(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面上の一方向への変位を拘束し、前記一方向と直交する他方向への変位を可能にするように支持具によって基礎面から支持されたダイナミックバランサ本体に回転自在に回転軸が設けられ、
前記ダイナミックバランサ本体の上部と下部にそれぞれ、前記ダイナミックバランサ本体の変位を生じさせる荷重を検出するように前記基礎面から支持された上部荷重センサと下部荷重センサとが設けられ、
前記回転軸に対して同軸に上側と下側にそれぞれ上部リムと下部リムとが設けられ、
前記上部リムと下部リムのうち一方に錘を取り付けた状態およびそれらリムの両方に錘を付けていない状態の3つの各状態で前記回転軸を回転させることによって、前記上部リムと下部リムとに錘を付けることによって生じるアンバランスベクトル量と、前記上部荷重センサおよび下部荷重センサからそれぞれ出力される荷重信号との関係を定める係数を校正モードにおいて求める係数算出手段を備えたタイヤ用ダイナミックバランサであって、
前記係数算出手段は、前記校正モードにおける前記3つの状態のうちの前記上部リムと下部リムのうち一方に錘を取り付ける状態において、異なる複数の質量の錘を取り付ける、および/または複数の取り付け位置に同じ質量の錘を取り付けることで生じた複数種類のアンバランスベクトル量に基づいて、種々の大きさのアンバランスベクトル量を持つ被測定タイヤのアンバランスベクトル量測定値の統計処理を行うことにより前記係数を求めることを特徴とするタイヤ用ダイナミックバランサ。
平面上の一方向への変位を拘束し、前記一方向と直交する他方向への変位を可能にするように支持具によって基礎面から支持されたダイナミックバランサ本体に回転自在に回転軸が設けられ、
前記ダイナミックバランサ本体の上部と下部にそれぞれ、前記ダイナミックバランサ本体の変位を生じさせる荷重を検出するように前記基礎面から支持された上部荷重センサと下部荷重センサとが設けられ、
前記回転軸に対して同軸に上側と下側にそれぞれ上部リムと下部リムとが設けられてなるタイヤ用ダイナミックバランサにおいて、
前記上部リムと下部リムのうち一方に錘を取り付けた状態およびそれらリムの両方に錘を付けていない状態の3つの各状態で前記回転軸を回転させることによって、前記上部リムと下部リムとに錘を付けることによって生じるアンバランスベクトル量と、前記上部荷重センサおよび下部荷重センサからそれぞれ出力される荷重信号との関係を定める係数を校正モードにおいて求めるタイヤ用ダイナミックバランサの校正方法であって、
前記校正モードにおける前記3つの状態のうちの前記上部リムと下部リムのうち一方に錘を取り付ける状態において、異なる複数の質量の錘を取り付ける、および/または複数の取り付け位置に同じ質量の錘を取り付けることで生じた複数種類のアンバランスベクトル量に基づいて、種々の大きさのアンバランスベクトル量を持つ被測定タイヤのアンバランスベクトル量測定値の統計処理を行うことにより前記係数を求めることを特徴とするタイヤ用ダイナミックバランサの校正方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−174658号公報
【0004】
従来、タイヤを用いる校正方法では、稼働運転時に使用するタイヤと同じ仕様のテスト用タイヤを校正モードにおいてダイナミックバランサの回転軸に設けた上部リムと下部リムの間に装着し、回転軸を支持するダイナミックバランサ本体が、テスト用タイヤに発生する遠心力によって受ける荷重を測定することによって下記に述べるようにして、回転系の上初期アンバランスベクトルZ
Uと下初期アンバランスベクトルZ
Lと、テスト用タイヤが持つ上下アンバランスベクトルT
UとT
Lを求めるようにされている。
【0005】
上部リムと下部リムの間に稼働運転時に使用するタイヤと同仕様のテスト用タイヤを装着し、原点に対してタイヤを90°,180°,270°,0°の順に4回ずらしてそれぞれ回転軸を回転させ、回転系の持つ初期アンバランスベクトルとタイヤの持つアンバランスベクトルが合成された値P´
90,P´
180,P´
270,P´
0を上側、下側のロードセルについてそれぞれ検出し、それぞれを4回の測定結果を加算して4で割ることによって上初期アンバランスベクトルZ
Uと下初期アンバランスベクトルZ
Lを求める。
【0006】
但し、テスト用タイヤを装着して測定した上下のロードセル出力によって測定されるベクトルP´
U,P´
Lには、零ベクトル取得で求めた上下初期アンバランスベクトルZ
U、Z
Lとテスト用タイヤの持つ上下アンバランスベクトルT
U、T
Lが含まれている。
【0007】
テスト用タイヤの持つ上下アンバランスベクトルT
U,T
Lとしては、零ベクトル取得時において、0°における下側のロードセル出力の測定結果P´
L0および下初期アンバランスベクトルZ
LからP
L0を、上側のロードセル出力の測定結果P´
U0および上初期アンバランスベクトルZ
UからP
U0を求め、T
L=P
L0、T
U=P
U0として使用する。
【0008】
すなわち、次に述べるように、上部リムと下部リムの間にテスト用タイヤを装着し、更に上部リムと下部リムのいずれか片方に分銅を取り付けてテストするとき、テスト用タイヤの装着位置は0°で維持する。
【0009】
回転系の持つ初期アンバランスベクトルZ
L,Z
Uおよびタイヤを使用しての校正時のタイヤの持つアンバランスによる検出ベクトルT
LおよびT
Uを差し引いた結果、取り付けた分銅による検出ベクトルP
LおよびP
Uのみが残る。すなわち、
P
L=P´
L−Z
L−T
L
P
U=P´
U−Z
U−T
U
となる。
【0010】
測定原理として、上下のロードセルに加わる不釣り合い力P
U、P
Lを検出することによるタイヤのアンバランス量U
U、U
Lは、以下の式にて求められる。
U
L=γ
1P
L+γ
2P
U
U
U=δ
1P
L+δ
2P
U
【0011】
上部リムに質量W
Uの分銅を位置ベクトルr
Uの位置に取り付けて回転させた場合における、上側のロードセルで検出される分銅によるアンバランスベクトルをP
UU、下側のロードセルで検出される分銅によるアンバランスベクトルをP
ULとし、下部リムに質量W
Lの分銅を位置ベクトルr
Lの位置に取り付けて回転させた場合における、上側のロードセルで検出される分銅によるアンバランスベクトルをP
LU、下側のロードセルで検出される分銅によるアンバランスベクトルをP
LLとしたとき、以下の式から係数γ
1,γ
2,δ
1,δ
2が求められる。
γ
1=P
UU×W
L・r
L/(P
UU×P
LL−P
UL×P
LU)
γ
2=−P
UL×W
L・r
L/(P
UU×P
LL−P
UL×P
LU)
δ
1=−P
LU×W
U・r
U/(P
UU×P
LL−P
UL×P
LU)
δ
2=P
LL×W
U・r
U/(P
UU×P
LL−P
UL×P
LU)
【0012】
しかしながら、従来のタイヤを用いた校正方法において、所定の質量の分銅を上部リムおよび下部リムの所定の位置に取り付けて測定する手法のものでは、以下のような問題点がある。
【0013】
上下アンバランス量によって回転するタイヤはアンバランス量が存在すると、
図3(c)中記号D,E矢印の方向に遠心力が作用するので、
図4においてタイヤ2の回転軸8(シャフト)は上側のロードセル7aと下側のロードセル7bの着力点間の中心付近を中心にして紙面を垂直に貫く方向に、上側のロードセル7aと下側のロードセル7bとが逆位相の関係をもって変位運動を繰り返す。つまり、上側のロードセル7aが紙面の表側に向けて変位したときは下側のロードセル7bは紙面の裏側に向けて変位している。
下側のロードセル7bの着力点から遠心力の作用点までの距離をa、上側のロードセル7aの着力点までの距離をb1とし、遠心力Fによってタイヤ2の回転軸8がα度だけ傾斜したとすると、上側のロードセル7aに作用する力はF・(b1/a)・cosαの関係にあり遠心力Fの大きさに応じて比例関係に変化しない。下側のロードセル7bに作用する力についても同様である。
【0014】
また、回転するタイヤ2に発生する遠心力Fの大きさに応じて回転軸8は傾斜するが、傾斜の大きさに応じてタイヤ2を装着した回転軸8にはタイヤ2の荷重によって曲げが生じる。そして、傾斜の大きさに応じて曲げ量は変化する。この遠心力Fの大きさに応じた曲げ量の変化はロードセル7a,7bよって測定する力に誤差を与える。すなわち、遠心力F、上下のアンバランス量、上下のロードセル7a,7bの出力、上下のロードセル7a,7b間の着力点の距離および上下のロードセル7a,7bの着力点とタイヤ2の上下の修正面との距離を含むモーメントの線形の釣り合い式が成立しなくなる。
【0015】
また、回転軸8から与えられる力をロードセル7a,7bの荷重信号として測定するが、この荷重信号には回転軸8が回転することによって引き起こされるロードセル7a,7bのバネとロードセル7a,7bが受けるダイナミックバランサ本体、回転軸8、上下リム29,12、被測定タイヤ2などの質量から成る振動系の固有振動など、種々の周波数の振動ノイズ成分が含まれるので、特にこれらの中でも成分の大きい固有振動に対するフィルタ処理、平均値処理が行われる。
しかし、固有振動周期に対して、タイヤ2のアンバランス信号としてタイヤ2の回転周期に同期して現れる振動信号の周期とは値が近いので、測定対象であるタイヤ2のアンバランス信号を減衰させずに固有振動ノイズのみを大きく減衰させることは困難であり、ロードセル7a,7bの出力信号に固有振動成分が混入してばらつく要因をなしている。
【0016】
このような種々の誤差要因の存在する測定条件下で、一つの設定条件に基づいて測定した値によって係数を決めようとしても、ロードセル7a,7bの出力信号の測定値によって被測定タイヤ2のアンバランス量を精確に求めるための係数を決定することは困難である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明によるタイヤ用ダイナミックバランサおよびその校正方法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1には、本発明の一実施形態に係るタイヤ用ダイナミックバランサの斜視図が示されている。また、
図2には、本実施形態のタイヤ用ダイナミックバランサの中央縦断面図が示されている。
【0024】
本実施形態のタイヤ用ダイナミックバランサ(以下、単に「ダイナミックバランサ」という。)1は、片持ち式の二面不釣り合い試験機であり、
図1に示されるように、当該ダイナミックバランサ1にタイヤ2を装着して回転させ、この装着したタイヤ2の上面側のアンバランスと下面側のアンバランスとを測定することができる装置である。
また、この測定により得られたタイヤ2の上面側および下面側のアンバランス、つまり重心の偏心に基づく偏心力を求めることができる。
そして、この偏心力に基づいて、必要に応じてタイヤ2の補正等をすることができ、これによってタイヤ2のダイナミックバランスを許容範囲内に収めることができる。
なお、タイヤ2の偏心力とは、タイヤ2の上面側の重心の偏心および下面側の重心の偏心に基づく各遠心力とその遠心力の方向(タイヤの回転位置)とから決定される力をいう。この偏心力が求められると、タイヤ2の上面側の重心の偏心および下面側の重心の偏心に基づく各遠心力と、各重心がタイヤ2の所定の基準位置から各重心位置までの角度を求めることができる。
【0025】
このダイナミックバランサ1は、地面に対して垂直に取り付けられている。つまり、このダイナミックバランサ1の本体部分を構成する直方体形状のダイナミックバランサ本体3は、互いに平行な2本のトーションバー4a,4bを介して架台5に吊り下げられるとともに、これら2本のトーションバー4a,4bを通る平面に平行で、かつそれら2本のトーションバー4a,4bに直交する方向に配置された4本のトーションバー6a,6b;6a,6bを介して架台5に結合されている。
これによって、ダイナミックバランサ本体3は、地面に対して垂直方向に配置された2本のトーションバー4a,4bと地面に対して平行な4本のトーションバー6a,6b;6a,6bに対して直交する方向(
図1中記号A矢印方向)にのみ移動可能に設けられている。
【0026】
ダイナミックバランサ本体3の側面の上部と下部の各位置には、合計2台の荷重センサ(ロードセル)7a,7bが設けられ、各ロードセル7a,7bは、架台5と結合されている。これによって、これらロードセル7a,7bは、ダイナミックバランサ本体3に作用する
図1中記号A矢印方向の力を検出することができる。
【0027】
ダイナミックバランサ本体3の下面から回転軸8が下方に突出されており、この回転軸8には、ロータリエンコーダ9、プーリ10およびロータリジョイント11がそれぞれ設けられている。
ロータリエンコーダ9は、回転軸8の回転位置を測定するものであり、回転軸8の回転位置を測定することにより、この回転軸8と結合されている下部リム12(
図2参照)の回転位置を測定することができる。
プーリ10は、例えばタイミングベルト13等の駆動ベルトを介して別のプーリ14と接続されており、このプーリ14は、サーボモータ15の回転軸に装着されている。つまり、回転軸8は、サーボモータ15によって回転駆動される構成である。
なお、タイミングベルト13の張力が4本のトーションバー6a,6b;6a,6bの引張方向に働くようにサーボモータ15が配置されているので、ロードセル7a,7bにはタイミングベルト13の張力が働かないようになっている。
ロータリジョイント11については後述する。
【0028】
次に、ダイナミックバランサ1の内部構造について、主に
図2を参照して説明する。
ダイナミックバランサ本体3には、中央に上下方向の貫通孔21が穿設されており、この貫通孔21の上側開口縁と下側開口縁には、それぞれ軸受22a,22bが装着されている。これら2つの軸受22a,22bの内側には、円筒状の回転軸8が嵌合されており、この回転軸8は、軸受22a,22bを介して回動自在にダイナミックバランサ本体3に支持されている。
この回転軸8の下端の開口には、ロータリジョイント11が装着されており、このロータリジョイント11には、エアホース23を介して2つの電磁弁24,25が直列に接続されている。
2つの電磁弁24,25のうち、空気流れの上流側に配置される電磁弁25には、高圧(約5kgf/cm
2)の圧力タンク(図示省略)と低圧(約5kgf/cm
2)の圧力タンク(図示省略)が連結されており、この電磁弁25は、空気流れの下流側に配置される電磁弁24に高圧の圧力タンクまたは低圧の圧力タンクを連通させる切換弁として機能する。
電磁弁24は、高圧または低圧の圧力タンクから供給される圧力流体(本例では圧力空気)を回転軸8側に供給する供給位置と、回転軸8側の圧力空気を大気に放出する排気位置とに切り換える切換弁として機能する。
なお、高圧の圧力空気は、このダイナミックバランサ1を校正するときに使用し、低圧の圧力空気は、このダイナミックバランサ1によりタイヤ2のダイナミックバランスを測定するときに使用する。
【0029】
回転軸8の上面には、円筒状のシリンダ本体26を介して下部リム12が設けられており、このシリンダ本体26と回転軸8が下部リム軸を構成している。
【0030】
シリンダ本体26内には、ピストン(上部リム軸)27が挿入されており、このピストン27の下部の外周には、複数の係合溝28,28,・・・が設けられている。これら複数の係合溝28は、ピストン27の外周に沿って環状に刻設されており、ピンスト27の軸方向に沿って互いに隣接して配置されている。
このピストン27の上端面には、上部リム29が設けられている。
また、ピストン27には、そのピストン27の下面に開口する開口部30とピストン
27の上部の外周面に開口する開口部31,31とを連通する連通孔32が穿設されている。
開口部31,31には、ワンタッチ式の弁装置33,33が設けられている。この弁装置33は、例えば先端の突出部を指で押すことにより、開口部31を開放したり、閉塞したりすることができる構造のものである。ここでは、弁装置33としてワンタッチで開口部31を開閉することができる構造のものを採用したが、弁体を回転させることにより開口部31を開閉する形式のものを採用してもよい。
【0031】
上部リム29および下部リム12は、いずれも円環状の板状体であり、双方の外周部の互いに向き合う各面には、直径の異なる3つの段部34が形成されている。これら3つの各段部34は、タイヤ2を上下のリム29,12の間に装着する際に、タイヤ2の内縁を係合させるためのものである。つまり、これら直径の異なる3組の段部34を設けることにより、これら各組の段部34の直径と対応する3種類の内径のタイヤ2をこの上下のリム29,12の間に装着することができる。
【0032】
シリンダ本体26の外周には、互いに対向配置される一対の結合部35,35が装着されている。これら一対の結合部35,35は、同一のものであり、溝カム36と、溝カム36に嵌合するカムフォロア37と、カムフォロア37に連結されるストッパ38とにより構成されている。
ストッパ38は、先端が係合溝28に沿う円弧状に形成してある板状体であり、シリンダ本体26の周壁に穿設された矩形の挿通孔に挿通されている。
そして、これら2つの溝カム36をシリンダの筒方向(
図2の上下方向)に沿って摺動させたときに、ストッパ38の先端部が係合溝28から外れた状態の非係合位置(図示省略)と、ストッパ38の先端部が係合溝28に係合した状態の係合位置(
図2に示される状態)とにストッパ38を移動させることができるようになっている。
なお、溝カム36を上下方向に駆動する駆動部は図示されていないが、例えばエアシリンダを利用することができる。
【0033】
このダイナミックバランサ1においては、種々の質量の分銅39を上部リム29の所定位置に装着することができるとともに、種々の質量の分銅40を下部リム12の所定位置に装着することができるようになっている。これにより、校正モードにおいて、異なる質量の分銅39,40を上下のリム29,12の所定の位置に取り付けて後述する係数を求めることができる。
また、下部リム12を手で回して下部リム12の予め定めた基準位置を上部リム29の予め定めた基準位置に一致させ、この状態でストッパ38を係合溝28に係合させて、電磁弁24を切り換えて支持軸8の内孔41及びシリンダ本体26内に校正用の高圧の圧力空気を供給することができる。シリンダ本体26内の圧力空気は、ピストン27を
図2の上方に押し上げ、これによってストッパ38の下面と係合溝28の上面とが圧接し、その結果、シリンダ本体26とピストン27とをストッパ38を介して強固に結合させることができる。
【0034】
次に、ダイナミックバランサ1の計測原理・校正手順について説明する。
【0035】
<ダイナミックアンバランスの定義説明>
図3(a)に示されるように、タイヤ2にアンバランスモーメントが図中記号B矢印方向に発生した場合、車に与える振動となる。
図3(b)に示されるように、タイヤ2の中心から半径方向に同じ距離Rに同じアンバランス量が上面と下面にある場合、スタティックバランスは零となる。
図3(b)の状態で、同図(c)のようにタイヤ2を回転させた場合、図中記号C矢印方向にモーメントが発生する。このモーメントをカップルアンバランスという。
ダイナミックバランスとは、スタティックアンバランスとカップルアンバランスとを含むものである。
【0036】
<測定原理の説明>
図4に示されるように、タイヤ2全体が持つアンバランスを下修正面(Z
1)および上修正面(Z
2)での2つのアンバランスとして代表して表す。
【0037】
ここで、
図4中で使用される記号を以下のように定義する。
U
L:下修正面での半径rの位置にあるアンバランス量(下アンバランス量)。
θ
L:U
Lのアンバランス角度(下アンバランス角度)。
U
U:上修正面での半径rの位置にあるアンバランス量(上アンバランス量)。
θ
U:U
Uのアンバランス角度(上アンバランス角度)。
P
L:U
Lが回転することにより、下側のロードセルで検出される出力。
P
U:U
Uが回転することにより、上側のロードセルで検出される出力。
Z
1:下側のロードセルの着力点とタイヤの下修正面との距離
Z
2:下側のロードセルの着力点とタイヤの上修正面との距離
L:上側のロードセルの着力点と下側のロードセルの着力点との距離
なお、
図4(b)中における分銅取り付け位置について、回転軸8の回転中心O点を定め、回転中心Oを原点とし、ロードセル7a,7bによる荷重検出位置を基準として定めたX−Y座標上でX軸と所定の角度θ
Lとθ
Uをなし、O点を通る直線上でO点からrの距離にある下部リム12、上部リム29上に分銅取り付け位置を定める。
【0038】
回転角速度ωで回転しているとすると、上下のロードセル7a,7bに加わる力には、下記(1)(2)式のような関係がある。
P
L+P
U=rω
2(U
L+U
U) ・・・(1)
LP
U=rω
2(Z
1U
L+Z
2U
U) ・・・(2)
軸受22a,22b(
図2参照)が殆ど振動せず不釣り合いの力がそのまま基礎に伝わるとすると、上記(1)(2)式より、下記(3)(4)式が成り立つ。
P
L=α
1U
L+α
2U
U ・・・(3)
P
U=β
1U
L+β
2U
U ・・・(4)
ここで、
α
1=rω
2(1−Z
1/L)
α
2=rω
2(1−Z
2/L)
β
1=rω
2Z
1/L
β
2=rω
2Z
2/L
よって、ロードセル7a,7bに加わる不釣り合い力P
U,P
Lを検出することにより、アンバランス量U
L,U
Uを求めることができる。上記(3)(4)式より、U
U,U
Lは、下記(5)(6)式で表される。
U
L=γ
1P
L+γ
2P
U ・・・(5)
U
U=δ
1P
L+δ
2P
U ・・・(6)
ここで、
γ
1=Z
2/rω
2(Z
2−Z
1)
γ
2=−(L−Z
2)/rω
2(Z
2−Z
1)
δ
1=−Z
1/rω
2(Z
2−Z
1)
δ
2=(L−Z
1)/rω
2(Z
2−Z
1)
【0039】
<計装部の説明>
ところで、アンバランス量およびアンバランス角を求めるためには、ある決まった角度から回転を開始したときの時系列でのロードセル7a,7bの出力が必要となる。
そこで、本実施形態では、
図5(a)に示されるように、ロードセル7a,7bからの出力信号およびロータリエンコーダ9からの出力信号をそれぞれDLC基板からなる測定回路50に取り込み、
図6のフローチャートに示されるアルゴリズムに基づいて作成された所定プログラムに従って所定の測定処理を実行するようにされている。
ここで、測定回路50を構成するDLC基板とは、図示による詳細な説明は省略するが、アナログ荷重信号増幅回路や、A/D変換回路、シリアル通信回路を含むI/O回路、CPU回路、メモリ回路、ロードセル励磁用の電源回路、デジタル・アナログ回路駆動用の電源回路などを内蔵する基板である。
ロードセル7a,7bでのサンプリングは、ロータリエンコーダ9からのZ相出力を開始トリガとして使用し、1°毎のパルス出力をサンプリングクロックとして使用する。したがって、サンプリングした波形は、
図5(b)に示されるように、360点周期の正弦波となっている。この波形をベクトル化することにより、アンバランスベクトルを検出している。
【0040】
<フローチャートの説明>
ここで、
図6のフローチャートに示される処理内容について説明する。なお、
図6中記号「S」はステップを表す。
【0041】
まず、ロードセル7a,7bからのアナログ荷重信号を上記の手法にてサンプリングしてデジタル荷重信号に変換し(S1)、このデジタル荷重信号に対して平均値処理(S2)、デジタルフィルタ処理(S3)およびベクトル化処理(S4)をそれぞれ施す。
次いで、校正モードおよび稼働モードのいずれのモードが選択されているかを判断する(S5)。
【0042】
ステップS5において、校正モードが選択されている判断したときには、零ベクトルを取得するとともに、テスト用タイヤのアンバランス量を取得する(S6)。
次いで、種々の質量の分銅を上下のリム29,12の種々の位置に取り付けてテストを実施する(S7)。つまり、i(2以上の整数)通りのアンバランスベクトルを与えてテストする。
次いで、零ベクトルをキャンセルするとともに、テスト用タイヤのアンバランス量をキャンセルする(S8)。
そして、i回計測を実施したら(S9でYes)、後述するγ
1,γ
2,δ
1,δ
2の各係数を取得する(S10)。
【0043】
一方、ステップS5において、稼働モードが選択されている判断したときには、零ベクトルをキャンセル(S11)した後に、アンバランスベクトルを算出する(S12)。
【0044】
次に、ステップS6における零ベクトル取得の手法、ステップS8,S11における零ベクトルキャンセルの手法、ステップS10における係数取得の手法、ステップS12のアンバランスベクトル算出の手法およびステップS7におけるテストについてのそれぞれの具体的な内容について、以下に順を追って説明することとする。
【0045】
<零ベクトル取得の説明>
リム12,29および回転軸8を含む回転系は、ある一定のアンバランス量およびアンバランス角度を持つ。実際にタイヤ2または分銅のアンバランスベクトルを計測する際は、それらを装着してアンバランスベクトルから初期アンバランスベクトル(Z)を差し引く必要がある。
【0046】
リム12,29にタイヤ2を取り付け、原点に対してタイヤ2を90°,180°,270°,0°の順に4回ずらして回転させ測定する。それぞれの測定結果(P´
90,P´
180,P´
270,P´
0)には、タイヤ2の持つアンバランスによりロードセル7a,7bで検出されるアンバランスベクトル(P
90,P
180,P
270,P
0)と回転系の持つ初期アンバランスベクトルZとの合成ベクトル(P
90+Z,P
180+Z,P
270+Z,P
0+Z)が測定されている。その様子が
図7に示されている。
タイヤ2の持つアンバランスによりロードセル7a,7bで検出されるアンバランスベクトルは、90°毎ずらして測定したことにより、下記(7)式で示されるように、全て加算すると零となる。
P
90+P
180+P
270+P
0=0 ・・・(7)
よって、下記(8)式で示されるように、4回の測定結果のアンバランスベクトルを加算して4で割ることにより、回転系の持つ初期アンバランスベクトルZを求めることができる。
Z=(P´
90+P´
180+P´
270+P´
0)/4 ・・・(8)
【0047】
この方法により、上側のロードセル7aの出力信号から求めた初期アンバランスベクトルを上初期アンバランスベクトル(Z
U)、下側のロードセル7bの出力信号から求めた初期アンバランスベクトルを下初期アンバランスベクトル(Z
L)とする。
すなわち、上側のロードセル7aの出力信号から求めたアンバランスベクトルをP´
U90+P´
U180+P´
U270+P´
U0、下側のロードセル7bの出力信号から求めたアンバランスベクトルをP´
L90+P´
L180+P´
L270+P´
L0とすると、Z
U,Z
Lは、下記(9)(10)のように表すことができる。
Z
U=(P´
U90+P´
U180+P´
U270+P´
U0)/4
・・・(9)
Z
L=(P´
L90+P´
L180+P´
L270+P´
L0)/4
・・・(10)
【0048】
<零ベクトルキャンセルの説明>
毎回のタイヤ2または分銅を取り付けての測定結果(P´
U,P´
L)には、零ベクトル取得で求めた上下初期アンバランスベクトル(Z
U,Z
L)と、タイヤ2または分銅39,40の持つアンバランスによりロードセル7a,7bで検出されるアンバランスベクトル(P
U,P
L)の合成ベクトルが測定されているため、上下初期アンバランスベクトル分を差し引く必要がある。下記(11)(12)式により、P
U,P
Lを求めることができる。
P
U=P´
U−Z
U ・・・(11)
P
L=P´
L−Z
L ・・・(12)
【0049】
<係数取得(1)の説明>
前述した測定原理の説明での(5)式および(6)式はそれぞれγ
1,γ
2およびδ
1,δ
2に対する2元1次方程式であるから、U
LまたはU
Uとして2種類のアンバランスベクトルを付加したときのP
UおよびP
Lを測定することによってγ
1,γ
2およびδ
1,δ
2の各係数を求めることができる。
【0050】
U
L,U
U,P
L,P
Uは以下の手順で求められる。
図8(a)に示されるように、上部リム29に質量W
Uの分銅39を位置ベクトルr
Uの位置に取り付けて回転させ、零キャンセルした後の下側のロードセル7bの測定値P´
ULおよび上側のロードセル7aの測定値P´
UUを得る。
図8(b)に示されるように、下部リム12に質量W
Lの分銅40を位置ベクトルr
Lの位置に取り付けて回転させ、零キャンセルした後の下側のロードセル7bの測定値P´
LLおよび上側のロードセル7aの測定値P´
LUを得る。
ロードセル7a,7bの測定値P´
L,P´
Uには、タイヤ2の持つアンバランスによる検出ベクトルT
L,T
Uが含まれているため、これらを差し引く必要がある。このT
L,T
Uとしては、前述の零ベクトル取得の説明での0°の測定結果P´
L0およびZ
LからP
L0を、P´
U0およびZ
UからP
U0を求め、T
L=P
L0,T
U=P
U0として使用する。
回転系の持つ初期アンバランスベクトルZ
L,Z
Uおよびタイヤ2を使用して校正時のタイヤの持つアンバランスによる検出ベクトルT
L,T
Uを差し引いた結果、取り付けた分銅39,40による検出ベクトルP
L,P
Uのみが残る。すなわち、下記(13)(14)式が成り立つ。
P
L=P´
L−Z
L−T
L ・・・(13)
P
U=P´
U−Z
U−T
U ・・・(14)
【0051】
<係数取得(2)の説明>
図8(a)に示される状態の場合、上側のロードセル7aで検出される分銅39によるアンバランスベクトルをP
UU、下側のロードセル7bで検出される分銅39によるアンバランスベクトルをP
ULとすると、下記(15)(16)式が得られる。
γ
1×P
UL+γ
2×P
UU=vec{0} ・・・(15)
δ
1×P
UL+δ
2×P
UU=vec{W
U} ・・・(16)
【0052】
図8(b)に示される状態の場合、上側のロードセル7aで検出される分銅40によるアンバランスベクトルをP
LU、下側のロードセル7bで検出される分銅40によるアンバランスベクトルをP
LLとすると、下記(17)(18)式が得られる。
γ
1×P
LL+γ
2×P
LU=vec{W
L} ・・・(17)
δ
1×P
LL+δ
2×P
LU=vec{0} ・・・(18)
【0053】
ここで、(15)(18)式中のvec{0}は各成分が全て0となるベクトル(零ベクトル)を表す。
また、
P
UU=P´
UU−Z
U−T
U
P
UL=P´
UL−Z
L−T
L
である。
また、
P
LU=P´
LU−Z
U−T
U
P
LL=P´
LL−Z
L−T
L
である。
また、(16)(17)式中のvec{W
U},vec{W
L}は、大きさがW
UまたはW
Lで偏角がリム0°に対する分銅を取り付けた角度のベクトルである。すなわち、
vec{W
U}=W
U・r
U
vec{W
L}=W
L・r
L
と表される。
【0054】
上記(15)(17)式より、γ
1,γ
2は下記(19)(20)式から求められる。
γ
1=P
UU×W
L・r
L/(P
UU×P
LL−P
UL×P
LU)
・・・(19)
γ
2=−P
UL×W
L・r
L/(P
UU×P
LL−P
UL×P
LU)
・・・(20)
上記(16)(18)式より、δ
1,δ
2は下記(21)(22)式から求められる。
δ
1=−P
LU×W
U・r
U/(P
UU×P
LL−P
UL×P
LU)
・・・(21)
δ
2=P
LL×W
U・r
U/(P
UU×P
LL−P
UL×P
LU)
・・・(22)
【0055】
<アンバランスベクトル算出の説明>
零ベクトル取得で初期アンバランスベクトル(Z
U,Z
L)が決定し、係数取得でロードセル7a,7bの検出ベクトル(P´
U,P´
L)から上下修正面でのアンバランスベクトル(U
U,U
L)への変換係数(γ
1,γ
2,δ
1,δ
2)が決定したため、リム12,29に取り付けたタイヤ2または分銅39,40の上下修正面で表したアンバランスベクトルを測定することが可能となる。
上下修正面で表した上下アンバランスベクトルU
U,U
Lは、下記(23)(24)式から求めることができる。
U
L=γ
1×(P´
L−Z
L)+γ
2×(P´
U−Z
U) ・・・(23)
U
U=δ
1×(P´
L−Z
L)+δ
2×(P´
U−Z
U) ・・・(24)
【0056】
実際に出力するデータは上下アンバランス量および上下アンバランス角であるから、上記のアンバランスベクトルU
U,U
Lからそれらを求める必要がある。
アンバランス量はアンバランスベクトルの大きさ、アンバランス角はアンバランスベクトルの偏角として定義されるので、上下アンバランスベクトルU
U,U
Lの各成分を、下記のように定義する。
U
U=(U
Ux,U
Uy)
U
L=(U
Lx,U
Ly)
すると、アンバランス量は下記(25)(26)式によって求められ、アンバランス角は下記(27)(28)式から求められる。
|U
U|=(U
Ux
2+U
Uy
2)
1/2 ・・・(25)
|U
L|=(U
Lx
2+U
Ly
2)
1/2 ・・・(26)
∠U
U=tan
−1(U
Uy/U
Ux) ・・・(27)
∠U
L=tan
−1(U
Ly/U
Lx) ・・・(28)
【0057】
従来の校正方法における係数算出法は、分銅の大きさが所定のひとつの値であるW
L,W
Uを使用し、ひとつの位置に取り付けることによって予め設定した1個のアンバランスベクトルに対して得られた上側のロードセル7aの出力信号による測定値と下側のロードセル7bの出力信号による測定値との間で求めた係数では、前述したような問題点があり、被測定タイヤのアンバランスベクトルが上記の予め設定したアンバランスベクトル量に近い場合を除いて精確に測定することができない。
【0058】
<係数取得に係るテスト内容の説明>
そこで、本実施形態では、校正モードにおいて、上部リム29および下部リム12にそれぞれ複数個のアンバランスベクトルを生じるように分銅39,40を取り付けてテストを行い係数を求める。
【0059】
例えば、次に述べるように上部リム29および下部リム12におけるアンバランス量が種々の値をとるように種々の質量を持つ分銅39,40を上下のリム29,12の所定位置に装着してテストを行う。
【0060】
種々の質量の分銅39,40によるアンバランス量を設定したテスト運動に対応して、分銅39,40の種類毎に上下のロードセル7a,7bの出力信号を測定する手順を用いることによって、上下のロードセル7a,7bの測定値と上下のロードセル7a,7bの出力計算値との間の誤差が最小になるように、最小2乗法によって上記(19)〜(22)式の説明で述べた係数γ
1,γ
2,δ
1,δ
2を決定する。
【0061】
下リム取り付け用質量、上リム取り付け用質量として用いて、
図8(a)(b)に示されるテストの実施について、
所定のアンバランス角度、例えば
図5(b)におけるθ=0°である上下のリム29,12の位置に、
図8(a)に示される状態の場合は、質量の異なるW
U〈i〉の分銅を上部リム29の位置ベクトルr
Uに装着して回転させ、下側のロードセル7bの出力測定値P´
UL〈i〉と上側のロードセル7aの出力測定値P´
UU〈i〉を測定し、
図8(b)に示される状態の場合は、質量の異なるW
L〈i〉の分銅を下部リム12の位置ベクトルr
Lに装着して回転させ、下側のロードセル7bの出力測定値P´
LL〈i〉と上側のロードセル7aの出力測定値P´
LU〈i〉を測定し、それぞれ、係数取得(1)(2)の説明で述べたように、零ベクトルと装着したタイヤ2のアンバランスベクトル量を差し引いて、下記(31)〜(34)式を初期値処理済み測定値とする。
P
UL〈i〉=P´
UL〈i〉−Z
L−T
L ・・・(31)
P
UU〈i〉=P´
UU〈i〉−Z
U−T
U ・・・(32)
P
LL〈i〉=P´
LL〈i〉−Z
L−T
L ・・・(33)
P
LU〈i〉=P´
LU〈i〉−Z
U−T
U ・・・(34)
【0062】
測定原理の説明における(5)(6)式に対応させ、種々の異なる上部リム用質量W
U〈i〉=W
U〈1〉,W
U〈2〉,・・・,W
U〈i〉および下部リム用質量W
L〈i〉=W
L〈1〉,W
L〈2〉,・・・,W
L〈i〉の分銅に応じてテストする。
テスト結果の測定値と実際値の誤差は、
i=1のとき
R
1〈1〉=γ
1×P
UL〈1〉+γ
2×P
UU〈1〉−0
R
2〈1〉=γ
1×P
LL〈1〉+γ
2×P
LU〈1〉−W
L〈1〉
Q
1〈1〉=δ
1×P
UL〈1〉+δ
2×P
UU〈1〉−W
U〈1〉
Q
2〈1〉=δ
1×P
LL〈1〉+δ
2×P
LU〈1〉−0
i=2のとき
R
2〈2〉=γ
1×P
UL〈2〉+γ
2×P
UU〈2〉−0
R
2〈2〉=γ
1×P
LL〈2〉+γ
2×P
LU〈2〉−W
L〈2〉
Q
1〈2〉=δ
1×P
UL〈2〉+δ
2×P
UU〈2〉−W
U〈2〉
Q
2〈2〉=δ
1×P
LL〈2〉+δ
2×P
LU〈2〉−0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
i=nのとき
R
1〈n〉=γ
1×P
UL〈n〉+γ
2×P
UU〈n〉−0
R
2〈n〉=γ
1×P
LL〈n〉+γ
2×P
LU〈n〉−W
L〈n〉
Q
1〈n〉=δ
1×P
UL〈n〉+δ
2×P
UU〈n〉−W
U〈n〉
Q
2〈n〉=δ
1×P
LL〈n〉+δ
2×P
LU〈n〉−0
と発生するので、
R={R
1〈1〉}
2+{R
2〈1〉}
2+・・・+{R
1〈n〉}
2+{R
2〈n〉}
2 ・・・(35)
Q={Q
1〈1〉}
2+{Q
2〈1〉}
2+・・・+{Q
1〈n〉}
2+{Q
2〈n〉}
2 ・・・(36)
と置いて、誤差の2乗和であるR,Qがそれぞれ最小になる係数を定める。
そのためには、
γ
1,γ
2については上記(35)式にて
∂R/∂γ
1=0,∂R/∂γ
2=0が同時に成立するγ
1,γ
2を求める。
δ
1,δ
2については上記(36)式にて
∂Q/∂δ
1=0,∂Q/∂δ
2=0が同時に成立するδ
1,δ
2
を求める。
【0063】
上記においては、種々の異なる上部リム用質量W
U〈i〉=W
U〈1〉,W
U〈2〉,・・・,W
U〈i〉および下リム用質量W
L〈i〉=W
L〈1〉,W
L〈2〉,・・・,W
L〈i〉の分銅を、係数取得(1)の説明で用いた
図8(a)(b)に示されるc点、d点の位置に設置するとき、設定したアンバランスベクトル量をi=nの場合の質量についてそれぞれW
U〈n〉,W
L〈n〉としている。
なお、分銅の質量は段階的に等間隔に異ならせ、段階的に等間隔に異なるベクトルを与えることが好ましい。
【0064】
別の方法として、上部リム29および下部リム12に、異なる複数(n個)の分銅取り付け位置を設定し、それぞれの位置に同じ質量の分銅39,40を取り付けることによって種々のアンバランスベクトル量W
U〈i〉,W
L〈i〉をi=1,2,・・・,nとして与え上記(35)(36)式によって係数を決定してもよい。
【0065】
さらに、別の方法として、分銅39,40の質量の大きさを、分銅39,40を設置する位置と共に変更することによってi=1,2,・・・,nに応じて数個のアンバランスベクトル量W
U〈n〉,W
L〈n〉を設定し、上記(35)(36)式によって係数を決定してもよい。
【0066】
以上によって求めた係数γ
1,γ
2,δ
1,δ
2を使用して上下のロードセル7a,7bの出力測定値によって上アンバランス量と下アンバランス量を算出すれば、被測定タイヤ2が種々の上下アンバランスベクトルを持っていても、また振動ノイズが上下のロードセル7a,7bの出力測定値に含まれていても、全測定データのそれぞれについての測定値の、真の値に対する誤差のばらつき量が最小になるように測定値を求めることができる。
【0067】
上記実施形態において、分銅質量は種々の値のものを使用したが上下のリム29,12上の分銅取り付け位置は同じであるとしている。
しかし、タイヤ2を上部リム29および下部リム12に取り付けた状態で回転軸に曲がりがあると、精確に回転中心位置を定めることは困難であるので、回転中心O´点を見定めて上下のリム29,12上に分銅取り付け位置に関する距離rを設定したとしても、設定した位置が真の回転中心であるOからの距離がrであるとは限らない。
【0068】
例えば、下部リム12の取り付け位置であれば、仮に回転中心と定めた位置O´点を通ってX軸座標と所定の角度θ
1Lをなす直線上において、O´点に対称でそのO´点からそれぞれrの距離にある2箇所に分銅取り付け位置を定め、片方の取り付け位置が真の回転中心O点からの距離がrに対して+誤差を有する場合に他方の取り付け位置は−誤差を有するようにすることで誤差が一つの方向に偏らないようにし、位置ベクトルとしてそれぞれr
1L,r
1´Lを設定するようにする。
この場合、下リム27に分銅の質量W
L〈i〉のものをそれぞれ上記の2つの位置に取り付けたときのベクトル量はそれぞれW
1L〈i〉,W
1´L〈i〉と算出される。
【0069】
さらに、分銅取り付け位置を増やすために、O´点を通りX軸となる角度がθ
1Lとは別の所定の角度θ
2Lをなす上記と別の直線を引き、この直線上においてO´点に対称でそのO´点からそれぞれrの距離にある2箇所に位置ベクトルr
2L,r
2´Lを設定してもよい。
上部リム29についても同様である。
【0070】
以上、異なる質量の分銅39,40を上下のリム29,12の所定の位置に取り付けて係数を求める方法、および上下のリム29,12上で分銅39,40を取り付ける位置を種々に変更して係数を求める方法について述べたが両方を同時に採用し、質量も取り付け位置も種々に変更して係数を求めるようにしてもよい。
要するに誤差の発生要因を考慮し、校正テストモードにおいて、異なる質量の分銅39,40を上下のリム29,12上の同じ位置に取り付ける方法、同じ質量の分銅39,40を上下のリム29,12上の異なる位置に取り付ける方法および異なる質量の分銅39,40を上下のリム29,12上の異なる位置に取り付ける方法など、異なる複数種類のアンバランスベクトル量を与える方法のいずれかを採用して係数を求め、求めた係数を稼働運転時に使用したとき、測定結果と真の値の偏差のバラツキが最も小さくなるようにする。
【0071】
以上、本発明のタイヤ用ダイナミックバランサおよびその校正方法について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。