【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように成形された、プリフォーム101では
図10(a)からも分かるように必ずしもプリフォーム101を形成する周壁のすべてでバリア樹脂層101bが積層しているわけでなく、多くの場合、口筒部102の上端部および底部106にはバリア樹脂層101bが積層されない構成とする場合が多い。
【0009】
口筒部102の場合には、開放端であることも相俟って、異種の樹脂で形成されるバリア層101bをその上端にまで積層すると、成形収縮あるいは口筒部102の熱結晶化処理により円筒状の口筒部102が楕円状に変形する等の問題があるため、上端部にバリア層101bを積層しないようにする。
図10(a)のプリフォーム101の例ではバリア樹脂層101bの先端縁LEを、上記した変形、ガスバリア性、さらにはガスバリア樹脂の材料コスト等を考慮し、口筒部102の略中央高さに位置させており、バリア樹脂層101bの先端縁LEの位置を高精度に制御することが求められている。
ただ、口筒部102は壜体への2軸延伸ブロー成形後も延伸変形することなく比較的肉厚で、上端部の限られた部分がPET樹脂層101a単独であっても壜体全体のガスバリア性の低下は比較的小さく抑えることができる。
【0010】
一方、底部106については、口筒部102と異なり、延伸されて薄肉化する部位であるため、壜体全体のガスバリア性の低下を抑制すると云う観点からは、
図10(b)に示したように、底部106全体にバリア樹脂層101bを積層することが好ましい。
しかし、
図12の射出パターンのF時点、すなわちバリア樹脂の射出終了時点で、バリア樹脂のキャビティ4への流動が瞬時に止まらないと、所謂、切れが悪い状態となって、底部106の底面壁部分に、バリア樹脂層101bが、複数の層に積層する、バリア樹脂層101bの断片、所謂、スケールが積層する等、不均一な状態で積層されるため、壜体において底部が不均一に変形して接地状態が安定しない、さらには機械的強度が低下する等の問題も発生する。
また、多層ノズル部11の先端部にバリア樹脂Rbの断片が残留し、次のショットではこの断片がPET樹脂Raに混入してしまうと云う問題もある。
【0011】
また、底部をカプセル化することができる成形方法によれば
図10(b)にあるように、バリア樹脂層101bを底部106にカプセル状に分断することなく連続的な積層状態にすることが可能であるが、プリフォームの底部106の中央に位置するゲート痕のサイズが安定せず成形性が安定しない、さらには延伸ロッドによる縦延伸時に内面側のPET樹脂層101aが突き破られるという問題もある。
【0012】
そこで、本発明は前述したように主材層の中に中間層として第2の樹脂層を積層したプリフォームの射出成形に係る従来技術における問題点を解消するためのものであり、その技術的課題はプリフォームの底部における中間層の積層態様を高い生産性で高精度に制御することにあり、もって、2軸延伸成形を高い生産性で実現でき、中間層によるガスバリア性等の機能が高度に発揮される壜体を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、プリフォーム射出成形装
置を使用した射出成形方
法に関し、以下、射出成形装置、射出成形方法、プリフォームの順に説明する。
まず、本発明
で用いられる射出成形装置に係る主たる構成は、
主体を形成する主材層中に中間層として第2の樹脂層を積層した2軸延伸ブロー成形用の試験管状のプリフォームを射出成形する射出成形装置において、
主材層を形成する主材樹脂中に第2の樹脂層を形成する第2の樹脂を合流させて合流樹脂体を形成するノズル部と、このノズル部の先端に配設される金型を有し、
ノズル部は、外側から順に外側流路、中流路、内側流路、そしてこれら3つの流路に連通してノズル部の先端にまで延設される合流路を配設し
外側流路と内側流路に主材樹脂を、中流路に第2の樹脂を供給する構成とし、
内側流路の内側に摺動可能に挿入、配設される円柱状のシャットオフピンの先端の配置位置の制御により、内側流路の合流路への開口端部の遮断あるいは開放、さらには開度の調整が可能な構成とする、と云うものである。
【0014】
また本発明
で用いられる射出成形装置の他の構成は、上記主たる構成において、
主材樹脂を供給する第1供給部及び第2の樹脂を供給する第2供給部を有し、
ノズル部は、外側から順にそれぞれ円筒状の、外側流路、中流路、内側流路、そしてこれら3つの流路に連通してノズル部の先端にまで延設される円柱状の合流路を配設し、
第1供給部から主材樹脂を外側流路と内側流路に、また第2供給部から第2の樹脂を中流路に供給する構成とし、
合流路で円柱状に合流した合流樹脂体を、金型のキャビティの、プリフォームの底部底壁の中央に相当する位置に配設されるピンゲートを介してキャビティ内に射出、充填する構成とする、と云うものである。
【0015】
上記構成の射出成形装置によれば、内側流路の内側に摺動可能に挿入、配設される円柱状のシャットオフピンの先端の配置位置の制御により、内側流路の合流路への開口端部の遮断あるいは開放、さらには開度の調整が可能な構成とすることにより、
このシャットオフピンの先端の配置位置の制御により、第1供給部および第2供給部からの樹脂の供給を継続しながら、外側流路、中流路、内側流路から合流路への樹脂の供給を次のように制御することができる。
1)先端を内側流路の合流路への開口端部より上流側に位置させて、内側流路を完全に開放することにより、合流路で、中流路を経て供給される第2の樹脂を、外側流路と内側流路からの主材樹脂の間に流動させて、合流路で形成される合流樹脂体の構成を、円柱状の主材樹脂の中に第2の樹脂を円筒状に積層したものとすることができる。
2)先端を内側流路の開口端部近傍の所定位置に位置させて、この開口端部の開度を小さくし、内側流路からの主材樹脂の供給速度を小さくすることにより、円柱状の主材樹脂の中での第2の樹脂の積層態様を、1)の場合に比較してより細円筒状とすることができる。
3)先端を内側流路の合流端部より下流側に位置させて、内側流路を完全に遮断することにより、内側流路からの主材樹脂の供給が完全に遮断されるため、中流路を経て供給され第2の樹脂を、外側流路だけから供給される主材樹脂中に流動させて、合流路で形成される合流樹脂体の構成を円柱状の主材樹脂の中心に第2の樹脂を細円筒状に積層したものとすることができる。
【0016】
そして、上記2)に記載したように、中流路から合流路に第2の樹脂を供給中に内側流路からの主材樹脂の供給速度を制御することにより、合流樹脂体での主体樹脂中における第2の樹脂の積層態様を、所定の径を有する円筒状に高精度に制御することができ、特に従来の技術では困難であったプリフォームの底部における中間層の積層態様を高精度に制御することが可能となる。
【0017】
ここで、上記構成によれば、シャットオフピンの直線的な摺動と云う単純な機構によるため、内側流路の開口端部の開度の調整は、所定のタイミングで高精度に実施することが可能である。
【0018】
本発明
で用いられる射出成形装置に係るさらに他の構成は、上記構成において、内側流路は、円筒状流路の先端部に合流路に向けてテーパー状に縮径する縮径流路を有する構成とする、と云うものである。
【0019】
上記構成によれば、縮径流路を利用してシャットオフピンの先端による内側流路の開口端部の開度の調整をより高精度に実施することができる。
【0020】
本発明
で用いられる射出成形装置に係るさらに他の構成は、上記主たる構成において、サーボ機構により、シャットオフピンの摺動動作を制御する構成とする、と云うものである。
【0021】
上記構成により、サーボ機構によりシャットオフピンの移動動作を制御することにより、内側流路の遮断と開放を所定のタイミングで高精度に実施でき、さらにシャットオフピンの先端の配置位置を高精度に制御することができるので、シャットオフピンの先端による内側流路の開口端部の開度の調整をより高精度に実施することができる。
【0022】
次に、本発明のうちプリフォフォームの射出成形方法に係る主たる構成は、
主体を形成する主材層中に中間層として第2の樹脂層を積層した2軸延伸ブロー成形用の試験管状のプリフォームの射出成形方法において、
上述し
た射出成形装置を使用するものとし、
主材樹脂を外側流路と内側流路から合流路に所定の供給速度で所定時間供給し、
主材樹脂が供給される所定時間範囲内の一定時間、同時に第2の樹脂を中流路から合流路に所定の供給速度で供給し、
第2の樹脂が供給される前から、あるいは供給開始から所定時間後から少なくとも第2の樹脂の供給が終了するまでの間、シャットオフピンを摺動させてこのシャットオフピンの先端を内側流路の合流路への開口端部近傍の所定位置に配置させて、この開口端部の開度を調整し、内側流路から合流路への主材樹脂の供給速度を所定の速度まで小さくする、
と云うものである。
【0023】
本発明のプリフォフォームの射出成形方法に係る他の構成は、上記主たる構成において、
まず、シャットオフピンの摺動位置の制御により内側流路の開口端部を完全に開放した状態として第1供給部から主材樹脂を外側流路と内側流路を経て合流路に供給し、
次に、主材樹脂の供給開始の所定時間後に、第2の樹脂を一定時間、第2供給部から中流路を経て合流に供給し、外側流路と内側流路からの主材樹脂の間に流動させ、
次に、第2の樹脂の供給の開始後から所定時間後に、シャットオフピンの先端を内側流路の合流路への開口端部近傍の所定位置に配置させて、内側流路からの主材樹脂の供給速度を所定の速度まで小さくし、
次に、第2の樹脂の供給の終了から所定時間後にシャットオフピンの摺動により内側流路を完全に開放して所定時間保圧する、と云うものである。
【0024】
本発明のプリフォフォームの射出成形方法に係るさらに他の構成は、上記主たる構成において、
合流路内で主材樹脂と第2の樹脂から形成される合流樹脂体を順次金型のキャビティの、プリフォームの底部底壁の中央に相当する位置に配設されるピンゲートを介してキャビティ内に射出、充填し、
主材樹脂の供給速度、第2の樹脂の供給の開始時間、終了時間、供給速度を含めた射出パターン、さらには内側流路の開口端部の開度の調整に係るシャットオフピンの摺動時期および先端の配置位置の設定により、
プリフォームにおいて主材層中に中間層として積層する第2の樹脂層の終端縁を、半球弧殻状に形成される底部の中央に形成されるゲート痕を除く、底部の所定範囲内に位置させる、と云うものである。
【0025】
上記の本発明の成形方法により合流路では次のような過程で円柱状の合流樹脂体が順次形成される。
(1)まず、合流路で外側流路と内側流路からの主材樹脂が合流して、主材樹脂からなる円柱状の合流樹脂体が形成される。
(2)次に、合流路で、中流路から第2の樹脂が外側流路と内側流路からの主材樹脂の間に流動し、円柱状の主材樹脂の中に第2の樹脂を円筒状に積層した合流樹脂体が形成される。
(3)ここで、シャットオフピンの先端による内側流路の開口端部の開度の調整により、内側流路からの主材樹脂の供給速度を所定の速度まで小さくし、第2の樹脂が所定の径を有する細円筒状に積層した合流樹脂体が形成される。
(4)中流路からの第2の樹脂の供給が停止し、最後には外側流路と内側流路からの主材樹脂が合流して主材樹脂からなる円柱状の合流樹脂体が再び形成される。
【0026】
ここで、(3)はプリフォームの底部近傍における第2の樹脂層の積層態様を高度に制御するための過程であり、
上記成形方法によれば、第2の樹脂の供給が停止するまで内側流路からの主材樹脂の供給が少量であっても継続されるので、第2の樹脂はその終端縁まで円筒状の積層態様が保持され、プリフォームの底部でゲート痕も含む全領域を分断することなく連続的な積層状態になるカプセル化を防ぐことができ、カプセル化に伴う成形性の不良や、壜体における底部の変形等の問題を解消することが可能となる。
【0027】
また、内側流路の開口端部の開度の調整により第2の樹脂を、少なくともその終端縁近傍で所定の径を有する円筒状の積層態様とすることができ、これによりプリフォームにおいて主材層中に中間層として積層する第2の樹脂層の終端縁を、底部底壁の中央に形成される円形のピンゲート痕を除く底部近傍の所定の範囲に位置させると云う、積層態様の高度な制御が可能となる。
【0028】
なお、成形方法の主たる構成に、第2の樹脂が供給される前から、あるいは供給開始から所定時間後から少なくとも第2の樹脂の供給が終了するまで、と云う記載があるように、シャットオフピンの先端で内側流路の開口端部の開度を調整するタイミングは、第2の樹脂の供給開始時間の前とすることもできるし、供給時間帯の途中とすることもできる。
上記したように、底部近傍での第2の樹脂層の積層態様を高度に制御するためには、合流樹脂体中で第2の樹脂層の終端縁近傍で細円筒状の積層態様が保持されていることが必要であり、少なくとも第2の樹脂層の供給が終了するまで、内側流路の開口端部の開度を調整することが必要である。
【0029】
本発明の射出成形方法に係るさらに他の構成は、上記主たる構成において、
第2の樹脂をガスバリア性に優れた合成樹脂とし、第2の樹脂層をガスバリア層とする、と云うものである。
【0030】
次に、本発明の
射出成形方法により成形されたプリフォームに係る主たる構成は、
主体を形成する主材層中に中間層として第2の樹脂層を積層した2軸延伸ブロー成形用の試験管状のプリフォームにおいて、
プリフォームの底面で、第2の樹脂層の終端縁が、底部の底面の中央に形成される円形のゲート痕の外周縁の外側から胴部の内周面に相当する周縁までの範囲内に位置する構成とする、と云うものである。
【0031】
上記構成のプリフォームにおける、底部近傍におけるこのような第2の樹脂層の積層態様の実現は従来の成形技術では困難なものであったが、前述した本発明の射出成形方法により成形可能なものであり、
第2の樹脂層の終端縁を、ゲート痕を除く底部の限定された領域に位置させることにより、第2の樹脂層がゲート痕に積層することに起因する成形性の不良や、壜体の底部の変形等の問題を解消しながら、第2の樹脂層によるガスバリア性等の機能を十分に発揮させることが可能となる。