(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816704
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】テトラヒドロ−β−カルボリンから誘導される化合物を得る方法
(51)【国際特許分類】
C07D 471/14 20060101AFI20151029BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
C07D471/14 102
C07D471/04 103E
C07D471/04 103P
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-552966(P2013-552966)
(86)(22)【出願日】2012年2月10日
(65)【公表番号】特表2014-505090(P2014-505090A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2012052281
(87)【国際公開番号】WO2012107549
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2015年1月9日
(31)【優先権主張番号】P201130177
(32)【優先日】2011年2月10日
(33)【優先権主張国】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】508036488
【氏名又は名称】インテルキム、ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルゾサ ロドリゲス、ザヴィエル
(72)【発明者】
【氏名】マルキーヤス オロンドリス、フランシスコ
【審査官】
東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−536567(JP,A)
【文献】
特表2011−516449(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/004557(WO,A2)
【文献】
特表2008−538554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式3’cisHXのテトラヒドロ−β−カルボリン
【化1】
(式中、Rは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基又はsec−ブチル基を表し、Xは、塩素又は臭素を表す)から誘導される化合物を得る方法であって、
式1’HXの水素酸HXとの塩としてのD−トリプトファンアルキルエステル
【化2】
(式中、R及びXは、3’cisHXにおけるものと同じ意味を有する)と式2のピペロナール
【化3】
とを、いかなる追加の成分も非存在下、40〜150℃の間に含まれる温度で反応させるステップを含む上記方法。
【請求項2】
Rがメチル基であり、Xが塩素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1’HX:2のモル比が、1:1〜1:6である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1’HX:2のモル比が、1:2〜1:5である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
反応温度が75〜150℃の間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応温度が110〜130℃の間にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式5’cisのテトラヒドロ−β−カルボリン
【化4】
(式中、Rは、1’HXにおけるものと同じ意味を有し、Yは、塩素又は臭素を表す)から誘導される化合物を得る方法であって、
以下のステップ:
(i)請求項1に記載の方法により式3’cisHXの化合物を製造し、該化合物が場合により反応媒体から単離されるステップ、及び
(ii)式3’cisHXの化合物とハロアセチルハライド(4’)
【化5】
(式中、Yは、5’cisにおけるものと同じ意味を有し、Zは、塩素又は臭素を表す)とを、塩基性剤の存在下で、有機媒体中又は有機媒体と水との混合物中で反応させるステップ、
を含む上記方法。
【請求項8】
YとZが共に塩素である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
塩基性剤が、第三級アミン、又は無機の炭酸塩若しくは無機の重炭酸塩である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
第三級アミンが、ブチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジエチルプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、N−エチルピロリジン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリメチルアミン及びトリプロピルアミンからなる群から選択され、無機の炭酸塩が炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムであり、無機の重炭酸塩が、重炭酸ナトリウム又は重炭酸カリウムである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
有機媒体が、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−プロパノール又はt−ブタノールなどの脂肪族アルコール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジン、又はN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトンなどのケトン、ジエチルエーテル、ジエトキシメタン、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、エチル−t−ブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン又はテトラヒドロピランなどのエーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル又はギ酸エチルなどのエステル、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン又はジクロロメタンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素、トルエン、1,2−キシレン、1,3−キシレン又は1,4−キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン又は石油エーテルなどの飽和炭化水素、アセトニトリル又はプロピオニトリルなどのニトリル、及びジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
有機媒体が、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン及び酢酸エチルからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式7(タダラフィル)のテトラヒドロ−β−カルボリン誘導体化合物
【化6】
を製造する方法であって、
以下のステップ:
(i)請求項7に記載の方法による式5’cisの化合物を製造するステップ、及び
(ii)有機媒体又は有機媒体と水との混合物中、式5’cisの化合物とメチルアミン(6)とを反応させるステップ、
を含む上記方法。
【請求項14】
有機媒体が、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−プロパノール又はt−ブタノールなどの脂肪族アルコール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジン、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトンなどのケトン、ジエチルエーテル、ジエトキシメタン、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、エチル−t−ブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン又はテトラヒドロピランなどのエーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、又はギ酸エチルなどのエステル、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン又はジクロロメタンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素、トルエン、1,2−キシレン、1,3−キシレン又は1,4−キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン又は石油エーテルなどの飽和炭化水素、アセトニトリル又はプロピオニトリルなどのニトリル、及びジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラヒドロ−β−カルボリンから誘導される化合物、具体的にはタダラフィル(7)、及びその合成由来の中間生成物を得る方法に関する。タダラフィル(7)は、化学的に(6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−ピラジノ−[2’,1’:6,1]ピリド[3,4−b]インドール−1,4−ジオンに相当し、勃起機能不全の治療に使用する、環式グアノシン一リン酸のホスホジエステラーゼ−5の選択的阻害剤である。その構造式は次の通りである。
【化1】
【背景技術】
【0002】
D−トリプトファン(1)(又は、その塩化水素、1HCl)のメチルエステル、及びピペロナール(2)から7を得る方法を記載している多くの特許が存在しており、この2つの化合物の間の反応は、7を得る方法における重要な工程である。
【化2】
【0003】
生成物特許であるEP0740668B1は、第1工程として、トリフルオロ酢酸(TFA)存在下、ジクロロメタン(DCM)中、1と2との間の反応について記載している。最良の結果は、4℃、5日間の反応によって得られ、69.8%の収率で3が生成する。次に、所望の異性体(3cis)は、結晶化により42.2%の収率で単離されている。上記特許は、塩酸又はメタノール性HCl中で加熱することにより、3transから3cisへと変換するエピメリ化方法も記載している。最良の場合、塩酸中、60℃で36時間加熱することにより得られる収率は72%である。タダラフィルを得る方法を
図1に示す。
【化3】
【0004】
その後の特許EP1546149B1には、7を得るための工業的方法が記載されており、イソプロパノール(IPA)中、18時間の還流下、1HClを2と反応させて、析出により92%の収率で3cisHClが生成している。
【0005】
特許出願WO2005068464A2は、TFA/DCM中、モレキュラーシーブの存在下、1を2と30時間反応させて、99%(3cisが60.4%、3transが26.9%、及び不純物からなる混合物)の収率で3が生成する、同様の方法を特許請求している。
【0006】
特許出願WO2006110893A2は、1HClと2との間の反応を、TFA/EtOAc中、室温で7日間行うと、反応粗製物のろ過により、収率75%で3cisHClが生成する方法について記載している。
【0007】
特許文献WO2007052283A1及びUS7223863B2は、ジメチルアセトアミド(DMA)中、脱水剤の存在下、1HClを2と70℃で35時間反応させて、その後に、60℃で10時間、塩酸により処理して、結晶化により65%の収率で3cisが生成する方法を特許請求している。
【0008】
特許出願IN00307CH2003は、トルエン中、1と2とを還流下で24時間反応させ、次に塩酸で処理して、収率80%で3cisHClを生成する方法を開示している。
【0009】
特許出願EP2170880A2は、スルホラン中、1HClと2とを、85℃で14時間反応させて、結晶化により収率89%で3cisHClが生成する方法を特許請求している。
【0010】
特許出願WO2009047613A2は、トルエン中、PEG400の存在下、1HClと2とを110℃で反応させて、結晶化により65%の収率で3cisが生成する方法を特許請求している。
【0011】
特許出願WO2009144734A1は、TFA/DCM中、還流下、1を2と9時間反応させた後、1NのHCl中でエピメリ化(65℃で10時間)する方法を特許請求している。この合成の第2工程は、中間生成物3を単離することなく実施される。両段階の全収率は53%である。
【0012】
上記方法によれば、タダラフィル(7)の製造には、重要な問題が存在しており、その問題とは、D−トリプトファンエステル(1)(又は、その塩化水素、1HCl)とピペロナール(2)との間の反応にかなりの時間を必要とすることである。この反応は、全工程の鍵となるものであり、より安価でより効果的な工業的方法を実現するために、改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、
図2の図による、テトラヒドロ−β−カルボリンから誘導される化合物、具体的にはタダラフィル(7)、及びその合成中間生成物を製造するための、新規で工業的に有利な方法を提供する。
【化4】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の主な特徴は、ピペロナール(2)と、HX水素酸(1’HX)との塩としてのD−トリプトファンアルキルエステルとの間の反応が、他の成分(溶媒、酸、触媒、乾燥剤など)を何ら添加する必要がなく実施することができ、式3’cisHXの化合物が生成することができる点にある。前記化合物は、単にピペロナールと1’HXから良好な収率で生成し、ピペロナールの融点(35℃)より高い温度で反応が行われる。反応温度は、75〜150℃の間、好ましくは110〜130℃の間に調節することができる。この反応は、任意の比率の試薬間で反応を行うことができるが、本出願者らは、この操作を1’HX:2のモル比が1:1〜1:6、より好ましくは1:2〜1:5の間で行うのが都合がよく、より大きな比率を使用することに対する先入観なく、この系の流動性が改善されるということを発見した。当技術分野に記載されている反応時間に関して、反応時間の大幅な低減が観察されることが際立っている。
【0015】
反応はまた、低温(40〜75℃)で行われ、次に3’HX化合物のジアステレオ異性体である、3’cisHXと3’transHXの混合物によって形成される反応粗製物も生成することができる(
図3)。
【化5】
【0016】
この反応粗製物を、短時間(15〜30分)、110〜130℃に加熱すると、所期の異性体(3’cisHX)だけが生成する。本発明者らは、上記のエピメリ化方法には、最低8時間の反応時間が必要であることを強調したい。したがって、反応を110〜130℃で直接行う場合、本質的に3’cisHXが生成する。
【0017】
3’cisHX化合物の製造工程において、他のどのような成分も反応に添加しないこと、及びその後の5’cisHX化合物を製造する合成工程において、ピペロナール(2)が存在しても妨げにならないという事実により、3’cisHXを単離する必要がなく、且つ単離しなくともこの方法に影響を及ぼすことなく、この2つの工程を続けて行う(concatenating)ことができる。
【0018】
本発明は、テトラヒドロ−β−カルボリンから誘導される化合物、具体的にはタダラフィル(7)
【化6】
及び、その合成由来の中間生成物を得る方法であって、式3’cisHXの化合物
【化7】
(式中、Rは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基又はsec−ブチル基を表し、Xは、塩素又は臭素を表す)を製造する方法を含んでおり、式3’cisHXの製造は、式1’HXの水素酸HXとの塩としてのD−トリプトファンアルキルエステル
【化8】
(式中、R及びXは、3’cisHXにおけるものと同じ意味を有する)と式2のピペロナール
【化9】
とを、いかなる追加の成分も非存在下、40〜150℃の間に含まれる温度で反応させるステップを含む上記方法を提供することを目的としている。好ましくは1’HX:2のモル比は1:1〜1:6であり、より好ましくは1:2〜1:5である。
【0019】
好ましい実施形態では、Rはメチル基であり、Xは塩素であり、1’HX:2の好ましいモル比は1:1〜1:6であり、より好ましくは1:2〜1:5である。
【0020】
好ましい実施形態では、反応温度は75〜150℃の間に含まれ、より好ましくは110〜130℃の間に含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の目的は、式5’cisのテトラヒドロ−β−カルボリン
【化10】
(式中、Rは、1’HXにおけるものと同じ意味を有し、Yは、塩素又は臭素を表す)から誘導される化合物の製造であって、
以下のステップ:
(i)上記の方法により式3’cisHXの化合物を製造し、この化合物は反応媒体から単離されてもよく、単離されなくともよいステップ、及び
(ii)式3’cisHXの化合物とハロアセチルハライド(4’)
【化11】
(式中、Yは、5’cisにおけるものと同じ意味を有し、Zは、塩素又は臭素を表す)とを、塩基性剤の存在下で、有機媒体中又は有機媒体と水との混合物中で反応させるステップ、
を含む上記製造である。
【0022】
好ましい実施形態では、Y及びZはどちらも塩素である。
【0023】
別の好ましい実施形態では、本発明の本質を制限する意図はなく、Y及びZについて上記の意味に関わらず、塩基性剤は第三級アミン、或いは無機の炭酸塩又は無機の重炭酸塩である。
【0024】
別の好ましい実施形態では、本発明の本質を制限する意図はなく、第三級アミンは、ブチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジエチルプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、N−エチルピロリジン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリメチルアミン及びトリプロピルアミンにあり、無機の炭酸塩は炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムであり、無機の重炭酸塩は重炭酸ナトリウム又は重炭酸カリウムである。
【0025】
別の好ましい実施形態では、Y及びZについて上記の意味に関わらず、且つ選択される第三級アミン、或いは無機の炭塩酸又は重炭酸塩に関わらず、本発明の本質を制限する意図はなく、有機媒体は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−プロパノール又はt−ブタノールなどの脂肪族アルコール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジン又はN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトンなどのケトン、ジエチルエーテル、ジエトキシメタン、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、エチル−t−ブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン又はテトラヒドロピランなどのエーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル又はギ酸エチルなどのエステル、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン又はジクロロメタンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素、トルエン、1,2−キシレン、1,3−キシレン又は1,4−キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン又は石油エーテルなどの飽和炭化水素、アセトニトリル又はプロピオニトリルなどのニトリル、及びジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0026】
好ましくは、有機媒体は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン及び酢酸エチルからなる群から選択される。
【0027】
本発明の目的はまた、テトラヒドロ−β−カルボリンから誘導される式7(タダラフィル)の化合物
【化12】
の製造であって、
以下のステップ:
(i)上記の方法による式5’cisの化合物を製造するステップ、及び
(ii)有機媒体中又は有機媒体と水との混合物中、式5’cisの化合物とメチルアミン(6)とを反応させるステップ、
を含む上記製造である。
【0028】
好ましくは、有機媒体は、本発明の本質を制限する意図はなく、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−プロパノール又はt−ブタノールなどの脂肪族アルコール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジン、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトンなどのケトン、ジエチルエーテル、ジエトキシメタン、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、エチル−t−ブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン又はテトラヒドロピランなどのエーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル又はギ酸エチルなどのエステル、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン又はジクロロメタンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素、トルエン、1,2−キシレン、1,3−キシレン又は1,4−キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン又は石油エーテルなどの飽和炭化水素、アセトニトリル又はプロピオニトリルなどのニトリル、及びジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0029】
本発明は、以下の実施例と共に以下に例示され、本発明の範囲を限定するものとして理解してはならない。
【実施例】
【0030】
(例1)メチル−(1R,3R)−1−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−9H−ピリド[3,4−b]−インドール−3−カルボキシラート(3cisHCl)由来の塩化水素の製造
【0031】
ピペロナール(2)50g(0.3mol)を、110℃に加熱した。D−トリプトファンメチルエステル塩酸塩(1HCl)21.2g(0.08mol)を加えた。懸濁液を110℃で15分(min)間、撹拌した。ペーストが形成し、これを70℃に冷却して、アセトニトリル(ACN)210mlを加えた。この液を20〜25℃で1時間撹拌した。固体をろ過し、ACN50mlで洗浄し、真空下50℃で乾燥した。これにより、29.6gの3cisHCl(92%収率)が生成する。HPLC純度:94%(3%のtrans異性体)、融点220℃、
【化13】
。
(例2)メチル−(1R,3R)−1−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−クロロアセチル−2,3,4,9−テトラヒドロ−9H−ピリド[3,4−b]インドール−3−カルボキシラート(5cis)の製造
a)D−トリプトファンメチルエステル塩酸塩(1HCl)から開始。
【0032】
ピペロナール(2)100g(0.67mol)を、120℃に加熱した。D−トリプトファンメチルエステル塩酸塩(1HCl)42.4g(0.17mol)を加えた。この懸濁液を120℃で30分間、撹拌した。この液を20〜25℃に冷却した。DCM380mlを加えた。この液を0〜5℃に冷却し、N
2雰囲気下でトリエチルアミン56.8ml(0.4mol)を滴下して加えた(15min)。この液を0〜5℃で15分間、撹拌した。DCM38ml中のクロロアセチルクロリド16ml(0.2mol)を滴下して加えた(30min)。この溶液を、0〜5℃で30分間、撹拌した。この溶液を室温に置き、反応させた。DCM1272mlを加えた。最初に脱イオン水(794ml)、次に飽和NaHCO
3(1272ml)溶液、最後に飽和NaCl(1590ml)溶液で抽出する。有機相をNa
2SO
4で乾燥してろ過し、溶媒を低圧下で蒸発させた。室温で2時間撹拌して、IPA/水の4:1混合液(380ml)により再結晶した。得られた沈殿物をろ過してIPAで洗浄し、真空下50℃で乾燥した。これにより、55.87gの5cis(79%収率)が生成した。HPLC純度:96.5%、融点225℃、
【化14】
。
b)D−トリプトファンメチルエステル塩酸塩(1HCl)から開始。
【0033】
ピペロナール(2)59g(0.39mol)及びD−トリプトファンメチルエステル塩酸塩(1HCl)25g(0.098mol)を反応器に加えた。この混合物を85℃に加熱し、この温度で3時間撹拌した。この液を55〜60℃に冷却した。THF160ml、水40ml、及びTEA41ml(mol)を加えた。完全に溶解するまで、この溶液を55〜60℃で撹拌した。この液を0〜10℃に冷却し、THF15mlに溶解したクロロアセチルクロリド14ml(0.17mol)を滴下して加えた。この液を0〜10℃で1時間撹拌した。T
max45℃でこの混合物150mlを蒸留した。IPA240ml及び水60mlを加えた。T
max45℃でこの混合物50mlを蒸留した。この溶液を室温まで冷却し、この温度で2時間撹拌した。得られた沈殿物をろ過してIPAで洗浄し、真空下50℃で乾燥した。これにより、36gの5cis(86%収率)が生成した。HPLC純度:97.4%。
c)メチル−(1R,3R)−1−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−9H−ピリド[3,4−b]−インドール−3−カルボキシラート(3cisHCl)から開始。
【0034】
3cisHCl50g(0.13mol)を、THF/水4:1の混合液250ml中で懸濁させた。この液を0〜5℃に冷却した。トリエチルアミン47ml(0.34mol)を加えた。続いて、THF30ml中に希釈したクロロアセチルクロリド(4)14.5ml(0.18mol)を、温度が10℃を超えないように滴下して加えた。この液をN
2雰囲気下、0〜10℃で2時間、撹拌した。70%の溶媒を低圧下で蒸発させた。IPA/水4:1の混合液250mlを加え、20%の溶媒を低圧下で除去した。この液を20〜25℃で1時間撹拌した。得られた沈殿物をろ過してIPAで洗浄し、真空下50℃で乾燥した。これにより、51.3gの5cis(93%収率)が生成した。HPLC純度:98.7%。
(例3)(6R,12R)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−ピラジノ−[2’,1’:6,1]ピリド[3,4−b]インドール−1,4−ジオン(7)の製造
【0035】
カルボリンクロロアセチル5cis0.5gを、THF2.5mlに溶解した。40%メチルアミン水溶液0.45gを、N
2雰囲気下、25℃で滴下して加えた。この液を55℃に加熱して1時間、撹拌した。この液を0〜5℃に冷却し、IPA/水2:1の混合液3mlを加えた。酸性pHになるまで、濃HClを加えた。THFを蒸留し、0〜5℃に冷却して、IPA1.5ml及び水0.5mlを加えた。この液を0〜5℃で2時間、撹拌した。これをろ過して得られた固体を冷IPA/水1:1の混合液で洗浄し、真空下50℃で乾燥した。これにより、0.35gの7(77%収率)が生成した。HPLC純度:99.6%、融点293℃、
【化15】
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