求される耐食性が向上する。
【0017】
上記Al含有金属層は、60〜100質量%のAl、0〜15質量%のSi、0〜40質量%のCuを含有させた組成であると好ましい。これは、この組成でめっき浴の融点が低下するためにめっき工程が簡便となるからである。より好ましくは、上記Al含有金属層を、68.2質量%Al−4.7質量%Si−27.1質量%Cu、又は、68質量%Al−32質量%Cuという組成から各成分について±5質量%以内の範囲の組成とする。この組成では、めっき浴の融点がさらに低下する。また、上記Al含有金属層の厚さは、0.1〜30μmであることが好ましい。0.1μm未満では、好適な耐食効果は得られず、30μm超では、Alを大量にめっきする必要があり、生産コストが高くなるためである。好ましくは、上記Al含有金属層の厚さを、1〜30μmとする。より好ましくは、上記Al含有金属層の厚さを、3〜30μmとする。最も好ましくは、上記Al含有金属層の厚さを、8〜30μmとする。
【0018】
一般的に、Al含有めっきの際、鋼層とAl含有金属層との界面には、Fe−Al系合金相(例えば、FeAl
3,Fe
2Al
8Si、FeAl
5Siなどの金属間化合物)が層状に形成される。この合金層は非常に硬くて脆い。Al含有めっきを施した金属箔がハンドリングなどの際に弾塑性変形すると、この合金層は、金属箔の変形に追随できず、最終的に、鋼層とAl含有金属層との剥離、及び、Al含有金属層の割れを誘発する。つまり、普通鋼箔にAl含有めっきを施せば、基材用金属箔として要求される耐食性を満足することができるが、弾塑性変形性は満足されない。
【0019】
基材用金属箔として要求される弾塑性変形性を満足するためには、鋼層とAl含有金属層との界面に生成する上記合金層が、厚さ0.1〜8μmであり、かつ、Al
7Cu
2Fe金属間化合物、又は、FeAl
3基の金属間化合物を含む必要がある。このAl
7Cu
2Fe金属間化合物、又は、FeAl
3基の金属間化合物は、上記合金層中に、面積%で、50%以上を含まれることが好ましく、90%以上を含まれることがより好ましい。
【0020】
ここで、FeAl
3基の金属間化合物とは、FeAl
3金属間化合物中に、系を構成する元素(例えば、SiやCu等のAl含有金属層を構成する元素、NiやCu等のプレめっき膜を構成する元素、あるいはC、P、Cr、Ni、Mo等の鋼層を構成する元素)が固溶した金属間化合物や、上記の系を構成する元素と、Feと、Alとから新たな組成比で形成される金属間化合物を指す。このFeAl
3基の金属間化合物は、特に、Cuが固溶したFeAl
3基の金属間化合物、又は、Niが固溶したFeAl
3基の金属間化合物であることが好ましい。しかし、後述するように、この合金層のビッカース硬度が、500〜600Hv程度となるならば、固溶する元素は、Ni又はCuに限定されない。
【0021】
上記のAl
7Cu
2Fe金属間化合物、又は、FeAl
3基の金属間化合物を含む合金層は、普通鋼にAl含有めっきを施す際に、後述するCu又はNiプレめっき膜と、鋼層と、Al含有金属層とから、系を構成する元素が拡散し、そして、Fe及びAlと合金化することで形成される。このように、上記のAl
7Cu
2Fe金属間化合物、又は、FeAl
3基の金属間化合物を含む合金層を好適に形成させるためには、Al含有めっきを施す前に、予め、普通鋼にCu又はNiプレめっきを施すことで、鋼層上にCu又はNiのプレめっき膜を形成しておくことが好ましい。ただ、上記合金層は、例えば、鋼層及びAl含有金属層を構成する元素の拡散によっても形成することができるので、Cu又はNiプレめっき膜が必須な技術構成ではない。
【0022】
このAl
7Cu
2Fe金属間化合物、又は、FeAl
3基の金属間化合物を含む合金層は、そのビッカース硬度が、500〜600Hvとなる。上述した従来の硬くて脆い合金層は、そのビッカース硬度が、900Hv程度である。このように、合金層を比較的軟質である層へ制御することにより、金属箔の弾塑性変形性を向上させることが可能となる。また、上記合金層の厚さが0.1μm未満では、軟質合金層としての上記効果が得られない。その厚さが8μm超では、系を構成する元素の拡散が進行し過ぎて、カーケンダル(Kirkendall)ボイドが生じ易くなるので、好ましくない。
【0023】
金属箔の弾塑性変形性をさらに高めるには、上記金属層の厚さを0.1〜5μmとすることが好ましい。また、その厚さを3〜8μmとすると、金属箔の耐食性がさらに高まるので好適である。上記金属層の厚さを3〜5μmとすると、両効果が同時に得られるので、最も好ましい。
【0024】
また、上記鋼層と、上記合金層との間に、Cu又はNiプレめっき膜を2〜10μmの厚さで残存させて、Cu層又はNi層とすると、鋼層と合金層との間の密着性がさらに増して、弾塑性変形性が向上するので好ましい。この結果、プレス成形や深絞り等の際に過酷な加工を行っても、上記合金層の剥離が生じ難くなる。
【0025】
鋼層と合金層との間に、上記のCu層又はNi層が存在しても、上述した合金層が有する効果は妨げられない。但し、Cu層又はNi層の厚さが2μm未満であると、鋼層と合金層との間の密着性を向上する効果が得られない。また、その厚さが10μm超では、上記効果は飽和し、そして、プレめっき膜を形成させるコストも上昇するので、好ましくない。
【0026】
また、金属箔の鋼層の厚さは、10〜200μmとする。厚さが10μm未満の箔を製造するには、高精度な装置を慎重に制御する必要が生じ、高コストとなってしまう。また、厚さが200μm超では、金属箔の重量が重くなってしまい、箔を使用するメリットが充分には得られない。基材の重量を軽減するためには、厚さが10〜150μmであると好ましい。また、材料の強度を高めて、基材上に重量物を載置するためには、厚さが100〜200μmであると好適である。上記鋼層の厚さを100〜150μmとすると、両効果が同時に得られるので、最も好ましい。
【0027】
太陽電池や有機ELの基材用金属箔は、上記した耐食性、及び、弾塑性変形性に加えて、表面平滑性も同時に満足することが重要である。
【0028】
基材用金属箔として要求される表面平滑性を満足させるためには、Al含有金属層の表面が、一定度合の平滑面である必要がある。具体的には、金属箔を圧延方向と直交する板幅方向が観察面となるように板厚方向に沿って平面切断した切断面に表れる、Al含有金属層の表面の切断線を輪郭曲線とし、輪郭曲線を近似する直線を輪郭平均直線とするとき、この輪郭平均直線からの距離が10μm超となる上記輪郭曲線の極大点が存在しない必要がある。
【0029】
ここで、上記極大点とは、上記輪郭曲線のAl含有金属層の表面側に凸である極点である。なお、輪郭曲線の極小点(上記輪郭曲線のAl含有金属層の表面上で凹状の極点)は、基材用金属箔の上に積層される太陽電池層や有機EL層に物理的な損傷を与えることはないので、存在していても問題ではない。
【0030】
また、上記輪郭曲線は、上記切断面の金属組織写真から、画像処理によりその軌跡を求めても良いし、人手によりその軌跡を求めても良い。画像処理により輪郭曲線を求めた場合、同様に、画像処理により位相補償型フィルタを適用して、輪郭平均直線を求めれば良い。人手により輪郭曲線を求めた場合、各極点の座標から最小二乗法により輪郭平均直線を求めることができる。
【0031】
Al含有金属層表面に10μm超であるような突起状欠陥が存在すると、基材用金属箔の上に積層される太陽電池層や有機EL層に物理的な損傷を与える可能性がある。例えば、太陽電池では、基材上の太陽電池層が上記の損傷を受けると、その領域の光電変換効率が低下する恐れがある。
【0032】
また、充分な光電変換効率を得るためには、輪郭平均直線からの距離が5μm超である極大点が存在しないことが好ましい。さらに好ましくは1μm超である極大点が存在しないことである。
【0033】
上記Al含有金属層表面は、光沢度が銀鏡比75%以上であることが好ましい。例えば、太陽電池では、入射時に光電変換に寄与せず、基材である金属箔まで到達する太陽光が存在する。この透過光が、金属箔によって反射されることで、再度、光電変換に供用される。光沢度が銀鏡比75%以上であると、高効率で透過光が再度、光電変換に供用されるので好ましい。より好ましくは、光沢度が銀鏡比80%以上である。
【0034】
上記した金属箔の表面平滑性及び光沢度は、上記第2圧延処理時に鏡面状態の圧延ロールを用いること、又は、第2圧延処理後の金属箔にスキンパス圧延を施すことで達成される。本発明の実施形態に係る製造方法については、詳しく後述する。
【0035】
上記Al含有金属層の表面に、さらに、厚さ0.01〜0.08μmのAlN層又は厚さ0.01〜50μmのAl
2O
3層を有することが好ましい。鋼層から太陽電池層や有機EL層等にFe原子が拡散すると、これらの層の機能を損なう恐れがある。例えば、鋼層から太陽電池のCIGS層やCIS層等にFe原子が拡散すると、バンドギャップを狭めることで、太陽電池の変換効率が低下するという不具合が生じる。上記AlN層又は上記Al
2O
3層は、バリア膜として作用することで、鋼層を構成するFe原子が拡散して、CIGS層やCIS層等にまで到達することを防ぐことができる。但し、これらの層の厚さが0.01μm未満では、上述の効果が得られない。厚さ0.08μm超のAlN層や厚さ50μm超のAl
2O
3層を生成することは、生産コストが上昇するので、好ましくない。Al
2O
3層の膜厚が厚すぎるとアルミニウムから陽極酸化膜が剥離するため、50μm以下が適当である。より好ましくは、15μm以下である。アルミニウムの熱伸縮抑制および絶縁性の観点から、0.08μm以下であることが最も好ましい。また、AlN層又はAl
2O
3層は自然に形成される層では上述の拡散防止効果は得られないので、意図的に緻密に形成させる必要がある。
【0036】
上記AlN層及びAl
2O
3層の代わりに、上記Al含有金属層の表面に、厚さ0.1〜8μmのCr層、又は、厚さ0.1〜8μmのNi層を有してもよい。Cr層又はNi層を有することで、AlN層及びAl
2O
3層と同様の効果を得ることができる。Cr層又はNi層の厚さが0.1μm未満では、上述の効果が得られない。厚さが8μm超では、生産コストが上昇する。
【0037】
上記AlN層及びAl
2O
3層の代わりに、上記Al含有金属層の表面に、厚さ0.001〜8μmの三次元網目構造状に発達したシロキサン結合を主骨格とした無機骨格を有し、この骨格の架橋酸素の少なくとも1個が有機基および/または水素原子で置換されたゾルゲル層を有してもよい。ゾルゲル層を有することで、AlN層及びAl
2O
3層と同様の効果を得ることができる。より好ましくは、0.1μm以上の厚さとすると上述の効果がより増すので良い。ゾルゲル層の厚さが0.001μm未満では、上述の効果が得られない。厚さが8μm超では、生産コストが上昇する。
【0038】
上記AlN層及びAl
2O
3層の代わりに、上記Al含有金属層の表面に、厚さ0.1〜8μmのポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドから選ばれるプラスティックフィルムなどから構成されるラミネート層を有してもよい。また、ラミネート層の代わりにポリイミドから成る耐熱樹脂も使用できる。ラミネート層又は耐熱樹脂を有することで、AlN層及びAl
2O
3層と同様の効果を得ることができる。ラミネート層の厚さが0.1μm未満では、上述の効果が得られない。厚さが8μm超では、生産コストが上昇する。
【0039】
上記の構造とすることで、例えばCIGSの太陽電池セルが直列に接続されたモジュール回路において、500V以上の耐電圧が確保でき、絶縁破壊を回避できる。また、絶縁破壊に至らずとも、漏れ電流が存在すると太陽電池モジュールの光電変換効率低下の要因となるが、上記の構造とすることでそのような漏れを防止できる。
【0040】
上述の各層の厚さ及び組成を測定する方法は、スパッタ法により金属箔の表面から膜厚方向に掘り下げながら分析する手法や、金属箔の膜厚方向の切断面にて線分析又は点分析を行う手法が有効である。前者手法では、測定深さが大きくなると測定時間が掛かり過ぎるが、後者手法では、断面全体での濃度分布の測定や再現性の確認等を行うのが比較的容易である。線分析又は点分析で、分析の精度を向上させたい場合には、線分析にて分析間隔を狭くして分析したり、点分析にて分析領域を拡大して分析したりすることも有効である。各層の同定は、標準試料(即ち濃度100%)の値をあらかじめ測定しておき、上記組成分析でその濃度が50%以上となる領域を判別することで行う。これらの分析に用いる分析装置として、EPMA(電子線マイクロ分析、Electron Probe Micro Analysis)、EDX(エネルギー分散型X線分析、Energy Dispersive X−Ray Analysis)、AES(オージェ電子分光法、Auger Electron Spectroscopy)、TEM(透過型電子顕微鏡、Transmission Electron Microscope)等が利用できる。なお、各層厚さが上述した数値限定を満たすかどうかの判定は、各層の平均厚さによって評価される。局所的に各層厚さが数値限定を満たさない場合があったとしても、上記判定に考慮しない。
【0041】
金属箔を上述した技術構成とすることで、基材用金属箔として要求される耐食性、表面平滑性、及び、弾塑性変形性を同時に満足することが可能となり、太陽電池や有機ELの基材用として使用することが可能となる。
【0042】
基材上に形成する光電変換層としては、CIGS、CIS、CdTe等の化合物系太陽電池、アモルファスSi等の薄膜系太陽電池、それらを複数層積層させたハイブリッド型太陽電池が使用でき、または、基材上には有機EL照明回路を形成することができる。特に、上記のCIGS、CISの主成分は特に制限されず、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体であることが好ましく、また、光電変換層の主成分は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを含む少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。さらに、光吸収率が高く、高い光電変換効率が得られることから、上記光電変換層の主成分は、Cu及びAg等より選択された少なくとも1種のIb族元素と、Al、Ga及びIn等より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、S、Se、及びTe等から選択された少なくとも1種のVIb族元素とを含む少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。具体的には、上記化合物半導体としては、CuAlS
2、CuGaS
2、CuInS
2、CuAlSe
2、CuGaSe
2、CuInSe
2(CIS)、AgAlS
2、AgGaS
2、AgInS
2、AgAlSe
2、AgGaSe
2、AgInSe
2、AgAlTe
2、AgGaTe
2、AgInTe
2、Cu(In
1−xGa
x)Se
2(CIGS)、Cu(In
1−xAl
x)Se
2、Cu(In
1−xGa
x)(S,Se)
2、Ag(In
1−xGa
x)Se
2及びAg(In
1−xGa
x)(S,Se)
2等が使用できる。
【0043】
次に、本発明の実施形態に係る基材用金属箔の製造方法について詳細に説明する。
【0044】
任意成分の普通鋼(炭素鋼)板を、第1圧延処理として、200〜500μmの厚さになるまで圧延を行う。この圧延方法は、熱間及び冷間のどちらであっても良い。鋼鈑の厚さが200μm未満では、薄すぎて後工程時のハンドリングが困難である。また、鋼鈑の厚さが500μm超では、厚すぎて後工程に負荷がかかりすぎる。
【0045】
後工程での生産性を考慮すると、第1圧延処理として、250〜350μmの厚さになるまで圧延を行うことが好ましい。
【0046】
上記第1圧延処理後の鋼鈑に対して、Cu又はNiプレめっきを施すプレめっき処理、Al含有めっきを施すめっき処理、及び、第2圧延処理を行う。これらの処理の順番は、(1)プレめっき処理、めっき処理、そして、第2圧延処理、(2)プレめっき処理、第2圧延処理、そして、めっき処理、(3)第2圧延処理、プレめっき処理、そして、めっき処理、の何れでも良い。
【0047】
上記プレめっき処理として、Cu又はNiのめっき浴を用いて、電解めっき法や無電解めっき法を行う。Cuプレめっき膜、及び、Niプレめっき膜共に、プレめっき膜の初期厚さを0.05〜4μmとすると、Al含有めっきの際に鋼層とAl含有金属層との間に形成される合金層の厚さが0.1〜8μmとなる。例えば、Al含有めっきの際に形成される合金層の厚さを上記した最適な3〜5μmに制御したい場合には、プレめっき膜の初期厚さを1.5〜2.5μmに制御すればよい。
【0048】
また、鋼層と合金層との間に、Cu又はNiプレめっき膜を残存させて、Cu層又はNi層を配するためには、プレめっき膜の初期厚さを、4μmを基準として、残存させたい厚さの分だけ厚めに成膜しておけばよい。4μm以下の厚さのCu又はNiプレめっき膜は、Al含有めっきの際に形成される合金層に拡散して消失する。4μmを超えて成膜されたプレめっき膜は、その膜厚から4μmを引いた厚さだけ残存して、Cu層又はNi層となる。例えば、鋼層と合金層との間に、厚さ5μmのCu層又はNi層を存在させるには、プレめっき膜の初期厚さを4+5=9μmの厚さとしておけばよい。
【0049】
プレめっき処理を行わずに、上記合金層を形成させたい場合には、適宜、鋼層及びAl含有金属層の成分組成を調整すればよい。
【0050】
上記めっき処理として、60〜100質量%のAl、0〜15質量%のSi、及び、0〜40質量%のCuを含有させためっき浴を用いてめっきする。このめっき方法として、電解めっき法及び無電解めっき法を用いることができる。0〜15質量%のSi、及び、0〜40質量%のCuを含有させることで、めっき浴の融点を低減させることができる。よって、上記組成のめっき浴とする。
【0051】
さらに、めっき浴の融点を低下させて、めっき工程を簡便とするためには、68.2質量%Al−4.7質量%Si−27.1質量%Cu、又は、68質量%Al−32質量%Cuという組成から各成分について±5質量%以内の範囲の組成であるAl含有めっき浴を用いることが好ましい。
【0052】
上記第2圧延処理として、10〜250μmの厚さになるように、圧延を行う。この圧延条件は、通常の圧延条件でよい。金属箔の厚さが10μm未満では、基材用金属箔として薄すぎて、強度が不足する。また、金属箔の厚さが250μm超では、基材用金属箔として厚すぎて、重たすぎる。
【0053】
加えて、金属箔のAl含有金属層表面の突起状欠陥、及び、Al含有金属層表面の光沢度を制御するためには、この第2圧延処理で、上記圧延機に表面粗さがRa200μm以下の鏡面状態である圧延ロールを用いることが好ましい。上記圧延ロールの表面粗さをRa200μm以下とする理由は、Al含有金属層表面を好適に制御するためである。
【0054】
さらに、Al含有金属層表面の突起状欠陥、及び、Al含有金属層表面の光沢度を制御するために、必要に応じて、上記第2圧延処理後の金属箔を、スキンパス圧延処理として、ブライト仕上げ圧延を行うことが好ましい。このスキンパス圧延処理では、表面粗さがRa1μm以下の鏡面状態である圧延ロールを用いることが好ましい。上記圧延ロールの表面粗さをRa1μm以下とする理由は、Al含有金属層表面を好適に制御するためである。
【0055】
第2圧延処理又はスキンパス圧延処理後の上記金属箔のAl含有金属層の厚さは、0.1〜30μmであることが好ましい。0.1μm未満では、充分な耐食効果は得られず、30μm超では、Alを大量にめっきする必要があり、生産コストが高くなるためである。好ましくは、上記Al含有金属層の厚さが、1〜30μmである。より好ましくは、上記Al含有金属層の厚さが、3〜30μmである。最も好ましくは、上記Al含有金属層の厚さが、8〜30μmである。
【0056】
また必要に応じて、第2圧延処理又はスキンパス圧延処理後の上記金属箔のAl含有金属層表面に、AlN層を緻密な状態で形成させるため、加熱処理を行うことが好ましい。これは、上記金属箔を、アンモニア又はヒドラジンを10体積%±2体積%含有する不活性ガス(アルゴン、窒素、窒素+水素等)中に配置して、500〜600℃の温度範囲で、1〜10時間の加熱を行う処理である。
【0057】
同様に、第2圧延処理又はスキンパス圧延処理後の上記金属箔のAl含有金属層表面に、Al
2O
3層を緻密な状態で形成させるため、陽極酸化処理として、陽極酸化法によりAl含有金属層表面を酸化させることが好ましい。処理条件は、従来から知られている硫酸アルマイト、しゅう酸アルマイト、又は、クロム酸アルマイト等が利用できるが、中でも硫酸アルマイトがもっとも経済的で工業的に適している。但し、上記金属箔が薄く、陽極酸化処理中に上記金属箔が変形する危険性があるため、陽極酸化処理が終了後、すみやかに水冷するのが上記金属箔の平たん度を維持する上で重要である。
【0058】
また、Al含有金属層の表面に、Cr層又はNi層を形成させるためには、スパッタ法や、蒸着法で比較的簡便に成膜することができる。しかし、緻密で均質なCr層又はNi層を形成させるには、電解めっき法を用いることが好ましい。よって、第2圧延処理又はスキンパス圧延処理後の上記金属箔のAl含有金属層表面に、Cr層又はNi層を緻密な状態で形成させるため、電解めっき処理として、めっきを施すことが好ましい。
【0059】
同様に、第2圧延処理又はスキンパス圧延処理後の上記金属箔のAl含有金属層表面に、ゾルゲル層を形成させるため、ゾルゲル層の成膜処理を行うことが好ましい。まず、最終的な焼き付け工程で得られる被膜中の水素濃度[H](mol/l)とシリコン濃度[Si](mol/l)との比が、0.1≦[H]/[Si]≦10となるようなゾルを調製する。次いで、調製したゾルを上記金属箔のAl含有金属層表面に塗布し、乾燥する。最後に乾燥した後に焼付けを行うことによって、無機有機ハイブリッド膜被覆を備える金属箔を製造することができる。
【0060】
同様に、第2圧延処理又はスキンパス圧延処理後の上記金属箔のAl含有金属層表面に、ラミネート層を形成させるため、ラミネート層の成膜処理を行うことが好ましい。ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドから選ばれるプラスティックフィルムなどから構成されるラミネートを用いてナイロン系接着剤で上記金属箔のAl含有金属層表面と接するようにした後に加熱し、1MPa程度の圧力で熱圧着する熱ラミネート法で成膜することができる。
【実施例】
【0061】
実施例により本発明の一態様の効果を更に具体的に説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限り、種々の条件を採用し得る。
【0062】
[実験例1]
実験例1では、第一圧延処理として、極低炭素鋼を熱間及び冷間で圧延し、板厚300μmの圧延鋼鈑とした。プレめっき処理として、この圧延鋼鈑上に、電解めっき法により、純Cu又は純Niプレめっき膜を形成した。電解Niめっきのめっき浴としてはワット浴を、電解Cuめっきのめっき浴としては硫酸銅浴を用いた。めっき処理として、プレめっき処理後の圧延鋼鈑を、Al含有金属中に20秒間浸漬することで溶融Alめっきした。第2圧延処理として、めっき処理後の圧延鋼鈑を、各パスあたり10〜20%の圧下率で圧延することで金属箔を製造した。一部の金属箔は必要に応じて、第二圧延処理後にスキンパス圧延処理を実施した。上記のプレめっき膜及びAl含有金属層の厚みは、箔化後の各層が表1に記載の厚みになる様、あらかじめ計算して決定した。
【0063】
上記製造した金属箔の、表面状態や、各構成層の状態を、金属箔の圧延方向と直交する板幅方向が観察面となるように板厚方向に沿って平面切断した切断面の金属組織を観察することで確認した。金属組織観察は、観察視野が板幅方向で20μm以内となる倍率で行い、板幅方向の合計視野が300μm以上となるように、少なくとも15視野以上を観察した。輪郭曲線及び輪郭平均直線は、画像解析により求めた。各構成層は、上記切断面をエネルギー分散型X線分析(EDX)することで同定した。合金層の硬度は、上記切断面をビッカース硬度計により測定した。これらの結果を表1に示す。表中、下線で示す数値は、本発明の範囲外であることを示す。切断面観察の際、ボイドと呼ばれる空隙が見られれば、表1にボイド「有」と示した。
【0064】
また、上記製造した金属箔を用いて、耐食試験、180度密着曲げ試験、及び、光沢度測定試験を行った。同様に、これらの結果を表1に示す。表中、下線で示す数値は、本発明の範囲外であることを示す。
【0065】
耐食試験は、塩水噴霧試験(SST)によって評価した。35℃に保持された5%NaCl水を噴霧し、400時間以上目視で腐食を確認できない場合をVG(Very Good)、300時間以上をG(Good)、100時間以上をNG(Not Good)、100時間未満をB(Bad)とした。そして、NGとBとを、不合格とした。
【0066】
更に過酷な耐食性試験として、150mm×70mmに切り出した金属箔に、50℃に保持された10%NaCl水を噴霧した。600時間経過しても金属箔表面が腐食していなければもっとも耐食性が良好であるとしてEG(Extremely Good)とした。500時間経過しても金属箔表面が腐食していなければGG(Greatly Good)とした。400時間経過しても金属箔表面が腐食していなければVG(Very Good)とした。300時間経過しても金属箔表面が腐食していなければG(Good)とした。100時間経過しても金属箔表面が腐食していなければNG(Not Good)とした。100時間未満で金属箔表面が腐食すればB(Bad)とした。そして、NGとBとを、不合格とした。
【0067】
180度密着曲げ試験は、金属箔に、内側半径が零で、曲げ角度が180°となる180度密着曲げ加工を繰り返して実施し、皮膜の剥離または亀裂が生じる加工回数を調査することで実施した。皮膜の剥離または亀裂の観察は、180度密着曲げ加工の1サイクル毎に、金属箔の曲げ外周部を光学顕微鏡で観察することで行った。皮膜の剥離または亀裂が、光学顕微鏡で観察された時点の加工回数を皮膜破壊回数とした。皮膜破壊回数は、3回以上で、弾塑性変形性が良好であると判断した。
【0068】
光沢度測定試験は、光沢度計を用いて、金属箔に、入射角60°で光を入射させ、銀鏡面の反射率に対する比率を測定することで実施した。光沢度は、75%未満を(NotGood)、75%以上80%未満をG(Good)、80以上90%未満をVG(Very Good)、90%以上をGG(Greatly Good)として評価した。そして、NGを不合格とした。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示すように、実施例1〜31は、鋼層、Cu層又はNi層、合金層、及び、Al含有金属層の状態が、いずれも目標を達成しており、その結果、優れた耐食性、弾塑性変形性、表面平滑性、光沢度を示している。
【0071】
これに対し、比較例1〜4は、鋼層、Cu層又はNi層、合金層、及び、Al含有金属層の状態のいずれかが目標を達成しておらず、その結果、耐食性、弾塑性変形性、表面平滑性、光沢度のいずれかが不十分となっている。
【0072】
比較例1は、合金層を有さないため、耐食性、180度密着曲げ性が不十分となった例である。
比較例2は、合金層の厚さが8μm超であるため、切断面にボイドが観察され、180度密着曲げ性が不十分となった例である。
比較例3は、合金層が従来の硬くて脆い合金層であるため、合金層のビッカース硬度が900Hvとなり、180度密着曲げ性が不十分となった例である。
比較例4は、輪郭平均直線からの距離が0.5μm超となる極大点が存在した例である。光沢度も不十分となった。
【0073】
[実験例2]
実験例2では、実験例1と同様に作製した金属箔に、AlN層、Al
2O
3層、Cr層、Ni層、ゾルゲル層、及び、ラミネート層を形成させ、その膜厚を変化させることでCIGS光電変換効率を調べた。CIGS光電変換効率は、8%未満をNG(NotGood)、8%以上10%未満をG(Good)、10以上12%未満をVG(Very Good)、12%以上をGG(Greatly Good)として評価した。そして、NGを不合格とした。
【0074】
AlN層は、アンモニア含有する不活性ガスを用いた加熱処理により作製した。Al
2O
3層は硫酸アルマイト処理により作製した。Cr層およびNi層はスパッタ法により作製した。
ゾルゲル層の形成では、ゾル調製の出発原料として10モルのメチルトリエトキシシランと10モルのテトラエトキシシランの混合物を用い、この混合物に20モルのエタノールを加えて良く撹拌した。その後、撹拌しながら、2モルの酢酸と100モルの水を混合した酢酸水溶液を滴下し加水分解を行った。この様にして得たゾルに100モルのエタノールを加えて最終的なゾルを得た。ディップコーティング法によってめっき普通鋼箔の両面にこのゾルを塗布した後、空気中で100℃、1分間の乾燥を行った。その後、窒素雰囲気中で昇温速度10℃/分として室温から400℃まで昇温し、400℃で30分間焼き付けてゾルゲル層を得た。
ラミネート層の形成では、ナイロン系接着剤をクレゾールとキシレンの質量比70:30の混合溶剤に15質量%の濃度で溶解し、その溶解物を樹脂に塗布した後、その樹脂を300℃に加熱されためっき普通鋼箔に1MPaの圧力で熱圧着することで熱ラミネートした。表2にその結果を示す。
【0075】
【表2】
【0076】
表2に示すように、実施例32〜63は、いずれも優れた光電変換効率を示している。特に、AlN層、Al
2O
3層、Cr層、Ni層、ゾルゲル層、及び、ラミネート層の厚さが最適に制御されている実施例は、さらに優れた光電変換効率を示している。
【0077】
実施例33〜35及び実施例53〜55は、AlN層の厚さが最適に制御されているため、さらに優れた光電変換効率を示す。
実施例37〜39は、Cr層の厚さが最適に制御されているため、さらに優れた光電変換効率を示す。
実施例41〜43は、Ni層の厚さが最適に制御されているため、さらに優れた光電変換効率を示す。
実施例45〜47及び実施例49〜51は、Al
2O
3層の厚さが最適に制御されているため、さらに優れた光電変換効率を示す。
実施例57〜59は、ゾルゲル層の厚さが最適に制御されているため、さらに優れた光電変換効率を示す。
実施例61〜63は、ラミネート層の厚さが最適に制御されているため、さらに優れた光電変換効率を示す。