(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、光源装置と、光源装置から出射された光束を変調する光変調装置と、光変調装置にて変調された光束を投射する投射光学装置とを備えたプロジェクターが知られている。
このようなプロジェクターにおいて、投影画像のコントラスト向上等を目的として、光源装置から出射され光変調装置に入射する光束の光量を調整する調光装置を採用した構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の調光装置は、光源装置から出射された光束の光軸を中心として対称配置され、回転することで光源装置から出射された光束を部分的に遮光する一対の遮光板(遮光部材)を備える。
【0003】
そして、遮光板は、光源装置から出射された光束の遮光量が最大となる最大遮光位置に位置付けられた状態(以下、全閉状態と記載)で他方の遮光板に近接する側の端部が光出射側に折り曲げられている。
当該折り曲げ部分は、投影画像のコントラストに影響を与える部分である。
すなわち、遮光板に上述した折り曲げ部分を設けることで、投影画像のコントラストを向上させている。
また、折り曲げ部分には、光源装置から出射された光束の光軸を避けるように円弧状の切欠部が設けられている。
当該切欠部は、一対の遮光板を回転させた際の残光率(光源装置から出射された光束の遮光量が最小となる最小遮光位置に位置付けられた状態での光変調装置に入射する光束の光量を1とした場合での光変調装置に入射する光束の光量の比率)の変化を示す調光カーブに影響を与える部分である。
すなわち、遮光板に上述した切欠部を所望の形状で形成することで、調光カーブをなだらかにすることができ、調光(一対の遮光板の回転)による投影画像の明るさの変化を視認し難いものとすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、遮光板に設けた折り曲げ部分の長さ寸法(折り曲げ位置から先端までの長さ寸法)が長い場合には、一対の遮光板が回転時に衝突してしまうことを回避するために、全閉状態での一対の遮光板間の隙間を大きく設定する必要がある。
そして、このように全閉状態での一対の遮光板間の隙間が大きい場合には、全閉状態で一対の遮光板を通過する光束(光変調装置に入射する光束)の光量が多くなるため、投影画像のコントラストが低下してしまう、という問題がある。
一方、遮光板に設けた折り曲げ部分の長さ寸法が短い場合には、当該折り曲げ部分に上述した切欠部を形成する際に、加工用の工具等が折り曲げ部分以外の部位に干渉してしまうため、切欠部を所望の形状で形成することができない。
そして、このように切欠部を所望の形状で形成できない場合には、調光カーブをなだらかにすることができず、調光による投影画像の明るさの変化を視認し難いものとすることができない、という問題がある。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載の調光装置では、調光による投影画像の明るさの変化が視認し難いように切欠部を所望の形状で形成しようとすると、折り曲げ部分の長さ寸法が長くなり、投影画像のコントラストが低下してしまう。
一方、投影画像のコントラストを向上させるために折り曲げ部分の長さ寸法を短くすると、切欠部を所望の形状で形成することができず、調光による投影画像の明るさの変化を視認し難いものとすることができない。
したがって、投影画像のコントラストを向上させることができ、かつ、調光による明るさの変化を視認し難いものとすることができる技術が要望されている。
【0007】
本発明の目的は、投影画像のコントラストを向上させることができ、かつ、調光による明るさの変化を視認し難いものとすることができるプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプロジェクターは、光源装置と、前記光源装置から出射された光束を変調する光変調装置と、前記光変調装置にて変調された光束を投射する投射光学装置
と、前記光源装置から前記光変調装置に至る光束の光路中に配設され、前記光変調装置に入射する光束の光量を調整する調光装置
と、を備え、前記調光装置は、前記光源装置から出射された光束の光軸を中心として対称配置され、回転することで前記光源装置から出射された光束を部分的に遮光する一対の遮光板を備え、前記遮光板は、前記光源装置から出射された光束の遮光量が最大となる最大遮光位置に位置付けられた状態で、前記光軸に略直交して延出する基部と、前記最大遮光位置に位置付けられた状態で、前記基部における他方の前記遮光板に近接する側の端部に接続し、他方の前記遮光板に近接するにしたがって光入射側に向うように傾斜した第1傾斜部と、前記最大遮光位置に位置付けられた状態で、前記第1傾斜部における他方の前記遮光板に近接する側の端部に接続し、他方の前記遮光板に近接するにしたがって光出射側に向うように傾斜した第2傾斜部と
、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、遮光板が上述した基部及び第1,第2傾斜部を備えるので、第2傾斜部の長さ寸法(第1傾斜部との接続位置から先端までの長さ寸法)が短い場合であっても、第2傾斜部に切欠部を所望の形状で形成することができる。
すなわち、基部と第2傾斜部との間に位置する第1傾斜部が上述したように傾斜しているため、第2傾斜部の長さ寸法が短い場合であっても、切欠部を形成する際に、加工用の工具等が第1傾斜部に干渉してしまうことを回避できる。このため、第2傾斜部の長さ寸法が短い場合であっても、第2傾斜部に切欠部を所望の形状で形成することができる。
したがって、第2傾斜部の長さ寸法を短くすることで、全閉状態での一対の遮光板間の隙間を小さくすることができる。すなわち、全閉状態での一対の遮光板を通過する光束の光量が少なくなるため、投影画像のコントラストを向上させることができる。
また、第2傾斜部に切欠部を所望の形状で形成することができるため、調光による投影画像の明るさの変化を視認し難いものとすることができる。
【0010】
本発明のプロジェクターでは、前記調光装置は、前記遮光板を制御するモーターと、前記モーターに設けられるピニオンと、前記ピニオンに噛合される第
1ギアと、前記第1ギアを介して前記モータ
ーの駆動力が伝達される第2
ギア及び第3ギアと
、を備え、前記第1ギアの回転中心は、前記ピニオンの回転中心と前記第2ギアの回転中心
とを結ぶ直線上からずれた位置に位置付けられていることが好ましい。
【0011】
本発明では、ピニオン及び第2ギアの間に位置する第1ギアを、ピニオン及び第2ギアの各回転中心を結ぶ直線上からずらすことで、ピニオン及び第1,第2ギアが熱膨張した際の各歯車同士のかみ込みを抑制できる。
このことにより、プロジェクターの使用時では、一対の遮光板への光の照射によりピニオン及び第1,第2ギアが熱膨張するため、歯車同士のかみ込みを抑制し、動作不良となることを抑制できる。
【0012】
本発明のプロジェクターでは、前記調光装置は、スリーブとシャフトとの間にベアリングを介したピボットアッセンブリーを備え、前記遮光板は、前記ピボットアッセンブリーを介して回転可能に構成されていることが好ましい。
ところで、遮光板を回転させるための回転軸に軸受けがない構成(例えば、特許文献1に記載の調光装置)では、長期間の使用により遮光板の位置がずれてしまう恐れがある。
例えば、光源装置から出射された光束を所定の遮光量で遮光させるために、遮光板を予め設定された回転量だけ回転させても、遮光板の位置がずれているため、所定の遮光量で遮光させることができない。すなわち、調光制御を精度良く実施することができない。
【0013】
本発明では、遮光板が上述したピボットアッセンブリーを介して回転可能に構成されているので、長期間の使用によっても、遮光板の位置がずれ難い構成となり、遮光板を予め設定された回転量だけ回転させることで、所望の遮光量で遮光させることができる。
したがって、長期間の使用によっても、調光制御を精度良く実施することができ、投影画像のコントラスト低下を抑制できる。
また、上述したピボットアッセンブリーを用いることで、例えば遮光板を回転させるための回転軸に軸受けがない構成と比較して、調光装置の駆動時の騒音を低減でき、プロジェクターの静粛性を十分に確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクターの構成〕
図1は、プロジェクター1の概略構成を示す図である。
プロジェクター1は、画像を投射してスクリーン(図示略)上に投影画像を表示する。
そして、このプロジェクター1は、
図1に示すように、外装筐体2内部に収納される光学ユニット3を備える。
【0016】
〔光学ユニットの構成〕
光学ユニット3は、
図1に示すように、光学部品用筐体4と、光学部品用筐体4に支持される投射光学装置としての投射レンズ5とを備える。
そして、光学部品用筐体4には、
図1に示すように、光源ランプ311及びリフレクター312を有する光源装置31と、第1,第2レンズアレイ321,322、偏光変換素子323、及び重畳レンズ324を有する照明光学装置32と、ダイクロイックミラー331,332、及び反射ミラー333を有する色分離光学装置33と、入射側レンズ341、リレーレンズ343、及び反射ミラー342,344を有するリレー光学装置34と、3つの入射側偏光板35と、光変調装置としての3つの液晶パネル36と、3つの出射側偏光板37と、色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム38と、調光装置6とが収納される。
そして、上記各部材31〜38,6は、
図1に示すように、光学部品用筐体4内部に設定された照明光軸Ax(光源装置31から出射された光束の光軸)に対する所定位置に位置付けられる。
【0017】
上述した構成により、光源装置31から出射され照明光学装置32を介した光束は、色分離光学装置33にて赤(R),緑(G),青(B)の3つの色光に分離される。また、分離された各色光は、各液晶パネル36にてそれぞれ変調される。変調された各色光は、プリズム38にて合成され、投射レンズ5にてスクリーンに投射される。
なお、上述した各部材4,5,31〜38は、一般的なプロジェクターで用いられる構成であるため、以下では、調光装置6の構成のみを説明する。
【0018】
〔調光装置の構成〕
図2ないし
図4は、調光装置6の構成を示す図である。具体的に、
図2は全閉状態(遮光量が最大となる最大遮光位置に後述する一対の遮光板68が位置付けられた状態)の調光装置6を光出射側から見た斜視図であり、
図3は全閉状態(
図2の状態)から遮光量が最小となる最小遮光位置に向けて一対の遮光板68が回転した状態を示す斜視図であり、
図4は調光装置6の分解斜視図である。
調光装置6は、
図1に示すように、後述する一対の遮光板68が第1,第2レンズアレイ321,322間に位置するように配設され、制御装置(図示略)による制御の下、光源装置31から出射され液晶パネル36に入射する光束の光量を調整する。
この調光装置6は、
図2ないし
図4に示すように、ベース部61と、モーター62と、第1〜第3ギア63〜65と、一対のピボットアッセンブリー66と、センサー部67と、一対の遮光板68とを備える。
【0019】
〔ベース部の構成〕
ベース部61は、板金加工が施された板体で構成され、各部材62〜68を支持するとともに、光学部品用筐体4における背面側(投射レンズ5が配設される側とは反対側)の側面に固定される。
そして、ベース部61が光学部品用筐体4に固定されることで、一対の遮光板68は、第1,第2レンズアレイ321,322間に位置付けられる。
【0020】
〔モーターの構成〕
モーター62は、制御装置(図示略)による制御の下、第1ギア63を回転させる駆動力を発生するものである。
このモーター62は、
図4に示すように、支持軸であるスピンドルを有するモーター本体621と、スピンドルの先端に設けられたピニオン622とを備える。
そして、モーター62は、ベース部61に形成された開口部611(
図4)にスピンドルが挿通され、ピニオン622がベース部61の前面側(投射レンズ5が配設される側)に位置した状態で、ネジSc1(
図4)にてベース部61に固定される。
【0021】
〔第1〜第3ギアの構成〕
第1ギア63は、ピニオン622に噛合され、モーター62で発生した駆動力を第2ギア64に伝達する。
この第1ギア63は、
図2ないし
図4に示すように、同軸上に積層されて形成された大ギア部631及び小ギア部632を備える。
大ギア部631の径寸法は、ピニオン622及び小ギア部632の径寸法より大きく設定されている。
また、第1ギア63の中心位置には、
図2ないし
図4に示すように、ベース部61に取り付けられた支持軸612が挿通される円孔633が形成されている。
そして、第1ギア63は、ベース部61の前面側に位置するように、支持軸612を介してベース部61に対して回転可能に軸支される。
【0022】
第2,第3ギア64,65は、第1ギア63を介して伝達されたモーター62の駆動力によって互いに逆方向に回転し、一対の遮光板68をそれぞれ回転させる。
具体的に、第2,第3ギア64,65は、
図2ないし
図4に示すように、扇形形状を有し、当該扇形の外周部分に歯型641,651が形成されている。
そして、第2ギア64の歯型641は、
図2または
図3に示すように、小ギア部632に噛合される。また、第3ギア65の歯型651は、第2ギア64の歯型641に噛合される。
【0023】
また、第2,第3ギア64,65には、
図4に示すように、一対のピボットアッセンブリー66を構成する後述する各シャフト662の一端が挿通される挿通孔642,652がそれぞれ形成されている。
さらに、第2ギア64において、背面側の端面には、
図4に示すように、背面側に向けて突出する遮蔽用突起643が形成されている。
この遮蔽用突起643は、具体的には後述するが、一対の遮光板68の位置を検出する際に用いられる部分である。
【0024】
〔ピボットアッセンブリーの構成〕
図5は、ピボットアッセンブリー66の構造を示す図である。具体的に、
図5(A)はピボットアッセンブリー66の側面図であり、
図5(B)は
図5(A)におけるB−B線の断面図である。
一対のピボットアッセンブリー66は、第2,第3ギア64,65(一対の遮光板68)を回転可能にそれぞれ軸支する。
なお、一対のピボットアッセンブリー66は、同様の構造を有しているため、以下では、一つのピボットアッセンブリー66のみを説明する。
【0025】
ピボットアッセンブリー66は、
図5に示すように、スリーブ661と、シャフト662と、2つのラジアルボールベアリング663(
図5(B))とを備える。
スリーブ661は、
図5に示すように、円筒形状を有し、内部にシャフト662及び2つのラジアルボールベアリング663が収納される。
シャフト662は、
図5に示すように、円柱形状を有し、スリーブ661の内部に挿通される。
このシャフト662において、一端側の側面には、
図4に示すように、挿通孔642,652の形状に対応させて、互いに対向する平坦面662Aが形成されている。
また、当該一端側には、
図5(B)に示すように、ネジSc2(
図2ないし
図4)が螺合するネジ孔662Bが形成されている。
2つのラジアルボールベアリング663は、
図5(B)に示すように、スリーブ661内部において、スリーブ661とシャフト662との隙間に配設され、シャフト662の軸(
図5中、左右方向)に沿って並設されている。
以上の構成により、2つのラジアルボールベアリング663を介して、シャフト662の軸を中心として、スリーブ661及びシャフト662が相対的に回転可能となる。
【0026】
そして、第2,第3ギア64,65は、一対のピボットアッセンブリー66に対して、以下に示すように、取り付けられる。
先ず、作業者は、各シャフト662の一端をベース部61に形成された各開口部613(
図4)に挿通し、当該各一端がベース部61の前面側に位置するように、各スリーブ661をベース部61の背面側の端面にあてがう。
この状態で、作業者は、各シャフト662の一端を各挿通孔642,652にそれぞれ挿通し、ネジSc2を各シャフト662の一端に形成された各ネジ孔662Bに螺合する。
ネジSc2をネジ孔662Bに螺合することで、ピボットアッセンブリー66は、ベース部61に固定される。
また、第2,第3ギア64,65は、ベース部61の前面側に位置した状態で、各シャフト662にそれぞれ固定され、各シャフト662とともに各スリーブ661に対してそれぞれ回転可能となる。
【0027】
〔ピニオン及び第1〜第3ギアの位置関係〕
図6は、ピニオン622及び第1〜第3ギア63〜65の位置関係を示す図である。
本実施形態では、ピニオン622及び第1〜第3ギア63〜65は、以下に示すような位置関係となるように設定されている。
なお、以下では、
図6に示すように、ピニオン622の回転中心を回転中心O1とし、第1ギア63の回転中心を回転中心O2とし、第2ギア64の回転中心を回転中心O3とし、第3ギア65の回転中心を回転中心O4とする。
すなわち、ピニオン622及び第1,第2ギア63,64は、
図6に示すように、各回転中心O1,O3を結ぶ直線上に回転中心O2が位置しないように位置付けられている。
より具体的に、ピニオン622及び第1,第2ギア63,64は、回転中心O1,O2を結ぶ直線L12と、回転中心O2,O3を結ぶ直線L23とのなす角度θ(
図6)が略10°程度になるように位置付けられている。
【0028】
また、ピニオン622及び第1ギア63は、以下に示すように構成されている。なお、第1,第2ギア63,64の関係、及び第2,第3ギア64,65の関係も同様である。
すなわち、ピニオン622及び第1ギア63は、標準平歯車(転位係数が0)で構成されている。また、ピニオン622及び第1ギア63の中心距離(回転中心O1,O2間の距離)は、理想的な中心距離(モジュール(基準円直径を歯数で除したもの)とピニオン622及び第1ギア63の各歯数とで算出される中心距離)よりも若干大きくなるように設定されている。
【0029】
なお、上記に限らず、ピニオン622及び第1ギア63を以下に示すように構成しても構わない。第1,第2ギア63,64の関係、及び第2,第3ギア64,65の関係も同様である。
すなわち、ピニオン622及び第1ギア63は、転位平歯車(転位係数が0より小さい)で構成されている。また、ピニオン622及び第1ギア63の中心距離は、当該ピニオン622及び第1ギア63を標準平歯車で構成した場合での理想的な中心距離と同一となるように設定されている。
【0030】
〔センサー部の構成〕
センサー部67は、
図4に示すように、フォトセンサー671及び回路基板672を備え、第2ギア64の位置、すなわち、第2ギア64に取り付けられている遮光板68の位置を検出する機能を有する。
そして、センサー部67は、フォトセンサー671がベース部61に形成された開口部614(
図4)に挿通されてベース部61の前面側に位置した状態で、ネジSc3(
図4)によりベース部61に取り付けられる。
具体的に、センサー部67は、第2ギア64が回転されて所定の位置に達した際に、遮蔽用突起643がフォトセンサー671から照射される光を遮蔽する。そして、センサー部67は、光の検出状態が変化することにより、第2ギア64によって保持される遮光板68の位置を検出する。また、センサー部67は、遮光板68の位置の検出状態に係る検出信号を制御装置(図示略)に出力する。
【0031】
〔遮光板の構成〕
図7は、遮光板68の形状を示す図である。具体的に、
図7は、全閉状態での上方側の遮光板68を前面側から見た図である。
一対の遮光板68は、第1,第2レンズアレイ321,322間に配設され、第2,第3ギア64,65とともに回転し、第1レンズアレイ321を透過した光束を部分的に遮光することで、第2レンズアレイ322に入射する光束の光量を調整する。
なお、一対の遮光板68は、照明光軸Axを通る水平面Fhを基準として対称となるように形成されている(
図8参照)。このため、以下では、一つの遮光板68のみを説明する。
【0032】
遮光板68は、遮光性を有する矩形状(長手方向が前面側から背面側への方向)の板材で構成されている。
そして、遮光板68は、
図2ないし
図4に示すように、背面側に設けられた取付部68Aを介して、ネジSc4により、第2ギア64あるいは第3ギア65に取り付けられる。
なお、遮光板68の材料としては、アルミニウム、銅、あるいはマグネシウム等や、アルミニウム、銅、マグネシウムを含有する合金等が例示できる。
そして、遮光板68は、長手方向の寸法が第2レンズアレイ322における各小レンズ(図示略)が形成された領域における同方向の寸法に応じて設定され、短手方向の寸法が同じく各小レンズが形成された領域における同方向の寸法の略半分に設定されている。
【0033】
また、上述した遮光板68は、
図7に示すように、基部681と、第1傾斜部682と、第2傾斜部683とを備える。
基部681は、全閉状態で、照明光軸Ax(水平面Fh)に略直交して延出する。
第1傾斜部682は、全閉状態で、基部681における他方の遮光板68に近接する側の端部に接続し、他方の遮光板68に近接するにしたがって光入射側に向うように傾斜している。
なお、第1傾斜部682は、基部681に対して鈍角をなすように傾斜している。
【0034】
第2傾斜部683は、全閉状態で、第1傾斜部682における他方の遮光板68に近接する側の端部に接続し、他方の遮光板68に近接するにしたがって光出射側に向うように傾斜している。
なお、第2傾斜部683は、第1傾斜部682に対して鋭角をなすように傾斜している。
そして、第2傾斜部683は、全閉状態で、先端が他方の遮光板68に最も近接するとともに、水平面Fhに略平行となるように設定されている。
すなわち、基部681及び第1,第2傾斜部682,683は、板体を2回、折り曲げることで形成されたものである。
また、第2傾斜部683において、長手方向の略中央部分(照明光軸Axを避ける位置)には、
図2ないし
図4に示すように、先端から基端側にかけて円弧状の切欠部683Aが形成されている。
【0035】
図8及び
図9は、本実施形態の効果を説明するための図である。具体的に、
図8は、全閉状態での調光装置6を光入射側から見た図である。
図9は、モーター62のステップ数と残光率(最小遮光位置に位置付けられた状態での液晶パネル36に入射する光束の光量を1とした場合での液晶パネル36に入射する光束の光量の比率)との関係(調光カーブ)を示す図である。
【0036】
上述した本実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、遮光板68が基部681及び第1,第2傾斜部682,683を備えるので、第2傾斜部683の長さ寸法(第1傾斜部682との接続位置から先端までの長さ寸法)が短い場合であっても、第2傾斜部683に切欠部683Aを所望の形状で形成することができる。
すなわち、基部681と第2傾斜部683との間に位置する第1傾斜部682が上述したように傾斜しているため、第2傾斜部683の長さ寸法が短い場合であっても、切欠部683Aを形成する際に、加工用の工具等が第1傾斜部682に干渉してしまうことを回避できる。このため、第2傾斜部683の長さ寸法が短い場合であっても、第2傾斜部683に切欠部683Aを所望の形状で形成することができる。
【0037】
したがって、第2傾斜部683の長さ寸法を短くすることで、
図8に示すように、全閉状態での一対の遮光板68間の隙間Aを小さくすることができる。すなわち、全閉状態での一対の遮光板68を通過する光束の光量が少なくなるため、投影画像のコントラストを向上させることができる。
また、第2傾斜部683に切欠部683Aを所望の形状で形成することができるため、
図9に示すように、調光カーブをなだらかにすることができ、調光による投影画像の明るさの変化を視認し難いものとすることができる。
【0038】
さらに、全閉状態において、第2傾斜部683同士が互いに略平行となるため、プロジェクター1に外部から衝撃が加わった場合であっても、一対の遮光板68は、第2傾斜部683同士が面で衝突することとなる。このため、上記の場合であっても、一対の遮光板68同士が互いにかみ合って動作不良となることを防止できる。
【0039】
また、遮光板68がピボットアッセンブリー66を介して回転可能に構成されているので、長期間の使用によっても、遮光板68の位置がずれ難い構成となり、遮光板68を予め設定された回転量(モーター62のステップ数)だけ回転させることで、所望の遮光量で遮光させることができる。
したがって、長期間の使用によっても、調光制御を精度良く実施することができ、投影画像のコントラスト低下を抑制できる。
さらに、ピボットアッセンブリー66を用いることで、例えば遮光板68を回転させるための回転軸に軸受けがない構成と比較して、調光装置6の駆動時の騒音を低減でき、プロジェクター1の静粛性を十分に確保できる。
また、プロジェクター1に外部から衝撃が加わった場合であっても、遮光板68の位置を良好に維持でき、他の部材に遮光板68が衝突することも回避できる。
【0040】
さらに、ピニオン622及び第1,第2ギア63,64は、各回転中心O1,O3を結ぶ直線上に回転中心O2が位置しないように位置付けられている。
すなわち、ピニオン622及び第2ギア64の間に位置する第1ギア63を各回転中心O1,O3を結ぶ直線上からずらすことで、ピニオン622及び第1,第2ギア63,64が熱膨張した際の各歯車同士がかみ込みことを抑制できる。
このことにより、プロジェクター1の使用時では、一対の遮光板68への光の照射によりピニオン622及び第1,第2ギア63,64が熱膨張するため、歯車同士のかみ込みを抑制し、動作不良となることを抑制できる。
【0041】
また、ピニオン622及び第1ギア63は、標準平歯車で構成されているとともに、中心距離が理想的な中心距離よりも若干大きくなるように設定されている。なお、第1,第2ギア63,64の関係、及び第2,第3ギア64,65の関係も同様である。
すなわち、ピニオン622及び第1ギア63は、常温の場合(熱膨張していない場合)には、歯車同士に遊び(バックラッシュ)を有する。
一方、ピニオン622及び第1ギア63は、温度上昇により熱膨張した場合には、歯車同士が良好に噛合するように構成されている。
このことにより、プロジェクター1の使用時では、一対の遮光板68への光の照射によりピニオン622及び第1ギア63が熱膨張するため、歯車同士を良好に噛合させ、モーター62の駆動力を良好に伝達させることができる。
なお、ピニオン622及び第1ギア63を転位平歯車で構成し、中心距離を、ピニオン622及び第1ギア63を標準平歯車で構成した場合での理想的な中心距離と同一に設定した場合でも、上記同様の効果を享受できるものである。
【0042】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、調光装置6は、第1,第2レンズアレイ321,322間に配設されていたが、これに限らず、光源装置31から液晶パネル36に至る光束の光路中であれば、いずれの位置に配設しても構わない。
前記実施形態では、ピニオン622及び第1〜第3ギア63〜65は、平歯車で構成されていたが、これに限らず、その他の歯車、例えば、はすば歯車で構成しても構わない。
前記実施形態では、遮光板68は、板体が2回、折り曲げられることで基部681及び第1,第2傾斜部682,683が形成されていたが、折り曲げ回数は、これに限らず、3回以上でも構わない。すなわち、基部681と第2傾斜部683との間に、基部681に対する傾斜角度が異なる複数の第1傾斜部682を設けた構成を採用しても構わない。
前記実施形態では、光変調装置として透過型の液晶パネル36を採用していたが、これに限らず、反射型の液晶パネルや、マイクロミラーを用いたデバイス等、液晶以外の光変調装置を採用しても構わない。