特許第5817612号(P5817612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ソシオネクストの特許一覧

<>
  • 特許5817612-送信器 図000002
  • 特許5817612-送信器 図000003
  • 特許5817612-送信器 図000004
  • 特許5817612-送信器 図000005
  • 特許5817612-送信器 図000006
  • 特許5817612-送信器 図000007
  • 特許5817612-送信器 図000008
  • 特許5817612-送信器 図000009
  • 特許5817612-送信器 図000010
  • 特許5817612-送信器 図000011
  • 特許5817612-送信器 図000012
  • 特許5817612-送信器 図000013
  • 特許5817612-送信器 図000014
  • 特許5817612-送信器 図000015
  • 特許5817612-送信器 図000016
  • 特許5817612-送信器 図000017
  • 特許5817612-送信器 図000018
  • 特許5817612-送信器 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5817612
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】送信器
(51)【国際特許分類】
   H04J 11/00 20060101AFI20151029BHJP
【FI】
   H04J11/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-67873(P2012-67873)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-201549(P2013-201549A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】青木 拓
(72)【発明者】
【氏名】安藤 仁
【審査官】 北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−010662(JP,A)
【文献】 特開2004−153559(JP,A)
【文献】 特開2008−042575(JP,A)
【文献】 特開2012−175283(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/028589(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 11/00
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数領域の信号を時間領域の信号に変換し,前記時間領域の信号にガードインターバルを付加する逆フーリエ変換部と,
前記逆フーリエ変換部から出力された前記時間領域の信号のシンボル内の複数サンプルデータを抽出するサンプル抽出回路と,
前記抽出された抽出サンプルデータをスプライン補間演算するスプライン補間回路と,
前記抽出サンプルデータと同じサンプル数を有し前記シンボルと前記シンボルの後続のシンボルの境界部を中心とする前記シンボルと前記後続のシンボルそれぞれの少なくとも一部のサンプルデータを含む境界サンプルデータを,前記スプライン補間回路が演算した補間サンプルデータで置き換える置換回路とを有する送信器。
【請求項2】
請求項1において,
前記スプライン補間回路は,前記抽出サンプルデータに,前記境界サンプルデータの前後の前後サンプルデータを付加して,前記スプライン補間演算を行い,
前記置換回路は,前記補間サンプルデータとして,前記スプライン補間演算されたサンプルデータのうち前記抽出サンプルデータに対応する数のサンプルデータで置き換える送信器。
【請求項3】
請求項1または2において,
前記スプライン補間回路は,3次のスプライン補間演算を行う送信器。
【請求項4】
請求項1,2,3のいずれかにおいて,
前記サンプル抽出回路は,前記シンボルの有効シンボル区間の先頭の複数サンプルを前記抽出サンプルデータとして抽出する送信器。
【請求項5】
請求項1,2,3のいずれかにおいて,
さらに,前記逆フーリエ変換部と前記置換回路との間に,前記時間領域の信号のうち前記置換されるシンボル境界部の信号の前記置換回路への入力タイミングを,前記スプライン補間回路による前記補間サンプルデータの前記置換回路への入力タイミングに整合させるように遅延させるタイミング調整回路を有する送信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,送信器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,無線通信方式として,OFDM(直交周波数分割多重)方式や,OFDMA(直交周波数分割多重接続)方式などが普及している。OFDMは,互いに直交する多数の搬送波を多重化したものであり,一方,OFDMAは,さらに複数のユーザが全サブチャネルを共有して各ユーザにサブチャネルを割り当てるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−10662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
WiMAXやWi-FiなどのOFDM/OFDMA方式の無線通信では,時間ドメイン(時間領域)の信号は送信シンボル間の境界において位相の不連続を有する。各シンボルでPSK,QPSK,16QAM等の位相変調が行われるからである。このようなシンボル境界での不連続は,高周波回路内のアナログ回路において高次高調波成分を発生させる。かかる高次高調波は,周波数特性において送信帯域の両側にサイドローブが発生するという問題を招く。
【0005】
このようなサイドローブを抑制する方法として,Wi-Fi規格に規定されている,シンボル境界の前後数サンプルに規定の窓関数を乗算する方法がある。しかし,WiMAXのようにWi-Fiに比べてより多くのサブキャリアを多重化する通信方式では,窓関数によるサイドローブ軽減効果は限定的である。
【0006】
また,他の抑制方法としては,高周波回路内のアナログフィルタを設けたり,デジタル回路の最終段にデジタルフィルタを設けたりすることも考えられる。しかし,前者の場合は急峻な係数のアナログフィルタが必要になり,アナログフィルタによるサイドローブ低減は実現困難であり,仮にサイドローブを低減したとても,それに伴って送信帯域内の信号の一部も抑制され送信信号の品質を劣化させる可能性が高い。また,後者の場合はフィルタの係数が複雑化し回路規模が大きくなりコストアップを招く。
【0007】
そこで,本発明の目的は,サイドローブを適切に低減する送信器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
送信器の第1の側面は,周波数領域の信号を時間領域の信号に変換し,当該周波数領域の信号にガードインターバルを付加する逆フーリエ変換部と,
前記逆フーリエ変換部から出力された前記時間領域の信号のシンボル内の複数サンプルデータを抽出するサンプル抽出回路と,
前記抽出された抽出サンプルデータをスプライン補間演算するスプライン補間回路と,
前記抽出サンプルデータと同じサンプル数を有し前記シンボルの境界部を中心とする境界サンプルデータを,前記スプライン補間回路が演算した補間サンプルデータで置き換える置換回路とを有する。
【発明の効果】
【0009】
第1の側面による送信器はサイドローブを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】OFDMA方式の無線通信装置の送信回路の構成例を示す図である。
図2】ベクトルマッピングの一例を示す図である。
図3】GI挿入部14から出力される時間ドメインの信号波形例を示す図である。
図4】サイドローブを示す周波数スペクトラムの図である。
図5】第1の実施の形態における送信回路の構成図である。
図6】GI挿入部14が出力する時間ドメイン信号に対するサンプル抽出回路17による数サンプル抽出を説明する図である。
図7図5の送信回路のサンプル抽出とスプライン補間とタイミング調整と置換との関係を示す図である。
図8】置換回路20の出力信号S20の詳細図である。
図9】第1の実施の形態におけるサンプル抽出回路の構成例を示す図である。
図10】サンプル抽出回路17の動作を示すタイミングチャート図である。
図11】置換回路20による置換タイミングを説明する図である。
図12】置換回路20の構成を示す図である。
図13】置換回路の動作を示す図である。
図14】第2の実施の形態における送信器の動作を説明する図である。
図15】第2の実施の形態におけるサンプル抽出回路の構成を示す図である。
図16図15のサンプル抽出回路の動作を示すタイミングチャート図である。
図17】タイミング調整回路の一例を示す図である。
図18】第1の実施の形態の有効シンボルの先頭8サンプルを3次スプライン補間して置換した場合の周波数スペクトラムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は,OFDMA方式の無線通信装置の送信回路の構成例を示す図である。この送信回路は,送信データを生成する送信データ生成部11と,指定された送信期間の周波数方向と時間方向の2次元配置(マップ)情報にしたがって送信サブキャリアを割り当て,各送信サブキャリアをベクトルマッピングにより変調するサブキャリアアロケーション回路12と,複数のサブキャリアに対応する周波数ドメインの信号を時間ドメイン信号に変換するIFFT(Inverse Fast Fourier Transfer)回路13と,IFFTをおこなった時間ドメインの信号にガードインターバルを挿入するGI挿入部14と,デジタル信号をアナログ信号に変換するDAC(Digital Analog Converter)回路15と,直交変調機能を有し,ベースバンド帯域の信号を搬送波周波数帯域の信号に変換する高周波(RF:Radio Frequency)回路16とを有する。IFFTされた時間ドメインの信号は,Iチャネル成分とQチャネル成分とを有する。
【0012】
上記のIFFT回路13とGI挿入部14とで,周波数領域の信号を時間領域の信号に変換し,当該周波数領域の信号にガードインターバルを付加する逆フーリエ変換部が構成される。
【0013】
前述のWi-Fi規格の窓関数は,GI挿入部14とDAC回路15との間に設けられる。また,アナログフィルタは,RF回路16内に設けられる。そして,デジタルフィルタは,GI挿入部14とDAC回路15との間に設けられる。しかし,これらのサイドローブ抑制対策は,前述のとおりいずれも不十分である。
【0014】
図2は,ベクトルマッピングの一例を示す図である。I軸とQ軸とからなる二次元座標上に,QPSK変調では4つの座標点それぞれに2ビットの送信データを割り当て,16QAMでは16の座標点それぞれに4ビットの送信データを割り当てる。割り当てられた座標軸の振幅と位相に基づいて,サブキャリアが変調される。
【0015】
図3は,GI挿入部14から出力される時間ドメインの信号波形例を示す図である。時間ドメインの信号波形は,複数のサブキャリアがIFFTされているので,非常に複雑な波形であるが,図3では,簡単のために,単一のサブキャリアのみを示している。時間的に連続するシンボルnとシンボルn+1には,それぞれ有効シンボルの後方の一部をガードインターバルGIとして前方に付加されている。ガードインターバルGIと有効シンボルとは連続する波形であるので,各シンボル内の波形は連続している。しかし,シンボル境界では,両シンボルでの変調成分が異なる場合は,位相が不連続の波形になる。このシンボル間の不連続性がRF回路内で高次高調波を発生し,送信帯域の両側にサイドローブを形成させる。
【0016】
図4は,サイドローブを示す周波数スペクトラムの図である。横軸が伝送空間に送出される高周波信号の周波数,縦軸がそのパワーに対応する。割り当てられた周波数帯域FBでは高いパワーになっていて,周波数帯域FBの外側では低いパワーになっていることが理想的である。送出される高周波信号にシンボル境界が含まれていない場合(S42)では,周波数帯域FBの外側のパワーは急峻に低下している。それに対して,シンボル境界が含まれている場合(S41)では,周波数帯域FBの外側でのパワーが比較的高く,サイドローブを発生している。
【0017】
[第1の実施の形態]
図5は,第1の実施の形態における送信回路の構成図である。この送信回路は,図1の構成に加えて,GI挿入部14とDAC15との間にタイミング調整回路19と置換回路20とを設け,さらに,サンプル抽出回路17とスプライン補間回路18とを有する。
【0018】
サンプル抽出回路17は,サブキャリアアロケーション回路12から出力される処理開始信号S1とCPUからの抽出サンプル数S2とに基づいて,GI挿入部19の出力信号から有効シンボル内の複数サンプル,つまり数サンプル,例えば先頭の数サンプル,を抽出する。スプライン補間回路18は,抽出した数サンプルをスプライン補間する。このスプライン補間は,比較的低次のスプライン補間が望ましく,演算の容易性(低次が容易)と補間精度(高次が高精度)を考慮すると,3次のスプライン補間が最も望ましい。これにより,抽出された時間ドメインの信号の数サンプルはよりなめらかな曲線上のサンプルのデータ値に変更される。
【0019】
タイミング調整回路19は,GI挿入部14の出力信号の置換回路20への入力タイミングと,スプライン補間回路18の出力信号の置換回路20への入力タイミングを同期させるために遅延時間d19遅延させる。そして,置換回路20は,タイミング調整回路19の出力信号のシンボル境界の前後数サンプルを,スプライン補間回路18が出力する補間済みの数サンプルと置き換える。なお,CPUは,送信回路の外部に設けられ,所定の通信制御などを行う。
【0020】
図6は,GI挿入部14が出力する時間ドメイン信号に対するサンプル抽出回路17による数サンプル抽出を説明する図である。各シンボル#n,#n+1は,先頭にガードインターバル,それに続いて有効シンボルを有する。デジタル回路であるので,このシンボル内の時間ドメインの信号は,離散的なサンプルのデジタル値である。
【0021】
サンプル抽出回路17は,シンボル内の任意の位置の数サンプルを抽出する。ただし,本実施の形態では,サンプル抽出回路17は,有効シンボルの先頭の8サンプルS17を抽出する。そのために,サンプル抽出回路17は,サブキャリアアロケーション回路12が有効シンボルの先頭のタイミングで出力する処理開始信号S1のタイミングを利用している。この点は,後述する。抽出するサンプル数は,CPUにより任意の数に設定することができる。
【0022】
図7は,図5の送信回路のサンプル抽出とスプライン補間とタイミング調整と置換との関係を示す図である。GI挿入部の出力S14は,シンボル#n,#n+1を有する。サンプル抽出回路17は,図6で説明したとおり,時間的に先のシンボル#n内の有効シンボルの先頭の8サンプルS17を抽出する。この抽出された8サンプルS17は,スプライン補間回路18により,前述した3次スプライン補間される。その結果,補間された8サンプルは,よりなめらかな3次曲線上のサンプルのデータ値に変更されている。
【0023】
スプライン補間回路の出力S18は置換回路20に入力され,タイミング調整回路の出力S19のシンボル#n,#n+1の境界SBが,補間された8サンプルで置き換えられる。つまり,サンプル抽出回路出力S17からスプライン補間回路出力S18までの時間が,スプライン補間回路による補間処理時間である。図7の例では,この補間処理時間が長くなり,GI挿入部出力S14の境界8サンプルの先頭HSBより後で,スプライン補間回路出力S18が出力される。そのため,GI挿入部出力S14のシンボル境界のタイミングと,スプライン補間回路出力S18のタイミングとをそろえるために,タイミング調整回路19は,遅延d19だけGI挿入部出力S14を遅延させる。
【0024】
図8は,置換回路20の出力信号S20の詳細図である。スプライン補間された信号S18は8サンプルの信号であり,その前半の4サンプルS1−S4は,タイミング調整回路出力S19のシンボル境界より前の4サンプルと置換され,後半の4サンプルS5−S8は,同S19のシンボル境界より後ろの4サンプルと置換される。この結果,置換回路20の出力S20のシンボル境界の8サンプルは,少なくとも位相不連続による不連続性がない低次の曲線上のサンプルであるので,RF回路により高調波が発生してサイドローブが形成されることが抑制される。
【0025】
図9は,第1の実施の形態におけるサンプル抽出回路の構成例を示す図である。サンプル抽出回路17は,GI挿入部出力S14とデータ「0」のいずれかを選択するセレクタSELと,サブキャリアアロケーション回路12から出力されるシンボルの先頭を示す処理開始信号S1に応答して図示しない同期クロックをカウントするカウンタ172と,抽出イネーブル信号Enableを出力するデコーダDECと,抽出イネーブル信号Enableを遅延させてタイミング信号S4を出力する遅延回路173とを有する。なお,GI挿入回路出力S14は,実際にはIch,Qchの両方に存在するが,簡単のために一方のみ示している。ただし,カウント172とデコーダDECと遅延回路173は,Ich,Qchで共有する。
【0026】
図10は,サンプル抽出回路17の動作を示すタイミングチャート図である。図10の右方向が時間軸であり,3つの時間帯t1,t2,t3の信号波形が示されている。サブキャリアアロケーション回路12は,OFDMまたはOFDMAのデジタル変調処理の最初の処理として,送信データを図2の座標上の符号化点に割り当てる。そして,サブキャリアアロケーション回路12は,GI挿入部14が各シンボルの先頭を出力するタイミングを示す処理開始信号S1を出力する。
【0027】
時間帯t1において,GI挿入部の出力S14は,連続するシンボル#n,#n+1を有している。そして,各シンボルの先頭のタイミングで処理開始信号S1がHレベルに立ち上がっている。また,CPUは,抽出サンプル数S2として,8サンプルであることを示すデータ0x8を出力する。
【0028】
カウンタ172は,処理開始信号S1の立ち上がりエッジに応答して,同期クロックのカウントを開始する。図10には,カウンタ171のカウント値が示されている。例えば,ガードインターバルGIが128サンプルの場合は,シンボルの先頭から129サンプル以降が有効シンボルになる。そして,抽出サンプル数S2が8サンプルの場合は,抽出する8サンプルは,シンボルの先頭から129サンプル以降136サンプルである。
【0029】
そこで,時間帯t2において,デコーダDECは,カウンタ値がn=128〜m=135の間だけHレベルの抽出イネーブル信号Enableを出力する。カウンタ値がずれているのはカウンタの初期値が0だからである。そして,セレクタSELは,抽出イネーブル信号Enableに応じて,カウンタ値が128〜135の間はGI挿入部の出力S14を選択し,それ以外のカウンタ値0〜127,136〜次のシンボル#n+1とのシンボル境界まではサンプルデータ「0」を選択する。
【0030】
時間帯t3では,GI挿入部の出力S14には次のシンボル#n+1とのシンボル境界がある。そこで,有効シンボルが1024サンプルの場合は,遅延回路173は,1024〜(8/2)=1020サンプルだけ抽出イネーブル信号Enableを遅延させて,タイミング信号S4を出力する。その結果,タイミング信号S4がHレベルの期間は,スプライン補正された8サンプルと置き換えられるシンボル境界を中心とする前後8サンプルのタイミングと整合する。このタイミング信号S4に応答して,置換回路20は,入力される時間ドメインの信号のシンボル境界を中心とする前後8サンプルを,スプライン補間された信号S18と置き換える。
【0031】
図11は,置換回路20による置換タイミングを説明する図である。置換回路20は,タイミング信号S4がHレベルの間の信号S19の8サンプルを,補間された8サンプルS18と置き換える。図11には,GI挿入部出力S14のシンボル#nと#n+1が示されている。シンボル#nの有効シンボルの先頭8サンプルがサンプル抽出回路の出力S17である。スプライン補間回路18の補間演算による遅延時間d18後に補間された8サンプルS18が出力される。この補間出力S18がGI挿入部出力S14のシンボル境界のタイミングより前に出力される場合は,置換回路20はタイミング信号S4がHレベルになるタイミングで,GI挿入出力S14のシンボル境界を中心とする前後4サンプルをスプライン補間回路出力S18に置き換える。
【0032】
ただし,サンプル抽出回路が出力する抽出サンプルS17のサンプル数が多くなるなどの場合は,スプライン補間回路の補間演算時間が一点鎖線で示すようにd18(2)と長くなり,スプライン補間回路出力S18がGI挿入部出力S14のシンボル境界のタイミングより後になることがある。その場合は,タイミング調整回路19がGI挿入部出力S14を遅延時間d19だけ遅延させ,サンプル抽出回路17内の遅延回路173もタイミング信号S4を遅延時間d19だけ遅延させる。それにより,置換回路20は,タイミング信号S4のタイミングでタイミング調整された信号S19のシンボル境界前後4サンプルをスプライン補間回路出力S18で置換する。
【0033】
このように,タイミング調整回路19とサンプル抽出回路17内の遅延回路173の遅延時間は,スプライン補間回路18の補間演算時間に応じて適切に設定される。
【0034】
図12は,置換回路20の構成を示す図である。置換回路20は,タイミング信号S4に応じてタイミング調整回路出力S19とスプライン補間回路出力S18のいずれかを選択するセレクタSELを有する。
【0035】
図13は,置換回路の動作を示す図である。前述のとおり,タイミング調整回路出力S19のシンボル境界前後8サンプルのタイミングと,タイミング信号S4のHレベルの期間とが整合するように,タイミング調整回路19の遅延時間と,タイミング信号S4の遅延時間とが設定される。さらに,スプライン補間回路出力S18の8サンプルのタイミングが遅くなる場合も,同様にタイミング調整が行われる。その結果,タイミング調整回路出力S19のシンボル境界前後8サンプルが,スプライン補間回路出力S18の補間された8サンプルに置き換えられる。
【0036】
[第2の実施の形態]
図14は,第2の実施の形態における送信器の動作を説明する図である。第1の実施の形態の図7と比較して説明する。第2の実施の形態の送信器では,図7と同様に,サンプル抽出回路17が,GI挿入部出力S14のシンボル#nの有効シンボルの先頭8サンプルS174を抽出する。さらに,サンプル抽出回路17が,スプライン補間された8サンプルに置換されるシンボル#n,#n+1のシンボル境界を中心とする前後4サンプルの両側2サンプルS174−1,S174−2(2サンプルは一例)も抽出し,先に抽出した8サンプルS174の前後に両側2サンプルS174−1,S174−2を拡張分抽出サンプルとして付加して,スプライン補間対象の合成信号S171を生成する。
【0037】
この合成信号S171がスプライン補間回路18により3次スプライン補間され,補間後の12サンプルのデータが,3次のなめらかな曲線上のデータに変換される。スプライン補間された12サンプルのうち,中心の8サンプルS18がスプライン補間回路から出力される。そして,スプライン補間出力S18が,タイミング調整回路出力S19のシンボル境界を中心とする8サンプルと置き換えられる。
【0038】
上記の方法によれば,スプライン補間対象が,置換対象の8サンプルS174と,置換される8サンプルの前後2サンプルS174−1,S174−2とを合成したものであるので,8サンプルS174と,前後2サンプルS171−1,S171−2とは,スプライン補間後なめらかな3次曲線上のデータに補正される。そして,補間後の8サンプルS18が,タイミング調整回路出力S19のサンプル境界の8サンプルと置き換えられる。その結果,補間された8サンプルS18と前後2サンプルS171−2,S171−2との境界の不連続性は緩和され,サイドローブを適切に抑制することができる。
【0039】
図15は,第2の実施の形態におけるサンプル抽出回路の構成を示す図である。図9のサンプル抽出回路の構成と異なるところは,処理開始信号S1をトリガにして同期クロックでカウントアップされるカウンタ値と抽出サンプル数S2とに応じてイネーブル信号を出力するデコーダDEC#1に加えて,カウンタ値と拡張分抽出サンプル数S2Aとに応じてイネーブル信号を出力するデコーダDEC#2を設け,それに伴って2つのデコーダ出力を合成するORゲートを設けている。さらに,異なる時間帯に抽出される8サンプルと拡張分の4サンプル(前後2サンプル)とを合成する合成回路171を有する。
【0040】
図16は,図15のサンプル抽出回路の動作を示すタイミングチャート図である。図10と同様に,右方向が時間方向であり,時間帯t1,t2,t3が示されている。まず,時間帯t1にて,処理開始信号S1がシンボル#nの先頭のタイミングで出力され,カウンタ172が図示しない同期クロックに同期してカウントアップする。そして,図10の例と同様に,時間帯t2で,カウント値がn=128〜m=135の期間,デコーダDEC#1がイネーブル信号Enalbe1をHレベルにする。これに応答してセレクタ174は,GI挿入部出力S14からシンボル#nの有効シンボルの先頭の8サンプルをセレクタ出力S174として出力する。図16中の抽出8サンプルyである。この抽出8サンプルyは,合成回路171内で一時的に保持される。
【0041】
さらに,時間帯t3では,1シンボルが1024サンプルで構成される例では,シンボル#n内でのカウント値がk=1018,l=1019と,シンボル#n+1内のカウント値4,5とで,デコーダDEC#2がイネーブル信号Enable1をHレベルにする。これに応答して,セレクタ174が,GI挿入部出力S14から拡張分前後2サンプルx,zをセレクタ出力S174として出力する。
【0042】
合成回路171は,先にセレクタ174から出力された8サンプルyの前後に拡張分前後2サンプルx,zを付加して,合成回路出力S171として出力する。同時に,合成回路171は,デコーダDEC#2が出力したイネーブル信号Enable1に基づき,合成出力S171の期間Hレベルになるイネーブル信号Enalbe2を出力する。そして,スプライン補間回路18は,イネーブル信号Enable2に応答して合成回路出力(2+8+2サンプル)S171について3次スプライン補間演算を実行する。スプライン補間回路18は,前述のとおり,演算結果から前後の2サンプルを除外した8サンプルをスプライン補間出力S18として置換回路20に出力する。
【0043】
遅延回路173から出力されるタイミング信号S4は,時間帯t3では未だHレベルにならず,図14で説明したとおり,スプライン補間演算後のタイミングであって,タイミング調整回路19でタイミング調整された時間ドメインの信号S19のシンボル#n,#n+1の境界8サンプルのタイミングと整合するタイミングでHレベルになる。
【0044】
図17は,タイミング調整回路の一例を示す図である。図11図14で説明したとおり,タイミング調整回路18は,スプライン補間演算に要する時間d18に応じて,異なる遅延時間d19を有する。そこで,図17のタイミング調整回路は,抽出サンプル数それぞれに対応する遅延時間を有する抽出時遅延回路群192と,抽出サンプル数S2に応じて抽出時遅延回路192のいずれかを選択するデコーダ191と,ORゲート193とを有する。
【0045】
図17中の表に,参考例として,スプライン補間処理に要する遅延量を抽出サンプル数に対応して示している。この例は,第1の実施の形態のように8サンプルを前後に拡張分の2サンプルを付加せずにスプライン補間処理した例である。第2の実施の形態であれば,抽出サンプル数S2と拡張分抽出サンプル数S2Aとの合計サンプル数に対応した遅延量になる。いずれにしても,サンプル数が多くなるほどスプライン補間処理に要する遅延量が増える。それに伴い,タイミング調整回路内の遅延量d19も増やすことが必要になる。
【0046】
図17によれば,スプライン補間対象のサンプル数に応じて,デコーダ191が適切な遅延回路192を選択するイネーブル信号ENを出力し,イネーブル信号ENで選択された遅延回路192が選択され,適切なタイミング調整が行われる。
【0047】
図18は,第1の実施の形態の有効シンボルの先頭8サンプルを3次スプライン補間して置換した場合の周波数スペクトラムの図である。S62は,図4のS42と同じでシンボル境界を含まない時間ドメイン信号のOFDM送信波の周波数スペクトラムであり,S63は,第1の実施の形態により3次スプライン補間された8サンプルに置換した時間ドメイン信号のOFDM送信波の周波数スペクトラムである。図4のS41に比較すると,OFDMの周波数帯域FBの外側の帯域でのパワーが十分に抑制され,サイドローブが抑制されていることが理解できる。
【0048】
第2の実施の形態で説明したように,拡張分の前後2サンプルを付加して3次スプライン補間した場合は,さらに,サイドローブが改善される。
【0049】
なお,抽出する数サンプルの信号は,必ずしも有効シンボルの先頭数サンプルである必要はなく,シンボル境界をサンプル間に含まない数サンプルであればどこでもよく,同様にサイドローブが抑制される。
【0050】
以上の通り,本実施の形態による送信器は,シンボル境界の位相変調による不連続を緩和してサイドローブを抑制する。
【0051】
以上の実施の形態をまとめると,次の付記のとおりである。
【0052】
(付記1)
周波数領域の信号を時間領域の信号に変換し,前記時間領域の信号にガードインターバルを付加する逆フーリエ変換部と,
前記逆フーリエ変換部から出力された前記時間領域の信号のシンボル内の複数サンプルデータを抽出するサンプル抽出回路と,
前記抽出された抽出サンプルデータをスプライン補間演算するスプライン補間回路と,
前記抽出サンプルデータと同じサンプル数を有し前記シンボルの境界部を中心とする境界サンプルデータを,前記スプライン補間回路が演算した補間サンプルデータで置き換える置換回路とを有する送信器。
【0053】
(付記2)
付記1において,
前記スプライン補間回路は,前記抽出サンプルデータに,前記境界サンプルデータの前後の前後サンプルデータを付加して,前記スプライン補間演算を行い,
前記置換回路は,前記補間サンプルデータとして,前記スプライン補間演算されたサンプルデータのうち前記抽出サンプルデータに対応する数のサンプルデータで置き換える送信器。
【0054】
(付記3)
付記1または2において,
前記スプライン補間回路は,3次のスプライン補間演算を行う送信器。
【0055】
(付記4)
付記1,2,3のいずれかにおいて,
前記サンプル抽出回路は,前記シンボルの有効シンボル区間の先頭の複数サンプルを前記抽出サンプルデータとして抽出する送信器。
【0056】
(付記5)
付記1,2,3のいずれかにおいて,
さらに,前記逆フーリエ変換部と前記置換回路との間に,前記時間領域の信号のうち前記置換されるシンボル境界部の信号の前記置換回路への入力タイミングを,前記スプライン補間回路による前記補間サンプルデータの前記置換回路への入力タイミングに整合させるように遅延させるタイミング調整回路を有する送信器。
【0057】
(付記6)
付記4において,
前記タイミング調整回路の遅延量は,前記抽出サンプルデータのサンプル数に応じて異なる送信器。
【符号の説明】
【0058】
13:IFFT 14:GI挿入部
17:サンプル抽出回路 18:スプライン補間回路
19:タイミング調整回路 20:置換回路
S14,S19:時間領域の信号 S17:抽出サンプルデータ
S18:補間サンプルデータ
図1
図2
図3
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図4
図18