(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウエーハを高温状態にして検査を行う(即ち、高温検査を行う)場合、ウエーハを固定しているステージを、ステージに内蔵されたヒータで加熱する。これにより、ウエーハは予め設定された温度まで加熱される。ここで、ウエーハの上方にはプローブカードが配置されているため、ウエーハからの放射熱や、電極パッドと接するプローブ針からの伝導熱によって、プローブカードの下面は温められて、その温度が上昇する。このとき、プローブカードには厚みがあり、また金属と比べて伝熱性が低く、さらに上面の側には高温の熱源がないこと等の理由から、プローブカードの上面と下面との間で温度差(熱勾配)が生じる。そして、この上下面の温度差を原因として、プローブカードには「下側に凸となる反り変形」が生じてしまう、という課題があった。また、プローブカードを保持するカードホルダも放射熱の影響を受けて膨張し、変形を生じてしまう。
【0005】
さらに、変形の度合いは、ウエーハとプローブカード(カードホルダ)との位置関係によって変動する。例えば、ウエーハ410の外周部に位置するICチップ411を検査するときと、ウエーハ410の中心部に位置するICチップ411を検査するときとでは、プローブカード400の下面401が受ける放射熱の大きさに差異があり、反り変形の大きさが異なる。
【0006】
具体的には、
図18(a)及び(b)に示すように、ウエーハ410の外周部に位置するICチップ411を検査するときは、プローブカード400の一部はステージ420の上方から外側へ出ているため、この外側に出ている部分が受ける放射熱は小さく、プローブカード400の温度は相対的に低くなる。それゆえ、プローブカード400に生じる反り変形は小さい。反り変形が小さいと、プローブ針402の先端位置の下側への変位量は小さいため、プローブ針402が電極パッドを押圧する力(即ち、押し圧)は予め設定した値(即ち、設定値)の範囲内に収まる。このため、
図18(b)に示すように、プローブ針402との接触により電極パッドに形成される針跡は小さくて済む。
【0007】
一方、
図19(a)及び(b)に示すように、ウエーハ410の中心部に位置するICチップ411を検査するときは、プローブカード400はステージ420の上方からはみ出さないため、プローブカード400の下面401が受ける放射熱は大きく、プローブカード400の温度は相対的に大きくなる。それゆえ、プローブカード400に生じる反り変形は大きい。反り変形が大きいと、プローブ針402の先端位置の下側への変位量は大きいため、押し圧は設定値を超える。このため、
図19(b)に示すように、電極パッドに残される針跡は大きくなる。
押し圧が大きい場合は、プローブ針402の先端は電極パッドを擦りながらはみ出してパシベーション膜に至り、さらにパシベーション膜を擦って傷めてしまう可能性があった。また、プローブ針402の先端が電極パッドを突き破って、下方のデバイス構造を破壊してしまう可能性もあった。
【0008】
なお、引用文献1には、線膨張率の小さい支持板にプローブ針を固定することで針位置の変位を軽減することが記載されている。しかし、この方式でも温度が非常に高温低温の場合は、基板の熱による膨張(即ち、熱膨張)の影響を針位置は受けてしまう。また、快削セラミック製の針押さえの縦方向の線膨張も無視できない。また、引用文献2には、プローブ基板と補強板との間に伝熱部材を介在させることにより、プローブ基板から補強板への放熱性を高めることが記載されている。しかし、この方式でもプローブ基板の上下面間の温度差を小さくすることは困難であり、上下面間の温度差に起因した反り変形を軽減することは難しい。
【0009】
さらに、引用文献3には、プローブカードを保持するカードホルダが開示されている。このカードホルダには、その中心部に位置する開口部の開口端から外周端に向けて切り込み部や透孔(以下、スリット)が複数設けられている。しかし、この方式では、カードホルダが熱膨張することにより生じる横方向への応力は、横方向に沿って設けられたスリットが変形することにより吸収可能であるが、厚さ方向への応力は、例えばスリットが厚さ方向に沿って設けられているわけでないので、十分に吸収することはできないと考える。
【0010】
また、厚さ方向への応力に対応する方法として、カードホルダを従来よりも厚くする方法も考えられる。しかし、この方法では、カードホルダとウエーハとの離間距離を確保するために、カードホルダを厚くした分だけプローブ針を長くする必要があり、プローブ針の変位量のばらつきが大きくなる可能性がある。
そこで、この発明はこのような事情に鑑みてされたものであって、プローブカードやカードホルダの熱膨張に起因して生じるプローブ針の先端位置の変動を抑制できるようにしたプローブカード固定装置、プローブ検査装置、プローブ検査方法及びプローブカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るプローブカード固定装置は、プローブカードをプローバに固定するプローブカード固定装置であって、前記プローバの筐体に固定するためのコネクションリングと、前記コネクションリングとの間で前記プローブカードの外周部を挟持するためのカードホルダと、前記プローブカードの中央部と前記コネクションリングとを固定するためのロック装置と、を備えることを特徴とする。ここで、「カードホルダ」とは、例えば、プローブカードの外周部を保持する環状の支持板のことである。また、「コネクションリング」とは、例えば、プローブカードとテスターとを電気的に接続する環状の中継基板のことである。
【0012】
また、上記のプローブカード固定装置において、前記ロック装置は、前記プローブカードの前記中央部に固定される第1の部品と、前記コネクションリングに固定される第2の部品と、前記第1の部品と前記第2の部品とを連結して固定する第3の部品と、を有することを特徴としてもよい。
また、上記のプローブカード固定装置において、前記第1の部品は、前記プローブカードの前記コネクションリングと接する側の面から離間して配置された支持部材と、前記プローブカードと前記支持部材との間に介在する複数本の支柱と、を有し、前記複数本の支柱は、前記第2の部品よりも線膨張係数の小さい材料で構成されていることを特徴としてもよい。
【0013】
本発明の別の態様に係るプローブ検査装置は、上記のプローブカード固定装置と、プローブカードと、を備え、前記プローブカードに前記プローブカード固定装置が取り付けられていることを特徴とする。
本発明のさらに別の態様に係るプローブ検査方法は、カードホルダとコネクションリングとによって外周部が挟持されるプローブカードを用いてプローブ検査を行う際に予め、前記プローブカードの前記コネクションリングと接する側の面上にロック装置を配置し、該ロック装置を用いて、前記プローブカードの前記中央部と前記コネクションリングとを固定しておくことを特徴とする。
【0014】
また、上記のプローブ検査方法において、前記プローブ検査を行う際に予め、前記コネクションリングをプローバの筐体に固定しておくことを特徴としてもよい。
本発明のさらに別の態様に係るプローブカードは、一方の面側にプローブ針の先端が位置するプローブカード基板と、前記プローブカード基板の他方の面側に離間して配置された支持部材と、前記プローブカード基板と前記支持部材との間に介在する複数本の支柱と、を備え、前記複数本の支柱は、第1の支柱と、前記第1の支柱よりも前記プローブカード基板の中心部から離れて配置された第2の支柱と、を有し、前記第2の支柱の熱膨張率は、前記第1の支柱の熱膨張率よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
また、上記のプローブカードにおいて、前記複数本の支柱は、前記第1の支柱と前記第2の支柱とをそれぞれ複数本ずつ有し、前記複数本の第1の支柱は、前記プローブカード基板の中心部に円の中心がある第1の円周上で等間隔に配置されており、前記複数本の第2の支柱は、前記第1の円周と同心円で、且つ前記第1の円周よりも径が大きい第2の円周上で等間隔に配置されていることを特徴としてもよい。
【0016】
また、上記のプローブカードにおいて、前記複数本の支柱は、前記プローブカード基板の中心部上に配置された第3の支柱をさらに有し、前記第3の支柱の熱膨張率は、前記第1の支柱の熱膨張率よりも小さいことを特徴としてもよい。ここで、プローブカード基板の中心部は、電子部品を配置することが難しい、いわゆるデッドスペースである。中心部がデッドスペースである理由は、電気特性を有利にするため、電子部品をプローブ針とプローブカード基板の接続点にできる限り近づけたい場合が多く、一方、プローブ針は放射状に配置される場合が多く、さらにプローブカード基板の中心部をGNDにする場合が多く、結果的にプローブカードに中心に部品を実装する場合は極めて少なくなるためである。
また、上記のプローブカードにおいて、前記第2の支柱は前記第1の支柱よりも本数が多いことを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、プローブカードの外周部よりも内側の部位(例えば、中心部)は、プローブカード固定装置によってコネクションリングに連結されて固定される。そして、コネクションリングはプローバの筐体に固定することができる。プローバの筐体は、高温検査の熱源(例えば、ステージ内のヒータ)から離れており、熱変動は小さい。熱変動の小さい筐体をプローブカードの支持点とすることできるので、プローブカードの「下側に凸となる反り変形」や、カードホルダの変位や変形によるプローブカードの下側への移動を抑制することができる。これにより、プローブ針の先端位置の変動を抑制する(例えば、変位量を極めて小さくする)ことができる。
【0018】
本発明の一態様によれば、第1、第2の支柱の熱膨張率の差により、プローブカード基板には反り変形に対抗する力が加わる。これら2つの力が相殺し合うことにより、プローブカード基板の上下面の温度差に起因して生じる反り変形を軽減することができる。これにより、プローブ針の先端位置の変位量を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成で同一の機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
《第1実施形態》
(構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るプローブ検査装置100の要部構成例を示す断面図である。プローブ検査装置100は、例えばウエーハに形成されたICチップの電気的特性や機能を検査するための装置である。
図1に示すように、このプローブ検査装置100は、ウエーハを載置して固定するステージ1と、筐体3と、ステージ1の上方に配置されたプローブカード10と、プローブカード10を保持するカードホルダ20と、プローブカード10と図示しないテスターとを電気的に接続するコネクションリング30と、PCLS(Probe Card Lock System)50とを備える。
【0021】
ステージ1及び筐体3は、プローバの一部である。ステージ1には、例えばヒータ等の熱源が内蔵されている。ステージ1に内蔵されたヒータにより、ステージ1上に載置されているウエーハを加熱する。これにより、ウエーハを予め設定した温度まで加熱して、高温検査を行うことが可能となる。また、筐体3は、プローバの上面側の一部及び側面側を覆っており、例えば塗装された鉄板又はステンレス板など、高剛性の金属からなる。
【0022】
プローブカード10は、カード基板11を有する。カード基板11は、例えばガラスエポキシからなる。カード基板11の平面視による形状(即ち、平面形状)は、例えば円形である。カード基板11の大きさは、例えば、直径が100〜300mm、厚さが3.2〜4.8mmである。また、カード基板11の上面11aには、例えば、図示しない回路や電子部品等が取り付けられている。さらに、カード基板11には、上記の回路や電子部品等に接続された複数本のプローブ針13が取り付けられている。プローブ針13は、例えば、カード基板11の下面11b側に配置された針押え15によって固定されており、その先端13aはカード基板11の下面11b側に位置する。プローブ針13の本数や配置間隔は、検査対象(即ち、ウエーハに形成されたICチップ)の電極パッドの個数と配置間隔に対応している。また、カード基板11には、後述する複数本の支柱と連結するために、上面11aと下面11bとの間を貫通する複数のネジ穴が設けられている。
【0023】
カードホルダ20は、プローブカード10を着脱可能に保持するものである。このカードホルダ20の平面形状は、例えば環状(即ち、中心部に開口部を有する形状)である。また、カードホルダ20の開口部の縁辺には、他の部分と比べて厚みの小さい薄板部21が設けられている。この薄板部21にプローブカード10の外周部が載置される。また、薄板部21と、薄板部21の外側に位置する他の部分との間には段差23が設けられており、薄板部21は他の部分よりも一段低くなっている。この段差23は、プローブカード10の外周に沿って形成されており、薄板部21に載せられたプローブカード10の水平方向(例えば、X、Y軸方向)への移動を制限している。カードホルダ20の薄板部21の厚さは例えば2mm、他の部分の厚さは例えば5mm、段差は例えば3mm(=5mm−2mm)である。また、カードホルダ20の外周部には、図示しないが、筐体3に連結して固定されるためのクランプ機構が設けられている。
【0024】
なお、カードホルダ20はステージ1に近く、高温検査時に熱を受け易い位置に配置されている。このため、カードホルダ20は、例えばノビナイト(登録商標)など、線膨張係数が比較的小さい材料からなることが好ましい。ノビナイト(登録商標)の線膨張係数は、例えば2〜5ppm/℃である。これにより、高温検査時にカードホルダ20が熱膨張することを抑制することができる。
【0025】
コネクションリング30は、例えば、図示しないテスターのテストヘッドと、プローブカード10とを電気的に接続するものである。このコネクションリング30には、複数のポゴピン(即ち、ピンの先端がバネで伸縮する可動型ピン)31が貫通して設けられている。コネクションリング30は、プローブカード10の上面11a側に配置されている。そして、ポゴピン31の一端はプローブカード10の電極部に当接(即ち、突き当てた状態で接触)し、ポゴピン31の他端はテストヘッドの電極部に当接している。これにより、プローブカード10の外周部は、カードホルダ20の薄板部21とコネクションリング30のポゴピン31とによって上下から挟持されている。
【0026】
また、コネクションリング30の外周部には、このコネクションリング30と例えばプローバの筐体3とを連結するためのネジ穴が設けられている。この外周部のネジ穴と、筐体3のネジ穴とにネジ35を通す(即ち、螺合する)ことによって、コネクションリング30は筐体3に連結して固定されている(即ち、ネジ止めされている)。
PCLS50は、プローブカード10の上面11a側、つまり、プローブカード10のコネクションリング30と接する側の面上に配置され、プローブカード10の外周部よりも内側の部位(例えば、中心部)とコネクションリング30とを連結して固定するものである。
図1に示すように、PCLS50は、例えば、プローブカード10の中心部に固定される下側部品51と、コネクションリング30に固定される上側部品61と、上側部品61と下側部品51とを連結して固定するためのネジ71と、を有する。
【0027】
まず、下側部品51について説明する。下側部品51は、プローブカード10の上面11aから離間して配置された下側支持部52と、プローブカード10と下側支持部52との間に介在する複数本の支柱53と、下側支持部52を各支柱53の一端側に固定するためのネジ54、及び、プローブカード10を各支柱53の他端に固定するためのネジ55を有する。
【0028】
下側支持部52はプローブカード10を支持するものである。下側支持部52は、例えば、JIS規格でSUS430(β=10.4×10
−6℃、0〜100℃)、又は、SUS410(β=11.0×10
−6℃、0〜100℃)などのステンレス鋼材からなる。ここで、βは熱膨張率を意味する。また、0〜100℃とは、0〜100℃の範囲における熱膨張率の値であることを意味する。ステンレス鋼材は安価で加工し易く、しかも高い剛性を容易に得ることができるため、下側支持部52の材料として好適である。
【0029】
図2(a)及び(b)は、PCLS50の下側部品51と上側部品61の構成例を示す斜視図である。
図2(a)に示すように、下側支持部52の形状は、例えば十字(クロス)形である。また、下側支持部52の大きさは、例えば、十字形の一端から他端までの長さが100〜300mmであり、厚さが5〜20mmである。さらに、
図1に示すように、下側支持部52には、各支柱53と連結するための複数のネジ穴、及び、上側部品61と連結するための(即ち、ネジ71を通すための)ネジ穴がそれぞれ設けられている。
【0030】
各支柱53は、プローブカード10と支持部材とを連結するものである。各支柱53の長さは例えば10〜20mmである。各支柱53の長さは、プローブカード10と下側支持部52との離間距離に相当する。また、
図1に示すように、各支柱53は、その長さ方向(例えば、Z軸方向)に貫通したネジ穴が設けられている。下側支持部52に設けられているネジ穴と、支柱53のネジ穴とにネジ54を通すことによって、各支柱53は下側支持部52に連結して固定されている。
【0031】
また、プローブカード10に形成されているネジ穴と、支柱53に形成されているネジ穴とにネジ55を通すことによって、各支柱53はプローブカード10に連結して固定されている。
各支柱53は、PCLS50を構成する各部品の中で、プローブカード10に最も近く、高温検査時に熱を最も受け易い位置に配置される。このため、各支柱53は例えばスーパーインバー合金(β=±0.1×10−6/℃、0〜100℃)など、熱膨張率の極めて小さい材料からなることが好ましい。また、各支柱53のネジ穴に通すネジ54、55(特に、ネジ55)も、例えばスーパーインバー合金など、熱膨張率の極めて小さい材料からなることが好ましい。但し、本第1実施形態において、支柱53やネジ54、55を構成する材料はスーパーインバー合金に限定されるものではない。なお、各支柱53のネジ穴内において、対向するネジ54とネジ55との間には、ネジ54、55が熱膨張した場合でもこれらが互いを押圧しないように、スペースが確保されていることが好ましい。
【0032】
次に、上側部品61について説明する。上側部品61は、上側支持部62と、上側支持部62をコネクションリング30に連結する連結部63と、上側支持部62を連結部63に固定するためのネジ64、及び、連結部63をコネクションリング30に固定するためのネジ65(例えば、
図2(b)参照)を有する。
上側支持部62は、プローブカード10を支持するものである。上側支持部62は、例えば、JIS規格でSUS430又はSUS410などのステンレス鋼材からなる。上述したようにステンレス鋼材は安価で加工し易く、しかも高い剛性を容易に得ることができる。このため、ステンレス鋼材は下側支持部52だけでなく、上側支持部62の材料としても好適である。
【0033】
図2(b)に示すように、上側支持部62の形状は、例えば十字(クロス)形である。また、上側支持部62の大きさは、例えば、十字形の一端から他端までの長さが100〜300mmであり、厚さが5〜20mmである。また、
図1に示すように、上側支持部62には、連結部63と連結するための複数のネジ穴、及び、下側部品51と連結するための(即ち、ネジ71を通すための)ネジ穴がそれぞれ設けられている。
【0034】
連結部63は、PCLS50をコネクションリング30に連結して固定するものであり、例えば、JIS規格でSUS430又はSUS410などのステンレス鋼材からなる。連結部63の形状は、例えば環状である。連結部63の外周面はコネクションリング30の内周面に沿っている。連結部63がコネクションリング30に取り付けられると、コネクションリング30の内周面が連結部63を囲み、連結部63の水平方向への移動を制限する。
【0035】
また、この連結部63には、上側支持部62と連結するための複数のネジ穴、及び、コネクションリング30と連結するための複数のネジ穴がそれぞれ設けられている。上側支持部62のネジ穴と連結部63に設けられているネジ穴とにネジ64を通すことによって、上側支持部62は連結部63に連結して固定されている。さらに、
図2(b)に示すように、連結部63のネジ穴にネジ65を通すことによって、連結部63はコネクションリングに連結して固定されている。なお、ネジ64、65は、例えば、ステンレス鋼材からなる。
図3は、PCLS50の構成例を示す平面図である。
図3に示すように、上側支持部62は、例えば下側支持部52よりも平面視で大きい。上側支持部62は、下側支持部52の上面を全て覆うように下側支持部上に配置されて、ネジ71で固定される。
【0036】
(動作・作用)
図4は、高温検査時にプローブカード10に加わる力F1、F2及びF3を示す概念図である。プローブカード10を使用して高温検査を行う場合は、
図1に示したステージ上にウエーハを固定した状態で、ステージに内蔵されたヒータに通電してステージを加熱する。これにより、ウエーハはステージを介して、例えば150℃〜200℃まで温度が上昇する。そして、ウエーハの温度が安定したら、ウエーハに形成されたICチップの電極パッドにプローブカード10のプローブ針を接触させて、ICチップの電気的特性を測定する。
【0037】
この過程で、プローブカード10の下面11bには、ウエーハからの放射熱やプローブ針からの伝導熱が伝わる。これにより、プローブカード10は下面11bの側から温度が上昇し、下面11bと上面11aとの間で温度差(熱勾配)が生じる。
図4に示すように、この温度差によって、プローブカード10には「下側に凸となる反り変形」を生じさせようとする力F1が加わる。
【0038】
また、プローブカード10を保持するカードホルダ20も、ウエーハやステージから放射熱を受けて熱膨張し、下側に変位したり変形しようとする。カードホルダ20が下側に変位、変形すると、プローブカードはカードホルダに支えられているので重力により、プローブカード10には下側へ移動しようとする力F2が生じる。
ここで、プローブカード10の外周部よりも内側(例えば、中心部)は、PCLS50によってコネクションリング30に連結して固定されている。そして、コネクションリング30はプローバの筐体3に固定されている。プローバの筐体3はステージ等の熱源から離れており、熱変動が小さい。このため、プローバの筐体3を支持点として、PCLS50はプローブカード10に上記の力F1、F2と向きが反対の力F3を加えることができる。この力F3が力F1、F2を相殺し、力F1、F2を小さくする。
【0039】
また、高温検査では、ウエーハに対してプローブカード10を相対的に移動させるため、プローブカード10やカードホルダ20が受ける放射熱量は変動し、力F1、F2も変動する。例えば、
図18に示したように、ウエーハの中心部から外周部へプローブ針が移動する場合は、クリーニングエリアへ移動する場合は、プローブカード10の少なくとも一部がステージ1の上方から離れる。プローブカード10がステージ1の上方から離れると、プローブカード10の下面11bが受ける放射熱量は小さくなるため、上下面の温度差が小さくなる。これにより、「下側に凸となる反り変形」を生じさせようとする力F1は、プローブカード内での分布や大きさが変化する。このとき、PCLS50からプローブカード10に伝わる力F3も、例えば各支柱53で力の作用・反作用の法則にしたがい変化する。このため、ウエーハの外周部に位置するICチップを検査する場合も、力F3は力F1、F2を相殺し、力F1、F2を小さくする。
【0040】
この第1実施形態では、下側部品51が本発明の「第1の部品」に対応し、上側部品61が本発明の「第2の部品」に対応し、ネジ71が本発明の「第3の部品」に対応している。また、下側支持部52が本発明の「支持部材」に対応している。さらに、PCLS50が本発明の「ロック装置」に対応している。また、コネクションリング30とカードホルダ20及びPCLS50の組み合わせが、本発明の「プローブカード固定装置」に対応している。
【0041】
(第1実施形態の効果)
本発明の第1実施形態は、以下の効果を奏する。
(1)プローブカード01の中心部は、PCLS50によってコネクションリング30に連結されて固定されている。そして、コネクションリング30はプローバの筐体3に固定されている。プローバの筐体3は、高温検査の熱源から離れており、熱変動は小さい。熱変動の小さい筐体3をプローブカード10の支持点とすることできるので、プローブカード10の熱膨張による「下側に凸となる反り変形」や、カードホルダ20の変位や変形によるプローブカード10の下側への移動を抑制することができる。これにより、プローブ針13について、ICチップの電極パッド等と接触していない非接触状態での先端13aの位置(即ち、先端位置)の変動を抑制することができ、非接触状態での先端位置の変位量を極めて小さくすることができる。
【0042】
(2)PCLS50は、プローブカード10の中心部に固定される下側部品51と、コネクションリング30に固定される上側部品61と、下側部品51と上側部品61とを連結して固定するネジ71と、を有する。これにより、プローブカード10及びコネクションリング30に対する、PCLS50の着脱が容易となっている。
例えば
図5に示すように、プローブカード10及びコネクションリング30にPCLS50を取り付ける場合は、プローブ検査を行う前であって、プローブカード10をプローバにロードする前に予め、プローブカード10に下側部品51を取り付けておく。また、コネクションリング30をプローバにロードする前に、コネクションリング30に上側部品61を予め取り付けておく。そして、プローブカード10及びコネクションリング30をプローバにロードした後で、ネジ71を用いて下側部品51と上側部品61を連結して固定する。
【0043】
また、PCLS50を取り外す場合は、プローブカード10及びコネクションリング30をプローバからアンロードする前に、ネジ71をネジ穴から取り外して、下側部品51と上側部品61の連結状態を解く。次に、プローブカード10及びコネクションリング30をプローバからアンロードする。その後、プローブカード10から下側部品51を取り外す。また、コネクションリング30から上側部品61を取り外す。
このように、PCLS50を下側部品51と上側部品61及びネジ71で構成することにより、プローブカード10及びコネクションリング30に対して、PCLS50を容易に着脱することが可能である。なお、コネクションリング30をプローバの筐体3に固定するタイミングは、プローブ検査を行う前であれば、任意のタイミングでよい。
【0044】
(3)PCLS50を構成する各部品のうちで、プローブカード10に最も近く、高温検査時に熱を最も受け易い複数本の支柱53は、その上側に位置する上側部品61よりも線膨張係数が小さい材料からなる。例えば、各支柱53は、線膨張係数が極めて小さいスーパーインバー合金からなる。これにより、高温検査を行う際に、各支柱53が熱膨張してプローブカード10を下側に押すことを防ぐことができる。各支柱53の熱膨張が原因でプローブカード10に「下側に凸となる反り変形」が生じることを防ぐことができる。
【0045】
(検証及びその結果)
本発明者は、PCLSによるプローブ針の先端位置の変動抑制効果について検証を行った。この検証の結果について説明する。
図6は、本発明者が行ったPCLSの効果を検証した結果を示すグラフ図である。
図6の横軸は時間を示す。また、縦軸は、プローブ針の先端位置の変位量[μm]を示す。縦軸のプラス(+)はZ軸方向の+側(即ち、上側)への変位量を示し、マイナス(−)はZ軸方向の−側(即ち、下側)への変位量を示す。この検証では、
図1に示したプローブ検査装置100において、プローバのステージ1上にウエーハを載置し、この状態でステージ1を150℃まで加熱して、高温検査を行う。そして、プローブ針13の非接触状態での先端位置を5分ごとに測定し、高温検査を行う前の先端位置(初期値:0)に対するZ軸方向の変位量を記録した。この測定と記録は、4枚のウエーハを連続して高温検査して行った。
図6に示すように、4枚のウエーハの各々において、プローブ針13の先端位置の変動は±5μmに収まることを確認した。
【0046】
なお、1枚目における変位量の平均値は、2枚目以降における変位量の平均値よりも低かった。この理由について、本発明者は、1枚目は高温検査を開始した直後であり、プローブカード10やカードホルダ20、コネクションリング30、PCLS50など、プローブ検査装置100を構成する各機器の温度が安定していなかったことが関係していると考えている。
【0047】
(変形例)
上記の第1実施形態では、下側支持部52及び上側支持部62のそれぞれの平面形状が十字(クロス)形である場合について説明した。しかしながら、第1実施形態において、下側支持部52及び上側支持部62の形状はこれに限定されるものではない。例えば、
図7に示すように、下側支持部52が十字形で、上側支持部62が一方向に長く延びる矩形であってもよい。また、
図8に示すように、下側支持部52が十字形で、上側支持部62が円形であってもよい。このような場合であっても、上記の第1実施形態の効果(1)〜(3)と同様の効果を奏する。
【0048】
《第2実施形態》
(構成)
図9は、本発明の第2実施形態に係るプローブカード200の構成例を示す図であり、
図9(a)は平面図、
図9(b)は側面図、
図9(c)はX−X´断面図である。
図9(a)〜(c)に示すように、このプローブカード200は、プローブカード基板110と、プローブカード基板110の上面111側に離間して配置された支持部材130と、プローブカード基板110と支持部材130との間に介在する複数本の支柱150とを備える。
プローブカード基板110は、図示しないプローバに取り付けて使用されるものであり、例えばガラスエポキシからなる。プローブカード基板110の平面視による形状(即ち、平面形状)は、例えば正円形である。プローブカード基板110の大きさは、例えば、直径が100〜300mm、厚さが3.2〜4.8mmである。
【0049】
また、このプローブカード基板110の上面111には、例えば、図示しない回路や電子部品等が取り付けられている。さらに、プローブカード基板110には、上記の回路や電子部品等に接続された複数本のプローブ針120が取り付けられている。プローブ針120は、例えば、プローブカード基板110の下面112側に配置された針押え123によって固定されており、その先端121はプローブカード基板110の下面112側に位置する。プローブ針120の本数や配置間隔は、例えば、検査対象となる製品(即ち、ウエーハに形成されたICチップ)の電極パッドの個数と配置間隔に対応している。
【0050】
また、プローブカード基板110には、複数本の支柱150の下端をそれぞれ固定するために、上面111と下面112との間を貫通する複数のネジ穴113が設けられている。
支持部材130はプローブカード基板110を支持するものであり、例えばステンレス鋼材からなる。支持部材130は、例えば、図示しないプローバに固定された状態で使用される。
図9(a)に示すように、この支持部材130の平面形状は、例えば十字(クロス)形である。支持部材130の大きさは、例えば、十字形の一端から他端までの長さが100〜300mmであり、厚さが5〜20mmである。また、この支持部材130には、複数本の支柱150の上端を固定するために、支持部材130の上面131と下面132との間を貫通する複数のネジ穴133が設けられている。
【0051】
複数本の支柱150は、プローブカード基板110と支持部材130とを連結するものであり、その長さLは例えば10〜20mmである。この長さLは、プローブカード基板110と支持部材130との離間距離に相当する。また、複数本の支柱150は、例えば、複数本の第1の支柱151と、複数本の第2の支柱152とで構成される。
複数本の第1の支柱151は、第1の円周171上で等間隔に配置されている。ここで、第1の円周171は例えば正円の円周であり、プローブカード基板110の中心部に円の中心がある仮想円周である。また、複数本の第2の支柱152は、第2の円周172上で等間隔に配置されている。ここで、第2の円周172は例えば正円の円周であり、第1の円周171と同心円で(即ち、円の中心を共有し)、且つ、第1の円周171よりも径が大きい仮想円周である。
図9は、4本の第1の支柱151が第1の円周171上で等間隔に配置され、4本の第2の支柱152が第1の円周171上で等間隔に配置され、且つ、第1の支柱151と第2の支柱152とが円の径方向(例えば、X軸方向、Y軸方向)で列をなしている場合を例示している。
【0052】
また、第1の支柱151及び第2の支柱152には、例えば、下端から上端に至る貫通したネジ穴がそれぞれ設けられている。そして、
図9(c)に示すように、例えば、第1の支柱151はプローブカード基板110の側からネジ161で固定されると共に、支持部材130の側からネジ166で固定されている。第1の支柱151の長さ方向(例えば、Z軸方向)の中間部で、ネジ161とネジ166との間にスペースが確保されている。同様に、第2の支柱152はプローブカード基板110の側からネジ162で固定されると共に、支持部材130の側からネジ167で固定されている。第2の支柱152の長さ方向の中間部で、ネジ162とネジ167との間にスペースが確保されている。
【0053】
また、本発明の第2実施形態では、第2の支柱152の熱膨張率(熱膨張係数)は、第1の支柱151の熱膨張率よりも大きい。即ち、第1の支柱151の熱膨張率をβ1とし、第2の支柱152の熱膨張率をβ2としたとき、下記の(1)式が成り立つように、第1の支柱151と第2の支柱152はそれぞれ材料が選択されている。
β2>β1…(1)
例えば、第1の支柱151の材料はJIS規格でSUS430(β=10.4×10
−6℃、0〜100℃)であり、第2の支柱152の材料はJIS規格でSUS410(β=11.0×10
−6℃、0〜100℃)である。0〜100℃とは、0〜100℃の範囲における熱膨張率の値であることを意味する。或いは、第1の支柱151は熱膨張率がごく小さいスーパーインバー合金(β=±0.1×10
−6/℃、0〜100℃)であり、第2の支柱152はJIS規格でSUS430若しくはSUS410であってもよい。本発明の第2実施形態では、(1)式を満たすことを条件に、第1の支柱151と第2の支柱152の各材料を任意に選択してよい。
【0054】
また、プローブカード基板110の熱膨張係数をβbとしたとき、β1、β2及びβbの間には、例えば、下記の(2)式が成り立つ。
βb>β2>β1…(2)
なお、本発明の第2実施形態では、第1の支柱51を固定するネジ161、166は、第1の支柱151と同じ材料からなることが好ましい。これにより、第1の支柱151とネジ161、166の熱膨張率が一致するため、第1の支柱151とネジ161、166を一体物とみなすことができ、加熱試験における第1の支柱151の膨張・収縮の体積変化量(長さLの変化量)を制御することが容易となる。また、膨張・収縮の過程で、第1の支柱151とネジ161、166との間に熱膨張率の差に起因するストレスが蓄積することを防ぐことができる。同様の理由から、第2の支柱152を固定するネジ162、167も、第2の支柱152と同じ材料からなることが好ましい。
【0055】
(動作・作用)
図10は、高温検査時にプローブカード基板110に加わる力F1、F2を示す概念図である。プローブカード200を使用して高温検査を行う場合は、
図19に示したように、ステージ上にウエーハを固定した状態で、ステージに内蔵されたヒータに通電してステージを加熱する。これにより、ウエーハはステージを介して、例えば150℃〜200℃まで温度が上昇する。また、ウエーハの上方(即ち、ステージの上方)にプローブカード200を配置し、ウエーハの温度が安定したら、ウエーハに形成されたICチップの電極パッドにプローブ針120を接触させて、ICチップの電気的特性を測定する。
【0056】
この過程で、ウエーハの上方に配置されたプローブカード基板110の下面112には、ウエーハからの放射熱やプローブ針からの伝導熱が伝わる。これにより、プローブカード基板110は下面112の側から温度が上昇し、下面112と上面111との間で温度差(熱勾配)が生じる。
図10に示すように、この温度差によって、プローブカード基板110には「下側に凸となる反り変形」を生じさせる方向の力F1が加わる。
【0057】
一方で、プローブカード基板110の上面111側に配置された複数本の支柱150にも、上記の放射熱や伝導熱がプローブカード基板110を介して伝わる。そして、このプローブカード基板110からの伝熱により、複数本の支柱150はそれぞれ温度が上昇する。ここで、(1)式に示したように、第2の支柱152の熱膨張率β2は、第1の支柱151の熱膨張率β1よりも大きい。このため、第2の支柱152は第1の支柱151よりも膨張し、第2の支柱152は第1の支柱151よりもプローブカード基板110を下方(即ち、ウエーハ側)に強く押す。その結果、
図10に示すように、プローブカード基板110には「上側に凸となる反り変形」を生じさせる方向の力F2が加わる。「上側に凸となる反り変形」を生じさせようとする力F2は、「下側に凸となる反り変形」を生じさせようとする力F1を相殺する。これにより、力F1を小さくすることができるので、プローブカード基板110の上下面の温度差に起因した「下側に凸となる反り変形」を軽減することができる。
【0058】
また、高温検査では、ウエーハに対してプローブカード200を相対的に移動させつつ、ウエーハに形成された複数のICチップの一部又は全部を検査する。この過程では、
図18に示したように、ウエーハの外周部に位置するICチップを検査する場合や、プローブカード200をステージ外のクリーニングエリアへ移動させる場合がある。この場合、プローブカード200の少なくとも一部がステージの上方から離れる。プローブカード200がステージの上方から離れると、プローブカード基板110の下面112が受ける放射熱量は小さくなるため、上下面の温度差が小さくなる。これにより、「下側に凸となる反り変形」を生じさせようとする力F1は小さくなり、プローブカード基板110の反り変形は収束に向かう。また、プローブカード基板110から各支柱150への伝熱量も小さくなるため、各支柱150は熱膨張率に応じて収縮する。これにより、「上側に凸となる反り変形」を生じさせようとする力F2も小さくなる。
この第2実施形態では、プローブカード基板110の下面112が本発明の「一方の面」に対応し、上面111が本発明の「他方の面」に対応している。
【0059】
(第2実施形態の効果)
本発明のプローブカードは、以下の効果を奏する。
(1)プローブカード200は、プローブカード基板110と支持部材130との間に、第1の支柱151と、第1の支柱151よりもプローブカード基板110の中心部から離れた位置(例えば、外周部)に配置された第2の支柱152と、を有する。ここで、第2の支柱152の熱膨張率β2は、第1の支柱151の熱膨張率β1よりも大きい。
これにより、プローブカード200を使用して高温検査を行う際に、プローブカード基板110には「下側に凸となる反り変形」を生じさせようとする力F1が加わる。また、第1の支柱151と、第2の支柱152の熱膨張率の差により、プローブカード基板110には反り変形に対抗する力が加わる。これら2つの力が相殺し合うことにより、プローブカード基板110の上下面の温度差に起因して生じる反り変形を軽減することができる。
【0060】
(2)また、第1の支柱151と第2の支柱152はそれぞれ複数本ずつ用意されており、第1の支柱151は第1の円周171上で等間隔に配置され、第2の支柱152は第2の円周172上で等間隔に配置されている。これにより、プローブカード基板110を下方に押す力(即ち、押下力)の分布を、プローブカード基板110の中心部を同心円状に囲み、且つ、該円の中心から外周に向かって大きくなるように設定することができる。このように設定された押下力は、プローブカード基板110に「上側に凸となる反り変形」を生じさせようとする力F2であり、この力F2は「下側に凸となる反り変形」を生じさせようとする力F1と正反対の方向に働く。このため、プローブカード基板110の上下面の温度差に起因して生じる反り変形を、より効果的に軽減することができる。
【0061】
(3)高温検査時に、プローブカード基板110の反り変形を軽減できるため、プローブ針120の先端位置の変位量を小さくすることができる。これにより、プローブ針120の電極パッドに対する押し圧を均一化することができる。また、プローブ針120の先端位置の変位量を小さくでき、押し圧を均一化できるため、高温検査の温度をさらに高くする(例えば、200℃を超える温度とする)ことも可能となる。
【0062】
(変形例)
(1)なお、複数本の支柱150は、例えば、複数本の第1の支柱151と、複数本の第2の支柱152とで構成される場合について説明した。しかしながら、第2実施形態において、複数本の支柱150は第1の支柱151及び第2の支柱152の2種類に限定されるものではない。例えば
図11に示すように、複数本の支柱150には、第1の支柱151及び第2の支柱152に加え、第3の支柱153が含まれていてもよい。この例では、第3の支柱153はプローブカード基板110の中心部上に配置されている。プローブカード基板110の中心部は、電子部品を配置することが難しい、いわゆるデッドスペースであるが、ここに第3の支柱153を配置する。
【0063】
また、第3の支柱153の熱膨張率は、第1の支柱151の熱膨張率よりも小さい。即ち、第3の支柱153の熱膨張率をβ3としたとき、下記の(3)式が成り立つように、第3の支柱153は材料が選択される。
β2>β1>β3…(3)
例えば、第1の支柱151の材料がJIS規格でSUS430であり、第2の支柱152の材料がJIS規格でSUS410の場合、第3の支柱153として、これらよりも熱膨張率がごく小さいスーパーインバー合金を選択することができる。
【0064】
このような構成であれば、プローブカード基板110において、電子部品の配置スペースを犠牲にすることなく、支柱150の本数を増やすことができる。また、プローブカード基板110の中心部は熱がこもり易い部位であるが、第3の支柱153が伝熱経路として機能することにより、プローブカード基板110の中心部から支持部材130側へ効率良く放熱することが可能となる。
なお、第1の支柱151及び第2の支柱152と同様、第3の支柱153を支持部材130の側から指示するネジ163と、第3の支柱153をプローブカード基板110の側から固定するネジ(図示せず)も、第3の支柱153と同じ材料からなることが好ましい。
【0065】
(2)また、第2実施形態では、
図11に示した第1の支柱151を省略してもよい。即ち、
図12(a)及び(b)に示すように、プローブカード基板110の中心部に第3の支柱153が配置され、外周部に第2の支柱152が配置され、中心部と外周部との間の中間部には支柱150が配置されていなくてもよい。
このような構成であれば、例えば、プローブカード基板110の中間部の上面111側にスペースを確保することが容易となる。そして、この確保したスペースにコイル、キャパシタ又はパッケージ化されたIC素子など、種々の電子部品155を配置することができる。これにより、プローブカード基板110における電子部品の実装密度を高めることができる。なお、
図12に示す変形例では、第3の支柱153が本発明の「第1の支柱」に対応する。
【0066】
(3)また、上記の第2実施形態では、(2)式の関係が成り立つ場合、即ち、プローブカード基板110の熱膨張率βbが第2の支柱152の熱膨張率β2よりも大きい場合について説明した。しかしながら、第2実施形態において、熱膨張率の大小関係はこれに限定されるものではない。即ち、下記の式(2)´に示すように、第2の支柱152の熱膨張率β2は、プローブカード基板110の熱膨張率βbより大きくてもよい。
β2>βb>β1…(2)´
例えば、第2の支柱152を樹脂材料で構成する、又は、第2の支柱152とネジ162、167を同一の樹脂材料で構成することにより、(2)´式を満たすことが可能である。(2)´式が成り立つときは、第1の支柱151及び第2の支柱152の熱膨張率の差はさらに大きく、第2の支柱152はプローブカード基板110の外周部をさらに下方に押すことができる。このため、プローブカード200に生じる「下側に凸となる反り変形」をさらに軽減することが可能となる。
【0067】
《第3実施形態》
上記の第2実施形態では、支持部材の平面形状が十字形である場合について説明した。しかしながら、本発明の実施形態において、支持部材の平面形状はこれに限定されるものではない。支持部材の平面形状は、例えば、四角形、六角形などの多角形、或いは、正円形でもよい。また、支持部材は、縦横の寸法に対して厚みが小さい板状のものでもよい。
図13は、本発明の第3実施形態に係るプローブカード300の構成例を示す平面図である。
図13に示すように、このプローブカード300は、プローブカード基板110と、プローブカード基板110の上面111側に離間して配置された支持板230と、プローブカード基板110と支持部材130との間に介在する複数本の支柱150とを備える。支持板230はプローブカード300を支持するものであり、例えばステンレス鋼材からなる。支持板230は、例えば、図示しないプローバに固定された状態で使用される。
【0068】
この支持板230は、
図13に示すように、この支持板230の平面形状は、例えば正円形である。
図9に示した支持部材130と同様、この支持板230にも支柱150の上端を固定するために、支持板230の上面111と下面112との間を貫通するネジ穴が複数設けられている。
このプローブカード300において、第1の支柱151及び第2の支柱152は、第2実施形態と同一の構成で同一の機能を有する。これにより、第3実施形態は、第2実施形態の効果(1)〜(3)と同様の効果を奏する。また、第3実施形態においても、第2実施形態で説明した変形例(1)〜(3)を適用してよい。
【0069】
例えば
図14に示すように、複数本の支柱150は、第1の支柱151及び第2の支柱152に加え、第3の支柱153を有していてもよい。第3の支柱153は、例えばプローブカード基板110の中心部上に配置されている。また、上記の(3)式が成り立つように、第1の支柱151と第2の支柱152及び第3の支柱153を構成する材料がそれぞれ選択されている。このような構成であれば、第2実施形態の変形例(1)と同様の効果を奏する。
【0070】
また、
図14では第1の支柱151を省略してもよい。即ち、
図15に示すように、プローブカード基板110の中心部に第3の支柱153が配置され、外周部に第2の支柱152が配置され、中心部と外周部との間の中間部には第1の支柱150が配置されていなくてもよい。このような構成であれば、第2実施形態の変形例(2)と同様の効果を奏する。
【0071】
さらに、
図16に示すように、第2の支柱152は第1の支柱151よりも本数が多くてもよい。このような構成であれば、第2の円周172上における第2の支柱152の配置間隔を第1の円周171上における第1の支柱151の配置間隔に近づけることが可能となる。これにより、第1の円周171上と比較して、第2の円周172上における押下力の分布が疎となることを防ぐことができる。第2の円周172上において、第2の支柱152による押下力の分布をより均一に近づけることができる。
この第3実施形態では、支持板230が本発明の「支持部材」に対応している。
【0072】
《第4実施形態》
図17は、本発明の第4実施形態に係る支持板330の構成例を示す平面図である。この支持板330の平面形状は例えば正円形であり、その上面111から下面112に至る貫通したネジ穴133が多数形成されている。この支持板330には、多数のネジ穴133が形成されている。具体的には、支持板330の中心部を円の中心とする複数の同心円の各円周上で、複数のネジ穴133がそれぞれ等間隔に配置されている。また、この円の中心にもネジ穴133が形成されていてもよい。なお、ここでいう円周とは、第2、第3実施形態と同様、仮想円周のことである。
【0073】
このような構成であれば、例えば、複数のネジ穴133の中から任意のネジ穴133を選択し、選択したネジ穴133にネジを通して支柱150を固定することができる。プローブカード基板110のネジ穴133の位置に応じて、支持板330のネジ穴133を選択し、そこに支柱150を固定することができるため、支持板330の汎用性を高めることができる。
本発明は、以上に記載した各実施形態に限定されうるものではない。当業者の知識に基づいて各実施形態に設計の変更等を加えることが可能であり、そのような変形が加えられた態様も本発明の範囲に含まれる。