特許第5817095号(P5817095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5817095
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/24 20060101AFI20151029BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20151029BHJP
   B60T 8/172 20060101ALI20151029BHJP
   B60W 20/00 20060101ALI20151029BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20151029BHJP
【FI】
   B60L7/24 D
   B60T8/17 C
   B60T8/172 B
   B60K6/20 400
   B60K6/20 370
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2010-200594(P2010-200594)
(22)【出願日】2010年9月8日
(65)【公開番号】特開2012-60753(P2012-60753A)
(43)【公開日】2012年3月22日
【審査請求日】2013年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 卓馬
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直衛
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−104991(JP,A)
【文献】 特開2007−030631(JP,A)
【文献】 特開2008−044554(JP,A)
【文献】 特開2001−039281(JP,A)
【文献】 特開2002−095104(JP,A)
【文献】 特開2006−211818(JP,A)
【文献】 特開2006−246657(JP,A)
【文献】 特開2006−204073(JP,A)
【文献】 特開2000−344078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
B60T 8/17
B60T 8/172
B60W 10/18
B60W 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作に基づく総制動トルクから前記モータ駆動輪による回生トルクを差し引いた残りの制動トルク分を、前後輪の各摩擦ブレーキによる摩擦ブレーキトルクに配分する回生協調ブレーキ制御を行う回生協調ブレーキ制御手段と、
前記回生協調ブレーキ制御時、前輪車輪速と後輪車輪速の差である前後車輪速差が、決定された閾値より大きくなると前記回生トルクを制限する回生トルク制限手段と、
前記回生協調ブレーキ制御中における車両の旋回度合いを表す旋回状態量が、旋回度合いが高いことを表すほど回生トルク制限が作用しやすくなるように前記閾値を下げた値に決定する閾値決定手段と、を備え、
前記回生トルク制限手段は、前後車輪速差が決定された閾値より大きくなると、前記回生協調ブレーキ制御での回生トルク要求を下げる補正により前記回生トルクを制限し、前記回生トルク要求から低下させる補正分を、閾値と前後車輪速差の差分の大きさに応じて与える
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電動車両の制御装置において、
前記閾値決定手段は、前記旋回状態量として横加速度絶対値を用い、前記横加速度絶対値が大きいほど前記閾値を下げた値に決定する
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された電動車両の制御装置において、
前記閾値決定手段は、前記回生協調ブレーキ制御中における走行環境状態を表す走行環境状態量が、車両挙動が安定挙動から不安定挙動へ移行しやすい走行環境状態を表すほど前記閾値を下げた値に決定する
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載された電動車両の制御装置において、
前記閾値決定手段は、前記走行環境状態量として路面摩擦係数を用い、前記路面摩擦係数が低いほど前記閾値を下げた値に決定する
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載された電動車両の制御装置において、
前記閾値決定手段は、前記回生協調ブレーキ制御中におけるドライバ運転操作状態を表すドライバ運転操作状態量が、車両挙動が安定挙動から不安定挙動へ移行しやすいドライバ運転操作状態を表すほど前記閾値を下げた値に決定する
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載された電動車両の制御装置において、
前記閾値決定手段は、前記ドライバ運転操作状態量として操舵速度を用い、前記操舵速度が速いほど前記閾値を下げた値に決定する
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載された電動車両の制御装置において、
前記閾値決定手段は、前記ドライバ運転操作状態量としてブレーキ踏み込み速度を用い、前記ブレーキ踏み込み速度が速いほど前記閾値を下げた値に決定する
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7までの何れか1項に記載された電動車両の制御装置において、
前記閾値決定手段は、前記ドライバ運転操作状態量としてアクセル戻し速度を用い、前記アクセル戻し速度が速いほど前記閾値を下げた値に決定する
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項9】
請求項5から請求項8までの何れか1項に記載された電動車両の制御装置において、
前記閾値決定手段は、前記ドライバ運転操作状態量として変速機のシフトチェンジ情報を用い、シフトチェンジの開始時点から限られた時間までの間、前記閾値を下げた値に決定する
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までの何れか1項に記載された電動車両の制御装置において、
前記閾値決定手段は、前記回生協調ブレーキ制御中における車両状態を表す車両状態量が、車両挙動が安定挙動から不安定挙動へ移行しやすい車両状態を表すほど前記閾値を下げた値に決定する
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載された電動車両の制御装置において、
前記閾値決定手段は、前記車両状態量として回生トルクを用い、前記回生トルクが大きいほど前記閾値を下げた値に決定する
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載された電動車両の制御装置において、
前記閾値決定手段は、前記車両状態量として車速を用い、前記車速が上昇するほど前記閾値を下げた値に決定する
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項13】
請求項10から請求項12までの何れか1項に記載された電動車両の制御装置において、
前記閾値決定手段は、前記車両状態量として前輪荷重配分を用い、前記前輪荷重配分がノミナル配分から不安定挙動へ移行しやすい配分になるほど前記閾値を下げた値に決定する
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド車、等の電動車両に適用され、回生協調ブレーキ制御時、所定の条件で回生トルクを制限する電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、横加速度に基づいて、横加速度が大きいほどブレーキ回生トルクの上限値を小さな値に決定する。そして、回生協調ブレーキ制御時、回生トルクを決定された上限値で与え、総制動トルクから回生トルク(上限値)を差し引いた残りの制動トルク分を、摩擦ブレーキトルクに配分する電動車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1の図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−90899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電動車両の制御装置にあっては、回生協調ブレーキ制御時、横加速度に基づいて回生トルクを制限するようにしているため、必要以上に回生量を制限する場合があったり、車両挙動が不安定になったりする場合がある、という問題があった。
【0005】
すなわち、回生協調ブレーキ制御時、旋回による横加速度が大きいからといって必ずしも車両挙動が不安定になるとは限らない。例えば、高μ路であれば、高横加速度旋回であっても車両挙動は不安定になりにくい。逆に、低μ路であれば、高横加速度旋回でなくても車両挙動は不安定になりやすい。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、回生協調ブレーキ制御時、旋回度合いに対応して車両挙動の安定性と回生量の確保との両立を図ることができる電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の電動車両の制御装置は、回生協調ブレーキ制御手段と、回生トルク制限手段と、閾値決定手段と、を備える手段とした。
前記回生協調ブレーキ制御手段は、ブレーキ操作に基づく総制動トルクからモータ駆動輪による回生トルクを差し引いた残りの制動トルク分を、前後輪の各摩擦ブレーキによる摩擦ブレーキトルクに配分する回生協調ブレーキ制御を行う。
前記回生トルク制限手段は、前記回生協調ブレーキ制御時、前輪車輪速と後輪車輪速の差である前後車輪速差が、決定された閾値より大きくなると前記回生トルクを制限する。
前記閾値決定手段は、前記回生協調ブレーキ制御中における車両の旋回度合いを表す旋回状態量が、旋回度合いが高いことを表すほど回生トルク制限が作用しやすくなるように前記閾値を下げた値に決定する。
前記回生トルク制限手段は、前後車輪速差が決定された閾値より大きくなると、前記回生協調ブレーキ制御での回生トルク要求を下げる補正により前記回生トルクを制限し、前記回生トルク要求から低下させる補正分を、閾値と前後車輪速差の差分の大きさに応じて与える。
【発明の効果】
【0008】
回生協調ブレーキ制御時、前後車輪速差が閾値以下である間は、回生トルクを制限せず、前後車輪速差が閾値より大きくなると、回生トルクを制限する。
この前後車輪速差は、モータ駆動輪が制動ロック傾向になればなるほど大きな値になるというように、前輪と後輪の制動スリップ率の差に応じた値となる。つまり、前後車輪速差の値は、モータ駆動輪への入力に対するタイヤキャパシティの余裕度合いを表す。
したがって、タイヤキャパシティに余裕がある間は、回生トルクを制限しないため、要求する回生量を確保することができる。そして、タイヤキャパシティに余裕がなくなると、回生トルクを制限するため、車両挙動の安定性を確保することができる。
そして、回生トルクの制限を実行するか否かを切り分ける情報である前後車輪速差の閾値を、旋回度合いを表す旋回状態量に基づいて変更するようにした。
したがって、直線制動時等のように旋回度合いが低いときは、不安定挙動へ移行しにくいため、回生を優先して高い閾値に決定する。これにより、回生トルクの制限開始タイミングを遅らせることになるため、早期の回生トルク制限により回生量が低下するということを回避できる。一方、旋回制動時等のように旋回度合いが高いときは、車両挙動が不安定状態へ移行しやすいため、車両挙動安定性を優先して低い閾値に決定する。これにより、回生トルクの制限開始タイミングを早めることになるため、車両挙動が不安定になっても回生トルクに制限がかからないといったことを回避できる。
この結果、回生協調ブレーキ制御時、旋回度合いに対応して車両挙動の安定性と回生量の確保との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の制御装置が適用された電気自動車(電動車両の一例)の構成を示す全体構成図である。
図2】実施例1〜3のブレーキコントローラ7にて実行される回生協調ブレーキ制御処理の流れを示すメインフローチャートである。
図3】実施例1のブレーキコントローラ7にて実行される回生トルク指令演算処理の流れを示すフローチャートである。
図4】実施例1の回生トルク指令演算処理で用いられる第1補正係数特性(a)と第2補正係数特性(b)と第6補正係数特性(c)と第7補正係数特性(d)を示す補正係数特性図である。
図5】路面摩擦係数が異なる場合のタイヤスリップと見かけのタイヤ摩擦係数の関係を示すタイヤ特性図である。
図6】比較例において回生制動中に操舵介入があった制動旋回シーンにおけるドライバ操作・横G・ヨーレイト・前後輪車輪速差・回生トルクの各時系列応答特性を示すタイムチャートである。
図7】実施例1において回生制動中に操舵介入があった制動旋回シーンにおけるドライバ操作・横G・ヨーレイト・前後輪車輪速差・回生トルクの各時系列応答特性を示すタイムチャートである。
図8】実施例2のブレーキコントローラ7にて実行される回生トルク指令演算処理の流れを示すフローチャートである。
図9】実施例2の回生トルク指令演算処理で用いられる第3補正係数特性(a)と第4補正係数特性(b)と第5補正係数特性(c)を示す補正係数特性図である。
図10】実施例2の回生トルク指令演算処理で用いられるギヤシフト・第9補正係数の各時系列応答特性を示すタイムチャートである。
図11】実施例3のブレーキコントローラ7にて実行される回生トルク指令演算処理の流れを示すフローチャートである。
図12】実施例3の回生トルク指令演算処理で用いられる前輪駆動の場合における第8補正係数特性(a)と後輪駆動の場合における第8補正係数特性(b)を示す補正係数特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電動車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用された電気自動車(電動車両の一例)の構成を示す全体構成図である。以下、図1に基づき全体構成を説明する。
【0012】
実施例1の電気自動車の制御装置は、図1に示すように、モータ1と、油圧ブレーキ2と、モータ駆動輪3と、従動輪4と、車両センサ5と、ATコントローラ6と、ブレーキコントローラ7と、を備えている。
【0013】
前記モータ1は、電気自動車の走行用駆動源であり、前後輪のうち一方のモータ駆動輪3に連結される。このモータ1は、駆動トルク指令(正のトルク指令)が出力されている時には、二次バッテリからの放電電力を使って駆動トルクを発生する駆動動作をし、モータ駆動輪3を駆動する(力行)。一方、ブレーキコントローラ7から回生トルク指令(負のトルク指令)が出力されている時には、モータ駆動輪3からの回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電動作をし、発電した電力を二次バッテリへの充電電力とする(回生)。このモータ回生時、モータ1からの発電負荷がモータ駆動輪3に与えられ、この発電負荷がモータ駆動輪3を制動させる回生トルクとなる。
【0014】
前記油圧ブレーキ2は、前後輪の各タイヤに摩擦ブレーキトルクを与える摩擦ブレーキであり、前後輪のうち一方のモータ駆動輪3と、前後輪のうち他方の従動輪4と、に連結される。この油圧ブレーキ2は、ブレーキコントローラ7から油圧ブレーキトルク指令が出力されると、マスタシリンダ圧を元圧とする油圧制御により、例えば、4系統のブレーキ油圧を作り出す。このブレーキ油圧は、ブレーキ油圧管を経過して各輪タイヤのホイールシリンダに供給され、ブレーキパッドが、ブレーキディスクを挟み込むように摩擦圧接することで各輪タイヤに油圧ブレーキトルクを与える。
【0015】
前記車両センサ5と前記ATコントローラ6は、ブレーキコントローラ7で用いる制御情報を供給する手段である。前記車両センサ5は、車輪速センサ51と、横Gセンサ52と、路面μセンサ53と、車速センサ54と、操舵角センサ55と、ヨーレイトセンサ56と、ブレーキストロークセンサ57と、アクセル開度センサ58と、他のセンサ・スイッチ類59と、を有する。そして、ブレーキ踏み込み量情報をブレーキコントローラ7の総ブレーキトルク演算部71に出力する。さらに、車輪速情報、横加速度情報、路面μ情報、車速情報、操舵角情報、ヨーレイト情報、ブレーキストローク情報、アクセル開度情報、をブレーキコントローラ7の回生トルク演算部73に出力する。前記ATコントローラ6は、自動変速機の変速指令に基づく、シフトチェンジ情報をブレーキコントローラ7の回生トルク演算部73に出力する。
【0016】
前記ブレーキコントローラ7は、ブレーキ踏み込み量に基づく総ブレーキトルクからモータ駆動輪3による回生トルクを差し引いた残りの制動トルク分を、前後輪の各摩擦ブレーキによる摩擦ブレーキトルクに配分する回生協調ブレーキ制御を行う。このブレーキコントローラ7は、図1に示すように、総ブレーキトルク演算部71と、ブレーキ配分演算部72と、回生トルク演算部73と、モータ制御部74と、を備えている。
【0017】
前記総ブレーキトルク演算部71は、ブレーキストロークセンサ57により検出されるブレーキ踏込み量によって、予め定めておいたブレーキ踏込み量と総ブレーキトルクの関係を示すマップを用い、総ブレーキトルクを演算する。
【0018】
前記ブレーキ配分演算部72は、総ブレーキトルク演算部71からの総ブレーキトルクと、回生トルク演算部73からの回生トルク指令を入力し、総ブレーキトルクを回生トルク要求と油圧ブレーキトルク指令に配分する。この回生トルク要求は、総ブレーキトルクの値に対して定められ、入力した回生トルク指令の値によって補正される。油圧ブレーキトルク指令は、総ブレーキトルクから回生トルク要求を差し引いた値であり、油圧ブレーキ2に出力する。
【0019】
前記回生トルク演算部73は、ブレーキ配分演算部72からの回生トルク要求と、車両センサ5およびATコントローラ6からの制御情報を入力し、回生トルク要求を入力した制御情報の値に基づき補正し、回生トルク指令を導出する。具体的な回生トルク指令の導出過程は、図3に示すフローチャートにて詳細を説明する。
【0020】
前記モータ制御部74は、回生トルク演算部73からの回生トルク指令に基づき、モータ1を回生動作させる回生トルク指令の信号を生成し、モータ1に出力する。
【0021】
図2は、実施例1のブレーキコントローラ7にて実行される回生協調ブレーキ制御処理の流れを示すメインフローチャートである。以下、図2の各ステップについて説明する。なお、図2のメインフローチャートは、実施例2および実施例3においても、共通のメインフローチャートとして用いられる。
【0022】
ステップS1では、ブレーキ減速度要求があるか否かを判断し、YES(ブレーキ減速度要求有り)の場合はステップS2へ進み、NO(ブレーキ減速度要求無し)の場合は終了へ進む。
ここで、ブレーキ減速度要求は、ドライバのブレーキ操作によって判断するもので、ブレーキペダルが踏込まれたか(ブレーキ減速度要求有り)、ブレーキペダルが踏まれていないか(ブレーキ減速度要求無し)、を判断する。
【0023】
ステップS2では、ステップS1でのブレーキ減速度要求有りとの判断に続き、総ブレーキトルク演算部71において総ブレーキトルクを算出し、ステップS3へ進む。
【0024】
ステップS3では、ステップS2での総ブレーキトルクの算出に続き、回生トルク演算部73において回生トルク指令の演算処理(図3)を行い、ステップS4へ進む。
【0025】
ステップS4では、ステップS3での回生トルク指令演算に続き、ブレーキ配分演算部72において、総ブレーキトルクから回生トルク指令を差し引いた差分を、油圧ブレーキトルク指令として決定し、終了へ進む。
【0026】
図3は、実施例1のブレーキコントローラ7にて実行される回生トルク指令演算処理の流れを示すフローチャートである。以下、図3の各ステップについて説明する。
【0027】
ステップS11では、総ブレーキトルクから回生トルク要求を演算し、ステップS12へ進む。ここでは、総ブレーキトルクの値に基づき、予めマップ等によって定められた回生トルク量を回生トルク要求として演算する。
【0028】
ステップS12では、ステップS11での回生トルク要求演算に続き、車輪速センサ51、横Gセンサ52、路面μセンサ53、車速センサ54、の各センサで計測されるセンサ信号値を読み込み、ステップS13へ進む。
【0029】
ステップS13では、ステップS12でのセンサ信号の読み込みに続き、前後車輪速差の閾値K1を決定し、ステップS14へ進む(閾値決定手段)。
ここで、最終的に決定する閾値K1は、下記の式(1)により算出される。
K1=G1×G2×G6×G7×K0 …(1)
但し、K0:初期閾値、G1:第1補正係数、G2:第2補正係数、G6:第6補正係数、G7:第7補正係数、である。
【0030】
ステップS14では、ステップS13での閾値の決定に続き、前輪車輪速と後輪車輪速の差である前後車輪速差が、ステップS13で決定した閾値よりも大きいか否かを判断する。YES(前後車輪速差>閾値)の場合はステップS15へ進み、NO(前後車輪速差≦閾値)の場合はステップS16へ進む。
ここで、前後車輪速差は、ステップS12で読み込んだ車輪速センサ51からの各輪の車輪速センサ信号に基づき、前輪車輪速と後輪車輪速の差の絶対値により算出する。この前後輪車輪速差の値が大きくなると、制動時において、前輪と後輪の制動スリップ率の差が大きいことを意味し、いずれかのタイヤが制動スリップ(=制動ロック)していることを意味することになる。
【0031】
ステップS15では、ステップS14での前後車輪速差>閾値であるとの判断に続き、ステップS11で算出した回生トルク要求に基づき、回生トルク指令を補正し、終了へ進む(回生トルク制限手段)。
ここで、回生トルク指令の補正方法は、閾値と前後車輪速差に基づき、それらの値の差分と定数の積を、回生トルク要求から引き、回生トルク要求を下げる。つまり、回生トルク要求から低下させる補正分を、閾値と前後車輪速差の差分の大きさに応じて与えるようにしている。
【0032】
ステップS16では、ステップS14での前後車輪速差≦閾値であるとの判断に続き、ステップS11で算出した回生トルク要求を、回生トルク指令とし、終了へ進む。
【0033】
次に、作用を説明する。
まず、「回生トルクを制限する比較例の課題」を説明する。続いて、実施例1の電気自動車の制御作用を、「回生協調ブレーキ制御作用」、「閾値決定作用」、「制動旋回シーンにおける対比作用」に分けて説明する。
【0034】
[回生トルクを制限する比較例の課題]
回生制動時、横加速度が所定値まではブレーキ回生トルクの上限値を一定値とし、所定値を超える横加速度領域になると、横加速度が大きいほどブレーキ回生トルクの上限値を小さな値に決定するものを比較例とする。この比較例は、車両が不安定な挙動をしたか否かにかかわらず、横加速度に応じて制動時の回生量を抑え、油圧ブレーキで制動することで、予め車両が不安定な挙動にならないようにすることを狙っている。
【0035】
しかしながら、比較例は、走行状況によって、必ずしも不安定な挙動になり得ない状況においても、回生トルク量を抑えてしまうため、そのような状況で回生することができた制動エネルギーを回生することができない。そのため、電気自動車では、回生ブレーキによる電費向上分を無駄に捨てることになるし、ハイブリッド車では、回生ブレーキによる燃費向上分を無駄に捨てていることになる。すなわち、回生協調ブレーキ制御時、旋回による横加速度が大きいからといって必ずしも車両挙動が不安定になるとは限らない。例えば、走行路面が高μ路であれば、高横加速度旋回であっても車両挙動は不安定になりにくい。
【0036】
さらに、比較例では、横加速度の大きさにより一義的に回生トルクを制限するようにしているため、車両挙動が不安定になったりする場合がある。すなわち、回生協調ブレーキ制御時、旋回による横加速度が小さいからといって必ずしも車両挙動が安定であるとは限らない。例えば、走行路面が低μ路であれば、タイヤグリップ力が弱く横加速度が出にくいため、低横加速度旋回であっても車両挙動は不安定になりやすい。
【0037】
[回生協調ブレーキ制御作用]
上記比較例の課題に対し、前後車輪速差が閾値以下で回生トルクを制限せず、前後車輪速差が閾値より大きくなると回生トルクを制限する。このとき、前後車輪速差の閾値を、旋回度合いを表す横加速度絶対値に基づいて変更する構成を採用した。以下、実施例1の回生協調ブレーキ制御作用を、図2図4に基づいて説明する。
【0038】
ドライバによりブレーキペダルが踏込まれ、ブレーキ減速度要求有りと判断されると、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→終了へと進む流れが繰り返される。ステップS2では、ブレーキ踏み込み量に基づいて総ブレーキトルクが演算され、ステップS3では、回生トルク指令が演算され、ステップS4では、油圧ブレーキトルク指令が演算され、回生協調ブレーキ制御が行われる。
【0039】
この回生協調ブレーキ制御中におけるステップS3の回生トルク指令演算処理は、図3のフローチャートにしたがって行われる。つまり、前後車輪速差が閾値以下である間は、図3のフローチャートにおいて、ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS14→ステップS16→終了という流れが繰り返される。つまり、ステップS16では、回生トルク指令が、回生トルク要求とされるというように、回生トルクが制限されることがない。
【0040】
一方、前後車輪速差が閾値より大きくなると、図3のフローチャートにおいて、ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS14→ステップS15→終了という流れが繰り返される。つまり、ステップS15では、回生トルク指令が補正され、回生トルクが制限される。
【0041】
このように、回生トルクの制限判断情報として用いられる前後車輪速差は、モータ駆動輪3が制動ロック傾向になればなるほど大きな値になるというように、前輪と後輪の制動スリップ率の差に応じた値となる。つまり、前後車輪速差の値は、モータ駆動輪3への入力に対するタイヤキャパシティの余裕度合いを表す。
例えば、前輪をモータ駆動輪3とする場合、回生制動時、回生トルクが入力されるモータ駆動輪3に対し、操舵介入により横力の入力が加わると、モータ駆動輪3への入力がタイヤキャパシティの限界域になり、制動ロック傾向を示す。この制動ロック傾向により車輪速が低くなるモータ駆動輪3と、路面を転がるタイヤにより車輪速が確保される従動輪4との間で車輪速差が生じる。
【0042】
したがって、前後車輪速差が閾値以下でタイヤキャパシティに余裕がある間は、回生トルクを制限しないため、要求する回生量を確保することができる。そして、前後車輪速差が閾値より大きくなりタイヤキャパシティに余裕がなくなると、回生トルクを制限するため、車両挙動の安定性を確保することができる。
【0043】
そして、回生トルクの制限を実行するか否かを切り分ける情報である前後車輪速差の閾値を、旋回度合いを表す旋回状態量の一つである横加速度絶対値に基づいて変更するようにした(図4(a)の第1補正係数G1)。
【0044】
この前後車輪速差の閾値は、回生トルクの制限を開始するタイミングを決め、回生トルクの制限によりモータ駆動輪3へ超過配分している回生トルクの一部を摩擦ブレーキトルクとして従動輪4へ配分する「超過配分リミッタ」の役目を持つ。
【0045】
したがって、直線制動時等のように、旋回度合いが低く横加速度絶対値が小さい値のときは、不安定挙動へ移行しにくいため、回生を優先して高い閾値(第1補正係数G1=1)に決定する。これにより、低横G旋回では超過配分リミッタが作用しにくく、回生トルクの制限開始タイミングを遅らせることになるため、早期の回生トルク制限により回生量が低下するということを回避できる。
【0046】
一方、旋回制動時等のように、旋回度合いが高く横加速度絶対値が大きい値のときは、車両挙動が不安定状態へ移行しやすいため、車両挙動安定性を優先して低い閾値(第1補正係数G1<1)に決定する。これにより、高横G旋回では超過配分リミッタが作用しやすく、回生トルクの制限開始タイミングを早めることになり、車両挙動が不安定になっても回生トルクに制限がかからないといったことを回避できる。
【0047】
このように、実施例1では、前後車輪速差が閾値以下で回生トルクを制限せず、前後車輪速差が閾値より大きくなると回生トルクを制限するとき、前後車輪速差の閾値を、旋回度合いを表す横加速度絶対値に基づいて変更する構成を採用した。
したがって、回生協調ブレーキ制御時、旋回度合いを示す横加速度絶対値に対応して車両挙動の安定性と回生量の確保との両立が図られる。
【0048】
[閾値決定作用]
実施例1において、前後車輪速差の閾値は、初期閾値K0に対して、横加速度絶対値による第1補正係数G1と、路面摩擦係数による第2補正係数G2と、回生トルクによる第6補正係数G6と、車速による第7補正係数G7と、による補正を加えて決定するようにした。
つまり、図3のステップS13において、最終的に決定する閾値K1は、
K1=G1×G2×G6×G7×K0 …(1)
の式により算出される。以下、実施例1の閾値決定作用を説明する。
【0049】
前記初期閾値K0は、車両の特性やタイヤの特性などによって、予め設計者の意図によって決定する値である。この初期閾値K0は、前後車輪速差が閾値より大きいかどうかを判断し、前後車輪速差が閾値より大きいとき回生トルク指令を補正することから、高μ路の直進制動時において、車両が不安定な挙動を示したと判断される前後車輪速差に該当する値に決定される。
【0050】
前記第1補正係数G1は、横加速度に対する初期閾値K0の補正係数である。この第1補正係数G1は、図4(a)に示すように、横加速度絶対値が所定値A1までは、G1=1とし、横加速度絶対値が所定値A1を超える領域では、横加速度絶対値が大きくなるほどG1を1から徐々に下げた値とする。
すなわち、横加速度絶対値が所定値A1を超える領域のとき、横加速度絶対値が大きいほど閾値K1を下げた値(K1=G1×K0)に決定し、横加速度の増加に対して車両が不安定な挙動になりやすいのに備える。
したがって、直線走行による回生制動時には、超過配分リミッタが作用しにくく、回生量を確保しやすくすることができ、旋回による回生制動時には、超過配分リミッタが作用しやすく、車両挙動の安定性を確保することができる。
【0051】
前記第2補正係数G2は、路面摩擦係数に対する初期閾値K0の補正係数である。この第2補正係数G2は、図4(b)に示すように、路面摩擦係数が所定値A2までは、路面摩擦係数が高まるにしたがってG2の値を大きくし、路面摩擦係数が所定値A2以上の領域では、G2=1とする。
すなわち、路面摩擦係数が所定値A2未満の領域のとき、路面摩擦係数が低いほど閾値K1を下げた値(K1=G2×K0)に決定する。
この第2補正係数G2が必要な理由を補足説明するのが図6である。この図6は、路面の摩擦係数が異なる場合のタイヤスリップSと見かけのタイヤ摩擦係数μの関係を示す。路面摩擦係数が低い場合、見かけのタイヤ摩擦係数μは、路面摩擦係数が高い場合に比べて小さい値を示す。閾値をタイヤスリップSbに決定した時、路面摩擦係数が高い場合は、μ−Sカーブの頂点よりも低いタイヤスリップとなる。しかし、路面摩擦係数が低い場合は、μ−Sカーブの頂点のタイヤスリップとなってしまう。この場合、路面摩擦係数が高い場合は回生トルクを下げることで車両を安定化することができたとしても、路面摩擦係数が低い場合はタイヤがスリップした状態になっているため、必ずしも車両を安定にすることはできない。そのため、路面摩擦係数によって、車両が不安定な挙動になりやすい特性を加味し、路面摩擦係数が低い場合は高い場合に比べ閾値を下げるべく、第2補正係数G2を決める。
したがって、路面摩擦係数が低く車両が容易に不安定な挙動になりやすい回生制動時は、早急に超過配分リミッタを作動させやすくすることで、低μ路での不安定挙動を防止することができる。
【0052】
前記第6補正係数G6は、回生トルクに対する初期閾値K0の補正係数である。この第6補正係数G6は、図4(c)に示すように、回生トルクが所定値A6までは、G6=1とし、回生トルクが所定値A6を超えてから所定値B6までの領域では、回生トルクが大きくなるほどG6を1から徐々に下げた値とし、所定値B6を超える領域では一定値(<1)で与える。
すなわち、回生トルクが所定値A6を超える領域のとき、回生トルクが大きいほど閾値K1を下げた値(K1=G6×K0)に決定し、回生トルクが大きいときには、車両が不安定な挙動になりやすいことに備える。
したがって、回生トルクが大きい回生制動時は、タイヤへの入力が飽和しやすく車両が不安定な挙動になりやすいのに対し、未然に車両が不安定挙動になるのを防止することができる。
【0053】
前記第7補正係数G7は、車速に対する初期閾値K0の補正係数である。この第7補正係数G7は、図4(d)に示すように、車速が高くなるほどG7を1から徐々に曲線カーブにて下げた値とする。
すなわち、車速が上昇するほど閾値K1を下げた値(K1=G7×K0)に決定し、車速が高いときには、車両が不安定な挙動になりやすいことに備える。
したがって、車速が高い回生制動時は、タイヤへの入力変化に伴う車両挙動の変化が大きくなって車両が不安定な挙動になりやすいのに対し、未然に車両が不安定挙動になるのを防止することができる。
【0054】
[制動旋回シーンにおける対比作用]
図6は、比較例において回生制動中に操舵介入があった制動旋回シーンにおけるタイムチャートであり、図7は、実施例1において回生制動中に操舵介入があった制動旋回シーンにおけるタイムチャートである。以下、図6および図7に基づいて、制動旋回シーンにおける対比作用を説明する。
【0055】
図6及び図7は、一定のブレーキ踏込みこんだ状態から、時刻t1にて操舵を開始する制動旋回シーンである。比較例の場合、時刻t1で操舵を開始すると、時刻t1から横加速度が徐々に増加する。そして、横加速度が所定値以上になる時刻t2に達すると、回生トルクの低下を開始する。その間、ヨーレイト、横Gの応答は操舵に対して、若干は線形に立ち上がらないことも考えられるが、ほぼ線形に立ち上がり挙動は乱れていない。
【0056】
一方、実施例1の場合、時刻t1で操舵を開始すると、時刻t1から横加速度が徐々に増加する。横加速度が徐々に増加すると閾値がそれに比例して下がっていく。さらに、操舵量を増やすと閾値は下がり、時刻t3にて前後輪車輪速差と交差する。この時刻t3に達すると、前後輪車輪速が閾値よりも大きくなるため、時刻t3から回生トルクは徐々に抑えられる。
【0057】
実施例1の場合、操舵を開始する時刻t1から回生トルクの低下を開始する時刻t3までの間、横加速度やヨーレイトの値は、操舵に対して線形な応答を示さず、少し不安定な挙動を示す。しかし、前後車輪速差と閾値の値に基づいて、時刻t3から回生トルクを抑えることで、不安定な車両挙動に陥ることはない。すなわち、時刻t3を過ぎると横加速度やヨーレイトの値は、操舵に対して線形な応答に向かうように修正され、車両挙動が安定挙動に回復する。
【0058】
比較例と実施例1の差は、図7の回生トルク特性に示すように、比較例は時刻t2から回生トルクを抑えるのに対して、実施例1は、時刻t2より後の時刻t3から回生トルクを抑える。この比較例のように、横加速度の大きさが所定値になるというだけで、回生トルクを抑えると、図7のハッチングに示す部分の車両の制動エネルギーを回生することはできず、無駄にエネルギーを放出していることになり、これが電費や燃費の悪化に繋がる。これに対し、実施例1の場合は、回生量を確保することで電費や燃費の悪化を防止することができると共に、車両の不安定挙動を防止することができる。
【0059】
次に、効果を説明する。
実施例1の電気自動車の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0060】
(1) ブレーキ操作に基づく総制動トルクからモータ駆動輪3による回生トルクを差し引いた残りの制動トルク分を、前後輪の各摩擦ブレーキによる摩擦ブレーキトルクに配分する回生協調ブレーキ制御を行う回生協調ブレーキ制御手段(ブレーキコントローラ7、図2)と、
前記回生協調ブレーキ制御時、前輪車輪速と後輪車輪速の差である前後車輪速差が、決定された閾値K1より大きくなると前記回生トルクを制限する回生トルク制限手段(図3のステップS14→ステップS15)と、
前記回生協調ブレーキ制御中における車両の旋回度合いを表す旋回状態量が、旋回度合いが高いことを表すほど前記閾値K1を下げた値に決定する閾値決定手段(図3のステップS13)と、
を備える。
このため、回生協調ブレーキ制御時、旋回度合いに対応して車両挙動の安定性と回生量の確保との両立を図ることができる。
【0061】
(2) 前記閾値決定手段(ステップS13)は、前記旋回状態量として横加速度絶対値を用い、前記横加速度絶対値が大きいほど前記閾値K1を下げた値に決定する(図4(a)の第1補正係数G1)。
このため、上記(1)の効果に加え、直線走行による回生制動時には、超過配分リミッタが作用しにくく、回生量を確保しやすくすることができ、旋回による回生制動時には、超過配分リミッタが作用しやすく、車両挙動の安定性を確保することができる。
【0062】
(3) 前記閾値決定手段(ステップS13)は、前記回生協調ブレーキ制御中における走行環境状態を表す走行環境状態量が、車両挙動が安定挙動から不安定挙動へ移行しやすい走行環境状態を表すほど前記閾値K1を下げた値に決定する。
このため、上記(1)または(2)の効果に加え、車両が容易に不安定な挙動になりやすい走行環境状態での回生制動時は、早急に超過配分リミッタを作動させやすくすることで、走行環境状態にかかわらず不安定挙動を防止することができる。
【0063】
(4) 前記閾値決定手段(ステップS13)は、前記走行環境状態量として路面摩擦係数を用い、前記路面摩擦係数が低いほど前記閾値K1を下げた値に決定する(図4(b)の第2補正係数G2)。
このため、上記(3)の効果に加え、路面摩擦係数が低く車両が容易に不安定な挙動になりやすい回生制動時は、早急に超過配分リミッタを作動させやすくすることで、低μ路での不安定挙動を防止することができる。
【0064】
(5) 前記閾値決定手段(ステップS13)は、前記回生協調ブレーキ制御中における車両状態を表す車両状態量が、車両挙動が安定挙動から不安定挙動へ移行しやすい車両状態を表すほど前記閾値K1を下げた値に決定する。
このため、上記(1)〜(4)の効果に加え、車両挙動が安定挙動から不安定挙動へ移行しやすい車両状態での回生制動時、未然に車両が不安定挙動になるのを防止することができる。
【0065】
(6) 前記閾値決定手段(ステップS13)は、前記車両状態量として回生トルクを用い、前記回生トルクが大きいほど前記閾値K1を下げた値に決定する(図4(c)の第6補正係数G6)。
このため、上記(5)の効果に加え、回生トルクが大きい回生制動時は、タイヤへの入力が飽和しやすく車両が不安定な挙動になりやすいのに対し、未然に車両が不安定挙動になるのを防止することができる。
【0066】
(7) 前記閾値決定手段(ステップS13)は、前記車両状態量として車速を用い、前記車速が上昇するほど前記閾値K1を下げた値に決定する(図4(d)の第7補正係数G7)。
このため、上記(5)または(6)の効果に加え、車速が高い回生制動時は、タイヤへの入力変化に伴う車両挙動の変化が大きくなって車両が不安定な挙動になりやすいのに対し、未然に車両が不安定挙動になるのを防止することができる。
【実施例2】
【0067】
実施例2は、前後車輪速差の閾値K1を、横加速度絶対値と操舵速度とブレーキ踏み込み速度とアクセル戻し速度とギヤシフトにより決定するようにした例である。
【0068】
まず、構成を説明する。
実施例2の電気自動車の制御装置において、全体構成は、実施例1の図1と同じであり、実施例2のメインフローチャートは、実施例1の図2と同じであるので、これらの図示並びに説明を省略する。
【0069】
図8は、実施例2のブレーキコントローラ7にて実行される回生トルク指令演算処理の流れを示すフローチャートである。以下、図8の各ステップについて説明する。
なお、ステップS21,S22,S24,S25,S26の各ステップは、図3のステップS11,S12,S14,S15,S16の各ステップと同様の処理を行うステップであるので、説明を省略する。
【0070】
ステップS23では、ステップS22でのセンサ信号の読み込みに続き、前後車輪速差の閾値K1を決定し、ステップS24へ進む(閾値決定手段)。
ここで、最終的に決定する閾値K1は、下記の式(2)により算出される。
K1=G1×G3×G4×G5×G9×K0 …(2)
但し、K0:初期閾値、G1:第1補正係数、G3:第3補正係数、G4:第4補正係数、G5:第5補正係数、G9:第9補正係数、である。
【0071】
次に、作用を説明する。
[閾値決定作用]
実施例2において、前後車輪速差の閾値は、初期閾値K0に対して、横加速度絶対値による第1補正係数G1と、操舵速度による第3補正係数G3と、ブレーキ踏み込み速度による第4補正係数G4と、アクセル戻し速度による第5補正係数G5と、ギヤシフトによる第9補正係数G9と、による補正を加えて決定するようにした。
つまり、図8のステップS23において、最終的に決定する閾値K1は、
K1=G1×G3×G4×G5×G9×K0 …(2)
の式により算出される。以下、実施例2の閾値決定作用を説明する。ここで示す各補正係数G3、G4、G5、G9は、ドライバの運転操作量によって初期閾値K0を補正する係数である。なお、初期閾値K0と第1補正係数G1については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0072】
前記第3補正係数G3は、操舵速度に対する初期閾値K0の補正係数である。この第3補正係数G3は、図9(a)に示すように、操舵速度が所定値A3までは、G3=1とし、操舵速度が所定値A3を超える領域では、操舵速度が速くなるほどG3を1から徐々に下げた値とする。
すなわち、操舵速度が所定値A3を超える領域のとき、操舵速度が速いほど閾値K1を下げた値(K1=G3×K0)に決定する。つまり、車両はドライバの急な操舵に対して不安定な挙動を示しやすくなるため、それに備えている。
したがって、急操舵により車両が不安定な挙動になりやすいのに対し、急操舵による不安定挙動を未然に防止することができる。
【0073】
前記第4補正係数G4は、ブレーキ踏み込み速度に対する初期閾値K0の補正係数である。この第4補正係数G4は、図9(b)に示すように、ブレーキ踏み込み速度が所定値A4までは、G4=1とし、ブレーキ踏み込み速度が所定値A4を超える領域では、ブレーキ踏み込み速度が速くなるほどG4を1から徐々に下げた値とする。
すなわち、ブレーキ踏み込み速度が所定値A4を超える領域のとき、ブレーキ踏み込み速度が速いほど閾値K1を下げた値(K1=G4×K0)に決定する。つまり、車両はドライバの急なブレーキ踏み込み操作に対して不安定な挙動を示しやすくなるため、それに備えている。
したがって、急ブレーキ操作により車両が不安定な挙動になりやすいのに対し、急ブレーキ操作による不安定挙動を未然に防止することができる。
【0074】
前記第5補正係数G5は、アクセル戻し速度に対する初期閾値K0の補正係数である。この第5補正係数G5は、図9(c)に示すように、アクセル戻し速度が所定値A5までは、G5=1とし、アクセル戻し速度が所定値A5を超える領域では、アクセル戻し速度が速くなるほどG5を1から徐々に下げた値とする。
すなわち、アクセル戻し速度が所定値A5を超える領域のとき、アクセル戻し速度が速いほど閾値K1を下げた値(K1=G5×K0)に決定し、車両はドライバの急なアクセル戻し操作に対して不安定な挙動を示しやすくなるため、それに備えている。
したがって、急なアクセル戻し操作により車両が不安定な挙動になりやすいのに対し、急なアクセル戻し操作による不安定挙動を未然に防止することができる。
【0075】
前記第9補正係数G9は、ギヤシフトに対する初期閾値K0の補正係数である。この第9補正係数G9は、図10に示すように、ギヤのシフトを開始するシフトチェンジ時刻tssになると、G9=1から急勾配により低下させ、その後、緩勾配により上昇させて時刻tseになるとG9=1へ復帰させるようにする。
すなわち、シフトチェンチジに伴い車両の挙動が変化することが予測される限られた時間(時刻tss〜時刻tse)、閾値K1を下げた値(K1=G9×K0)に決定する。これによって、シフトチェンジ時に発生しやすい不安定な挙動を未然に察知する。
したがって、シフトチェンジ時、モータ発生トルクの変化や伝達される駆動トルクの急変によって、車両が不安定な挙動になりやすくなるのを防止することができる。
なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0076】
次に、効果を説明する。
実施例2の電気自動車の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0077】
(8) 前記閾値決定手段(ステップS23)は、前記回生協調ブレーキ制御中におけるドライバ運転操作状態を表すドライバ運転操作状態量が、車両挙動が安定挙動から不安定挙動へ移行しやすいドライバ運転操作状態を表すほど前記閾値K1を下げた値に決定する。
このため、上記(1)〜(4)の効果に加え、車両挙動が安定挙動から不安定挙動へ移行しやすいドライバ運転操作状態のとき、ドライバ運転操作による不安定挙動を未然に防止することができる。
【0078】
(9) 前記閾値決定手段(ステップS23)は、前記ドライバ運転操作状態量として操舵速度を用い、前記操舵速度が速いほど前記閾値K1を下げた値に決定する(図9(a)の第3補正係数G3)。
このため、上記(8)の効果に加え、急操舵により車両が不安定な挙動になりやすいのに対し、急操舵による不安定挙動を未然に防止することができる。
【0079】
(10) 前記閾値決定手段(ステップS23)は、前記ドライバ運転操作状態量としてブレーキ踏み込み速度を用い、前記ブレーキ踏み込み速度が速いほど前記閾値K1を下げた値に決定する(図9(b)の第4補正係数G4)。
このため、上記(8)または(9)の効果に加え、急ブレーキ操作により車両が不安定な挙動になりやすいのに対し、急ブレーキ操作による不安定挙動を未然に防止することができる。
【0080】
(11) 前記閾値決定手段(ステップS23)は、前記ドライバ運転操作状態量としてアクセル戻し速度を用い、前記アクセル戻し速度が速いほど前記閾値K1を下げた値に決定する(図9(c)の第5補正係数G5)。
このため、上記(8)〜(10)の効果に加え、急なアクセル戻し操作により車両が不安定な挙動になりやすいのに対し、急なアクセル戻し操作による不安定挙動を未然に防止することができる。
【0081】
(12) 前記閾値決定手段(ステップS23)は、前記ドライバ運転操作状態量として変速機のシフトチェンジ情報を用い、シフトチェンジの開始時点から限られた時間までの間、前記閾値K1を下げた値に決定する(図10の第9補正係数G9)。
このため、上記(8)〜(11)の効果に加え、シフトチェンジ時、モータ発生トルクの変化や伝達される駆動トルクの急変によって、車両が不安定な挙動になりやすくなるのを防止することができる。
【実施例3】
【0082】
実施例3は、前後車輪速差の閾値K1を、実施例1と実施例2で用いた補正要素に加え、前輪荷重配分により決定するようにした例である。
【0083】
まず、構成を説明する。
実施例3の電気自動車の制御装置において、全体構成は、実施例1の図1と同じであり、実施例3のメインフローチャートは、実施例1の図2と同じであるので、これらの図示並びに説明を省略する。
【0084】
図11は、実施例3のブレーキコントローラ7にて実行される回生トルク指令演算処理の流れを示すフローチャートである。以下、図11の各ステップについて説明する。
なお、ステップS31,S32,S34,S35,S36の各ステップは、図3のステップS11,S12,S14,S15,S16の各ステップと同様の処理を行うステップであるので、説明を省略する。
【0085】
ステップS37では、ステップS32でのセンサ信号の読み込みに続き、車両の前輪荷重配分を算出し、ステップS33へ進む。
ここで、車両の前輪荷重配分の算出方法は数々あり、例えば、サスペンションのストローク量を計測し、前後のストローク差から求める方法や、車両の挙動から推定する方法などがあるが、ここでは、車両の全重量から前輪の荷重配分を求められればよい。
【0086】
ステップS33では、ステップS37での前輪荷重配分の導出に続き、前後車輪速差の閾値K1を決定し、ステップS34へ進む(閾値決定手段)。
ここで、最終的に決定する閾値K1は、下記の式(3)により算出される。
K1=G1×G2×G3×G4×G5×G6×G7×G8×G9×K0 …(3)
但し、K0:初期閾値、G1:第1補正係数、G2:第2補正係数、G3:第3補正係数、G4:第4補正係数、G5:第5補正係数、G6:第6補正係数、G7:第7補正係数、G8:第8補正係数、G9:第9補正係数、である。
【0087】
次に、作用を説明する。
[閾値決定作用]
実施例3において、前後車輪速差の閾値は、初期閾値K0に対して、横加速度絶対値による第1補正係数G1と、路面摩擦係数による第2補正係数G2と、操舵速度による第3補正係数G3と、ブレーキ踏み込み速度による第4補正係数G4と、アクセル戻し速度による第5補正係数G5と、回生トルクによる第6補正係数G6と、車速による第7補正係数G7と、前輪荷重配分による第8補正係数G8と、ギヤシフトによる第9補正係数G9と、による補正を加えて決定するようにした。
つまり、図11のステップS33において、最終的に決定する閾値K1は、
K1=G1×G2×G3×G4×G5×G6×G7×G8×G9×K0 …(3)
の式により算出される。以下、実施例3の閾値決定作用を説明する。なお、第8補正係数G8を除いて、初期閾値K0および各補正係数G1,G2,G3,G4,G5,G6,G7,G9については、実施例1,2と同様であるので説明を省略する。
【0088】
前記第8補正係数G8は、前輪荷重配分に対する初期閾値K0の補正係数である。この第8補正係数G8は、前輪駆動の場合と後輪駆動の場合とで異ならせて与える。
つまり、前輪駆動の場合は、図12(a)に示すように、ノミナル配分(G8=1)に対して前輪荷重配分が増えた場合は、前輪の回生に伴い前輪が制動スリップすることでの不安定な挙動を招きにくい。このため、G8は1よりも大きくする。逆に、ノミナル配分(G8=1)に対して前輪荷重配分が減った場合は、前輪の回生に伴い前輪が制動スリップすることでの不安定な挙動を招きやすくなる。このため、G8は1よりも小さくする。
後輪駆動の場合も同様な考え方であり、図12(b)に示すように、モータ駆動輪3が制動スリップしやすい条件においては、G8を1よりも小さい値にし、制動スリップしにくい条件ではG8を1よりも大きい値にする。なお、4輪駆動の場合は、前後輪の荷重配分や前後輪の制駆動配分に従い、図12と同様の考え方で、第8補正係数G8を決める。
すなわち、車両の挙動が変化することが予測される前輪荷重配分の変化に対し、閾値K1を下げた値(K1=G8×K0)に決定する。
したがって、車載重量の変化によって荷重配分が変わり、モータ駆動輪3の荷重が軽くなり、回生ブレーキによって制動スリップしやすくなるのに対し、車両が不安定な挙動になりやすくなるのを防止することができる。加えて、ノミナル配分を基準とすることで、閾値K1を、初期閾値K0よりも上げた値にすることも可能で、必要以上に回生トルクを小さくすることを減らすという狙いも達成できる。
なお、他の作用は、実施例1,2と同様であるので、説明を省略する。
【0089】
次に、効果を説明する。
実施例3の電気自動車の制御装置にあっては、実施例1,2の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0090】
(13) 前記閾値決定手段(ステップS33)は、前記車両状態量として前輪荷重配分を用い、前記前輪荷重配分がノミナル配分から不安定挙動へ移行しやすい配分になるほど前記閾値K1を下げた値に決定する(図12の第8補正係数G8)。
このため、前後輪の荷重配分変化があった場合、モータ駆動輪3の荷重が軽くなると、回生ブレーキによって制動スリップしやすくなるのに対し、未然に車両が不安定挙動になるのを防止することができると共に、ノミナル配分を基準とすることで、必要以上に回生トルクを小さくすることを減らすという狙いも達成することができる。
【0091】
以上、本発明の電動車両の制御装置を実施例1〜3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例1〜3に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0092】
実施例1〜3の閾値決定手段は、旋回状態量として横加速度絶対値を用い、横加速度絶対値が大きいほど閾値K1を下げた値に決定する例を示した。しかし、旋回状態量としてヨーレイトを用い、ヨーレイト絶対値が大きいほど閾値K1を下げた値に決定する例としても良い。また、旋回状態量として操舵角を用い、操舵角絶対値が大きいほど閾値K1を下げた値に決定する例としても良い。さらに、横速度とヨーレイトと操舵角を2つ以上組み合わせたり、他の旋回状態を示す状態量を用いたりするような例としても良い。
【0093】
実施例1〜3では、前後車輪速差>閾値であるとの判断されたときの回生トルク指令の補正方法として、閾値と前後車輪速差に基づき、それらの値の差分と定数の積を、回生トルク要求から引き、回生トルク要求を下げる例を示した。しかし、前後車輪速差>閾値であるとの判断されたときの回生トルク指令の補正方法としては、回生トルク指令を即ゼロにする方法としても良い。さらに、前後車輪速差>閾値と判断された場合に回生トルク指令を回生トルク要求よりも小さい値に決定する方法であれば、それ以外の数々な補正方法を採用しても良い。
【0094】
実施例1〜3では、最終的な閾値K1を、説明の都合などを考慮し、式(1)〜式(3)による3つのパターンにより決定する例を示した。しかし、補正係数G1〜G9の組み合わせパターンは、実施例1〜3に限られるものではなく、車両の要求性能などにより適宜、補正係数G1〜G9から選択して組み合わせるような例であっても良い。さらに、実施例1〜3に示した補正係数G1〜G9以外の補正係数を加えるような例としても良い。
【0095】
実施例1〜3では、電動車両として、電気自動車(EV車)の例を示した。しかし、ハイブリッド車(HEV車)、燃料電池車(FCV車)、等、他の前輪駆動や後輪駆動や前後輪駆動の電動車両に適用することができる。すなわち、モータ駆動輪を有し、回生協調ブレーキ制御を行う電動車両であれば適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 モータ
2 油圧ブレーキ
3 モータ駆動輪
4 従動輪
5 車両センサ
51 車輪速センサ
52 横Gセンサ
53 路面μセンサ
54 車速センサ
55 操舵角センサ
56 ヨーレイトセンサ
57 ブレーキストロークセンサ
58 アクセル開度センサ
59 他のセンサ・スイッチ類
6 ATコントローラ
7 ブレーキコントローラ
71 総ブレーキトルク演算部
72 ブレーキ配分演算部
73 回生トルク演算部
74 モータ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12