(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816963
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】流量調節装置
(51)【国際特許分類】
F16K 1/42 20060101AFI20151029BHJP
F16K 1/00 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
F16K1/42 G
F16K1/00 E
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-34735(P2012-34735)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-170622(P2013-170622A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2013年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【弁理士】
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】古川 真也
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−198729(JP,A)
【文献】
特開2011−047483(JP,A)
【文献】
特開2002−340219(JP,A)
【文献】
特開2009−144893(JP,A)
【文献】
特開2006−266667(JP,A)
【文献】
特表2001−525302(JP,A)
【文献】
特公昭48−019135(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00;31/00−31/11;47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のハウジングの内部空間に開口し、この内部空間内の水が流出する流出路と、この流出路の開口に向かって内部空間側から前進する進退自在の弁体とを備え、弁体を流出路の開口に近づけることによって水の通路となる開口の周縁と弁体との間の隙間の距離を狭め、流出路から流出される水の流量を絞る流量調節装置において、上記弁体の外径は流出路の内径よりも小さく形成されており、上記弁体が開弁し、弁体を囲繞する上記隙間のすべての部分に水が流れている状態で、上記隙間の内の周方向における1個所の流量が他の部分での流量より多くなるように流路面積に偏りを持たせて、水が上記隙間全体を流れている状態で弁体が振動しないようにしたことを特徴とする流量調節装置。
【請求項2】
上記流出路の開口の周縁の内、流量が他の部分より多くなる上記1個所に相当する位置に、流出路の内周面に水の流れ方向に沿って溝を形成することにより、この1個所での流量が他の部分での流量より多くなるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の流量調節装置。
【請求項3】
上記ハウジングの内部空間に開口し内部空間内に水を流入させる流入路を、弁体の進退方向に対して垂直方向から水が流入するように形成し、流量が他の部分より多くなる上記1個所に相当する位置を、流入路の開口が形成された位相に一致させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流量調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置等に組み込まれ、モータによって進退される弁体を水が流れる通路に対して進退して、水の通路面積を増減することにより水の流量を調節する流量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の流量調節装置としては、中空のハウジング内にモータによって進退する弁体を設け、このハウジングの内部空間内の水が流出する水の通路である流出路に対して弁体を進退させ、ハウジング内から流出路を通って流出する水の流量を増減調節するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ハウジングにはこのほか、ハウジングの内部空間内に水を流入させる流入路が設けられている。
【0003】
上記流出路は円筒状に形成されており、上記内部空間に対する流出路の開口は円形である。一方、弁体は円柱状に形成されており、上記特許文献1に記載のものでは、弁体の直径は流出路の直径より小径に設定され、弁体を開口に近づけていくと弁体が流出路内に挿入されるように形成されている。
【0004】
弁体が流出路の開口から十分に離れている状態では、水は流出路全域を通ってハウジングから流出するので、流動抵抗が小さく、大流量の水が流出する。その状態から弁体を流出路の開口に向かって徐々に近づけていくと、流路である開口の周縁と弁体との間の隙間の間隔が狭められるので流量が少なくなっていく。
【0005】
弁体が更に流出路の開口に近づくと、流路である隙間が狭くなり、この隙間を通過する水の流速が速くなる。この状態では隙間を流れる流速は早いものの流路面積が狭いため全体としての流量は少なくなる。なお、上述のように、流出路の開口および弁体の形状は共に円形であるため、このように絞られた状態で水が通過する隙間は環状となり、隙間の間隔は全方向に対して同じ長さとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−234015号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の流量調節装置では、弁体を流出路の開口に近づけて流量を絞った状態では、水は環状の隙間を通って流れる。その状態で弁体の下流に生じるカルマン渦や外部からの振動によって弁体が振れると、環状の隙間の間隔が全方向に対して一定ではなくなり、隙間の間隔が広い部分と、その広い部分の反対位置に間隔が狭い部分が生じる。間隔が拡がった部分は流動抵抗が減少して流速が速まるが、間隔が狭まった部分では逆に流動抵抗が増加することによって流速が遅くなる。
【0008】
流速が速くなると圧力が下がるので、弁体はその圧力が下がった部分に吸い寄せられる。すると、弁体が吸い寄せられることによって隙間の間隔が狭められ、流速が遅くなって圧力が高くなる。一方、それに対称な反対位置は逆に隙間の間隔が拡がることによって流速が増し、圧力が低下する。
【0009】
このように、弁体を流出路の開口に近づけて流路となる隙間での流速が速い状態で弁体に何らかの振動が作用すると、弁体は振動し続け、その振動によって外部へと騒音を発生することになる。そしてこの振動は弁体を保持している構造の固有振動数に共振すると大きな振幅となって振動し続け、弁体を流出路の開口から離して隙間の間隔を広くするまで収束することがない。
【0010】
また、弁体を流出路の開口に近づけて全体の流量を絞った状態では、水は狭い隙間を通り、隙間を通過した後、急激に流路面積が拡がるため、キャビテーションが発生する場合がある。このキャビテーションが発生すると、いわゆる「シャー」音が発生して、外部に騒音として伝達される。
【0011】
このように、流量を絞った状態では弁体の振動やキャビテーションにより発生するシャー音が外部に騒音となって伝達されるため、流量調節装置が組み込まれている製品に対するクレームの原因となるばかりか、流量調節装置の耐久性上も望ましくない。
【0012】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、流量を絞った状態でも騒音が発生しない流量調節装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明による流量調節装置は、中空のハウジングの内部空間に開口し、この内部空間内の水が流出する流出路と、この流出路の開口に向かって内部空間側から前進する進退自在の弁体とを備え、弁体を流出路の開口に近づけることによって水の通路となる開口の周縁と弁体との間の隙間の距離を狭め、流出路から流出される水の流量を絞る流量調節装置において、
上記弁体の外径は流出路の内径よりも小さく形成されており、上記弁体が開弁し、弁体を囲繞する上記隙間のすべての部分に水が流れている状態で、上記隙間の内の周方向における
1個所の流量が他の部分での流量より多くなるように流路面積に偏りを持たせて、水が上記隙間全体を流れている状態で弁体が振動しないようにしたことを特徴とする。
【0014】
上述のように、弁体と流出路の開口との隙間の間隔が全方向に対して一定であると、流量を絞った状態で弁体の位置が少しでもずれると弁体の回りの圧力バランスが崩れて弁体の振動の原因となる。そこで、上記構成のように、隙間の
1個所の流量を他の流量より多くなるように予め設定しておけば、弁体が多少移動しても、
この1個所の流量が他の部分の流量より多いという関係が崩れない。そのため、弁体の回りの圧力バランスの崩れが生じにくく、弁体の振動の発生を防止できる。
【0015】
1個所の流量を他の部分の流量より多くするため、例えば、上記流出路の開口の周縁の内
、流量が他の部分より多くなる上記1個所に相当する位置
に、流出路の内周面
に水の流れ方向に沿って
溝を形成することにより、この
1個所での流量が他の部分での流量より多くなるようにすることが考えられる。
【0016】
また、上記ハウジングの内部空間に開口し内部空間内に水を流入させる流入路を、弁体の進退方向に対して垂直方向から水が流入するように形成し
、流量が他の部分より多くなる
上記1個所に相当する位置を、流入路の開口が形成された位相に一致させれば、流入路の開口からハウジング内に流入した水が弁体を回り込むことなく最短距離で、流量が多くなるように設定されている
上記1個所へと流れることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明は、弁体を流出路の開口に近づけて流路となる隙間を形成した状態で弁体が振動しないので、弁体の振動による騒音が発生しない。また、上記一部での流量が大きく設定したことにより、隙間を通過して弁体の下流へと流れる際の圧力変化を小さくできるので、キャビテーションの発生を抑制することができ、その結果、キャビテーションに起因する騒音も合わせて低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、1は本発明による流量調節装置の一例であり、本実施の形態では給湯装置に組み込まれている。この流量調節装置1は内部空間11aを有する中空のハウジング11を備えており、このハウジング11の内部空間11aに連通し、内部空間11a内へ水が流入する流入路12と、内部空間11aに対して開いた開口13aから内部空間11aの水が流出する流出路13とが設けられている。流入路12には流量計Fが内蔵されており、内部空間11a内を通過し、開口13aから流出路13を経て流出する水量をこの流量計Fで検知することができる。流出路13から流出した水は熱交換器Hに供給され、図外のガスバーナによって加熱され温水となって各所に給湯される。
【0020】
ハウジング11内には流出路13から流出する水量を調節するための弁体2が設けられている。この弁体2はモータ3の回転軸に取り付けられたウォーム31が正逆回転することによって、図において左右方向に進退するものである。図において弁体2が右側に後退している状態では、内部空間11a内の水は開口13aの開口全域を通って流出するので、流路面積が広く流動抵抗が小さいため最大流量状態となる。その状態から弁体2を左方向に前進させると、弁体2は徐々に開口13aに近づいていくことになる。すると、開口13aの全域を抵抗なく水が通過していた状態から、開口13aと弁体との隙間4しか流れることができなくなり、流出路13から流出する流量は徐々に減少することになる。
【0021】
弁体2の外径は流出路13の内径よりも小さく形成されており、そのため、開口13aの周縁と弁体2の先端部周縁との距離が最小になる位置まで弁体2を左に移動させた状態が最小流量状態となる。そして、その状態では隙間4の間隔は最小となり、その狭い隙間4を通って水が流出することになる。従来の流量調節装置ではこの隙間4は半径方向の間隔は全方向に対して一定であったが、本実施の形態では、流出路13の内周面の
1個所に、開口13aから流出路13の内周面に至る溝13bを水の流出方向に沿った設けた。
【0022】
上述の最小絞り状態では隙間4の間隔が狭いため流動抵抗が大きい。そのため、大半の水は流動抵抗が小さい溝13bを流れる。このため、例えば
図2において弁体2が上下方向に振動した場合、弁体2の上部における圧力と溝13bが形成されている下部における圧力とのバランスはほとんど崩れることがなく、継続した振動が発生しない。また、弁体2が左右方向に振動した場合には、隙間4を流れる流速が遅いため、弁体2の左右部分での圧力バランスが崩れたとしても弁体2を継続して振動させるだけの力が発生せず、弁体2は左右方向に振動を継続することはない。
【0023】
また、上述のように、最小絞り状態では水はほとんど溝13bを流れるので、隙間4を通過し、通過した直後に圧力が開放される際の圧力変化が小さくなるので、キャビテーションの発生も同時に防止することができる。
【0024】
ところで、
図2に示すように、流入路12を、溝13bを設けた位相に一致するように形成した。このように両者の位相を一致させることにより、流入路12から流入した水は弁体2を回り込むことなく最短距離で溝13bに向かって流れることができるので、流動抵抗を減少させることができる。
【0025】
上記実施の形態では、溝13bを流出路13の上流端である開口13aから下流にかけての全域にわたって形成したが、流出路13の下流方向後半部分には形成しないようにしてもよい。また、溝13bを流出路13の内周面に形成したが、弁体2の外周面側に形成してもよい。
【0026】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0027】
1 流量調節装置
11 ハウジング
12 流入路
13 流出路
13a 開口
13b 溝
2 弁体
4 隙間