(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記構造体を形成する工程では、前記構造体の他に、前記第1のクラッド層の上であって前記構造体を挟む位置に、それぞれ前記構造体に対して間隔をあけて、第1および第2の補助構造体を形成し、
前記第1の補助構造体は、前記コアと同じ材料よりなる第1のダミーコアと、この第1のダミーコアの上に配置された第1の補助研磨停止層とを含み、
前記第2の補助構造体は、前記コアと同じ材料よりなる第2のダミーコアと、この第2のダミーコアの上に配置された第2の補助研磨停止層とを含み、
前記クラッド材料層を形成する工程では、前記第1のクラッド層、前記構造体、第1の補助構造体および第2の補助構造体を覆うように、前記クラッド材料層を形成し、
前記第1の研磨工程では、前記研磨停止層、第1の補助研磨停止層および第2の補助研磨停止層が露出するまで、前記クラッド材料層を研磨し、
前記研磨停止層を除去する工程では、前記研磨停止層の他に、前記第1および第2の補助研磨停止層を除去し、
前記コア材料層を形成する工程では、前記第1のクラッド層の上に、後に前記コアの他に第1のダミーコアおよび第2のダミーコアとなるコア材料層を形成し、
前記研磨停止層を形成する工程では、前記コア材料層の上に、前記研磨停止層の他に第1の補助研磨停止層および第2の補助研磨停止層を形成し、
前記コア材料層をエッチングする工程では、前記コア材料層がパターニングされて前記コアの他に第1のダミーコアおよび第2のダミーコアになるように、前記研磨停止層の他に第1の補助研磨停止層および第2の補助研磨停止層をマスクとして用いて前記コア材料層をエッチングすることを特徴とする請求項1記載の近接場光発生器の製造方法。
前記構造体を形成する工程では、前記構造体の他に、前記第1のクラッド層の上であって前記構造体を挟む位置に、それぞれ前記構造体に対して間隔をあけて、第1および第2の補助構造体を形成し、
前記第1の補助構造体は、前記コアと同じ材料よりなる第1のダミーコアと、この第1のダミーコアの上に配置された第1の補助研磨停止層とを含み、
前記第2の補助構造体は、前記コアと同じ材料よりなる第2のダミーコアと、この第2のダミーコアの上に配置された第2の補助研磨停止層とを含み、
前記クラッド材料層を形成する工程では、前記第1のクラッド層、前記構造体、第1の補助構造体および第2の補助構造体を覆うように、前記クラッド材料層を形成し、
前記第1の研磨工程では、前記研磨停止層、第1の補助研磨停止層および第2の補助研磨停止層が露出するまで、前記クラッド材料層を研磨し、
前記研磨停止層を除去する工程では、前記研磨停止層の他に、前記第1および第2の補助研磨停止層を除去し、
前記コア材料層を形成する工程では、前記第1のクラッド層の上に、後に前記コアの他に第1のダミーコアおよび第2のダミーコアとなるコア材料層を形成し、
前記研磨停止層を形成する工程では、前記コア材料層の上に、前記研磨停止層の他に第1の補助研磨停止層および第2の補助研磨停止層を形成し、
前記コア材料層をエッチングする工程では、前記コア材料層がパターニングされて前記コアの他に第1のダミーコアおよび第2のダミーコアになるように、前記研磨停止層の他に第1の補助研磨停止層および第2の補助研磨停止層をマスクとして用いて前記コア材料層をエッチングすることを特徴とする請求項5記載の導波路の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
記録媒体におけるトラック幅を縮小して記録密度を高めるためには、記録媒体における近接場光のスポット径を小さくする必要がある。そのためには、プラズモンジェネレータの前端面の幅および高さを小さくすることが求められる。なお、前端面の幅とは、トラック幅方向についての前端面の寸法であり、前端面の高さとは、トラックが延びる方向についての前端面の寸法である。前端面の幅と高さは、共に50nm以下であることが好ましい。
【0010】
ここで、導波路とプラズモンジェネレータを備えて、近接場光を発生するデバイスを近接場光発生器と呼ぶ。近接場光発生器の構造としては、特許文献1に記載されているように、導波路のコアの上面の上方にプラズモンジェネレータを配置した構造が考えられる。
【0011】
上記の構造の近接場光発生器は、例えば、以下の方法で製造される。まず、コアの下地となる第1のクラッド層を形成する。次に、第1のクラッド層の上に、コアを形成する。コアは、下面と、その反対側の上面と、下面と上面とを接続する2つの側面とを有している。次に、第1のクラッド層とコアを覆うように、第2のクラッド層を形成する。次に、コアの上面が露出するように、第2のクラッド層を研磨する。第2のクラッド層は、コアの2つの側面に接する。次に、コアと第2のクラッド層の上に第3のクラッド層を形成する。次に、第3のクラッド層の上に、プラズモンジェネレータと、その周囲に存在する誘電体層とを形成する。次に、プラズモンジェネレータおよび誘電体層を研磨して、プラズモンジェネレータの厚みを決定する。第2のクラッド層の研磨と、プラズモンジェネレータおよび誘電体層の研磨には、それぞれ、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)が用いられる。第1ないし第3のクラッド層は、クラッドを構成する。
【0012】
プラズモンジェネレータの厚みは、プラズモンジェネレータの性能に影響を与えるため、精度よく制御する必要がある。しかし、上記の近接場光発生器の製造方法では、プラズモンジェネレータの厚みを精度よく制御することを妨げる問題点があった。以下、この問題点について説明する。
【0013】
上記の近接場光発生器の製造方法では、プラズモンジェネレータおよび誘電体層を研磨する工程で、プラズモンジェネレータの厚みが決定される。プラズモンジェネレータの厚みを精度よく制御するためには、プラズモンジェネレータおよび誘電体層を研磨する工程の後におけるプラズモンジェネレータおよび誘電体層の上面の平坦性を高める必要がある。プラズモンジェネレータおよび誘電体層の上面の平坦性は、コアおよび第2のクラッド層の上面の形状の影響を受ける。従って、プラズモンジェネレータの厚みを精度よく制御するためには、第2のクラッド層を研磨する工程の後におけるコアおよび第2のクラッド層の上面の平坦性を高める必要がある。
【0014】
しかし、上記の近接場光発生器の製造方法では、コアと第2のクラッド層の材料の違いに起因して、コアの上面と第2のクラッド層の上面との間に段差が生じたり、コアの上面が湾曲したりして、第2のクラッド層を研磨する工程の後におけるコアおよび第2のクラッド層の上面の平坦性が低くなる。その結果、プラズモンジェネレータおよび誘電体層を研磨する工程の後におけるプラズモンジェネレータおよび誘電体層の上面の平坦性も低くなる。
【0015】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、コアとその2つの側面に接するクラッド層の上面の平坦性を高くすることができるようにした近接場光発生器の製造方法、および近接場光発生器に含まれる導波路の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の製造方法によって製造される近接場光発生器は、導波路と、プラズモンジェネレータとを備えている。導波路は、光を伝播させるコアと、コアの周囲に配置されたクラッドとを有している。コアは、下面と、その反対側の上面と、下面と上面とを接続する2つの側面とを有している。クラッドは、コアの下面に接する第1のクラッド層と、コアの2つの側面に接する第2のクラッド層と、コアの上面に接する第3のクラッド層とを含んでいる。プラズモンジェネレータは、コアの上面より発生されるエバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起されるプラズモン励起部と、表面プラズモンに基づいて近接場光を発生する前端面とを有し、コアの上面の上方に配置されている。
【0017】
本発明の近接場光発生器の製造方法は、第1のクラッド層を形成する工程と、第1のクラッド層の上に、コアと、コアの上面上に配置された研磨停止層とを含む構造体を形成する工程と、第1のクラッド層と構造体を覆うように、後に第2のクラッド層となるクラッド材料層を形成する工程と、研磨停止層が露出するまで、クラッド材料層を研磨する第1の研磨工程と、第1の研磨工程の後で、クラッド材料層が、コアの上面よりも上方に突出した突出部を有する状態になるように、研磨停止層を除去する工程と、研磨停止層を除去する工程の後で、突出部が除去されて、クラッド材料層が第2のクラッド層になるように、クラッド材料層を研磨する第2の研磨工程と、第2の研磨工程の後で、第3のクラッド層およびプラズモンジェネレータを形成する工程とを備えている。
【0018】
本発明の製造方法によって製造される導波路は、近接場光発生器に含まれる。近接場光発生器は、導波路と、プラズモンジェネレータとを備えている。導波路は、光を伝播させるコアと、コアの周囲に配置されたクラッドとを有している。コアは、下面と、その反対側の上面と、下面と上面とを接続する2つの側面とを有している。クラッドは、コアの下面に接する第1のクラッド層と、コアの2つの側面に接する第2のクラッド層と、コアの上面に接する第3のクラッド層とを含んでいる。プラズモンジェネレータは、コアの上面より発生されるエバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起されるプラズモン励起部と、表面プラズモンに基づいて近接場光を発生する前端面とを有し、コアの上面の上方に配置されている。
【0019】
本発明の導波路の製造方法は、第1のクラッド層を形成する工程と、第1のクラッド層の上に、コアと、コアの上面上に配置された研磨停止層とを含む構造体を形成する工程と、第1のクラッド層と構造体を覆うように、後に第2のクラッド層となるクラッド材料層を形成する工程と、研磨停止層が露出するまで、クラッド材料層を研磨する第1の研磨工程と、第1の研磨工程の後で、クラッド材料層が、コアの上面よりも上方に突出した突出部を有する状態になるように、研磨停止層を除去する工程と、研磨停止層を除去する工程の後で、突出部が除去されて、クラッド材料層が第2のクラッド層になるように、クラッド材料層を研磨する第2の研磨工程と、第2の研磨工程の後で、第3のクラッド層を形成する工程とを備えている。
【0020】
本発明の近接場光発生器の製造方法および導波路の製造方法において、第1の研磨工程と第2の研磨工程は、化学機械研磨を用いて行われてもよい。
【0021】
また、本発明の近接場光発生器の製造方法および導波路の製造方法において、構造体を形成する工程は、第1のクラッド層の上に、後にコアとなるコア材料層を形成する工程と、コア材料層の上に、研磨停止層を形成する工程と、コア材料層がパターニングされてコアになるように、研磨停止層をマスクとして用いてコア材料層をエッチングする工程とを含んでいてもよい。
【0022】
また、本発明の近接場光発生器の製造方法および導波路の製造方法において、研磨停止層を除去する工程は、反応性イオンエッチングを用いて行われてもよい。
【0023】
また、本発明の近接場光発生器の製造方法および導波路の製造方法において、構造体を形成する工程では、構造体の他に、第1のクラッド層の上であって構造体を挟む位置に、それぞれ構造体に対して間隔をあけて、第1および第2の補助構造体を形成してもよい。第1の補助構造体は、コアと同じ材料よりなる第1のダミーコアと、この第1のダミーコアの上に配置された第1の補助研磨停止層とを含む。第2の補助構造体は、コアと同じ材料よりなる第2のダミーコアと、この第2のダミーコアの上に配置された第2の補助研磨停止層とを含む。クラッド材料層を形成する工程では、第1のクラッド層、構造体、第1の補助構造体および第2の補助構造体を覆うように、クラッド材料層を形成する。第1の研磨工程では、研磨停止層、第1の補助研磨停止層および第2の補助研磨停止層が露出するまで、クラッド材料層を研磨する。研磨停止層を除去する工程では、研磨停止層の他に、第1および第2の補助研磨停止層を除去する。
【0024】
構造体の他に第1および第2の補助構造体を形成する場合における構造体を形成する工程は、第1のクラッド層の上に、後にコア、第1のダミーコアおよび第2のダミーコアとなるコア材料層を形成する工程と、コア材料層の上に、研磨停止層、第1の補助研磨停止層および第2の補助研磨停止層を形成する工程と、コア材料層がパターニングされてコア、第1のダミーコアおよび第2のダミーコアになるように、研磨停止層、第1の補助研磨停止層および第2の補助研磨停止層をマスクとして用いてコア材料層をエッチングする工程とを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の近接場光発生器の製造方法および導波路の製造方法では、第1の研磨工程の後で、クラッド材料層が突出部を有する状態になるように、研磨停止層を除去し、その後、突出部が除去されて、クラッド材料層が第2のクラッド層になるように、クラッド材料層を研磨する。これにより、本発明によれば、コアとその2つの側面に接する第2のクラッド層の上面の平坦性を高くすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図2および
図3を参照して、本発明の一実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドの構成について説明する。
図2は、熱アシスト磁気記録ヘッドの構成を示す断面図である。
図3は、熱アシスト磁気記録ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【0028】
本実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドは、垂直磁気記録用であり、回転する記録媒体の表面から浮上するスライダの形態を有している。記録媒体が回転すると、記録媒体とスライダとの間を通過する空気流によって、スライダに揚力が生じる。スライダは、この揚力によって記録媒体の表面から浮上するようになっている。
【0029】
図2に示したように、熱アシスト磁気記録ヘッドは、記録媒体90に対向する媒体対向面40を備えている。ここで、X方向、Y方向、Z方向を以下のように定義する。X方向は、記録媒体90のトラック横断方向すなわちトラック幅方向である。Y方向は、媒体対向面40に垂直な方向である。Z方向は、スライダから見た記録媒体90の進行方向である。X方向、Y方向、Z方向は互いに直交している。
【0030】
図2および
図3に示したように、熱アシスト磁気記録ヘッドは、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al
2O
3・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる下部シールド層3と、絶縁層2の上において下部シールド層3の周囲に配置された絶縁層4とを備えている。絶縁層2,4は、例えばアルミナ(Al
2O
3)によって形成されている。Z方向は、基板1の上面1aに垂直な方向でもある。
【0031】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、下部シールド層3および絶縁層4の上面の上に配置された絶縁膜である下部シールドギャップ膜5と、この下部シールドギャップ膜5の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子6と、このMR素子6に接続された2つのリード(図示せず)と、MR素子6の上に配置された絶縁膜である上部シールドギャップ膜7とを備えている。
【0032】
MR素子6の一端部は、媒体対向面40に配置されている。MR素子6には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
【0033】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、上部シールドギャップ膜7の上に配置された磁性材料よりなる上部シールド層8と、上部シールドギャップ膜7の上において上部シールド層8の周囲に配置された絶縁層9とを備えている。絶縁層9は、例えばアルミナによって形成されている。下部シールド層3から上部シールド層8までの部分は、再生ヘッド部を構成する。
【0034】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、上部シールド層8および絶縁層9の上に配置された非磁性層10と、非磁性層10の上に配置された磁性材料よりなるリターン磁極層11と、非磁性層10の上においてリターン磁極層11の周囲に配置された絶縁層12とを備えている。リターン磁極層11は、媒体対向面40に配置された端面を有している。非磁性層10および絶縁層12は、例えばアルミナによって形成されている。
【0035】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、媒体対向面40から離れた位置においてリターン磁極層11の一部の上に配置された2つの連結部13A,13Bと、リターン磁極層11の他の部分および絶縁層12の上に配置された絶縁層14と、この絶縁層14の上に配置されたコイル15とを備えている。連結部13A,13Bは、磁性材料によって形成されている。連結部13A,13Bは、それぞれ、リターン磁極層11の上に配置された第1層と、この第1層の上に順に配置された第2層、第3層および第4層とを有している。連結部13Aの第1層と連結部13Bの第1層は、トラック幅方向(X方向)に並ぶように配置されている。コイル15は、平面渦巻き形状をなし、連結部13A,13Bの第1層を中心として巻回されている。コイル15は、銅等の導電材料によって形成されている。絶縁層14は、例えばアルミナによって形成されている。
【0036】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、コイル15の巻線間に配置された絶縁層16と、コイル15の周囲に配置された絶縁層17と、コイル15および絶縁層16,17の上に配置された絶縁層18とを備えている。絶縁層16は、例えばフォトレジストによって形成されている。絶縁層17,18は、例えばアルミナによって形成されている。連結部13A,13Bの第1層は、絶縁層14,17に埋め込まれている。
【0037】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、コア21と、コア21の周囲に配置されたクラッドとを有する導波路を備えている。コア21は、媒体対向面40により近い端面21aと、下面21bと、下面21bとは反対側の上面21cと、下面21bと上面21cとを接続する2つの側面21d,21eとを有している。端面21aは、媒体対向面40に配置されていてもよいし、媒体対向面40から離れた位置に配置されていてもよい。
図2および
図3には、端面21aが媒体対向面40に配置された例を示している。
【0038】
クラッドは、第1のクラッド層19と、第2のクラッド層24と、第3のクラッド層25とを含んでいる。第1のクラッド層19は、絶縁層18の上に配置されている。コア21は、第1のクラッド層19の上に配置されている。第2のクラッド層24は、第1のクラッド層19の上においてコア21の周囲に配置されている。コア21の上面21cおよび第2のクラッド層24の上面は平坦化されている。第3のクラッド層25は、コア21の上面21cおよび第2のクラッド層24の上面の上に配置されている。
【0039】
コア21は、近接場光の発生に用いられるレーザ光を通過させる誘電体材料によって形成されている。コア21には、図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光が入射され、このレーザ光はコア21内を伝播する。第1ないし第3のクラッド層19,24,25は、コア21の屈折率よりも小さい屈折率を有する誘電体材料によって形成されている。コア21の材料としては、例えば、Ta
2O
5等の酸化タンタル、SiONまたは酸化ニオブが用いられる。第1ないし第3のクラッド層19,24,25の材料としては、例えばアルミナやSiO
2が用いられる。
【0040】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、第1のクラッド層19の上であってコア21を挟む位置に、それぞれコア21に対して間隔をあけて配置された第1のダミーコア22および第2のダミーコア23を備えている。より詳しく説明すると、第1および第2のダミーコア22,23は、コア21のトラック幅方向の両側に配置されている。第1のダミーコア22は、コア21のトラック幅方向の中心との間にコア21の側面21dを挟む位置に配置されている。第2のダミーコア23は、コア21のトラック幅方向の中心との間にコア21の側面21eを挟む位置に配置されている。第1および第2のダミーコア22,23は、第2のクラッド層24に埋め込まれている。第1および第2のダミーコア22,23は、コア21と同じ材料によって形成されている。
【0041】
連結部13A,13Bの第2層は、絶縁層18および第1のクラッド層19に埋め込まれている。連結部13A,13Bの第3層は、第2のクラッド層24に埋め込まれている。連結部13Aの第3層は、コア21との間に第1のダミーコア22を挟む位置に配置されている。連結部13Bの第3層は、コア21との間に第2のダミーコア23を挟む位置に配置されている。
【0042】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、プラズモンジェネレータ50を備えている。プラズモンジェネレータ50は、コア21の上面21cとの間に第3のクラッド層25が介在するように、第3のクラッド層25の上に配置されている。プラズモンジェネレータ50は、金属によって形成されている。具体的には、プラズモンジェネレータ50は、例えば、Au、Ag、Al、Cu、Pd、Pt、Rh、Irのいずれか、またはこれらのうちの複数の元素よりなる合金によって形成されている。プラズモンジェネレータ50の形状については、後で詳しく説明する。
【0043】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、第3のクラッド層25の上においてプラズモンジェネレータ50の周囲に配置された誘電体層26と、プラズモンジェネレータ50の一部と誘電体層26を覆うように配置された誘電体層27と、プラズモンジェネレータ50および誘電体層27の上に配置された誘電体層28とを備えている。誘電体層27は、上面と、媒体対向面40に最も近い端面とを有している。誘電体層27の前記端面における任意の位置の媒体対向面40からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。誘電体層26〜28は、例えばアルミナによって形成されている。
【0044】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、コア21との間にプラズモンジェネレータ50を挟む位置に配置された磁性材料よりなる主磁極29と、主磁極29の周囲に配置された誘電体層30とを備えている。主磁極29は、プラズモンジェネレータ50の上面と、誘電体層27の前記端面と、誘電体層27の上面のそれぞれの一部の上方に位置するように、誘電体層28の上に配置されている。主磁極29は、媒体対向面40に配置された前端面と、下面と、上面とを有している。連結部13A,13Bの第4層は、第3のクラッド層25および誘電体層26〜28,30に埋め込まれている。主磁極29、誘電体層30および連結部13A,13Bの第4層の上面は平坦化されている。誘電体層30は、例えばSiO
2によって形成されている。
【0045】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、誘電体層30の上に配置されたコイル31と、コイル31を覆うように配置された絶縁層32と、主磁極29、連結部13A,13B、誘電体層30および絶縁層32の上に配置された磁性材料よりなるヨーク層33とを備えている。ヨーク層33は、主磁極29と連結部13A,13Bを磁気的に連結している。コイル31は、平面渦巻き形状をなし、ヨーク層33のうち連結部13A,13Bの上に配置された部分を中心として巻回されている。コイル31は、銅等の導電材料によって形成されている。絶縁層32は、例えばフォトレジストによって形成されている。
【0046】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、ヨーク層33を覆うように配置された保護層34を備えている。保護層34は、例えばアルミナによって形成されている。
【0047】
リターン磁極層11からヨーク層33までの部分は、記録ヘッド部を構成する。コイル15,31は、記録媒体90に記録する情報に応じた磁界を発生する。リターン磁極層11、連結部13A,13B、ヨーク層33および主磁極29は、コイル15,31が発生する磁界に対応した磁束を通過させる磁路を形成する。コイル15,31は、主磁極29において、コイル15によって発生された磁界に対応する磁束とコイル31によって発生された磁界に対応する磁束が同じ方向に流れるように、直列または並列に接続されている。主磁極29は、コイル15によって発生された磁界に対応する磁束とコイル31によって発生された磁界に対応する磁束とを通過させて、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体90に記録するための記録磁界を発生する。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドは、媒体対向面40と再生ヘッド部と記録ヘッド部とを備えている。再生ヘッド部と記録ヘッド部は、基板1の上に積層されている。記録ヘッド部は、再生ヘッド部に対して、記録媒体90の進行方向(Z方向)の前側(トレーリング側)に配置されている。
【0049】
記録ヘッド部は、コイル15,31と、主磁極29と、導波路と、プラズモンジェネレータ50とを備えている。導波路は、光を伝播させるコア21と、コア21の周囲に配置されたクラッドとを有している。本実施の形態では、特に、コア21は、図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光を伝播させる。クラッドは、第1ないし第3のクラッド層19,24,25を含んでいる。
【0050】
コア21は、端面21a、下面21b、上面21cおよび2つの側面21d,21eを有している。第1のクラッド層19は、コア21の下面21bに接している。第2のクラッド層24は、コア21の2つの側面21d,21eに接している。第3のクラッド層25は、コア21の上面21cに接している。プラズモンジェネレータ50は、コア21との間に第3のクラッド層25が介在するように、コア21の上面21cの上方に配置されている。
【0051】
本実施の形態に係る近接場光発生器は、コア21およびクラッドを有する導波路と、プラズモンジェネレータ50とを備えている。
【0052】
次に、
図1を参照して、プラズモンジェネレータ50の形状について詳しく説明する。
図1は、近接場光発生器の要部を示す斜視図である。
図1に示したように、プラズモンジェネレータ50は、下面であるプラズモン励起部50aと、上面50bと、2つの側面50c,50dと、前端面50eと、後端面50fとを有している。前端面50eは、媒体対向面40に配置され、プラズモン励起部50a、上面50bおよび2つの側面50c,50dを連結している。前端面50eは、後で説明する原理によって近接場光を発生する。媒体対向面40に平行なプラズモンジェネレータ50の断面の形状は、例えば矩形である。プラズモンジェネレータ50の厚み(Z方向の寸法)は、媒体対向面40からの距離によらずにほぼ一定である。
【0053】
また、
図1に示したように、プラズモンジェネレータ50は、媒体対向面40の近傍に配置された細幅部51と、この細幅部51よりも媒体対向面40から遠い位置に配置された幅広部52とを備えている。媒体対向面40およびコア21の上面21cに平行な方向(X方向)についての細幅部51の幅は、媒体対向面40からの距離によらずに一定であってもよいし、媒体対向面40に近づくに従って小さくなっていてもよい。幅広部52は、細幅部51に対して前端面50eとは反対側に位置して細幅部51に連結されている。幅広部52のトラック幅方向(X方向)の幅は、細幅部51との境界の位置では細幅部51と等しく、それ以外の位置では細幅部51よりも大きくなっている。
【0054】
前端面50eの幅(トラック幅方向(X方向)の寸法)は、媒体対向面40における細幅部51の幅によって規定される。前端面50eの幅は、例えば5〜40nmの範囲内である。また、前端面50eの高さ(Z方向の寸法)は、媒体対向面40における細幅部51の高さによって規定される。前端面50eの高さは、例えば5〜40nmの範囲内である。
【0055】
次に、本実施の形態における近接場光発生の原理と、近接場光を用いた熱アシスト磁気記録の原理について詳しく説明する。図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光はコア21に入射される。
図2に示したように、レーザ光60は、コア21内を媒体対向面40に向けて伝播して、プラズモンジェネレータ50の近傍に達する。コア21の上面21cは、コア21を伝播するレーザ光60に基づいてエバネッセント光を発生する。すなわち、上面21cにおいてレーザ光60が全反射することによって、上面21cは、第3のクラッド層25にしみ出すエバネッセント光を発生する。プラズモンジェネレータ50では、プラズモン励起部50aにおいて、上記エバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起され、この表面プラズモンが前端面50eに伝播され、この表面プラズモンに基づいて前端面50eより近接場光を発生する。
【0056】
前端面50eより発生された近接場光は、記録媒体90に向けて照射され、記録媒体90の表面に達し、記録媒体90の磁気記録層の一部を加熱する。これにより、その磁気記録層の一部の保磁力が低下する。熱アシスト磁気記録では、このようにして保磁力が低下した磁気記録層の一部に対して、主磁極29より発生される記録磁界を印加することによってデータの記録が行われる。
【0057】
本実施の形態では、プラズモンジェネレータ50は、細幅部51と幅広部52とを有している。本実施の形態によれば、幅広部52が設けられていない場合に比べて、コア21の上面21cに対向するプラズモン励起部50aの面積を大きくして、より多くの表面プラズモンを励起させることができる。これにより、本実施の形態によれば、十分な強度の近接場光を発生させることが可能になる。
【0058】
次に、
図2および
図3を参照して、本実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法は、複数の熱アシスト磁気記録ヘッドの基板1となる部分を含むウェハ上に、複数の熱アシスト磁気記録ヘッドの基板1以外の構成要素を形成して、それぞれ後に熱アシスト磁気記録ヘッドとなるヘッド予定部が複数列に配列された基礎構造物を作製する工程と、この基礎構造物を切断することによって複数のヘッド予定部を互いに分離して、複数の熱アシスト磁気記録ヘッドを形成する工程とを備えている。複数の熱アシスト磁気記録ヘッドを形成する工程では、切断によって形成された面を研磨して媒体対向面40を形成する。
【0059】
以下、1つの熱アシスト磁気記録ヘッドに注目して、本実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法を更に詳しく説明する。本実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法では、まず、基板1の上に絶縁層2を形成する。次に、絶縁層2の上に下部シールド層3を形成する。次に、下部シールド層3を覆うように絶縁層4を形成する。次に、例えばCMPによって、下部シールド層3が露出するまで絶縁層4を研磨する。
【0060】
次に、下部シールド層3および絶縁層4の上に下部シールドギャップ膜5を形成する。次に、下部シールドギャップ膜5の上にMR素子6と、MR素子6に接続される図示しない2つのリードとを形成する。次に、MR素子6およびリードを覆うように上部シールドギャップ膜7を形成する。次に、上部シールドギャップ膜7の上に上部シールド層8を形成する。次に、上部シールド層8を覆うように絶縁層9を形成する。次に、例えばCMPによって、上部シールド層8が露出するまで絶縁層9を研磨する。
【0061】
次に、上部シールド層8および絶縁層9の上に非磁性層10を形成する。次に、非磁性層10の上にリターン磁極層11を形成する。次に、リターン磁極層11を覆うように絶縁層12を形成する。次に、例えばCMPによって、リターン磁極層11が露出するまで絶縁層12を研磨する。次に、リターン磁極層11および絶縁層12の上に、絶縁層14を形成する。
【0062】
次に、絶縁層14を選択的にエッチングして、絶縁層14に、リターン磁極層11の上面を露出させる2つの開口部を形成する。次に、この2つの開口部の位置で、リターン磁極層11の上に、連結部13A,13Bのそれぞれの第1層を形成する。次に、絶縁層14の上にコイル15を形成する。次に、コイル15の巻線間に絶縁層16を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層17を形成する。次に、例えばCMPによって、連結部13A,13Bのそれぞれの第1層、コイル15および絶縁層16が露出するまで絶縁層17を研磨して、連結部13A,13Bのそれぞれの第1層、コイル15および絶縁層16,17の上面を平坦化する。次に、連結部13A,13Bのそれぞれの第1層、コイル15および絶縁層16,17の上に、絶縁層18を形成する。
【0063】
次に、絶縁層18を選択的にエッチングして、絶縁層18に、連結部13A,13Bのそれぞれの第1層の上面を露出させる2つの開口部を形成する。次に、連結部13A,13Bのそれぞれの第1層の上に、連結部13A,13Bのそれぞれの第2層を形成する。次に、連結部13A,13Bのそれぞれの第2層を覆うように第1のクラッド層19を形成する。次に、例えばCMPによって、連結部13A,13Bのそれぞれの第2層が露出するまで第1のクラッド層19を研磨する。次に、連結部13A,13Bのそれぞれの第2層の上に、連結部13A,13Bのそれぞれの第3層を形成する。
【0064】
次に、第1のクラッド層19の上に、コア21、第1のダミーコア22、第2のダミーコア23、第2のクラッド層24、第3のクラッド層25、誘電体層26およびプラズモンジェネレータ50を形成する。この工程については、後で詳しく説明する。
【0065】
次に、プラズモンジェネレータ50の一部および誘電体層26の上に誘電体層27を形成する。次に、プラズモンジェネレータ50および誘電体層27の上に誘電体層28を形成する。次に、第3のクラッド層25および誘電体層26〜28を選択的にエッチングして、第3のクラッド層25および誘電体層26〜28に、連結部13A,13Bのそれぞれの第3層の上面を露出させる開口部を形成する。次に、誘電体層28の上に主磁極29を形成し、連結部13A,13Bのそれぞれの第3層の上に、連結部13A,13Bのそれぞれの第4層を形成する。次に、主磁極29および連結部13A,13Bのそれぞれの第4層を覆うように誘電体層30を形成する。次に、例えばCMPによって、主磁極29および連結部13A,13Bのそれぞれの第4層が露出するまで誘電体層30を研磨する。
【0066】
次に、誘電体層30の上にコイル31を形成する。次に、コイル31を覆うように絶縁層32を形成する。次に、主磁極29、連結部13A,13Bのそれぞれの第4層、誘電体層30および絶縁層32の上に、ヨーク層33を形成する。次に、ヨーク層33を覆うように保護層34を形成する。次に、保護層34の上面に配線や端子等を形成する。
【0067】
このようにして、基礎構造物が完成したら、この基礎構造物を切断することによって複数のヘッド予定部を互いに分離し、媒体対向面40の研磨、浮上用レールの作製等を行って、熱アシスト磁気記録ヘッドが完成する。
【0068】
次に、本実施の形態に係る近接場光発生器の製造方法について説明する。本実施の形態に係る近接場光発生器の製造方法は、第1のクラッド層19を形成する工程と、コア21を形成する工程と、第2のクラッド層24を形成する工程と、第3のクラッド層25を形成する工程と、プラズモンジェネレータ50を形成する工程とを備えている。以下の説明は、本実施の形態に係る導波路の製造方法の説明を含んでいる。
【0069】
以下、
図4ないし
図13を参照して、第1のクラッド層19を形成した後、プラズモンジェネレータ50を形成するまでの工程について説明する。
図4ないし
図13は、近接場光発生器の製造過程における積層体の、媒体対向面40が形成される予定の位置における断面を示している。
【0070】
図4は、第1のクラッド層19を形成した後の工程を示している。この工程では、まず、第1のクラッド層19の上に、後にコア21、第1のダミーコア22および第2のダミーコア23となるコア材料層20Pを形成する。次に、コア材料層20Pの上に、後に後で説明する研磨停止層、第1の補助研磨停止層および第2の補助研磨停止層となる金属材料層60Pを形成する。次に、金属材料層60Pの上に、後で説明する剥離防止層、第1の補助剥離防止層および第2の補助剥離防止層となる金属材料層70Pを形成する。金属材料層60Pの材料としては、例えばRuが用いられる。金属材料層70Pの材料としては、例えばNiCrが用いられる。金属材料層60Pの厚みは、例えば100nmである。金属材料層70Pの厚みは、例えば10nmである。
【0071】
次に、金属材料層70Pの上に、フォトレジストマスク74を形成する。フォトレジストマスク74は、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。フォトレジストマスク74は、以下の第1の部分74A、第2の部分74Bおよび第3の部分74Cを含んでいる。第1の部分74Aは、コア21の平面形状(上方から見た形状)に対応した平面形状を有し、コア材料層20P内の、後にコア21が形成される領域の上方に配置されている。第2の部分74Bは、第1のダミーコア22の平面形状に対応した平面形状を有し、コア材料層20P内の、後に第1のダミーコア22が形成される領域の上方に配置されている。第3の部分74Cは、第2のダミーコア23の平面形状に対応した平面形状を有し、コア材料層20P内の、後に第2のダミーコア23が形成される領域の上方に配置されている。
【0072】
図5は、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばイオンビームエッチング(以下、IBEと記す。)によって、金属材料層60P,70Pのうち、フォトレジストマスク74の第1ないし第3の部分74A〜74Cの下に存在する部分以外の部分を除去する。これにより、残った金属材料層60Pは、研磨停止層61、第1の補助研磨停止層62および第2の補助研磨停止層63になり、残った金属材料層70Pは、剥離防止層71、第1の補助剥離防止層72および第2の補助剥離防止層73になる。研磨停止層61および剥離防止層71は、第1の部分74Aの下に位置する。第1の補助研磨停止層62および第1の補助剥離防止層72は、第2の部分74Bの下に位置する。第2の補助研磨停止層63および第2の補助剥離防止層73は、第3の部分74Cの下に位置する。
【0073】
次に、コア材料層20Pがパターニングされてコア21、第1のダミーコア22および第2のダミーコア23になるように、例えば反応性イオンエッチング(以下、RIEと記す。)によって、コア材料層20Pをエッチングする。この工程において、研磨停止層61、剥離防止層71およびフォトレジストマスク74の第1の部分74Aは、コア21を形成するためのマスクとして用いられる。また、第1の補助研磨停止層62、第1の補助剥離防止層72およびフォトレジストマスク74の第2の部分74Bは、第1のダミーコア22を形成するためのマスクとして用いられる。また、第2の補助研磨停止層63、第2の補助剥離防止層73およびフォトレジストマスク74の第3の部分74Cは、第2のダミーコア23を形成するためのマスクとして用いられる。コア材料層20Pが酸化タンタルによって構成されている場合には、コア材料層20PをRIEによってエッチングする際のエッチングガスとしては、例えば、CF
4を含むガスか、またはCl
2およびBCl
3を含むガスが用いられる。次に、フォトレジストマスク74を除去する。
【0074】
上述のようにコア材料層20Pをパターニングしてコア21、第1のダミーコア22および第2のダミーコア23を形成することにより、第1のクラッド層19の上に、構造体81、第1の補助構造体82および第2の補助構造体83が形成される。第1の補助構造体82および第2の補助構造体83は、構造体81を挟む位置に、それぞれ構造体81に対して間隔をあけて形成される。構造体81は、コア21と、コア21の上面21c上に配置された研磨停止層61と、研磨停止層61の上面上に配置された剥離防止層71とを含んでいる。第1の補助構造体82は、第1のダミーコア22と、第1のダミーコア22の上に配置された第1の補助研磨停止層62と、第1の補助研磨停止層62の上に配置された第1の補助剥離防止層72とを含んでいる。第2の補助構造体83は、第2のダミーコア23と、第2のダミーコア23の上に配置された第2の補助研磨停止層63と、第2の補助研磨停止層63の上に配置された第2の補助剥離防止層73とを含んでいる。
【0075】
図6は、次の工程を示す。この工程では、第1のクラッド層19、構造体81および補助構造体82,83を覆うように、後に第2のクラッド層24となるクラッド材料層24Pを形成する。クラッド材料層24Pは、構造体81および補助構造体82,83の上に配置された部分以外の部分の上面が、剥離防止層71および補助剥離防止層72,73よりも上方に配置されるような厚みに形成される。
【0076】
なお、研磨停止層61および補助研磨停止層62,63の材料(金属材料層60Pの材料)とクラッド材料層24Pの材料の組み合わせによっては、剥離防止層71および補助剥離防止層72,73が無い場合には、クラッド材料層24Pが、研磨停止層61および補助研磨停止層62,63から剥離しやすくなる場合がある。剥離防止層71および補助剥離防止層72,73は、このクラッド材料層24Pの剥離を防止するために設けられている。従って、剥離防止層71および補助剥離防止層72,73の材料すなわち金属材料層70Pの材料としては、研磨停止層61、補助研磨停止層62,63およびクラッド材料層24Pとの密着性が高い材料が選択される。ただし、剥離防止層71および補助剥離防止層72,73は、本発明における必須の要素ではなく、設けられていなくてもよい。
【0077】
図7は、次の工程を示す。この工程では、研磨停止層61および補助研磨停止層62,63が露出するまで、クラッド材料層24P、剥離防止層71および補助剥離防止層72,73を研磨する。以下、この工程を、第1の研磨工程と言う。第1の研磨工程により、剥離防止層71および補助剥離防止層72,73が完全に除去される。剥離防止層71が除去された後の構造体81を研磨後構造体181と呼び、補助剥離防止層72,73が除去された後の補助構造体82,83を研磨後補助構造体182,183と呼ぶ。第1の研磨工程は、例えばCMPを用いて行われる。CMPによってクラッド材料層24Pを研磨する場合には、例えば、粒径が0.2μm未満のアルミナ砥粒を含むスラリーを用い、研磨圧力を3psi(1psi=6.895kPa)未満にする。
【0078】
図7に示したように、研磨後のクラッド材料層24Pのうち、コア21とダミーコア22の間に位置する部分と、コア21とダミーコア23の間に位置する部分のそれぞれの上面は、それらの周囲の面よりも窪むように凹状に湾曲した形状になる。また、研磨後の研磨停止層61の上面は、その周囲の面よりも突出するように凸状に湾曲した形状になる。また、図示しないが、研磨後の補助研磨停止層62,63の上面は、その周囲の面よりも突出するように凸状に湾曲した形状になる。このような形状になるのは、第1の研磨工程において研磨面が研磨停止層61および補助研磨停止層62,63に到達した後は、研磨停止層61および補助研磨停止層62,63の研磨はほとんど進行しないが、クラッド材料層24Pの研磨は進行するためである。クラッド材料層24Pの上面の窪みの深さ(Z方向の寸法)は、例えば20〜60nmの範囲内である。
【0079】
図8は、次の工程を示す。この工程では、クラッド材料層24Pが、コア21の上面21cよりも上方に突出した突出部24Paを有する状態になるように、研磨停止層61および補助研磨停止層62,63を除去する。研磨停止層61および補助研磨停止層62,63の除去は、例えばRIEを用いて行われる。研磨停止層61および補助研磨停止層62,63の材料(金属材料層60Pの材料)がRuである場合には、研磨停止層61および補助研磨停止層62,63をRIEによってエッチングする際のエッチングガスとしては、例えば、O
2およびCl
2を含むガスが用いられる。このようなエッチングを行うことにより、コア21、ダミーコア22,23およびクラッド材料層24Pをほとんどエッチングすることなく、研磨停止層61および補助研磨停止層62,63を選択的に除去することができる。これにより、クラッド材料層24Pが突出部24Paを有する状態にすることができる。コア21の上面21cを基準とした突出部24Paの高さ(Z方向の寸法)は、例えば40〜80nmの範囲内である。
【0080】
図9は、次の工程を示す。この工程では、突出部24Paが除去されて、クラッド材料層24Pが第2のクラッド層24になるように、クラッド材料層24Pを研磨する。以下、この工程を、第2の研磨工程と言う。第2の研磨工程は、例えばCMPを用いて行われる。CMPによって突出部24Paを除去する場合には、例えば、研磨圧力を1psi未満にして、高速に研磨する。また、この場合、研磨時間を20秒未満にする。これにより、第2の研磨工程が、コア21の質に、熱および化学反応による影響を与えることを防止することができる。
【0081】
図10は、次の工程を示す。この工程では、まず、コア21、ダミーコア22,23および第2のクラッド層24の上に、第3のクラッド層25を形成する。次に、第3のクラッド層25の上に、誘電体層26を形成する。次に、誘電体層26の上に、プラズモンジェネレータ50の平面形状に対応した形状の開口部75aを有するエッチングマスク75を形成する。エッチングマスク75は、例えば、以下のようにして形成される。まず、後にエッチングマスク75となるエッチングマスク材料層を形成する。次に、エッチングマスク材料層の上に、開口部75aに対応した形状の開口部を有するフォトレジストマスクを形成する。このフォトレジストマスクは、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。次に、フォトレジストマスクをエッチングマスクとして用いて、例えばIBEによって、エッチングマスク材料層のうちフォトレジストマスクの開口部から露出する部分をエッチングして除去する。これにより、エッチングマスク材料層はエッチングマスク75になる。次に、フォトレジストマスクを除去する。
【0082】
図11は、次の工程を示す。この工程では、まず、エッチングマスク75を用いて、例えばRIEによって、誘電体層26をエッチングして、誘電体層26に、プラズモンジェネレータ50を収容する収容部26aを形成する。次に、エッチングマスク75を除去する。
【0083】
図12は、次の工程を示す。この工程では、収容部26aを埋めるように、後にプラズモンジェネレータ50となる金属膜50Pを形成する。
図12に示したように、金属膜50Pは、誘電体層26の上面の上にも形成される。
【0084】
図13は、次の工程を示す。この工程では、金属膜50Pがプラズモンジェネレータ50になるように、例えばCMPによって、金属膜50Pおよび誘電体層26を研磨する。これにより、プラズモンジェネレータ50が完成する。プラズモンジェネレータ50の厚み(Z方向の寸法)は、金属膜50Pおよび誘電体層26の研磨量によって決定される。
【0085】
第1のクラッド層19を形成する工程から、
図13に示したプラズモンジェネレータ50を形成する工程までが、本実施の形態に係る近接場光発生器の製造方法に対応する。また、第1のクラッド層19を形成する工程から、
図10に示した第3のクラッド層25を形成する工程までが、本実施の形態に係る導波路の製造方法に対応する。
【0086】
本実施の形態によれば、コア21の上面21cと第2のクラッド層24の上面の平坦性を高くすることができる。以下、この効果について、比較例の近接場光発生器の製造方法と比較しながら説明する。始めに、
図14を参照して、比較例の近接場光発生器の製造方法について説明する。
図14は、近接場光発生器の製造過程における積層体の、媒体対向面40が形成される予定の位置における断面を示している。
【0087】
比較例の近接場光発生器の製造方法は、
図7に示した第1の研磨工程までは、本実施の形態と同じである。比較例では、次に、IBEを用いて、研磨停止層61および補助研磨停止層62,63を除去する。このとき、イオンビームの進行方向を、基板1の上面1a(
図2参照)に垂直な方向に対して、大きな角度、例えば65°で傾ける。
図14は、研磨停止層61および補助研磨停止層62,63を除去した後の積層体を示している。次に、コア21、ダミーコア22,23および第2のクラッド層24の上に、第3のクラッド層25を形成する。その後の工程は、本実施の形態と同じである。
【0088】
上記のように、イオンビームの進行方向を、基板1の上面1aに垂直な方向に対して大きな角度で傾けたIBEを行うことにより、コア21、ダミーコア22,23、クラッド材料層24P、研磨停止層61および補助研磨停止層62,63のエッチングレートは、比較的近い値になる。そのため、比較例では、
図14に示したように、研磨停止層61および補助研磨停止層62,63を除去した後の積層体の上面の形状は、
図7に示した第1の研磨工程後の積層体の上面の形状に近似した形状になる。そのため、比較例では、コア21および第2のクラッド層24の上面の平坦性が低くなる。
【0089】
これに対し、本実施の形態では、第1の研磨工程の後で、クラッド材料層24Pが突出部24Paを有する状態になるように、RIEを用いて、研磨停止層61および補助研磨停止層62,63を選択的に除去する。これにより、コア21の平坦な上面21cを露出させることができると共に、この上面21cが湾曲することを防止することができる。その後、CMPを用いた第2の研磨工程によって、突出部24Paが除去されるように、クラッド材料層24Pを研磨する。これにより、コア21の上面21cを平坦な状態に維持したままで、コア21の上面21cとその周囲の面との間の段差をなくすことができる。このようにして、本実施の形態によれば、コア21および第2のクラッド層24の上面の平坦性を高くすることができる。その結果、本実施の形態によれば、
図13に示した金属膜50Pおよび誘電体層26を研磨する工程の後におけるプラズモンジェネレータ50および誘電体層26の上面の平坦性を高くして、プラズモンジェネレータ50の厚みを精度よく制御することができる。
【0090】
以下、
図5に示した構造体81を形成する工程において、構造体81の他に補助構造体82,83を形成することによる効果について説明する。補助構造体82,83が無い場合には、
図7に示した第1の研磨工程の後で、クラッド材料層24Pの上面の高さは、研磨後構造体181から離れるに従って徐々に低くなる。クラッド材料層24Pの上面がこのような形状であると、
図9に示した第2の研磨工程に支障が生じる可能性がある。これに対し、本実施の形態では、構造体81を挟む位置に補助構造体82,83を形成することにより、第1の研磨工程の後で、クラッド材料層24Pのうち、研磨後構造体181と研磨後補助構造体182との間に配置された部分と、研磨後構造体181と研磨後補助構造体183との間に配置された部分の、それぞれの上面の高さが低くなりすぎることを防止することができる。これにより、第1の研磨工程の後におけるクラッド材料層24Pの上面の形状によって第2の研磨工程に支障が生じることを防止することができる。
【0091】
また、
図5に示した構造体81を形成する工程において、構造体81と同時に補助構造体82,83を形成することにより、コア21の側面21dとこれに対向するダミーコア22の側面を、容易に、基板1の上面1aに対して垂直になるように形成することができ、同様に、コア21の側面21eとこれに対向するダミーコア23の側面を、容易に、基板1の上面1aに対して垂直になるように形成することができる。これにより、本実施の形態によれば、コア21の2つの側面21d,21eを、容易に、基板1の上面1aに対して垂直になるように形成することができる。
【0092】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、補助構造体82,83は、本発明における必須の要素ではなく、形成されなくてもよい。また、請求の範囲の要件を満たす限り、コア21、プラズモンジェネレータ50および主磁極29の形状は、実施の形態に示した例に限られず、任意である。