特許第5818922号(P5818922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5818922
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04R 7/04 20060101AFI20151029BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20151029BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20151029BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20151029BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   H04R7/04
   H04R17/00
   H04R1/00 317
   H04R1/02 102Z
   H04M1/02 C
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-16047(P2014-16047)
(22)【出願日】2014年1月30日
(62)【分割の表示】特願2012-101166(P2012-101166)の分割
【原出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-131300(P2014-131300A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2014年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】名畑 俊寿
(72)【発明者】
【氏名】水田 聡
(72)【発明者】
【氏名】宮野 友彰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 清和
(72)【発明者】
【氏名】木原 章朗
(72)【発明者】
【氏名】風間 俊
(72)【発明者】
【氏名】片山 泰宏
【審査官】 渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−135858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/00
H04M 1/02− 1/23
H04M 1/24− 1/82
H04M 99/00
H04R 1/00− 1/08
H04R 1/12− 1/14
H04R 1/42− 1/46
H04R 17/00−17/02
H04R 17/10
H04R 3/00− 3/14
H04R 7/00− 7/26
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルと、
パネルを保持する筺体と、
圧電素子と、
振動調節部材と、を備え、
前記圧電素子の長辺方向において該圧電素子の直上がその周囲と比較して最も高く隆起するように、前記圧電素子によって前記パネルが曲げられ、当該パネルに接触している人体の接触部位が振動して音を伝え、前記振動調節部材により共振周波数を変化させる電子機器。
【請求項2】
前記パネルはガラスで構成される請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記振動調節部材としての表示部をさらに備える請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧電素子に所定の電気信号(音声信号)を印加することでパネルを振動させ、当該パネルの振動を人体に伝達させることにより気導音と振動音とを利用者に伝える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、携帯電話などの電子機器として、気導音と骨導音とを利用者に伝えるものが記載されている。また、特許文献1には、気導音とは、物体の振動に起因する空気の振動が外耳道を通って鼓膜に伝わり、鼓膜が振動することによって利用者の聴覚神経に伝わる音であることが記載されている。また、特許文献1には、骨導音とは、振動する物体に接触する利用者の体の一部(例えば外耳の軟骨)を介して利用者の聴覚神経に伝わる音であることが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された電話機では、圧電バイモルフ及び可撓性物質からなる短形板状の振動体が、筐体の外面に弾性部材を介して取り付けられる旨が記載されている。また、特許文献1には、この振動体の圧電バイモルフに電圧が印加されると、圧電材料が長手方向に伸縮することにより振動体が屈曲振動し、利用者が耳介に振動体を接触させると、気導音と骨導音とが利用者に伝えられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−348193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電子機器は、携帯電話などの筐体の外面に振動体が取り付けられる。そのため、筺体に取り付けられるパネルを振動させた場合の課題については何ら検討されていない。
【0006】
本発明の目的は、筺体に取り付けられるパネルを振動させるタイプの電子機器にも適切に使用できる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子機器は、パネルと、パネルを保持する筺体と、圧電素子と、振動調節部材と、を備え、圧電素子の長辺方向において圧電素子の直上がその周囲と比較して最も高く隆起するように、圧電素子によってパネルが曲げられ、当該パネルに接触している人体の接触部位が振動して音を伝え、振動調節部材により共振周波数を変化させる。
【0008】
好適には、前記パネルはガラスで構成される。
【0009】
好適には、振動調節部材としての表示部をさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、筺体に取り付けられるパネルを振動させるタイプの電子機器を適切に使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る電子機器の機能ブロックを示す図である。
図2】パネルの好適な形状を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る電子機器の実装構造を示す図である。
図4】音響装置の周波数特性を示す図である。
図5】音響装置のパネルの振動の一例を示す図である。
図6】音響装置の振動の一例を示す図である。
図7】第2の実施形態に係る電子機器の実装構造を示す図である。
図8】パネルと筐体との接合例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降、諸図面を参照しながら、本発明の実施態様を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器1の機能ブロックを示す図である。電子機器1は、例えば携帯電話(スマートフォン)であって、音響装置100(パネル10、表示部20、及び圧電素子30を含む)と、入力部40と、通信部60と、制御部50と、を備える。
【0013】
パネル10は、接触を検出するタッチパネル、または表示部20を保護するカバーパネル等である。パネル10は、例えばガラス、またはアクリル等の合成樹脂により形成される。パネル10の形状は板状であるとよい。パネル10は、平板であってもよいし、表面が滑らかに傾斜する曲面パネルであってもよい。パネル10は、タッチパネルである場合、利用者の指、ペン、又はスタイラスペン等の接触を検出する。タッチパネルの検出方式は、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式(又は超音波方式)、赤外線方式、電磁誘導方式、及び荷重検出方式等の任意の方式を用いることができる。
【0014】
表示部20は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、又は無機ELディスプレイ等の表示デバイスである。表示部20は、パネル10の背面に設けられる。表示部20は、接合部材(例えば接着剤)によりパネル10の背面に接合される。接合部材は、たとえば、透過させる光の屈折率を制御した、光学弾性樹脂などの弾性樹脂である。表示部20は、接着部材とパネル10を透過して種々の情報を表示する。表示部20は、パネル10の背面に接合されることで、パネル10と表示部20とを含む音響装置100の共振周波数が、パネル10の固有の共振周波数と異なったものになる。すなわち、表示部20が、「振動調節部」に対応する。音響装置100の周波数特性については後述する。
【0015】
圧電素子30は、電気信号(電圧)を印加することで、構成材料の電気機械結合係数に従い伸縮または屈曲する素子である。これらの素子は、例えばセラミック製や水晶からなるものが用いられる。圧電素子30は、ユニモルフ、バイモルフまたは積層型圧電素子であってよい。積層型圧電素子には、バイモルフを積層した(例えば16層または24層積層した)積層型バイモルフ素子が含まれる。積層型の圧電素子は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる複数の誘電体層と、該複数の誘電体層間に配置された電極層との積層構造体から構成される。ユニモルフは、電気信号(電圧)が印加されると伸縮し、バイモルフは、電気信号(電圧)が印加されると屈曲する。
【0016】
圧電素子30は、パネル10の背面(電子機器1の内部側の面)に配置される。圧電素子30は、接合部材(例えば両面テープ)によりパネル10に取り付けられる。圧電素子30は、中間部材(例えば板金)を介してパネル10に取り付けられてもよい。圧電素子30は、パネル10の背面に配置された状態で、筐体60の内部側の表面と所定の距離だけ離間している。圧電素子30は、伸縮または屈曲した状態でも、筐体60の内部側の表面と所定の距離だけ離間しているとよい。すなわち、圧電素子30と筐体60の内部側の面との間の距離は、圧電素子30の最大変形量よりも大きいとよい。
【0017】
入力部40は、利用者からの操作入力を受け付けるものであり、例えば、操作ボタン(操作キー)から構成される。なお、パネル10がタッチパネルである場合には、パネル10も利用者からの接触を検出することにより、利用者からの操作入力を受け付けることができる。
【0018】
制御部50は、電子機器1を制御するプロセッサである。制御部50は、圧電素子30に所定の電気信号(音声信号に応じた電圧)を印加する。制御部50が圧電素子30に対して印加する電圧は、例えば、振動音ではなく気導音による音の伝導を目的とした所謂パネルスピーカの印加電圧である±5Vよりも高い、±15Vであってよい。これにより、利用者が3N以上の力(例えば5N〜10Nの力)で自身の体にパネル10を押し付けた場合であっても、パネル10に十分な振動を発生させ、利用者の体の一部を介する振動音を発生させることができる。尚、どの程度の印加電圧を用いるかは、パネル10の筐体または支持部材に対する固定強度もしくは圧電素子30の性能に応じて適宜調整可能である。圧電素子30に印加される信号は、増幅器32により増幅してもよい。制御部50が圧電素子30に電気信号を印加すると、圧電素子30は長手方向に伸縮または屈曲する。このとき、圧電素子30が取り付けられたパネル10は、圧電素子30の伸縮または屈曲にあわせて変形し、パネル10が振動する。このため、パネル10は、気導音を発生させるとともに、利用者が体の一部(例えば外耳の軟骨)を接触させた場合、体の一部を介する振動音を発生させる。制御部50は、例えば通信部60が受信した通話相手の音声に係る音声信号に応じた電気信号を圧電素子30に印加させ、その音声信号に対応する気導音及び振動音を発生させることができる。音声信号は、着信メロディ、または音楽を含む楽曲等に係るものであってもよい。なお、電気信号にかかる音声信号は、電子機器1の内部メモリに記憶された音楽データに基づくものでもよいし、外部サーバ等に記憶されている音楽データがネットワークを介して再生されるものであってもよい。
【0019】
通信部60は、マイクロフォン42が集音した音声信号をベースバンド信号に変換し、そのベースバンド信号を通話相手の電子機器に向けて送信する。また、通信部60は、通話相手の電子機器からのベースバンド信号を無線通信により受信し、音声信号を抽出する。抽出した音声信号は、制御部50により音響装置100から気導音や振動音として出力される。通信部60、制御処理50、及び音響装置100のかかる動作が「通信機能」に対応する。
【0020】
パネル10は、圧電素子30が取り付けられた取付領域だけでなく、取付領域から離れた領域も振動する。パネル10は、振動する領域において、当該パネル10の主面と交差する方向に振動する箇所を複数有し、当該複数の箇所の各々において、振動の振幅の値が、時間とともにプラスからマイナスに、あるいはその逆に変化する。パネル10は、ある瞬間において、振動の振幅が相対的に大きい部分と振動の振幅が相対的に小さい部分とが一見パネル10の広い領域においてランダムにあるいは周期的に分布した振動をする。即ちパネル10の広い領域(例えば略全域)にわたって、複数の波の振動が検出されるようにすることもできる。利用者が例えば5N〜10Nの力で自身の体にパネル10を押し付けた場合であっても、パネル10の上述したような振動が減衰しないためには、制御部50が圧電素子30に対して印加する電圧は、±15Vであってよい。そのため、利用者は、上述したパネル10の取付領域から離れた領域に耳を接触させて音を聞くことができる。
【0021】
ここで、パネル10は、利用者の耳とほぼ同じ大きさであってよい。また、パネル10は、図2に示すように、利用者の耳よりも大きいものであってもよい。この場合、利用者が音を聞く際、電子機器1のパネル10により耳全体が覆われやすいことから、周囲音(ノイズ)を外耳道に入りにくくできる。パネル10は、対耳輪下脚(下対輪脚)から対耳珠までの間の距離に相当する長さと、耳珠から対耳輪までの間の距離に相当する幅とを有する領域よりも広い領域が振動すればよい。パネル10は、好ましくは、耳輪における対耳輪上脚(上対輪脚)近傍の部位から耳垂までの間の距離に相当する長さと、耳珠から耳輪における対耳輪近傍の部位までの間の距離に相当する幅を有する領域が振動すればよい。長さ方向は、ここでは、パネル10が延在する長手方向2aであり、その中心から一方の端部寄りに圧電素子30が配置される。また、幅方向は、長手方向と直交する方向2bである。
【0022】
かかる長さおよび幅を有する領域は、長方形状の領域であってもよいし、上記の長さを長径、上記の幅を短径とする楕円形状であってもよい。日本人の耳の平均的な大きさは、社団法人 人間生活工学研究センター(HQL)作成の日本人の人体寸法データベース(1992−1994)等を参照すれば知ることができる。尚、パネル10が日本人の耳の平均的な大きさ以上の大きさであれば、パネル10は概ね外国人の耳全体を覆うことができる大きさであると考えられる。上記のような寸法や形状を有することで、パネル10は、ユーザーの耳を覆うことができ、耳に当てたときの位置ずれに対して寛容になる。
【0023】
上記の電子機器1は、パネル10の振動により、気導音と、利用者の体の一部(例えば外耳の軟骨)を介する振動音とを利用者に伝えることができる。そのため、従来のダイナミックレシーバと同等の音量の音を出力する場合、パネル10が振動することで空気の振動により電子機器1の周囲へ伝わる音は、ダイナミックレシーバと比較して少ない。したがって、例えば録音されたメッセージを電車内等で聞く場合等に適している。
【0024】
また、上記の電子機器1は、パネル10の振動によって振動音を伝えるため、例えば利用者がイヤホンまたはヘッドホンを身につけていても、それらに電子機器1を接触させることで、利用者はイヤホンまたはヘッドホンおよび体の一部を介して音を聞くことができる。
【0025】
上記の電子機器1は、パネル10の振動により利用者に音を伝える。そのため、電子機器1が別途ダイナミックレシーバを備えない場合、音声伝達のための開口部(放音口)を筐体に形成する必要がなく、電子機器1の防水構造が簡略化できる。尚、電子機器1がダイナミックレシーバを備える場合、放音口は、気体は通すが液体は通さない部材によって閉塞されるとよい。気体は通すが液体は通さない部材は、例えばゴアテックス(登録商標)である。
(第1の実施形態)
図3は第1の実施形態に係る電子機器1の実装構造を示す図である。図3(a)は正面図、図3(b)は図3(a)におけるb−b線に沿った断面図である。図3に示す電子機器1はパネル10としてガラス板であるタッチパネルが筐体60(例えば金属や樹脂のケース)の前面に配されたスマートフォンである。パネル10及び入力部40は筐体60に支持される。パネル10は、筐体60に、たとえば熱硬化性あるいは紫外線硬化性等を有する接着剤や両面テープ等で接合される。また、表示部20および圧電素子30は、それぞれ接合部材70によりパネル10に接着されている。接合部材70は、熱硬化性あるいは紫外線硬化性等を有する接着剤や両面テープ等であり、例えば無色透明のアクリル系紫外線硬化型接着剤である光学弾性樹脂でもよい。パネル10、表示部20および圧電素子30は、それぞれ略長方形状である。
【0026】
表示部20は、パネル10の短手方向におけるほぼ中央に配置される。圧電素子30は、パネル10の長手方向の端部から所定の距離だけ離間して、当該端部の近傍に、圧電素子30の長手方向がパネル10の短辺に沿うように配置される。表示部20と圧電素子30とは、パネル10の内部側の面に平行な方向において並んで配置される。
【0027】
上記のように構成される電子機器1では、圧電素子30によりパネル10と、これに接合部材70で接合される表示部20及び圧電素子30自身とが振動し、気導音や振動音を出力する音声装置100として動作する。
【0028】
図4は、第1の実施形態に係る電子機器1の音響装置100の周波数特性を示す図である。図4では、音響装置100がパネル10と圧電素子30とからなる場合の周波数特性400と、上記のようにパネル10に振動調節部としての表示部20が接着された場合の周波数特性402とがそれぞれ示されている。横軸は周波数を、縦軸は音圧を示す。表示部20が接着されない場合の音響装置100の共振点は約5kHzである。一方、表示部
20が接着された音響装置100の共振点は約1.5kHzである。なお、いずれの場合
も、圧電素子30自体の共振点は約3.5kHzである。図4に示すように、パネル10に表示部20を接着しない場合に比べ、表示部20を振動調節部として接着した音響装置100の共振点は、低い周波数領域に位置する。一方、携帯電話機の音声通話で用いられる周波数帯は400Hz〜3.4kHzである。よって、振動調節部としての表示部20を用いないときの共振点は使用周波数帯域の境界付近にあるが、振動調節部を用いたときの音響装置100の共振点は、使用周波数帯域内に設定することができる。
【0029】
このように、本実施形態に係る電子機器1によれば、音響装置100は、パネル10の背面に接合部材70を介して接合された圧電素子30の変形に起因してパネル10が変形することで、当該変形するパネル10に接触する対象物に対して気導音と振動音とを伝える。これにより、振動体を筐体60の外面に突出させることなく気導音と振動音とを利用者に伝えることができる。また、圧電素子30を接合することにより音響装置100としての共振周波数を変化させ、周波数特性を調節することが可能になる。また、圧電素子30に加え、表示部20を接合部材70によりパネル10に接合することで音響装置100としての共振周波数をさらに変化させ、周波数特性を調節することが可能になる。たとえば、パネル10単独の場合と比べて、音響装置100の共振帯域を通話の使用帯域(例えば300Hz〜3.4kHz)内に含めることが可能になり、通話帯域の周波数特性を向上させることが可能になる。
【0030】
また、使用周波数帯域における周波数ごとの音圧レベルは、全体として、パネル10単独の場合より振動調節部を用いた場合の方が高くなる。よって、パネル10単独の場合より振動調節部を用いた場合の方が、所望の音圧レベルを得るために圧電素子30に印加すべき信号のレベルが低くなり、したがって、信号を増幅する必要性が低下する。よって、増幅器の規模やその消費電力を省略できるという効果が得られる。
【0031】
また、パネル10は、圧電素子30が取り付けられた取付領域だけでなく、パネル10のいずれの箇所においても気導音と振動音とを伝えるための変形が発生する。このため、利用者は、空気を介する気導音に加え、パネル10の任意の位置に耳を接触させて振動音を聞くことができる。
【0032】
また、接合部材70は、非加熱型硬化性の接着剤とすることができる。これにより、硬化時に、圧電素子30とパネル10との間に熱応力収縮が発生しにくいという利点がある。また、接合部材70は、両面テープとすることができる。これにより、圧電素子30とパネル10との間に接着剤使用時のような収縮応力がかかりにくいという利点がある。
【0033】
図5は、第1の実施形態に係る電子機器1の音響装置100の振動の一例を示す図である。これに対し、図6は、パネル10の背面に表示部20が背面に接着されない音響装置100の振動の一例を示す図である。第1の実施形態に係る電子機器1では、表示部20がパネル10に取り付けられている。このため、音響装置100の上部100aと比べて下部100bの剛性が上がる。よって、表示部20を有さない図5の場合と比べ、音響装置100の圧電素子30が取り付けられた上部100aの振動を下部100bに比して大きく振動させることが可能となる。すなわち、音響装置100の下部100bは、圧電素子30が取り付けられた音響装置100の上部100aに比して振動しにくくなる。そのため、利用者の耳と接触していないパネル10の下部が振動することによる音漏れを低減できる。特に、パネル10が長方形状を有するとき、その長手方向に撓みやすく振動が減衰しにくいが、表示部20を接着して音響装置100全体としての剛性を高めることで振動の減衰量を増大させ、音響装置100の下部の振動を低減させることができる。
【0034】
なお、圧電素子が接合される接合部分を含み且つ表示部20が接合されていない領域は、当該領域における圧電素子30の接合部分から表示部20が接合されている領域へ向かう第1の方向における幅が、0.5cm以上5cm以下である。これにより、振動を低減させない領域の大きさを十分確保できるとともに、電子機器が平面方向において大型化しすぎないようにできる。
【0035】
このように、本実施形態に係る電子機器1によれば、パネル10の背面に取り付けられた圧電素子30の変形に起因してパネル10が変形し、当該変形するパネル10に接触する対象物に対して気導音と振動音とを伝える。これにより、振動体を筐体60の外面に突出させることなく気導音と振動音とを利用者に伝えることができるため、筐体に比べて非常に小さな振動体を人体に接触させる特許文献1に記載の電子機器よりも使い勝手が向上する。また、圧電素子自体に利用者の耳を当てる必要がないので圧電素子30そのものが破損しにくい。また、パネル10ではなく筐体60を変形させる場合には、振動を発生させる際に、利用者が端末を落としてしまいやすいのに対して、パネル10を振動させた場合には、このようなことが起きにくい。
【0036】
また、圧電素子30はパネル10に接合部材70により接合されている。これにより、圧電素子30の変形の自由度を阻害しにくい状態で圧電素子30をパネル10に取り付けることができる。また、接合部材70は、非加熱型硬化性の接着剤とすることができる。これにより、硬化時に、圧電素子30とパネル10との間に熱応力収縮が発生しにくいという利点がある。また、接合部材70は、両面テープとすることができる。これにより、圧電素子30とパネル10との間に接着剤使用時のような収縮応力がかかりにくいという利点がある。
(第2の実施形態)
図7は第2の実施形態に係る電子機器1の実装構造を示す図である。図7(a)は正面図、図7(b)は図7(a)におけるb−b線に沿った断面図、図7(c)は図7(a)におけるc−c線に沿った断面図である。図7に示す電子機器1はパネル10として表示部20を保護するカバーパネル(例えばアクリル板)と表示部20とを含む音響装置100が上側の筐体60の前面に配された折りたたみ式の携帯電話である。表示部20は、パネル10に接合部材70で接合される。第2の実施形態では、パネル10と圧電素子30との間には、補強部材80が配置される。補強部材80は、例えば樹脂製の板、板金またはガラス繊維を含む樹脂製の板である。すなわち、第2の実施形態に係る電子機器1は、圧電素子30と補強部材80とが接合部材70により接着され、さらに補強部材80とパネル10とが接合部材70により接着される構造である。
【0037】
このように、本実施形態に係る電子機器1によれば、パネル10に補強部材80を介して取り付けられた圧電素子30の変形に起因して補強部材80およびパネル10が変形し、当該変形するパネル10に接触する対象物に対して気導音と振動音とを伝える。これにより、振動体自体を耳に当てることなく気導音と振動音とを利用者に伝えることができる。また、圧電素子30は、パネル10の筐体60内部側の面に取り付けられる。このため、振動体を筐体60の外面に突出させることなく気導音と振動音とを利用者に伝えることができる。また、パネル10は、圧電素子30が取り付けられた取付領域だけでなく、パネル10のいずれの箇所においても気導音と振動音とを伝えるための変形が発生する。このため、利用者は、空気を介する気導音に加え、パネル10の任意の位置に耳を接触させて振動音を聞くことができる。
【0038】
また、圧電素子30とパネル10との間に補強部材80を配置することで、例えばパネル10に外力が加わった場合に、その外力が圧電素子30に伝達され圧電素子30が破損する可能性を低減することができる。また、人体にパネル10を強く接触させても、パネル10の振動が減衰しにくくできる。また、圧電素子30とパネル10との間に補強部材80を配置することで、パネル10の共振周波数が下がり、低周波帯域の音響特性が向上する。なお、補強部材80に換えて、板状の錘を接合部材70により圧電素子30に取り付けてもよい。
【0039】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部材、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0040】
例えば、図8に示すとおり、パネル10が筐体60に接合部材70により接合されている構成としても良い。このように、筐体60にパネル10からの振動がダイレクトに伝わりにくくすることで、筐体自体が大きく振動する場合と比較して、ユーザーが電子機器1を落としてしまう恐れを低減できる。また、接合部材70は、非加熱型硬化性の接着剤とすることができる。これにより、硬化時に、筐体60とパネル10との間に熱応力収縮が発生しにくいという利点がある。また、接合部材70は、両面テープとすることができる。これにより、筐体60とパネル10との間に接着剤使用時のような収縮応力が発生しにくいという利点がある。
【0041】
例えば、パネル10と表示部20とが重畳しない構成である場合、圧電素子30は、パネル10の中央に配設されてもよい。圧電素子30がパネル10の中央に配設された場合、圧電素子30の振動がパネル10全体に均等に伝わり、気導音の品質を向上させたり、利用者が耳をパネル10の様々な位置に接触させても振動音を認識させたりすることができる。なお、上述の実施形態と同様に、圧電素子30は複数個搭載してもよい。
【0042】
また、上記の電子機器1においては、圧電素子30はパネル10に貼り付けられているが、パネル10と異なる場所に取り付けられてもよい。例えば、圧電素子30は、筐体60に取り付けられてバッテリを覆うバッテリリッドに貼り付けられてもよい。バッテリリッドは携帯電話機等の電子機器1においてパネル10と異なる面に取り付けられることが多いため、そのような構成によれば、利用者はパネル10と異なる面に体の一部(例えば耳)を接触させて音を聞くことができる。
【0043】
また、パネル10は、表示パネル、操作パネル、カバーパネル、充電池を取り外し可能とするためのリッドパネルのいずれかの一部または全部を構成することができる。特に、パネル10が表示パネルのとき、圧電素子30は、表示機能のための表示領域の外側に配置される。これにより、表示を阻害しにくいという利点がある。操作パネルは、第1実施
形態のタッチパネルを含む。また、操作パネルは、例えば折畳型携帯電話において操作キーのキートップが一体に形成され操作部側筐体の一面を構成する部材であるシートキーを含む。
【0044】
なお、第1の実施形態および第2の実施形態では、パネル10と圧電素子30とを接着する接合部材およびパネル10と筐体60とを接着する接合部材等を同一の符号を有する接合部材70として説明した。しかしながら、第1実施形態および第2実施形態で用いられる接合部材は、接合する対象である部材に応じて適宜異なるものが用いられてよい。
【0045】
また、上述の実施形態では、圧電素子が搭載されたパネルに接合される振動調節部として表示部の例を示したが、これに限られない。たとえば、振動調節部は、表示部ではない、タッチ機能をタッチパネルや回路基板、あるいは単なるガラス板やアクリル製パネルや、金属板金等でもよく、これらがパネルに両面テープ等により貼り付けられていればよい。
【符号の説明】
【0046】
1 電子機器
10 パネル
20 表示部
30 圧電素子
40 入力部
50 制御部
60 筐体
70 接合部材
80 補強部材
90 支持部
100 音響装置
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8