特許第5817431号(P5817431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5817431
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】線材の軟化装置及び線材の軟化方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/62 20060101AFI20151029BHJP
   C21D 9/573 20060101ALI20151029BHJP
   C21D 9/56 20060101ALI20151029BHJP
   C22F 1/08 20060101ALI20151029BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20151029BHJP
【FI】
   C21D9/62 102
   C21D9/573 102
   C21D9/56 102
   C22F1/08 A
   C22F1/08 Y
   !C22F1/00 625
   !C22F1/00 661A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-232513(P2011-232513)
(22)【出願日】2011年10月24日
(65)【公開番号】特開2013-87360(P2013-87360A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 英司
【審査官】 蛭田 敦
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−108712(JP,U)
【文献】 特開昭60−116727(JP,A)
【文献】 特開2000−265219(JP,A)
【文献】 特開2000−313921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/52−9/66
B21B 1/00−11/00
B21B 47/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液を貯留する冷却液貯留部と、
前記冷却液貯留部外に設けられ、一定速度で送られる線材を案内しつつ前記線材に一定電圧を印加するための第1通電用シーブと、
前記冷却液貯留部内に設けられ、前記第1通電用シーブを経て供給される前記線材を案内しつつ前記線材に通電を行うための第2通電用シーブと、
前記冷却液貯留部における前記冷却液の液面位置を検出する液面位置検出部と、
前記液面位置検出部の検出結果に基づいて、前記第1通電用シーブと前記第2通電用シーブとの間における、前記線材の加熱経路長を制御する加熱経路長制御部と、
を備える線材の軟化装置。
【請求項2】
請求項1記載の線材の軟化装置であって、
前記加熱経路長制御部は、
前記冷却液貯留部内における前記冷却液の液面位置を調整する液面調整部を備え、
前記液面位置検出部の検出結果に基づいて、前記冷却液貯留部内における前記冷却液の液面位置を一定範囲内に維持するように、前記液面調整部による調整動作が制御される、線材の軟化装置。
【請求項3】
請求項1記載の線材の軟化装置であって、
前記加熱経路長制御部は、
前記第2通電用シーブに対する前記第1通電用シーブの位置を調整するシーブ位置調整部を備え、
前記液面位置検出部の検出結果に基づいて、前記第1通電用シーブと前記冷却液貯留部内における前記冷却液の液面との距離を一定範囲内に維持するように、前記シーブ位置調整部による前記第1通電用シーブの位置調整動作が制御される、線材の軟化装置。
【請求項4】
(a)冷却液貯留部外に設けられた第1通電用シーブから前記冷却液貯留部内に設けられた第2通電用シーブに向けて、前記第1通電用シーブと前記第2通電用シーブとの間で一定電圧を印加して線材に通電しつつ一定速度で前記線材を供給するステップと、
(b)前記冷却液貯留部内の冷却水で前記線材を冷却するステップと、
(c)前記冷却液貯留部における前記冷却液の液面位置の変動に基づいて、前記第1通電用シーブと前記第2通電用シーブとの間における、前記線材の加熱経路長を制御するステップと、
を備える線材の軟化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線に用いられる線材を軟化させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業等において、電気通信等のための配線材として、例えば、軟銅線を撚り合わせた電線が用いられている。電線と各電気機器との接続は、電線の端部に圧着された端子をコネクタへ挿入し、このコネクタと電気機器側のコネクタとを相互接続することにより行われる。
【0003】
上記のような軟銅線は、線材を引き伸す工程、引き伸された線材を加熱軟化する工程等を経て製造される。線材を加熱軟化する技術として、特許文献1に開示のものがある。
【0004】
特許文献1では、線材は、2つの給電ロールに挟まれた加熱ゾーンを通過して通電加熱された後、冷却ゾーンにて水中で冷却されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−92778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電線の端部に端子を圧着する場合、電線と端子との圧着強度をある程度確保する必要がある。しかしながら、電線と端子との圧着強度のばらつきが大きいと、電線と端子との圧着強度をある程度以上に確保することは困難となる。
【0007】
そこで、本発明は、電線と端子との圧着強度のばらつきを抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る線材の軟化装置は、冷却液を貯留する冷却液貯留部と、前記冷却液貯留部外に設けられ、一定速度で送られる線材を案内しつつ前記線材に一定電圧を印加するための第1通電用シーブと、前記冷却液貯留部内に設けられ、前記第1通電用シーブを経て供給される前記線材を案内しつつ前記線材に通電を行うための第2通電用シーブと、前記冷却液貯留部における前記冷却液の液面位置を検出する液面位置検出部と、前記液面位置検出部の検出結果に基づいて、前記第1通電用シーブと前記第2通電用シーブとの間における、前記線材の加熱経路長を制御する加熱経路長制御部とを備える。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る線材の軟化装置であって、前記加熱経路長制御部は、前記冷却液貯留部内における前記冷却液の液面位置を調整する液面調整部を備え、前記液面位置検出部の検出結果に基づいて、前記冷却液貯留部内における前記冷却液の液面位置を一定範囲内に維持するように、前記液面調整部による調整動作が制御される。
【0010】
第3の態様は、第1の態様に係る線材の軟化装置であって、前記加熱経路長制御部は、前記第2通電用シーブに対する前記第1通電用シーブの位置を調整するシーブ位置調整部を備え、前記液面位置検出部の検出結果に基づいて、前記第1通電用シーブと前記冷却液貯留部内における前記冷却液の液面との距離を一定範囲内に維持するように、前記シーブ位置調整部による前記第1通電用シーブの位置調整動作が制御される。
【0011】
また、上記課題を解決するため、第4の態様に係る線材の軟化方法は、(a)冷却液貯留部外に設けられた第1通電用シーブから前記冷却液貯留部内に設けられた第2通電用シーブに向けて、前記第1通電用シーブと前記第2通電用シーブとの間で一定電圧を印加して線材に通電しつつ一定速度で前記線材を供給するステップと、(b)前記冷却液貯留部内の冷却水で前記線材を冷却するステップと、(c)前記冷却液貯留部における前記冷却液の液面位置の変動に基づいて、前記第1通電用シーブと前記第2通電用シーブとの間における、前記線材の加熱経路長を制御するステップとを備える。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様に係る線材の軟化方法によると、前記液面位置検出部の検出結果に基づいて、前記第1通電用シーブと前記第2通電用シーブとの間における、前記線材の加熱経路長を制御するため、加熱経路長のばらつきを抑制して、電線と端子との圧着強度のばらつきを抑制できる。
【0013】
第2の態様によると、前記冷却液貯留部内における前記冷却液の液面位置を一定範囲内に維持することによって、加熱経路長のばらつきを抑制することができる。
【0014】
第3の態様によると、前記第1通電用シーブと前記冷却液貯留部内における前記冷却液の液面との距離を一定範囲内に維持することによって、加熱経路長のばらつきを抑制することができる。
【0015】
第4の態様に係る線材の軟化方法によると、前記冷却液貯留部における前記冷却液の液面位置の変動に基づいて、前記第1通電用シーブと前記第2通電用シーブとの間における、前記線材の加熱経路長を制御するため、加熱経路長のばらつきを抑制して、電線と端子との圧着強度のばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】背景技術に係る線材Wの軟化装置を示す概略図である。
図2】加熱条件(軟化温度×加熱時間)と破断荷重及び破断伸びの関係を示す図である。
図3】冷却液の液面位置、冷却液の温度及び窒素量と破断荷重との関係を示す図である。
図4図3を各因子の水準毎に整理した図である。
図5】第1実施形態に係る線材の軟化装置を示す概略図である。
図6】同上の軟化装置における処理を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態に係る線材の軟化装置を示す概略図である。
図8】同上の軟化装置における処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態に係る線材の軟化装置及び線材の軟化方法について説明する。
【0018】
<背景>
まず、技術開発の背景について説明する。図1は背景技術に係る線材Wの軟化装置100を示す概略図である。
【0019】
線材Wの軟化装置100は、水槽110と、第1通電用シーブ120と、第2通電用シーブ122とを備えている。
【0020】
水槽110には、冷却液112が貯留されている。水槽110には、初期時に、作業者等によって所定の液面位置となるように液が供給される。
【0021】
第1通電用シーブ120及び第2通電用シーブ122は、線材Wを巻掛け可能な輪状部材である。第2通電用シーブ122は水槽110内に設けられ、第1通電用シーブ120は水槽110外であって第2通電用シーブ122の上方位置に設けられている。
【0022】
そして、伸線加工等された線材Wが、第1通電用シーブ120から第2通電用シーブ122を通って水槽110内の冷却液112に浸漬された後、水槽110から脱して巻取られる。
【0023】
上記第1通電用シーブ120及び第2通電用シーブ122には、加熱用電源が接続されており、第1通電用シーブ120と第2通電用シーブ122との間で線材Wに通電用の電圧が印加される。
【0024】
また、上記第1通電用シーブ120と第2通電用シーブ122との間を通る線材Wを覆うように筒部材130が設けられている。筒部材130の下端部は、冷却液112に浸かっている。筒部材130内には常時窒素が供給され、筒部材130内空間が常時窒素によって満たされるようになっている。この窒素は、加熱中における線材Wの酸化を抑制する役割を果す。
【0025】
そして、線材Wは、第1通電用シーブ120と第2通電用シーブ122との間で通電加熱され軟化される。また、このように加熱された線材Wが冷却液112内に浸漬されることによって、冷却され、その後、巻取等される。これにより、電線の芯線等として用いられる軟銅線である線材Wが製造される。
【0026】
このような軟化工程を経て製造された線材Wを複数撚り合せ、これを芯線として電線を製造した場合を想定する。この電線に端子を圧着する場合、電線と端子との圧着強度をある程度確保する必要がある。ここでは、電線と端子との圧着強度のばらつきを抑制するという観点から、電線と端子との圧着強度をある程度確保することを狙った。
【0027】
本願発明者は、電線と端子との圧着強度と線材Wの破断荷重とが正の相関関係にあることに鑑み、破断荷重のばらつきを抑制することを検討した。まず、本願発明者は、加熱条件(軟化温度×加熱時間)と破断荷重及び破断伸びの関係を実験してみた。ここで、破断荷重は線材Wをその長手方向に引張った場合に破断に至る荷重(N)であり、破断伸びは線材Wをその長手方向に引張った場合に破断に至った時点での永久伸び(元の長さに対する永久伸び量の100分率比(%))である。
【0028】
また、上記線材の軟化装置100を想定すると、軟化温度は理論的には下記式により導き出される。
【0029】
まず、第1通電用シーブ120と第2通電用シーブ122との間で線材Wに与えられる電力量[WH]は次式により求められる。なお、S[m]は、第1通電用シーブ120と冷却液112の液面までの距離、V1[m/min]は線材Wの速度、V[V]は第1通電用シーブ120と第2通電用シーブ122との間の印加電圧、I[A]は線材Wを流れる電流である。
【0030】
W[WH]={S[m]/V1[m/min]/60[min/H]}×V[V]×I[A]・・・(式1)
また、第1通電用シーブ120と第2通電用シーブ122との間で線材Wに与えられる熱量Q[cal]は次のようになる。
【0031】
Q[cal]=W[WH]×0.2389[cal/W秒]×3600[秒/H]・・・(式2)
また、周囲温度をT1[℃]、軟化温度をT2[℃]、線材Wの比熱をc[cal/g・℃]、線材Wの重量をm[g]とすると、上記熱量Q[cal]は次のようになる。
【0032】
Q[cal]=m[g]×c[cal/g・℃]×(T2[℃]−T1[℃])・・・(式3)
従って、式1と式2からQ[cal]を求め、これを式3に代入することで、理論上の軟化温度T2[℃]を求めることができる。
【0033】
上記を前提として、図1に示す軟化装置100によって線材Wを軟化させた場合において、加熱条件(軟化温度×加熱時間、図2の横軸)と破断荷重(図2の縦軸)及び破断伸びの関係を示すと図2に示すようになる。図2から理解できるように、加熱条件の変化は、破断荷重に大きな影響を与える。このため、破断加重のばらつきを抑制するためには、加熱条件のばらつきを抑制することが好ましいと考えられる。
【0034】
しかも、破断荷重が大きく変動する加熱条件範囲と、破断伸びが大きく変動する加熱条件範囲とは、多くの範囲で重複しており、しかも、加熱条件が大きくなると破断荷重は小さくなる一方、破断伸びは大きくなる傾向となっている。このため、破断荷重と破断伸びとをなるべく大きい値で両立させるためにも、加熱条件のばらつきを抑制することが好ましいといえる。
【0035】
次に、本願発明者は、上記軟化装置100を前提として、加熱条件のばらつきが破断加重のばらつきにどの程度の影響を与えるかを実験した。
【0036】
まず、上記軟化装置100において、加熱条件のばらつきは何によって生じ得るかを検討した。上記軟化装置100においては、線材Wの速度V1、印加電圧V[V]、電流I[A]についてはある程度一定に維持されると想定される。一方、水槽110内における冷却液112は、熱による冷却液112の蒸発、線材Wへの冷却液112の付着等によって減少する。線材Wは、第1通電用シーブ120から冷却液112の液面間で、加熱されると考えられることから、冷却液112の液面位置の変動は、線材Wの加熱経路長S、即ち、加熱時間に影響を与える。以上より、本願発明者は、上記軟化装置100において、加熱条件がばらつく主たる要因は、冷却液112の液面位置の変動であると推測した。
【0037】
そこで、冷却液112の液面位置を因子とし、この液面位置を標準(所定の標準高さ位置)、中間(標準位置よりも2cm低い位置)、低い(標準位置よりも4cm低い位置)に変えて、破断加重がどう変化するかを検討することとした。
【0038】
また、他の因子として、冷却液112の温度を低い、高いに変更し、また、窒素量を高い、標準、低いに変更した場合に、破断荷重がどう変化するかについても検討することとした。
【0039】
実験計画法に従い、冷却液112の液面(位置)、冷却液112の温度、窒素量の組合わせを決定して実験を行ったところ、図3に示すようになった。なお、図3において、各試験結果は、3回試験を行った破断荷重の平均値である。これを各因子の水準毎に整理すると、図4に示すようになった。
【0040】
図4から、冷却液112の液面位置変化は、冷却液112の温度変化、窒素量の変化に比べて、破断荷重の変化に大きな影響を及すことがわかった。
【0041】
以上より、本願発明者は、電線と端子との圧着強度のばらつき、即ち、破断荷重のばらつきを抑制するためには、図1に示す軟化装置100において、液面の位置を一定範囲にすることが好ましいことを見出した。さらに、液面の位置の変動は、線材Wの加熱経路長Sに変動を与えていることから、結局は、線材Wの加熱経路長Sを一定範囲にすることが好ましいことを見出した。
【0042】
<線材の軟化装置及び線材の軟化方法>
上記知見に鑑み本願発明者が創作した線材Wの軟化装置及び線材Wの軟化方法について説明する。
【0043】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る線材Wの軟化装置10について説明する。図5は線材Wの軟化装置10を示す概略図である。この軟化装置10は、冷却液貯留部20と、第1通電用シーブ30と、第2通電用シーブ32と、液面位置検出部40と、加熱経路長制御部50とを備えている。
【0044】
冷却液貯留部20は、上方に開口する器状に形成されており、内部に冷却液22が貯留されている。冷却液22としては、水等の液体が用いられる。
【0045】
第1通電用シーブ30及び第2通電用シーブ32は、線材Wを巻掛け可能な輪状部材であり、第2通電用シーブ122は冷却液貯留部20内に設けられ、第1通電用シーブ30は冷却液貯留部20外であって第2通電用シーブ122の鉛直方向上方位置に設けられている。ここでは、第2通電用シーブ122は、線材Wを加熱軟化させるために必要な距離を考慮して、冷却液22の液面に対して十分に離れた上方位置に配設されている。
【0046】
そして、伸線加工等された線材Wが、第1通電用シーブ30から第2通電用シーブ32を経由して案内されつつ冷却液貯留部20内の冷却液22に浸漬された後、冷却液貯留部20から脱して巻取られる。
【0047】
また、上記第1通電用シーブ30及び第2通電用シーブ32には、加熱用電源が接続されており、第1通電用シーブ30と第2通電用シーブ32との間で線材Wに通電用の電圧を印加できるようになっている。
【0048】
また、上記第1通電用シーブ30と第2通電用シーブ32との間を通る線材Wを覆うように筒部材38が設けられている。筒部材38の下端部は、冷却液22に浸かっている。筒部材38内には常時窒素が供給され、筒部材38内空間が常時窒素によって満たされるようになっている。この窒素は、加熱中における線材Wの酸化を抑制する役割を果す。
【0049】
そして、線材Wは、第1通電用シーブ30と第2通電用シーブ32との間で通電加熱され軟化される。また、このように加熱された線材Wが冷却液22内に浸漬されることによって、冷却され、その後、巻取等される。
【0050】
この軟化装置10は、線材Wの加熱経路長Sのばらつきを抑制するため、液面位置検出部40と、加熱経路長制御部50とを備えている。
【0051】
液面位置検出部40は、冷却液貯留部20における冷却液22の液面位置を検出可能に構成されている。液面位置検出部40としては、液面での反射現象を利用した光学式或は超音波式のセンサ等であってもよいし、電極が液体に浸漬されることによって導通が得られることを利用した電極式の検出部であってもよいし、また、液面に浮べられたフロータの位置によって液面位置を検出するものであってもよい。
【0052】
加熱経路長制御部50は、液面位置検出部40の検出結果に基づいて、第1通電用シーブ30と第2通電用シーブ32との間における、線材Wの加熱経路長制御部50を制御するように構成されている。ここで、線材Wは、第1通電用シーブ30と第2通電用シーブ32との間で通電されるものの、冷却液22に浸漬された部分では十分に温度は低くなる。このため、線材Wは、第1通電用シーブ30と冷却液22の液面との間で加熱軟化されると考えられる。つまり、線材Wに対する加熱経路長Sは、第1通電用シーブ30と冷却液22の液面との距離で決定され、従って、加熱経路長Sのばらつきを抑制するためには、液面位置を一定範囲に維持するように調整するか、もしくは、第1通電用シーブ30の位置を調整すればよいことになる。
【0053】
ここでは、加熱経路長制御部50は、液面調整部52と、制御ユニット60とを備えている。
【0054】
液面調整部52は、液面位置検出部40の検出結果に基づいて、冷却液貯留部20内における冷却液22の液面位置を調整可能に構成されている。ここでは、液面調整部52は、図示省略の冷却液供給源(タンク等)に接続された給水管54と、給水管54の途中に設けられた給水ポンプ56とを有している。給水管54の給水口は、冷却液貯留部20内に冷却液22を供給可能な位置に設けられている。そして、給水ポンプ56の駆動によって、冷却液22を冷却液貯留部20内に供給できるようになっている。なお、給水管54を流れる冷却液22自体に送給用の圧力が加えられている場合には、給水ポンプ56に代えて、電磁バルブ等を用いてもよい。いずれにせよ、ここでは、液面調整部52は、冷却液貯留部20に対して冷却液22を供給することによって、冷却液貯留部20内における冷却液22の液面位置を調整可能に構成されている。
【0055】
なお、液面調整部52は、冷却液貯留部20内の冷却液22を排水するための排水管及びその排水管に設けられた電磁バルブ等を備えていてもよい。これにより、冷却液貯留部20内に冷却液22が過多に供給された場合に、当該冷却液22を排水することができる。もっとも、線材Wの送給中においては、通常、冷却液22は、蒸発或は線材Wへの冷却液112の付着等によって減少するのみであるため、そのような排水用の構成は無くても問題はない。
【0056】
なお、冷却液22の液面位置を一定範囲内に維持するためには、必ずしも冷却液貯留部20内に冷却液22を足す必要はない。例えば、冷却液貯留部20内に他の物体を沈める等して、冷却液貯留部20の容積を変更させるような構成であってもよい。
【0057】
制御ユニット60は、上記液面位置検出部40の検出結果に基づいて、冷却液貯留部20内における冷却液の液面位置を一定範囲に維持するように、液面調整部52による調整動作を制御する。
【0058】
ここでは、制御ユニット60は、マイクロプロセッサと、マイクロプロセッサと結合された主記憶部と、補助記憶部とを有している。主記憶部は、RAM(Random Access Memory)等によって構成され、補助記憶部は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスク装置等の非一時的な記憶装置によって構成されている。補助記憶部には、マイクロコンピュータに対する指示を記述したプログラムが格納されており、マイクロプロセッサは、当該プログラムを読込んで後述する各処理ステップを実行することで、液面調整部52による調整動作を制御する。
【0059】
図6は制御ユニット60が実行する処理を示すフローチャートである。
【0060】
まず、ステップS1において、液面位置検出部40を通じて液面の位置が取得される。
【0061】
次にステップS2において、液面位置が第1基準位置より低いか否かが判定される。第1基準位置は、作業者等により予め設定された値であり、制御ユニット60の補助記憶部に記憶されている。第1基準位置は、狙いとする破断荷重を得るために適切な加熱軟化条件範囲(加熱経路長Sの範囲)に応じて設定される値であり、好ましくは、加熱経路長Sの範囲の上限値に応じた位置として設定される。加熱軟化条件範囲(加熱経路長Sの範囲)自体は、必要な破断荷重等に応じて実験的、経験的に決定される。そして、ステップS2において、YESと判定されるとステップS3に進み、NOと判定されるとステップS4に進む。なお、液面位置が第1基準位置と同じである場合には、ステップS3、S4のどちらに進んでもよい。
【0062】
ステップS3では、制御ユニット60は、給水ポンプ56にオン指令を与える。これにより、給水ポンプ56が冷却液22を送る動作を開始し、冷却液22が冷却液貯留部20に供給され、冷却液貯留部20内における冷却液22の液面位置が上昇する。この後、ステップS1に戻る。
【0063】
一方、ステップS2において、液面位置が第1基準位置より低くないと判定された場合、ステップS4に進む。ステップS4では、液面位置は第2基準位置より高いか否かが判定される。第2基準位置も、作業者等により予め設定された値であり、制御ユニット60の補助記憶部に記憶されている。第2基準位置は、狙いとする破断荷重を得るために適切な加熱軟化条件範囲(加熱経路長Sの範囲)に応じて設定される値であり、好ましくは、加熱経路長Sの範囲の下限値に応じた位置として設定される。第2基準位置は第1基準位置と同じであってもよい。そして、ステップS4において、YESと判定された場合ステップS5に進み、NOと判定された場合ステップS1に戻る。なお、液面位置が第2基準位置と同じである場合、ステップS4,S5のいずれに進んでもよい。
【0064】
ステップS5では、給水ポンプ56にオフ指令を与える。これにより、給水ポンプ56が冷却液22を送る動作を停止する。この後、ステップS1に戻る。
【0065】
上記処理を繰返すことで、冷却液貯留部20内における冷却液22の液面位置は、第1基準位置と第2基準位置との間に保たれる。
【0066】
なお、制御ユニット60の一部又は全部がハードウェアによって実現されてもよい。つまり、制御ユニット60は、液面位置検出部40の検出結果に応じて、液面調整部52の動作を制御できる構成であればよい。
【0067】
また、例えば、液面位置検出部として、通常状態ではオン信号(又はオフ信号)を出力し、液面位置が所定値以下になるとオフ信号(又はオン信号)を出力する構成のものを用いた場合、液面位置検出部からのオフ信号(又はオン信号)に応じた信号に基づいて給水ポンプ56の動作が制御されるようにしてもよい。
【0068】
以上のように構成された線材の軟化装置10及び線材Wの軟化方法によると、冷却液貯留部20内における冷却液22の液面位置は、第1基準位置と第2基準位置との間に保たれる。これにより、第1通電用シーブ30と冷却液22の液面との距離、つまり、第1通電用シーブ30と第2通電用シーブ32との間における線材Wの加熱経路長Sは一定範囲に維持される。このため、線材Wに対する加熱経路長Sのばらつきを抑制して、破断荷重、つまり、電線と端子との圧着強度のばらつきを抑制できる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る線材Wの軟化装置10Bについて説明する。なお、説明にあたって、上記第1実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符合を付して説明を省略する。図7は線材Wの軟化装置10Bを示す概略図である。この軟化装置10Bは、冷却液貯留部20と、第1通電用シーブ30と、第2通電用シーブ32と、液面位置検出部40と、加熱経路長制御部50Bとを備えている。
【0070】
冷却液貯留部20、第1通電用シーブ30及び第2通電用シーブ32、液面位置検出部40自体は、上記第1実施形態で説明したものと同じである。
【0071】
加熱経路長制御部50Bは、第2通電用シーブ32に対する第1通電用シーブ30の位置を調整するシーブ位置調整部70と制御ユニット60Bを備えている。シーブ位置調整部70は、直線上における位置制御可能なリニアモータ等によって構成されており、第1通電用シーブ30の上方位置に配設されている。そして、第2通電用シーブ32を、第1通電用シーブ30の上方で鉛直方向に沿って上下移動可能かつ位置調整可能に支持できるようになっている。
【0072】
制御ユニット60Bは、液面位置検出部40の検出結果に基づいて、第1通電用シーブ30と冷却液貯留部20内における冷却液22の液面との距離を一定範囲内に維持するように、シーブ位置調整部70による第1通電用シーブ30の位置調整動作を制御するように構成されている。
【0073】
ここでは、制御ユニット60Bは、上記制御ユニット60と同様に、マイクロプロセッサと、マイクロプロセッサと結合された主記憶部と、補助記憶部とを有する構成により実現されている。
【0074】
図8は制御ユニット60Bが実行する処理を示すフローチャートである。
【0075】
まず、ステップS11において、液面位置検出部40を通じて液面の位置が取得される。ここでは、液面位置は、連続的或は多段階的な値として取得される。
【0076】
次にステップS12において、取得された液面の位置に応じて、シーブ位置調整部70に対して第1通電用シーブ30の位置に関する指令が出力され、これにより、第1通電用シーブ30が前記指令に応じた位置に移動する。シーブ位置調整部70に対する位置指令は、狙いとする破断荷重を得るために適切な加熱軟化条件範囲(加熱経路長Sの範囲)とするための指令である。かかる位置は、例えば、狙いとする破断荷重を得るために適切な適正液面位置が予め設定され、この適正液面位置と取得された液面位置との差分として求められる。第1通電用シーブ30は、液面に対して好ましい加熱経路長Sに応じた位置となるように移動する。この後、ステップS11に戻る。
【0077】
上記処理を繰返すことで、冷却液22の液面と第1通電用シーブ30との距離は、一定範囲内に維持される。
【0078】
なお、制御ユニット60Bの一部又は全部がハードウェアによって実現されてもよい。つまり、制御ユニット60Bは、液面位置検出部40の検出結果に応じて、シーブ位置調整部70の動作を制御できる構成であればよい。
【0079】
この線材Wの軟化装置10B及び軟化方法によると、液面位置の変動に応じて第1通電用シーブ30を移動させることによって、第1通電用シーブ30と冷却液22の液面位置とは一定距離範囲に維持される。これにより、第1通電用シーブ30と第2通電用シーブ32との間における線材Wの加熱経路長Sは一定範囲に維持され、上記と同様に、線材Wに対する加熱経路長Sのばらつきを抑制して、破断荷重、つまり、電線と端子との圧着強度のばらつきを抑制できる。
【0080】
<変形例>
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0081】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0082】
10、10B 軟化装置
20 冷却液貯留部
22 冷却液
30 第1通電用シーブ
32 第2通電用シーブ
40 液面位置検出部
50、50B 加熱経路長制御部
52 液面調整部
60、60B 制御ユニット
70 シーブ位置調整部
W 線材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8