(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る遊技機用基板ケースの好ましい実施形態について、各図を参照して説明する。
遊技機には、パチンコ機、スロットマシン、アレンジボール、雀球など様々な機類があるが、本実施形態では、メダルを遊技媒体とするスロットマシンに本発明の遊技機用基板ケースを適用した場合について説明する。
【0012】
[スロットマシン]
図1に示すように、スロットマシン100は、複数のリール110a,110b,100cを回転させることによって遊技媒体であるメダルを獲得することができる回胴式遊技機を構成している。
スロットマシン100は、必要な機械、装置等を収納する正面側が開口した筐体100bと、筐体100bの正面側を開閉可能に覆う前扉100aとで構成されている。
前扉100aは、筐体100bにヒンジ等を介して開閉可能に取り付けられる扉体で、この前扉100aに各リール110の回転を始動させるスタートレバーや、回転している各リール110を停止させる3つの停止ボタンなどの複数の操作手段が設けられて、スロットマシン100の正面部を構成している。
【0013】
筐体100bの中央には、リール110a,110b,110cと、各リール110を回転可能に支持する図示しないモータ及び回転位置を検出するセンサ等が設けられている。
また、筐体100bの下部には、メダルの貯留・払出しを行うメダル払出装置120が設けられる。
筐体100bの上部には、所定のプリント基板が収容された基板ケース1が設けられている。
【0014】
基板ケース1は、本発明の遊技機用基板ケースの一例であり、上記の各操作手段からの信号に基づき、各リール110、メダル払出装置120などの各装置を制御することで、スロットマシン遊技の進行制御を行う、いわゆる主基板2が収容されている。
【0015】
このような構成からなるスロットマシン100は、主基板2により、以下のように制御されてスロットマシン遊技が進行する。
まず、遊技者によりメダルが投入され、スタートレバーが操作されると、主基板2は、各リール110を回転させる制御を行うとともに、ボーナスや小役等を抽せんする内部抽せんを行い、各停止ボタンが押下操作されたタイミングに基づき、抽せん結果に応じた図柄の組合せで停止するよう、回転している各リール110の停止制御を行う。
【0016】
また、主基板2は、各リール110に停止表示される図柄の組合せを判定し、所定の図柄の組合せのときには、メダル払出装置120に対して所定数のメダルを払い出させる制御を行う。
【0017】
このようなスロットマシン遊技の進行を制御する主基板2は、CPU(中央演算処理装置)、ROM及びRAMなどの記憶手段、I/OインターフェイスなどのIC部品、抵抗、コンデンサ、トランジスタなどの様々な電子部品が実装された部品実装面2aと、これらの部品のリード部を半田接合する半田面2bとからなるプリント基板で構成されている(
図2参照)。
主基板2は、例えば、ROMに記憶されているプログラムの内容を書替えたり、実装されている電子部品を異なる電子部品に取り替えたりすることで、スロットマシン100における遊技特性(例えば、出玉率)を容易に変更できるため、不正改造がなされる可能性の高い基板とされている。
【0018】
そこで、本実施形態の基板ケース1は、
図2及び
図5に示すように、主基板2を蓋ケース3と本体ケース4の間に挟んで収容するとともに、所定のかしめ構造30,40によって、開封不能に封止している。さらに、基板ケース1は、各ケース3,4に跨って貼付される封印シール7とカバー8とを備えている。そして、このカバー8は、シール貼付面310,410aを覆うのみならず、二つのケースを開封不能に封止する機能をも有している。
以下、本実施形態の基板ケース1の構成について、
図2〜
図13を参照しつつ説明する。
【0019】
[基板ケース]
基板ケース1は、各図に示すように、矩形状のケース構造を有し、主基板2の部品実装面2a側を覆う蓋ケース3と、半田面2b側を覆う本体ケース4を備えている。
本実施形態では、主基板2は蓋ケース3に所定のネジにより螺着されて収容されるようになっている(
図2参照)。
蓋ケース3と本体ケース4は、部品実装面2aと半田面2bを外部から視認可能、かつ、容易に破壊できないように、無色透明な工業用樹脂(例えば、ポリカーボネート)で形成されている。
また、基板ケース1は、蓋ケース3と本体ケース4とを開閉可能に支持するヒンジ1aを備えている。このヒンジ1aは、ケース閉状態において、蓋ケース3と本体ケース4とを軸止し、ヒンジ1a側からケースを開放することができないように構成してある。
なお、基板ケース1は、本体ケース4側が筐体100b奥に面するとともに、蓋ケース3側が筐体100bの正面側開口を向くように、すなわち、部品実装面2aが正面から見えるよう、筐体100bに配置されている。
【0020】
また、基板ケース1は、蓋ケース3と本体ケース4とを開封不能に封止するかしめ構造を備えている。
具体的には、かしめ構造は、
図2及び
図5に示すように、蓋ケース3に形成した蓋かしめ部30と、本体ケース4に形成した本体かしめ部40と、かしめピン5とで構成され、蓋ケース3と本体ケース4とを閉状態にして、かしめピン5を挿入口40aから挿入すると(
図2参照)、かしめピン5が各かしめ部30,40に亘って嵌入されるとともに、脱抜不能に取り付けられることで、蓋ケース3と本体ケース4とを開封不能に封止する(
図5参照)。
【0021】
また、基板ケース1は、蓋ケース3と本体ケース4とを開封不能に封印する封印シール7を備えている。
封印シール7は、本発明のシール部材の一例であり、
図5又は
図10(b)に示すように、固有のID情報を示すQRコード7aが表面に印刷されるともに、このID情報を記録したパッシブタイプのICタグ7bと、タグリーダからの電波を受信して、ICタグ7bを発電させるとともに、反射波にID情報を搬送してタグリーダに送信するアンテナ7cとが所定の接着剤が塗布された裏面に配設されている。
この封印シール7は、貼付された状態で剥がすと、アンテナ7cが破断され、タグリーダからの電波を受信不能、又はID情報を送信不能、すなわち、タグリーダがID情報を読み取り不能となるよう、破れ易い脆弱な紙材で形成されている。そこで、基板ケース1が開封されたときに、ID情報が読み取り不能な状態となるように、封印シール7を蓋ケース3と本体ケース4とに跨って貼付するシール貼付面を設けてある。
【0022】
シール貼付面は、蓋ケース3と本体ケース4に形成された蓋フランジ部31と本体フランジ部41とで構成される。
具体的には、蓋ケース3と本体ケース4には、それぞれそのケース外縁から収容された主基板2とほぼ平行に突出する蓋フランジ部31と本体フランジ部41とを形成してある。
本体フランジ部41は、ヒンジ部1a対辺側の外縁から突出する矩形状の凸部であり、その上面には、ケース閉状態において、蓋フランジ部31と重なる部位に対応する本体フランジ面410bと、蓋フランジ部31と重ならず、外部に露出される部位となる本体フランジ面410aとが形成されている。
蓋フランジ部31は、ヒンジ部1a対辺側の外縁から突出し、ケース閉状態において本体フランジ面410bを覆うように略コの字状に形成され、その上面には、ケース閉状態において本体フランジ面410aと面一となる蓋フランジ面310を形成してある。
そして、シール貼付面は、
図5に示すように、ケース閉状態にしたときの蓋フランジ面310と本体フランジ面410aとで構成される。
【0023】
このようにシール貼付面を構成することで、封印シール7が主基板2の視認性を阻害することもなく、また、封印シール7と主基板2がほぼ平行となるため、本実施形態では、前扉100a開放状態で、封印シール7が正面を向くことになり、封印シール7の剥離の有無を容易に確認できる。
また、シール貼付面は、ヒンジ部1aの対辺側に配置してある。これにより、基板ケース1を僅かに開放しただけでも、封印シール7に外力が加わって破れるため、開封の痕跡を確実に残すことができる。
【0024】
また、蓋フランジ部31と本体フランジ部41には、ケース閉状態にしたときに挿通するネジ穴311,411が形成され、
図5に示すように、このネジ穴311,411にネジ6を螺入することにより、蓋フランジ部31と本体フランジ部41を螺着させ、蓋ケース3と本体ケース4を封閉することができる(
図10(a)参照)。
さらに、このネジ穴311,411は、貼付される封印シール7のICタグ7bに対応する位置に設けてある(
図10(b)参照)。蓋ケース3と本体ケース4を開封するには、ネジ6を取り外す必要があるため、このICタグ7bの部分にドライバーを突き通さなければならない。これにより、ICタグ7bは破壊され、固有のID情報が読み取り不能となるため、開封の痕跡を確実に残すことができる。
【0025】
さらに、本実施形態の基板ケース1は、シール貼付面を覆うとともに、本体ケース4に脱離不能に取付けられるカバー8を備えている。
カバー8は、本発明のカバー部材の一例であり、透明な工業用樹脂材(例えば、ポリカーボネート)で形成され、貼付された封印シール7を視認可能、かつ、剥離不能に保護するように構成されている。本実施形態のカバー8について、
図6〜
図9を参照して以下に説明する。
【0026】
カバー8は、
図6(a)〜(c)に示すように、略L字状に形成され、本体ケース4に取り付けられると、その上面がケース閉状態にある蓋フランジ面310と本体フランジ面410aに対向することで、封印シール7を覆うようになっている(
図5、
図10(c)参照)。
【0027】
また、カバー8は、本体ケース4に係止される爪部83を備えている。
本体ケース4には、係止孔413と舌片414が形成され(
図7参照)、爪部83を係止孔413に挿入することで、カバー8が本体ケース4に脱離不能に係止されるようになっている。
具体的には、爪部83は、外爪83aと内爪83bとを備え、両側が鉤状に形成されたくさび状を有している。爪部83を係止孔413に挿入することで、
図9に示すように、外爪83aは、本体ケース4底面に係止され、内爪83bは、舌片414底面に係止される。
このように爪部83をくさび状に形成することで、爪部83の係止孔413への挿入・係止は、爪部83と舌片414が弾性変形することで可能となるが、係止された状態からは、爪部83と舌片414に外力を同時に加えて変形させない限り、脱抜不能とすることができる。
【0028】
ところが、
図8に示すように、本体フランジ部41の底面となる凹部41aは、爪部83と舌片414が露出した状態であり、これらに外力を加えることで爪部83の係止状態が解除されてしまう。そこで、同図に示すように、この凹部41aに、シールド手段の一例であるシールド板9を取り外し不能に固着(接着)することで、爪部83と舌片414を操作不能としてある(
図9参照)。これにより、爪部83と舌片414に外力を加えることができないため、カバー8は本体ケース4に脱離不能に係止される。
【0029】
このようにカバー8を本体ケース4に脱離不能に係止することで、カバー8は単に封印シール7を剥離不能に保護するのみならず、蓋ケース3と本体ケース4とを開封不能に封止するように作用する。
これは、カバー8が、蓋フランジ面310を覆う部分に対応する蓋フランジカバー部8aを有するからである(
図6(a)参照)。すなわち、蓋フランジカバー部8aは、蓋フランジ面310を覆うことから、カバー8が本体ケース4に脱離不能に係止されると、蓋フランジカバー部8aが蓋フランジ31の可動を制限し、蓋ケース3の開放を阻止するように作用する。
このように、蓋フランジ面310と本体フランジ面410aとでシール貼付面を形成し、カバー8がこのシール貼付面を覆うとともに、本体ケース4に脱離不能に係止されることで、カバー8が封印シール7を剥離不能に保護するだけでなく、蓋ケース3と本体ケース4とを開封不能に封止し、かしめ構造30,40と同様な効果を奏するようになっている。
【0030】
さらに、カバー8は、
図6(a)に示すように、蓋フランジ面310を覆う部分に対応する蓋フランジカバー部8aと、本体ケース4に脱離不能に係止される部分に対応する脱離不能部8bとをラインBを境界に分けて配置してある。
このように配置することにより、ラインBに沿ってカバー8を分断して、蓋フランジカバー部8aを脱離不能部8bから取り外すと、この蓋フランジカバー部8aによって覆われた蓋フランジ31を外部に露出させることができる(
図12参照)。これにより、封印シール7を剥離し、ネジ6を取り外すことで、基板ケース1を開放させることもできる。
そして、この場合でも、脱離不能部8bは本体ケース4に脱離不能に係止されているため、開封の痕跡を明確に残すことができる。
【0031】
さらに、脱離不能部8bには、
図6(c)に示すように、貼付された封印シール7を上方から押圧するシール押さえ部84を形成してある。
シール押さえ部84は、シール貼付面の一部である本体フランジ面410aを覆う部分に設けられ、本体フランジ面410aに向かって突出して、封印シール7を上方から押圧する。
これにより、蓋フランジカバー部8aが取り外され、蓋フランジ31が外部に露出された状態では、封印シール7を剥がすことができるものの、封印シール7はシール押さえ部84と本体フランジ面410aとに狭持されているため、封印シール7は、狭持されている部分を残存させたまま、剥がされることになる。これにより、封印シール7が剥がされた痕跡を明確に残すことができる。
【0032】
また、カバー8には、カバー8を蓋フランジカバー部8aと脱離不能部8bとに容易に分断可能なよう、凸部81と孔82とをラインBに沿って設けてある。
凸部81は、カバー8上面から上方に突出するように形成され、その内部に溝81aを設けてある。
これにより、カッターやニッパーなどの刃物をカバー8上面と平行にスライドして凸部81を剪截すると、凸部81は孔となり、さらに、この孔と、孔82とを繋げるように剪截すると、カバー8をラインBに沿って分断することができる。これにより、主基板2に対する不正改造の有無を確認するときなど、基板ケース1を合法的に開封するときの作業性を向上させることができる。
【0033】
以上のように構成されたカバー8の基板ケース1への取り付けと、カバー8が分断される動作について、
図10〜
図13を参照しつつ説明する。
まず、主基板2を蓋ケース3に取り付けて、蓋ケース3と本体ケース4を、ヒンジ1aを介して閉状態にすると、
図10(a)に示すように、蓋フランジ面310と本体フランジ面410aとで面一のシール貼付面が形成される。さらに、ネジ穴311,411にネジ6を螺入し、蓋フランジ部31と本体フランジ部41とを螺着する。そして、このシール貼付面に、
図10(b)に示すように、封印シール7を貼り付ける。
【0034】
蓋フランジ面310の両端には、上方に突出するリブ状のシール囲い312を設けてある。このシール囲い312は、封印シール7の厚みより高く形成され、封印シール7を貼り付ける際のガイドリブとして機能するとともに、封印シール7とシール貼付面の間に、刃物(カッターなど)の挿入を阻止する機能をも有している。
なお、
図13に示すように、蓋フランジ面310のみならず、本体フランジ面410aにもシール囲い412を設けるとともに、シール囲い312,412を、蓋フランジ面310と本体フランジ面410aの全周に亘って設けることもできる。これにより、刃物(カッターなど)の挿入を全周から阻止することができる。
さらに、同図に示すように、二液を混合させると硬化するウレタン樹脂系接着剤からなるウレタン材10をシール囲い312,412内に充填させて、貼付した封印シール7をウレタン材10でコーティングすることもできる。
これにより、封印シール7が、ウレタン材10で全て覆われるとともに、シール貼付面から剥離不能となるため、封印シール7をさらに強固に保護することができる。
また、さらに、この場合において、カバー8と封印シール7との間にウレタン材10を充填させて、カバー8をシール貼付面に接着してもよい。
【0035】
そして、爪部83を係止孔413に挿入することで、
図10(c)に示すように、カバー8を本体ケース4に取り付けることができる。これにより、カバー8が本体ケース4に脱離不能に係止され、封印シール7を剥離不能に覆うことができる。
凸部81と孔82は、この状態においてQRコード7aの視認性を確保するように、配置されている。
【0036】
カバー8の分断は、以下のように行う。
まず、カッターやニッパーなどの刃物をカバー8上面と平行にスライドして、凸部81を剪截する。これにより、凸部81の内側には、溝81aが形成されているため、凸部81は、
図11(a)に示すように、孔となる。さらに、この孔と、孔82とを繋げるように剪截すると、
図11(b)に示すように、カバー8をラインBに沿って分断することができる。
【0037】
この状態で、蓋フランジカバー部8aを取り外すと、
図12(a)に示すように、蓋フランジ面310に対応した部分の封印シール7を外部に露出させることができる。
封印シール7は、シール囲い312による刃物の挿入の阻止と、シール押さえ部84による狭持とにより、剥離不能となっているため、蓋フランジ面310と本体フランジ面410aとの間に対応する切断ライン7dに沿って、刃物を挿入して封印シール7を切断する。
さらに、ドライバーで、封印シール7のネジ穴311に対応する部分を突き通すとともに、ネジ6を取り外すことで、蓋フランジ部31と本体フランジ部41との螺着を解き、基板ケース1を開封することができる。このとき、ICタグ7bは、ネジ穴311に対応する部分に配置されているため、ドライバーにより確実に破壊され、タグリーダにより読み取り不能な状態となる。
このように、基板ケース1を開封するためには、カバー8の破壊のみならず、封印シール7の切断とICタグ7bの破壊が伴うことから、開封の痕跡が確実に残るようになっている。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る基板ケース1によれば、封印シール7を剥離不能に保護するとともに、開封されたときには、その痕跡を確実に残すことで、不正改造に対するセキュリティを向上させることができる。
【0039】
以上、本発明の遊技機用基板ケースについて、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係る遊技機用基板ケースは、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0040】
例えば、本実施形態では、基板ケース1に収容するプリント基板を主基板としたが、スピーカやランプ等を制御する演出用の基板であるサブ基板や、その他の基板を収容することもできる。
また、本実施形態では、貼付した封印シール7をコーティングするコーティング材をウレタン材10(ウレタン樹脂系接着剤)としたが、アクリル樹脂系接着剤や、エポシキ樹脂系接着剤などの合成系接着剤を用いることもできる。
また、本実施形態では、プリント基板(主基板2)を蓋ケース3に固定したが、本体ケース4に固定することもできる。