(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクターの構成〕
図1は、プロジェクター1の概略構成を示す図である。
プロジェクター1は、画像を投射してスクリーン(図示略)上に投影画像を表示する。
そして、このプロジェクター1は、
図1に示すように、外装筐体2内部に収納される光学ユニット3を備える。
【0015】
〔光学ユニットの構成〕
光学ユニット3は、
図1に示すように、発光管311及びリフレクター312を有する光源装置31と、レンズアレイ321,322、偏光変換素子323、及び重畳レンズ324を有する照明光学装置32と、ダイクロイックミラー331,332、及び反射ミラー333を有する色分離光学装置33と、入射側レンズ341、リレーレンズ343、及び反射ミラー342,344を有するリレー光学装置34と、3つの入射側偏光板35と、3つの光変調装置41、3つの光学補償素子42、3つの出射側偏光板43、及び色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム44を有する光学装置4と、投射光学装置としての投射レンズ36とを備える。
そして、光学ユニット3では、上述した構成により、光源装置31から出射され照明光学装置32を介した光束は、色分離光学装置33にて赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの色光に分離される。また、分離された各色光は、各光変調装置41にてそれぞれ変調される。変調された各色光は、プリズム44にて合成されて画像となり、投射レンズ36にてスクリーンに投射される。
【0016】
〔光学装置の構成〕
図2ないし
図5は、光学装置4の構造を示す図である。具体的に、
図2及び
図3は、光学装置4の斜視図であり、
図4及び
図5は、光学装置4の分解斜視図である。
なお、
図2ないし
図5では、G色光側の構成のみを図示しているが、R,Bの各色光側の構成もG色光側の構成と同様の構成である。
光学装置4は、
図2ないし
図5に示すように、3つの光変調装置41、3つの光学補償素子42(
図1)、3つの出射側偏光板43(
図3、
図4)、及びプリズム44の他、3つの第1固定部材5、及び3つの第2固定部材6と、支持体7とを備え、これら各部材41〜44,5〜7が一体化されたものである。
なお、光学装置4としては、これら各部材41〜44,5〜7の他、3つの入射側偏光板35も一体化する構成を採用しても構わない。
【0017】
〔光変調装置の構成〕
光変調装置41は、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶が密閉封入された所謂、液晶パネルで構成されている。
これら3つの光変調装置41は、
図1に示すように、各入射側偏光板35の光出射側にそれぞれ配設されている。
そして、光変調装置41は、制御装置(図示略)からの信号に基づいて、液晶分子の配列状態を変化させ、入射側偏光板35から出射された光束を変調する。
なお、以下では、説明の便宜上、R色光側の光変調装置41を光変調装置41R、G色光側の光変調装置41を光変調装置41G、及びB色光側の光変調装置41を光変調装置41Bとする(
図1〜
図5)。
【0018】
〔光学補償素子の構成〕
光学補償素子42は、ガラスまたはプラスチック等のポリマー製の透明板状に、複屈折性を有する無機若しくは有機材料からなる板状部材、または、これらを複合した板状部材、WV(Wide View)フィルム等を取り付けたものである。
これら3つの光学補償素子42は、
図1または
図4に示すように、光変調装置41及び出射側偏光板43の間にそれぞれ配設される。
そして、光学補償素子42は、光変調装置41にて正確に変調できなかった位相変調量を微調整し(光変調装置41を介した光束の位相差を補償し)、投影画像のコントラストを向上させる。
【0019】
〔出射側偏光板の構成〕
出射側偏光板43は、入射側偏光板35と略同様の機能を有し、光変調装置41を介して出射された光束のうち、所定の偏光方向の直線偏光を透過し、その他の光束を吸収する。
これら3つの出射側偏光板43は、
図3または
図4に示すように、プリズム44における各光入射面44A(
図1、
図3、
図4)に貼り付けられている。
【0020】
〔クロスダイクロイックプリズムの構成〕
プリズム44は、各出射側偏光板43を介した各色光を合成する。
このプリズム44は、
図3ないし
図5に示すように、プリズム本体441と、3つの透光性基板442とを備える。
プリズム本体441は、4つの直角プリズムを貼り合せた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合せた界面には、2つの誘電体多層膜が形成されている。これら誘電体多層膜は、G色光側の出射側偏光板43を介したG色光を透過させ、R,B色光側の各出射側偏光板43を介したR,B色光をそれぞれ反射させる。このようにして、各色光が合成される。
3つの透光性基板442は、水晶等の熱伝導性の高い透光性材料から構成され、
図3ないし
図5に示すように、各出射側偏光板43よりもサイズの大きい矩形板体形状を有し、プリズム本体441の各光入射面にそれぞれ貼り付けられている。
そして、各透光性基板442は、プリズム44におけるR,G,Bの各色光が入射される光入射面44Aとしてそれぞれ機能する。
すなわち、各出射側偏光板43は、
図3または
図4に示すように、各透光性基板442に貼り付けられている。
【0021】
〔第1固定部材の構成〕
3つの第1固定部材5は、
図2ないし
図5に示すように、各光変調装置41とプリズム44との間に配設されている。
そして、第1固定部材5は、第2固定部材6を支持し、光変調装置41、光学補償素子42、及び第2固定部材6をプリズム44の光入射面44Aに取り付ける。
この第1固定部材5は、金属板が板金加工されることにより形成され、
図2ないし
図5に示すように、第1固定部材本体51(
図4、
図5)と、一対の第1起立部52A,52Bと、4つの突起部53A〜53Dと、4つの傾斜部54A〜54Dとを備える。
第1固定部材本体51は、
図3または
図4に示すように、透光性基板442と略同様の大きさを有する矩形状の板体で構成されている。
この第1固定部材本体51において、中央部分には、
図4または
図5に示すように、光束を透過させるための矩形状の開口部511が形成されている。
なお、この開口部511は、出射側偏光板43の外形形状よりも大きくなるように形成されている。
【0022】
一対の第1起立部52A,52Bは、
図4または
図5に示すように、第1固定部材本体51の左右両端部分が光入射側に向けてそれぞれ略90°折り曲げられた部分である。
4つの突起部53A〜53Dは、
図4または
図5に示すように、一対の第1起立部52A,52Bの先端部分において、上下方向の両端側にそれぞれ設けられ、第1起立部52A,52Bに沿って光入射側に突出する。
すなわち、突起部53A〜53Dは、上下方向に延びる板体形状を有する。
【0023】
4つの傾斜部54A〜54Dは、光変調装置41の位置調整用の治具が当接する部分である。
4つの傾斜部54A〜54Dのうち2つの傾斜部54A,54Bは、
図4または
図5に示すように、第1起立部52Aの先端部分において、各突起部53A,53Bの間に設けられている。また、他の2つの傾斜部54C,54Dは、第1起立部52Bの先端部分において、各突起部53C,53Dの間に設けられている。
具体的に、4つの傾斜部54A〜54Dは、一対の第1起立部52A,52Bから第1起立部52A,52Bの起立方向、つまり光入射側の方向に突出する突出部55A〜55Dが、それぞれ斜めに捩じられて傾斜した部分である。各傾斜部54A〜54Dには、後述する第2治具J2(
図7)が当接する当接面54A1〜54D1が設けられている。
すなわち、傾斜部54A〜54Dは、本発明に係る当接部に相当する。
【0024】
各当接面54A1〜54D1は、入射する光束の光軸に向かう傾斜面であり、当接面54A1〜54D1同士が光軸上の1点で交差する。
本実施形態において、各傾斜部54A〜54Dは、一対の第1起立部52A,52Bの内側、つまり互いの中心から離間する側に折り曲げられ、一対の第1起立部52A,52Bよりも外側に張り出している。また、各当接面54A1〜54D1は、光入射側に向かうにしたがって互いの中心から離間する方向に傾斜している。
【0025】
〔第2固定部材の構成〕
第2固定部材6は、
図2ないし
図5に示すように、パネル保持枠61と、補償素子保持枠62(
図3)と、取付部材63とを備える。
パネル保持枠61は、光変調装置41が収納される矩形状の枠体である。
そして、パネル保持枠61の四隅部分には、
図2ないし
図5に示すように、固定用孔611がそれぞれ形成されている。
補償素子保持枠62は、金属板が板金加工されることにより形成され、光学補償素子42が取り付けられる矩形枠状の板体である。
【0026】
取付部材63は、パネル保持枠61及び補償素子保持枠62がそれぞれ取り付けられる部材である。
この取付部材63は、金属板が板金加工されることにより形成され、
図4または
図5に示すように、取付部材本体631と、一対の第2起立部632A,632Bとを備える。
取付部材本体631は、
図3または
図4に示すように、矩形状の板体で構成されている。
この取付部材本体631において、中央部分には、
図4に示すように、光束を透過させるための矩形状の開口部631Aが形成されている。
また、取付部材本体631において、四隅部分には、
図2ないし
図5に示すように、各突起部53A〜53Dがそれぞれ挿通される挿通孔631Bがそれぞれ形成されている。
そして、パネル保持枠61は、4つの固定用孔611のうち対角位置にある2つの固定用孔611を介してネジにより取付部材本体631の光入射側の板面に取り付けられる。
【0027】
一対の第2起立部632A,632Bは、
図4または
図5に示すように、取付部材本体631の左右両端部分が光出射側に向けてそれぞれ略90°折り曲げられた部分である。
そして、補償素子保持枠62は、
図3に示すように、一対の第2起立部632A,632B間に取り付けられる。
これら一対の第2起立部632A,632B間の離間寸法は、一対の第1起立部52A,52B間の離間寸法よりも若干小さく設定されている。
このため、第1固定部材5に対して第2固定部材6が取り付けられた状態(各突起部53A〜53Dが各挿通孔631Bに挿通された状態)では、取付部材63(一対の第2起立部632A,632B)は、一対の第1起立部52A,52B間に配設されることとなる。
【0028】
〔支持体の構成〕
支持体7は、光学装置4と投射レンズ36とを一体化する部材である。
この支持体7は、
図2ないし
図5に示すように、レンズ支持部71と、プリズム支持部72とが一体的に形成されたものである。
レンズ支持部71は、光学装置4から出射された光束(画像)を通過させるための孔711が形成された矩形状の板体で構成され、投射レンズ36を支持する。
プリズム支持部72は、レンズ支持部71から略直交する方向に突出し、プリズム本体441の下面が接着固定されることで、光学装置4を支持する。
【0029】
〔プロジェクターの製造方法〕
次に、上述したプロジェクター1の製造方法について説明する。
なお、以下では、主にプロジェクター1の光学装置4の製造方法について説明する。
図6は、光学装置4の製造方法を説明するフローチャートである。
先ず、作業者は、光学装置4を製造するにあたって、以下に示すように、パネルユニットPを生成する(ステップS1:パネルユニット生成工程)。
すなわち、作業者は、プリズム本体441に対して各透光性基板442を介して各出射側偏光板43をそれぞれ取り付けるとともに、支持体7を介して、当該プリズム44と投射レンズ36とを一体化する。
また、作業者は、パネル保持枠61を介して光変調装置41を取付部材63に対して取り付けるとともに、補償素子保持枠62を介して光学補償素子42を取付部材63に対して取り付ける。
【0030】
そして、作業者は、各挿通孔631Bに各突起部53A〜53Dを挿通し、光変調装置41、光学補償素子42、第1固定部材5、及び第2固定部材6をユニット化させ、パネルユニットP(
図7参照)を生成する。
また、作業者は、上述した作業を繰り返し実施することで、上述したパネルユニットPをR,G,B色光に対応した3つ生成する。
【0031】
図7は、第1調整工程S2及び第2調整工程S4を説明するための図である。
パネルユニット生成工程S1の後、作業者は、各突起部53A〜53D及び各挿通孔631B間に紫外線硬化型接着剤(以下、UV接着剤)を塗布するとともに、第1固定部材本体51の光出射側の板面にUV接着剤を塗布する。
そして、作業者は、第1治具J1及び第2治具J2を利用して、以下に示すように、光変調装置41の位置調整を実施する(ステップS2:第1調整工程)。
なお、以下では、説明の便宜上、光入射面44Aの法線方向をZ軸とし、光入射面44Aの互いに交差する一対の辺縁にそれぞれ沿う方向をX軸及びY軸とする(
図7参照)。
ここで、第1治具J1は、
図7に示すように、Z軸に沿って互いに近接あるいは離間する方向に移動可能とする板体状の一対の把持部J1A,J1Bを備える。
また、第1治具J1は、X軸に沿う方向、Y軸に沿う方向、Z軸に沿う方向、X軸を中心とする回転方向(以下、Xθ方向)、Y軸を中心とする回転方向(以下、Yθ方向)、及び、Z軸を中心とする回転方向(以下、Zθ方向)に移動可能とする。
【0032】
第2治具J2は、Z軸に沿って進退自在に構成されている。
この第2治具J2は、
図7に示すように、パネルユニットPの各傾斜部54A〜54Dに対応する位置にそれぞれ配設されている。
そして、第2治具J2は、X軸に沿う方向、Y軸に沿う方向、Z軸に沿う方向、及びZθ方向に同時に移動可能とする。
また、第2治具J2は、第1治具J1とともに上述した方向に移動するように構成されている。
なお、
図7では図示を省略したが、第1治具J1及び第2治具J2は、R,G,B色光側の各パネルユニットPに対応してそれぞれ設けられている。
【0033】
先ず、作業者は、
図7に示すように、第1治具J1を操作して、一対の把持部J1A,J1BにてパネルユニットPにおける取付部材本体631の下方側端部を把持させる。
次に、作業者は、第1治具J1を操作して、パネルユニットPを光入射面44Aに対向する位置に位置付けるとともに、開口部511に出射側偏光板43が挿入されるように、第1固定部材本体51における光出射側の板面を光入射面44Aに当接させる。
次に、作業者は、4つの第2治具J2を操作して光入射側に移動させ、各傾斜部54A〜54Dの当接面54A1〜54D1にそれぞれ当接させ、各傾斜部54A〜54Dを所定の力で光出射側に押圧させる。
この状態では、第1固定部材本体51における光出射側の板面と光入射面44Aとは、未硬化のUV接着剤を介して互いに密着した状態となる。
【0034】
そして、作業者は、3つのパネルユニットPを上述した状態に設定した後、第1治具J1及び第2治具J2を利用して、各光変調装置41の位置調整(フォーカス調整及びアライメント調整)を開始する。
先ず、作業者は、以下に示すように、フォーカス調整を実施する。
すなわち、作業者は、図示しない調整用光源装置を操作し、当該調整用光源装置から光変調装置41に向けてフォーカス調整用の光束を出射させる。
そして、作業者は、光変調装置41にて変調され、光学補償素子42、出射側偏光板43、プリズム44、及び投射レンズ36を介してスクリーンに投射された投影画像を確認しながら、投影画像が合焦状態となるように、第1治具J1を操作する。
【0035】
具体的に、作業者は、第1治具J1を操作し、当該第1治具J1を、Z軸に沿う方向、Xθ方向、及びYθ方向に移動させる。
この際、第1固定部材5は、第2治具J2にてプリズム44に押し付けられている。また、第1治具J1は、取付部材63を把持している。
このため、第1治具J1をZ軸に沿う方向に移動させた場合には、各突起部53A〜53D上を摺動しながら、取付部材63がZ軸に沿う方向に移動する。
また、第1治具J1をXθ方向及びYθ方向に移動させた場合には、取付部材63は、第1固定部材5に対して、各突起部53A〜53Dと各挿通孔631Bとの隙間内でXθ方向及びYθ方向に移動する。
【0036】
次に、作業者は、3つの光変調装置41のフォーカス調整を実施した後、以下に示すように、アライメント調整を実施する。
すなわち、作業者は、前記調整用光源から各光変調装置41に向けてアライメント調整用の光束をそれぞれ出射させる。
そして、作業者は、光変調装置41にて変調され、光学補償素子42、出射側偏光板43、プリズム44、及び投射レンズ36を介してスクリーンに投射された投影画像を確認しながら、各投影画像の画素が一致するように、第1治具J1を操作する。
【0037】
具体的に、作業者は、第1治具J1を操作し、当該第1治具J1を、X軸に沿う方向、Y軸に沿う方向、及びZθ方向に移動させる。
そして、第1治具J1をX軸に沿う方向、Y軸に沿う方向、及びZθ方向に移動させた場合には、第1治具J1の移動に伴って取付部材63も上記の方向に移動するとともに、各挿通孔631Bの縁部分にて各突起部53A〜53Dを上記の方向に押圧する。
このため、第1治具J1の移動に伴い、パネルユニットPは、第1固定部材本体51における光出射側の板面が光入射面44A上を摺動しながら、上記の方向に移動する。
【0038】
第1調整工程S2の後、作業者は、各突起部53A〜53Dと各挿通孔631Bとの間に充填されたUV接着剤に紫外線を照射し、当該UV接着剤を硬化させ、第1固定部材5に対して取付部材63を固定する(ステップS3:第1固定工程)。
【0039】
第1固定工程S3の後、作業者は、取付部材63から第1治具J1を外し、第2治具J2を利用して、光変調装置41の位置調整を実施する(ステップS4:第2調整工程)。
なお、第2治具J2については、
図7に示すように、上記の状態(各傾斜部54A〜54Dを所定の力で光出射側に押圧した状態)を継続させる。
【0040】
そして、作業者は、第2治具J2を操作して、当該第2治具J2をX軸に沿う方向、Y軸に沿う方向、及びZθ方向に移動させて(第1固定部材5を当該方向に移動させて)、3つの光変調装置41について、第1調整工程S2でのアライメント調整を再度、実施する。
【0041】
第2調整工程S4の後、作業者は、第1固定部材本体51における光出射側の板面と光入射面44Aとの間に充填されたUV接着剤に紫外線を照射し、当該UV接着剤を硬化させ、光入射面44Aに対して第1固定部材5を固定する(ステップS5:第2固定工程)。
以上の工程S1〜S5により、光学装置4が製造され、この光学装置4を組み込むことでプロジェクター1が製造される。
【0042】
このように、プロジェクター1では、各突起部53A〜53D及び各挿通孔631B間を接着固定する第1固定工程S3と、光入射面44A及び第1固定部材5間を接着固定する第2固定工程S5との2段階に分けて、UV接着剤を硬化させている。
このことにより、第1,第2固定工程S3,S5において、一度に硬化させるUV接着剤の量を少なくでき、当該各工程S3,S5でのUV接着剤の硬化による光変調装置41の位置ずれ量を少なくできる。
また、第1固定工程S3の後、再度、第2調整工程S4を実施しているので、第1固定工程S3でUV接着剤の硬化によって光変調装置41に位置ずれが生じた場合であっても、第2調整工程S4により、光変調装置41を再度、所望の位置に位置付けることができる。
したがって、第1調整工程S2、第1固定工程S3、第2調整工程S4、及び第2固定工程S5の順に実施することで、画素ずれのない良好なプロジェクター1を製造できる。
【0043】
また、第1,第2調整工程S2,S4では第2治具J2により第1固定部材5を光入射面44Aに押し付けながら、光変調装置41の位置調整を実施するので、光変調装置41の位置調整時に第1固定部材本体51における光出射側の板面が光入射面44Aから浮き上がってしまうことを防止できる。
したがって、第2固定工程S5を実施する際には、光入射面44Aに対して第1固定部材本体51における光出射側の板面が密着した状態となり、当該状態で接着固定することで、プリズム44に対する第1固定部材5の固定状態を安定に維持できる。
【0044】
ところで、第2治具J2により第1固定部材5を光入射面44Aに押し付けた状態では、当該押し付けによって、第1固定部材5は、X軸に沿う方向やY軸に沿う方向に移動し難い状態となっている。
このため、第1調整工程S2において、第1治具J1により取付部材63を移動させた場合には、第1治具J1による移動時の力が各挿通孔631Bの縁部分を介して各突起部53A〜53Dに加わり易いものとなる。
すなわち、例えば、第1調整工程S2において、当該力により各突起部53A〜53Dが弾性変形していた場合には、第1固定工程S3の後、取付部材63から第1治具J1を外すと、当該力が解放されて各突起部53A〜53Dが元の状態に戻ろうとするため、光変調装置41が所望の位置からずれ易いものとなる。
本実施形態では、第1固定工程S3の後、再度、第2調整工程S4を実施しているので、UV接着剤の硬化の他、上述した力が解放されることによって光変調装置41に位置ずれが生じた場合であっても、第2調整工程S4により、光変調装置41を再度、所望の位置に位置付けることができる。
【0045】
また、第1固定部材5が第1固定部材本体51と一対の第1起立部52A,52Bとを備え、取付部材63は、一対の第1起立部52A,52B間に配設される。
このことにより、第1調整工程S2において、第1治具J1により取付部材63を移動させた場合に、取付部材63を一対の第1起立部52A,52Bのいずれか一方に当接させることが可能となる。
すなわち、第1治具J1による移動時の力を各突起部53A〜53Dの他、第1起立部52A,52Bに分散させることができ、当該力により各突起部53A〜53Dが弾性変形することを抑制できる。
そして、各突起部53A〜53Dの弾性変形を抑制できるため、取付部材63から第1治具J1を外した際の光変調装置41の位置ずれ量を小さくすることができる。
また、第1調整工程S2において、第1治具J1により取付部材63を移動させた場合に、取付部材63から各突起部53A〜53Dの他、第1起立部52A,52Bに力を加えることで、取付部材63の移動に第1固定部材5を良好に連動させることができる。
【0046】
さらに、各突起部53A〜53Dが第1起立部52A,52Bの先端部分に設けられているので、第1調整工程S2において、第1治具J1により取付部材63を移動させた場合に、取付部材63を一対の第1起立部52A,52Bのいずれか一方に当接させる構成を容易に実現できる。
【0047】
上述した本実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、第1固定部材5は、光変調装置41の位置調整用の第2治具J2が当接する当接面54A1〜54D1を有した少なくとも3つの傾斜部54A〜54Dを備え、各当接面54A1〜54D1は、光入射側に向かうにしたがって互いの中心から離間する方向に傾斜している。
このことにより、接着及び位置調整を2段階で行う場合であっても、各当接面54A1〜54D1に第2治具J2を当接させてプリズム44側に押し付けることで、第2治具J2により第1固定部材5を係止でき、光入射側から第1固定部材5を容易に移動させることができる。このため、第1固定部材5及び第2固定部材6間を接着した後であっても、再度の位置調整を行うことができるので、光変調装置41を所望の位置に位置付けることができる。
したがって、画素ずれのない良好なプロジェクター1が得られる。
【0048】
また、プロジェクター1では、第1固定部材5には、光入射側に突出する突出部55A〜55Dが設けられ、各傾斜部54A〜54Dは、突出部55A〜55Dが捩られて形成されている。
このことにより、傾斜部54A〜54Dの形成にあたり突出部55A〜55Dを捩るだけでよいので、傾斜部54A〜54Dを容易に形成することができる。このため、第1固定部材5の製造コストを低減することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、前記第1実施形態と同様の構造及び同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図8は、第2実施形態に係るプロジェクター1の光学装置4の構造を示す図である。
本実施形態では、前記第1実施形態に対して、
図8に示すように、第1固定部材5の傾斜部54A〜54Dの形状が異なる。その他の構成は、前記第1実施形態と同様である。
【0050】
具体的に、各傾斜部54A〜54Dは、一対の第1起立部52A,52Bの内側、つまり互いの中心に近接する側に向けて折り曲げられ、一対の第1起立部52A,52Bよりも内側に傾斜している。また、各当接面54A1〜54D1は、光入射側に向かうにしたがって互いの中心に近接する方向に傾斜している。
【0051】
上述した第2実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、第1固定部材5は、光変調装置41の位置調整用の第2治具J2が当接する当接面54A1〜54D1を有した少なくとも3つの傾斜部54A〜54Dを備え、各当接面54A1〜54D1は、光入射側に向かうにしたがって互いの中心に近接する方向に傾斜している。
このことにより、各当接面54A1〜54D1に第2治具J2を当接させてプリズム44側に押し付けることで、第2治具J2により第1固定部材5を係止でき、光入射側から第1固定部材5を容易に移動させることができる。このため、第1実施形態のプロジェクター1と同様の作用及び効果を享受できる。
また、各傾斜部54A〜54Dは、互いの中心に近接する方向に傾斜するため、外側への張り出しを抑制することができる。このため、他の部材との干渉を防止でき、設計の自由度を向上させることができる。
【0052】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、第1固定部材5には、傾斜部54A〜54Dが4つ設けられていたが、これに限らない。すなわち、傾斜部は、少なくとも3つ設けられていればよい。
前記実施形態では、傾斜部54A〜54Dは、光入射側への突出部55A〜55Dが捩じられて形成されていたが、これに限らず、例えば、第1起立部52A,52Bの端縁に傾斜部54A〜54Dを設けてもよい。
【0053】
前記第1実施形態では、各当接面54A1〜54D1は、光入射側に向かうにしたがって互いの中心から離間する方向に傾斜していたが、これに限らない。例えば、突出部55A〜55Dをさらに光出射側に折り曲げることで、各当接面54A1〜54D1を、光入射側に向かうにしたがって互いの中心に近接する方向に傾斜させてもよい。
前記第2実施形態では、各当接面54A1〜54D1は、光入射側に向かうにしたがって互いの中心に近接する方向に傾斜していたが、これに限らない。例えば、突出部55A〜55Dをさらに光出射側に折り曲げることで、各当接面54A1〜54D1を、光入射側に向かうにしたがって互いの中心から離間する方向に傾斜させてもよい。
【0054】
前記実施形態では、第1固定部材5は、プリズム本体441に貼り付けられた透光性基板442に接着固定される構成としていたが、これに限らない。
例えば、第1固定部材5をプリズム本体441に直接、固定しても構わない。
また、例えば、プリズム44をプリズム本体441の他、プリズム本体441の上下面にそれぞれ固定された台座を備えた構成とし、特許文献1に記載の構成と同様に、第1固定部材5を各台座側面に固定する構成を採用しても構わない。
【0055】
前記実施形態において、光学装置4の製造方法は、前記実施形態で説明した製造方法に限らない。
例えば、前記実施形態では、部材間を固定する接着剤としてUV接着剤を用いていたが、これに限らず、その他の接着剤、例えば、熱硬化型接着剤を用いても構わない。
また、例えば、前記実施形態では、スクリーン上の投影画像を確認しながら光変調装置41の位置調整(第1,第2調整工程S2,S4)を実施していたが、これに限らず、プリズム44から出射される光束をCCDカメラ等で直接、検出しながら位置調整を実施する方法を採用しても構わない。すなわち、プリズム44に対して光変調装置41を固定した後に、支持体7を介して、当該プリズム44と投射レンズ36とを一体化する方法を採用しても構わない。
【0056】
前記実施形態では、光学装置4は、3つの光変調装置41を備える構成としていたが、これに限らず、2つの光変調装置を備える構成、4つ以上の光変調装置を備える構成としても構わない。
前記実施形態では、光変調装置41として、透過型の液晶パネルを採用していたが、これに限らず、反射型の液晶パネルを採用しても構わない。
前記実施形態では、スクリーンを観察する方向から投射を行うフロントタイプのプロジェクターの例のみを挙げたが、本発明は、スクリーンを観察する方向とは反対側から投射を行うリアタイプのプロジェクターにも適用可能である。