特許第5817059号(P5817059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5817059
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】UVインクの印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/26 20060101AFI20151029BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   B05D1/26 Z
   B05D7/24 301T
   B05D7/24 301M
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-194186(P2011-194186)
(22)【出願日】2011年9月6日
(65)【公開番号】特開2013-52378(P2013-52378A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2014年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100077621
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100146075
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100092819
【弁理士】
【氏名又は名称】堀米 和春
(74)【代理人】
【識別番号】100141634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 善博
(74)【代理人】
【識別番号】100141461
【弁理士】
【氏名又は名称】傳田 正彦
(72)【発明者】
【氏名】古旗 朝隆
(72)【発明者】
【氏名】大川 将勝
(72)【発明者】
【氏名】日置 渉
【審査官】 中尾 奈穂子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−085925(JP,A)
【文献】 特開2004−358464(JP,A)
【文献】 特開2005−043749(JP,A)
【文献】 特開2003−270403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00− 7/26
B32B 1/00−43/00
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に、粘着性を有するプライマーを、インクジェット記録装置によって印刷してプライマー層を形成し、
前記形成されたプライマー層に、硬化時に表面硬度が鉛筆硬度Hよりも硬いUVインクを、インクジェット記録装置によって印刷してUVインク被膜を形成する印刷方法であって、
UV硬化性を有し且つ耐溶剤性を有しない糊材を含むプライマーをインクジェット記録装置により印刷してプライマー層を形成するステップと、
前記プライマー層にUV照射して、粘着力を残したまま硬化するステップと、
前記プライマー層の上面にUVインクをインクジェット記録装置により印刷するステップと、
前記印刷されたUVインクにUV照射して、硬化するステップと、
を有し、
前記UVインクはモノマーを含んでおり、前記耐溶剤性を有しない糊材を含むプライマー層の上面に吐出されることにより、前記UVインクと前記プライマー層との間で溶融接着が行われることを特徴とするUVインクの印刷方法。
【請求項2】
前記UVインク被膜は、前記プライマー層の形成範囲よりも広範囲に形成されていることを特徴とする請求項1記載のUVインクの印刷方法。
【請求項3】
前記インクジェット記録装置によるプライマー層の印刷は、
全打ち込み面積に対する比率が20%〜50%であることを特徴とする請求項2記載のUVインクの印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線が照射されることで硬化するUVインクを固定するUVインクの印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線が照射されることにより硬化するUV(Ultra Violet)インクが様々な用途に用いられている。
例えば、特許文献1においては、UVインクをインクジェットプリンタで使用した印刷方法が開示されている。この特許文献1によれば、インク非吸収性のメディアにUVインクを印刷する場合、プライマーを介して印刷することが記載されている。
特許文献1記載の技術では、プライマーを用いることで、UVインク滴の濡れ性を一定にすることができるので、着弾されたUVインク滴の直径を安定化させることができ、印字品質の向上を図ることができる。
【0003】
また、特許文献2にも、プライマーを介してUVインクをインクジェットプリンタで印刷する方法が開示されている。
特許文献2では、プライマー処理したメディアに対してインクジェットプリンタで印刷を施すことが開示され、そしてメディアをプライマー処理することによって、様々な材質のメディアに対してUVインクを均質に付着させることができるとの技術思想が記載されている。また、プライマー層の厚さを調整することによって、基材表面のウェット性を確保し、またUVインクの付着性も向上できるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−7577号公報
【特許文献2】特開2004−532144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1及び特許文献2には、ともにUVインクをメディアに印刷する際に、プライマーを介して行うことが開示されている。ただし、これらの文献の中には、トップコート性のある、いわゆる表面硬度が高いUVインクを用いて印刷を行うことについては何ら記載がされていない。
【0006】
本発明者等は、表面硬度が高い(鉛筆硬度でH以上)のUVインクをメディア(以下、基材と称することもある)に付着させるために鋭意研究を行ったが、UVインクの硬化時に、硬化収縮や温度変化等を原因とするUVインクの割れや、基材からのUVインクの剥離が生じるという問題を見いだした。
【0007】
このようなUVインクの割れや剥離については、UVインク被膜と基材との間でUVインクが収縮した際に、その収縮に追従できるようなプライマー層を設けることで解決できるのではないかということを検討した。
しかし、単に柔らかいプライマーを用いただけでは、プライマーの性質によってはUVインクとの間の密着性が得られずに剥離が生じたり、UVインク被膜に割れが生じてしまうといった課題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、表面硬度の高いUVインクであっても、UVインク被膜の割れや剥離を生じさせない印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるUVインクの印刷方法によれば、基材に、粘着性を有するプライマーを、インクジェット記録装置によって印刷してプライマー層を形成し、前記形成されたプライマー層に、硬化時に表面硬度が鉛筆硬度Hよりも硬いUVインクを、インクジェット記録装置によって印刷してUVインク被膜を形成する印刷方法であって、UV硬化性を有し且つ耐溶剤性を有しない糊材を含むプライマーをインクジェット記録装置により印刷してプライマー層を形成するステップと、前記プライマー層にUV照射して、粘着力を残したまま硬化するステップと、前記プライマー層の上面にUVインクをインクジェット記録装置により印刷するステップと、前記印刷されたUVインクにUV照射して、硬化するステップと、を有し、前記UVインクはモノマーを含んでおり、前記耐溶剤性を有しない糊材を含むプライマー層の上面に吐出されることにより、前記UVインクと前記プライマー層との間で溶融接着が行われることを特徴としている。
この方法によれば、表面硬度が硬いUVインクを用いて印刷をする際に、粘着性を有するプライマー層によって、UVインク被膜の硬化収縮に基づくUVインク被膜の割れや剥離を防止することができる。また、プライマー層の印刷とUVインクの印刷とを、共にインクジェット記録装置によって行うことによって、粘着性を有するプライマーを印刷する場合であっても、すぐにUVインクによってプライマー層の上に被覆がなされる。このため、粘着性を有するプライマー層が露出したまま他の部材に接着してしまうことを防止できる。
また、この方法では、プライマー層として粘着性を有しているものを採用することにより、UVインクの硬化収縮に対応できる接着性を確保できる。一方で、プライマー層が厚い場合においては、室温の変化によってプライマー層の容積変化がUVインク被膜の容積変化よりも大きくなり、界面で発生する歪みによってUVインク被膜に割れが生じてしまうが、本発明者等は鋭意研究の結果、プライマー層の厚さを抑えることにより、すなわちプライマー層の容積を減らすことで界面に発生する歪みを少なくしてUVインク被膜に発生する割れを抑制できるということに想到した。そして、UVインク被膜の硬化収縮に対応できるような接着性を有し、UVインク被膜に発生する割れを抑制できる程度の厚さにプライマー層を設定することができれば、UVインク被膜の硬化収縮に対応して剥離の防止と、UVインク被膜に発生する割れの抑制とを両立できる。
【0010】
また、本発明にかかるUVインクの印刷方法において、前記UVインク被膜は、前記プライマー層の形成範囲よりも広範囲に形成されていることが好ましい。
これによれば、粘着性を有するプライマー層をUVインク被膜で完全にコーティングすることとなる。このため、粘着性を有するプライマー層が露出し、他の箇所に接着してしまうことを防止することができる。
【0011】
また、本発明にかかるUVインクの印刷方法において、前記インクジェット記録装置によるプライマー層の印刷は、全打ち込み面積に対する比率が20%〜50%であることが好ましい。
すなわち、プライマー層のインクジェット記録装置による打ち込みが全打ち込み面積に対して20%より小さい場合には、良好な接着性が得られず、また50%よりも大きい場合には割れが生じてしまうため、このような範囲でプライマーを基材に着弾させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のUVインクの印刷方法によれば、表面硬度の高いUVインクであっても、UVインク被膜の剥離及び割れを生じさせないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1Vインク固定構造の概略断面図である。
図2】インクジェット記録装置の概略構成図である。
図3】本発明にかかるUVインクの印刷方法を説明するフローチャートである。
図4】プライマーの吐出量について説明する説明図である。
図5】プライマーの吐出量と、UVインクの剥離及び割れの発生との関係について示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、UVインクの固定構造の一例を示している。
本実施形態のUVインク固定構造10では、基材11に、プライマー層12を設け、そのプライマー層12の上にUVインク被膜16が形成された構造となっている。また、プライマー層12は、UVインク被膜16によって完全に覆われており、露出しないように設けられている。
【0015】
基材11としては、特に何らかの材料に限定するものではない。例えば、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、アクリル樹脂などの合成樹脂を採用することができる。アクリル樹脂としては、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)がある。
合成樹脂の他には、例えばステンレス、アルミニウム、黄銅、真鍮等の金属を挙げることができる。さらには、無機物である、セラミック、陶器、ガラス等も採用することができる。
【0016】
UVインク被膜16を構成するUVインクとしては、紫外線が照射されることによって重合反応を起こし硬化するタイプのインクである。
さらに詳細に説明すると、UVインクの成分としては、光重合性のオリゴマー、モノマー、触媒としての光重合開始剤、顔料、その他消泡剤等の補助剤とを含んでおり、紫外線が照射されることで、光重合開始剤がラジカルを発生し、このラジカルがオリゴマーの重合を開始させる。このような重合反応によってUVインクは樹脂状となり印刷された状態として対象物に定着する。なお、光重合開始剤としては、様々な種類が存在しているが、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、アシルフォスフィンオキサイド系等が一般的に用いられている。
【0017】
本実施形態で用いられているUVインクとしては、硬化時の表面硬度が高いものを採用している。ここで表面硬度が高いとは、鉛筆硬度H以上のものである。
例えば、出願人の製造するUVインクにおいて、LF140(商品名)はプライマーを用いずに硬化した場合には鉛筆硬度3Hであり、プライマー層を基材との間に設けた場合には鉛筆硬度Hとなる。また、LH100(商品名)においては、プライマーを用いずに硬化した場合には鉛筆硬度6Hであり、プライマー層を基材との間に設けた場合には鉛筆硬度3Hとなる。
【0018】
なお、本発明のプライマー層12には、粘着性を有するプライマーが用いられている。
プライマーとしては、基材11とUVインク被膜16を接合させるための性質があればどのようなものであってもよい。
ただし、本実施形態としては、UV硬化性を有する糊材を採用することにより、粘着力を確保することができる。またUV硬化性を有することにより、インクジェット記録装置によってこのプライマーを吐出させ、硬化させることができる。
さらに、プライマーとしては、耐溶剤性が無いことが好ましい。耐溶剤性が無いことにより、プライマー層12の上面に吐出されたUVインクとの間での溶融接着が行われ、接着能力を高めることができるためである。
【0019】
上述してきたように、粘着性を有するプライマー層12を構成することによって、UVインクの硬化収縮に対応して、プライマー層12が収縮でき、プライマー層12とUVインク被膜16との間の密着性も確保できる。
なお、プライマー層12が薄いと、接着性が悪くUVインク被膜16の剥離が生じるが、プライマー層12が厚いとUVインク被膜の温度変化に伴う容積変化よりも、プライマーの温度変化に伴う容積変化の方が大きくなってしまい、このためUVインク被膜に割れが生じる。このため、粘着性を有するプライマー層12の厚さの調整を行うことで、UVインク被膜16の剥離及び割れの抑制の両立を図ることができる。
【0020】
続いて、図2にUVインクを印刷する装置としてのインクジェット記録装置の概略構成を示す。
本実施形態の印刷方法では、インクジェット記録装置30によって、プライマー及びUVインクを基材11に対して印刷する。
インクジェット記録装置30は、プラテン36の上に配置された基材11に、インクジェットにより印刷を施す装置である。UVインクは、各色毎の複数の吐出ノズルを有して走査方向に往復動する記録ヘッド32から吐出される。また、プライマーも記録ヘッド32から吐出される。
【0021】
インクジェット記録装置30には、UV硬化用の光源35がキャリッジに搭載されている。光源35は、紫外線を照射する照射手段であって、例えばLED(Light Emitting Diode)を採用することができる。LEDを採用することで、熱の発生を抑え、省エネにも寄与できる。
ただし、光源35としてはLEDだけでなく、メタルハライドランプ(metal halide lamp)を採用することもできる。メタルハライドランプとは、ハロゲン化金属を水銀と共に封入したランプであって、紫外線硬化用のメタルハライドランプとしては、例えば250nmから450nmの範囲で連続して紫外線を出力することができる。
さらに、光源35としては、高圧水銀ランプを採用してもよい。
【0022】
次に、図3に基づいて本実施形態の、インクジェット記録装置による印刷方法について説明する。
まず、プラテン36上面に配置された基材11に、プライマーを記録ヘッド32から吐出して印刷を施す(ステップS1)。なお、プライマー印刷時におけるプライマーの塗布量は、塗布対象の基材11の全打ち込み面積に対する比率を20%〜50%とする。
図4に、プライマーの塗布量制御の概念図について示すが、ここでは格子の交点部分がプライマーの打ち込み想定箇所であるとする。全打ち込み面積に対して100%の塗布量ということであれば、格子の交点部分全てにプライマーを打ち込み、着弾させる。ここでの例として、プライマーの塗布量を全打ち込み面積の30%とする場合には、格子の全交点部分の30%にあたる交点部分にプライマーを打ち込み、着弾させている。
【0023】
なお、本実施形態におけるインクジェット記録装置30では、印刷対象に構成されるプライマー又はインクの1ドットは3ショットで構成されるように制御されている。すなわち、記録ヘッド32から3回同一位置にプライマー又はインクを吐出し、3回吐出されたプライマー又はインクによって1つのドットが構成されるということである。
プライマーの塗布量を、全打ち込み面積に対して30%とする場合であっても、1ドットは3ショットで構成される。また、本実施形態のインクジェット記録装置30では、プライマー及びインクの1ドットは23pl±3plとなるように構成されている。
なお、本実施形態では1ドットを形成するのに3回のショットを行う構成であったが、これに限定されるものではなく、1ドットを形成するのに1〜2ショットでもよく、また3ショット以上であってもよい。
【0024】
次に、プライマーの吐出量を、全打ち込み面積に対して10%から10%ずつ100%まで増加させた場合の、密着性向上効果と、基材がアクリルの場合の割れの有無と、基材がステンレスの場合の割れの有無について実験を行った。
この結果を図5に示す。
なお、密着性の試験は、JIS K 5600に基づくクロスカットテープ法によって行った。割れ試験は、印刷物を室温から60℃の環境に静置し、1時間経過後に目視により表面の観察を行った。
【0025】
これによると、プライマーの吐出量が30%以上の場合には、UVインク被膜16の剥離が無く、密着性を有することが確認できた。ただし、20%以下の場合には、UVインク被膜16の剥離が見つかった。
基材をアクリルとした場合、プライマーの吐出量が30%以下では、割れは生じておらず、40%以上では割れが生じた。
基材をステンレスとした場合、プライマーの吐出量が50%以下では、割れは生じておらず、60%以上では、割れが生じた。
すなわち、プライマーの吐出量が少ないと、接着性が悪くUVインク被膜の剥離が生じるが、プライマーの吐出量が多いとUVインク被膜の温度変化に伴う容積変化よりも、プライマーの温度変化に伴う容積変化の方が大きくなってしまい、このためUVインク被膜に割れが生じることが判明した。
【0026】
したがって、プライマーの吐出量としては、全打ち込み面積に対して20%〜50%の範囲が好ましい範囲であり、さらに好ましくは、吐出量は30%とすべきである。
なお、プライマーを全打ち込み面積に対して打ち込まなくても、プライマーが着弾しなかった部位は隙間が生じるのではなく、所定位置に着弾したプライマーのドットが広がって、隣接するドットと一体化するものであると考えられる。
【0027】
続いて図3の説明に戻る。
上記のように、全打ち込み面積に対して所定の割合の範囲でプライマーを吐出しつつ、記録ヘッド32がプライマーを吐出しつつ走査方向に移動すると、光源35が紫外線を照射し、プライマーを硬化させる(ステップS2)。
ただし、プライマーは粘着力を残したまま硬化されるので、次に吐出されるUVインクとの密着性が阻害されることはない。
【0028】
プライマーが吐出され、紫外線によって硬化された後、UVインクの吐出が行われる(ステップS3)。
UVインクの吐出は、プライマーが露出しないよう、基材11の全打ち込み面積に吐出されるように制御される。そして、記録ヘッド32がUVインクを吐出しつつ走査方向に移動すると、光源35が紫外線を照射し、UVインクを硬化させ、UVインク被膜16を形成する(ステップS4)。
【0029】
なお、上述した印刷方法では、まず基材11の印刷対象範囲の全面にプライマー層12を形成し、その後プライマー層12に重ねてUVインク被膜16を形成する方法について説明した。
しかし、本発明の印刷方法としては、プライマーに重ねてUVインクをマルチパス方式で印刷する方法であってもよい。マルチパス方式とは、例えば基材の搬送方向に対して記録ヘッドを2列に設け、2つの記録ヘッドを同時に走査させることで、印刷時間を短縮するように設けた構成である。このような記録ヘッドの配列をスタガ配列とも言う。
例えば、スタガ配列の記録ヘッドによれば、プライマーを第1列目(上流側)の記録ヘッドから吐出し、UVインクを第2列目(下流側)の記録ヘッドから吐出させることができる。このため粘着性のあるプライマーを露出させておく時間を短縮することができる。
【0030】
なお、UVインク固定構造において、UVインク被膜16は、プライマー層12の形成範囲よりも広範囲に形成されていることにより、粘着性を有するプライマー層12をUVインク被膜16で完全にコーティングすることとなる。このため、粘着性を有するプライマー層12が露出して他の箇所に接着してしまうことを防止することができる。
【0031】
また、上記のようにインクジェット記録装置30によるプライマー層12の印刷は、全打ち込み面積に対する比率が20%〜50%とすることによって、プライマー層12のインクジェット記録装置30による打ち込みが全打ち込み面積に対して20%より小さい場合には、良好な接着性が得られず、また50%よりも大きい場合には割れが生じてしまうため、このような範囲でプライマーを基材11に着弾させてUVインクの割れや剥離を防止できる。
【符号の説明】
【0032】
10 UVインク固定構造
11 基材
12 プライマー層
16 インク被膜
30 インクジェット記録装置
32 記録ヘッド
35 光源
36 プラテン
図1
図2
図3
図4
図5