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特許5817812歩行者衝突検知システム及び歩行者衝突通報システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5817812
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】歩行者衝突検知システム及び歩行者衝突通報システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/00 20060101AFI20151029BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20151029BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20151029BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   B60R21/00 630F
   B60R21/00 630G
   B60R21/00 610Z
   G08G1/13
   G08B25/10 D
   G08B21/00 U
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-235448(P2013-235448)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2014-114008(P2014-114008A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2014年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-250424(P2012-250424)
(32)【優先日】2012年11月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康聡
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 章仁
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−069232(JP,A)
【文献】 特開2002−245595(JP,A)
【文献】 特開2006−201998(JP,A)
【文献】 特開2005−041334(JP,A)
【文献】 特開2006−199088(JP,A)
【文献】 特開2008−152406(JP,A)
【文献】 特開2004−165845(JP,A)
【文献】 特開2011−197967(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0254960(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/125454(WO,A1)
【文献】 特開2012−141270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00
G08B 19/00 − 21/24
G08B 25/10
G08G 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と所持者との衝突を検知する衝撃検知部(11)、前記衝撃検知部(11)が衝突を検知した場合に当該検知結果を所定時間保持する衝撃記録部(12)、及び所定範囲内での無線通信を可能にする近距離通信部(15)を有する携帯通信機(1)と、
車両と歩行者又は物との衝突を検知する衝突検知部(21)、及び所定範囲内での無線通信を可能にする無線通信部(22)を有する前記車両に搭載される歩行者衝突検知装置(2)と、を備え、
前記衝撃記録部は、前記所定時間後に前記検知結果を削除し、
前記無線通信部(22)及び前記近距離通信部(15)は、前記衝突検知部(21)が衝突を検知し且つ前記衝撃記録部(12)に前記検知結果が保持されている場合にペアリングによる相互認証を実行し、
前記歩行者衝突検知装置(2)は、前記無線通信部(22)と前記近距離通信部(15)との間でペアリングによる相互認証がなされた場合に前記車両と前記歩行者が衝突したと判定する衝突判定部(23)を備え
前記無線通信部(22)は、前記衝突検知部(21)が衝突を検知した場合、前記所定範囲内にペアリング要求信号を発信し、
前記近距離通信部(15)は、前記ペアリング要求信号を受信し且つ前記衝撃記録部(12)に前記検知結果が保持されている場合、前記無線通信部(22)に対しペアリング応答信号を送信する歩行者衝突検知システム。
【請求項2】
前記衝撃検知部(11)は、Gセンサ(111)と、前記Gセンサ(111)の計測値が所定閾値を超えた場合に衝突と判定する携帯側衝突判定部(112)とを備える請求項1に記載の歩行者衝突検知システム。
【請求項3】
前記無線通信部(22)は、ペアリングによる相互認証以後に、車両の固有情報を前記近距離通信部(15)に送信する請求項1又は2に記載の歩行者衝突検知システム。
【請求項4】
前記近距離通信部(15)は、ペアリングによる相互認証以後に、固有情報を前記無線通信部(22)に送信する請求項1〜の何れか一項に記載の歩行者衝突検知システム。
【請求項5】
前記歩行者衝突検知装置(2)は、
前記無線通信部(22)が取得した前記携帯通信機(1)の固有情報を記録するイベントデータレコーダ(24)と、
前記イベントデータレコーダ(24)に前記携帯通信機(1)の固有情報が記録されると、衝突があったことを前記携帯通信機(1)の固有情報と共に公的機関に通報する通報部(25)と、
を備える請求項に記載の歩行者衝突検知システム。
【請求項6】
前記携帯通信機(1)は、前記無線通信部(22)と前記近距離通信部(15)との間でペアリングよる相互認証がなされた場合、衝突があったことを公的機関に通報する音声・データ通信部(17)を有する請求項1〜の何れか一項に記載の歩行者衝突検知システム。
【請求項7】
前記携帯通信機(1)は、衝突があったことを前記無線通信部(22)から取得した前記車両の固有情報と共に公的機関に通報する音声・データ通信部(17)を有する請求項に記載の歩行者衝突検知システム。
【請求項8】
前記通報部(25)は、さらに、衝突に関する舵角情報、衝突に関する車速情報、衝突に関するブレーキ情報、及び衝突に関する映像のうち少なくとも1つを前記公的機関に通報する請求項に記載の歩行者衝突検知システム。
【請求項9】
前記歩行者衝突検知装置(2)は、自身が搭載された車両の位置情報を取得する位置情報取得部(4)を備え、
前記携帯通信機(1)は、自身の位置情報を取得する携帯側位置情報取得部(16)を備え、
前記携帯側位置情報取得部(16)が取得した位置情報は、前記携帯通信機(1)の固有情報の1つであり、
前記イベントデータレコーダ(24)は、ペアリングにより前記位置情報取得部(4)
及び前記携帯側位置情報取得部(16)から取得した位置情報に基づいて決定された事故発生地点を記録し、
前記通報部(25)は、さらに前記事故発生地点を通報する請求項5又は8に記載の歩行者衝突検知システム。
【請求項10】
前記歩行者衝突検知装置(2)は、前記衝突判定部(23)が歩行者との衝突と判定した後から所定時間内に、前記位置情報取得部(4)の取得する位置情報が示す車両位置が前記イベントデータレコーダ(24)に記録された前記事故発生地点から所定距離以上離れた場合、轢き逃げの可能性があると判定する轢き逃げ判定部(26)を備える請求項に記載の歩行者衝突検知システム。
【請求項11】
前記歩行者衝突検知装置(2)は、前記衝突判定部(23)が歩行者との衝突と判定した後から所定時間内に、前記無線通信部(22)と前記近距離通信部(15)とが通信できない状態となった場合、轢き逃げの可能性があると判定する轢き逃げ判定部(26)を備える請求項に記載の歩行者衝突検知システム。
【請求項12】
車両と所持者との衝突を検知する衝撃検知部(11)、前記衝撃検知部(11)が衝突を検知した場合に当該検知結果を所定時間保持する衝撃記録部(12)、及び所定範囲内での無線通信を可能にする近距離通信部(15)を有する携帯通信機(1)と、
車両と歩行者又は物との衝突を検知する衝突検知部(21)、及び所定範囲内での無線通信を可能にする無線通信部(22)を有する前記車両に搭載される歩行者衝突検知装置(2)と、
を備え、
前記衝撃記録部は、前記所定時間後に前記検知結果を削除し、
前記無線通信部(22)及び前記近距離通信部(15)は、前記衝突検知部(21)が衝突を検知し且つ前記衝撃記録部(12)に前記検知結果が保持されている場合にペアリングを実行し、
前記歩行者衝突検知装置(2)は、
前記無線通信部(22)と前記近距離通信部(15)との間でペアリングによる相互認証がなされた場合に前記車両と前記歩行者が衝突したと判定する衝突判定部(23)と、
前記衝突判定部(23)が前記歩行者と衝突したと判定した場合に衝突したことを公的機関に通報する通報部(25)と、
を備え、
前記無線通信部(22)は、前記衝突検知部(21)が衝突を検知した場合、前記所定範囲内にペアリング要求信号を発信し、
前記近距離通信部(15)は、前記ペアリング要求信号を受信し且つ前記衝撃記録部(12)に前記検知結果が保持されている場合、前記無線通信部(22)に対しペアリング応答信号を送信する歩行者衝突通報システム。
【請求項13】
前記通報部(25)は、さらに、衝突に関する車両の位置情報、衝突に関する舵角情報、衝突に関する車速情報、衝突に関するブレーキ情報、及び衝突に関する映像のうち少なくとも1つを前記公的機関に通報する請求項12に記載の歩行者衝突通報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両と歩行者との衝突を検知する歩行者衝突検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、車両と歩行者の衝突を検知し、車両のボンネットフードを跳ね上げるアクティブフードや歩行者保護用エアバッグ等の歩行者保護装置を起動させる歩行者衝突検知システムが開発されている。ここでいう、車両と歩行者との衝突検知手段は、Gセンサやチャンバ式圧力センサ等による。
【0003】
また、例えば特開2002−032886号公報に記載されているように、歩行者がなんらかの通行障害に遭遇した場合、歩行者が保有する携帯電話がその衝撃Gを検知し、当該携帯電話が個人情報や障害状況を公的機関に通報する通報システムも開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−032886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1による「携帯通行障害通報端末」においては、携帯電話の検知する衝撃Gが車両との衝突によるものか、それとも単に携帯電話を落としたことによるものかを区別して判定するのは困難である。また、かかる安易な判定によって、誤った通報を行い、公的機関(医療機関や車両管理センター等)の救急援護を要請することは厳に抑制されなければならない。
【0006】
その他、車両と歩行者が衝突した際の緊急通報システムとして公知のものには、車両と衝突した障害物が歩行者なのか物なのかの区別は車両運転者の判断によるものとし、衝突検出手段により衝突が検出された際に緊急通報用スイッチの作動が許可されるようにして、通報するか否かを車両運転者の判断に委ねるようにしているものや、車体衝撃センサの出力に基づいて、或いは衝突によって車両のポップアップフードが作動したときに歩行者との衝突事故の可能性を緊急通報センターに送信する。しかし同時に、画像センサによる車両前方の画像をも緊急通報センターに送信するようにしてかかる衝突事故が人的事故か物的事故かを緊急通報センター側に判断させるようにしているものなどが知られている。
【0007】
以上、述べたように、車両と衝突した障害物が歩行者なのか物なのかを区別し判定するのが従来技術では困難であった。
【0008】
また、車両との衝突が歩行者である場合に限らず、別の車両との衝突事象において事故の当事者である相手車両を自動的に判別し特定することが求められる場合がある。例えば、車両が停止状態(例えば駐車又は停車状態)にあり、別の車両によって衝突されるような事故が起きた場合である。
【0009】
このとき、停止車両の運転手が不在であれば当て逃げされるおそれがあるが、停止車両側で「車両に衝突された」ことを検知し相手車両を特定することができれば、被害を受けた車両のユーザーが泣き寝入りすることはなくなる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、車両と歩行者との衝突を精度良く検知することができる歩行者衝突検知システム及び歩行者衝突通報システムを提供することを目的とする。また、本発明は、一方の車両が停止状態で車両のオーナーが不在の場合でも車両同士の衝突を検知し、事故の当事者である相手車両を自動的に特定可能な車両衝突検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、歩行者衝突検知システムであって、車両と所持者との衝突を検知する衝撃検知部(11)、前記衝撃検知部(11)が衝突を検知した場合に当該検知結果を所定時間保持する衝撃記録部(12)、及び所定範囲内での無線通信を可能にする近距離通信部(15)を有する携帯通信機(1)と、車両と歩行者又は物との衝突を検知する衝突検知部(21)、及び所定範囲内での無線通信を可能にする無線通信部(22)を有する前記車両に搭載される歩行者衝突検知装置(2)と、を備え、前記衝撃記録部は、前記所定時間後に前記検知結果を削除し、前記無線通信部(22)及び前記近距離通信部(15)は、前記衝突検知部(21)が衝突を検知し且つ前記衝撃記録部(12)に前記検知結果が保持されている場合にペアリングによる相互認証を実行し、前記歩行者衝突検知装置(2)は、前記無線通信部(22)と前記近距離通信部(15)との間でペアリングによる相互認証がなされた場合に前記車両と前記歩行者が衝突したと判定する衝突判定部(23)を備え、前記無線通信部(22)は、前記衝突検知部(21)が衝突を検知した場合、前記所定範囲内にペアリング要求信号を発信し、前記近距離通信部(15)は、前記ペアリング要求信号を受信し且つ前記衝撃記録部(12)に前記検知結果が保持されている場合、前記無線通信部(22)に対しペアリング応答信号を送信する。
【0012】
また、本発明の歩行者衝突通報システムは、上記構成において、前記衝突判定部(23)が前記歩行者と衝突したと判定した場合に衝突したことを公的機関に通報する通報部(25)を備える。
【0013】
これらの構成によれば、携帯通信機と車両側とでペアリングによる相互認証を行えた場合に衝突が歩行者との衝突であると判定するため、歩行者との衝突を精度良く検知することができる。そして、本構成によれば、衝突時の誤報を抑制することができる。
【0014】
また、参考形態としては、衝突を検知する第1衝突検知部(911)、及び所定範囲内での無線通信を可能にする第1無線通信部(912)を有する、第1車両(C1)に搭載される第1衝突検知装置(91)と、衝突を検知する第2衝突検知部(921)、及び所定範囲内での無線通信を可能にする第2無線通信部(922)を有する、第2車両(C2)に搭載される第2衝突検知装置(92)と、を備え、前記第1衝突検知装置(3)は、前記第1衝突検知部が衝突を検知した場合に当該検知結果を所定時間保持して前記検知結果を所定時間後に削除し、前記第2衝突検知装置(30)は、前記第2衝突検知部が衝突を検知した場合に当該検知結果を所定時間保持して前記検知結果を所定時間後に削除し、前記第1無線通信部(912)及び前記第2無線通信部(922)は、一方が発信したペアリング要求信号を受信し且つ前記ペアリング要求信号を受信した前記第1衝突検知装置又は前記第2衝突検知装置が前記検知結果を保持していた場合にペアリングによる相互認証を実行し、前記第1衝突検知装置(91)及び前記第2衝突検知装置(92)は、それぞれ、前記第1無線通信部(912)と前記第2無線通信部(922)との間でペアリングによる相互認証がなされた場合に車両同士が衝突したと判定する衝突判定部(913、923)を備える。
【0015】
この構成によれば、車両同士でペアリングによる相互認証を行えた場合に衝突が車両との衝突であると判定するため、車両同士の衝突を精度良く検知することができる。また、本構成によれば、一方の車両が停止状態で運転手不在であっても車両同士の衝突を検知でき、ペアリングによる情報交換ができるため、衝突相手の特定や自動通報等の様々な対応が可能となる。なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第一実施形態の歩行者衝突検知システムの構成を示す構成図である。
図2】第一実施形態の近距離通信を説明するための説明図である。
図3】第一実施形態の歩行者衝突検知システムにおける制御フローを示すフローチャートである。
図4】第二実施形態の歩行者衝突検知システムにおける制御フローを示すフローチャートである。
図5】第三実施形態の歩行者衝突検知装置の構成を示す構成図である。
図6】第四実施形態の車両衝突検知システムの構成を示す構成図である。
図7】第四実施形態の衝突検知を説明するための説明図である。
図8】第四実施形態の車両衝突検知システムにおける制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。また、説明に用いる各図は概念図である。
【0018】
<第一実施形態>
第一実施形態の歩行者衝突検知システム(歩行者衝突通報システム)は、図1に示すように、携帯通信機1と、歩行者衝突検知装置2によって構成されるものとする。携帯通信機1は、歩行者が持ち運び可能で外部と無線通信可能な機器であって、衝撃検知部11と、衝撃記録部12と、ペアリング認証部13と、事故情報記録部14と、近距離通信IC(「近距離通信部」に相当する)15と、GPS装置16と、音声・データ通信部17と、を備えている。
【0019】
携帯通信機1は、少なくとも近距離通信IC15を備えた携帯電話やスマートフォンやタブレット端末等の携帯端末である。近距離通信IC15は、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)等を利用した、所定範囲内での無線通信を可能とする通信ICである。音声・データ通信部17は、外部との遠距離通信(電話及びデータ通信の少なくとも一方)を可能にする通信ICである。
【0020】
衝撃検知部11は、Gセンサ111と、携帯側衝突判定部112と、を備えている。Gセンサ111は、携帯通信機1の上下方向(天地方向)を検知するために携帯通信機1に元々設けられている加速度センサである。携帯側衝突判定部112は、ICであって、Gセンサ111の検知結果を受信し、Gセンサ111の計測値が予め設定された閾値を超えた場合に所持者(歩行者)が車両と衝突したと判定する。携帯側衝突判定部112は、衝突有りと判定した場合、衝撃記録部12に当該情報を送信する。
【0021】
衝撃記録部12は、情報を所定時間保持可能な装置であって、例えばRAM等のメモリやラッチ回路等である。本実施形態において、衝撃記録部12は、携帯通信機1に元々搭載されている不揮発性のメモリである。衝撃記録部12は、携帯側衝突判定部112から衝突検知情報を受信すると、予め設定された時間(所定時間)、その情報を記録する。本実施形態では、携帯側衝突判定部112が、衝撃記録部12に検知フラグを立て、所定時間後に当該検知フラグを削除する。衝撃記録部12への記録情報は、衝撃Gの値など衝撃を受けた事象であっても良い。
【0022】
ペアリング認証部13は、外部の通信機器とペアリング(通信による相互認証)するための装置(IC)である。ペアリング認証部13は、近距離通信IC15がペアリング要求信号を受信した場合であって且つ衝撃記録部12に検知フラグが立っている場合に、近距離通信IC15を介してペアリング応答信号をペアリング要求信号の発信先に送信する。つまり、ペアリング認証部13は、ペアリング要求信号を受信すると衝撃記録部12に検知フラグの有無を確認し、検知フラグがある場合に通信ICを介してペアリング応答信号を送信する。なお、ペアリング応答信号は、ペアリング要求信号の発信先を認証したことを当該発信先に伝達する信号であれば良い。これにより、相互認証が完了し、ペアリングによって認証が成立した対象との情報交換が可能となる。ペアリング認証部13は、通信ICを介して、ペアリング応答信号と共にあるいはペアリング応答信号の後に、携帯通信機1の固有情報(電話番号や所有者氏名等)を送信する。
【0023】
事故情報記録部14は、不揮発性のメモリである。事故情報記録部14には、衝撃記録部12が含まれていても良い。事故情報記録部14は、ペアリングにより車両との間で交換された固有情報(車両番号や運転者情報等)を記録する。上記のような携帯通信機1の機能(衝突判定、情報の記録、ペアリング等)は、好ましくはスマートフォン上で稼動するアプリケーションソフトにより実行される。
【0024】
歩行者衝突検知装置2は、車両に搭載されており、車両と歩行者との衝突を検知する装置である。歩行者衝突検知装置2は、主に、ボンネットフードを跳ね上げるアクティブフード等の歩行者保護装置(図示せず)の展開制御と、自動通報制御に用いられる。なお、本実施形態では、電子制御ユニットの1つであるエアバッグECU3が、エアバッグ(図示せず)の展開制御と共に、歩行者衝突検知、及び歩行者保護装置の展開制御も行っている。
【0025】
具体的に、歩行者衝突検知装置2は、衝突検知センサ(「衝突検知部」に相当する)21と、無線通信部22と、衝突判定部23と、イベントデータレコーダ24と、通報部25と、を備えている。衝突検知センサ21は、例えばGセンサや圧力センサであって、計測値に基づいて車両と歩行者の衝突を検知するセンサである。本実施形態において、衝突検知センサ21は、車両の前部に設けられたチャンバ(図示せず)の変形による圧力変化から歩行者との衝突を検知するチャンバ式圧力センサである。
【0026】
衝突検知センサ21は、計測値が閾値を超えた場合に、車両と歩行者又は物と衝突したことを検知し、エアバッグECU3に検知結果を送信する。エアバッグECU3は、当該検知結果の受信に応じて歩行者保護装置を展開させる。
【0027】
無線通信部22は、所定範囲内で外部と無線通信することができる近距離通信機器や通信ICである。本実施形態において、無線通信部22は、通信ICであって、図2に示すように、エアバッグECU3に搭載されている。なお、無線通信部22は、エアバッグECU3以外に配置されていても良いが、反応速度の観点からエアバッグECU3に搭載されることが好ましい。
【0028】
エアバッグECU3は、衝突検知センサ21から検知結果を受信すると、無線通信部22にペアリング要求信号を発信させる。つまり、無線通信部22は、衝突検知センサ21が衝突を検知すると、所定範囲内にペアリング要求信号を発信する。無線通信部22がペアリング要求信号に対するペアリング応答信号を受信すると、衝突判定部23が外部(携帯通信機1)とペアリングによる認証が成立したことを認識する。
【0029】
衝突判定部23は、エアバッグECU3内に配置されたICであって、ペアリングによる認証が成立したことを認識した場合、衝突検知センサ21が検知した衝突の対象が歩行者であると判定する。衝突判定部23は、衝突対象が歩行者であると判定した場合、事故情報の収集指示を送信すると共に、通報部25に通報指示を送信する。
【0030】
イベントデータレコーダ24は、エアバッグECU3内に配置された不揮発性メモリであって、ペアリングにより取得した携帯通信機1の固有情報(電話番号や所有者氏名等)を記録する。また、イベントデータレコーダ24には、衝突検知センサ21が検知した衝突の前後に関する事故情報が記録される。事故情報は、ナビゲーションECU(「位置情報取得部」に相当する)4からの自車の位置情報、電動パワーステアリングECU5からの舵角情報、エンジンECU6からの車速情報、ブレーキECU7からのブレーキ情報、及びドライブレコーダ8からの衝突前後の映像である。なお、イベントデータレコーダ24は、上記各種データのうちの少なくとも1つを記録するように設定されていれば良い。事故情報は、衝突前後に関するものであり、少なくとも衝突直前の情報が含まれていれば良い。
【0031】
通報部25は、エアバッグECU3とは別に設けられた、無線による遠距離通信(例えば電話やデータ通信)が可能な無線機(通信モジュール)である。通報部25は、衝突判定部23から通報指示を受信すると、公的機関(医療機関や車両管理センター)に歩行者との衝突があった旨を自動通報する。通報は、データのみでも予め設定された音声によるものであっても良い。また、通報部25は、衝突の通報と共に、イベントデータレコーダ24に記録された携帯通信機1や車両の固有情報及び事故情報を公的機関に送信する。なお、医療機関は、例えば病院や消防(119番)である。また、車両管理センターとは、例えば各種自動車メーカがサービスを提供するための施設である。また、車内の通信はCAN通信で行われる。
【0032】
第一実施形態の歩行者衝突検知システムの制御の流れについて説明する。図3に示すように、歩行者衝突検知装置2を搭載した車両と携帯通信機1を持つ歩行者との衝突が発生した場合、携帯通信機1のGセンサ111の計測値が閾値を超えたことを以て携帯通信機1側で衝突が検知され(S101)、車両の衝突検知センサ21の計測値が閾値を超えたことを以て車両側でも衝突が検知される(S201)。携帯通信機1では、衝突の検知により衝撃記録部12に検知フラグが立てられる(検知フラグON)(S102)。
【0033】
続いて、車両側において無線通信部22が所定範囲内でペアリング要求信号を発信する(S202)。ペアリング要求信号は、衝突検知直後の所定時間(期間)にペアリング応答信号を受信するまで連続的に発信されても良く、衝突検知後に待機時間を経てから発信されても良い。なお、本実施形態では前者を採用している。そして、携帯通信機1が近距離通信によりペアリング要求信号を受信すると(S103:Yes)、ペアリング認証部13が衝撃記録部12に検知フラグが立っているか否かを判定する(S104)。
【0034】
検知フラグが立っている場合(S104:Yes)、ペアリング認証部13がペアリング応答信号と共に携帯通信機1の固有情報(電話番号や所有者氏名等)を車両側(無線通信部22)に送信する(S105)。一方、検知フラグが立っていない場合(S104:No)、携帯通信機1はペアリングを実行しない。
【0035】
無線通信部22が所定時間内にペアリング応答信号を受信した場合(S203:Yes)、衝突判定部23は当該衝突が「歩行者との衝突である」と判定する(S204)。無線通信部22が所定時間内にペアリング応答信号を受信しなかった場合(S203:No)、終了する。
【0036】
衝突判定部23が歩行者との衝突と判定した場合、衝突判定部23(エアバッグECU3)により事故情報が収集されると共に当該事故情報がイベントデータレコーダ24に記録される(S205)。事故情報は、上述のとおり、事故発生現場の位置、事故発生前後の映像、バンパの衝突位置と衝突時の加速度、車速、制動信号、操舵角信号、及び歩行者の携帯通信機1の電話番号等である。そして、通報部25が事故情報と共に事故を公的機関に通報する(S206)。
【0037】
また、無線通信部22がペアリング要求信号と共に車両の固有情報(車両番号や運転者情報等)を送信する場合あるいは相互認証後に車両の固有情報を送信する場合、当該固有情報は携帯通信機1の事故情報記録部14に記録される(S106)。また、歩行者保護装置は、ステップ201にて衝突が検知されると展開される。
【0038】
第一実施形態の歩行者衝突検知システムによれば、携帯通信機1と車両側で衝突が発生した直後にペアリングによる相互認証を行うことにより衝突が歩行者との衝突であることを精度良く判定することができる。そして、歩行者との衝突を精度良く判定することで、自動通報による誤報は抑制される。
【0039】
また、本実施形態では、携帯電話、スマートフォン、又はタブレット等に元々搭載されているGセンサ111を衝撃の検知に利用しているため、専用の衝撃検知用センサを必要とせず余計なコストもかからない点で有利である。また、本実施形態では、ペアリングによる相互認証によって携帯通信機1の固有情報を取得できるため、通報部25の通報時に、衝突された歩行者の情報も併せて公的機関に通報することができる。これにより、本人確認等が容易に行える。また、通報部25は、収集した事故情報も併せて通報する。これにより、通報を受けた公的機関による的確且つ迅速な状況判断が可能となり、事故状況に応じた迅速な救護活動及びその準備が可能となる。
【0040】
<第二実施形態>
第二実施形態の歩行者衝突検知システム(歩行者衝突通報システム)は、第一実施形態と同様の構成であって、制御フローが異なっている。したがって、制御フローについてのみ説明する。
【0041】
図4に示すように、携帯通信機1の衝撃検知部11が衝突を検知すると(S301)、所定時間衝撃記録部12に検知フラグが立つ(S302)。また車両側では、衝突検知センサ21が衝突を検知すると(S401)、所定時間(1秒程度)待機した後(S402)、無線通信部22がペアリング要求信号を発信する(S403)。ペアリング要求信号は、所定時間内で連続的に発信されても良い。
【0042】
携帯通信機1がペアリング要求信号を受信すると(S303:Yes)、ペアリング認証部13が検知フラグの有無を判定する(S304)。検知フラグが立っている場合(S304:Yes)、携帯通信機1はペアリング応答信号を送信する(S305)。この際、携帯通信機1は、自身の固有情報を送信する。
【0043】
ここで固有情報の1つには、携帯通信機1の位置情報が含まれている。当該位置情報は、携帯通信機1に搭載されたGPS装置(「携帯側位置情報取得部」に相当する)16による位置情報である。なお、位置情報等の固有情報は、ペアリング応答信号を送信した後に、例えば車両からの問い合わせ後に送信されても良い。無線通信部22がペアリング応答信号を受信すると(S404:Yes)、衝突判定部23が歩行者との衝突と判定する(S405)。
【0044】
携帯通信機1のペアリング認証部13は、ペアリング応答信号を送信した後、車両に対して固有情報の問い合わせ信号(情報要求信号)を送信する(S306)。無線通信部22は、問い合わせ信号を受信すると、車両の固有情報(車両番号や運転者情報等)を携帯通信機1に送信する(S406)。事故情報記録部14は、受信した車両の固有情報を記録する(S307)。また、事故情報記録部14は、GPS装置16による衝突時の位置情報も記録する(S307)。
【0045】
また、衝突判定部23が歩行者との衝突と判定すると(S405)、衝突判定部23により事故情報が収集され、イベントデータレコーダ24に事故情報及び携帯通信機1の固有情報(電話番号や所有者氏名等)が記録される(S406)。
【0046】
続いて、イベントデータレコーダ24は、携帯通信機1から取得した衝突時の携帯通信機1の位置情報と、ナビゲーションECU4から取得した衝突時の車両の位置情報に基づいて決定した事故発生地点を記録する(S407)。具体的には、エアバッグECU3がイベントデータレコーダ24に記録された携帯通信機1の位置情報と車両の位置情報から、事故発生地点を特定し、イベントデータレコーダ24に記録する。なお、事故発生地点は、携帯通信機1の位置と車両の位置の一致地点又は両位置の中央地点に決定されても良く、2つの位置情報の両方(すなわち2箇所)に決定されても良い。
【0047】
そして、通報部25は事故があった旨とイベントデータレコーダ24に記録された事故情報を公的機関に通報する(S408)。また、携帯通信機1も、ペアリング完了後、119番通報など公的機関に自動的に通報する(S308)。携帯通信機1の通報は、予め登録された音声によるものでもデータ送信によるものでも良い。また、携帯通信機1は、事故情報記録部14に記録された位置情報等のデータを通報と共に公的機関に送信する。
【0048】
第二実施形態の歩行者衝突検知システム(歩行者衝突通報システム)によれば、第一実施形態同様、精度良く歩行者との衝突を検知することができ、車両又は携帯通信機1から公的機関への誤報が抑制される。また、第二実施形態によれば、ペアリングによる相互認証によって携帯通信機1側にも車両の固有情報が記録されているので、携帯通信機1からの通報時には当該車両の固有情報(車両番号や運転者情報等)を併せて公的機関に伝えることで円滑な事故処理が可能となる。あるいは車両が歩行者と衝突後に、車両が歩行者を救助することなくその場を立ち去るような、いわゆる轢き逃げ事件が発生した場合においても同様に、携帯通信機1が当該車両の固有情報を利用することができるので、かかる事件の迅速な処理が可能となる。
【0049】
<第三実施形態>
第三実施形態の歩行者衝突検知システムは、第二実施形態と比較して、轢き逃げ判定部を備えている点で異なっている。したがって異なる部分のみ説明し、第二実施形態と同構成については同符号を付して説明を省略する。
【0050】
歩行者衝突検知装置2は、図5に示すように、第二実施形態の構成に加えて、エアバッグECU3内に配置された轢き逃げ判定部26を備えている。轢き逃げ判定部26は、衝突判定部23が歩行者との衝突と判定した後から所定時間内に、ナビゲーションECU4の取得する位置情報が示す車両位置がイベントデータレコーダ24に記録された事故発生地点から所定距離以上離れた場合、轢き逃げの可能性があると判定する。
【0051】
この構成によって、轢き逃げ判定部26が轢き逃げの可能性があると判定した場合、歩行者衝突検知装置2が車内で警報ランプを点灯させる等、運転手に注意を促すことができ、轢き逃げの抑制が可能となる。また、轢き逃げ判定部26が轢き逃げの可能性があると判定した場合に、通報部25により公的機関に通報させることもできる。
【0052】
轢き逃げ判定部26は、轢き逃げの可能性の有無の判定方法において、上記以外の方法で行っても良い。例えば、轢き逃げ判定部26は、衝突判定部23が歩行者との衝突と判定した後から所定時間内に、無線通信部22と携帯通信機1とが通信できない状態となった場合(すなわち近距離通信不可の状態)、轢き逃げの可能性があると判定するように設定されても良い。これによっても上記同様の効果が発揮される。
【0053】
<その他変形態様>
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、ペアリング要求信号は、携帯通信機1から発信されても良い。すなわち、携帯通信機1は、衝撃検知部11が衝突を検知した場合、近距離通信IC15を介して所定範囲内にペアリング要求信号を発信する。そして、無線通信部22は、ペアリング要求信号を受信し且つ衝突検知センサ21が衝突を検知した状態である場合、当該検知結果がイベントデータレコーダ24に記録され携帯通信機1に対しペアリング応答信号を送信する。これによっても、携帯通信機1と無線通信部22の間でペアリングによる相互認証が実行され相互の固有情報を送受信することにより、上記実施形態同様の効果が発揮される。
【0054】
また、上記第一〜第三の実施形態では、エアバッグECU3に歩行者衝突検知機能も搭載させているが、歩行者衝突検知ECU又は歩行者保護ECU等の別のECU(制御部)に搭載させても良い。また、衝撃検知部11は、Gセンサ111によるものに限らず、マイクロホン等の音響センサであっても良い。
【0055】
また、衝突検知センサ21は、圧力センサに限らず、Gセンサや光ファイバを用いた衝撃を検知するセンサであっても良い。
【0056】
<第四実施形態>
第四実施形態の車両衝突検知システムは、図6に示すように、第1車両C1に搭載される第1衝突検知装置91と、第1車両C1とは別の第2車両C2に搭載される第2衝突検知装置92と、を備えている。第1衝突検知装置91は、衝突検知センサ(「第1衝突検知部」に相当する)911と、無線通信部(「第1無線通信部」に相当する)912と、衝突判定部913と、イベントデータレコーダ914と、通報部915と、予備バッテリ916と、を備えている。
【0057】
衝突検知センサ911は、例えばGセンサや圧力センサで構成され、計測値に基づいて衝突を検知するセンサである。本実施形態において、衝突検知センサ911は、圧力センサ911aと、Gセンサ911cと、ヨーレートセンサ911bとで構成されている。圧力センサ911aは、車両の前部に設けられたチャンバ(図示せず)の変形による圧力変化から歩行者との衝突を検知するチャンバ式圧力センサである。Gセンサ911cは車両が受けた衝撃を検知するセンサであり、ヨーレートセンサ911bは、鉛直方向を回転軸とした車両の回転を検知するセンサである。
【0058】
圧力センサ911a、Gセンサ911c、及びヨーレートセンサ911bは、計測値が閾値を超えた場合に、何かに衝突したことを検知し、エアバッグECU3に検知結果を送信する。なお、圧力センサ911a、Gセンサ911c、及びヨーレートセンサ911bは単に計測値をエアバッグECU3に送信する構成であっても良く、この場合、エアバッグECU3が受信した計測値に基づいて、何かに衝突したか否かを判定する。
【0059】
無線通信部912は、所定範囲内で外部と無線通信することができる近距離通信機器や通信ICである。本実施形態において、無線通信部912は、通信ICであって、エアバッグECU3に搭載されている。なお、無線通信部912は、エアバッグECU3以外に配置されていても良いが、反応速度の観点からエアバッグECU3に搭載されることが好ましい。
【0060】
エアバッグECU3は、衝突検知センサ911から検知結果を受信すると、無線通信部912にペアリング要求信号を発信させる。つまり、無線通信部912は、衝突検知センサ911が何かとの衝突を検知すると、所定時間、所定範囲内にペアリング要求信号を発信する。本実施形態において、エアバッグECU3は、自車が停止状態である場合、圧力センサ911a、Gセンサ911c、及びヨーレートセンサ911bの両方から検知結果を受信すると無線通信部912に発信指令を送信する。
【0061】
また、自車が停止中ではなく、逆に走行状態であって、自車が他の停止中にある車両と衝突したような場合であっても同様に、衝突検知センサ911の検知結果を受信すると無線通信部912に発信指令を送信する。本実施形態において、停止状態とは、イグニションがオフされた状態を意味する。
【0062】
無線通信部912がペアリング要求信号に対するペアリング応答信号を受信すると、衝突判定部913が外部(第2衝突検知装置92)とペアリングによる認証が成立したことを認識する。また、反対に、無線通信部912は、第2衝突検知装置92からのペアリング要求信号を受信した場合、エアバッグECU3が衝突検知センサ911から検知結果を受信していれば、ペアリング応答信号を外部に送信する。衝突判定部913は、衝突検知センサ911から検知結果を受信してから所定時間内にペアリング要求信号又はペアリング応答信号を受信した場合に、認証成立と認識する。
【0063】
衝突判定部913は、エアバッグECU3内に配置されたICであって、ペアリングによる認証が成立したことを認識した場合、衝突検知センサ911が検知した衝突の対象が車両であると判定する。衝突判定部913は、衝突対象が車両であると判定した場合、事故情報の収集指示を送信する。さらに、衝突判定部913は、通報部915に通報指示を送信する。本実施形態の衝突判定部913は、自車が走行中であっても、衝突対象が車両であると判定しペアリングによる認証が成立したことを認識すると、通報部915に通報指示を送信する。
【0064】
イベントデータレコーダ914は、エアバッグECU3内に配置された不揮発性メモリであって、ペアリングにより取得した第2車両C2の固有情報(車両番号や運転者情報等)を記録する。また、イベントデータレコーダ914には、衝突検知センサ911が検知した衝突の前後に関する事故情報が記録される。事故情報は、エアバッグECU6等に搭載されたGセンサの測定値、圧力センサ911a等により特定された衝突個所(受傷個所)、ナビゲーションECU4からの自車の位置情報、電動パワーステアリングECU5からの舵角情報、エンジンECU6からの車速情報、ブレーキECU7からのブレーキ情報、及びドライブレコーダ8からの衝突前後の映像である。なお、イベントデータレコーダ914は、上記各種データのうちの少なくとも1つを記録するように設定されていれば良い。事故情報は、衝突前後に関するものであり、少なくとも衝突直前の情報が含まれていれば良い。
【0065】
通報部915は、エアバッグECU3とは別に設けられた、無線による遠距離通信(例えば電話やデータ通信)が可能な無線機(通信モジュール)である。通報部915は、衝突判定部913から通報指示を受信すると、車両管理センター(「公共機関」に相当する)に車両との衝突があった旨を自動通報する。通報は、データのみでも予め設定された音声によるものであっても良い。また、通報部915は、衝突の通報と共に、イベントデータレコーダ914に記録された第2車両の固有情報と第1車両の固有情報及び事故情報を送信する。車両管理センターとは、例えば各種自動車メーカがサービスを提供するための施設である。
【0066】
予備バッテリ916は、一般に車両に搭載されているメインのバッテリとは別に搭載されたバッテリである。予備バッテリ916は、エアバッグECU3及び第1衝突検知装置91の各部に接続されている。予備バッテリ916は、イグニションのオン/オフにかかわらず上記各部に電力を供給する。衝突検知装置91、92は、イグニションのオン/オフにかかわらず稼働する。
【0067】
第2衝突検知装置92は、衝突検知センサ(「第2衝突検知部」に相当する)921と、無線通信部(「第2無線通信部」に相当する)922と、衝突判定部923と、イベントデータレコーダ924と、通報部925と、予備バッテリ926と、を備えている。衝突検知センサ921は、圧力センサ921aとGセンサ921cとヨーレートセンサ921bで構成されている。第2車両C2には、エアバッグECU30が搭載されており、無線通信部922、衝突判定部923、及びイベントデータレコーダ924はエアバッグECU30内に配置されている。第2衝突検知装置92の構成は、第1衝突検知装置91と同構成であるため、説明は省略する。また、各衝突検知装置91、92は、各車両C1、C2において、第一実施形態同様、各部4〜8と接続されている。
【0068】
第四実施形態の車両衝突検知システムの制御の流れについて第1車両C1から見て説明する。図7及び図8に示すように、停止状態の第1車両C1に走行中の第2車両C2が衝突した場合、衝突検知センサ911の計測値が所定閾値を超えたことを以て第1車両C1側で何かとの衝突が検知され(S501)、第2車両の衝突検知センサ921の計測値が所定閾値を超えたことを以て第2車両C2側でも何かとの衝突が検知される(S601)。第1車両C1は停止状態であるため、エアバッグECU3は、圧力センサ911a、Gセンサ911c、及びヨーレートセンサ911bの検知結果に基づいて作動する。また、第2車両は走行中であるため、エアバッグECU30は、圧力センサ921aの検知結果に基づいて作動する。
【0069】
続いて、各車両C1、C2側において、所定時間(1秒程度)待機した後(S502、S602)、ペアリングを実行する(S503、S603)。ペアリングについて説明すると、まず、無線通信部912、922が所定範囲内でペアリング要求信号を発信する。ペアリング要求信号は、衝突検知直後の所定時間(期間)にペアリング応答信号を受信するまで連続的に発信されても良く、衝突検知後に待機時間を経てから発信されても良い。なお、本実施形態では前者を採用している。そして、無線通信部912(922)は、近距離通信によりペアリング要求信号を受信すると、エアバッグECU3(30)に衝突の有無を確認し、所定範囲内にペアリング応答信号を発信する。無線通信部922(912)がペアリング応答信号を受信すると、ペアリングによる認証が成立する。なお、本実施形態では、ペアリング応答信号の発信は、無線通信部912、922のうちペアリング要求信号を早く受信した方が行う。また、自車の固有情報は、ペアリングにより交換される。
【0070】
ペアリングによる認証が成立すると、衝突判定部913、923は、自車が車両と衝突したと判定する(S504、S604)。ペアリングによる認証が所定時間内に成立しなかった場合、衝突判定部913、923は、衝突対象が車両でないと判定して処理を終了する。
【0071】
衝突判定部913、923が車両との衝突と判定した場合、衝突判定部913、923(エアバッグECU3)により事故情報が収集されると共に当該事故情報がイベントデータレコーダ914、924に記録される(S505、S605)。事故情報は、上述のとおり、事故発生現場の位置、事故発生前後の映像、衝突位置と衝突時の加速度、車速、制動信号、操舵角信号、及び相手車両の固有情報等である。そして、通報部913、923の少なくとも一方(ここでは停止側の通報部913)が事故情報と共に事故を公的機関に通報する(S506)。
【0072】
第四実施形態によれば、車両同士が衝突した場合、衝突を検知後にペアリングを実行し、認証が成立した場合に車両同士の衝突を判定する。これにより、衝突があったことと衝突対象が車両であることを精度良く検知することができる。また、各衝突検知装置91、92は、車両が停止状態であっても稼働可能であり、停止状態でも稼働させることで、運転手不在の場合でも、車両による衝突を検知できる。これにより、例えば当て逃げ等が発生しても、当て逃げされた車両でペアリングにより衝突が検知されるため、相手側の固有情報を取得し、あるいは所定の機関(例えば車両管理センター等)に通報するなどの様々な対応が可能となる。第四実施形態によれば、当て逃げ相手の特定、通報など迅速な対応が可能となるとともに、停止中でも検知・通報が可能であることによる当て逃げの抑止が可能となる。
【0073】
また、無線通信部912、922が所定範囲内での通信(近距離通信)を可能としており、通信範囲が限定的であるため他の事故による車両との通信を抑制することができる。また、第四実施形態では、衝突検知装置91、92が予備バッテリ916、926から電力供給されているため、車両が停止状態であっても、メインのバッテリの負担がなくメインのバッテリがあがってしまうことを防止することができる。
【0074】
なお、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、衝突検知装置91、92は、車両のメインのバッテリから電力供給されるように設計されていても良い。つまり、衝突検知装置91、92は、予備バッテリ916、926を備えてなくても良い。メインのバッテリとは、例えばエンジン始動時に使用する電力を供給するバッテリである。また、衝突検知装置91、92は、走行時にメインのバッテリから、停止時に予備バッテリ916、926から電力供給されるように設計されていても良い。
【0075】
また、衝突検知装置91、92は、各車両が走行中に衝突した場合であっても、衝突後にペアリングを実行することで、車両同士の衝突と認識することができ、仮に運転手の意識がない場合でも自動通報することができる。また、上記轢き逃げ判定部26は、当て逃げ判定部として応用可能であり、第三実施形態の轢き逃げ検知と同様の考え方(ペアリング成立後の無線通信部912、922同士による通信の可否等)で当て逃げを検知するように設定することができる。また、圧力センサ911aは、車両前方の他、車両後方のバンパ内に配置されても良い。
【符号の説明】
【0076】
1:携帯通信機、 11:衝撃検知部、
111:Gセンサ、 112:携帯側衝突判定部、 12:衝撃記録部、
13:ペアリング認証部、 14:事故情報記録部、
15:近距離通信IC(近距離通信部)、 16:GPS装置(携帯側位置情報取得部)、
17:音声・データ通信部、
2:歩行者衝突検知装置、 21:衝突検知センサ(衝突検知部)、
22:無線通信部、 23:衝突判定部、
24:イベントデータレコーダ、 25:通報部、
3:エアバッグECU、 4:ナビゲーションECU(位置情報取得部)、
5:電動パワーステアリングECU、 6:エンジンECU、
7:ブレーキECU、 8:ドライブレコーダ、
91:第1衝突検知装置、 911:衝突検知センサ(第1衝突検知部)、
912:無線通信部(第1無線通信部)、 913、923:衝突判定部、
914、924:イベントデータレコーダ、
915、925:通報部、 916、926:予備バッテリ、
92:第2衝突検知装置、 921:衝突検知センサ(第2衝突検知部)、
922:無線通信部(第2無線通信部)、 C1:第1車両、 C2:第2車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8