(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持するベース部と、このベース部に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記ベース部に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通してパンチ台側に突出するように打ち込み動作させることによって、前記用紙に打ち抜き孔及びカット孔を形成し、前記打ち抜き孔からパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃に係わり合わせた状態でその切込刃と前記抜き刃とをベース部側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにした綴じ機であって、
切込刃が、前記切起片を係わり合わせるための窓を有し第一のスリットを形成するための第一のブレードと、前記第一のスリットの途中から打ち抜き孔方向に伸びる第二のスリットを形成するための第二のブレードとを備えたものであり、
切起片の幅広部から基端に至る縁を前記第二のスリットに係わり合わせ得るように構成されていることを特徴とする綴じ機。
前記幅広部が、前記第二のスリットの先端よりも打ち抜き孔から離れる側に位置するように、前記抜き刃の形状及び寸法、前記切込刃の形状及び寸法、並びに前記抜き刃と切込刃の相対位置を設定しているものであり、
前記幅広部の外端が、前記第二のスリットよりも外側に位置するように、前記抜き刃の形状及び寸法、前記切込刃の形状及び寸法、並びに前記抜き刃と切込刃の相対位置を設定している請求項1記載の綴じ機。
前記幅広部の外端が、前記第二のスリットよりも外側に位置するように、前記抜き刃の形状及び寸法、前記切込刃の形状及び寸法、並びに前記抜き刃と切込刃の相対位置を設定している請求項1記載の綴じ機。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について
図1ないし
図31面を参照しながら説明する。
【0019】
この綴じ機1は、
図1ないし
図17に示すように、複数枚の用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともに、その打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5を前記カット孔P2に挿通させることにより、それら複数枚の用紙Pを相互に綴じて冊子Bを作ることができるようにしたものである。
【0020】
<冊子>
この冊子Bは、
図4ないし
図6に示すように、複数枚の用紙Pを束ねてなるもので、それらの用紙Pは角部P4に設定した一ヵ所の接合部分P3において相互に接合されている。この接合部分P3は、用紙Pの一面Pa側から貫入させた抜き刃32により各用紙Pに形成された打ち抜き孔P1と、この打ち抜き孔P1に隣接させて前記各用紙Pに形成された引き上げ用カット孔P2と、前記打ち抜き孔P1から用紙Pの他面Pb側に切り起こされた切起片P5とから構成されている。そして、前記切起片P5の先端P51側を、前記カット孔P2を貫通させて前記用紙Pの一面Pa側に導出させることによって、前記複数枚の用紙Pの角部P4が相互に接合されている。
【0021】
<切起片>
切起片P5は、
図4ないし
図6に示すように、先端側が膨らんだ形状、具体的には全体として矢印形状をなすもので、境界部P53を挟んで基端P52側に基端領域P54を備えるとともに、先端P51側に先端領域P55を備えている。前記基端領域P54は、ほぼ矩形状をなしており、切起片P5の基端P52から境界部P53にいたるまで同じ幅寸法に設定されている。すなわち、前記基端領域P54の左右対をなす側縁同士は、平行である。前記先端領域P55は、前記基端領域P54の境界部P53側から一体的に形成されたもので、先端P51を尖らせた多角形状としている。この先端領域P55は、切起片P5の境界部P53から先端P51にいたるまでの間に、境界部P53及び先端P51よりも大きな幅寸法W3を有する幅広部P56を備えている。換言すれば、先端領域P55は、この切起片P5の幅方向中央部分に設けた先端縁に先端角部を備えるとともに、前記幅広部P56の左右両側縁に対をなす側縁角部を備えたものである。なお、ここで言う「角部」とは、角張ったものに限られず、若干丸みを帯びたものも含む。
【0022】
<打ち抜き孔>
前記打ち抜き孔P1は、
図4ないし
図6に示すように、前記切起片P5に対応する大きさ及び形状をなしており、抜き刃32による穿孔直後は、抜き刃32の形状に対応したスリット状のものであり、切起片P5を切り起こした後は、切起片P5の形状に対応した矢印形状の空間である。詳述すれば、この打ち抜き孔P1は、前記切起片P5の先端領域P55に対応する先端領域スリットと、この先端領域スリットに連続して形成され前記切起片P5の基端領域P54に対応する対をなす基端領域スリットとを備えている。
【0023】
<カット孔>
一方、前記カット孔P2は、
図4ないし
図6に示すように、切起片P5を主として係わり合わせるための第一のスリットL1と、この第一のスリットL1の途中から打ち抜き孔P1方向に屈曲して伸びる左右方向に対をなす第二のスリットL2とからなる。第一のスリットL1は、直線状をなすメインスリットL11と、このメインスリットL11の両端から他方向、すなわち第二のスリットL2と反対の方向に屈曲して伸びるサブスリットL12とを備えている。これらメインスリットL11とサブスリットL12との境界部分から前記第二のスリットL2が伸びている。このカット孔P2は、前記第一のスリットL1と前記第二のスリットL2とが一定の角度をなしており、本実施形態では、これら第一のスリットL1のメインスリットL11と第二のスリットL2との間の角度を略90度に設定しているとともに、第一のスリットL1のサブスリットL12と第二のスリットL2との間の角度を略135度に設定している。なお、この実施形態においては、第一のスリットL1の長さを前記第二のスリットL2の長さよりも長くしており、対をなす第二のスリットL2の長さはほぼ同じに設定してある。また、これら対をなす第二のスリットL2は、前記切起片P5の基端領域P54の幅寸法と略同じかまたはそれよりも少し大きい幅寸法W2だけ離間して形成されている。
【0024】
これら、用紙Pのカット孔P2周辺には、
図5及び
図6に示すように、第一のスリットL1と第二のスリットL2とによって片持ち片P7、P8が形成されている。第一のスリットL1のメインスリットL11と第二のスリットL2によって形成される片持ち片P7は、矩形状をなしており、打ち抜き孔P1側を基端として自由端側を上下方向に変位可能にしている。また、第一のスリットL1のサブスリットL12と第二のスリットL2によって形成される片持ち片P8は、三角形状をなしており、第一のスリットL1の外端と第二のスリットL2の先端とを結ぶ部分を基端として自由端側を上下方向に変位可能にしている。
【0025】
前記切起片P5を前記カット孔P2に貫通させて前記用紙Pを綴じた状態では、
図5及び
図6に示すように、前記切起片P5の先端P51側が前記第一のスリットL1に係わり合っているとともに、前記切起片P5の幅広部P56から基端P52に至る縁が前記第二のスリットL2に係わり合っている。より具体的には、第一のスリットL1に対しては、切起片P5の先端P51が一面Pa側に位置するとともに、切起片P5の基端P52及び境界部P53が他面Pb側に位置するように係わり合っている。また、第二のスリットL2に対しては、切起片P5の幅広部P56の外端P57が一面Paに位置するとともに、切起片P5の基端P52及び境界部P53が他面Pb側に位置するように係わり合っている。換言すれば、前記切起片P5の幅広部P56から基端P52に至る縁のうち、幅広部P56の外端P57側を片持ち片P8の下面側に位置するとともに、境界部P53を片持ち片P7の上面側に位置するようにしている。
【0026】
また、前記幅広部P56が、前記第二のスリットL2の先端L21よりも打ち抜き孔P1から離れる側に位置しているとともに、その幅寸法W3が、後述する前記窓D3の内法寸法W1よりも小さくなっている。さらに、前記幅広部P56の外端P57が、前記第二のスリットL2よりも外側に位置している。
【0027】
このように用紙Pを綴じる際に使用される綴じ機1について、
図1ないし
図13を参照して説明する。
【0028】
<綴じ機>
この綴じ機1は、
図1ないし
図13に示すように、複数枚の用紙Pに切起片P5を形成しつつ打ち抜き孔P1を穿設する抜き刃32と、この抜き刃32に隣接して設けられ前記切起片P5の先端P51側を係止させるためのカット孔P2を穿設する切込刃33と、これら抜き刃32及び切込刃33を保持するベース部2と、このベース部2に用紙挿入用隙間35を介して配設されたパンチ台4とを具備してなる。そして、前記ベース部2に保持された前記抜き刃32と切込刃33とを前記用紙挿入用隙間35に挿入された用紙Pを貫通してパンチ台4側に突出するように打ち込み動作させることによって、前記用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成し、前記打ち抜き孔P1からパンチ台4側に切り起こされた切起片P5の先端P51側を前記切込刃33に係わり合わせた状態でその切込刃33と前記抜き刃32とをベース部2側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片P5を前記カット孔P2に貫通させて前記用紙Pを綴じるようにしたものである。換言すれば、この綴じ機1は、複数枚の用紙Pを接合して前記冊子Bを作るためのもので、待機位置(N)から一時的に突出側たる上方に移動することによって前記打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するための抜き刃32及び切込刃33と、前記抜き刃32及び切込刃33を前記待機位置(N)で収容するベース部2と、前記抜き刃32及び切込刃33を保持し前記ベース部2に対して突没方向たる上下方向に昇降可能なスライド部材31と、このベース部2の外面側たる上向面F14側に用紙Pを挿入するための隙間35を介して配されたパンチ台4とを備えてなる。そして、前記ベース部2には、操作レバー5が回動可能に取り付けてあるとともに、このベース部2の内部には、前記操作レバー5に接続されたリンク機構6が収容してある。
【0029】
<ベース部>
ベース部2は、
図1、
図2、
図12及び
図13に示すように、内部に前記スライド部材31及び前記リンク機構6を配する空間を備えたベースフレーム21と、このベースフレーム21の下側に外嵌されるベースカバー22とからなる。
【0030】
ベースフレーム21は、
図1、
図12及び
図13に示すように、ベース部2の上向面F14を形成する前部ハウジングFと、操作レバー5の上方に位置し操作レバー5を操作する際に手をかけるハンドル部を形成する後部ハウジングRとからなり、合成樹脂により一体に成形されている。
【0031】
前部ハウジングFは、
図12及び
図13に示すように、天壁F1と、この天壁F1の前縁から垂下する前壁F2と、前記天壁F1の左右両側縁から垂下する左右の側壁F3とからなり、内部に刃ユニット3を収容するための空間を備えている。前記天壁F1は、前記抜き刃32及び切込刃33が通過するための開口F11を有している。この天壁F1の下面側には、前記開口F11縁の近傍に設けられ後述するインナーカム34の軸341を受けるための図示しない軸受部と、この軸受部に隣接して設けられインナーカム34のアーム344を係止するための係止壁F13とを設けている。この天壁F1の上面である上向面F14と、前記パンチ台4の下向面414との間に用紙Pを挿入するための隙間35を形成している。この実施形態においては、前記天壁F1の上向面F14の前記開口F11よりも用紙挿入側に位置する部位に、前記接合部分P13を下側から挟圧するための隆起部F15を設けている。この隆起部F15は、ベースフレーム21に一体に形成されたもので、前記隙間35に挿入された用紙Pを抜き取る際に前記切起片P5を案内するための傾斜面F16を備えている。前記側壁F3には、前側に前記スライド部材31を鉛直方向に案内するためのレール溝F31が設けられているとともに、中央にドライブシャフト36を上下方向に案内するための長孔F32が設けられている。この側壁F3には、下側の支軸53を介して操作レバー5が上下方向に回動可能に取り付けられている。また、この前部ハウジングFの天壁F1の上面と後述するパンチプレート41との間に用紙Pを挿入するための用紙挿入用隙間35を形成している。
【0032】
後部ハウジングRは、
図4、
図12及び
図13に示すように、手を掛けるのに適した形状をなすもので、前記前部ハウジングFの天壁F1の後端から立ち上がる前壁R1と、この前壁R1の上端から後方に延伸する天壁R2と、この天壁R2の左右両側端から垂下する左右の側壁R3と、前記天壁R2の後端から垂下する後壁R4とからなり、内部にリンク機構6を収容するための空間を備えている。前記側壁R3には、上側の支軸27を介して第1のリンクメンバ61が回動可能に取り付けられている。
【0033】
ベースカバー22は、
図1、
図2、
図12及び
図13に示すように、前記ベースフレーム21の下側に外嵌されるもので、これらベースカバー22とベースフレーム21とは前端部及び後端部にそれぞれ設けられた係合爪23a、23bによって係り合っている。このベースカバー22は、前側にスライドカバー取付部25を備えるとともに、中央部にキャップ取付部26と、このキャップ取付部26に隣接して操作レバー5との干渉を避けるための窓24が設けられている。なお、前記スライドカバー取付部25には、前記前部ハウジングF内に溜まった紙粉を外部に取り除くために開閉可能なスライドカバー28を取り付けている。また、前記キャップ取付部26には、前記ベースカバー22をベースフレーム21に取り付けるためのキャップ29を取り付けている。すなわち、このキャップ29に貫通させたビス20をトップケース42に設けられた図示しないねじ部に螺着することによって、トップケース42とベースカバー22とをベースフレーム21に着脱可能に取り付けている。
【0034】
このようにしてなるベースフレーム21内に、抜き刃32及び切込刃33を有した刃ユニット3を収納している。
【0035】
<刃ユニット>
刃ユニット3は、
図7、
図8、
図12及び
図13に示すように、前記ベースフレーム21のレール溝F31に案内されて鉛直姿勢を維持しつつ昇降可能なスライド部材31と、このスライド部材31に取り付けられた抜き刃32と、この抜き刃32に隣接させて配された切込刃33と、前記抜き刃32の内側に配され前記抜き刃32内に収まる初期姿勢(S)から抜き刃32外に突出する回動姿勢(K)との間で、前記スライド部材31に軸341を介して回転可能に枢止されたインナーカム34と、前記初期姿勢(S)に自己復帰する方向に前記インナーカム34を回動付勢するコイルスプリングS2とを具備してなる。
【0036】
スライド部材31は、
図7、
図8、
図12及び
図13に示すように、前記ベースフレーム21のレール溝F31に上下方向にスライド可能に係合する突条311を備えたブロック状のもので、ドライブシャフト36を介して前記リンク機構6に接続されている。すなわち、このドライブシャフト36は、前記リンク機構6の第1のリンクメンバ61の先端に設けられた長孔614に係わり合わせてある。前記スライド部材31は、上方に開放された箱状のもので、前記抜き刃32及び切込刃33の下半部が収容され得るようになっている。
【0037】
<刃ユニットの切込刃>
切込刃33は、
図10に示すような下駄状をなすカット孔P2を形成するための刃先を有する刃本体331を備えている。具体的には、この刃本体331を有している切込刃33は、
図7ないし
図9及び
図11ないし
図13に示すように、1枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られたもので、前記第一のスリットL1を形成するための第一のブレードD1と、前記第一のスリットL1の途中から打ち抜き孔P1方向に伸びる第二のスリットL2を形成するための第二のブレードD2とを備えたものである。また、本実施形態においては、第一のブレードD1は、用紙Pから打ち抜かれた切起片P5を通過させ前記切起片P5を係わり合わせるための窓D3を備えている。本実施形態においては、第一のブレードD1は、直線状をなすメインスリットL11を形成するためのメインブレードD11と、このメインスリットL11の両端から他方向、すなわちこの切込刃33に対応する抜き刃32が配置されている側と反対の方向に屈曲して伸びるサブスリットL12を形成するためのサブブレードD12とを備えている。
【0038】
前記第一のブレードD1のメインブレードD11は、インナーカム34を受け入れるための窓D3を介して下ブレード部D4と刃本体331を有する上ブレード部D5とに分断されており、その下ブレード部D4と上ブレード部D5とはサブブレードD12により構造的に連結されている。この実施形態においては、サブブレードD12は、その基端縁が前記メインブレードDを介して一体に連続するもので、このサブブレードD12の基端縁における前記窓D3に対応する部分に、前記第二のブレードD2が連続形成されている。すなわち、この第二のブレードD2は、板金素材を前記折曲線部D6で折り曲げることにより、前記窓D3から一体に切り起こされたものである。
【0039】
<切込刃の窓>
前記窓D3は、
図7、
図8及び
図11に示すように、第二のスリットL2を形成するための第二のブレードD2を左右両側縁に備えた縮幅部D31と、この縮幅部D31に隣接して設けられた拡幅部D32とからなる。本実施形態では、拡幅部D32は、前記縮幅部D31を挟んで上下両側、すなわち前記切込刃33の先端側及び基端側に設けられたものであり、その側縁には第二のブレードD2を備えていない構造となっている。また、この窓D3を形成する枠の上縁には、前記切起片P5をカット孔P2に押し込むための突起D33を備えている。この突起D33は、半円形状をなし、前記窓D3の上縁から一体に形成されている。
【0040】
なお、この窓D3の寸法は、
図5及び
図11に示すように、切起片P5の寸法に対して以下のような関係を有している。すなわち、本実施形態における窓D3の縮幅部D31の外法寸法W2は、前記切起片P5の拡幅部P56の幅寸法W3よりも小さく設定されており、窓D3の拡幅部D32の内法寸法W1は、前記切起片P5の拡幅部P56の幅寸法W3よりも大きく設定されている。
【0041】
また、第二のブレードD2は、
図7、
図9及び
図11に示すように、その切り起こし加工の前に前記サブブレードD12に対して180度未満の角度G2をなすように予備切り起こし加工が施されている。これによって、前記サブブレードD12が直角よりも若干小さな角度G1で折り曲げられており、前記第二のブレードD2の前記メインブレードDに対する切り起こし角度G3は最終的に略90度になるように設定されているが、後述するような
図36に示すようなものであってもよい。
【0042】
なお、この切込刃33の刃本体331、すなわち、第一のブレードD1に形成された刃及び第二のブレードD2に形成された刃はそれぞれ、素材の厚み方向片側に刃先を有した片刃構造をなしている。
【0043】
<刃ユニットの抜き刃>
抜き刃32は、
図7ないし
図9、
図12及び
図13に示すように、先端領域P55に幅広部P56を備えた切起片P5を形成し得るものであり、中間部に設けられた軸341を介して刃ユニット3のスライド部材31に支持されている。この抜き刃32は、1枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られたもので、その先端縁及び側端縁に前記打ち抜き孔P1を打ち抜くための刃本体322、323を備えたもので、その軸341が前記刃ユニット3のスライド部材31に支持されている。すなわち、前記抜き刃32は、前記打ち抜き孔P1に対応する形状をなす先端縁に設けられた刃本体322と、前記打ち抜き孔P1の基端を成形する側端縁に設けられた刃本体323とを有するものである。
【0044】
前記刃本体322は、前記切起片P5の先端領域P55を形成するための先端領域形成部と、この先端領域形成部に連続して形成された前記切起片P5の基端領域P54を形成するための基端領域形成部E4とを備えたものである。先端領域形成部は、前記打ち抜き孔P1の先端領域スリットを形成するためのものである。換言すれば、先端領域形成部は、前記切起片P5の先端角部に対応する箇所に屈曲部分E1を備えるとともに、切起片P5の幅広部P56の側縁角部に対応する箇所に対をなす屈曲部分E6を備えたものである。各基端領域形成部E4は、それぞれ直線状をなしており、対をなす基端領域形成部E4同士の離間距離は、一定に保たれている。すなわち、これら基端領域形成部E4は、互いに平行にしてある。刃本体322の突没方向における先端には、前記打ち抜き孔P1の形状を打ち抜き形成するための平面視矢印状をなす刃先を有している。詳述すれば、この刃本体322は、前記切起片P5の基端領域P54を形成するほぼ平行な基端領域形成部E4と、この基端領域形成部E4に連続し前記切起片P5の境界部P53を形成する角部を備えた境界部形成部E3と、切起片P5の先端領域P55における幅広部P56を形成する角部を備えた屈曲部分E6及び切起片P5の先端P51を形成する角部を備えた屈曲部分E1を有する先端領域形成部とを備えている。そして、この刃本体322は、前記基端領域形成部E4、境界部形成部E3、及び先端領域形成部に、用紙Pへの貫入方向に沿って連続する刃先を有している。これらの刃先に囲まれた空間、すなわち前記抜き刃32の内部空間には、前記切起片P5を前記切込刃33に設けられた窓D3に挿入させるためのインナーカム34を設けている。
【0045】
<刃ユニットのインナーカム>
インナーカム34は、
図7、
図9、
図12及び
図13に示すように、基端に軸341を有するとともに先端に前記切起片P5を前記切込刃33に設けられた窓D3に挿入させるための押し出し部343を備えたもので、その軸341が前記抜き刃32及びスライド部材31に支持されている。前記インナーカム34の基端には、該インナーカム34を回動させるためのアーム344が突出させてある。このインナーカム34は、前記スライド部材31が上方へ移動する際に、前記アーム344の上面が前記ベースフレーム21に設けられた係止壁F13の下縁に当接するように設定してある。そして、当接後さらにスライド部材31が上方へ移動することにより、基端の軸341が前記ベースフレーム21に設けられた軸受部に支持されながら、該インナーカム34が回動姿勢(K)にまで回動するように構成されている。すなわち、用紙Pに打ち抜き孔P1が形成された後に、前記インナーカム34が切起片P5を押圧しつつ切込刃33方向に回動するように構成されている。
【0046】
以上のようにしてなる刃ユニット3は、操作レバー5を操作することで、前記ベースフレーム21に収容されたリンク機構6を介して上方に移動されるようにしている。
【0047】
<操作レバー>
操作レバー5は、
図1、
図2、
図8、
図12及び
図13に示すように、金属製のレバープレート51と、このレバープレート51の外方に装着される樹脂製のレバーカバー52とからなる。前記レバープレート51は、板金素材を折曲加工したもので、底壁511と、この底壁511の両側縁から立ち上がる側壁512とを有している。
【0048】
<リンク機構>
リンク機構6は、
図8、
図12及び
図13に示すように、先端61aが前記ドライブシャフト36を介して前記スライド部材31に接続されるとともに後端61bが前記ベースフレーム21に上側の支軸27を介して接続される第1のリンクメンバ61と、この第1のリンクメンバ61の下方に位置させて前記ベースフレーム21に保持された下側の支軸53を軸にして前記第1のリンクメンバ61を上方に押し上げるための第2及び第3のリンクメンバ62、63とを具備してなる。
【0049】
ここで、第2及び第3のリンクメンバ62、63は、トグル的な倍力作用をなすように配置されている。すなわち、前記第2のリンクメンバ62は、基端62aが前記ベースフレーム21に下側の支軸53を介して接続されたものであり、前記操作レバー5が上方に回動操作された場合に前記基端62aを中心に回転動作する。この第2のリンクメンバ62は、前記操作レバー5に一体に設けられており、下側の支軸53を操作レバー5の支軸と共通のものとしている。また、前記第3のリンクメンバ63は、前記第2のリンクメンバ62の回動端62bと前記第1のリンクメンバ61の中間61cとを連結するものである。具体的には、この第3のリンクメンバ63は、一端63aを第1結合軸66を介して前記第1のリンクメンバ61に枢着するとともに、他端63bを第2結合軸67を介して前記第2のリンクメンバ62の回動端62bに枢着したものである。したがって、第2結合軸67は、レバープレート51の底壁511にほぼ沿った操作レバー5の芯上に、直接は設けられておらず、操作レバー5の前記芯から第2のリンクメンバ62を介して離れた位置に設けられている。すなわち、第2結合軸67が操作レバー5の前記芯よりも第1のリンクメンバ61側に位置するように、前記操作レバー5と前記第3のリンクメンバ63との位置関係が設定されている。換言すれば、第2結合軸67が、前記操作レバー5の下側の支軸53とこの支軸53を中心に回動する回動端51aとを結んだ軸線と、前記第1のリンクメンバ61の上側の支軸27とこの支軸27を中心に回動する回動端たる先端61aとを結んだ軸線との間に配されるように設定されている。
【0050】
第1のリンクメンバ61は、
図4、
図8、
図12及び
図13に示すように、天壁611と、この天壁611の左右両側縁から垂下する左右の側壁612とを備えた金属製のものである。前記天壁611には、該天壁611と前記ベースフレーム21の後部ハウジングRの天壁R2との間に配されるコイルスプリングS3を配するためのスプリング保持部613が設けてあり、このコイルスプリングS3により前記第1のリンクメンバ61は下方に付勢されている。前記左右の側壁612の前端部には、前記ドライブシャフト36を案内するための長孔614を設けている。
【0051】
第2のリンクメンバ62は、
図8、
図12及び
図13に示すように、前記レバープレート51の側壁512に一体に設けられている。すなわち、この実施形態における前記第2のリンクメンバ62と前記操作レバー5のレバープレート51とは、共通の板金素材により作られた一体構造物であり、前記下側の支軸53を貫通させるための共通貫通孔621を備えている。
【0052】
第3のリンクメンバ63は、
図8、
図12及び
図13に示すように、底壁631と、この底壁631の左右両側縁から立ち上がる左右の側壁632とを備えたチャンネル状をなす金属製のものである。
【0053】
<パンチ台>
パンチ台4は、
図1ないし
図3、
図12及び
図13に示すように、前記抜き刃32及び切込刃33が挿入可能な刃貫通孔411、422と、この刃貫通孔411、422を通して前記用紙Pを視認可能な窓421とを有するものである。具体的には、このパンチ台4は、扁平箱形をなすトップケース42と、このトップケース42の下部に前記抜き刃32と協働して用紙Pに打ち抜き孔P1を穿孔するためのパンチプレート41とを備えている。前記トップケース42は、上方及び前方に開放された窓421を有している。このトップケース42は、前記抜き刃32が通過する穿孔部423と、前記切込刃33が通過する通過孔424とを備えた樹脂製のもので、前記刃貫通孔422から前記用紙Pの切り粉が落ちることを抑制する壁425が、前記穿孔部423及び通過孔424の縁から立ち上げて形成されている。
【0054】
壁425は、前記穿孔部423及び通過孔424の縁に沿って土手状をなすように連続的に形成されている。詳述すれば、この壁425は、前部に低い壁を設けるとともに後部
に高い壁426を設けて高低差のあるものとしている。そして、この高い壁426は、後述する窓カバー43を一定の位置まで開けた際に、刃貫通孔422の上方へ使用者の指が入って、前記抜き刃32及び切込刃33に不意に触ってしまうことを防止または抑制するための役割も担っている。また、トップケース42の前記壁425の後側は、前記ベースフレーム21の後部ハウジングRの外側を覆うようにして嵌め合わせられる。
【0055】
パンチプレート41は、
図7、
図12及び
図13に示すように、前記抜き刃32と協働して用紙Pに打ち抜き孔P1を穿設するための穿孔部412と、前記切込刃33が通過する通過孔413とを備えた金属製のもので、前記トップケース42の下面に重ね合わせた状態で、前記ベースフレーム21に図示しないビス及び位置決めピンを用いて取り付けられている。この実施形態においては、前記パンチプレート41の下向面414における前記刃貫通孔411よりも用紙挿入側に位置する部位に、前記接合部分P13を上側から挟圧するための隆起部415を設けている。
【0056】
窓421は、
図3、
図12及び
図13に示すように、透明な窓カバー43によって覆われている。この窓カバー43は、前記トップケース42内に溜まった紙粉を外部に取り除くために開閉可能に取り付けられている。また、この窓カバー43は、開放した際に抜き刃32及び切込刃33に使用者の手が届かなくなるように、一定の位置で止まるように設定されている。具体的には、
図2及び
図3に二点鎖線で示すように、前記パンチプレート41及びトップケース42の穿孔部412、423の上方を覆うとともに通過孔413、424の上方を露出させるような位置まで開放し得るようになっている。すなわち、この窓カバー43は、トップケース42の壁425の上方に設けられ、低い壁の上方を覆うとともに高い壁426の上方を露出させるような位置まで開放し得るようになっている。
【0057】
このような綴じ機1において、
図4、
図12及び
図13に示すように、前記前記用紙挿入用隙間35に挿入された用紙Pが当接する部位、すなわち隙間35の奥に配された係止壁I3に、前記用紙Pの角部P4を当接させることにより用紙Pの位置決めを行う位置決め部I1を形成している。前記係止壁I3は、用紙Pの一辺を挿入した際の挿入量を規定するものである。この係止壁I3は、ベース部2の後部ハウジングRの前端に設けられたパンチプレート取付座としての機能を有しており、この係止壁I3の上面に前記パンチ台4のパンチプレート41が取り付けられる。前記係止壁I3の中央部には、該係止壁I3を平面視略直角二等辺三角形状に切り欠いて形成された位置決め部I1を有している。また、前記綴じ機1の両側面には、
図1ないし
図4に示すように、位置決め部I1により位置決めした用紙Pの位置決め状態を確認するための目印I2を設けている。具体的には、前記パンチ台4のトップケース42の外面に、位置決め部I1によって正確に位置決めされた場合の用紙Pの姿勢を示唆するための目印I2が設けられている。この目印I2は、平面視において用紙Pの辺とトップケース42の外面との交点に対応する部位に設けられた縦筋状の突条である。
【0058】
なお、本実施形態における刃駆動機構7とは、
図14ないし
図17に示すように、前記ベース部2に設けられ、操作レバー5に加えられる操作力を利用して前記抜き刃32及び切込刃33の上下方向に動作させるものであり、詳述すれば、前記抜き刃32及び切込刃33を保持し前記ベース部2に対して上下方向に昇降可能なスライド部材31と、このスライド部材31を前記操作レバー5に加えられる操作力により前記抜き刃32及び切込刃33が用紙Pを貫通する穿孔位置(C)まで上方へ動作させる刃打ち込み機構8と、前記スライド部材31を前記抜き刃32及び切込刃33が用紙Pから抜き取られる前記待機位置(N)まで復帰させる刃抜き取り機構9とを主体に構成されている。
【0059】
詳述すれば、前記刃打ち込み機構8は、
図8に示すように、操作レバー5に加えられる操作力を利用して、前記抜き刃32及び前記切込刃33を保持したスライド部材31を上
方に移動させ、前記抜き刃32及び切込刃33をベースフレーム21の上向面F14側の隙間35にセットされた用紙Pに貫入させるためのもので、前記操作レバー5とスライド部材31との間に配された前記リンク機構6を主体にして構成されている。
【0060】
また、本実施形態における刃抜き取り機構9は、
図16に示すように、前記抜き刃32及び前記切込刃33を保持したスライド部材31を前記ベースフレーム21を足場にして下方に付勢する弾性体たる前記コイルスプリングS1と、前記第1のリンクメンバ61を前記ベースフレーム21を足場にして下方に付勢する弾性体たる前記コイルスプリングS3とを主体に構成されている。
【0061】
なお、この実施形態のように、スライド部材31と、操作レバー5とをリンク機構6により接続しておけば、刃抜き取り機構9の性能をさらに向上させることができる。すなわち、用紙Pの枚数が多くなり、前記コイルスプリングS1及びコイルスプリングS3の力だけでは切起片P5を用紙Pの一面Pa側に引き抜くことができない場合でも、前記操作レバー5に、下方への操作力を加えることによって、引き抜きを完了させることが可能となる。
【0062】
<作動説明>
次に、この綴じ機1の作動を説明する。
【0063】
操作レバー5を操作しない状態では、
図14に示すように、スライド部材31が下限位置に保持されており、前記インナーカム34が抜き刃32内に収容された初期姿勢(S)を保っている。この状態で、重ね合わせた複数枚の用紙Pをベースフレーム21の上向面F14とパンチプレート41の下向面414との間に形成されている隙間35の奥まで挿入する。そして、窓カバー43の上方から、刃貫通孔411、422を通して用紙Pに穿孔される打ち抜き孔P1及びカット孔P2の位置を確認する。また、綴じ機1の側面側から、目印I2を用いて、位置決め部I1により位置決めした用紙Pの位置決め状態を確認する。しかる後に、操作レバー5を上方に操作すると、この操作レバー5に加えられた力が、リンク機構6を通じてスライド部材31の上方への動きに変換して伝えられる。
【0064】
詳述すれば、操作レバー5を上方に操作すると、この操作レバー5のレバープレート51は、下側の支軸53を中心に回転動作するとともに、このレバープレート51に一体に設けられた第2のリンクメンバ62が下側の支軸53を中心に上方に回転動作する。その結果、この第2のリンクメンバ62の回動端側に設けられた第2結合軸67は、第1のリンクメンバ61の方向へ、すなわち前方上方へと移動することとなる。前記第2結合軸67を介して接続された第3のリンクメンバ63は、第2のリンクメンバ62の回転動作に伴って、起立しながら第1のリンクメンバ61を上方へ押し上げる。すなわち、前記第3のリンクメンバ63の回動端側に設けられた第1結合軸66は、前記コイルスプリングS3の付勢力に抗して第1のリンクメンバ61の中央61cを上方に押す方向へと移動する。それによって、前記第1のリンクメンバ61は、上側の支軸27を中心に回転動作するため、その前端部61aが上方に移動する。
【0065】
このようにして、前記操作レバー5を上方に操作した力が、前記第2のリンクメンバ62、第3のリンクメンバ63、及び第1のリンクメンバ61を介してドライブシャフト36に伝達される。その結果、前記スライド部材31を上方に移動させることとなる。
【0066】
スライド部材31が上方に移動を始めると、最初に前記スライド部材31の底壁と前記ベースフレーム21の前部ハウジングFの天壁F1との間に配されたコイルスプリングS1が圧縮され、このコイルスプリングS1の付勢力に抗してスライド部材31が上昇する。その後、このスライド部材31に取り付けられた抜き刃32及び切込刃33の先端が用紙Pの一面Paに当接し、この用紙Pがパンチプレート41に押し付けられる位置まで押し上げられる。そして、この位置から操作レバー5をさらに上方に操作すると、前記抜き刃32及び切込刃33の刃本体322、331によって用紙Pがパンチプレート41に押しつけられた状態のまま、
図15に示す状態を経て、前記抜き刃32及び前記切込刃33が前記用紙Pを貫通し、その用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2が穿孔される。穿孔後さらに、前記抜き刃32及び前記切込刃33が上昇すると、
図16に示すように、前記抜き刃32の内部に配されるインナーカム34のアーム344が前記係止壁F13に当接し、インナーカム34とスライド部材31との間に配されるコイルスプリングS2の付勢力に抗して、前記インナーカム34が回動姿勢(K)にまで回動する。その結果、打ち抜き孔P1から用紙Pの他面Pb側に切り起こされた切起片P5の先端P51側が、切込刃33の窓D3に挿入される。
【0067】
ついで、操作レバー5への操作を解除すると、前記コイルスプリングS2の付勢により前記インナーカム34が回動姿勢(K)から初期姿勢(S)に復帰する。そして、前記抜き刃32及び切込刃33がコイルスプリングS1及びコイルスプリングS3の付勢により没入側たる下方に移動し、
図17に示すように、用紙Pがパンチプレート41から引き離されながら抜き刃32及び切込刃33が用紙Pから抜き取られる。その際に、切込刃33の窓D3に挿入されている切起片P5がカット孔P2を通過して用紙Pの一面Pa側に抜き出され、この切込刃33により複数の用紙Pが結合される。この状態で、用紙Pを綴じ機1から抜き取れば、その途上において、前記ベースフレーム21の隆起部F15と、前記パンチプレート41の隆起部415との間に形成された狭い隙間に、前記傾斜面F16の案内作用に強制的に導かれることになり、前記用紙Pの接合部分P3が厚み方向に圧縮変形され、
図17に二点鎖線で示すように、前述した冊子Bができあがる。なお、前記コイルスプリングS1及びコイルスプリングS3の弾性力のみでは前記抜き刃32及び切込刃33を用紙Pの一面Pa側に引き抜くことができない場合には、前記操作レバー5を下方に操作してその引き抜きを助勢すればよい。
【0068】
次に、
図18ないし
図32を用いて、切起片P5とカット孔P2との係わり合わせについて詳述する。なお、以下、
図18ないし
図32は、係わり合わせについて説明するために刃駆動機構7を構成する要素のうち、用紙P及び切込刃33のみを模式的に表したものである。また、切込刃33についても説明の都合上、上述した実施形態の切込刃33とは異なり、第一のスリットL1が一直線状のもの、すなわちメインスリットL11とサブスリットL12とが一直線状をなすものを用いて説明する。
【0069】
まず、切込刃33が穿孔位置(C)にあるときには、
図18ないし
図20に示すように、打ち抜き孔P1から用紙Pの他面Pb側に切り起こされた切起片P5の先端P51側が、切込刃33の窓D3に挿入された状態となっている。詳述すれば、切込刃33が可動し得る最上端まで達した際に、インナーカム34が回動姿勢(K)となり、前記切込刃33の窓D3に切起片P5を挿入しつつ、インナーカム34自体も窓D3に挿入される。その際、切起片P5の先端領域P55は、前記窓D3の拡幅部D32を通過した後、この拡幅部D32に隣接して設けられた縮幅部D31に達する。この縮幅部D31に押し込まれた切起片P5は、先端領域P55の左右両端側が前記縮幅部D31よりも大きい幅寸法W3を有しているので、前記縮幅部D31の側縁に設けられた第二のブレードD2に沿って折り畳まれた状態となっている。
【0070】
次に、操作レバー5への操作が解除され、切込刃33が用紙Pから抜き取られ始めると、
図21ないし
図23に示すように、切起片P5の先端領域P55が切込刃33の窓D3に対して相対的に上昇し、前記縮幅部D31から開放された切起片P5は、この縮幅部D31の上方に隣接して設けられた拡幅部D32内に収容される。すなわち、前記切込刃33の第二のブレードD2が用紙P2側へと沈み込むにつれて、先端領域P55の左右両端部が前記第二のブレードD2から開放されるため、拡幅部D32側へと移動するものである。なお、拡幅部D32側へと移動された切起片P5の幅広部P56は、前記第二のスリットL2の先端L21よりも打ち抜き孔P1から離れる側に位置している。さらに、幅広部P56の幅寸法W3が、窓D3の縮幅部D31の外法寸法W2よりも大きくなるように抜き刃32の形状及び寸法、切込刃33の形状及び寸法、並びに前記抜き刃32と切込刃33の相対位置が設定されているので、前記幅広部P56の外端P57が、前記第二のスリットL2よりも外側に位置している。
【0071】
さらに、
図24ないし
図26に示すように、切起片P5の先端領域P55が切込刃33の窓D3に対して相対的に上昇し、切込刃33の拡幅部D32が用紙P側へと沈み込むにつれて、前記窓D3の上縁に設けられた突起D33は、切起片P5の先端領域P55に当接し始める。
【0072】
そして、
図27ないし
図29に示すように、切起片P5が用紙Pの他面Pb側から一面Pa側に押される。すなわち、切起片P5の先端領域P55の一部がカット孔P2に差し込まれるように力が加わることで、先端領域P55が湾曲する。その際、前記突起D33が切起片P5の先端領域P55を押さえている。
【0073】
さらに、
図30ないし
図32に示すように、第一のブレードD1で切り欠いた第一のスリットL1と第二のブレードD2で切り欠いた第二のスリットL2とによって片持ち状態となった用紙Pの片持ち片P7、P8が、片観音開きのように反り返る。そして、この片持ち片P7、P8の自由端側が上下方向に変位することによって、前記切起片P5が前記カット孔P2に貫通させられる。詳述すれば、
図30に示す状態において、前記切起片P5の先端領域P55のうち、第一のスリットL1を挟んで打ち抜き孔P1と反対側の部分を第一のスリットL1に係わり合わせるとともに、前記切起片P5の先端領域P55のうち、第二のスリットL2よりも外側の部分を第二のスリットL2に係わり合わせる。詳述すれば、切起片P5の幅広部P56から先端P51に至る縁を第一のスリットL1に係わり合わせるとともに、幅広部P56から境界部P53に至る縁を第二のスリットL2に係わり合わせている。
【0074】
なお、
図30ないし
図32に示す状態から、さらに切込刃33が没入方向、すなわち下方に移動すると、
図32において切込刃33の第一のブレードD1によって下方に引っ張られていた切起片P5の先端領域P55が元の位置に復帰しようとする。したがって、切込刃33が用紙Pから完全に離れると、前記切起片P5の先端P51側は、前記用紙Pの一面Pa側に添うこととなる。
【0075】
<第一実施形態の効果>
以上に述べたように、本実施形態に係る綴じ機1は、切込刃33が、前記切起片P5を係わり合わせるための窓D3を有し第一のスリットL1を形成するための第一のブレードD1と、前記第一のスリットL1の途中から打ち抜き孔P1方向に伸びる第二のスリットL2を形成するための第二のブレードD2とを備えたものであり、切起片P5の幅広部P56から基端P52に至る縁を前記第二のスリットL2に係わり合わせ得るようにしているので、切起片P5が第一のスリットL1と係わり合わされるのみならず、第二のスリットL2とも係わり合わされ、切起片P5とカット孔P2との接合状態をより信頼性の高いものにすることができる。
【0076】
すなわち、従来のものでは、切起片を第一のスリットのみに係わり合わせるようにしていたので、冊子になんらかの力が加わって第一のスリットが上下方向に大きく開口してしまうと、切起片とカット孔との係わり合いが解除されるという問題があった。しかしながら、本実施形態のようなものであれば、切起片P5が第二のスリットL2にも係わり合っているため、第一のスリットL1が上下方向に大きく開口してしまった場合であっても、切起片P5と第二のスリットL2との係わり合いは解除されることなく、その係合状態が保たれるものである。したがって、切起片P5とカット孔P2との接合状態を従来のものよりも良くすることができる。
【0077】
特に、プラスチック製のシート等、比較的表面の摩擦抵抗の少ない材質で作られたシートを多枚数綴じる場合であっても、切起片P5の幅広部P56から境界部P53に至る縁を前記第二のスリットL2に係わり合わせているため、片持ち片P8の下面側に切起片P5の先端領域P55の一部が潜り込んだ状態とすることができる。したがって、切起片P5と第二のスリットL2の係わり合いは解除されることなく係合状態が保たれ、切起片P5とカット孔P2との接合状態を保持することができる。
【0078】
前記幅広部P56が、前記第二のスリットL2の先端L21よりも打ち抜き孔P1から離れる側に位置するように、前記抜き刃32の形状及び寸法、前記切込刃33の形状及び寸法、並びに前記抜き刃32と切込刃33の相対位置を設定しているので、切起片P5の幅広部P56から基端P52に至る縁を前記第二のスリットL2に係わり合わせ得るようにすることができる。すなわち、幅広部P56が前記第二のスリットL2の先端L21よりも打ち抜き孔P1側にある場合には、切起片P5の幅広部P56から基端P52に至る縁が第二のスリットL2に係わり合うことなく、切起片P5とカット孔P2との接合状態が比較的容易に解除されてしまうが、幅広部P56の幅寸法W3が窓D3の縮幅部D31の外法寸法W2よりも大きく設定されていることと相俟って、切起片P5と第二のスリットL2との係合状態を保持することができる。すなわち、切起片P5が第一のスリットL1に係わり合うのみならず、この第一のスリットL1の途中から延出する第二のスリットL2にも係わり合っているため、第一のスリットL1のみのほぼ一直線状のカット孔に係わり合わせる場合よりも係わり合いやすくなっている。
【0079】
さらに、本実施形態では、前記幅広部P56が、前記第一のスリットL1とほぼ一致するように前記抜き刃32の形状及び寸法、前記切込刃33の形状及び寸法、並びに前記抜き刃32と切込刃33の相対位置を設定していたが、前記幅広部P56が、前記第一のスリットL1よりも打ち抜き孔P1側に位置するように、前記抜き刃32の形状及び寸法、前記切込刃33の形状及び寸法、並びに前記抜き刃32と切込刃33の相対位置を設定するのが好ましい。このようにすれば、第二のスリットL2と切起片P5とが係わり合う部分が増えることで、切起片P5とカット孔P2との接合状態の信頼性を高めることができる。換言すれば、片持ち片P8の一面側に位置する切起片P5の面積が比較的大きくなるため、より確実に切起片P5の幅広部P56から基端P52に至る縁を前記第二のスリットL2に係わり合わせ得るようにすることができる。
【0080】
また、前記幅広部P56の外端P57が、前記第二のスリットL2よりも外側に位置するように、換言すれば、前記幅広部P56の幅寸法W3が、前記窓D3の縮幅部D31の外法寸法W2よりも大きくなるように、前記抜き刃32の形状及び寸法、前記切込刃33の形状及び寸法、並びに前記抜き刃32と切込刃33の相対位置を設定しているので、切起片P5の幅広部P56から基端P52に至る縁を前記第二のスリットL2に係わり合わせ得るようにすることができる。すなわち、幅広部P56の外端P57を確実に一面Pa側に表出させることで、切起片P5が第二のスリットL2部分にひっかかった状態とすることができる。
【0081】
さらに、前記幅広部P56の幅寸法W3が、前記窓D3の拡幅部D32の内法寸法W1よりも小さくなるように、前記抜き刃32の形状及び寸法、前記切込刃33の形状及び寸法、並びに前記抜き刃32と切込刃33の相対位置を設定しているので、幅広部P56の左右両端が窓D3の左右両側枠に引っ掛かるおそれが抑制され、切起片P5を確実に窓D3に入れることができる。したがって、切起片P5とカット孔P2とをスムーズに係わり合わせることができる。
【0082】
前記窓D3が、前記切起片P5をカット孔P2に押し込むための突起D33を備えているので、切起片P5の先端領域P54を積極的にカット孔P2に差し込むことができる。特に、突起D33が半円形状をなしているので、先端の湾曲部分で先端領域P54を押すことができ、切起片P5を損傷させるおそれが少ない。また、突起D33が切込刃33の幅方向ほぼ中央に設けられているので、切起片P5の先端領域P54における幅方向中央部分を押すことができる。また、突起D33はメインスリットL11と同じ平面内に位置しており、その厚み寸法はメインスリットL1の厚み寸法と同じである。そのため、この突起D33によって、切起片P5の先端P51側を確実に用紙Pの一面Pa側に表出させることができる。さらに、切起片P5の先端P51側が一面Pa側に表出される勢いで、係わり合わされる前に片持ち片P8の上方、すなわち用紙Pの他面Pb側に位置していた切起片P5の先端領域P55における左右両端部分を、片持ち片P8の下方、すなわち用紙Pの一面Pa側に位置させることができる。すなわち、片持ち片P7、P8が用紙Pの厚み方向に反り上がることで、この片持ち片P7と片持ち片P8とが隣接する第二のスリットL2部分で、切起片P5をカット孔P2に係わり合わせることができる。
【0083】
また、前記切込刃33が、前記窓D3の両側縁に第二のブレードD2を形成したものであり、第二のブレードD2が、窓D3から一体に切り起こしたものであるので、第二のブレードD2の強度を保つことができるとともに、容易に成形することができる。
【0084】
また、この綴じ機1は、複数枚の用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともにその打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5を前記カット孔P2に挿通させることによりそれら複数枚の用紙Pを相互に綴じることができるようにしたものであって、一時的に上方に移動することによって前記打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するための抜き刃32及び切込刃33と、前記抜き刃32及び切込刃33を待機位置(N)で収容するベース部2と、このベース部2の上向面F14側に用紙Pを挿入するための隙間35を介して配されたパンチ台4とを備えてなり、前記パンチ台4が、前記抜き刃32及び切込刃33が挿入可能な刃貫通孔411、422と、この刃貫通孔411、422を通して前記用紙Pを視認可能な窓421とを有するので、前記窓421から刃貫通孔411、422を通して用紙Pを視認可能であるため、用紙Pのどの部分に打ち抜き孔P1が穿孔されるかを視覚的に把握することができる。そのため、刃貫通孔411、422に対する用紙Pの位置を調整するだけで、用紙Pの所望の位置に打ち抜き孔P1を穿孔することができる。本発明によれば、少なくとも打ち抜き孔P1があけられる位置を把握することができるが、本実施形態のように切込刃33の上方においても窓421を介して視認可能としているため、用紙Pの所望の位置に切込刃33を形成することもできる。
【0085】
また、この綴じ機1の使用者は用紙Pがどのように綴じられるのかを目で見ることができるため、綴じ機1の使用の際に、心地良い使用感を与えることができる。
【0086】
特に、本実施形態では、前記窓42には窓カバー43が取り付けられることによって窓42が覆われている。しかし、この窓カバー43が透明なものであるため、窓カバー43を通して刃貫通孔411、422及び用紙Pを視認することができる。
【0087】
さらに、前記用紙挿入用隙間35に挿入された用紙Pが当接する係止壁I3に、前記用紙Pの角部P4を当接させることによりその位置決めを行う位置決め部I1を形成しているので、用紙Pをこの位置決め部I1にセットするだけで、用紙Pの角部P4の適切な位置に打ち抜き孔P1及びカット孔P2を穿孔することができる。
【0088】
特に、本実施形態では、前記位置決め部I1が、前記係止壁I3を平面視略直角二等辺三角形状に切り欠いて形成されたものであるので、用紙Pの角部P4を容易にセットすることができる。さらに、このようにしてセットされた用紙Pは、目印I2を用いて、正確な位置にセットされているか否かを確認することができる。
【0089】
また、パンチ台4のトップケース42に壁425を設けているので、前記刃貫通孔411、422から前記用紙Pの切り粉が落ちることを抑制することができる。さらに、窓カバー43が開けられても、前記窓カバー43が開いて使用者の手の届き得る位置に高い壁426が立設されているため、使用者の手が直接切込刃33及び抜き刃34に触れることが防止または抑制される。
【0090】
また、冊子Bの接合部分P3が厚み方向に圧縮変形させられているので、打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5により複数枚の用紙Pを接合することになり、ステープルの役割をなす切起片P5と用紙Pとが同質の紙製のものとなるため、廃棄する際にステープルを除去する必要がなくなる。そのため、用紙Pから金属製の針等を除去する細かな作業が不要となり、多くの用紙Pを廃棄する場合であっても、多大な労力と時間を要することなく廃棄することが可能となる。
【0091】
さらに、前記切起片P5による接合部分P3が圧縮されて、前記接合部分P3が用紙Pの弾性により接合直後の形態に戻らない状態まで圧縮変形させられているため、接合部分P3がかさばるのを抑制することができる。
【0092】
また、使用者がこのような綴じ機1に設けられた操作レバー5を握る及び解除という一連の操作を行うことにより、複数枚の用紙Pの打ち抜き孔P1を形成するとともにその打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5を用いてそれら複数枚の用紙Pが相互に接合されており、その接合部分P3が圧縮変形された冊子Bを作ることができる。
【0093】
また、パンチプレート41をベースフレーム21に固定しているので、綴じ機1全体の剛性を高めることができ、安定した操作が可能になる。
【0094】
この切込刃33は、第二のブレードD2及びサブブレードD12が前記窓D3の両側辺を境界にして折り曲げて形成されているので、前記メインスリットL11の寸法と、前記用紙Pから打ち抜かれた切起片P5の巾寸法を略同じ寸法に設定することができる。したがって、カット孔P2が一直線状のものと比較してメインスリットL11を小さく設定することができる。さらに、該切起片P5をカット孔P2に通して綴じ込んだ際の切起片P5の横ずれ及びそれに伴うカット孔P2付近の用紙Pの破れ等を抑制することも可能となる。
【0095】
また、用紙Pが比較的厚みを有する場合や、用紙Pの枚数が多い場合であっても、第一のスリットL1と第二のスリットL2とにより囲まれた部分が切込刃33の引き抜き時に用紙Pの厚み方向に変形することになるので、より軽い操作力で操作レバー5を引き上げることができる。すなわち、操作レバー5へ反発力を与えるコイルスプリングをそれほど強力なものとする必要がなくなる。
【0096】
この抜き刃32は、先端側のみならず側端側にも刃本体323を有しているので、打ち抜き孔P1の形状を綺麗にすることができる。すなわち、抜き刃32の側端側の刃本体323は、用紙Pの打ち抜き方向に沿って設けられているので、このような抜き刃32によって成形された打ち抜き孔P1は、前記側端側の刃本体323を有しない抜き刃32によって成形された打ち抜き孔P1に比べて、前記打ち抜き孔P1の端部の成形をより精密に行うことができる。したがって、打ち抜き孔P1の基端から破れが生じるのを抑制または防止することができる。また、インナーカム34が切起片P5を押圧する際に、切起片P5が切込刃33の窓D3を通過できないほど長くなってしまう、という不具合の発生を効果的に抑制または防止することができ、前記切起片P5の基端P52が破断するのを抑制または防止することができる。
【0097】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について
図40ないし
図47を参照しながら説明する。なお、第一実施形態と同一またはそれに相当する部分には、同様の符号を付して説明を省略する。
【0098】
この綴じ機1は、ベース部2に用紙Pをアンビルたるパンチ台4側に寄せるための突部11を設けている。
【0099】
突部11は、用紙挿入用の隙間35の奥側領域351に配されたものである。具体的には、突部11は、リブ状をなすもので、対をなす2枚の突部11が切込刃33の両側に対をなして略平行に配されている。これらの突部11は、前記ベースフレーム21に一体に形成されている。各突部11は、前端側に案内用の傾斜部11aを備えており、後端側は係止壁I3よりも手前に位置している。これら突部11とパンチ台4との隙間352は、予定されている最大枚数の用紙Pの厚みに対応して設定されている。ベースフレーム21の上向面F14の左右方向中央部分には、パンチ台4から離れる方向に凹陥する扁平な溝12が形成されており、前記各突部11は、この溝12の両側に配されている。
【0100】
また、この綴じ機1は、アンビルたるパンチ台4に用紙Pをパンチ台4側から離すための突部13を設けている。
【0101】
突部13は、用紙挿入用の隙間35の前記奥側領域351より手前側に配されたものである。具体的には、突部13は、略半球状をなすもので、対をなす2つの突部13が抜き刃32の両側に対をなして配されている。より具体的には、突部13は、抜き刃32の先端領域形成部を挟むようにして配置されている。これらの突部13は、前記パンチ台4のパンチプレート41に一体に形成されている。これら突部13とベース部2の上向面F14との隙間353は、予定されている最大枚数の用紙Pの厚みに対応して設定されている。ベースフレーム21の上向面F14の左右方向中央部分には、パンチ台4から離れる方向に凹陥する扁平な溝12が形成されており、前記各突部13は、この溝12の両縁から左右方向に延びる用紙受け部14に対向させて設けられている。この実施形態におけるベース部2の上向面F14は、前記溝12の底面12aと、溝12の両側に位置する前記用紙受け部14とを備えている。なお、左右の用紙受け部14の側縁近傍部分には、パンチ台4から離れる方向に凹陥する凹陥部14aを備えている。
【0102】
<作動説明>
次に、この綴じ機1の作動について説明すれば、次の通りである。
【0103】
図43ないし
図46に示すものは、この第二実施形態の綴じ機1にかかる作用を説明するためのものである。
図43は、前記第一実施形態における
図14に相当するもので、用紙Pが挿入された状態を示している。この際、用紙Pは、隙間35の奥側領域351においてベース部2側の突部11によりパンチ台4に接近するように持ち上げられている。
図44は、前記第一実施形態における
図15に相当するもので、用紙Pに抜き刃32及び切込刃33が貫通しようとしているところを示している。この際、この突部11がない場合に比べて用紙Pの厚み方向に変位する量が少なくて済む。
図45は、前記第一実施形態における
図16に相当するもので、用紙Pに抜き刃32及び切込刃33が貫通した状態を示している。
図46は、前記第一実施形態における
図17に相当するもので、用紙Pから抜き刃32及び切込刃33が引き抜かれた状態を示している。この際、パンチ台4側の突部13により用紙Pがパンチ台4から引き離されるように押し下げられる。したがって、
図47に示すように、綴じ動作が終了し、用紙Pを引き抜く際、切起片P5の用紙Pから上面すなわち他面Pb側に突出している部分が、パンチプレート41の縁44に引っ掛かるのを防止又は抑制することができる。また、その際、切起片P5の先端P51がベース部2に強く接触するのを溝12の存在によって防ぐことができるので、より円滑な抜き取りが可能になる。なお、隙間35の奥側領域351においては、ベース部2側の突部11によって、用紙Pがパンチ台4側に寄せられたままであるので、綴じ動作中に用紙Pが厚み方向に暴れることを効果的に抑制することができる。
【0104】
<第二実施形態の効果>
このような構成のものであれば、前述した第一実施形態のものが奏し得る効果に加えて、次のような作用効果が得られる。
【0105】
従来、多枚数を綴じるようにしたこの種の綴じ機においては、刃たる抜き刃及び切込刃が用紙に貫通する際に、用紙をパンチ台方向に押し付けておくための紙押さえが設けられることが少なくない。しかしながら、このような紙押さえは、可動部品があるため構成が複雑になるという問題があった。これに対して、この実施形態のものは、前記用紙Pを隙間35に挿入した際に、隙間35の奥側領域351において、その用紙Pが前記突部11の存在によりパンチ台4側に寄せられる。そのため、抜き刃32及び切込刃33が用紙Pに貫通し、抜き取られるまでの綴じ動作において、用紙Pの厚み方向への暴れを抑制することができ、従来の紙押さえを設けたものに準じた効果が得られる。そのため、可動部品を用いることなく用紙Pを押さえることができ、綺麗な打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成することができる。
【0106】
なお、綴じ動作時の用紙Pの暴れを抑制するだけに着目した場合には、隙間35全体を小さくすることも考えられるが、単に全体を小さくするだけでは、綴じ動作の後、用紙Pを隙間35から抜き取る際に問題が生じる。すなわち、この種の綴じ方式においては、用紙Pから切り起こされた切起片P5がパンチ台4側に突出することになる。そのため、奥行き方向全体にわたって隙間35が小さいと、その切起片P5がパンチプレート41の縁44に引っ掛かり、綴じ機1から用紙Pを円滑に抜き取ることができないという不具合が生じやすい。
【0107】
これに対して、本実施形態の構成によれば、用紙Pを引き抜く際に、パンチ台4側に設けられた突部13によって、用紙Pがパンチ台4から引き離される。そのため、切り起こされた切起片P5がパンチプレート41の縁44に引っ掛かって、切起片P5や接合部分P3が破損したり、円滑な作業が阻害されたりする可能性を低減させることができる。
【0108】
なお、この実施形態では、ベース部2に溝12を設けているので、パンチ台4側の突部13によって用紙Pがパンチ台4から引き離された場合に、前記用紙Pの下面すなわち一面Pa側に突出している切起片P5の先端P51側が、ベース部2の上向面F14に干渉するのを防止することができ、より円滑に用紙Pを引き抜くことが可能になる。
【0109】
以上のように、この実施形態の綴じ機1によれば、隙間35全体を狭くすることなく、用紙Pの暴れを防止または抑制することができ、引き抜き時の引っかかりを防止または抑制して円滑な作業を行うことができる。なお、この第二実施形態で示した突部11、溝12、突部13、凹陥部14aその他各部の形状及び/または数については、図示例で示したものに限られず、種々変更可能である。
【0110】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0111】
<綴じ機の変形例>
綴じ機は、複数の切込刃を備えたものや、複数の抜き刃を備えたものであってもよい。例えば、複数の切起片を形成するための単一の抜き刃と、前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記複数の切起片を係止可能なカット孔を形成するための単一の切込刃とを備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものであってもよい。
【0112】
切込刃の形状、及びこの切込刃によって形成されるカット孔の形状は、上述した実施形態のものに限られない。また、抜き刃の形状、この抜き刃によって形成される打ち抜き孔の形状、及び切起片の形状も、上述した実施形態のものに限られない。これらの他の態様としては、例えば、
図33ないし
図39に示すものが考えられる。ここで、
図33ないし
図39は、カット孔の形状及び打ち抜き孔の形状を実線で示すとともに、このカット孔に係わり合った状態の切起片の形状を二点鎖線で示す。切込刃及び抜き刃については、図示しないが、図示するカット孔の形状及び抜き刃の形状に対応する形状の刃本体を有するものである。さらに、以下の実施形態に示すカット孔の形状及び打ち抜き孔の形状(並びに、それに対応する切込刃、抜き刃、及び切起片の形状)は、カット孔と打ち抜き孔とを他の実施形態のものと組み合わせて使用してもよいのはもちろんである。以下の実施形態において上記実施形態に対応する構成要素には、頭に「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」または「G」をつけた同様の符号を付して示すものとし、具体的な説明を省略する。
【0113】
<変形例(
図33)>
まず、
図33に示す実施形態について説明する。
【0114】
図33は、先端AP51に矢印形状を備えた切起片AP5と、この切起片AP5に対応する形状をなす打ち抜き孔AP1と、前記切起片AP5を係わり合わせる下駄状をなすカット孔AP2とを模式的に示した図である。
【0115】
この切起片AP5は、
図33に二点鎖線で示すように、境界部AP53を挟んで基端AP52側に基端領域AP54を備えるとともに、先端AP51側に先端領域AP55を備えている。前記基端領域AP54は、ほぼ矩形状をなしており、切起片AP5の基端AP52から境界部AP53にいたるまで同じ幅寸法に設定されている。前記先端領域AP55は、前記基端領域AP54の境界部AP53側から一体的に形成されたもので、先端AP51を尖らせた矢印形状をなしている。この先端領域AP54は、切起片AP5の境界部AP53から先端AP51にいたるまでの間に、これら境界部AP53及び先端AP51よりも大きな幅寸法W3を有する幅広部AP56を備えている。この実施形態においては、境界部AP53と幅広部AP56とが重なっており、幅広部AP56の外端AP57同士を結んだ仮想直線上に境界部AP53が存在する。そして、前記打ち抜き孔AP1は、この切起片AP5に対応する大きさ及び形状をなしている。
【0116】
一方、前記カット孔AP2は、
図33に示すように、切起片AP5の先端領域AP55を主として係わり合わせるための第一のスリットAL1と、この第一のスリットAL1の途中から打ち抜き孔AP1方向に屈曲して伸びる左右方向に対をなす第二のスリットAL2とからなる。第一のスリットAL1は、前記切起片AP5における幅広部AP56の外端AP57同士を結んだ仮想直線とほぼ平行をなしており、直線状をなすメインスリットAL11と、このメインスリットAL11の両端から該メインスリットAL11と共に一直線状をなす方向に伸びるサブスリットAL12とを備えている。これらメインスリットAL11とサブスリットAL12との境界部分から前記第二のスリットAL2が伸びている。このカット孔AP2は、前記第一のスリットAL1と前記第二のスリットAL2とが、一定の角度、すなわち略90度をなしている。なお、この実施形態においては、第一のスリットAL1の長さを前記第二のスリットAL2の長さよりも長くしており、対をなす第二のスリットAL2の長さはほぼ同じに設定してある。また、これら対をなす第二のスリットAL2は、前記切起片AP5の基端領域AP54の幅寸法と略同じかまたはそれよりも少し大きい幅寸法W2だけ離間して形成されている。
【0117】
前記切起片AP5を前記カット孔AP2に貫通させて前記用紙APを綴じた状態では、
図33に二点鎖線で示すように、前記切起片AP5の幅広部AP56から基端AP52に至る縁が、前記第二のスリットAL2に係わり合わせられている。より具体的には、切起片AP5の幅広部AP56から先端AP51に至る縁を第一のスリットAL1のサブスリットAL12に係わり合わせているとともに、幅広部AP56から境界部AP53に至る縁を第二のスリットAL2に係わり合わせている。また、前記幅広部AP56が、前記第二のスリットAL2の先端AL21よりも打ち抜き孔AP1から離れる側に位置しているとともに、その幅寸法が、前記窓AD3の内法寸法よりも小さくなっている。さらに、前記幅広部AP56の外端AP57が、前記第二のスリットAL2よりも外側に位置しているとともに、前記幅広部AP56が、前記第一のスリットAL1よりも打ち抜き孔AP1側に位置している。
【0118】
<変形例(
図34)>
次に、
図34に示す実施形態について説明する。
【0119】
図34は、先端BP51に楕円形状を備えた切起片BP5と、この切起片BP5に対応する形状をなす打ち抜き孔BP1と、前記切起片BP5を係わり合わせる下駄状をなすカット孔BP2とを模式的に示した図である。
【0120】
この切起片BP5は、
図34に二点鎖線で示すように、境界部BP53を挟んで基端BP52側に基端領域BP54を備えるとともに、先端BP51側に先端領域BP55を備えている。前記基端領域BP54は、ほぼ矩形状をなしており、切起片BP5の基端BP52から境界部BP53にいたるまで同じ幅寸法に設定されている。前記先端領域BP55は、前記基端領域BP54の境界部BP53側から一体的に形成されたもので、先端BP51に滑らかな円弧を有した楕円形状をなしている。この先端領域BP55は、切起片BP5の境界部BP53から先端BP51にいたるまでの間に、これら境界部BP53及び先端BP51よりも大きな幅寸法を有する幅広部BP56を備えている。そして、前記打ち抜き孔BP1は、この切起片BP5に対応する大きさ及び形状をなしている。なお、先端領域BP55の形状は、楕円の他、真円や、直線と曲線とを組み合わせた形状等であってもよい。
【0121】
一方、前記カット孔BP2は、
図34に示すように、
図33に示すものと同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0122】
前記切起片BP5を前記カット孔BP2に貫通させて前記用紙BPを綴じた状態では、
図34に二点鎖線で示すように、
図33に示すものと同様に、前記切起片BP5の幅広部BP56から基端BP52に至る縁が、前記第二のスリットBL2に係わり合わせられている。より具体的には、切起片BP5の幅広部BP56から境界部BP53に至る縁を第一のスリットBL1のサブスリットBL12及び第二のスリットBL2に係わり合わせている。また、前記幅広部BP56が、前記第二のスリットBL2の先端BL21よりも打ち抜き孔BP1から離れる側に位置しているとともに、その幅寸法が、前記窓BD3の内法寸法よりも小さくなっている。さらに、前記幅広部BP56の外端BP57が、前記第二のスリットBL2よりも外側に位置しているとともに、前記幅広部BP56が、前記第一のスリットBL1よりも打ち抜き孔BP1側に位置している。
【0123】
<変形例(
図35)>
次に、
図35に示す実施形態について説明する。
【0124】
図35は、先端CP51に矢印形状を備えた切起片CP5と、この切起片CP5に対応する形状をなす打ち抜き孔CP1と、前記切起片CP5を係わり合わせるカット孔CP2とを模式的に示した図である。
【0125】
この切起片CP5は、
図35に二点鎖線で示すように、境界部CP53を挟んで基端CP52側に基端領域CP54を備えるとともに、先端CP51側に先端領域CP55を備えている。前記基端領域CP54は、ほぼ矩形状をなしており、切起片CP5の基端CP52から境界部CP53にいたるまで同じ幅寸法に設定されている。前記先端領域CP55は、前記基端領域CP54の境界部CP53側から一体的に形成されたもので、先端CP51を尖らせた矢印形状をなしている。この先端領域CP55は、切起片CP5の境界部CP53から先端CP51にいたるまでの間に、これら境界部CP53及び先端CP51よりも大きな幅寸法を有する幅広部CP56を備えている。この実施形態においては、境界部CP53と幅広部CP56とが重なっており、幅広部CP56の外端CP57同士を結んだ仮想直線上に境界部CP53が存在する。そして、前記打ち抜き孔CP1は、この切起片CP5に対応する大きさ及び形状をなしている。
【0126】
一方、前記カット孔CP2は、
図35に示すように、
図33に示すものに準じたものであり、直線状をなすメインスリットCL11と、このメインスリットCL11の一端から該メインスリットCL11と共に一直線状をなす方向に伸びるサブスリットCL12とを備えている。
【0127】
前記切起片CP5を前記カット孔CP2に貫通させて前記用紙CPを綴じた状態では、
図35に二点鎖線で示すように、
図33に示すものと同様に、前記切起片CP5の幅広部CP56から基端CP52に至る縁が、前記第二のスリットCL2に係わり合わせられている。より具体的には、切起片CP5の幅広部CP56から先端CP51に至る縁を第一のスリットCL1のサブスリットCL12に係わり合わせているとともに、幅広部CP56から境界部CP53に至る縁を第二のスリットCL2に係わり合わせている。本実施形態においては、前記切起片CP5の幅広部CP56から基端CP52に至る一方の縁が、前記サブスリットCL12が形成されている側の第二のスリットCL2に係わり合わせられる。すなわち、前記切起片CP5の幅広部CP56から基端CP52に至る他方の縁は、第二のスリットCL2に係わり合わない。また、前記幅広部CP56が、前記第二のスリットCL2の先端CL21よりも打ち抜き孔CP1から離れる側に位置しているとともに、その幅寸法が、前記窓CD3の内法寸法よりも小さくなっている。さらに、前記幅広部CP56の外端CP57が、前記第二のスリットCL2よりも外側に位置しているとともに、前記幅広部CP56が、前記第一のスリットCL1よりも打ち抜き孔CP1側に位置している。
【0128】
<変形例(
図36)>
次に、
図36に示す実施形態について説明する。
【0129】
図36は、先端DP51に矢印形状を備えた切起片DP5と、この切起片DP5に対応する形状をなす打ち抜き孔DP1と、前記切起片DP5を係わり合わせる下駄状をなすカット孔DP2とを模式的に示した図である。
【0130】
この切起片DP5は、
図36に二点鎖線で示すように、上述した実施形態の
図10に示すものと同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0131】
一方、前記カット孔DP2は、
図36に示すように、切起片DP5の先端領域DP55を主として係わり合わせるための第一のスリットDL1と、この第一のスリットDL1の途中から打ち抜き孔DP1方向に屈曲して伸びる左右方向に対をなす第二のスリットDL2とからなる。第一のスリットDL1は、直線状をなすメインスリットDL11と、このメインスリットDL11の両端から該メインスリットDL11と共に一直線状をなす方向に伸びるサブスリットDL12とを備えている。これらメインスリットDL11とサブスリットDL12との境界部分から前記第二のスリットDL2が伸びている。このカット孔DP2は、前記第一のスリットDL1と前記第二のスリットDL2とがなす角度φが、90度よりも小さくなるように設定されている。すなわち、対をなす第二のスリットDL2の長さはほぼ同じに設定してあり、それぞれの第二のスリットDL2は互いに先端DL21側が相離れる方向に向いている。また、これら対をなす第二のスリットDL2の基端側は、前記切起片DP5の基端領域DP54の幅寸法と略同じかまたはそれよりも少し大きい幅寸法だけ離間している。
【0132】
前記切起片DP5を前記カット孔DP2に貫通させて前記用紙DPを綴じた状態では、
図36に二点鎖線で示すように、前記切起片DP5の幅広部DP56から基端DP51に至る縁が、前記第二のスリットDL2に係わり合わせられている。より具体的には、切起片DP5の幅広部DP56の外端DP57に対応する部分を第一のスリットDL1のサブスリットDL12に係わり合わせているとともに、幅広部DP56から境界部DP53に至る縁を第二のスリットDL2に係わり合わせている。また、前記幅広部DP56が、前記第二のスリットDL2の先端DL21よりも打ち抜き孔DP1から離れる側に位置しているとともに、その幅寸法が、前記窓DD3の内法寸法よりも小さくなっている。さらに、前記幅広部DP56の外端DP57が、前記第二のスリットDL2よりも外側に位置している。
【0133】
<変形例(
図37)>
次に、
図37に示す実施形態について説明する。
【0134】
図37は、先端EP51に楕円形状を備えた切起片EP5と、この切起片EP5に対応する形状をなす打ち抜き孔EP1と、前記切起片EP5を係わり合わせる下駄状をなすカット孔EP2とを模式的に示した図である。
【0135】
この切起片EP5は、
図37に二点鎖線で示すように、境界部EP53を挟んで基端EP52側に基端領域EP54を備えるとともに、先端EP51側に先端領域EP55を備えている。前記基端領域EP54は、ほぼ台形状をなしており、切起片EP5の基端EP52の幅寸法よりも境界部EP53の幅寸法が小さくなるように設定されている。前記先端領域EP55は、前記基端領域EP54の境界部EP53側から一体的に形成されたもので、先端EP51に滑らかな円弧を有した楕円形状をなしている。この先端領域EP55は、切起片EP5の境界部EP53から先端EP51にいたるまでの間に、これら境界部EP53及び先端EP51よりも大きな幅寸法を有する幅広部EP56を備えている。そして、前記打ち抜き孔EP1は、この切起片EP5に対応する大きさ及び形状をなしている。なお、先端領域EP55の形状は、楕円の他、真円や、直線と曲線とを組み合わせた形状等であってもよい。
【0136】
一方、前記カット孔EP2は、
図37に示すように、
図33に示すものと同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0137】
前記切起片EP5を前記カット孔EP2に貫通させて前記用紙EPを綴じた状態では、
図37に二点鎖線で示すように、
図33に示すものと同様に、前記切起片EP5の幅広部EP56から基端EP52に至る縁が、前記第二のスリットEL2に係わり合わせられている。より具体的には、切起片EP5の幅広部EP56から境界部EP53に至る縁を第一のスリットEL1のサブスリットEL12及び第二のスリットEL2に係わり合わせている。また、前記幅広部EP56が、前記第二のスリットEL2の先端EL21よりも打ち抜き孔EP1から離れる側に位置しているとともに、その幅寸法が、前記窓ED3の内法寸法よりも小さくなっている。さらに、前記幅広部EP56の外端EP57が、前記第二のスリットEL2よりも外側に位置しているとともに、前記幅広部EP56が、前記第一のスリットEL1よりも打ち抜き孔EP1側に位置している。
【0138】
<変形例(
図38、
図39)>
また、
図38及び
図39に示すようなものであってもよい。すなわち、
図38及び
図39に示す切起片FP5、GP5は、先端領域FP55、GP55に尖形状をなす幅広部FP56、GP56の外端FP57、GP57を複数備えたものであり、複数の用紙FP、GPを綴じた際に、これらの外端FP57、GP57のうち少なくとも一つが第二のスリットFL2、GL2に引っ掛かるようにしたものである。
【0139】
このように、切起片FP5、GP5が複数の幅広部FP56、GP56を備えたものである場合、少なくとも一つの幅広部FP56、GP56から境界部FP53、GP53にいたる縁を第二のスリットFL2、GL2に係わり合わせるようにしているので、カット孔FP2、GP2に切起片FP5、GP5をしっかりと係わり合わせることができる。なお、先端領域は、図示実施形態に示す形状に限られず、例えば複数の幅広部の幅寸法を相互に異ならせたものや、幅広部の外端の形状を尖形状または円弧形状にしたもの、またはそれらの形状を組み合わせたもの等種々変更可能である。
【0140】
なお、第二のブレードは、上記実施形態で説明したように窓から一体に切り起こしたものに限られず、別体を取り付けたものであってもよい。また、第二のブレードは、窓の両側に配されるものに限られず、窓の片側のみに備えるものであってもよい。
【0141】
また、窓に設けられた突起は、なくてもよい。すなわち、突起が設けられていない場合には、窓の上縁によって切起片を他面側から一面側に押し出すようにすればよい。
【0142】
さらに、
図33及び
図35に示すように、前記幅広部が、前記第一のスリットよりも打ち抜き孔側に位置する(第一の態様)ようにすることが好ましいが、
図10及び
図36に示すように、幅広部と第一のスリットとを重なる位置にして(第二の態様)もよく、
図34及び
図37に示すように、幅広部が前記第一のスリットよりも打ち抜き孔とは反対側に位置する(第三の態様)ようにしてもよい。すなわち、第一の態様では、綴じる用紙の枚数や、用紙の素材がどのようなものであっても、第二のスリットの効果が十分に発揮されるが、第二の態様や第三の態様であっても、綴じるべき用紙の枚数や用紙の素材を適切に選択すれば、切起片とカット孔との係わり合いの確実性を高めることができる。
【0143】
なお、上述した実施形態においては、切起片の幅広部から基端に至る縁のうち、幅広部から境界部に至る縁において切起片を第二のスリットに係わり合わせるようにしていたが、これに限られず、境界部から基端に至る縁において切起片を第二のスリットに係わり合わせるようにしてもよい。また、係わり合わせる箇所は、一箇所であっても複数箇所であっても構わない。
【0144】
また、本実施形態では、前記幅広部の幅寸法が、前記拡幅部の内法寸法よりも小さくなるように、前記抜き刃の形状及び寸法、前記切込刃の形状及び寸法、並びに前記抜き刃と切込刃の相対位置を設定していたが、刃駆動機構の動作スピードを遅くしたり、綴じる用紙の枚数を少なくしたりすれば、このような設定に限られずに実施することができる。
【0145】
切込刃の刃本体、すなわち、第一のブレード及び第二のブレードに形成された刃はそれぞれ、本実施形態で示したようないわゆる片刃構造であってもよいが、素材の厚み方向中央に刃先を有した両刃構造であってもよい。また、片刃構造であっても、切込刃の刃本体、すなわち第一のブレード及び第二のブレードに形成された刃をそれぞれ、素材の厚み方向外側にのみ刃先を有した外刃構造としたり、素材の厚み方向内側にのみ刃先を有した内刃構造としてもよい。前記外刃構造であれば、コ字形またはH字形に折曲げ加工した場合であっても、カット孔の切り口を途切れのない連続したものにすることができるので、切り口の見栄えをよくすることができる。しかしながら、外刃構造であると刃先の全長距離が長くなるため、前記切込刃を用紙に貫入する際に抵抗が大きくなるという問題がある。一方、切込刃を内刃構造とすれば、前記切込刃を用紙に貫入する際に抵抗が大きくなるという問題を解消することができる。しかしながら、内刃構造であるとカット孔に途切れが生じるためカット孔の切り口の見栄えが悪くなってしまうだけでなく、第一のブレードのメインブレードと第二のブレードとの間の前後離間距離に対してカット孔のメインスリットと第二のスリットとの距離が切込刃の厚み分だけ小さくなってしまうという問題も生じる。そのため、素材の厚み方向中央に刃先を有した両刃構造を採用すれば、上述したような問題を一気に解消することができるとともに、外刃構造や内刃構造のように片側のみに刃先を有するもので生じやすい刃の反りの問題を抑制することもできる。
【0146】
用紙は、シート状であれば、紙製またはプラスチック製等種々変更可能である。また、同質の材料により作られた複数枚のシート体を綴じるようにすれば、分別廃棄の際の手間をより少なくすることができる。
【0147】
また、これら切込刃および抜き刃の突没方向は、第一及び第二実施形態に示すように、切込刃及び抜き刃の突出側を上方とし没入側を下方とするものに限られず、例えば、上下を逆向きにして、切込刃及び抜き刃の突出側を下方とし、没入側を上方として使用することも可能である。さらに、本実施形態に示す綴じ機は、抜き刃及び切込刃が一時的に上方に移動することによって前記打ち抜き孔及びカット孔を形成するためのものであったが、この抜き刃及び切込刃の移動方向は、一時的に下方に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものや、左右方向、または斜め方向に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものであってもよい。例えば、前記第一及び第二実施形態のものと上下を逆にした仕様のものも考えられる。この仕様の綴じ機は、前述した実施形態における「上方」、「下方」、「上昇」、「降下」、「上面」、「下面」、「上側」、「下側」、「上ブレード部」、「下ブレード部」をそれぞれ「下方」、「上方」、「降下」、「上昇」、「下面」、「上面」、「下側」、「上側」、「下ブレード部」、「上ブレード部」と読み替えた構造をなしている。
【0148】
また、用紙に打ち抜き孔及びカット孔を設ける位置は、角部に限られず、用紙の辺に沿った位置であってもよい。さらに、打ち抜き孔及びカット孔は、冊子に対して1つに限られず、複数の打ち抜き孔及びカット孔を有するものであってもよいが、本実施形態に示すような打ち抜き孔を1つのみ設ける場合には、切起片とカット孔との接合状態が外れて切起片がカット孔から抜け出てしまうという不具合や、切起片の横ずれが発生しやすいため特に有効である。打ち抜き孔及びカット孔を複数にする場合に、例えば、2つの打ち抜き孔をファイル等の綴じ具の綴じ桿のピッチに対応させて形成すれば、前記打ち抜き孔を2つの綴じ桿を有したファイルに冊子を綴じるための綴じ孔として利用することができる。また、打ち抜き孔及びカット孔の大きさ及び形状も種々変更可能である。
【0149】
刃ユニットは、切込刃、抜き刃、及びインナーカムの3ピース構造のみならず、切込刃及び抜き刃の2ピース構造であってもよい。この際、抜き刃は、穿孔姿勢から回動姿勢までの間で回動可能に設けられ穿孔姿勢において打ち抜き孔を形成し得るものとするのが好ましい。すなわち、抜き刃が、パンチ台の下面側に配された用紙に一面側から該抜き刃を貫入させる穿孔機構と、用紙を貫通した抜き刃を回動姿勢まで回動させて打ち抜き孔から他面側へ切り起こされた切起片を保持した切込刃を切起片とともに用紙の一面側に抜き出させる刃抜き取り機構とを備えたものにすればよい。なお、3ピース構造にすれば、2ピース構造のものと比べて、切起片を押し入れる用途としてのインナーカムを用いるので、抜き刃の設計の自由度を高めることができるため、例えば、本実施形態で示したような側端縁に刃本体を有した抜き刃を用いること等が可能となる。
【0150】
位置決め部は、ベースフレーム及びその係止壁に設けられているものに限られず、その形状も種々変更可能である。例えば、位置決め部は、ベース部のベースカバー、パンチプレート、トップケース等に設けられるものであってもよい。また、係止壁を有さずに用紙の角部を合わせる得る窪み等を設けるものであってもよい。
【0151】
上述した実施形態においては、前記ベースフレームの隆起部と、前記パンチプレートの隆起部とを主体に圧縮機構を構成したものであるが、綴じるべき用紙の枚数が比較的少ない場合には、このような圧縮機構を有しないものであってもよい。すなわち、本発明は、切起片が引き上げ用カット孔を貫通してなる接合部分を厚み方向に圧縮変形させる圧縮機構を有しないものであっても、その効果を奏し得るものであるが、さらに前記圧縮機構を有していれば、冊子の接合部分がかさばるのを抑制することができる。
【0152】
刃打ち込み機構は、リンク機構を利用しないものであっても、前記ベース部に操作レバーに加えられる操作力を利用して前記抜き刃及び切込刃を上下方向に動作させるものであればどのようなものであってもよい。
【0153】
また、刃抜き取り機構は、コイルスプリングS3のみを主体に構成されるものであってもよい。すなわち、前記コイルスプリングS1を配さない場合であっても、コイルスプリングS3の下方への付勢力によって第1のリンクメンバ61が下方に回動し、この回動動作によってドライブシャフト36が下方に押し下げられ、その結果として刃ユニット3が待機位置まで退避するようにすればよい。
【0154】
インナーカムは、アームが直接係止壁に当接するものに限られず、アームの先端に設けられた軸状の突起を有するものであってもよい。この場合、前記軸状の突起が前記係止壁の下面に該インナーカムが初期姿勢から回動姿勢まで回動するようにすればよい。
【0155】
第2のリンクメンバとレバープレートは、それぞれ別体として設けられるものであってもよく、さらに、第2のリンクメンバの下側の支軸とレバープレートの支軸とは、それぞれベース部に回転可能に軸支されるものであれば、それらの支軸を共通とするものには限られない。
【0156】
窓カバーは、本実施形態においては、切込刃の上方が開放されるように設定していたが、土手状の壁が比較的低い場合には、使用者の安全確保のため、切込刃の上方も覆う位置までしか開かないように設定するのがよい。
【0157】
また、スライド部材の突没方向は、本実施形態に示す上下方向に限られず、例えば、上下を逆向きにして、抜き刃及び切込刃の突出側を下方とし、没入側を上方として使用することも可能である。
【0158】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。