(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
溶接部の残留応力改善を目的とし既設配管の溶接部をコイルで囲み当該溶接部へ高周波誘導加熱を行う従来の方法(例えば、特許文献1参照)は、溶接部の近傍という既設配管のごく一部を局所的に加熱することで目的を達することができる。
【0007】
一方、炭素鋼部材の表面として炭素鋼材製の既設配管の内面に酸化皮膜を生成する酸化処理を目的とする場合、既設配管を広範囲に渡ってコイルで囲み、既設配管のほぼ全体に渡って高周波誘導加熱を行う必要が生じる。酸化処理対象物としての炭素鋼部材を広範囲に渡って加熱するとなれば、当該部材内の温度勾配に起因する熱応力による変形や、局所的に高温に至ることによる金属組織変化を防ぐために、当該炭素鋼部材を広範囲に渡って略均一に加熱することが課題となる。
【0008】
そこで、本発明は、酸化処理対象物を広範囲に渡って略均一に高周波誘導加熱を行うことが可能な酸化処理装置および酸化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る酸化処理装置は、炭素鋼材製の配管を酸化処理対象物として、前記酸化処理対象物の内面を酸化させる酸化処理装置であって、連結および分解が可能な複数の中空導電体と前記中空導電体の中空部が連接してなる冷却剤流路とを有して前記酸化処理対象物を囲むコイルと、前記冷却剤流路に冷却剤を流通する冷却装置と、前記コイルに交流電力を印加する交流電源と、前記コイルまたは前記酸化処理対象物が放射する熱を反射して前記酸化処理対象物に熱を集中する熱反射体と、
前記酸化処理対象物の酸化処理面へ酸素を供給可能な酸素供給流路を区画するとともに前記酸素供給流路以外の部分を覆う真空区画壁と、前記真空区画壁が区画する前記酸化処理対象物の周囲から気体を排気する真空排気装置と、を備え、前記熱反射体は、前記コイルごと前記酸化処理対象物の外面を覆うように、および/または前記酸化処理対象物の内面を覆うように設けられることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の実施形態に係る酸化処理方法は、炭素鋼材製の配管を酸化処理対象物として、前記酸化処理対象物の内面を酸化させる酸化処理方法であって、複数の中空導電体を連結して前記中空導電体の中空部が連接してなる冷却剤流路を有するコイルを組み立て、前記コイルによって酸化処理対象物を囲み、前記コイルまたは前記酸化処理対象物が放射する熱を反射して前記酸化処理対象物に熱を集中する熱反射体を、前記コイルごと前記酸化処理対象物の外面を覆うように、および/または前記酸化処理対象物の内面を覆うように設け、
前記酸化処理対象物の酸化処理面に区画する酸素供給流路へ酸素を供給し、前記酸化処理対象物の周囲であって前記酸素供給流路以外の部分から気体を排気して真空にし、前記冷却剤流路に冷却材を流通しつつ前記コイルに交流電力を印加して前記酸化処理対象物を熱し前記酸化処理対象物の表面の少なくとも一部に酸化処理を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、酸化処理対象物を広範囲に渡って略均一に高周波誘導加熱を行うことが可能な酸化処理装置および酸化処理方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る酸化処理装置および酸化処理方法の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
本発明に係る酸化処理装置の第1実施形態について、
図1から
図3を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る酸化処理装置を示す概略的なシステム構成図である。
【0016】
図2は、本発明の第1実施形態に係るコイルの分解状態を示す概略図である。
【0017】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る酸化処理装置1は、連結および分解が可能な複数の中空導電体2と中空導電体2の中空部3が連接してなる冷却剤流路5とを有して酸化処理対象物PBを囲むコイル6と、冷却剤流路5に冷却剤(図示省略)を流通する冷却装置7と、コイル6に交流電力を印加する交流電源8と、を備える。
【0018】
先ず、酸化処理対象物PBは、酸化処理装置1によって酸化処理面sに酸化皮膜(図示省略)を生成する炭素鋼材製の構造物である。本実施形態に係る酸化処理対象物PBは、原子力プラントなどのプラントに布設される炭素鋼材製の配管101であり、内面102を放射性物質が溶存する炉水などの液体に晒す。そこで、酸化処理装置1は、酸化処理面sとしての内面102に酸化皮膜を生成する。配管101の外面103はコイル6に対面する。酸化皮膜を生成する際、酸化処理対象物PBである配管101は、交流電源8がコイル6へ印加する交流電力によって熱(高周波誘導加熱)を発し、少なくとも酸化処理面sである内面102を大気などの酸素ガスを含む気体に晒して酸化皮膜を生成する。なお、酸化処理対象物PBは、外面が部分的に液体に接する中実の棒材や板材であっても良い。以下、説明を簡単にするために、酸化処理対象物PBに配管101を適用する場合について詳述する。配管101は既設であっても未設であっても良い。
【0019】
コイル6は、配管101の周囲を例えば螺旋状に囲む。コイル6は配管101から離間していても良いし、絶縁体(図示省略)を挟んで巻き付いていても良い。コイル6は連結および分解が可能であり、複数の中空導電体2を配管101の周囲に組み立てることで配管101を囲む。他方、配管101を酸化処理した後は、コイル6を中空導電体2に分解することによって容易に撤去することができる。
【0020】
中空導電体2は、それぞれが半円弧状に延びる管であり、金属などの導電体製の構造物である。酸化皮膜を生成する範囲に応じて適宜の数量の中空導電体2が連続的に連結し、全体でコイル6をなす。
【0021】
冷却装置7は、冷却剤流路5に接続して冷却剤としての冷却水を循環する。なお、冷却剤は水の他に適宜の冷媒であっても良い。冷却装置7は、配管101が放射する熱によるコイル6の温度上昇を防ぎ、ひいてはコイル6の電気抵抗の増大を防いで消費電力の増加を抑制し、配管101の効率的な加熱に貢献する。
【0022】
交流電源8は、コイル6に交流電力を印加し、コイル6の内部および周辺に交流磁場を発生させる。配管101は導電性を有する炭素鋼材製であり、コイル6および交流電源8が発生する交流磁場によって渦電流を生じる。この渦電流は配管101自体の電気抵抗によって消費されてジュール熱を発生する。このジュール熱は配管101を加熱(高周波誘導加熱)し、内面102の温度を上げる。
【0023】
高周波誘導加熱によって配管101の温度が上昇すると、酸素ガスを含む気体に接する内面102に酸化皮膜が生成される。生成される酸化皮膜の一例は、耐食性の高い針状の組織を有する酸化皮膜である。この酸化皮膜は内面102の腐食を抑制する(耐食性を向上する)とともに、放射性物質の付着抑制に貢献する。
【0024】
図3は、本発明の第1実施形態に係る中空導電体の連結部分を示す概略図である。
【0025】
図3に示すように、それぞれの中空導電体2は、一方の端部に導電性嵌入部11を有し、他方の端部に導電性嵌入部11を嵌め込み可能な導電性嵌合穴12を有する。導電性嵌入部11および導電性嵌合穴12は、機械的に連結すると同時に電気的に接続してコイル6を形成して中空導電体2間の導通を保つ。また、導電性嵌入部11および導電性嵌合穴12は、連結部分にシール部材13を挟み込んで連結する。シール部材13は、中空導電体2内の中空部3を流通する冷却剤がコイル6外へ漏洩しないよう、隣り合う中空導電体2間の水密性または気密性を保つ。
【0026】
本実施形態に係る酸化処理装置1を用いる酸化処理対象物PBの酸化処理方法は、先ず、複数の中空導電体2を連結して中空導電体2の中空部3が連接する冷却剤流路5を有するコイル6を組み立て、コイル6によって酸化処理対象物PBを囲み、次いで、冷却剤流路5に冷却材を流通しつつコイル6に交流電力を印加して酸化処理対象物PBを熱し酸化処理対象物PBの表面の少なくとも一部である酸化処理面sに酸化処理を施す方法である。
【0027】
したがって、本実施形態に係る酸化処理装置1および酸化処理方法は、炭素鋼部材としての酸化処理対象物PBの酸化処理面sに酸化処理を施す際、複数の中空導電体2を適宜に連結して、酸化処理が必要な範囲(例えば、酸化処理対象物PBの全体)をコイル6で囲み、酸化処理対象物PBのほぼ全体に渡って高周波誘導加熱を行うことができる。
【0028】
また、本実施形態に係る酸化処理装置1は、冷却剤流路5に冷却剤を流通することによって、コイル6の温度上昇、ひいてはコイル6の電気抵抗の増大を防いで酸化処理対象物PBを効率的かつ略均一に加熱することができる。
【0029】
[第2の実施形態]
本発明に係る酸化処理装置の第2実施形態について、
図4を参照して説明する。
【0030】
図4は、本発明の第2実施形態に係る酸化処理装置を示す概略的なシステム図である。
【0031】
なお、本実施形態に係る酸化処理装置1Aにおいて第1実施形態の酸化処理装置1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
図4に示すように、本実施形態に係る酸化処理装置1Aは、コイル6または酸化処理対象物PBが放射する熱を反射して酸化処理対象物PBに熱を集中する熱反射体15と、酸化処理対象物PBの酸化処理面sへ気体を供給可能な酸素供給流路16を区画するとともに酸化処理対象物PB周囲の気体を排気する真空排気装置17と、酸化処理対象物PBが磁気飽和状態であることを確認する磁気飽和確認装置18と、を備える。
【0033】
熱反射体15は、コイル6ごと配管101を囲みまたは覆い、高周波誘導加熱によって配管101が放射する熱を配管101へ反射して加熱効率を高める。具体的には、熱反射体15は、熱反射率の高い金属板または熱反射率の高い塗膜やシートなどを表面に有する金属板からなる構造物であり、例えば、配管101の内面102および外面103のそれぞれへ対面する熱反射率の高い面を有する筒状の構造物である。
【0034】
真空排気装置17は、ロータリポンプまたは拡散ポンプなどの真空ポンプ21と、配管101の内面102近傍に酸素供給流路16を区画しつつ配管101を覆う真空区画壁22と、を備える。真空排気装置17は、配管101の周囲を真空にして配管101の放射する熱の損失を防ぐ。
【0035】
真空区画壁22は、配管101の外面103側の空間を覆い、また酸素供給流路16を隔てて内面102から離間する配管101の内側中心部近傍部を囲む。換言すれば、真空区画壁22は、酸化処理面sの周囲に酸素供給流路16を形成しつつ酸化処理対象物PBの他の部分を覆う。なお、真空区画壁22は、熱反射体15としても機能する構造物である。また、真空区画壁22と熱反射体15とを別々に構成しても良い。
【0036】
真空ポンプ21は、真空区画壁22が区画する配管101の外面103側の空間および配管101の内側中心部近傍部から気体を排気し、内面102の周囲(すなわち、酸素供給流路16)を除いて配管101の周囲を真空にする。
【0037】
ところで、配管101が磁性体の場合、表皮効果によって磁場の浸透深さが浅くなる。すなわち、配管101の外側に位置するコイル6によって高周波誘導加熱を行っても配管101の内面102側へ十分に磁場が届かず加熱能力が低下する虞がある。そこで、酸化処理装置1Aは、磁気飽和確認装置18によって配管101の磁化状態を確認し、配管101が未だ磁気飽和をしていない場合、コイル6へ印加する電流の増加を促して配管101の磁気飽和を促し、磁場の浸透深さを深くし、酸化処理面sである内面102を確実に加熱する。磁気飽和確認装置18は、コイル6に流れる電流を測定する電流モニタや、コイル6に加わる電圧を測定する電圧モニタである。
【0038】
本実施形態に係る酸化処理装置1Aを用いる酸化処理対象物PBの酸化処理方法は、先ず、複数の中空導電体2を連結して中空導電体2の中空部3が連接する冷却剤流路5を有するコイル6を組み立て、コイル6によって酸化処理対象物PBを囲み、真空区画壁22でコイル6および酸化処理対象物PBを囲みつつ酸化処理面sを含む酸素供給流路16を形成し、真空排気装置17によって酸化処理対象物PB周囲の気体を排気し、次いで、冷却剤流路5に冷却材を流通しつつコイル6に交流電力を印加して酸化処理対象物PBを熱し酸化処理対象物PBの表面sの少なくとも一部に酸化処理を施す方法である。
【0039】
したがって、本実施形態に係る酸化処理装置1Aは、コイル6ごと酸化処理対象物PBを囲みまたは覆う熱反射体15によって、酸化処理対象物PBが放射する熱を逃さず、酸化処理対象物PBに熱を集中して加熱効率を高めることが可能であり、酸化処理対象物PBを効率的かつ略均一に加熱することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る酸化処理装置1Aは、酸化処理対象物PB周囲の気体を排気して真空な空間を形成する真空排気装置17によって、酸化処理対象物PBが放射する熱を閉じ込め、酸化処理対象物PBの加熱効率を高めることが可能であり、酸化処理対象物PBを効率的かつ略均一に加熱することができる。
【0041】
さらに、本実施形態に係る酸化処理装置1Aは、磁気飽和確認装置18によって酸化処理対象物PBの磁化状態を確認することが可能であり、酸化処理対象物PBの磁気飽和状態を確認しながらコイル6へ印加する電流を加減して磁場の浸透深さを深くし、酸化処理対象物PBを効率的かつ略均一に加熱することができる。
【0042】
[第3の実施形態]
本発明に係る酸化処理装置の第3実施形態について、
図5を参照して説明する。
【0043】
図5は、本発明の第3実施形態に係る酸化処理装置を示す概略的なシステム図である。
【0044】
なお、本実施形態に係る酸化処理装置1Bにおいて第1実施形態の酸化処理装置1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
図5に示すように、本実施形態に係る酸化処理装置1Bは、酸化処理対象物PBの酸化処理面sおよびコイル6近傍部の温度を複数箇所測定する温度測定装置25と、交流電力の電流振幅を調整する電流振幅調整装置26と、交流電力の周波数を調整する周波数調整装置27と、コイル6を臨む酸化処理対象物PBの表面を冷却する処理対象物冷却装置28と、を備える。
【0046】
温度測定装置25は、配管101の酸化処理面sである内面102とコイル6近傍部である外面103とを少なくと2箇所ずつ測定し、高周波誘導加熱によって生じる配管101の温度分布または温度勾配を測定する。温度測定装置25は、内面102および外面103にそれぞれ位置する熱伝対や放射温度計である。
【0047】
電流振幅調整装置26は、コイル6と交流電源8との間に介在する可変抵抗や分岐回路であり、周波数調整装置27は、交流電源を制御するファンクションジェネレータである。周波数調整装置27と交流電源8とが一体となった周波数調整機能付き交流電源を用いても良い。
【0048】
ところで、配管101の内面102は、酸素ガスを含む気体に接するので外面103に比べて温度が低下しやすい。他方、配管101の外面103、すなわちコイル6を臨む酸化処理対象物PBの表面は、内面102に比べて高温に至る可能性がある。そこで、処理対象物冷却装置28は、配管101の外面103を冷却して配管101の肉厚方向における温度分布または温度勾配を抑制し、ほぼ一様な温度で加熱することを可能にする。処理対象物冷却装置28は水冷方式であっても良いし空冷方式であっても良い。
【0049】
高周波誘導加熱を行う配管101は、温度勾配に起因する熱応力による変形や、局所的に高温に至ることによる金属組織変化を防ぐために、中心軸線方向およびその直交方向のいずれの方向へも略均一な温度上昇を行うことが望ましい。そこで、酸化処理装置1Bは、配管101の中心軸線方向の温度分布およびその直交方向の温度分布を温度測定装置25で測定し、これら温度分布が略均一になるよう電流振幅調整装置26、周波数調整装置27でコイル6に印加する交流電力の振幅と周波数を調整することが可能である。また、酸化処理装置1Bは、処理対象物冷却装置28によって配管101の肉厚方向(中心軸線直交方向)における温度分布または温度勾配を抑制し、ほぼ一様な温度で加熱することも可能である。
【0050】
したがって、本実施形態に係る酸化処理装置1Bは、酸化処理対象物PBを略均一に加熱することが可能であり、熱応力による変形や局所的な高温による金属組織変化を防ぐことができる。
【0051】
また、本実施形態に係る酸化処理装置1Bは、酸化処理作業後に酸化処理対象物PBの冷却時間を短縮して作業コストの低減に貢献できる。
【0052】
[第4の実施形態]
本発明に係る酸化処理装置の第4実施形態について、
図6を参照して説明する。
【0053】
図6は、本発明の第4実施形態に係る酸化処理装置を示す概略的なシステム図である。
【0054】
なお、本実施形態に係る酸化処理装置1Cにおいて第1実施形態の酸化処理装置1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0055】
図6に示すように、本実施形態に係る酸化処理装置1Cは、酸化処理対象物PBを囲み短絡状態にある第二コイル31を備える。
【0056】
第二コイル31は、コイル6と同様の構造を有するものであるが、その両端は導線32によって短絡している。なお、第二コイル31を交流電源8に接続しても良い。
【0057】
酸化処理装置1Cは、コイル6が発生する磁場のうち、配管101の中心軸線方向へ漏れる磁場を利用し、電磁誘導によって第二コイル31に誘導起電力を発生する。この誘導起電力は第二コイル31に磁場を発生し、この磁場が配管101に渦電流を誘起し、配管101の加熱に寄与して効率的な加熱を可能にする。特に、配管101が磁性体の場合に効果的である。
【0058】
[第5の実施形態]
本発明に係る酸化処理装置の第5実施形態について、
図7および
図8を参照して説明する。
【0059】
図7および
図8は、本発明の第5実施形態に係る酸化処理装置を示す概略的なシステム図である。
【0060】
なお、本実施形態に係る酸化処理装置1Dにおいて第1実施形態の酸化処理装置1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0061】
図7および
図8に示すように、酸化処理装置1Dは、酸化処理対象物PBに沿って蛇行するコイル35、35Aを備える。
【0062】
コイル35、35Aは、酸化処理装置1のコイル6と略同じ構成を有するが、螺旋形状のコイル6とは異なり非螺旋形状、具体的には蛇行形状を有するコイルである。コイル35は、直管状の配管101に適用する蛇行形状のコイルであり、配管101の中心軸線に対して略並行に延びる直線部分35aと、直線部分35aの端部を連結する連結部分35bとを備え、配管101の外面103を覆う。コイル35Aは、曲管状の配管101Aに適用する蛇行形状のコイルであり、配管101Aの中心軸線に対して略並行に延びる曲線部分35cと、曲線部分35cの端部を連結する連結部分35bとを備え、配管101Aの外面103Aを覆う。
【0063】
コイル35、35Aは、いずれも複数の直線部分35aまたは曲線部分35cが略等間隔に離間して延びることで、素線の局所的な疎密を生じることなく配管101、配管101Aを囲む。仮に配管101Aを螺旋形状のコイルで囲むと、配管101Aの腹側は素線が密になり、背側は素線が疎になる。
【0064】
また、螺旋形状のコイルで配管101、配管101Aを広範囲に囲む場合、多数の半円弧状の部材を次々に連結する必要が有る。コイル35、35Aで配管101、配管101Aを広範囲に囲む場合、当該範囲に差し渡る長尺な直線部分35aまたは曲線部分35cを使用することができるので当該範囲の差し渡しが長ければ長いほど、螺旋形状のコイルよりも少数の部材で配管101、配管101Aを囲むことができる。
【0065】
したがって、本実施形態に係る酸化処理装置1Dは、特に、曲管状の配管101A(所謂、エルボ)を加熱する際、配管101Aの腹側と背側の素線の疎密を略均一にすることが可能であり、当該部分に略均一な磁場を生じて酸化処理対象物PBを略均一に加熱し、酸化皮膜を略均一に生成することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る酸化処理装置1Dは、コイル35、35Aを広範囲に渡って囲む場合、螺旋形状のコイルに比べて部材数を少数に抑制することが可能であり、数量が少量であるゆえに布設にともなう作業時間も短くなる。また、長尺な配管101、101Aへコイル35、35Aを着脱する作業を容易化できる。
【0067】
したがって、本実施形態に係る酸化処理装置1、1A,1B、1C、1Dおよび酸化処理方法は、酸化処理対象物PBを広範囲に渡って略均一に高周波誘導加熱を行うことができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。