特許第5817654号(P5817654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5817654
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】フォークリフト
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20151029BHJP
   B66F 9/075 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   B66F9/24 Z
   B66F9/075 Z
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-135755(P2012-135755)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2014-1025(P2014-1025A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠
(72)【発明者】
【氏名】大塚 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】水城 琢
(72)【発明者】
【氏名】西脇 孝
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−221199(JP,A)
【文献】 実開平01−078700(JP,U)
【文献】 特開2003−154959(JP,A)
【文献】 特開2003−073086(JP,A)
【文献】 特開2003−154955(JP,A)
【文献】 特開2005−029347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
B66F 9/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能な運転台を備えたフォークリフトにおいて、
前記運転台に設けられ、乗員を保護する開閉式のガード部材と、
前記ガード部材の開閉状態を検出する開閉検出部と、
車両の電源をON状態及びOFF状態とする車両キースイッチと、
前記車両キースイッチの操作状態を検出するキー操作検出部と、
前記運転台に乗員が存在するか否かを判定する乗員判定部と、
前記乗員判定部によって乗員が存在すると判定されている状態で、前記開閉検出部が前記ガード部材の閉鎖状態を検出し、かつ前記キー操作検出部が前記車両キースイッチのOFF状態を検出した場合に異常監視状態へ移行し、当該異常監視状態へ移行してからの時間が予め定めた所定時間を超えた場合は、前記キー操作検出部が前記車両キースイッチのON状態を検出したことを契機に前記開閉検出部の作動状態が異常であると判定する異常判定部と、を備えたことを特徴とするフォークリフト。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記乗員判定部によって乗員が存在すると判定されていない状態で、前記開閉検出部が前記ガード部材の閉鎖状態を検出し、かつ前記キー操作検出部が前記車両キースイッチのOFF状態を検出している場合は、前記開閉検出部の作動状態が異常であると判定しないことを特徴とする請求項1に記載のフォークリフト。
【請求項3】
前記ガード部材とは別であって、乗員が操作可能な操作部材と、
前記操作部材の操作状態を検出する操作検出部と、をさらに備え、
前記乗員判定部は、前記開閉検出部が前記ガード部材の閉鎖状態を検出し、かつ前記操作検出部が前記操作部材の操作を少なくとも1回検出した場合に、乗員が存在すると判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフォークリフト。
【請求項4】
前記運転台には、乗員の踏み込み操作によってブレーキを解除させて走行可能状態とし、前記踏み込み操作を止めることでブレーキを掛けて停車状態とするブレーキペダルが配設されており、
前記操作部材を、前記ブレーキペダルとしたことを特徴とする請求項3に記載のフォークリフト。
【請求項5】
前記異常判定部が前記開閉検出部の作動状態が異常であると判定した場合に、その異常を報知する異常報知手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載のフォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降可能な運転台を備えたフォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
昇降可能な運転台を備えるフォークリフトとして、特許文献1に開示されるピッキングリフトが知られている。ピッキングリフトは、車両後方に配置される荷役具としてのフォークとともに運転台が昇降動作するピッキング作業用のフォークリフトである。ピッキングリフトでは、高所作業を伴うことから、乗員を保護する保護具として運転台に開閉式の安全ガードが設けられている。そして、特許文献1のピッキングリフトでは、安全ガードの開閉状態に基づき乗員の有無を検出し、その検出結果をもとに操舵輪を車両の直進状態に対応する角度に戻す制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−154955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、安全ガードの開閉状態に基づき乗員の有無を検出し、その検出結果を車両制御に反映させる場合は、安全ガードの開閉状態が正確に検出されていることが前提となる。つまり、安全ガードの開閉状態を検出するスイッチなどの検出器が正常に作動していることが前提となる。このため、検出器の異常を判定する構成を備える必要がある。
【0005】
ところで、検出器の異常を判定する方法としては、例えば車両キースイッチがOFF状態である時に検出器が安全ガードの閉鎖状態を所定時間の間、検出した場合に異常と判定することが考えられる。しかしながら、ピッキングリフトの場合、安全ガードは、実際に乗員が存在するか否かに関係なく、車外から操作可能な構成となっている。このため、ピッキングリフトでは、安全ガードの閉鎖状態が所定時間の間、継続したことを条件として異常判定を行っても、その判定結果が正確であるとは限らない。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、ガード部材の開閉状態を検出する開閉検出部の異常判定の正確性を向上させたフォークリフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、昇降可能な運転台を備えたフォークリフトにおいて、前記運転台に設けられ、乗員を保護する開閉式のガード部材と、前記ガード部材の開閉状態を検出する開閉検出部と、車両の電源をON状態及びOFF状態とする車両キースイッチと、前記車両キースイッチの操作状態を検出するキー操作検出部と、前記運転台に乗員が存在するか否かを判定する乗員判定部と、前記乗員判定部によって乗員が存在すると判定されている状態で、前記開閉検出部が前記ガード部材の閉鎖状態を検出し、かつ前記キー操作検出部が前記車両キースイッチのOFF状態を検出した場合に異常監視状態へ移行し、当該異常監視状態へ移行してからの時間が予め定めた所定時間を超えた場合は、前記キー操作検出部が前記車両キースイッチのON状態を検出したことを契機に前記開閉検出部の作動状態が異常であると判定する異常判定部と、を備えたことを要旨とする。
【0008】
これによれば、乗員が存在すると判定されている場合に、開閉検出部が異常であるか否かの判定が行われる。そして、乗員が存在すると判定されている状態で、車両キースイッチのOFF状態が検出されたにも拘わらず、ガード部材の閉鎖状態が継続的に検出されている場合、開閉検出部の作動状態が異常であるとの判定が行われる。したがって、異常判定の正確性を向上させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフォークリフトにおいて、前記異常判定部は、前記乗員判定部によって乗員が存在すると判定されていない状態で、前記開閉検出部が前記ガード部材の閉鎖状態を検出し、かつ前記キー操作検出部が前記車両キースイッチのOFF状態を検出している場合は、前記開閉検出部の作動状態が異常であると判定しないことを要旨とする。これによれば、乗員が存在すると判定されていない場合は、ガード部材の閉鎖状態が継続的に検出されていても、開閉検出部の作動状態が異常であるとの判定は行われない。したがって、異常判定の正確性を向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のフォークリフトにおいて、前記ガード部材とは別であって、乗員が操作可能な操作部材と、前記操作部材の操作状態を検出する操作検出部と、をさらに備え、前記乗員判定部は、前記開閉検出部が前記ガード部材の閉鎖状態を検出し、かつ前記操作検出部が前記操作部材の操作を少なくとも1回検出した場合に、乗員が存在すると判定することを要旨とする。
【0011】
これによれば、ガード部材が閉鎖状態であることに加えて、ガード部材とは別の操作部材の操作が行われた場合に、乗員が存在すると判定される。このため、ガード部材が閉鎖状態とされているのみでは乗員が存在するとの判定が行われない。つまり、この場合は、乗員が不在であると判定される。したがって、乗員検知の正確性を向上させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のフォークリフトにおいて、前記運転台には、乗員の踏み込み操作によってブレーキを解除させて走行可能状態とし、前記踏み込み操作を止めることでブレーキを掛けて停車状態とするブレーキペダルが配設されており、前記操作部材を、前記ブレーキペダルとしたことを要旨とする。
【0013】
これによれば、乗員検知の条件をブレーキペダルの踏み込み操作とすることで、乗員の操作性を損なわせることなく、乗員検知の正確性を向上させることができる。ブレーキペダルの踏み込み操作は、車両を走行させるために必要な操作である。つまり、ブレーキペダルは、作業を行う際、乗員が特別に意識しなくても操作する部材である。したがって、乗員検知の正確性を向上させるために条件を増やしても、乗員は、普段の作業時と同じ操作を行えば良く、操作性が損なわれることがない。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載のフォークリフトにおいて、前記異常判定部が前記開閉検出部の作動状態が異常であると判定した場合に、その異常を報知する異常報知手段をさらに備えたことを要旨とする。これによれば、異常報知手段による報知によって開閉検出部の異常を乗員に早期に発見させることができる。したがって、車両の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガード部材の開閉状態を検出する開閉検出部の異常判定の正確性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ピッキングリフトの斜視図。
図2】電気的構成を示すブロック図。
図3】状態の遷移を示す模式図。
図4】非監視状態時処理を示すフローチャート。
図5】第1状態時処理を示すフローチャート。
図6】第2状態時処理を示すフローチャート。
図7】第3状態時処理を示すフローチャート。
図8】別例のピッキングリフトの要部を示す破断図。
図9】別例のピッキングリフトの要部を示す破断図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1図7にしたがって説明する。
フォークリフトとしてのピッキングリフト10は、機台となる車体11の後部にマスト装置12を装備している。マスト装置12には、乗員が車両の運転操作を行う運転部としての運転台13がマスト14に沿って昇降可能に配備されている。運転台13の下部には、荷役具としての一対のフォーク15が取り付けられている。フォーク15は、運転台13の昇降移動に伴って上下方向で位置決めされる。また、車体11には、車載バッテリ16が搭載されている。そして、本実施形態のピッキングリフト10の車体11には、図2に示す走行用モータM1が搭載されており、当該走行用モータM1の駆動力によって図示しない駆動輪を回転駆動させるバッテリ車である。駆動輪は、車体11の前部に配置されており、操舵輪を兼用している。なお、車体11の後部には、一対の従動輪(図1に片輪のみ図示する)17が配置されている。
【0018】
運転台13の前部には、前方視界を確保しながら乗員の前方をガードするネット18が配設されている。また、運転台13の前部には、乗員が運転操作を行うインストルメントパネル20が配設されている。インストルメントパネル20には、車両キースイッチ21と、グリップ式のアクセルレバー22と、サムレバー式の荷役レバー23と、操舵ハンドル24と、が配設されている。車両キースイッチ21は、ピッキングリフト10の電源をON状態とOFF状態に切り換える時に操作するものである。アクセルレバー22は、ピッキングリフト10を走行させる時に操作するものである。荷役レバー23は、運転台13とともにフォーク15を昇降させる時に操作するものである。操舵ハンドル24は、操舵輪の舵角、すなわちピッキングリフト10の進行向きを変更する時に操作するものである。また、インストルメントパネル20には、各種の情報を表示可能な表示器Hが配設されている。
【0019】
運転台13のフロア部13aには、ブレーキペダル25が配設されている。ブレーキペダル25は、ピッキングリフト10を走行させる時に踏み込み操作することでブレーキを解除するものである。なお、ピッキングリフト10は、ブレーキペダル25の踏み込み操作を止めるとブレーキが掛かって停車状態に保持される。このように乗員の操作によってブレーキを解除し、乗員が操作を止めるとブレーキが掛かるブレーキシステムは、車両の安全装置の一つとして装備され、所謂デッドマンブレーキと称される。
【0020】
また、運転台13の上部には、乗員の上方をガードするヘッドガード26が設けられている。さらに、運転台13には、フロア部13aの左右、及び後方を囲むように運転台ガード27が設けられている。運転台ガード27は、車両後方に配置されるリヤガード28と、車両左右に配置されるガード部材としてのサイドゲート29と、から構成される。リヤガード28は、先端部を水平に曲げ加工した棒状部材であって、車両上下に延びるように配設されている。そして、リヤガード28は、運転台13の後部を部分的に、すなわち後部右側分をガードするように、運転台13の後部右寄りに配置されている。そして、リヤガード28は、運転台13に対して一体的に固定された固定式である。リヤガード28は、車両後方、すなわち運転台13の後方を車外と区画する。
【0021】
一方、サイドゲート29は、リヤガード28とは別体で運転台13に配置されており、運転台13において乗員を保護する。サイドゲート29は、運転台13の左側に配置される左ゲート部30Lと、運転台13の右側に配置される右ゲート部30Rと、を有する。本実施形態のサイドゲート29、すなわち左ゲート部30Lと右ゲート部30Rは、車両上下に連動して回転可能に設けられた可動式とされている。そして、サイドゲート29は、図示しない固定装置によって好適な回転位置で固定される。左ゲート部30Lは、平面がほぼL字状をなすように曲げ加工した棒状部材であって、降ろした状態で運転台13の左側部と、リヤガード28によるガードのない運転台13の後部左側部をガードする。また、右ゲート部30Rは、直線的な棒状部材であって、降ろした状態で運転台13の右側部をガードする。左ゲート部30Lは、降ろした状態で車両左側方、すなわち運転台13の左側方を車外と区画する。また、右ゲート部30Rは、降ろした状態で車両右側方、すなわち運転台13の右側方を車外と区画する。また、左ゲート部30L、及び右ゲート部30Rは、運転台13への出入り口を開放及び閉鎖する。
【0022】
左ゲート部30Lと右ゲート部30Rは、図1に二点鎖線で示す状態が降ろした状態となり、この状態が閉鎖状態となる。一方、左ゲート部30Lと右ゲート部30Rは、図1に実線で示す状態が上げた状態となり、この状態が開放状態となる。
【0023】
次に、ピッキングリフト10の電気的構成を図2にしたがって説明する。
ピッキングリフト10は、コントローラ31を備えている。コントローラ31には、各種処理を所定の手順で実行する処理部31aと、制御プログラムなどの各種制御の情報を記憶する記憶部31bと、が内蔵されている。コントローラ31には、各種の検出部となる、キースイッチ32と、ゲートスイッチ33と、ブレーキスイッチ34と、アクセルセンサ35と、荷役レバーセンサ36と、ハンドル角センサ37とが、電気的に接続されている。
【0024】
キースイッチ32は、車両キースイッチ21の操作状態を検出し、車両キースイッチ21がON位置に操作されているか、又はOFF位置に操作されているかを検出する。ゲートスイッチ33は、サイドゲート29の開閉状態を検出し、サイドゲート29が開放状態に操作されているか、又は閉鎖状態に操作されているかを検出する。ブレーキスイッチ34は、ブレーキペダル25の操作状態を検出し、ブレーキペダル25が踏み込み操作されているか、又は踏み込み操作されていないかを検出する。アクセルセンサ35は、アクセルレバー22の操作方向とその操作量を検出する。アクセルレバー22の操作方向は、ピッキングリフト10を前進走行させる前進指示方向と、後進走行させる後進指示方向とからなる。荷役レバーセンサ36は、荷役レバー23の操作方向とその操作量を検出する。荷役レバー23の操作方向は、運転台13及びフォーク15を上昇動作させる上昇指示方向と、下降動作させる下降指示方向とからなる。ハンドル角センサ37は、操舵ハンドル24の操作量(操作角)を検出する。本実施形態では、キースイッチ32がキー操作検出部となり、ゲートスイッチ33が開閉検出部となる。また、本実施形態では、操作部材となるブレーキペダル25の操作状態を検出するブレーキスイッチ34が操作検出部となる。
【0025】
また、コントローラ31には、走行制御部38と、電磁ブレーキ部39と、荷役制御部40と、が電気的に接続されている。走行制御部38は、走行用モータM1を備える。処理部31aは、アクセルレバー22の操作に基づくアクセルセンサ35からの操作信号を入力し、走行用モータM1の回転速度を制御する。これにより、ピッキングリフト10は、アクセルレバー22の操作方向に対応する進行方向に操作量に応じた速度で走行する。また、電磁ブレーキ部39は、ピッキングリフト10を停車状態に保持するブレーキ装置BRを備える。処理部31aは、ブレーキペダル25の操作に基づくブレーキスイッチ34からの操作信号を入力し、ブレーキ装置BRを制御する。これにより、ピッキングリフト10は、ブレーキペダル25が踏み込み操作されている場合にブレーキが解除される一方で、ブレーキペダル25が踏み込み操作されていない場合にブレーキが掛かって停車状態とされる。荷役制御部40は、荷役用モータM2を備える。処理部31aは、荷役レバー23の操作に基づく荷役レバーセンサ36からの操作信号を入力し、荷役用モータM2の回転速度を制御する。これにより、運転台13及びフォーク15は、荷役レバー23の操作方向に対応する昇降方向に操作量に応じた速度で上昇動作又は下降方動作を行う。
【0026】
また、コントローラ31には、車載バッテリ16が電気的に接続されており、車載バッテリ16からの電力が供給される。また、走行制御部38と荷役制御部40は、通電制御部41を介して、車載バッテリ16に電気的に接続されている。通電制御部41は、コンタクタ(電磁接触器)42を備える。コンタクタ42は、車載バッテリ16と走行制御部38の間の電路、及び車載バッテリ16と荷役制御部40の間の電路を、通電状態及び非通電状態に切り換える。走行制御部38と荷役制御部40は、車載バッテリ16との間の電路が通電状態の場合に電力が供給される一方で、車載バッテリ16との間の電路が非通電状態の場合に電力の供給が遮断される。一方、コントローラ31は、通電制御部41を介さずに車載バッテリ16からの電力が供給されるため、キースイッチ32がキーオン及びキーオフの何れの状態であっても、電力が供給されている。なお、通電制御部41には、インストルメントパネル20に配設されている表示器Hなどの電気機器も接続されており、通電制御部41を介して電力が供給される。
【0027】
そして、本実施形態のピッキングリフト10では、ゲートスイッチ33が正常に作動しているか否か、すなわちゲートスイッチ33の異常判定を行う。
以下、ゲートスイッチ33の異常判定について詳しく説明する。
【0028】
図3は、本実施形態のピッキングリフト10が、ゲートスイッチ33の異常判定を行うに際して取り得る状態の変遷を示す。
ピッキングリフト10は、図3に示すように、非監視状態a1と、第1状態a2と、第2状態a3と、第3状態a4と、異常確定状態a5の5つの状態を取り得る。非監視状態a1は、ゲートスイッチ33の作動状態が正常であると確定的に判定している状態である。第1状態a2は、非監視状態a1において図中に示す条件が成立した場合に移行可能な状態であって、ゲートスイッチ33の作動状態が異常である可能性を有している状態である。第2状態a3は、第1状態a2において図中に示す条件が成立した場合に移行可能な状態であって、ゲートスイッチ33の作動状態が異常である可能性を有し、その可能性が第1状態a2に比して高い状態である。第3状態a4は、第2状態a3において図中に示す条件が成立した場合に移行可能な状態であって、ゲートスイッチ33の作動状態が異常である可能性を有し、その可能性が第2状態a3に比して高い状態である。異常確定状態a5は、第3状態a4において図中に示す条件が成立した場合に移行可能な状態であって、ゲートスイッチ33の作動状態が異常であると確定的に判定している状態である。また、第1状態a2、第2状態a3、第3状態a4及び異常確定状態a5では、図中に示すようにゲートスイッチ33の作動状態が正常とみなせる条件が成立した場合、非監視状態a1へ移行可能である。そして、処理部31aは、前述した各状態において図4図7に示す処理を行う。本実施形態では、第2状態a3及び第3状態a4が異常監視状態となる。そして、第2状態a3及び第3状態a4の処理を行う処理部31aが、異常判定部として機能する。
【0029】
以下、各状態において処理部31aが行う処理内容を説明する。
最初に、非監視状態a1において処理部31aが行う非監視状態時処理を図4にしたがって説明する。非監視状態時処理は、運転台13に乗員が存在するか否かを検出する処理である。そして、処理部31aは、乗員の存在を検知するまでの間、非監視状態時処理を所定の制御周期毎に繰り返し実行する。また、本実施形態では、以下に説明する非監視状態時処理を行う処理部31aが乗員判定部として機能する。
【0030】
処理部31aは、キースイッチ32からの操作信号をもとに、車両キースイッチ21がキーオン、すなわちON位置に操作されているか否かを判定する(ステップS10)。この判定結果が否定の場合、処理部31aは、非監視状態時処理を終了する。一方、ステップS10の判定結果が肯定の場合、処理部31aは、ゲートスイッチ33からの操作信号をもとに、サイドゲート29が閉鎖状態に操作されているか否かを判定する(ステップS11)。この判定結果が否定の場合、処理部31aは、非監視状態時処理を終了する。なお、ステップS10を肯定判定し、かつステップS11を否定判定した場合は、車両キースイッチ21がON位置に操作されていることで乗員が実際に存在する可能性はあるが、制御的には乗員不在として判定している。
【0031】
一方、ステップS11の判定結果が肯定の場合、処理部31aは、ブレーキスイッチ34からの操作信号をもとに、ブレーキペダル25の踏み込み操作が行われたか否かを判定する(ステップS12)。この判定結果が否定の場合、処理部31aは、非監視状態時処理を終了する。一方、ステップS12の判定結果が肯定の場合、処理部31aは、乗員の存在を検知する(ステップS13)。なお、ブレーキペダル25の操作は、1回行えば、ステップS12が肯定判定される。そして、乗員の存在を検知した処理部31aは、第1状態a2へ移行する(ステップS14)。
【0032】
本実施形態の非監視状態時処理、すなわち乗員検知の処理では、サイドゲート29の閉鎖状態を検知した段階において制御的には乗員の存在を検知していない。つまり、本実施形態では、サイドゲート29を閉鎖状態にすることに加えて、乗員によって別の1つの操作が行われることを乗員の存在を検知する条件としている。すなわち、本実施形態では、乗員がサイドゲート29を閉鎖状態とし、さらにブレーキペダル25を1回踏み込み操作すると、当該乗員の存在が検知される。このため、ステップS12を否定判定、すなわちブレーキペダル25が踏み込み操作されていない場合は、乗員が実際に存在する可能性はあるが、制御的には乗員不在として判定している。
【0033】
なお、ピッキングリフト10では、車両キースイッチ21がON位置に操作されている場合であっても、サイドゲート29が開放状態である場合、走行と荷役を禁止状態としている。そして、本実施形態において処理部31aは、乗員の存在を検知した時、すなわち図4に示す非監視状態時処理においてステップS13で乗員の存在を検知すると、荷役を禁止状態から許可状態とする。つまり、本実施形態のピッキングリフト10は、車両キースイッチ21がON位置に操作されている前提において、サイドゲート29が閉鎖状態となり、かつブレーキペダル25が踏み込み操作されることを条件に、荷役を禁止状態から許可状態とする。これにより、ピッキングリフト10は、荷役動作を行うことができる。
【0034】
なお、ピッキングリフト10は、ブレーキペダル25を踏み込み操作した状態でアクセルレバー22を操作することで走行する。このため、アクセルレバー22を操作していない状態でブレーキペダル25を踏み込み操作しても、ピッキングリフト10は走行しない。
【0035】
次に、非監視状態a1から第1状態a2に移行した処理部31aが行う第1状態時処理を図5にしたがって説明する。第1状態時処理は、運転台13に乗員が存在していると判定している状態において、当該乗員が降車するか否か、すなわち乗員が不在となるか否かを検出する処理である。そして、処理部31aは、第1状態a2から、図3に示すように、非監視状態a1又は第2状態a3へ状態が遷移するまでの間、第1状態時処理を所定の制御周期毎に繰り返し実行する。
【0036】
処理部31aは、キースイッチ32からの操作信号をもとに、車両キースイッチ21がキーオフ、すなわちOFF位置に操作されているか否かを判定するとともに、ゲートスイッチ33からの操作信号をもとに、サイドゲート29が開放状態に操作されているか否かを判定する(ステップS20)。そして、処理部31aは、車両キースイッチ21がOFF位置に操作されていること、又はサイドゲート29が開放状態に操作されていることが検出されると、ステップS20を肯定判定してステップS21へ移行する。
【0037】
ステップS21へ移行した処理部31aは、ステップS20でサイドゲート29が開放状態に操作されていることを検出している場合、ステップS21を肯定判定してステップS22へ移行する。一方、処理部31aは、ステップS20で車両キースイッチ21がOFF位置に操作されていることを検出している場合、ステップS21を否定判定してステップS24へ移行する。
【0038】
ステップS22に移行した処理部31aは、乗員の不在を検知する。なお、ステップS22における乗員不在の検知結果は、制御的に不在とする判定の結果である。すなわち、運転台13に乗員が存在する状態で、当該乗員が何らかの理由でサイドゲート29を開放状態に操作した可能性はあるが、サイドゲート29を開放状態に操作したことによって当該乗員が降車する意思表示を示したと見なしている。また、処理部31aは、乗員不在の検知とともに、第1状態a2においてサイドゲート29の開放状態を検出している。これにより、ゲートスイッチ33の作動状態が正常であると判定できる。このため、処理部31aは、非監視状態a1へ移行する(ステップS23)。また、処理部31aは、非監視状態a1への移行に合わせて、乗員の不在を検知していることから、走行と荷役を禁止状態とする。
【0039】
一方、ステップS21を否定判定してステップS24へ移行した処理部31aは、キーオフ、すなわち車両キースイッチ21がOFF位置に操作されていることを検出する。この場合、処理部31aは、サイドゲート29が開放状態に操作されていることを検出していない。つまり、処理部31aは、ピッキングリフト10の状態として、車両キースイッチ21はOFF位置に操作されたが、サイドゲート29が開放状態に操作されていない、すなわちサイドゲート29が閉鎖状態に維持されている状態を制御的に検出している。このようなピッキングリフト10の状態としては、車両キースイッチ21をOFF位置に操作した後も乗員が運転台13に残っている状態、又は乗員はサイドゲート29を開放状態に操作して降車したが、ゲートスイッチ33が開放状態を検出していない状態が考えられる。すなわち、ゲートスイッチ33が開放状態を検出していない状態は、ゲートスイッチ33の作動状態が異常である可能性を有する。このため、処理部31aは、ゲートスイッチ33の作動状態が異常であるか否かを判定するための第2状態a3へ移行する(ステップS25)。
【0040】
一方、ステップS20の判定結果が否定の場合、処理部31aは、ステップS26に移行する。処理部31aは、車両キースイッチ21がON位置を維持し、かつサイドゲート29が閉鎖状態を維持している場合、ステップS20を否定判定する。そして、ステップS26に移行した処理部31aは、乗員の存在を検知している状態を維持し、第1状態時処理を終了する。なお、ステップS26で乗員の存在を検知している場合、処理部31aは、第1状態時処理の終了後、所定の制御周期の到来によって再び第1状態時処理を開始する。
【0041】
次に、第1状態a2から第2状態a3に移行した処理部31aが行う第2状態時処理を図6にしたがって説明する。第2状態時処理は、ゲートスイッチ33が開放状態を検出していない状態において、当該ゲートスイッチ33の作動状態が異常であるか否かを判定する処理である。そして、処理部31aは、第2状態a3から、図3に示すように、非監視状態a1又は第3状態a4へ状態が遷移するまでの間、第2状態時処理を所定の制御周期毎に繰り返し実行する。
【0042】
処理部31aは、ゲートスイッチ33の作動状態を異常とみなすための所定時間を記憶部31bに設定する(ステップS30)。ステップS30で設定される時間は、異常とみなすまでの待機時間となる。この時間は、例えば10分程度に設定される。そして、処理部31aは、キースイッチ32からの操作信号をもとに、車両キースイッチ21がキーオン、すなわちON位置に操作されているか否かを判定するとともに、ゲートスイッチ33からの操作信号をもとに、サイドゲート29が開放状態に操作されているか否かを判定する(ステップS31)。そして、処理部31aは、車両キースイッチ21がON位置に操作されていること、又はサイドゲート29が開放状態に操作されていることが検出されると、ステップS31を肯定判定し、ステップS32において非監視状態a1へ移行する。
【0043】
ステップS31を肯定判定する場合は、ステップS30で設定した所定時間の経過前に、ゲートスイッチ33が開放状態を検出している場合、又は車両キースイッチ21がON位置に操作されてピッキングリフト10が起動した場合である。このため、処理部31aは、第1状態時処理において開放状態を検出していなかったゲートスイッチ33が開放状態を検出したので、ゲートスイッチ33の作動状態に異常はないとして非監視状態a1に移行する。また、処理部31aは、第1状態時処理から継続してゲートスイッチ33が開放状態を検出していないが、ピッキングリフト10が起動したことにより、今回の制御においてはゲートスイッチ33の作動状態に異常はないとみなして非監視状態a1に移行する。
【0044】
一方、処理部31aは、車両キースイッチ21がON位置に操作されていること、及びサイドゲート29が開放状態に操作されていることのどちらも検出されない場合、ステップS31を否定判定する。そして、処理部31aは、ステップS30で設定した時間が経過したか否かを判定する(ステップS33)。この判定結果が否定の場合、処理部31aは、ステップS31からの処理を繰り返し行う。一方、ステップS33の判定結果が肯定の場合、処理部31aは、第3状態a4に移行する(ステップS34)。つまり、処理部31aは、ステップS30で設定した時間を経過しても、車両キースイッチ21がON位置に操作されず、かつゲートスイッチ33が開放状態を検出しないので、ゲートスイッチ33の作動状態が異常であるとみなして第3状態a4に移行する。第3状態a4へ移行することは、ゲートスイッチ33の作動状態が異常である可能性が極めて高いと判定される時である。
【0045】
次に、第2状態a3から第3状態a4に移行した処理部31aが行う第3状態時処理を図7にしたがって説明する。なお、第3状態時処理には、異常確定状態a5への移行後の処理も含まれている。そして、第3状態時処理は、ゲートスイッチ33が開放状態を検出していない状態において、ゲートスイッチ33の作動状態が異常であることを報知させる処理である。そして、処理部31aは、第3状態a4又は異常確定状態a5から、図3に示すように、非監視状態a1へ状態が遷移するまでの間、第3状態時処理を所定の制御周期毎に繰り返し実行する。
【0046】
処理部31aは、キースイッチ32からの操作信号をもとに、車両キースイッチ21がキーオン、すなわちON位置に操作されているか否かを判定する(ステップS40)。この判定結果が肯定の場合、処理部31aは、ピッキングリフト10が起動したことにより、異常確定状態a5へ移行する(ステップS41)。そして、異常確定状態a5へ移行した処理部31aは、インストルメントパネル20の表示器Hにエラー表示を行う(ステップS42)。つまり、処理部31aは、表示器Hを異常報知手段として機能させ、その表示器Hに、ゲートスイッチ33の作動状態が異常であることを報知させる。
【0047】
次に、処理部31aは、ゲートスイッチ33からの操作信号をもとに、サイドゲート29が開放状態に操作されているか否かを判定する(ステップS43)。この判定結果が否定の場合、処理部31aは、ステップS42の処理、すなわち表示器Hによるエラー表示を繰り返す。一方、ステップS43の判定結果が肯定の場合、表示器Hによるエラー表示を非表示、すなわちエラーの報知を停止する(ステップS44)。そして、処理部31aは、ステップS43を肯定判定、すなわちゲートスイッチ33が開放状態を検出したことによってゲートスイッチ33の作動状態が正常であるとし、非監視状態a1へ移行する(ステップS45)。
【0048】
一方、ステップS40の判定結果が否定の場合、処理部31aは、ゲートスイッチ33からの操作信号をもとに、サイドゲート29が開放状態に操作されているか否かを判定する(ステップS46)。この判定結果が肯定の場合、処理部31aは、ステップS45にて非監視状態a1へ移行する。処理部31aは、第1状態時処理、及び第2状態時処理において開放状態を検出していなかったゲートスイッチ33が開放状態を検出したので、ゲートスイッチ33の作動状態に異常はないとして非監視状態a1に移行する。一方、ステップS46の判定結果が否定の場合、処理部31aは、第3状態時処理を終了する。そして、処理部31aは、第3状態時処理の終了後、所定の制御周期の到来によって再び第3状態時処理を開始する。
【0049】
以下、本実施形態のピッキングリフト10の作用を説明する。
本実施形態のピッキングリフト10では、図4に示す非監視状態時処理において、サイドゲート29が閉鎖状態に操作されたことと、ブレーキペダル25が踏み込み操作されたことによって乗員の存在が検知される。つまり、サイドゲート29が閉鎖状態に操作されたことによる単一の操作によって乗員の存在が検知されるのではなく、当該操作に加えてさらに別の操作が行われることで乗員の存在が検知される。そして、乗員が前述した複数の操作を行うことで、ピッキングリフト10の走行及び荷役の禁止状態が解除される。
【0050】
そして、乗員の存在を検知した後は、ゲートスイッチ33の作動状態に異常があるか否かの異常判定を行う。つまり、図5の第1状態時処理、図6の第2状態時処理、及び図7の第3状態時処理を行う。本実施形態の異常判定は、非監視状態時処理において乗員の存在を検知している前提で行う。このため、ピッキングリフト10の停車後、単にサイドゲート29が閉鎖状態に操作されて、長時間の間、放置されているような場合をゲートスイッチ33の異常として判定しない。ピッキングリフト10の停車後にサイドゲート29が開放状態に操作されないまま長時間が経過することは、その間、乗員が運転台13に滞在し続けていることになり、不自然である。このため、本実施形態の異常判定では、乗員の存在を検知していることを前提として、前述のような不自然な状況が継続することをゲートスイッチ33の作動状態が異常であるとして判定する。
【0051】
したがって、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)処理部31aは、乗員が存在すると判定している状態で、キースイッチ32のOFF状態が検出されたにも拘わらず、サイドゲート29の閉鎖状態が継続的に検出されている場合、ゲートスイッチ33の異常判定を行う。したがって、異常判定の正確性を向上させることができる。
【0052】
(2)一方、処理部31aは、乗員が不在であると判定している場合、サイドゲート29の閉鎖状態が継続的に検出されていても、ゲートスイッチ33の異常判定は行わない。ピッキングリフト10のサイドゲート29は、その構造上、乗員が運転台13に居なくても、すなわち車外から操作することが可能である。このため、乗員が存在すると判定していない状態では異常判定を行わない。これにより、乗員が、単にサイドゲート29を閉鎖状態としてしまったような場合にゲートスイッチ33の作動状態を異常と判定しなくなるので、異常判定の正確性を向上させることができる。
【0053】
(3)ゲートスイッチ33の異常を報知することにより、乗員に異常を早期に発見させることができる。したがって、車両の信頼性を向上させることができる。
(4)処理部31aは、サイドゲート29が閉鎖状態であることに加えて、ブレーキペダル25の操作が行われた場合に、乗員が存在すると判定する。このため、サイドゲート29が閉鎖状態とされているのみでは乗員が存在するとの判定が行われない。つまり、この場合は、乗員が不在であると判定される。したがって、乗員検知の正確性を向上させることができる。
【0054】
(5)乗員検知の条件をブレーキペダル25の踏み込み操作とすることで、乗員の操作性を損なわせることなく、乗員検知の正確性を向上させることができる。ブレーキペダル25の踏み込み操作は、車両を走行させるために必要な操作である。つまり、ブレーキペダル25は、車両を使って作業を行う際、その乗員が特別に意識しなくても操作する部材である。したがって、乗員検知の正確性を向上させるために条件を増やしても、乗員は、普段の作業時と同じ操作を行えば良く、操作性が損なわれることがない。
【0055】
(6)また、1回のブレーキペダル25の踏み込み操作を条件としているので、複数回の操作を条件とする場合と異なり乗員の操作性を損なわせることもない。
(7)また、サイドゲート29が閉鎖状態に操作されていることのみを条件にして荷役の禁止状態を解除した場合は、サイドゲート29を閉鎖状態に操作すれば、乗員が運転台13に居なくても外から荷役操作を行うことができてしまう。しかし、本実施形態では、ブレーキペダル25の操作を乗員検知の条件に加えているので、上記のような方法で荷役操作が行われることに規制を掛けることができる。
【0056】
(8)また、サイドゲート29を閉鎖状態に操作することと、走行時と同様にブレーキペダル25を踏み込み操作し続けることを、走行及び荷役の禁止状態を解除させる条件としてしまうと、荷役操作だけを行いたい時に誤ってアクセルレバー22を操作してしまうと走行が行われてしまうことになる。しかし、本実施形態では、1回のブレーキペダル25の踏み込み操作を条件としているので、荷役操作だけを行いたい時にはブレーキペダル25の踏み込み操作を行わなければ走行を確実に禁止することができる。つまり、ピッキングリフト10を停車状態とし、安定させた状態で荷役作業を行わせることができる。なお、1回のブレーキペダル25の踏み込み操作を条件にすることは、換言すれば、継続的なブレーキペダル25の踏み込み操作は条件としていないことである。
【0057】
(9)そして、本実施形態のピッキングリフト10のように、アクセルレバー22に近接させてサムレバー式の荷役レバー23を配設した場合は、アクセルレバー22を握りながら荷役レバー23を操作することも可能である。したがって、上記の効果(7)で述べたように、本実施形態の条件によれば、荷役操作だけを行いたい時にはブレーキペダル25の踏み込み操作を行わなければ走行を確実に禁止することができる。つまり、ピッキングリフト10を停車状態とし、安定させた状態で荷役作業を行わせることができる。
【0058】
(10)ピッキングリフト10は、運転台13のフロア部13aに荷物を置いて作業を行う場合がある。このため、通常、ピッキングリフト10では、例えば、リーチ式のフォークリフトで採用されている乗員検知用のフロアスイッチは採用されていない。その理由は、フロア部13aに置かれた荷物が誤検出の要因となるからである。しかし、ピッキングリフト10において、フロア部13aにおける荷物の置き場を制限するなどすればフロアスイッチを採用し、当該フロアスイッチによって乗員検知を行うことも可能である。ところが、フロアスイッチを採用することは、ピッキングリフト10の大幅な設計変更などが必要となり、その結果、コスト増を招いてしまう。そこで、本実施形態のピッキングリフト10では、既存構成であるブレーキペダル25の操作状態を乗員検知の条件に加えている。したがって、フロアスイッチなどの新たな構成をピッキングリフト10に搭載することなく、コスト増を抑制することができる。また、制御処理の変更(プログラムの変更)によって乗員検知の正確性を向上させることができる。
【0059】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
図4に示す非監視状態時処理のステップS12で判定対象とする操作部材を変更しても良い。例えば、図8に示すように、インストルメントパネル20に乗員が操作可能であって、専用の操作スイッチ43を配設しても良い。この場合、処理部31aは、非監視状態時処理において、サイドゲート29が閉鎖状態に操作されたことと、操作スイッチ43が操作されたことにより、乗員の存在を検知する。このように乗員検知専用の操作部材を設けた場合、乗員はピッキングリフト10の走行及び荷役の禁止状態を解除するためには如何なる操作を行えば良いのかを理解し易く、操作性を向上させることができる。
【0060】
○ また、ステップS12で判定対象とする操作部材を、図9に示すように、運転台13のフロア部13aにブレーキペダル25とは別に乗員が操作可能であって、専用の操作ペダル44を配設しても良い。この場合、処理部31aは、非監視状態時処理において、サイドゲート29が閉鎖状態に操作されたことと、操作ペダル44が踏み込み操作されたことにより、乗員の存在を検知する。操作ペダル44を設けた場合は、上記別例で説明したように操作スイッチ43を設けたときと同様の作用効果を生じ得る。
【0061】
○ また、ステップS12で判定対象とする操作部材を、ブレーキペダル25に代えて、その他の既存構成に変更しても良い。例えば、アクセルレバー22、荷役レバー23、及び操舵ハンドル24の何れかの操作部材でも良い。アクセルレバー22の場合、処理部31aは、サイドゲート29が閉鎖状態に操作されたことと、アクセルレバー22が操作されたことにより、乗員の存在を検知する。また、荷役レバー23の場合、処理部31aは、サイドゲート29が閉鎖状態に操作されたことと、荷役レバー23が操作されたことにより、乗員の存在を検知する。また、操舵ハンドル24の場合、処理部31aは、サイドゲート29が閉鎖状態に操作されたことと、操舵ハンドル24が操作されたことにより、乗員の存在を検知する。なお、アクセルレバー22、荷役レバー23及び操舵ハンドル24の操作を検出して非監視状態時処理を行う場合、これらの操作部材による操作の内容を任意に設定することができる。例えば、アクセルレバー22であれば前進指示方向に操作したことや、荷役レバー23であれば上昇指示方向に操作したことなどに設定しても良い。また、操舵ハンドル24であればその操作角度が所定角度まで操作されたことなどに設定しても良い。
【0062】
○ サイドゲート29を構成する左ゲート部30Lと右ゲート部30Rを、独立して車両上下に回転可能に構成しても良い。この場合、左ゲート部30Lの操作状態を検出するゲートスイッチと、右ゲート部30Rの操作状態を検出するゲートスイッチを、それぞれ設ける。なお、各ゲートスイッチは、開放状態に操作されているか、又は閉鎖状態に操作されているかを検出する。そして、図4に示す非監視状態時処理において処理部31aは、左ゲート部30Lと右ゲート部30Rの両方が閉鎖状態に操作されていることが検出されるとステップS11を肯定判定する。一方、処理部31aは、乗員の不在を検出する場合、左ゲート部30L及び右ゲート部30Rの何れか一方が開放状態に操作されたことを条件とする。そして、左ゲート部30Lと右ゲート部30Rを独立して回転可能に構成した場合に、ゲートスイッチの異常判定を行っても良い。
【0063】
図4に示す非監視状態時処理において、処理部31aは、複数回、ブレーキペダル25が踏み込み操作されることにより、ステップS12を肯定判定しても良い。すなわち、ステップS12を肯定判定する条件は、少なくとも1回の操作であれば良い。
【0064】
○ ピッキングリフト10の運転台13に、リヤガード28を設けずに、サイドゲート29のみを設けても良い。
○ 運転台13に配設するサイドゲート29の構成(形状など)を変更しても良い。
【0065】
○ アクセルレバー22、荷役レバー23、及び操舵ハンドル24の構成を変更しても良い。
【符号の説明】
【0066】
10…ピッキングリフト、13…運転台、21…車両キースイッチ、25…ブレーキペダル、29…サイドゲート、31…コントローラ、31a…処理部、32…キースイッチ、33…ゲートスイッチ、34…ブレーキスイッチ、H…表示器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9