(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、光ファイバガラス母材(以下、ガラス母材という)を光ファイバ用線引炉(以下、線引炉という)で加熱溶融し、線引炉の下方から線引きして製造される。ガラス母材から線引きされた光ファイバは、例えば、紫外線硬化樹脂を塗布、硬化して被覆されるが、線引き直後の光ファイバは高温であるため、樹脂を直ちに塗布することができない。このため、線引炉と樹脂塗布装置との間に光ファイバ冷却装置を設け、線引き直後の光ファイバを強制的に冷却している。
【0003】
上記光ファイバ冷却装置に関して、例えば、特許文献1には、冷却ガスが上向きに流れるように誘導する技術が開示されている。
図7に示すように、光ファイバ冷却装置100は、光ファイバ101を冷却する冷却管102の下端に、冷却路102aに連通するガス導入室104が設けられている。このガス導入室104は、ガス導入口104aを有しており、このガス導入口104aからヘリウムガス等のガスG2が導入される。
【0004】
ガス導入室104から連通路104bを介して冷却路102a内に流れ込むガスG2によって、冷却路102a内のヘリウムガス等の冷却ガスG1が押圧される。そして、ガス導入室104近傍の冷却ガスG1の圧力が大きくなり、その後ガス導入口103側から導入されてくる冷却ガスG1が流れるときに受ける流体抵抗が大きくなり、圧力損失が大きくなる。このようにして出線部側領域の圧力損失を大きくし、冷却ガスG1の上昇流を顕著に発生させ、冷却効率を上げるようにしている。
【0005】
冷却ガスG1の上昇流は、冷却路102a内にて光ファイバ101の移動する方向に向けて流れる光ファイバ101の随伴流と衝突する。これにより、光ファイバ101の随伴流から露出した箇所に冷却ガスG1が直接接触し、光ファイバ101がより効果的に冷却される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の実施形態の説明)
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本発明は、
(1)光ファイバガラス母材から線引きされた光ファイバを冷却ガスにより強制的に冷却する光ファイバ冷却装置であって、冷却ガスの通路が形成された冷却管部と、該冷却管部の下部に設けられた加圧室と、該加圧室の下部に設けられた直管部とを有し、前記冷却管部の下部ゲージ圧をA、前記冷却管部の分割ユニット数をN、前記冷却管部の各分割ユニットの長さをLi(i=1〜N)、前記冷却管部の各分割ユニットの半径をRi(i=1〜N)、前記冷却管部の各分割ユニットに流す冷却ガスのガス流量をQi(i=1〜N)、前記冷却ガスの粘性係数をμ1、前記光ファイバの半径をr1、前記光ファイバの線引速度をV1、前記直管部の圧力損失をB、前記直管部の分割ユニット数をn、前記直管部の各分割ユニットの長さをLLj(j=1〜n)、前記直管部の各分割ユニットの半径をRRj(j=1〜n)、前記直管部に流す加圧ガスのガス流量をQ
gas、前記加圧ガスの粘性係数をμ2、前記加圧室の圧力損失をC、前記加圧室の内圧相関定数をD1〜D5、前記加圧室の形状補正係数をk(1≦k≦2)とした場合、
A−B−kC≦0、
但し、
【数1】
【数2】
【数3】
を満足する。
上記式を満たすように各パラメータを決定することにより、装置下部側からの冷却ガスの漏れを極力防止することができる。
【0013】
(2)前記直管部の各分割ユニットの長さLLjの合計は、0.001m以上0.5m以下であることが好ましい。
これにより、直管部を適切な長さとし、収納性を良好にすることができる。
【0014】
(3)光ファイバガラス母材から線引きされた光ファイバを冷却ガスにより強制的に冷却する光ファイバ冷却装置を用いた光ファイバ製造方法であって、冷却ガスの通路が形成された冷却管部と、該冷却管部の下部に設けられた加圧室と、該加圧室の下部に設けられた直管部とを有し、前記冷却管部の下部ゲージ圧をA、前記冷却管部の分割ユニット数をN、前記冷却管部の各分割ユニットの長さをLi(i=1〜N)、前記冷却管部の各分割ユニットの半径をRi(i=1〜N)、前記冷却管部の各分割ユニットに流す冷却ガスのガス流量をQi(i=1〜N)、前記冷却ガスの粘性係数をμ1、前記光ファイバの半径をr1、前記光ファイバの線引速度をV1、前記直管部の圧力損失をB、前記直管部の分割ユニット数をn、前記直管部の各分割ユニットの長さをLLj(j=1〜n)、前記直管部の各分割ユニットの半径をRRj(j=1〜n)、前記直管部に流す加圧ガスのガス流量をQ
gas、前記加圧ガスの粘性係数をμ2、前記加圧室の圧力損失をC、前記加圧室の内圧相関定数をD1〜D5、前記加圧室の形状補正係数をk(1≦k≦2)とした場合、
A−B−kC≦0、
但し、
【数1】
【数2】
【数3】
を満足する。
上述の(1)と同様に、上記式を満たすように各パラメータを決定することにより、装置下部側からの冷却ガスの漏れを極力防止することができる。
【0015】
(4)前記加圧ガスは、空気、窒素、アルゴン、二酸化炭素のいずれかのガスを含むことが好ましい。
これにより、加圧ガスとして、ヘリウムガス以外の比較的安価なガスを用いることができる。
【0016】
(5)前記加圧ガスのガス流量Q
gasは、0.0015m
3/s以下であることが好ましい。
これにより、多くの加圧ガスを流すことなく、冷却ガスの漏れを防止することが可能となる。
【0017】
(本発明の実施形態の詳細)
以下、本発明の実施形態に係る光ファイバ冷却装置及び該冷却装置を用いた光ファイバ製造方法の具体例を、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0018】
図1は、本発明が適用される光ファイバ冷却装置を含む製造装置の概略構成例を示す図である。図中、10は光ファイバ用線引炉(以下、単に線引炉という)、11は光ファイバガラス母材(以下、単にガラス母材という)、12は線引き直後の光ファイバ、13は樹脂塗布後の光ファイバ、20は光ファイバ冷却装置(以下、単に冷却装置という)、40は樹脂塗布装置、50は樹脂硬化装置、60はガイドローラ、70は巻き取り装置を示す。
【0019】
光ファイバ12は、ガラス母材11を線引炉10で加熱溶融し、線引炉10の下方から線引きされている。ガラス母材11から線引きされた光ファイバ12は、冷却装置20で強制冷却された後、樹脂塗布装置40で紫外線硬化樹脂が塗布され、樹脂硬化装置50でこの樹脂を硬化させる。続いて、樹脂塗布後の光ファイバ13は、ガイドローラ60を経て巻き取り装置70により巻き取られる。
【0020】
本発明の主たる目的は、冷却装置下部側からの冷却ガスの漏れを極力防止できるようにすることにある。このための構成として、
図1に示すように、冷却装置20は、冷却ガスの通路が形成された冷却管部21と、冷却管部21の下部に設けられた加圧室23と、加圧室23の下部に設けられた直管部22とを有する。
【0021】
そして、冷却管部21の下部ゲージ圧(つまり、大気圧との差圧)をA、冷却管部21の分割ユニット数をN、冷却管部21の各分割ユニットの長さをLi(i=1〜N)、冷却管部21の各分割ユニットの半径をRi(i=1〜N)、冷却管部21の各分割ユニットに流す冷却ガスG3のガス流量をQi(i=1〜N)、冷却ガスG3の粘性係数をμ1、光ファイバ12の半径をr1、光ファイバ12の線引速度(線速)をV1、直管部22の圧力損失をB、直管部22の分割ユニット数をn、直管部22の各分割ユニットの長さをLLj(j=1〜n)、直管部22の各分割ユニットの半径をRRj(j=1〜n)、直管部22に流す加圧ガスG4のガス流量をQ
gas、加圧ガスG4の粘性係数をμ2、加圧室23の圧力損失をC、加圧室23の内圧相関定数をD1〜D5、加圧室23の形状補正係数をk(1≦k≦2)とした場合、以下の式1を満足するように構成される。
【0026】
以下、冷却管部21、直管部22、及び加圧室23の具体的な構成例について
図2に基づいて説明する。
図2の例では、冷却管部21の分割ユニット数Nを“N=4”、直管部22の分割ユニット数nを“n=2”とした場合について示す。
【0027】
すなわち、冷却管部21は、4つ(N=4)のユニットに分割され、長さL
1及び半径R
1の第1分割ユニット211と、長さL
2及び半径R
2の第2分割ユニット212と、長さL
3及び半径R
3の第3分割ユニット213と、長さL
4及び半径R
4の第4分割ユニット214とを有する。また、冷却管部21は、冷却ガスG3を流入させる2つの冷却ガス流入口218(N=2,3)を有している。
【0028】
上記において、冷却管部21の各分割ユニットの長さL
1〜L
4は、
図2に示すように、半径が変化する領域間の距離、もしくは、冷却ガス流入口218間の距離、もしくは、半径が変化する領域と冷却ガス流入口218との間の距離のうち、最小となる距離で定義される。また、本例の場合、冷却ガスG3は、2つの冷却ガス流入口218から冷却管部21内に流入されるが、冷却ガス流入口218の個数は、1以上の任意の個数とすることができる。
【0029】
ここで、下部ゲージ圧A(Pa)とは、冷却ガスG3が1つ以上の冷却ガス流入口218から流れると仮定したときの冷却管部21の下部側圧力であり、冷却ガスG3の流れる方向は上向き、下向きのいずれであってもよい。なお、冷却ガスG3のガス流量Qi(i=1〜N)は、上向きが正、下向きが負とする。
【0030】
冷却管部21の各パラメータについて、冷却管部21の各分割ユニット211〜214の半径Ri(i=1〜N)は、光ファイバ12への接触や冷却性の観点から、1.5mm以上5mm以下であることが望ましい。なお、半径Riは、各分割ユニット211〜214で同じでもよく、異なっていてもよい。
【0031】
また、冷却管部21を構成する各分割ユニット211〜214の長さをLi(i=1〜N)とした場合、各分割ユニット211〜214の長さLiの合計は、設備的な制約の観点から、15m以下であることが望ましい。この長さLiについても、各分割ユニット211〜214で同じでもよく、異なっていてもよい。
【0032】
また、冷却管部21に流す冷却ガスG3は、例えば、ヘリウムガスであり、粘性係数μ1は、ガス温度が230K以上400K以下のときの粘性係数であり、ヘリウムガスの場合、μ1=1.9×10
−5〜2.4×10
−5(Pa・s)となる。また、各分割ユニット211〜214に流すヘリウムガスのガス流量Qi(i=1〜N)は、−3.33×10
−4m
3/s(=−20L/min)以上3.33×10
−4m
3/s(=20L/min)以下であることが望ましい。なお、上記したように、上向きを正、下向きを負としている。
【0033】
次に、直管部22は、2つ(n=2)のユニットに分割されており、長さLL
1及び半径RR
1の第1分割ユニット221と、長さLL
2及び半径RR
2の第2分割ユニット222とを有する。直管部22の各分割ユニットの長さLL
1〜LL
2は、
図2に示すように、半径が変化する領域間の距離として定義される。
【0034】
ここで、圧力損失B(Pa)とは、加圧室23から流入する加圧ガスG4が全て下方に流れると仮定したときの直管部22における圧力損失である。直管部22に流す加圧ガスG4は、ヘリウムガス以外のガスであればよいが、好ましくは、例えば、空気、窒素、アルゴン、二酸化炭素などを含む、比較的安価なガスを用いることができる。加圧ガスG4の粘性係数μ2は、ガス温度が230K以上400K以下のときの粘性係数であり、空気の場合、μ2=1.7×10
−5〜2.3×10
−5(Pa・s)となる。
【0035】
また、加圧ガスG4のガス流量Q
gasは、0.0015m
3/s(=90L/min)以下であることが望ましい。これにより、多くの加圧ガスG4を流すことなく、冷却ガスG3の漏れを防止することができる。なお、これより多く圧力ガスG4を流すと、光ファイバの線振れなどが発生する可能性もある。また、直管部22の各分割ユニット221,222の半径RRj(j=1〜n)は、0.5mm以上4.0mm以下であることが望ましい。なお、半径RRjは、各分割ユニット221,222で同じでもよく、異なっていてもよい。これにより、光ファイバ12との接触を防止し、また、加圧ガスG4の流量を低減することが可能となる。また、直管部22の各分割ユニット221,222の長さLLj(j=1〜n)の合計は、0.001m以上0.5m以下であることが望ましい。この長さLLjについても、各分割ユニット221,222で同じでもよく、異なっていてもよい。これにより、直管部22を適切な長さとし、収納性を良好にすることができる。
【0036】
次に、加圧室23について説明する。加圧室23には、加圧ガスG4を流入させるための加圧ガス流入口231が設けられている。ここで、加圧室23の圧力損失C(Pa)は流体解析ソフトのシミュレーション結果から求めることが可能であるが、加圧ガスG4のガス流量Q
gasと、光ファイバ12の線速V1とに依存すると仮定し、ガス流量Q
gas、線速V1の関数として計算した連立方程式を解き、係数を求めている。また、圧力損失Cは、加圧室23の形状に応じて差異が生じることが分かっている。このため、加圧室23の形状に応じて1以上2以下の値をとる形状補正係数kを付与することにより、式1を補正できるようにしている。なお、数式3の内圧相関定数D1〜D5は、一定値であり、例えば、D1≒−73.30(Pa)、D2≒−17.61(kg/m
4s)、D3≒4.17(kg/m
7)、D4≒3.16(kg/m
2s)、D5≒1.64(kg/m
5)、と例示できるが、上述したように、これらの値は流体解析ソフトのシミュレーション結果に関して条件(ガス流量Q
gas、線速V1)を変更して5点計算を行い、連立方程式を解くことから求めている。
【0037】
図3は、加圧室23での圧力損失Cの発生メカニズムを説明するための図である。光ファイバ12は高速で下向きに走行しているため、光ファイバ12の牽引効果により加圧ガスG4が急加速し、圧力損失Cが発生する。
図3において、加圧ガスG4は、加圧ガス流入口231から加圧室23へ流入するが、このとき、光ファイバ12は、線速V1で牽引されているため、流入した加圧ガスG4が急加速され、加圧室23内で圧力損失Cが発生する。
【0038】
なお、圧力損失Cには、前述したように、形状補正係数kが乗じられ、補正される。この形状補正係数kは、加圧室23の形状に応じて1以上2以下の値をとり、例えば、比較的大きめの加圧室では形状補正係数kは“1”となり、比較的小さめの加圧室では形状補正係数kは“2”となる。
【0039】
このように、冷却管部21の下部ゲージ圧Aが、直管部22の圧力損失Bと形状補正係数kが乗じられた加圧室23の圧力損失kCとの合計以下となるように、式1の各パラメータが決定される。すなわち、直管部22の圧力損失B及び加圧室23の圧力損失kCを大きくして、冷却管部21の下側からの冷却ガスの漏れを極力防止するようにしている。つまり、流体である冷却ガスは、流体抵抗が大きく、圧力損失が大きい直管部22へは流れようとせず、圧力損失の小さい冷却管部21への上昇流となって流れるため、冷却管部21の下側からの冷却ガスの漏れを低減できる。
【0040】
図4は、本発明の光ファイバ冷却装置による冷却ガス速度分布の一例を示す図であり、逆流限界流量(冷却ガス及び加圧ガスが上向きに流れない流量)を説明する図である。
図5は、
図4の結果から、冷却ガスの流量削減効果の一例をまとめた図(表)である。本例の場合、冷却管部21の分割ユニット数Nを“N=1”(1段構成)、直管部22の分割ユニット数nを“n=1”(1段構成)とする。そして、直管部22の長さLL
1を150mm、直管部22の半径RR
1を1.5mmとした。また、冷却管部21の長さL
1を5.0m、半径R
1を1.5mmまたは3.0mmとした。また、光ファイバ12の線速V1を1000m/分または1500m/分とした。
【0041】
なお、冷却ガスG3はヘリウムガス、加圧ガスG4は空気とし、光ファイバ12の半径r1=62.5μm、粘性係数μ1=2.0×10
-5(Pa・s),μ2=1.81×10
-5(Pa・s)としている。また、加圧ガスG4のガス流量Q
gasは、
図5の「下部直管空気流量」に相当するものであり、各々の条件で、逆流が起きない限界値として求めた。そして、
図4のグラフは、これらの各パラメータに基づいて、前述の式1の条件、すなわち、A−B−kC=0、を満たすように、冷却管部21の半径方向の距離(m)と冷却ガスG3の流速(m/s)との関係を計算したものである。なお、冷却ガスG3の流速(m/s)は、ガス流量Gi(m
3/s)を、冷却管部21の断面積(m
2)で除することで求めることができる。
【0042】
図4(A)は線速V1=1000m/分で且つ冷却管部21の半径Ri=1.5mmの例を示し、
図4(B)は線速V1=1000m/分で且つ冷却管部21の半径Ri=3.0mmの例を示し、
図4(C)は線速V1=1500m/分で且つ冷却管部21の半径Ri=1.5mmの例を示し、
図4(D)は線速V1=1500m/分で且つ冷却管部21の半径Ri=3.0mmの例を示す。図中、横軸は冷却管部21の半径方向の距離(m)、縦軸は流速(m/s)を示す。つまり、
図4のグラフは、冷却管部21の下端半径方向における下向きの流速分布を示すものである。
【0043】
図4(A)〜
図4(D)において、冷却管部21の中心部(半径0の近傍)は光ファイバ12が走行しているため、光ファイバ12の外周付近ではヘリウムガスの流速が速く、光ファイバ12から離れる方向に向けて徐々にヘリウムガスの流速が遅くなっていることが分かる。ここで、流速が0を下回ると、冷却管内にヘリウムガスが加圧ガスを巻き込んで逆流してしまう(上向きに流れる)ため、これら
図4(A)〜
図4(D)は、逆流しない(流速が0を下回らない)限界の流速分布を示すものである。
【0044】
ここで、
図4(A)〜
図4(D)における半径方向の積分値が、
図5における「加圧室・直管有りの時のヘリウム漏れ量」になる。また、
図5における「直管を流れる流量」は、「加圧室・直管有りの時のヘリウム漏れ量」と「下部直管空気流量」とを合計したものである。また、「加圧室・直管無しの時のヘリウム漏れ量」は、従来例のように加圧室・直管無しの構成におけるヘリウム漏れ量であり、前述の式1で、下部ゲージ圧Aのみを考慮し、下部ゲージ圧A=0を満たすように、冷却管部21の半径方向の距離(m)と冷却ガスG3の流速(m/s)との関係を計算し、上記と同様に、その半径方向の積分値から求めることができる。
この「加圧室・直管無しの時のヘリウム漏れ量」と、「加圧室・直管有りの時のヘリウム漏れ量」との差分が、「削減量」であり、本実施形態の光ファイバ冷却装置の構成とすることにより、削減できるヘリウム流量となる。
【0045】
次に、冷却管部21の半径Ri(i=1〜N)を1.5mm以上5mm以下、長さLi(i=1〜N)の合計を15m以下、冷却管部21に流す冷却ガスG3をヘリウムガスとし、ヘリウムガスのガス流量Qi(i=1〜N)を、逆向きに流れることも考え、−3.33×10
−4m
3/s(=−20L/min)以上3.33×10
−4m
3/s(=20L/min)以下としたときの、下部ゲージ圧A(Pa)の最大値及び最小値を求める。
【0046】
上記の各パラメータ及び前述の式1に基づいて、下部ゲージ圧Aの最大値及び最小値を求めると、この条件での最大圧力が39828(Pa)、最小圧力が255(Pa)となる。そして、下部ゲージ圧Aが最大圧力(=39828Pa)となる際に、式1を満たすように直管部22の各分割ユニットの長さLLj(j=1〜n)の合計ΣLLjと、直管部22へ流す加圧ガスのガス流量Q
gasとの関係を求めた結果を、
図6(A)に示す。なお、
図6(A)は、直管部22の内径をφ1mmとしたときの結果である。
【0047】
図6(A)において、横軸は直管部22の合計長さΣLLj(m)、縦軸は直管部22に流す加圧ガスのガス流量Q
gas(L/min)を示す。上記で説明したように、直管部22の合計長さΣLLjは、収納性の観点から、0.001m以上0.5m以下とするのが望ましい。
図6(A)より、ΣLLjが長いほど、ガス流量Q
gasを少なくすることができることが分かり、直管長さ0.5m程度でガス流量はほぼ一定になる。
【0048】
なお、
図6(A)は、下部ゲージ圧Aが最大圧力になる場合の計算結果であるが、実際にはそこまで下部ゲージ圧Aは高くならない場合もある。
図4と同様に、冷却管部21の分割ユニット数Nを“N=1”(1段構成)、直管部22の分割ユニット数nを“n=1”(1段構成)とし、冷却管部21の長さL
1を5.0m、半径R
1を1.5mm、光ファイバの線速V1を1500m/分として、下部ゲージ圧Aを667(Pa)とし、式(1)を満たすように直管部22の各分割ユニットの長さLLj(j=1〜n)の合計ΣLLjと、直管部22へ流す加圧ガスのガス流量Q
gasとの関係を求めた結果を、
図6(B)に示す。なお、
図6(B)は、直管部22の内径をφ5mmとしたときの結果である。
図6(B)より、
図6(A)と同様に、ΣLLjが長いほどガス流量Q
gasを少なくすることはできるが、直管部22の内径が大きくなると、長さの影響は小さくなることが分かる。