(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被露光材としての基板を載置する基板ステージと、前記基板ステージの上方に配置されて略矩形状のマスクを保持するマスクステージと、パターン露光用の光を前記マスクを介して前記基板に照射する照射手段と、を備える露光装置であって、
前記マスクステージは、
マスクステージベース側部材と、
前記マスクの各辺をそれぞれ吸着保持可能な4つのマスクホルダと、
前記マスクステージベース側部材と、前記マスクの短辺側を吸着保持する少なくとも2つの前記マスクホルダとの間にそれぞれ設けられ、前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動可能に案内する複数のガイド機構と、
前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動させる駆動機構と、
前記マスクステージベース側部材と前記各ガイド機構との間、及び、前記各ガイド機構と前記短辺側のマスクホルダとの間の少なくとも一方にそれぞれ設けられ、前記マスクのあおり角を調整可能なあおり角調整機構と、
を備え、
前記あおり角調整機構は、互いに高さが異なる交換可能な一対の間座であることを特徴とする露光装置。
前記あおり角調整機構は、前記マスクステージベース側部材と前記各ガイド機構との間、及び、前記各ガイド機構と前記短辺側のマスクホルダとの間の両方にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
前記シリンダ装置は、前記マスクステージベース側部材に移動可能に取り付けられた、ショックアブソーバを備えるストッパを有し、該ストッパに前記ピストンを当接させて前記マスクホルダを所定の位置に位置決めすることを特徴とする請求項6に記載の露光装置。
前記マスクの一方の面に臨むチャンバを備え、前記チャンバ内の気圧と、前記マスクの他方の面に作用する気圧とに圧力差を与えて、前記マスクの前記あおり角を補正する負圧補正機構を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の露光装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている露光装置は、マスクホルダを交換することなく、サイズの異なる複数のマスクに対応することは可能であるが、平坦度を補正する機構を備えていないため、マスクのパターンを精度良く露光転写できず、また、サイズの異なるマスクを用いる場合にもマスクの交換によってマスクと基板間のギャップが変化し、露光精度に悪影響を及ぼす可能性がある。また、特許文献4に開示されている露光装置は、マスクにあおり角を付与することにより、マスクの平坦度の改善が図られているが、異なるサイズのマスクについての記載がなく、複数サイズのマスクに対応することができない問題点があり、改善の余地があった。
【0009】
また、一般的に、マスクパターンが形成されるマスク用ガラス基板には、複数種類のサイズのものが使用され、また、マスクパターンの大きさは、製品の大きさやパターニングによって決められ、サイズが異なる複数のパターンが存在する。このため、所望のマスクパターンをパターニングするのに最適サイズのマスク用ガラス基板が選択されて使用される。従って、パターニングによっては、パターン以外の部分、即ち、マスクの吸着代として使用可能なエリアが異なる場合がある。一方、マスクは高価なものであるため、マスクホルダに確実に吸着保持して落下などによる損傷を防止することが強く求められる。
【0010】
特許文献1に開示されている露光装置は、独立して分割形成されたホルダ部を、マスクの大きさに応じて移動させることにより、マスクホルダを交換することなく、サイズの異なる複数のマスクに対応可能としているが、ホルダ部に設けられたマスクを吸着保持するための吸着溝の大きさは一定であり、例え、マスクに大きな面積の吸着代を設定可能であっても、ホルダ部に設けられた大きさの吸着溝でしか吸着保持することができず、マスクを確実に保持してマスク落下による破損を防止する観点からは改善の余地があった。また、特許文献2に開示されている走査投影露光装置は、マスクの長辺側の2辺しか吸着保持することができず、特許文献1と同様の問題があった。
【0011】
さらに、特許文献1に開示されている露光装置は、
図35(a)に示すように、独立した4個のホルダ部Ha,Hb,Hc,Hd(内Hc,Hdは移動可能)でマスクMの4辺を吸着保持することにより、マスクホルダを交換することなく、サイズの異なる複数のマスクMに対応する。
図35(b)及び(c)に示すように、周縁部が吸着保持されたマスクMには自重による自重撓みが生じており、4辺が保持されるマスクMの場合、その撓み量はX方向、Y方向共にマスクMの中央部が最も大きく、周縁に向かうに従って次第に小さくなる複雑な形状の3次元撓みとなっている。また、大、小のサイズが異なるマスクMの撓み形状は、短辺側の両縁部を保持するホルダ部Hc,Hd間のスパンSが異なるため、X方向撓み形状がマスクMの大きさによって異なったものとなる。このマスクMの撓みは、マスクMと基板間のギャップのばらつきの要因であり、露光精度に悪影響を及ぼす虞がある。しかし、特許文献1の露光装置では、サイズの異なるマスクの交換で生じる平坦度(撓み)の変化を解消することができない問題があった。
【0012】
また、特許文献3に開示されている露光装置のマスク保持機構は、マスクの長辺側に設けたチャック部のピッチを、長辺長さの1/2に対して0.65〜0.80倍として、マスクホルダに取り付けられたマスクの固有振動数の低下を抑制するようにしたものであり、サイズの異なるマスクの自重撓みによる平坦度を、サイズに係わらず一定にすることはできず、改善の余地があった。
【0013】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、平坦度を一定に維持した状態で、サイズの異なる複数のマスクに対応することができる露光装置を提供することにある。また、第2の目的は、サイズ及び吸着可能エリアが異なる複数のマスクに対応して、マスクを確実に吸着保持して落下などによる損傷を防止することができる露光装置を提供することにある。第3の目的は、サイズの異なる複数のマスクに対応することができ、マスクの撓みを容易に補正することができる露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 被露光材としての基板を載置する基板ステージと、前記基板ステージの上方に配置されて略矩形状のマスクを保持するマスクステージと、パターン露光用の光を前記マスクを介して前記基板に照射する照射手段と、を備える露光装置であって、
前記マスクステージは、
マスクステージベース側部材と、
前記マスクの各辺をそれぞれ吸着保持可能な4つのマスクホルダと、
前記マスクステージベース側部材と、前記マスクの短辺側を吸着保持する少なくとも2つの前記マスクホルダとの間にそれぞれ設けられ、前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動可能に案内する複数のガイド機構と、
前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動させる駆動機構と、
前記マスクステージベース側部材と前記各ガイド機構との間、及び、前記各ガイド機構と前記短辺側のマスクホルダとの間の少なくとも一方にそれぞれ設けられ、前記マスクのあおり角を調整可能なあおり角調整機構と、
を備え
、
前記あおり角調整機構は、互いに高さが異なる交換可能な一対の間座であることを特徴とする露光装置。
(2) 前記あおり角調整機構は、前記マスクステージベース側部材と前記各ガイド機構との間、及び、前記各ガイド機構と前記短辺側のマスクホルダとの間の両方にそれぞれ設けられることを特徴とする(1)に記載の露光装置。
(3) 前記各ガイド機構は、前記マスクステージベース側に取り付けられるガイドレールと、前記マスクホルダ側に取り付けられるスライダ部材と、をそれぞれ有し、
前記あおり角調整機構は、前記マスクステージベース側部材と前記各ガイドレールとの間、及び、前記各スライダ部材と前記短辺側のマスクホルダとの間の少なくとも一方にそれぞれ設けられることを特徴とする(1)または(2)に記載の露光装置。
(
4)
被露光材としての基板を載置する基板ステージと、前記基板ステージの上方に配置されて略矩形状のマスクを保持するマスクステージと、パターン露光用の光を前記マスクを介して前記基板に照射する照射手段と、を備える露光装置であって、
前記マスクステージは、
マスクステージベース側部材と、
前記マスクの各辺をそれぞれ吸着保持可能な4つのマスクホルダと、
前記マスクステージベース側部材と、前記マスクの短辺側を吸着保持する少なくとも2つの前記マスクホルダとの間にそれぞれ設けられ、前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動可能に案内する複数のガイド機構と、
前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動させる駆動機構と、
前記マスクステージベース側部材と前記各ガイド機構との間、及び、前記各ガイド機構と前記短辺側のマスクホルダとの間の少なくとも一方にそれぞれ設けられ、前記マスクのあおり角を調整可能なあおり角調整機構と、
を備え、
前記あおり角調整機構は、
所定の高さを有する間座と、
該間座の外側に設けられ、傾斜面を有する固定側テーパ部材と、該傾斜面に摺動自在に接触する傾斜面を有する可動側テーパ部材と、を有し、前記傾斜面の摺接位置を変えることで高さを変更可能なクサビ機構と、
を有することを特徴とす
る露光装置。
(
5) 前記クサビ機構は、電動アクチュエータによって前記可動側テーパ部材を駆動することで、前記あおり角を調整することを特徴とする(
4)に記載の露光装置。
(
6)
被露光材としての基板を載置する基板ステージと、前記基板ステージの上方に配置されて略矩形状のマスクを保持するマスクステージと、パターン露光用の光を前記マスクを介して前記基板に照射する照射手段と、を備える露光装置であって、
前記マスクステージは、
マスクステージベース側部材と、
前記マスクの各辺をそれぞれ吸着保持可能な4つのマスクホルダと、
前記マスクステージベース側部材と、前記マスクの短辺側を吸着保持する少なくとも2つの前記マスクホルダとの間にそれぞれ設けられ、前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動可能に案内する複数のガイド機構と、
前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動させる駆動機構と、
前記マスクステージベース側部材と前記各ガイド機構との間、及び、前記各ガイド機構と前記短辺側のマスクホルダとの間の少なくとも一方にそれぞれ設けられ、前記マスクのあおり角を調整可能なあおり角調整機構と、
を備え、
前記駆動機構は、シリンダ本体が前記マスクステージベース側部材に固定され、ピストンの先端が前記マスクホルダに固定されたシリンダ装置であることを特徴とす
る露光装置。
(
7) 前記シリンダ装置は、前記マスクステージベース側部材に移動可能に取り付けられた、ショックアブソーバを備えるストッパを有し、該ストッパに前記ピストンを当接させて前記マスクホルダを所定の位置に位置決めすることを特徴とする請求項(
6)に記載の露光装置。
(
8) 前記駆動機構は、電気モータであることを特徴とする(1)から(
5)のいずれか1項に記載の露光装置。
(
9) 前記電気モータは、前記マスクホルダを少なくとも3ヶ所の停止位置で停止させることを特徴とする(
8)に記載の露光装置。
(
10)
被露光材としての基板を載置する基板ステージと、前記基板ステージの上方に配置されて略矩形状のマスクを保持するマスクステージと、パターン露光用の光を前記マスクを介して前記基板に照射する照射手段と、を備える露光装置であって、
前記マスクステージは、
マスクステージベース側部材と、
前記マスクの各辺をそれぞれ吸着保持可能な4つのマスクホルダと、
前記マスクステージベース側部材と、前記マスクの短辺側を吸着保持する少なくとも2つの前記マスクホルダとの間にそれぞれ設けられ、前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動可能に案内する複数のガイド機構と、
前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動させる駆動機構と、
前記マスクステージベース側部材と前記各ガイド機構との間、及び、前記各ガイド機構と前記短辺側のマスクホルダとの間の少なくとも一方にそれぞれ設けられ、前記マスクのあおり角を調整可能なあおり角調整機構と、
を備え、
前記マスクの短辺側を吸着保持する前記マスクホルダと、前記マスクの長辺側を吸着保持する前記マスクホルダとは、少なくとも互いに近接する側縁部に、残りの部分より薄肉に形成された薄肉部を有することを特徴とす
る露光装置。
(
11)
被露光材としての基板を載置する基板ステージと、前記基板ステージの上方に配置されて略矩形状のマスクを保持するマスクステージと、パターン露光用の光を前記マスクを介して前記基板に照射する照射手段と、を備える露光装置であって、
前記マスクステージは、
マスクステージベース側部材と、
前記マスクの各辺をそれぞれ吸着保持可能な4つのマスクホルダと、
前記マスクステージベース側部材と、前記マスクの短辺側を吸着保持する少なくとも2つの前記マスクホルダとの間にそれぞれ設けられ、前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動可能に案内する複数のガイド機構と、
前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動させる駆動機構と、
前記マスクステージベース側部材と前記各ガイド機構との間、及び、前記各ガイド機構と前記短辺側のマスクホルダとの間の少なくとも一方にそれぞれ設けられ、前記マスクのあおり角を調整可能なあおり角調整機構と、
を備え、
前記マスクの短辺側を吸着保持する前記マスクホルダと、前記マスクの長辺側を吸着保持する前記マスクホルダとは、互いに近接する隅部に面取り部を有することを特徴とす
る露光装置。
(
12)
被露光材としての基板を載置する基板ステージと、前記基板ステージの上方に配置されて略矩形状のマスクを保持するマスクステージと、パターン露光用の光を前記マスクを介して前記基板に照射する照射手段と、を備える露光装置であって、
前記マスクステージは、
マスクステージベース側部材と、
前記マスクの各辺をそれぞれ吸着保持可能な4つのマスクホルダと、
前記マスクステージベース側部材と、前記マスクの短辺側を吸着保持する少なくとも2つの前記マスクホルダとの間にそれぞれ設けられ、前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動可能に案内する複数のガイド機構と、
前記短辺側のマスクホルダを前記マスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動させる駆動機構と、
前記マスクステージベース側部材と前記各ガイド機構との間、及び、前記各ガイド機構と前記短辺側のマスクホルダとの間の少なくとも一方にそれぞれ設けられ、前記マスクのあおり角を調整可能なあおり角調整機構と、
を備え、
前記マスクの短辺側を吸着保持する前記マスクホルダと、前記マスクの長辺側を吸着保持する前記マスクホルダとのいずれか一方は、少なくとも互いに近接する側縁部に、下面から延出する段部を有すると共に
、他方の
前記マスクホルダは、上面から延出する段部を有し、
前記短辺側及び長辺側のマスクホルダは、前記段部同士を互いに重ね合わせた状態で前記マスクを吸着保持することを特徴とす
る露光装置。
(
13) 前記マスクの一方の面に臨むチャンバを備え、前記チャンバ内の気圧と、前記マスクの他方の面に作用する気圧とに圧力差を与えて、前記マスクの前記あおり角を補正する負圧補正機構を更に備えることを特徴とする(1)から(
12)のいずれか1項に記載の露光装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の露光装置によれば、マスクステージが、マスクステージベースと、マスクの各辺を吸着保持する4つのマスクホルダと、短辺側のマスクホルダをマスクステージベース側部材に対して長辺方向に移動可能に案内する複数のガイド機構と、短辺側のマスクホルダをマスクの長辺方向に移動させる駆動機構と、を備えるので、短辺側のマスクホルダをマスクの大きさに合わせて移動させることにより、マスクホルダを交換することなく、異なるサイズの複数のマスクに対応して吸着保持することができる。また、マスクステージベース側部材と各ガイド機構との間、及び、各ガイド機構と短辺側のマスクホルダとの間の少なくとも一方にあおり角調整機構を有するので、マスクのサイズに関わらず、装着されるマスクの平坦度を補正し、マスクと基板間のギャップを一定に維持して露光精度を高めることができる。
【0018】
また、本発明の露光装置によれば、マスクステージは、所定方向に延びるマスクの対向する2辺を吸着保持可能な一対の第1マスクホルダと、所定方向と直交する方向に延びるマスクの対向する他の2辺を吸着保持可能、且つマスクの所定方向に移動可能な一対の第2マスクホルダと、各第2マスクホルダをマスクの所定方向にそれぞれ移動させる一対の駆動機構と、を備えるので、マスクホルダを交換することなく、サイズの異なる複数のマスクに対応して吸着保持することができる。また、各第2マスクホルダには、所定方向において並ぶ複数列の吸着溝が設けられているので、吸着可能エリアが異なるマスクに対しても、この吸着可能エリアを有効に使用して、マスクを確実に保吸着持することができる。
【0019】
また、本発明の露光装置によれば、マスクステージが、複数に分割形成された吸着溝によりマスクの対向する2辺を吸着保持する一対のマスクホルダを備えるので、マスクホルダを交換することなく、該2辺の長さが異なる複数サイズのマスクに対応して吸着保持することができる。また、マスクホルダが、該2辺でのみマスクを保持することで、サイズの異なるマスクに交換されてもマスクの撓み形状が変化することがない。さらに、マスクの一方の面に臨むチャンバ内の気圧と、マスクの他方の面に作用する気圧とに圧力差を与えて、マスクの撓みを補正する負圧補正機構を有するので、マスクの撓みを負圧補正機構により補正して、マスクと基板間のギャップを一定に維持し、高い露光精度を維持することができる。
【0020】
また、マスクステージベース側部材と各マスクホルダとの間に配設されたあおり角調整機構を有する場合にも、マスクの撓みをあおり角調整機構により補正して、マスクと基板間のギャップを一定にして露光精度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る露光装置の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態である露光装置の要部斜視図、
図2は正面図、
図3はマスクステージ近傍の拡大図、
図4はマスクステージの平面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の露光装置1は、マスクMを保持するマスクステージ10と、ガラス基板(被露光材)Wを保持する基板ステージ20と、パターン露光用の照射手段としての照明光学系30と、基板ステージ20をX軸,Y軸,Z軸方向に移動し、且つ基板ステージ20のチルト調整を行う基板ステージ移動機構40と、マスクステージ10及び基板ステージ移動機構40を支持する装置ベース50と、を備えている。
【0024】
なお、ガラス基板W(以下、単に「基板W」と称する。)は、マスクMに対向配置されており、このマスクMに描かれたマスクパターンを露光転写すべく表面(マスクMの対向面側)に感光剤が塗布されている。
【0025】
先ず照明光学系30から説明する。照明光学系30は、紫外線照射用の光源である例えば高圧水銀ランプ31と、この高圧水銀ランプ31から照射された光を集光する凹面鏡32と、この凹面鏡32の焦点近傍に切替え自在に配置された二種類のオプチカルインテグレータ33と、光路の向きを変えるための平面ミラー35,36及び球面ミラー37と、この平面ミラー35とオプチカルインテグレータ33との間に配置されて照射光路を開閉制御する露光制御用シャッター34と、を備える。
【0026】
そして、照明光学系30では、露光時に露光制御用シャッター34が開制御されると、高圧水銀ランプ31から照射された光が、
図1に示す光路Lを経て、マスクステージ10に保持されるマスクM、さらには基板ステージ20に保持される基板Wの表面に対して垂直にパターン露光用の平行光として照射される。これにより、マスクMのマスクパターンが基板W上に露光転写される。
【0027】
マスクステージ10は、
図1〜
図3に示すように、中央部に矩形形状の開口11aが形成されるマスクステージベース11と、マスクステージベース11の開口11aにX軸,Y軸,θ方向に移動可能に装着されるマスク保持枠(マスクステージベース側部材)12と、を備える。
【0028】
マスクステージベース11は、装置ベース50上に立設される支柱51、及び支柱51の上端部に設けられるZ軸移動装置52によりZ軸方向に移動可能に支持され(
図2参照)、基板ステージ20の上方に配置される。Z軸移動装置52は、例えば、モータ及びボールねじ等からなる電動アクチュエータ、或いは空圧シリンダ等を備え、単純な上下動作を行うことにより、マスクステージ10を所定の位置まで昇降させる。なお、Z軸移動装置52は、マスクMの交換や、Zステージ21の清掃等の際に使用される。
【0029】
図4に示すように、マスクステージベース11の開口11aの周縁部の上面には、平面ベアリング13が複数箇所配置されており、マスク保持枠12は、その上端外周縁部に設けられるフランジ12aを平面ベアリング13に載置している。これにより、マスク保持枠12は、マスクステージベース11の開口11aに所定のすき間を介して挿入されるので、このすき間分だけX軸,Y軸,θ方向に移動可能となる。マスク保持枠12は、中央
部にパターン露光光を通過させるための矩形形状の開口12bが形成される。
【0030】
図5も参照して、マスク保持側部材の一例であるマスク保持枠12の下面側には、開口12bの長辺側に配置される一対の固定マスクホルダ71と、開口12bの短辺側に配置される一対の可動マスクホルダ72と、マスク保持枠12と各可動マスクホルダ72との間に設けられる複数のリニアガイド(ガイド機構)73と、可動マスクホルダ72を開口12bの長辺に沿って移動させる駆動機構であるシリンダ装置74(
図7参照)と、を備える。また、リニアガイド73と可動マスクホルダ72との間には、あおり角調整機構80が配設されている。
【0031】
図5に示すように、マスク保持枠12の下面に間座などを介して固定された一対の固定マスクホルダ71の下面(基板W側)には、長手方向中央に形成されたメイン吸着溝71aと、このメイン吸着溝71aの左右に、メイン吸着溝71aから独立して形成されたサブ吸着溝71bとが設けられている。また、マスク保持枠12の下方に移動可能に配設される可動マスクホルダ72の下面には、略全長に亘って吸着溝72aが形成されている。固定マスクホルダ71及び可動マスクホルダ72のメイン吸着溝71a、サブ吸着溝71b、及び吸着溝72aは、マスクMのマスクパターンが描かれていない周縁部を吸着するための溝であり、不図示の真空式吸着装置によりマスクMの4辺をそれぞれ吸着してマスクMを着脱自在に保持する。
【0032】
メイン吸着溝71a、サブ吸着溝71b、及び吸着溝72aは、それぞれ不図示の切換え弁を介して真空式吸着装置に接続されており、適宜、切換え弁を切り替えることによって、任意の吸着溝を作動状態にすることができる。ここで、マスクMのサイズは、多面取りする際に有効露光エリアに描画されているパターンの配置などによって若干(例えば、10〜20mm程度)異なることがあるが、固定マスクホルダ71及び可動マスクホルダ72は、このようなサイズの異なるマスクMに対応して吸着保持することができる。具体的に、メイン吸着溝71a、サブ吸着溝71b、及び吸着溝72aは協働して大きなサイズのマスクMを吸着し、メイン吸着溝71a及び吸着溝72aは協働して小さなサイズのマスクMを吸着して保持する。
【0033】
図4及び
図6に示すように、リニアガイド73は、マスクステージベース11側(マスク保持枠12)に取り付けられるガイドレール73aと、可動マスクホルダ72側に取り付けられ、ガイドレール73aに案内されてY方向(開口12bの長辺方向)に移動可能なスライダ部材73b(図に示す実施形態においては、1本のガイドレール73aに対してそれぞれ2個のスライダ部材73bi,73bo)とから構成されている。
【0034】
可動マスクホルダ72の駆動機構である一対のシリンダ装置74は、各可動マスクホルダ72に対応してその長手方向略中央、換言すれば、マスク保持枠12の短辺の略中央に配置されて、長手方向に延設されている。各シリンダ装置74は、
図7に示すように、シリンダ本体74aがマスク保持枠12の下面に固定され、ピストン74bが可動マスクホルダ72から上方に突出して設けられた突起部72bの支持軸75に回動自在に嵌合している。これにより、後述する可動マスクホルダ72のあおり角調整時におけるシリンダ装置74と可動マスクホルダ72との角度変化が吸収されて滑らかに作動させることができる。
【0035】
また、ピストン74bの作動方向前方におけるマスク保持枠12の下面には、ショックアブソーバ76を備えるストッパ77が固定されており、シリンダ装置74が作動してピストン74bが伸長したとき、ショックアブソーバ76を介して突起部72b(可動マスクホルダ72)をストッパ77に当接させて、衝撃を与えることなく可動マスクホルダ72を所定の位置で位置決めする。
【0036】
ストッパ77の位置は、大きなサイズのマスクMを取り付けるときの可動マスクホルダ72の位置を規制するものであり、シリンダ装置74のピストン74bがシリンダ本体74a内に引き込まれたときの可動マスクホルダ72の位置は、小さなサイズのマスクMを取り付けるときの可動マスクホルダ72の位置である。
【0037】
上記したように、固定マスクホルダ71、可動マスクホルダ72、リニアガイド73、及びシリンダ装置74は、マスク保持枠12に取り付けられているので、マスク保持枠12と共にマスクステージベース11に対してX軸,Y軸,θ方向に移動可能である。
【0038】
そして、
図6に示すように、シリンダ装置74を作動させて、大きなサイズのマスクMを取り付けるときには、一対の可動マスクホルダ72を同時に互いに離間する方向(外方)に移動させて間隔を広げ(
図6(a))、小さなサイズのマスクMを取り付けるときには、一対の可動マスクホルダ72を同時に互いに接近する方向(内方)に移動させて間隔を狭めることにより(
図6(b))、容易にサイズの異なる複数のマスクMに対応することができる。
【0039】
2位置の位置決めが可能な本実施形態のシリンダ装置74によると、大小、2種類のサイズのマスクMに対応することができる。このとき、一対のシリンダ装置74を同時に作動させて、一対の可動マスクホルダ72を常に左右対称位置に位置させることにより、両可動マスクホルダ72の中央位置、即ち、マスクMの中心を移動させることなく、マスクMを交換することができる。
【0040】
図8は変形例の駆動装置の側面図であり、ショックアブソーバ76を備えるストッパ77が、例えば、電動アクチュエータ78によりピストン74bの移動方向に移動可能となっている。これにより、シリンダ装置74による可動マスクホルダ72の停止位置を、3ヶ所以上の複数位置に、更には任意位置に位置決めすることが可能となり、サイズの異なる3つ以上のマスクMに、或いはサイズの微小変化に対応することができる。
【0041】
また、駆動装置は、シリンダ装置74に替えて電気モータ(図示せず)で構成することもでき、電気モータによれば、複数の停止位置を任意の位置に設定することが容易であり、この停止位置で可動マスクホルダ72を停止させることができる。
【0042】
あおり角調整機構80は、一対の可動マスクホルダ72の角度、即ち、あおり角を調整可能な機構であり、本実施形態では、互いに高さが異なる交換可能な一対の間座80a,80bが、各スライダ部材73bと短辺側のマスクホルダ72との間に配置されている。これにより、一対の可動マスクホルダ72によって両端が吸着保持されているマスクMに長手方向中心Cに対して左右対称にあおり角を付与し、マスクMの撓みが低減するように補正することができ、マスクMの平坦度を向上させる。よって、マスクMの有効露光エリアにおけるマスクMと基板Wとのギャップをできるだけ均一化することができる。
【0043】
また、サイズの大きなマスクMではマスクMの撓みが大きくなるため、あおり角は、撓みの大きなマスクMに対しては大きな角度が設定される。このため、交換するマスクMのサイズが変更されたときには、一対の間座80a,80bを交換することで、あおり角を調整してもよい。
【0044】
また、マスクステージベース11の上面には、
図3及び
図4に示すように、マスク保持枠12をX軸,Y軸,θ方向に移動させ、このマスク保持枠12に保持されるマスクMの
位置を調整するマスク位置調整機構16が設けられる。
【0045】
マスク位置調整機構16は、マスク保持枠12のX軸方向に沿う一辺に取り付けられる1台のY軸方向駆動装置16yと、マスク保持枠12のY軸方向に沿う一辺に取り付けられる2台のX軸方向駆動装置16xと、を備える。
【0046】
Y軸方向駆動装置16yは、マスクステージベース11上に設置され、Y軸方向に伸縮するロッド56を有する駆動用アクチュエータ(例えば、電動アクチュエータ等)55と、ロッド56の先端にピン支持機構57を介して連結されるスライダ58と、マスク保持枠12のX軸方向に沿う辺部に取り付けられ、スライダ58を移動可能に取り付ける案内レール59と、を備える。
【0047】
一方、X軸方向駆動装置16xも、Y軸方向駆動装置16yと同様の構成であって、マスクステージベース11上に設置され、X軸方向に伸縮するロッド56を有する駆動用アクチュエータ55と、ロッド56の先端にピン支持機構57を介して連結されるスライダ58と、マスク保持枠12のY軸方向に沿う辺部に取り付けられ、スライダ58を移動可能に取り付ける案内レール59と、を備える。
【0048】
そして、マスク位置調整機構16では、1台のY軸方向駆動装置16yを駆動させることによりマスク保持枠12をY軸方向に移動させ、2台のX軸方向駆動装置16xを同等に駆動させることによりマスク保持枠12をX軸方向に移動させる。また、2台のX軸方向駆動装置16xのどちらか一方を駆動することによりマスク保持枠12をθ方向に移動(Z軸回りの回転)させる。
【0049】
さらに、マスクステージベース11の上面には、
図3に示すように、マスクMと基板Wとの対向面間のギャップを測定するギャップセンサ17と、マスクMの取り付け位置を確認するためのアライメントカメラ18と、が設けられる。これらギャップセンサ17及びアライメントカメラ18は、移動機構19を介してX軸,Y軸方向に移動可能に保持され、マスク保持枠12内に配置される。
【0050】
移動機構19は、マスク保持枠12のY軸方向に互いに対向する二辺にそれぞれ配置され、ギャップセンサ17及びアライメントカメラ18を保持する保持架台25と、保持架台25をX軸,Y軸方向に移動可能に支持するリニアガイド26,27と、保持架台25をX軸,Y軸方向に移動させる駆動用アクチュエータ28,29と、を備える。
【0051】
そして、移動機構19では、リニアガイド26及び駆動用アクチュエータ28により保持架台25をX軸方向に移動させ、リニアガイド27及び駆動用アクチュエータ29により保持架台25をY軸方向に移動させる。なお、移動機構19は、リニアガイド及び駆動用アクチュエータを使用して保持架台をX軸,Y軸方向に移動させているが、リニアーモータ等を使用してもよい。
【0052】
アライメントカメラ18は、マスクMの表面のマスク側アライメントマーク(図示せず)をマスク裏面側から光学的に検出するものであり、ピント調整機構によりマスクMに対して接近離間移動してピント調整がなされるようになっている。
【0053】
なお、マスクステージベース11の上面には、
図3に示すように、マスクステージベース11の開口11aのX軸方向の両端部に、マスクMの両端部を必要に応じて遮蔽するマスキングアパーチャ38が設けられる。このマスキングアパーチャ38は、モータ、ボールねじ、及びリニアガイド等からなるマスキングアパーチャ駆動機構39によりX軸方向に移動可能とされて、マスクMの両端部の遮蔽面積を調整する。なお、マスキングアパーチャ38は、開口11aのX軸方向の両端部だけでなく、開口11aのY軸方向の両端部に同様に設けてもよい。
【0054】
基板ステージ20は、
図1及び
図2に示すように、上面にワークチャック22が配置されたZステージ21を備え、基板ステージ移動機構40上に設置されている。なお、ワークチャック22は、真空吸着により基板Wを保持している。
【0055】
基板ステージ移動機構40は、基板ステージ20をY軸方向に移動させるY軸送り機構41と、基板ステージ20をX軸方向に移動させるX軸送り機構42と、基板ステージ20のチルト調整を行うと共に、基板ステージ20をZ軸方向に微動させるZ−チルト調整機構43と、を備える。
【0056】
Y軸送り機構41は、装置ベース50の上面にY軸方向に沿って設置される一対のリニアガイド44と、リニアガイド44によりY軸方向に移動可能に支持されるY軸テーブル45と、Y軸テーブル45をY軸方向に移動させるY軸送り駆動装置46と、を備える。リニアガイド44は、装置ベース50上にY軸方向に沿って設置される案内レール44aと、Y軸テーブル45の下面に固定され、案内レール44aに移動可能に取り付けられる一対のスライダ44bと、案内レール44aとスライダ44bとの間に介設される不図示の転動体と、を備える。Y軸送り駆動装置46は、Y軸テーブル45の下面に固定されるボールねじナット46aと、ボールねじナット46aに螺合されるボールねじ軸46bと、装置ベース50上に設置され、ボールねじ軸46bを回転駆動させるモータ46cと、を備える。
【0057】
そして、Y軸送り機構41では、Y軸送り駆動装置46のモータ46cを駆動させ、ボールねじ軸46bを回転させることにより、ボールねじナット46aとともにY軸テーブル45をリニアガイド44の案内レール44aに沿って移動させて、基板ステージ20をY軸方向に移動させる。
【0058】
X軸送り機構42は、Y軸テーブル45の上面にX軸方向に沿って設置される一対のリニアガイド47と、リニアガイド47によりX軸方向に移動可能に支持されるX軸テーブル48と、X軸テーブル48をX軸方向に移動させるX軸送り駆動装置49と、を備える。リニアガイド47は、Y軸テーブル45上にX軸方向に沿って設置される案内レール47aと、X軸テーブル48の下面に固定され、案内レール47aに移動可能に取り付けられる一対のスライダ47bと、案内レール47aとスライダ47bとの間に介設される不図示の転動体と、を備える。X軸送り駆動装置49は、X軸テーブル48の下面に固定される不図示のボールねじナットと、このボールねじナットに螺合されるボールねじ軸49bと、Y軸テーブル45上に設置され、ボールねじ軸49bを回転駆動させるモータ49cと、を備える。
【0059】
そして、X軸送り機構42では、X軸送り駆動装置49のモータ49cを駆動させ、ボールねじ軸49bを回転させることにより、不図示のボールねじナットとともにX軸テーブル48をリニアガイド47の案内レール47aに沿って移動させて、基板ステージ20をX軸方向に移動させる。
【0060】
Z−チルト調整機構43は、X軸テーブル48上に設置されるモータ43aと、モータ43aによって回転駆動されるボールねじ軸43bと、くさび状に形成され、ボールねじ軸43bに螺合されるくさび状ナット43cと、基板ステージ20の下面にくさび状に突設され、くさび状ナット43cの傾斜面に係合するくさび部43dと、を備える。そして、本実施形態では、Z−チルト調整機構43は、X軸テーブル48のX軸方向の一端側(
図1の手前側)に2台、他端側に1台(
図1の奥手側、
図2参照。)の計3台設置され、それぞれが独立して駆動制御されている。なお、Z−チルト調整機構43の設置数は任意である。
【0061】
そして、Z−チルト調整機構43では、モータ43aによりボールねじ軸43bを回転駆動させることによって、くさび状ナット43cがX軸方向に水平移動し、この水平移動運動がくさび状ナット43c及びくさび部43dの斜面作用により高精度の上下微動運動に変換されて、くさび部43dがZ方向に微動する。従って、3台のZ−チルト調整機構43を同じ量だけ駆動させることにより、基板ステージ20をZ軸方向に微動することができ、また、3台のZ−チルト調整機構43を独立して駆動させることにより、基板ステージ20のチルト調整を行うことができる。これにより、基板ステージ20のZ軸,チルト方向の位置を微調整して、マスクMと基板Wとを所定の間隔を存して平行に対向させることができる。
なお、Y軸送り機構41、X軸送り機構42、及びZ−チルト調整機構43を構成する、ボールねじ軸機構とモータとの組合せは、リニアーモータによって置き換えられてもよい。
【0062】
また、本実施形態の露光装置1には、
図1及び
図2に示すように、基板ステージ20の位置を検出する位置測定装置であるレーザ測長装置60が設けられる。このレーザ測長装置60は、基板ステージ移動機構40の駆動に際して発生する基板ステージ20の移動距離を測定するものである。
【0063】
レーザ測長装置60は、基板ステージ20に配設されるX軸用ミラー64およびY軸用ミラー65と、装置ベース50に配設されてレーザ光(計測光)をX軸用ミラー64に照射し、X軸用ミラー64により反射されたレーザ光を受光して、基板ステージ20の位置を計測するX軸測長器(測長器)61及びヨーイング測定器(測長器)62と、レーザ光をY軸用ミラー65に照射し、Y軸用ミラー65により反射されたレーザ光を受光して、基板ステージ20の位置を計測する1台のY軸測長器(測長器)63とを備える。そして、基板ステージ20のXY方向の位置検出信号を制御装置に入力するようにしている。
【0064】
以上のように構成された露光装置1では、あおり角調整機構80によってマスクMに長手方向中心Cに対して左右対称にあおり角を付与し、マスクMの撓みが低減するように補正することができ、マスクMの平坦度を向上させる。よって、マスクMの有効露光エリアにおけるマスクMと基板Wとのギャップをできるだけ均一化することができる。また、
図6(a)に示す大きなサイズのマスクMに対して
図6(b)に示す小さなサイズのマスクMを使用する場合には、シリンダ装置74を作動させて、一対の可動マスクホルダ72を互いに離間、または接近する方向に移動させて、サイズの異なる複数のマスクMに対応して吸着保持することができる。さらに、サイズの異なるマスクMに対応して、あおり角調整機構80によってあおり角を調整し、装着されるマスクMの撓み量の変化を補正することができる。これにより、マスクMのサイズに関わらず、マスクMと基板Wとの間のギャップを一定に維持して、高い露光精度を維持することができる。
【0065】
次に、あおり角調整機構の変形例について、
図9から
図11を参照して詳細に説明する。
図9はあおり角調整機構の一例であるクサビ機構の部分破断側面図、
図10はクサビ機構の固定側テーパ部材の部分破断側面図、
図11はクサビ機構の可動側テーパ部材の側面図、及び断面図である。
【0066】
あおり角調整機構80は、水平レベル調整用の間座81と、クサビ機構83とから構成される。間座81は、内側(マスク保持枠12の中心側)に位置するスライダ部材73biの下面と、可動マスクホルダ72との間に配置されており、マスクホルダ固定用ボルト82によって可動マスクホルダ72がスライダ部材73biの下面に取り付けられている。間座81より外側に位置するスライダ部材73boと可動マスクホルダ72の間には、可動マスクホルダ72の上面に、下向きの外力を加えるクサビ機構83が設けられている。
【0067】
このクサビ機構83は、可動マスクホルダ72の外方(
図9において左側)から内方に向かって傾斜する傾斜面84aを有する固定側テーパ部材84と、固定側テーパ部材84の傾斜面84aに摺動自在に接触する傾斜面85aを有する可動側テーパ部材85と、間座81に対して可動側テーパ部材85を接離する方向に移動させる可動側テーパ部材送り手段としての送りねじ86とを備える。送りねじ86は、固定側テーパ部材84の外方に向けて突出して設けられたブラケット87に保持されている。可動側テーパ部材85には、固定側テーパ部材84の傾斜面84aと同じ傾斜角を有して傾斜面84aと摺接する傾斜面85a、及び長穴85bが形成されている。
【0068】
可動マスクホルダ72のボルト穴72cに挿通された固定側テーパ部材固定用ボルト88は、固定側テーパ部材84の貫通孔84b、可動側テーパ部材85の長穴85bを貫通してスライダ部材73boの下面に固定されている。
【0069】
このような構成において、クサビ機構83の送りねじ86を操作して可動側テーパ部材85を
図9中左右方向に移動させて傾斜面84a、85aの摺接位置を変えることでクサビ機構83の高さを変更する。これにより、可動マスクホルダ72の間座81より外側(
図9において左側)にかかる下向きの外力を調整し、間座81位置を中心として可動マスクホルダ72の傾きを変更する。
【0070】
これにより、一対の可動マスクホルダ72によって両端が吸着保持されているマスクMにあおり角を付与し、マスクMの撓みが低減するように補正することができ、マスクMの平坦度を向上させることができる。尚、送りねじ86に替えて、不図示の電動アクチュエータによって可動側テーパ部材85を駆動することで、あおり角を調整するようにしてもよい。
【0071】
また、あおり角調整機構80は、一対の可動マスクホルダ72の角度を調整可能な機構であれば特に限定されず、上記で説明した間座80a,80bやクサビ機構83以外にも、通電制御により高さが変更可能なピエゾ素子(図示せず)で構成することもできる。
【0072】
(第2実施形態)
図12は、あおり角調整機構が第1実施形態と異なる、第2実施形態の露光装置を示す図である。本実施形態の露光装置1では、あおり角調整機構80が、マスク保持枠12とガイドレール73aとの間に配置されている。
【0073】
このような露光装置1によっても、第1実施形態と同様、マスクホルダを交換することなく、異なるサイズの複数のマスクに対応して吸着保持することができる。また、マスクMのサイズに関わらず、あおり角調整機構80によってあおり角を調整して装着されるマスクMの平坦度を補正し、マスクMと基板W間のギャップを一定に維持して露光精度を高めることができる。なお、本実施形態の場合には、マスクMのサイズ変更に伴って短辺側の可動マスクホルダ72の吸着位置の高さが変わるため、マスクステージ側、または基板ステージ側でギャップ調整が必要となる。
【0074】
(変形例)
図13は、第2実施形態の変形例にかかる露光装置1を示す図であり、マスク保持枠12とガイドレール73aとの間に第1のあおり角調整機構80Aが配置され、スライダ部材73bと可動マスクホルダ72との間に第2のあおり角調整機構80Bが配置されている。このような露光装置1によれば、マスク保持枠12の水平度が多少傾いていても、第1のあおり角調整機構80Aでガイドレール73aの傾きを修正して水平にすることができる。そして、第2のあおり角調整機構80Bにより、可動マスクホルダ72のあおり角を調整し、マスクMの装着に伴うマスクMの撓み量の変化を補正して、マスクMとワークWとの間のギャップを一定に維持して、高い露光精度で転写露光することができる。
【0075】
(第3実施形態)
図14は、第3実施形態の露光装置として、あおり角調整機構によって可動マスクホルダが傾斜した際に、固定マスクホルダと可動マスクホルダとの間に生じる段差を調整する手段を示す。
【0076】
例えば、
図15に示すように、可動マスクホルダ72のあおり角を調整すると、固定マスクホルダ71と可動マスクホルダ72との間に高さの差(段差)が発生する場合があり、この段差が大きいと、ホルダ71、72の剛性が高いので、可動マスクホルダ72とマスクMとの間に隙間Cができて露光精度に悪影響を及ぼす虞がある。
【0077】
このため、
図14に示すように、固定マスクホルダ71及び可動マスクホルダ72は、それぞれ近接する側縁部71d、72dの上面側が切欠かれて、残りの部分より薄肉にされた薄肉部71e、72eが形成されている。剛性が弱められた薄肉部72eは、マスクMを吸着保持したとき、
図14(b)中破線で示す位置から実線で示す位置にマスクホルダ72の板厚方向に弾性変形して、マスクホルダ71、72とマスクMとの間に隙間Cを生じることなく、マスクMを吸着保持する。
【0078】
薄肉部71e、72eの厚さtは、マスクホルダ71、72の板厚をhとしたとき、1/2h≦t≦2/3hとするのが好ましい。これは、薄肉部71e、72eの厚さtが、1/2h以下だと、剛性が低くすぎてマスクホルダ71、72が破損する虞があり、また、2/3h以上だと、剛性が高すぎてマスクホルダ71、72とマスクMとの間に隙間Cが生じる虞があることによる。
【0079】
なお、薄肉部71e,72eの先端は、
図14(c)、
図14(d)に示すように、断面三角形状や曲面形状に形成されてもよく、マスクホルダ71、72とマスクMとの間に隙間Cが生じるのを防ぐことができる。また、
図14(e)、
図4(f)に示すように、薄肉部71e,72eは、段差を設けずに、側縁部71d、72dを断面三角形状や曲面形状とすることで形成されてもよく、側縁部71d、72dの剛性を低くすることで、マスクホルダ71、72とマスクMとの間に隙間Cが生じるのを防ぐことができる。
【0080】
また、固定マスクホルダ71と可動マスクホルダ72との段差を調整する他の手段として、
図16(a)に示すマスクホルダ71、72では、近接する隅部に面取り部71f、72fが設けられている。これにより、マスクホルダ71、72の隅部間のスパンが長くなって、マスクMの変形が容易となるので、マスクMとマスクホルダ71、72との間に隙間が発生することなく、吸着保持することができる。なお、マスクホルダ71、72の側面と面取り部71f、72fとが接合する稜線部には、曲面状に面取りを施して集中応力の発生を防止することが望ましい。また、
図16(b)に示すように、面取り部71f、72fの形状を曲面形状にすれば、更に集中応力の発生を低減することができ、より好ましい。
【0081】
図17(a)は、固定マスクホルダ71と可動マスクホルダ72との段差を調整する更に他の手段であり、固定マスクホルダ71は、近接する側縁部71dの下面から延出する段部71gを有し、可動マスクホルダ72は、側縁部72dの上面から延出する段部72gを有する。マスクホルダ71、72は、段部71g、72g同士を重ね合わせることで、マスクMを押さえる力を強めることができ、マスクMが隙間なく確実に吸着保持される。
【0082】
更に、
図17(b)に示すように、固定マスクホルダ71及び可動マスクホルダ72の重ね合わせた段部72gに調整ボルト79を設け、固定マスクホルダ71と可動マスクホルダ72の下面(マスク保持面)の段差がなくなるように、固定マスクホルダ71と可動マスクホルダ72の高さを調整してもよい。この場合、調整ボルト79のねじの先端部分に、テフロン(登録商標)等の滑り材料79aを設け、固定マスクホルダ71の段部71gの上面71g1が調整ボルト79によって摩耗するのを防止する。
【0083】
なお、薄肉部71f、72fや段部71g、72gを設ける位置は、側縁部71d、72dに限定されず、マスクホルダ71、72の周囲に亘って形成されてもよい。
【0084】
(第4実施形態)
図18は、第4実施形態の露光装置の構成を示す側面図である。
図18に示すように、本実施形態の露光装置1は、マスクMのあおり角調整機構として負圧補正機構90が採用されている。マスクステージ10及び基板ステージ20は、その周囲がサーマルチャンバ91により遮蔽されている。サーマルチャンバ91の側壁には、基板Wを搬送するための開口91aが設けられている。また、マスクステージ10の上方は、光学系チャンバ92により遮蔽されると共に、光学系チャンバ92に隣接して光源チャンバ93が配置されている。光学系チャンバ92と光源チャンバ93との間には、透明板94が配置され、光源チャンバ93内の高圧水銀ランプ31から照射されて透明板94を通過する露光光が、光路Lを経て、マスクMに導かれる。
【0085】
サーマルチャンバ91は、給気路95を介して正圧ポンプ96が接続され、光学系チャンバ92は、排気路97を介して負圧ポンプ98が接続されている。CPU101は、サーマルチャンバ91と光学系チャンバ92の圧力をそれぞれセンサ102で測定し、正圧ポンプ96及び負圧ポンプ98を適宜、駆動制御する。
【0086】
本実施形態の露光装置1によると、ギャップセンサ17(
図3参照)からの信号と、センサ102からの信号とを対応付けて、マスクMの撓みを補正できる圧力差を予め求めてCPU101に記憶しておき、これに基づいて負圧ポンプ98及び正圧ポンプ96を作動させて、サーマルチャンバ91内を加圧すると共に光学系チャンバ92内を減圧し、サーマルチャンバ91と光学系チャンバ92との間に圧力差を与えることによって、マスクMの撓みを補正することができる。
【0087】
本実施形態の露光装置1によれば、圧力差によってマスクMのたわみが補正されるので、大きなマスクMの撓みを全体的に補正するのに好適である。また、サーマルチャンバ91及び光学系チャンバ92には、不図示の温度調節装置を配設して、サーマルチャンバ91と光学系チャンバ92との室内温度差が最小となるように温度管理することが望ましい。これは、マスクMの上面側は、比較的大きな空間(光学系チャンバ92)内で気体の流動があるので、マスクMの上面が冷却され易いが、マスクMの下面側となるサーマルチャンバ91では気体の流動が少なく冷却され難いので、マスクMの上下面での温度差によるマスクMの熱変形(膨張・収縮)が、マスクMの平坦度に及ぼす影響を防止するためである。更に、熱源となる高圧水銀ランプ31は、透明板94により仕切られているので、高圧水銀ランプ31から発生した熱がマスクMや基板Wに伝導し難い利点を有し、高精度で露光転写を行うことができる。
【0088】
尚、上記実施形態において、例えば、あおり角調整機構は、併設することもできる。
また、上記実施形態では、マスク保持枠12をマスクステージベース側部材としたが、マスクステージの構成によっては、マスクステージベース11をマスクステージベース側部材としてもよく、固定マスクホルダ71、可動マスクホルダ72、リニアガイド73、シリンダ装置74、及びあおり角調整機構80は、マスクステージベース11の下面側に配置される。
【0089】
(第5実施形態)
以下、本発明に係る露光装置の第5実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態は、マスクステージの構成において第1実施形態と異なるものであり、第1実施形態と同一又は同等部分については、同一符号を付して説明を省略或いは簡略化する。
【0090】
本実施形態のマスクステージ10では、
図19、
図20及び
図22に示すように、マスク保持枠12の下面側には、開口12bの長辺側に配置される第1マスクホルダである一対の固定マスクホルダ171と、開口12bの短辺側に配置される第2マスクホルダである一対の可動マスクホルダ172と、マスク保持枠12と各可動マスクホルダ172との間に設けられる複数のリニアガイド(ガイド機構)73と、可動マスクホルダ172を開口12bの長辺に沿って移動させる駆動機構であるシリンダ装置74と、を備える。
【0091】
図20に示すように、マスク保持枠12の下面に間座などを介して固定された一対の固定マスクホルダ171の下面(基板W側)には、長手方向中央に形成されたメイン吸着溝171aと、このメイン吸着溝171aの左右に、メイン吸着溝171aから独立して形成されたサブ吸着溝171bとが、所定方向(X方向)に分割して設けられている。また、マスク保持枠12の下方に移動可能に配設される可動マスクホルダ172の下面には、長辺方向において2列に並ぶメイン吸着溝172a、サブ吸着溝172bが短辺方向の略全長に亘って形成されている。
【0092】
固定マスクホルダ171及び可動マスクホルダ172の各吸着溝171a、171b、172a、172bは、それぞれマスクMのマスクパターンが描かれていない周縁部を吸着するための溝であり、真空式吸着装置110に接続されて(
図21参照)、それぞれマスクMの4辺を吸着して着脱自在に保持する。即ち、固定マスクホルダ171は、所定方向(X方向)に沿って延びるマスクMの対向する2辺(長辺)を吸着保持し、可動マスクホルダ172は、所定方向と直交する方向(Y方向)に沿って延びるマスクMの対向する2辺(短辺)を吸着保持する。
【0093】
図21に示すように、固定マスクホルダ171及び可動マスクホルダ172のそれぞれのメイン吸着溝171a、172aは、配管111を介して真空式吸着装置110に接続されている。また、固定マスクホルダ171の各サブ吸着溝171bは、配管112及びオン/オフ切り替え可能な電磁弁113を介して真空式吸着装置110に接続され、可動マスクホルダ172の各サブ吸着溝172bは、配管114及びオン/オフ切り替え可能な電磁弁115を介して真空式吸着装置110に接続されている。電磁弁113,115としては、直動式やパイロット式のものが使用される。
【0094】
これにより、マスクMの吸着保持時には、固定マスクホルダ171及び可動マスクホルダ172のメイン吸着溝171a、172aに、配管111を介して常時、真空式吸着装置110を接続して真空を供給すると共に、電磁弁113、115の切り替えにより、固定マスクホルダ171及び可動マスクホルダ172の各サブ吸着溝171b、172bに選択的に真空を供給して、任意の吸着溝を作動状態にすることができる。ここで、マスクMのサイズやパターンのサイズは、多面取りする際に有効露光エリアに描画されているパターンの配置などによって若干(例えば、10〜20mm程度)異なることがあるが、固定マスクホルダ171及び可動マスクホルダ172は、このようなサイズの異なるマスクMに対応して吸着保持することができる。
【0095】
図20に示す実施例においては、電磁弁113がオン状態、電磁弁115がオフ状態に切り替えられており、固定マスクホルダ171のメイン吸着溝171a及びサブ吸着溝171bと、可動マスクホルダ172のメイン吸着溝172aが作動状態とされている。これにより、大きなサイズのマスクMが、メイン吸着溝171a、172a及びサブ吸着溝171bによって吸着保持されている。
【0096】
リニアガイド73は、
図19に示すように、マスク保持枠12の下面に取り付けられるガイドレール73aと、可動マスクホルダ172に取り付けられ、ガイドレール73aに案内されてX方向(開口12bの長辺方向)に移動可能なスライダ部材73bと、から構成されている。
【0097】
また、
図22に示すように、可動マスクホルダ172の駆動機構である一対のシリンダ装置74は、各可動マスクホルダ172に対応してその長手方向略中央、換言すれば、マスク保持枠12の短辺の略中央に配置されて、長手方向に延設されている。各シリンダ装置74は、シリンダ本体74aがマスク保持枠12の下面に固定され、ピストン74bが可動マスクホルダ172から上方に突出して設けられた突起部172cの支持軸75に回動自在に嵌合している。
【0098】
また、ピストン74bの作動方向前方におけるマスク保持枠12の下面には、ショックアブソーバ76を備えるストッパ77が固定されており、シリンダ装置74が作動してピストン74bが伸長したとき、ショックアブソーバ76を介して突起部172c(可動マスクホルダ172)をストッパ77に当接させて、衝撃を与えることなく可動マスクホルダ172を所定の位置で位置決めする。
【0099】
ストッパ77の位置は、大きなサイズのマスクMを取り付けるときの可動マスクホルダ172の位置を規制するものであり、シリンダ装置74のピストン74bがシリンダ本体74a内に引き込まれたときの可動マスクホルダ172の位置は、小さなサイズのマスクMを取り付けるときの可動マスクホルダ172の位置である。
【0100】
上記したように、固定マスクホルダ171、可動マスクホルダ172、リニアガイド73、及びシリンダ装置74は、マスク保持枠12に取り付けられているので、マスク保持枠12と共にマスクステージベース11に対してX軸,Y軸,θ方向に移動可能である。
【0101】
そして、シリンダ装置74を作動させて、大きなサイズのマスクMを取り付けるときには、一対の可動マスクホルダ172を同時に互いに離間する方向(外方)に移動させて間隔を広げ、小さなサイズのマスクMを取り付けるときには、一対の可動マスクホルダ172を同時に互いに接近する方向(内方)に移動させて間隔を狭めることにより、容易にサイズの異なる複数のマスクMに対応することができる。
【0102】
2ヶ所に位置決めが可能な本実施形態のシリンダ装置74によると、大小、2種類のサイズのマスクMに対応することができる。このとき、一対のシリンダ装置74を同時に作動させて、一対の可動マスクホルダ172を常に左右対称位置に位置させることにより、両可動マスクホルダ172の中央位置、即ち、マスクMの中心を移動させることなく、マスクMを交換することができる。
【0103】
図23は変形例の駆動装置の側面図であり、ショックアブソーバ76を備えるストッパ77が、例えば、電動アクチュエータ78によりピストン74bの移動方向に移動可能となっている。これにより、シリンダ装置74による可動マスクホルダ172の停止位置を、3ヶ所以上の複数位置に、更には任意位置に位置決めすることが可能となり、サイズの異なる3つ以上のマスクMに、或いはサイズの微小変化に対応することができる。
【0104】
また、駆動装置は、シリンダ装置74に代えて電気モータ(図示せず)で構成することもでき、電気モータによれば、複数の停止位置を任意の位置に設定することが容易であり、この停止位置で可動マスクホルダ172を停止させることができる。
【0105】
マスクMの素材であるガラス基板は、短辺側の2辺の長さが略同一で、長辺側の2辺の長さが異なる複数のガラス基板が使用され、このガラス基板上にマスクパターンが描画される。このため、所定サイズのガラス基板上に形成されるマスクパターンやパターンレイアウトによって、4辺の周縁部に残る非パターン領域、即ちマスクホルダ171、172による吸着可能領域の大きさが異なる。
【0106】
図20は、マスクサイズが大きく、短辺側の吸着可能領域が小さい(マスクパターンが大きい)マスクMを保持する場合の例であり、ピストン74bがストッパ77に当接するまで伸長し、一対の可動マスクホルダ172を広く離間させることにより、サブ吸着溝172bをマスクMの外方に位置させてパターン領域を広くしている。そして、電磁弁113をオン状態とし、電磁弁115をオフ状態としてサブ吸着溝172bによる吸着を休止する(
図21参照)。これにより、マスクMは、固定マスクホルダ171の吸着溝171a、171bと、可動マスクホルダ172のサブ吸着溝172bによって吸着保持される。
【0107】
図24は、マスクサイズが大きく、短辺側の吸着可能領域が大きいマスクMを保持する場合の例であり、ピストン74bを引込み一対の可動マスクホルダ172の間隔を狭くして、可動マスクホルダ172のメイン吸着溝172a、サブ吸着溝172bをマスクMの内側に位置させる。そして、電磁弁113、115を共にオン状態として、固定マスクホルダ171の吸着溝171a、171bと、可動マスクホルダ172の吸着溝172a、172bによってマスクMを吸着し、確実に保持する。この場合、マスクMの短辺側は、大きな吸着可能領域を有効に利用して2本の吸着溝172a、172bで吸着されるので、保持力が向上する。
【0108】
図25は、マスクサイズが小さく、短辺側の吸着可能領域が大きい場合の例であり、固定マスクホルダ171のサブ吸着溝171bがマスクMから外れるので、電磁弁83をオフ状態に切り換えてサブ吸着溝171bによる吸着を休止すると共に、電磁弁85をオン状態として、固定マスクホルダ171のメイン吸着溝171aと、可動マスクホルダ172のメイン吸着溝172a及びサブ吸着溝172bとによりマスクMを吸着保持する。この場合も、マスクMの短辺側は、2本の吸着溝172a、172bで吸着保持される。
【0109】
図26は、マスクサイズが小さく、短辺側の吸着可能領域が小さい場合の例であり、固定マスクホルダ171のサブ吸着溝171b、及び可動マスクホルダ172のサブ吸着溝172bがマスクMから外れるので、電磁弁113、115を共にオフ状態に切り換えて、サブ吸着溝171b、172bによる吸着を休止する。これにより、固定マスクホルダ171のメイン吸着溝171aと、可動マスクホルダ172のメイン吸着溝172aとによりマスクMを吸着保持して、小さなマスクMに対応する。
【0110】
以上のように構成された露光装置1では、マスクホルダを交換することなく、異なるサイズの複数のマスクに対応可能であり、更には、吸着可能領域の異なる複数のマスクに対応して、吸着可能領域を有効に利用して確実に吸着保持することができる。
【0111】
なお、第1、及び第2マスクホルダ171、172の各吸着溝171a、171b、172a、172bに接続される空圧回路は、上記実施形態のものに限定されるものでなく、
図27に示す変形例によって構成されてもよい。具体的に、各固定マスクホルダ171のメイン吸着溝171aは、オン/オフ切り替え可能な各電磁弁116に接続され、各可動マスクホルダ172のメイン吸着溝172aは、オン/オフ切り替え可能な各電磁弁117に接続される。そして、これらの各電磁弁116、117は、配管111を介して真空式吸着装置110に接続される。また、各固定マスクホルダ171のサブ吸着溝171bは、オン/オフ切り替え可能な各電磁弁113に接続され、各電磁弁113は、配管112を介して真空式吸着装置110に接続される。さらに、各可動マスクホルダ172のサブ吸着溝172bは、オン/オフ切り替え可能な各電磁弁115に接続され、各電磁弁115は、配管114を介して真空式吸着装置110に接続される。
【0112】
即ち、この変形例のように、空圧回路は、最大で、吸着溝の数に対応する数の電磁弁を設けるようにしてもよい。このように、吸着溝171a,171b,172a,172b毎に電磁弁113、115、116、117を1つずつ設けることで、各吸着溝171a,171b,172a,172bの流量の制御が容易になり、最適な吸着が可能となる。特に、各吸着溝171a,171b,172a,172bの負圧が等しくなるように各電磁弁113、115、116、117の負圧を1つずつ制御することで、マスクMを安定して吸着することができる。
【0113】
なお、第5実施形態のマスクステージを有する露光装置においても、
図18に示した、マスクMの撓みを補正可能な負圧補正機構90を採用することができる。また、マスクMの撓みの補正機構は、圧力差によって撓みを補正する負圧補正機構に限定されず、上記実施形態と同様、高さの異なる一対の間座など、マスクホルダの取付け角度を調整してマスクのおあり角を調整可能なあおり角調整機構であってもよい。さらに、負圧補正機構とあおり角調整機構とを併設することもできる。
【0114】
また、第5実施形態では、サイズの異なるマスクとして、短辺側の2辺の長さが略同一で、長辺側の2辺の長さが異なる大小のマスクを用いて説明したが、長辺側の2辺の長さが略同一で、短辺側の2辺の長さが異なるマスクでもあってもよい。
【0115】
(第6実施形態)
以下、本発明に係る露光装置の第6実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態は、マスクステージの構成において第1実施形態と異なるものであり、第1実施形態と同一又は同等部分については、同一符号を付して説明を省略或いは簡略化する。
【0116】
本実施形態のマスクステージでは、
図28に示すように、マスク保持枠12の下面には、マスクMを保持する一対のマスクホルダ14が間座15を介して固定されている。マスクホルダ14は、マスク保持枠12と共にマスクステージベース11に対してX軸,Y軸,θ方向に移動可能である。なお、マスクホルダ14は、2つに分割されておらず、矩形枠状に両端が接続された一体型マスクホルダであってもよい。
【0117】
図29に示すように、一対のマスクホルダ14の下面(基板W側)には、長手方向中央に形成されたメイン吸着溝14aと、このメイン吸着溝14aの左右に、メイン吸着溝14aから独立して形成された一対のサブ吸着溝14bとが設けられている。マスクホルダ14のメイン吸着溝14a、及びサブ吸着溝14bは、マスクMのマスクパターンが描かれていない長辺側の2辺の周縁部を吸着するための溝である。
【0118】
メイン吸着溝14a、及びサブ吸着溝14bは、それぞれオン/オフ切り替え可能な電磁弁113、115を介して真空式吸着装置110に接続される。具体的に、各メイン吸着溝14aは、オン/オフ切り替え可能な各電磁弁113に接続され、各電磁弁113は、配管111を介して真空式吸着装置110に接続される。また、各サブ吸着溝14bは、オン/オフ切り替え可能な各電磁弁115に接続され、各電磁弁115は、配管112を介して真空式吸着装置110に接続される。従って、適宜、電磁弁113,115を切り替えて、任意の吸着溝に供給する真空によってマスクMの2辺をそれぞれ吸着して着脱自在に保持する。電磁弁113,115としては、直動式やパイロット式のものが使用される。
【0119】
この空圧回路は、
図29に示すように、最大で、吸着溝の数に対応する数の電磁弁を設けるようにしている。このように、吸着溝14a,14b毎に電磁弁113、115を1つずつ設けることで、各吸着溝14a,14bの流量の制御が容易になり、最適な吸着が可能となる。特に、各吸着溝14a,14bの負圧が等しくなるように各電磁弁113、115の負圧を1つずつ制御することで、マスクMを安定して吸着することができる。なお、部品点数を考慮して、メイン吸着溝14aが電磁弁を設けずに配管111を介して真空式吸着装置110に接続され、複数のサブ吸着溝14bが共通の電磁弁115を設けて、配管112を介して真空式吸着装置110に接続されるようにしてもよい。
【0120】
ここで、マスクMのサイズは、多面取りする際に有効露光エリアに描画されるパターンの配置などによって若干(例えば、10〜20mm程度)異なることがあるが、マスクホルダ14は、このようなサイズ(長辺側の長さ)の異なるマスクMに対応して吸着保持することができる。具体的に、
図30(a)に示すように、メイン吸着溝14a、及びサブ吸着溝14bを同時に作動させることにより大きなサイズのマスクM
Lを吸着保持し、
図30(b)に示すように、メイン吸着溝14aだけを作動させることにより小さなサイズのマスクM
Sを吸着保持する。
【0121】
また、本実施形態の露光装置においても、
図18に示した、マスクMの撓みを補正可能な負圧補正機構90が採用されている。
【0122】
以上のように構成された露光装置1では、
図31(a)に示す長辺側の2辺が一対のマスクホルダ14によって吸着保持されているマスクMでは、X方向撓み量が一定となり(
図31(b)参照)、Y方向撓み量は、中央部が最も大きく、マスクMの長辺側周縁部に向かうに従って次第に小さくなる放物線状の撓みとなっている(
図31(c)参照)。換言すれば、マスクMの撓みは、2次元形状の比較的単純な撓み形状となっている。
【0123】
従って、2辺で吸着保持される本実施形態のマスクMの撓みは、4辺が保持されるマスクMの撓みと比較して、撓みの絶対値は大きくなるが、4辺保持の場合の複雑な3次元撓み(
図35参照)に対して、X方向撓み量が一定の単純な撓み形状となる。このため、(X方向撓みは補正不要)、負圧補正機構90によってマスクMの両面に圧力差を与えることで、Y方向撓みを容易に、且つ精度よく補正することができ、マスクMの平坦度を向上させる。これによって、マスクMの有効露光エリアにおけるマスクMと基板Wとのギャップをできるだけ均一化することができ、高い露光精度を得ることができる。
【0124】
また、サブ吸着溝14bの吸着を切り替えることで、
図31(a)に示す大きなサイズのマスクM
Lや
図31(b)に示す小さなサイズのマスクM
Sの両方を吸着保持することができ、長辺側のサイズの異なる複数のマスクMに対応することができる。さらに、マスクMの長辺側のサイズが異なっても、X方向撓み量が一定のままで、Y方向の撓み形状は変わらないので、負圧補正機構90を実質的に調整することなく、マスクMの交換に伴う各マスクMの撓み量を容易に補正することができる。
【0125】
(第7実施形態)
次に、あおり角調整機構を備える本発明の第7実施形態の露光装置について、マスクステージの縦断面図である
図32を参照して詳細に説明する。
【0126】
図32に示すように、マスク保持枠12には、開口12bの両長辺側の下面に、あおり角調整機構80を介して一対のマスクホルダ14が取り付けられている。
【0127】
あおり角調整機構80は、一対のマスクホルダ14の角度、即ち、あおり角を調整可能な機構であり、本実施形態では、互いに高さが異なる交換可能な一対の間座80a,80bが、マスク保持枠12とマスクホルダ14との間に配置されている。これにより、一対のマスクホルダ14を水平方向に対して傾斜させ、一対のマスクホルダ14によって両端が吸着保持されているマスクMに長手方向中心Cに対して左右対称にあおり角を付与し、マスクMの撓みが低減するように補正することができ、マスクMの平坦度を向上させる。よって、マスクMの有効露光エリアにおけるマスクMと基板Wとのギャップをできるだけ均一化することができる。
【0128】
このような露光装置1によっても、第6実施形態と同様、マスクMの長辺側のサイズが異なっても、X方向撓み量が一定のままで、Y方向の撓み形状は変わらないので、あおり角調整機構80を実質的に調整することなく、マスクMの交換に伴う各マスクMの撓み量を容易に補正することができる。
【0129】
なお、
図33に示すように、本実施形態のあおり角調整機構としては、
図9〜
図11に示すあおり角調整機構の変形例が適用されてもよい。
【0130】
尚、上記実施形態において、例えば、あおり角調整機構は、併設することもできる。
また、マスクは、短辺側の2辺の長さが略同一で、長辺側の2辺の長さが異なる大小のマスクとして説明したが、長辺側の2辺の長さが略同一で、短辺側の2辺の長さが異なるマスクでもよく、その場合、マスクホルダは、短辺方向に並ぶ複列の吸着溝を備えるように構成される。
【0131】
また、本実施形態では、マスク保持枠12をマスクステージベース側部材としたが、マスクステージの構成によっては、マスクステージベース11をマスクステージベース側部材としてもよく、その場合、マスクホルダ14、及びあおり角調整機構80は、マスクステージベース11の下面側に配置される。
【0132】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。また、本発明は、実施可能な範囲において、各実施形態を組み合わせて適用することができる。
【0133】
本発明の略矩形状のマスクとは、4つのマスクホルダ、或いは、一対のマスクホルダが吸着可能な4辺を有する構造であればよく、
図14や
図16に示すように、マスクは、隅部が隣り合う2辺を90°±1°で交差させたものに限らず、例えば、
図34(a)〜(c)に示すように、隅部が切欠かれているものも含む。
【0134】
本発明は、2010年6月17日出願の日本特許出願(特願2010−138505)、2010年6月17日出願の日本特許出願(特願2010−138506)、2010年6月23日出願の日本特許出願(特願2010−142856)、2011年5月31日出願の日本特許出願(特願2011−122231)、2011年5月31日出願の日本特許出願(特願2011−122232)、2011年5月31日出願の日本特許出願(特願2011−122233)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。