【文献】
B. M. REDDY et al.,Copper promoted ceria-zirconia based bimetallic catalysts for low temperature soot oxidation,Catalysis Communications,2009年,10,1350-1353.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ガソリンを燃料とする自動車の排気ガス中には、炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。そのため、前記炭化水素(THC)は酸化して水と二酸化炭素に転化させ、前記一酸化炭素(CO)は酸化して二酸化炭素に転化させ、前記窒素酸化物(NOx)は還元して窒素に転化させるようにして、それぞれの有害成分を浄化する必要がある。
【0003】
このような排気ガスを処理するための触媒(以下「排気ガス浄化触媒」と称する)として、CO、THC及びNOxを酸化還元することができる3元触媒(Three way catalysts:TWC)が用いられている。
【0004】
このような3元触媒としては、高い比表面積を有する耐火性酸化物多孔質体、例えば高い比表面積を有するアルミナ多孔質体に貴金属を担持し、これを基材、例えば耐火性セラミック又は金属製ハニカム構造で出来ているモノリス型(monolithic)基材に担持したり、或いは、耐火性粒子に担持したりしたものが知られている。
【0005】
他方、ディーゼルエンジンから排出される排気ガスには、燃料中の硫黄分にもとづく硫酸塩や、不完全燃焼に由来するタール状の微粒子状物質(「PM」と称する)、窒素酸化物(NOx)などが含まれている。
【0006】
ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるPMを除去する装置として、ディーゼルパティキュレートフィルタ(「DPF」と称する)でPMを捕集し、捕集したPMを適宜タイミングで燃焼除去する排気ガス浄化装置が知られている。
このようなDPFは、通常、ハニカム構造を呈する多孔質製のフィルタ基材が骨格を為し、該基材の隔壁内部を排気ガスが流通する際に、該隔壁表面でPMを捕集するようになっている。
【0007】
ガソリンエンジンから排出される排気ガスを浄化するための触媒であっても、ディーゼルエンジンから排出される排気ガスを浄化するための触媒であっても、いずれの触媒も、従来は、高価な白金(Pt)やロジウム(Rh)などの貴金属が触媒活性成分として用いられることが多かった。しかし、これらの貴金属は、埋蔵量が少ないため非常に高価であるばかりか、需要の変化に伴う価格変動が激しいという問題を抱えていた。そのため、従来から、貴金属以外の他の金属を用いて、高価な貴金属を使用しない触媒若しくはその使用量を低減した触媒として、遷移金属と、アルミナ粉末やセリア−ジルコニア粉末とを含む触媒が提案されている。
【0008】
例えば特許文献1(特開平10−151348号公報)には、DPF燃焼効率を向上させることができる触媒として、セリア−ジルコニア固溶体からなる担体と、該担体に担持されたCu、Fe、Mnから選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物からなる触媒成分とを含む触媒が提案されている。
【0009】
特許文献2(特開2012−239982公報)には、パイロクロア構造を持つセリア−ジルコニア固溶体に、Cu、Fe、Co、Niを担持した触媒が提案されている。
【0010】
特許文献3(特開2012−245452号公報)には、NOxの浄化性能を向上させることができる触媒として、銅又は銅の酸化物からなる粒子がセリア・ジルコニア担体に担持されていて、前記担体の表面におけるCeとZrとの比率(Ce/Zr、質量比)が0.5<Ce/Zr<2.5の範囲である触媒が提案されている。
【0011】
特許文献4(特開2013−27858号公報)には、AB
2O
4で表されるスピネル型の複合金属酸化物をAl
2O
3、ZrO
2、TiO
2、及びSiO
2から選ばれる少なくとも1つを含有する排ガス浄化触媒が提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。但し、次に説明する実施形態に本発明が限定されるものではない。
【0019】
<本触媒組成物>
本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒組成物(「本触媒組成物」と称する)は、セリア−ジルコニア粒子を含み、且つ、Cu、Cr、Fe、Mn、Co、Ni及びAgのうちの少なくとも一種を含む遷移金属が前記セリア−ジルコニア粒子(「セリア−ジルコニア担体」とも称する)に担持されてなる構成を備えた触媒粒子(「本触媒粒子」と称する)を含む組成物である。
【0020】
(本触媒粒子)
本触媒粒子は、上述のように、所定の遷移金属がセリア−ジルコニア粒子に担持されてなる構成を備えた触媒粒子である。
【0021】
(セリア−ジルコニア粒子)
セリア−ジルコニア粒子は、活性成分と強くインタラクションを持つセリア−ジルコニア固溶体からなる粒子である。本触媒粒子を構成するセリア−ジルコニア粒子は、XRDパターンにおいて(111)面に起因するピーク(2θ=28〜32°付近)が、2つのピークトップに分かれている特徴を有しており、セリアとジルコニアが均一に固溶している均一固溶体ではなく、一部分離して固溶しているためにピークトップが2つに分かれているセリア−ジルコニア分離固溶体であると推察される。
このような特徴を有するセリア−ジルコニア分離固溶体粉末は、セリア−ジルコニア粉末に触媒活性として働く遷移金属を担持させた後、好ましくは900℃以上の高温で大気雰囲気中で焼成することにより得ることができる。この雰囲気は窒素などの不活性ガス雰囲気や、酸化雰囲気或いは還元雰囲気でも良い。遷移金属はより細かく分散しているのが好ましく、湿式で担持させるのが好ましい。
【0022】
セリア-ジルコニア粒子は耐熱性を高める目的で、他の希土類元素(La、Pr、Nd)を0.01wt%以上50wt%以下含んでもよい。その中でも、1wt%以上10wt%以下が好ましい。
【0023】
なお、このようなセリア−ジルコニア粒子以外の他の無機多孔質体、例えばセリア粒子や、ジルコニア粒子、アルミナ粒子などに同様に遷移金属を担持させても、熱耐久処理後は触媒活性の低下を抑えることできないことが確認されている。
【0024】
セリア−ジルコニア粒子におけるセリアとジルコニアの含有比率は、セリア:ジルコニアが5:95〜95:5であるのが好ましく、中でも10:90〜90:10、その中でも20:80〜80:20であるのが好ましい。
【0025】
セリア−ジルコニア粒子は、本触媒組成物中に5〜99質量%の割合で含有されることが好ましい。セリア−ジルコニア粒子が本触媒組成物中に5質量%以上含有されていれば、燃料リッチ雰囲気下においてCO及びTHCを十分に浄化することができ、99質量%以下の含有量であれば、基材との密着性をより確実に確保することができる。
かかる観点から、セリア−ジルコニア粒子は、本触媒組成物中に5〜99質量%の割合で含有されることが好ましく、中でも10質量%以上或いは90質量%以下の割合で含有されるのが特に好ましい。
【0026】
(触媒活性成分)
本触媒粒子は、触媒活性成分として、Cu、Cr、Fe、Mn、Co、Ni、及びAgのうちの少なくとも一種を含む遷移金属を、前記セリア−ジルコニア粒子に担持された状態で含むものである。
【0027】
前記遷移金属としては、Cu、Cr、Fe、Mn、Co、Ni及びAgのうちの少なくとも一種を含んでいればよく、これらのうちの一種であってもよいし、又、これらのうちの2種類以上の組合せからなるものであってもよい。
中でも、融点が比較的高いという観点から、Cuと、Cr、Mn、Co及びNiのうちの一種又は二種以上の組合せからなる遷移金属(Cuと組み合わせる遷移金属を「遷移金属A」と称する)とを含むのが好ましい。その中でも特に、CuとCrを含む遷移金属A、又は、CuとMnを含む遷移金属Aとの組合せが好ましい。
【0028】
この際、Cuと遷移金属Aとは、それぞれの酸化物の状態で、若しくは、両者の複合酸化物の状態で、セリア−ジルコニア粒子に担持される。
熱耐久処理前、例えば400℃以上に加熱する熱耐久処理前(Fresh)の状態では、Cu及び遷移金属Aは、それぞれの酸化物の状態でセリア−ジルコニア粒子に担持される。
他方、熱耐久処理後、例えば800℃以上に加熱する熱耐久処理後(Aged)の状態では、Cu及び遷移金属Aは、それぞれの酸化物の状態又は両者の複合酸化物の状態で、セリア−ジルコニア粒子に担持されることになる。
この際、加熱されて熱耐久処理されると、例えば遷移金属AがFeやMnの場合には、Cu及び該遷移金属Aは、デラフォサイト型酸化物の状態となってセリア−ジルコニア粒子に担持されることになる。なおこの加熱時の雰囲気は還元雰囲気又は酸化雰囲気、或いは不活性雰囲気(例えば窒素雰囲気)いずれの雰囲気でも良い。
【0029】
なお、デラフォサイト型酸化物かどうかは、X線回折分析(XRD)でピークを同定することで確認することができる。例えば遷移金属AがFeやMnの場合には、100%の窒素ガス中で800℃・5時間の加熱によりデラフォサイト型酸化物となる。
【0030】
他方、酸化雰囲気下で加熱されて熱耐久処理された場合には、遷移金属Aの種類によって、セリア−ジルコニア粒子に担持される状態が異なることになる。
例えば、該遷移金属AがMnの場合には、酸化雰囲気下で加熱されて熱耐久処理されると、CuとMnは不定比性スピネル(Cu
1.5Mn
1.5O
4)の状態となってセリア−ジルコニア粒子に担持されることになり、Feの場合には、CuとFeはスピネル型酸化物(CuFe
2O
4)の状態となってセリア−ジルコニア粒子に担持されことになり、Ni又はAgの場合には、CuとNi又はAgはそれぞれの酸化物(CuO−NiO又はCuO−Ag
2O)の状態でセリア−ジルコニア粒子に担持されことになる。
但し、いずれの場合も、Cu及び遷移金属Aの過剰分はそれぞれの酸化物状態で存在する。
【0031】
Cu、Cr、Fe、Mn、Co、Ni、及びAgのうちの少なくとも一種を含んでなる遷移金属の含有割合(すなわち担持量)に関しては、下記式(1)で求められる遷移金属の含有割合として0.05〜20質量%であるのが好ましく、中でも0.10質量%以上或いは15質量%以下、その中でも特に0.15質量%以上或いは10質量%以下であるのが好ましい。
(1)・・遷移金属含有割合={遷移金属量/(セリア−ジルコニア粒子量+遷移金属量)}×100
【0032】
下記式(2)で求められるCuの含有割合(すなわち担持量)に関しては、0.05〜20質量%であるのが好ましく、中でも0.10質量%以上或いは15質量%以下、その中でも特に0.15質量%以上或いは10質量%以下であるのが好ましい。
(2)・・Cu含有割合={Cu量/(セリア−ジルコニア粒子量+Cu量+遷移金属A量)}×100
【0033】
下記式(3)で求められる遷移金属Aの含有割合(すなわち担持量)に関しては、0.05〜20質量%であるのが好ましく、中でも0.1質量%以上或いは10質量%以下、その中でも特に0.2質量%以上或いは5質量%以下であるのが好ましい。
(3)・・遷移金属A含有割合={遷移金属A量/(セリア−ジルコニア粒子量+Cu量+遷移金属A量)}×100
【0034】
また、2種類以上の遷移金属が前記セリア−ジルコニア粒子に担持されてなる構成を備える場合、当該遷移金属のうちの含有量が1番多い遷移金属と、含有量が2番目に多い遷移金属とのモル比が5:95〜95:5であるのが好ましく、中でも10:90〜90:10、その中でも2:8〜8:2であるのがさらに好ましい。
【0035】
なお、本触媒粒子は、Cu、Cr、Fe、Mn、Co、Ni、及びAg以外の触媒活性成分、例えば貴金属を含んでいてもよい。貴金属を含有すれば、CO、HCの酸化活性がさらに向上することが期待できる。
貴金属としては、例えば白金、ロジウム、パラジウム等の金属を挙げることができる。
【0036】
(安定剤及びその他の成分)
本触媒粒子は、安定剤を含んでいてもよい。この種の安定剤としては、例えばアルカリ土類金属やアルカリ金属を挙げることができる。中でも、マグネシウム、バリウム、カルシウムおよびストロンチウム、好適にはストロンチウムおよびバリウムから成る群から選択される金属のうちの一種又は二種以上を選択可能である。
【0037】
(本触媒組成物が含有し得る他の成分)
本触媒組成物は、本触媒粒子以外の他の成分を含んでいてもよい。例えば、無機多孔質粒子に貴金属などの触媒活性成分が担持されてなる触媒粒子や、OSC材粒子などを含んでいてもよい。
但し、本触媒組成物において、本触媒粒子及び他の触媒粒子の合計量の少なくとも50質量%以上、中でも70質量%以上、その中でも90質量%以上(100質量%を含む)を本触媒粒子が占めるのが好ましい。
【0038】
前記触媒粒子を構成する無機多孔質粒子としては、例えばシリカ、セリア、セリア−ジルコニア、アルミナ又はチタニアから成る群から選択される化合物の多孔質体、より具体的には、例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミノ−シリケート類、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミアおよびアルミナ−セリアから選択される化合物からなる多孔質体を挙げることができる。
前記触媒粒子を構成する貴金属としては、例えば白金、ロジウム、パラジウム等の金属を挙げることができる。
【0039】
OSC材粒子としては、酸素ストレージ能(OSC:Oxygen Storage capacity)を有する材料からなる粒子であればよい。例えば、セリウム化合物粒子、ジルコニウム化合物粒子、セリア−ジルコニア粒子などを挙げることができる。
【0040】
(本触媒組成物の比表面積)
本触媒組成物の比表面積は、特に限定するものではない。目安としては、BET比表面積として20〜200m
2/gであるのが好ましく、30m
2/g以上或いは160m
2/g以下であるのがさらに好ましい。
【0041】
(本触媒組成物のD50)
本触媒組成物のD50、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50は、特に限定するものではない。目安としては、セリア−ジルコニア粒子のD50は1μm〜50μmであるのが好ましく、中でも2μm以上或いは30μm以下、その中でも3μm以上或いは20μm以下であるがさらに好ましい。
【0042】
(本触媒組成物の製造方法)
本触媒組成物は、セリア−ジルコニア粒子粉末と、Cu、Cr、Fe、Mn、Co、Ni、及びAgのうちの少なくとも一種を含む遷移金属の化合物と、水と、必要に応じて他の原料とを混合及び撹拌してスラリーを得、得られたスラリーを乾燥して得ることができる。
【0043】
<本触媒>
次に、本触媒組成物を用いて作製することができる排気ガス浄化用触媒(以下「本触媒」と称する)について説明する。
【0044】
本触媒組成物を、ハニカム基材に担持させることで本触媒を作製することができる。
また、本触媒組成物をペレット状に成形して本触媒を作製することもできる。
【0045】
本触媒の具体的構成例として、例えば本触媒組成物を水その他成分と混合し、ボールミルなどで撹拌してスラリーを作製し、このスラリーを基材にウォッシュコートするなどして触媒層を形成してなる構成を備えた触媒を挙げることができる。
また、本触媒組成物を水その他成分と混合し、ボールミルなどで撹拌してスラリーを作製し、次に、このスラリー中に基材を浸漬し、これを引き上げて焼成して、基材表面に触媒層を形成してなる触媒を挙げることができる。
ただし、本触媒を製造するための方法は公知のあらゆる方法を採用することが可能であり、上記例に限定するものではない。
【0046】
(基材)
本触媒に用いる基材の材質としては、セラミックス等の耐火性材料や金属材料を挙げることができる。
セラミック製基材の材質としては、耐火性セラミック材料、例えばコージライト、コージライト−アルファアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト(sillimanite)、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト(petalite)、アルファアルミナおよびアルミノシリケート類などを挙げることができる。
金属製基材の材質としては、耐火性金属、例えばステンレス鋼または鉄を基とする他の適切な耐食性合金などを挙げることができる。
【0047】
基材の形状は、ハニカム状、ペレット状、球状を挙げることができる。
【0048】
ハニカム材料としては、一般に、例えばセラミックス等のコージェライト質のものが多く用いられる。また、フェライト系ステンレス等の金属材料からなるハニカムを用いることもできる。
ハニカム形状の基材を用いる場合、例えば基材内部を流体が流通するように、基材内部に平行で微細な気体流通路、すなわちチャンネルを多数有するモノリス型基材を使用することができる。この際、モノリス型基材の各チャンネル内壁表面に、触媒組成物をウォッシュコートなどによってコートして触媒層を形成することができる。
【0049】
(触媒層)
触媒層は、上下方向に一層或いは二層以上積層してもよいし、また、排気ガスの流通方向に他の触媒層を形成してもよい。
【0050】
(他の成分)
本触媒は、バインダ成分など、公知の添加成分を含んでいてもよい。
バインダ成分としては、無機系バインダ、例えばアルミナゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等の水溶性溶液を使用することができる。これらは、焼成すると無機酸化物の形態をとることができる。
【0051】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
【0053】
(実施例1)
セリア−ジルコニア粒子粉末(表2には「CZ」と示す。セリア50wt%、ジルコニア50wt%、D50=15.6μm、比表面積40.8m
2/g)89.3質量部と、Cuメタル換算で2.35質量部に相当する酢酸銅一水和物と、Mnメタル換算で2.35質量部に相当する硝酸マンガン六水和物と、活性化アルミナ3質量部と、アルミナゾル3質量部と、水130質量部とをボールミルで混合してスラリーA、すなわち、セリア−ジルコニア粒子にCu酸化物及びMn酸化物が担持された構成を含む触媒組成物Aを得た。
Φ25.4mm×L30mm−400セルのコージェライト製ハニカム基材をスラリーA中に浸漬し、引き上げて過剰なスラリーを吹き払った後、乾燥させ、950℃で1時間焼成してコート層を形成させて排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。このコート層の量はハニカム基材1L当り110gであった。
【0054】
(実施例2)
実施例1で用いたセリア−ジルコニア粒子粉末を、セリア−ジルコニア粒子粉末(セリアリッチ:セリア60wt%、ジルコニア40wt%、D50=13.7μm、比表面積30.5m
2/g)に変更した以外は、実施例1と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0055】
(実施例3)
実施例1で用いたセリア−ジルコニア粒子粉末を、セリア−ジルコニア粒子粉末(ジルコニアリッチ:セリア20wt%、ジルコニア80wt%、D50=14.8μm、比表面積35.8m
2/g)に変更した以外は、実施例1と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0056】
(実施例4)
実施例1で用いたセリア−ジルコニア粒子粉末を、セリア−ジルコニア粒子粉末(セリア40wt%、ジルコニア50wt%、La
2O
3:5wt%、Nd
2O
3:5wt%、D50=14.3μm、比表面積37.2m
2/g)に変更した以外は、実施例1と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0057】
(実施例5)
実施例1において、酢酸銅一水和物及び硝酸マンガン六水和物の量を、硝酸マンガン六水和物は配合せず、Cuメタル換算で4.7質量部に相当する酢酸銅一水和物に変更した以外は、実施例1と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0058】
(実施例6)
実施例1において、酢酸銅一水和物及び硝酸マンガン六水和物の量を、Cuメタル換算で3.76質量部に相当する酢酸銅一水和物と、Mnメタル換算で0.94質量部に相当する硝酸マンガン六水和物とに変更した以外は、実施例1と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0059】
(実施例7)
実施例1において、酢酸銅一水和物及び硝酸マンガン六水和物の量を、Cuメタル換算で0.94質量部に相当する酢酸銅一水和物と、Mnメタル換算で3.76質量部に相当する硝酸マンガン六水和物とに変更した以外は、実施例1と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0060】
(実施例8)
実施例1において、酢酸銅一水和物及び硝酸マンガン六水和物の量を、酢酸銅一水和物は配合せず、Mnメタル換算で4.7質量部に相当する硝酸マンガン六水和物に変更した以外は、実施例1と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0061】
(比較例1)
実施例1において、セリア−ジルコニア粒子粉末89.3質量部の代わりに、アルミナ粒子(D50=10.3μm、比表面積65.2m
2/g)を配合した以外は、実施例1と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0062】
(比較例2)
実施例1において、セリア−ジルコニア粒子粉末89.3質量部の代わりに、シリカ−アルミナ粒子(D50=10.5μm、比表面積103.2m
2/g)を配合した以外は、実施例1と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0063】
(比較例3)
実施例1において、セリア−ジルコニア粒子粉末89.3質量部の代わりに、ジルコニア粒子(D50=10.8μm、比表面積55.4m
2/g)を配合した以外は、実施例1と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0064】
<XRD測定>
実施例1〜9で得られた耐久後の排ガス浄化用触媒(サンプル)中のセリア−ジルコニア粒子のXRDを測定したところ、
図1に示すように、XRDパターンにおいて(111)面に起因するピーク(2θ=28〜32°付近)が、2つのピークトップに分かれているという共通の特徴を見出すことができた。セリアとジルコニアが均一に固溶している均一固溶体ではなく、母相と組成が異なり(111)面に起因するピークが別の位置にシフトした、別の固溶体が一部分離して存在しているためにピークトップが2つに分かれているセリア−ジルコニア分離固溶体であると推察された。
【0065】
<排ガス浄化性能試験>
実施例1〜8及び比較例1〜3で得た排ガス浄化用触媒(サンプル)について、900℃で1時間、大気雰囲気中で熱耐久処理を施した。
【0066】
上記熱耐久処理後、それぞれ別個に評価装置に充填し、下記表1に示す組成の排気モデルガスを空間速度24000/hで流通させながら、20℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、CO及びHCの浄化率を連続的に測定した。モデルガスが50%浄化される温度(T50)(℃)は表2に示す通りであった。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表2に示すデータから明らかなように、CO及びHCについてのT50(排ガスを50%浄化する時の温度であり、温度が低いほど低温活性に優れた排ガス浄化用触媒といえる)において、実施例1〜8で得られた排ガス浄化用触媒(サンプル)は、比較例1〜3で得られた排ガス浄化用触媒(サンプル)よりも優れており、実施例1〜7の排ガス浄化用触媒は、低温活性が高く、耐熱性に優れ、安定した排ガス浄化性能を得ることができるものであることが分かった。特に比較例2に
おいてはCO酸化活性は50%の浄化率に満たないほど活性が低かった。
また、実施例1〜7の中で比べると、Cuの組成比が増すに従い、CO酸化活性が向上することが認められた。
【0070】
(実施例9)
セリア−ジルコニア粒子粉末(表2には「CZ」と示す。セリア50wt%、ジルコニア50wt%、D50=15.6μm、比表面積40.8m
2/g)99.6質量部と、Cuメタル換算で0.2質量部に相当する酢酸銅一水和物と、Mnメタル換算で0.2質量部に相当する硝酸マンガン六水和物と、適量のイオン交換水とを添加したスラリーを撹拌し、その後、乾燥させ、950℃で1時間大気中にて焼成した。。
【0071】
(実施例10)
セリア−ジルコニア粒子粉末(表2には「CZ」と示す。セリア50wt%、ジルコニア50wt%、D50=15.6μm、比表面積40.8m
2/g)95.0質量部と、Cuメタル換算で2.5質量部に相当する酢酸銅一水和物と、Mnメタル換算で2.5質量部に相当する硝酸マンガン六水和物とを混合することに変更した以外は、実施例9と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0072】
(比較例4)
実施例9において、セリア−ジルコニア粒子粉末を、セリア(CeO
2、D50=8.2μm、比表面積50.6m
2/g)に変更した以外は、実施例9と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0073】
(比較例5)
実施例9において、セリア−ジルコニア粒子粉末を、ジルコニア(ZrO
2、D50=9.8μm、比表面積40.7m
2/g)に変更した以外は、実施例9と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0074】
(比較例6)
実施例10において、セリア−ジルコニア粒子粉末を、セリア(CeO
2、D50=8.2μm、比表面積50.6m
2/g)に変更した以外は、実施例10と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0075】
(比較例7)
実施例10において、セリア−ジルコニア粒子粉末を、ジルコニア(ZrO
2、D50=9.8μm、比表面積40.7m
2/g)に変更した以外は、実施例10と同様に触媒組成物及び排ガス浄化用触媒(サンプル)を得た。
【0076】
<排ガス浄化性能試験>
実施例9、10及び比較例4〜7で得た排ガス浄化用触媒(サンプル)について、950℃・4時間、窒素雰囲気中で熱耐久処理を施した。
【0077】
上記熱耐久処理後、実施例9、10及び比較例4〜7で得た排ガス浄化用触媒(サンプル)をそれぞれ別個に評価装置に充填し、固定床流通型反応装置を用いて模擬排ガスの浄化性能を測定した。具体的には、反応管に触媒粉を0.1gセットし、模擬排ガスとして、10℃/min、λ=48、空燃比(A/F)=28、CO:1000ppm、C
3H
6:500ppmC、NO:200ppm、O
2:0.5%、CO
2:10%、H
2O:10%、N
2balance、総流量1000cc/minで触媒粉に導入した。10℃/min750℃まで昇温後10分間保持し、前処理を行った。その後、一旦冷却後、100℃〜750℃まで10℃/minで昇温し測定を行った。
なお、空燃比(A/F)の「A/F」はAir/Fuelの略で、空気と燃料の比率を示す数値である。
【0078】
出口ガス成分は、CO/NO分析計(株式会社 堀場製作所製 「PG240」)及びHC分析計(株式会社 島津製作所製 「VMF-1000F」)を用いて測定した。
COが30%浄化される温度(CO−T30)(℃)、及び、HCが15%浄化される温度(HC−T15)(℃)は表3に示す通りであった。
【0079】
【表3】
【0080】
表3に示すように、遷移金属を担持する担体としては、CeO
2−ZrO
2固溶体がよく、中でも、XRDの結果からわかるように、CZ相が分離し、遷移金属とインタラクションを持っている触媒が特に好ましいことが分かった。