(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5819042
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】建材用複合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04F 19/00 20060101AFI20151029BHJP
【FI】
E04F19/00 E
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-17725(P2010-17725)
(22)【出願日】2010年1月29日
(65)【公開番号】特開2011-157688(P2011-157688A)
(43)【公開日】2011年8月18日
【審査請求日】2012年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】片尾 公泰
(72)【発明者】
【氏名】井阪 敏
(72)【発明者】
【氏名】荒川 義一
(72)【発明者】
【氏名】小島 典弘
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−309415(JP,A)
【文献】
特開昭62−003911(JP,A)
【文献】
特開2000−158474(JP,A)
【文献】
特開昭53−108620(JP,A)
【文献】
特開昭48−027526(JP,A)
【文献】
特開2006−322248(JP,A)
【文献】
特開平07−088996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/00
E04F 19/02
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回された長尺の帯状の金属箔を長手方向に沿って折曲して、内部に中空部が形成されると共に該中空部に連通する開口部が側面に形成された長尺体を連続的に成形し、引き続いて前記開口部から該長尺体の前記中空部に発泡性熱可塑性合成樹脂を押出成形により充填する建材用複合材の製造方法において、前記開口部の両縁部を前記中空部の内方に向かって折曲して、該折曲部を前記中空部に充填された発泡性熱可塑性合成樹脂内に食い込ませることによって、前記曲折部は、その内側から外側にわたって前記発泡性熱可塑性樹脂によって覆われていることを特徴とする建材用複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に室内に用いられる建材用複合材の製造方法及びその製造方法により製造される建材用複合材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばステンレス製角材・棚板・膳板と言った主に室内に用いられる建材用複合材については、その一例として、建築やその他の各種産業分野において広く使用される難燃性断熱パネルや耐熱性断熱パネルについて、フェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の面にシート状布材、接着剤層および金属箔が順に積層され、かつ前記金属箔として、展性を有する金属箔の少なくとも一方の面にエンボス加工を施してなるエンボス加工金属箔を用い、表面側がエンボス加工部となるように配したことを特徴とするフェノール樹脂発泡体積層板が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−35675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の建材用複合材であるフェノール樹脂発泡体積層板においては、フェノール樹脂を押出成形機等で発泡成形させて、また別の工程で金属箔が加工された後、成形したフェノール樹脂発泡体と金属箔とを貼り合せて製造するため、製造工程が煩雑であり、リードタイムも長く効率がよいとは言えないと言う問題があった。
【0005】
本発明は、上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、簡易な工程で効率よく製造することができる建材用複合材の製造方法及びその方法により製造される建材用複合材を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち本発明に係る建材用複合材の製造方法は、ロール状に巻回された長尺の帯状の金属箔を長手方向に沿って折曲して、内部に中空部が形成されると共に該中空部に連通する開口部が側面に形成された長尺体を連続的に成形し、引き続いて前記開口部から該長尺体の前記中空部に発泡性熱可塑性合成樹脂を押出成形により充填する建材用複合材の製造方法において、前記開口部の両縁部を前記中空部の内方に向かって折曲して、該折曲部を前記中空部に充填された発泡性熱可塑性合成樹脂内に食い込ませることによって、前記曲折部は、その内側から外側にわたって前記発泡性熱可塑性樹脂によって覆われていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、帯状の金属箔をロールフォーミング等により長手方向に沿って折曲して、内部に中空部が形成されると共に該中空部に連通する開口部が側面に形成された長尺体を連続的に成形し、引き続いて前記開口部から該長尺体の前記中空部に発泡性熱可塑性合成樹脂を押出成形により充填するため、金属箔を所定の断面形状に成形し、連続して発泡性熱可塑性合成樹脂をその内部に充填すると言う一連の簡易な工程により効率的に建材用複合材を製造することができ、好ましい。
【0008】
また本発明において、前記開口部の縁部を前記中空部の内方に向かって折曲して、該折曲部を前記中空部に充填された発泡性熱可塑性合成樹脂内に食い込ませるようにすれば、前記効果に加えて、金属箔の端部と発泡性熱可塑性合成樹脂とが強固に結合されることから、金属箔の端部が容易に剥離することがなく、耐久性に優れた建材用複合材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る建材用複合材の実施の一形態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す形態の、金属箔を所定の断面形状に成形した状態を示す縦断面図である。
【
図4】本発明に係る建材用複合材の別の実施形態を示す断面図である。
【
図5】本発明に係る建材用複合材の更に別の実施形態を示す断面図である。
【
図6】本発明に係る建材用複合材の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
Pは本発明に係る建材用複合材であって、内方に充填された発泡性熱可塑性合成樹脂2を芯として、その外方に表皮としての金属箔1が配置された如き感を呈しているものである。該建材用複合材Pは、ロール状に巻回された長尺の帯状の金属箔1をロールフォーミング等により長手方向に沿って折曲して、内部に中空部11が形成されると共に該中空部11に連通する開口部12が側面に形成された断面略コ字状の長尺体を連続的に成形し、引き続いて前記開口部12から該長尺体の前記中空部11に発泡性熱可塑性合成樹脂2を押出成形により充填して形成される。
【0011】
なお、長尺体の断面形状は前記略コ字状に限定されるものではなく、内部に中空部11が形成され、該中空部11に発泡性熱可塑性合成樹脂2を押出成形により充填するための前記中空部11に連通する開口部12が側面に形成されていればよく、そして前記開口部12は本形態のように1側面にのみ形成されていてもよいが、
図4に示されるように、長尺体の断面形状を略L字状に形成する等、複数側面に渡って形成されていてもよいし、
図5に示されるように、複数側面に分かれてそれぞれの側面に形成されていてもよい。
【0012】
そして、前記開口部12の縁部が前記中空部11の内方に向かって折曲され、該折曲部13が前記中空部11に充填された発泡性熱可塑性合成樹脂2内に食い込むように形成されている。
【0013】
金属箔1としては、特に限定されるものではなく、一般に用いられるステンレス箔やアルミ箔が用いられ、発泡性熱可塑性合成樹脂2としては、特に限定されるものではなく、ポリスチレン、ABS、AAS、AES等のスチロール系樹脂、塩化ビニル樹脂が用いられ、その樹脂を1.2〜2.5倍に発泡させて建材用複合材Pが形成される。
【0014】
なお前記樹脂を発泡させるには一般的には発泡剤が用いられ、該発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、アゾジカルボンアミド、ヒドラゾジカルボンアミド等が用いられるが、本形態においては、金属箔1としてステンレス箔が用いられ、そして発泡性熱可塑性合成樹脂2としては、ポリスチレン樹脂に炭酸水素ナトリウムからなる発泡剤が配合されたものが用いられている。
【0015】
金属箔1と発泡性熱可塑性合成樹脂2とは、接着剤によって接着されて形成されてもよいし、発泡性熱可塑性合成樹脂2の樹脂材質に接着性を有する樹脂を用いて金属箔1と発泡性熱可塑性合成樹脂2とを接着してもよい。接着剤の材質としては、例えばポリウレタン系、ゴム系、エポキシ系、EVA系、ホットメルト系等のものが用いられる。
【0016】
次に、建材用複合材Pの製造方法について説明する。
図6は本発明に係る建材用複合材の製造工程を示す説明図であり、ロール状に巻回された長尺の帯状の金属箔1であるステンレス箔1aの片面に、ロールコーター3等により接着剤を塗布した後、多段曲げロール4によるロールフォーミングにより、前記ステンレス箔1aを長手方向に沿って折曲して、内部に中空部11が形成されると共に該中空部11に連通する開口部12が側面に形成された断面略コ字状の長尺体を連続的に、且つ断面略コ字状の内側面に塗布された接着剤層が位置する様に成形し、引き続いてこの成形されたステンレス箔1aの長尺体を押出成形機5のクロスヘッド金型内に送り込み、該金型内で断面略コ字状に形成された開口部12から押出成形機5により該長尺体の前記中空部11に発泡性熱可塑性合成樹脂2を充填し、加熱・発泡すると共に塗布された接着剤によってステンレス箔1aと発泡性熱可塑性合成樹脂2とを接着させて、その後冷却用水槽6において前記長尺体を冷却し、最後に切断機7により所定の長さ寸法に切断して、本発明に係る建材用複合材Pが製造される。
【0017】
かような製造方法により建材用複合材Pを製造することによって、金属箔1を所定の断面形状に成形し、連続して発泡性熱可塑性合成樹脂2をその内部に充填すると言う一連の簡易な工程により効率的に建材用複合材を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明によれば、帯状の金属箔をロールフォーミング等により長手方向に沿って折曲して、内部に中空部が形成されると共に該中空部に連通する開口部が側面に形成された長尺体を連続的に成形し、引き続いて前記開口部から該長尺体の前記中空部に発泡性熱可塑性合成樹脂を押出成形により充填するため、金属箔を所定の断面形状に成形し、連続して発泡性熱可塑性合成樹脂をその内部に充填すると言う一連の簡易な工程により効率的に建材用複合材を製造することができる建材用複合材の製造方法を実現できる。
【符号の説明】
【0019】
1 金属箔
1a ステンレス箔
11 中空部
12 開口部
13 折曲部
2 発泡性熱可塑性合成樹脂
3 ロールコーター
4 多段曲げロール
5 押出成形機
6 冷却用水槽
7 切断機
P 建材用複合材