【実施例1】
【0025】
図1は近赤外光領域の光の透過を制限する赤外線カットフィルタとして機能する実施例1の光学フィルタ1の構成図を示している。
【0026】
この光学フィルタ1においては、透明基板2上に、所望の波長領域に吸収を有する色素を樹脂バインダ中に分散させて構成した有機薄膜から成る光吸収構造体3が成膜されている。また、この光吸収構造体3の上層には、近赤外光を反射するように複数の蒸着膜を積層して構成した無機薄膜から成る光反射構造体4aが成膜されている。更に、透明基板2の反対の面には、同様に無機薄膜から成る光反射構造体4bが設けられている。
【0027】
透明基板2は合成樹脂材から成る例えば板厚0.1mmのノルボルネン系材料であるArton(JSR製、製品名)フィルムが使用されている。Artonフィルムはガラス転移温度(Tg)が高く、更に曲げ弾性率も高く、透明基板2の割れやうねりを低減できる。
【0028】
実施例1においてはArtonフィルムを使用しているが、この他にポリイミド系の樹脂フィルム等も好適な材料の1つである。更には、可視波長領域において透明性を有するものであれば、例えばPETに代表されるポリエステル系、PEN、アクリル系、アラミド系、PC(ポリカーボネート)、ポリ塩化ビニル、PVA(ポリビニルアルコール)等の使用が可能である。
【0029】
光吸収構造体3は色素を分散させた樹脂層を、例えばスピンコート法により塗工することにより形成されている。光吸収構造体3を構成する樹脂バインダにはアクリル系樹脂を用いているが、このアクリル系樹脂は透明基板2と樹脂層との密着の観点から、一部にスチレンを含有しているアクリル−スチレン共重合樹脂を選択している。
【0030】
なお樹脂はアクリル系以外にも、可視波長領域において透光性が高ければ、ポリスチレン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、フッ素系、PC系、ポリイミド系、スチレン系、ポリオレフィン系等の使用が考えられる。これらの樹脂は単体又は2種類以上を混合して用いてもよく、また共重合体として用いることもできる。つまり、可視波長領域における吸収が小さい材料であればよく、透明基板2となる材料や、前後のプロセス、光学フィルタに要求される特性、色素との相性等の様々な要素を考慮し、最適な樹脂バインダを選択すればよい。
【0031】
樹脂バインダは透明基板2との屈折率差が小さいものがより好ましい。透明基板2と光吸収構造体3とが隣接する場合に、屈折率差を小さくすることで、透明基板2と樹脂層との界面での反射を小さくし、膜厚を薄くしても干渉効果による影響をより小さくすることが可能である。また同様の理由から、透明基板2と光吸収構造体3との間に接着層や応力緩和層等の機能膜層を挿入する場合であっても、透明基板2、機能膜層、光吸収構造体3の三者の屈折率が近いものがより好ましい。
【0032】
光吸収構造体3の樹脂層が乾燥することで発生する硬化収縮に起因する応力に関しては、光吸収構造体3の膜厚を薄くすることで低減することが可能である。この際に、所望の吸収特性を維持するために、色素の濃度調整や、例えばスピンコート法であれば回転速度等の塗工プロセスの調整が必要となる。
【0033】
有機薄膜により構成された光吸収構造体3の場合に、色素成分は水分に弱いため、樹脂バインダ中に分散させても、特に温度や湿度等の周囲環境から、樹脂が少なからず吸水してしまい、色素成分がその影響を受けて光学特性が変化してしまうことがある。このため、光吸収構造体3よりも表層側に光反射構造体4aを配置している。
【0034】
光反射構造体4a、4bはそれぞれ少なくとも2種類以上の無機薄膜を積層して成膜され、光反射構造体4a、4bは合わせて1つの薄膜積層構造体として機能し、或る波長領域の透過を制限している。
【0035】
透明基板2に合成樹脂材を使用した場合には、光反射構造体4a、4bの成膜プロセスに起因する熱の問題が発生する。ガラス透明基板と比較して、ガラス転移温度が極端に低い樹脂透明基板の場合には、透明基板2と膜との線膨張係数の差に起因する透明基板2の反りや、この反りに伴う膜面のクラックの発生等が考えられる。そこで、成膜中に発生する熱への施策が必要であり、具体的には透明基板2としてガラス転移温度の高い材料を選択したり、成膜プロセスの低温化を図ることが考えられる。
【0036】
光反射構造体4a、4bの成膜においては、成膜装置に吸熱機構を設け、放射冷却効果により成膜中に透明基板2に発生する熱を除去する手法を選択した。その際に、成膜プロセスで到達する透明基板2上の最高温度を予め測定し、その温度に耐え得る材料を選択する必要がある。実施例1では、成膜プロセスの安定性を考慮し、先に実験した到達最高温度に或る程度の許容値を加え、ガラス転移温度を適性判断のパラメータとし、約70℃以上のガラス転移温度を有する透明基板2を選択している。
【0037】
また、光反射構造体4a、4bの成膜中の温度が通常の成膜温度より低くなることから、何らかのアシストを付加したり、比較的に高エネルギで成膜されるスパッタ法など、膜密度が高くなるプロセスを選択することが強く望まれる。具体的には、スパッタ法、IAD法、イオンプレーティング法、IBS法、クラスタ蒸着法等の膜厚を比較的正確に制御でき、再現性の高い膜を得ることができる成膜法であればよい。蒸着以外の物理的又は化学的成膜方法で形成してもよいし、ゾルゲル法などのウェットプロセスでもよく、必要とされる膜の性質や、透明基板2を含めた各材料の制約条件等から最適な方法を選択すればよい。
【0038】
図2は板厚0.1mmのArtonフィルムから成る透明基板2に、光反射構造体4a、4bのみを成膜した場合の反射タイプの光学フィルタの分光透過率特性のグラフ図である。この光学フィルタは可視波長領域で透過率が高く、紫外波長領域から可視波長領域にかけての領域の波長の透過を防止する第1阻止波長領域W1、可視波長領域から近赤外波長領域にかけての波長領域に第2阻止波長領域W2を有している。更に、第2阻止波長領域W2から近赤外波長にかけての波長領域に第3阻止波長領域W3を有し、3つの阻止波長領域W1〜W3により構成されている。光反射構造体4aにより阻止波長領域W1及びW2が形成され、光反射構造体4bにより阻止波長領域W3が形成されている。
【0039】
光反射構造体4a、4bの薄膜積層構造は、IAD法により複数層の無機質から成る誘電体膜を順次に積層することにより形成している。一般に、このような多層膜においては膜応力が非常に大きくなり、光学系の薄型化の観点から透明基板2の板厚を薄くした場合には、透明基板2に反りが生ずる虞れがある。この対策として、
図1に示すように透明基板2の両面に光反射構造体4a、4bをそれぞれ成膜すると、透明基板2の両面に同じ材料、膜厚、膜質で積層することになり、膜応力を低減できることになる。
【0040】
しかし、その場合には膜の構成設計が困難であり、透明基板2の片面に設計した場合と同じ積層数となるように膜設計を行うと、光学特性が大きく犠牲となる虞れがある。また、光学特性と膜応力の緩和を同時に満足させるためには、積層数が増加し、フィルタ製作の工数アップの要因となる。膜応力による透明基板2の反りが問題となる場合には、
図1に示すように薄膜積層構造体を透明基板2の両面に分割して配置することが好適な手法となる。
【0041】
以上の説明では、応力バランスのために透明基板2の両面に光反射構造体4a、4bを配置したが、加えて実施例1では、光吸収構造体3と光反射構造体4a、4bとの応力バランスをとることも必要である。そのために、それぞれの応力を予め測定しておき、透明基板2の両面への配置を最適化することにより、透明基板2の両面の応力バランスをとることが好ましい。
【0042】
従って、実施例1では透明基板2上に先ず光吸収構造体3を形成し、その上層に光反射構造体4aによる29層の薄膜を成膜し、その後に透明基板2の反対の面に光反射構造体4bによる21層の薄膜を成膜している。このような光反射構造体4a、4bから成る誘電体膜の材料には、高屈折率材料にはTiO
2、低屈折率材料にはSiO
2を使用し、TiO
2とSiO
2を交互に積層した。
【0043】
この他に、成膜手法によっても異なるが、一般的に高屈折率材料にはNb
2O
5、ZrO
2、Ta
2O
5等が使用され、低屈折率材用にはMgF
2を使用する場合もある。設計上や成膜上の理由から、中間屈折率材料であるAl
2O
3等を一部の層で使用する場合もあるが、適宜に最適な材料の組合わせを選択すればよい。
【0044】
また、実施例1の光学フィルタ1のように、ハイブリッドタイプのフィルタの場合には、有機薄膜による吸収と無機薄膜による反射を考慮し、所望の波長が赤外光半値波長となるように、予め調整することが必要となる場合がある。
【0045】
図3は光吸収構造体3のシアニン系の色素をアクリル系の樹脂バインダ中に分散させた場合の所定の吸収波長領域を有する分光特性を示し、所望の吸収を得られるように色素の濃度及び膜厚を調整し、膜状に塗工して形成している。このように分散された色素は、光反射構造体4a、4bにより形成された近赤外光を透過する透過波長領域から透過制限波長領域に遷移する遷移波長領域の分光透過率の赤外光半値波長を含む波長近傍に吸収帯を有している。
【0046】
この際に、樹脂バインダにメチルエチルケトン(MEK)やトルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等の溶剤を添加し、塗工後に乾燥工程を経て揮発させることが一般的であるが、色素や樹脂バインダ、塗工法等の関係から最適な溶剤を適宜に選択すればよい。例えば、溶媒はケトン系に限らず、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系、メタノール、エタノール等のアルコール系、ジメチルホルムアミド等のアミン系の溶媒や水を、色素・樹脂バインダの溶解性や揮発性等を考慮し、単体又は2種類以上の混合物として最適な組合わせになるように選択すればよい。本実施例1では、メチルエチルケトン(MEK)とメチルイソブチルケトン(MIBK)を1:9(重量比)の割合で混合した溶媒を使用し、この塗布溶液をスピンコート法により、所望の分光を得られる厚さに成膜し、乾燥炉で乾燥・硬化させた。
【0047】
また、光吸収構造体3に酸化防止剤を添加することで、色素の劣化を低減することができる場合もある。酸化防止剤としては、フェノール系、ビンダードフェノール系、アミン系、ビンダードアミン系、硫黄系、リン酸系、亜リン酸系等が挙げられる。
【0048】
図4は上述の方法により製作された光学フィルタ1の分光透過率特性のグラフ図を示し、
図2に示す光反射構造体4a、4b、
図3に示す光吸収構造体3の分光特性を合成したものとなる。赤外線カットフィルタにおける不要光の強度は、簡易的には(赤外線カットフィルタの分光透過率)・(赤外線カットフィルタの分光反射率)で計算された値が目安となる。光学フィルタを無機薄膜のみで構成した場合に、不要光の強度は赤外光半値波長で最大となり、透過率50%、反射率50%と仮定すると、その値は概ね25%程度となる。
【0049】
実用的には、不要光の強度は少なくとも15〜16%程度までは低減する必要がある。従って、例えば強度を16%以下にまで低減するには、光吸収構造体3を組合わせた場合に、少なくとも透過率40%、反射率40%となるように、光吸収構造体3の前記した赤外光半値波長での吸収率は20%程度以上が必要となる。
【0050】
簡易的な計算では、光反射構造体4a、4bのみでの不要光の最大強度が上述の25%程度であるのに対し、実施例1で作製した光学フィルタ1の遷移波長領域での不要光の最大強度は8%以下となる。不要光に関しては、撮像素子の感度特性、遷移波長領域から透過制限波長領域において発生する不要光の合計値などによってもその影響は異なる。しかし、実施例1で作製された光学フィルタ1は、遷移波長領域での最大強度を3割以上低減しており、多くの光学系で不要光を低減することができる。
【0051】
透明基板2の全面に上述した光吸収構造体3、光反射構造体4a、4bを成膜した後に、所望の形状に打ち抜くことで光学フィルタ1を10mmの正方形状に加工する。なお、成膜時に透明基板2上にマスクを施すことで、所望の範囲を部分的に成膜し、成膜後にそれぞれを切り抜く方法でも、同様の光学フィルタ1を作製することができる。
【0052】
図5は比較のために、特許文献4を基に作製した比較例の光学フィルタの分光透過率のグラフ図である。
図5(a)は有機薄膜層によるグラフ図、
図5(b)は基板の両面に分割し配置した2つの無機薄膜層によるグラフ図、
図5(c)はこれらの有機薄膜層と無機薄膜層とにより作製されたグラフ図を示している。
【0053】
図5(b)から無機薄膜層で形成される赤外光半値波長は、650nm付近の波長であることが分かる。また、
図5(c)から有機薄膜層と無機薄膜層を構成した場合であっても、赤外光半値波長は650nm付近であり、
図5(b)とほぼ同様の波長となっていることが分かる。また、
図5(a)に示された有機薄膜層の特性から、特許文献4で提示されている有機薄膜層の遷移波長領域での吸収率、特に赤外光半値波長における吸収率は、最大でも10%程度と極めて小さい値となっていることが予測される。
【0054】
透過波長領域、透過制限波長領域においては、透過率又は反射率の何れかが0に近付くため、上述のように簡易的には不要光の強度は遷移波長領域での透過率と反射率とを乗じた値が支配的となる。従って、この遷移波長領域に十分な吸収を得ることができない場合には、透過率が低いと反射率が高くなり、反射率が低いと透過率が高くなるため、不要光の強度を低減することは極めて困難である。
【0055】
撮像素子の感度特性やフィルタの配置位置等、光学系全体での構成によっても不要光の影響は微妙に異なるが、特許文献4で得られる
図5(a)のような光学特性では、不要光を十分に低減することは困難である。
【実施例2】
【0056】
図6は可視波長領域の一部の領域のみ光を透過し、その近郊の波長領域の透過を制限する蛍光フィルタとして機能する実施例2の光学フィルタ11の構成図を示している。
【0057】
この光学フィルタ11においては、透明基板12上に、所望の波長領域に吸収を有する色素を樹脂バインダ中に分散させて構成した有機薄膜から成る光吸収構造体13が成膜されている。また、この光吸収構造体13上には、複数の蒸着膜を積層し構成した無機薄膜から成る光反射構造体14aが成膜されている。更に、透明基板12の反対の面には、同様に無機薄膜から成る光反射構造体14bが成膜されている。
【0058】
透明基板12は例えば板厚0.5mmのBK7が使用されている。透明基板12においては、所望の波長領域において透明性を有するものであれば合成樹脂基板でもよく、実施例1で挙げた樹脂フィルムの使用が可能である。
【0059】
光吸収構造体13は色素を分散させた樹脂層を、例えばスピンコート法により塗工することにより形成されている。光吸収構造体13を構成する樹脂バインダにはアクリル系樹脂を用いたが、他にも実施例1で挙げた樹脂が使用できる。
【0060】
実施例1と同様の理由から、光吸収構造体13よりも表層側に光反射構造体14aを配置している。光反射構造体14a、14bはそれぞれ少なくとも2種類以上の無機薄膜を積層して成膜され、光反射構造体14a、14bは合わせて1つの薄膜積層構造体として機能し、或る波長領域の透過を制限している。
【0061】
透明基板12に合成樹脂材を使用した場合には、実施例1と同様にガラス転移温度の高い材料を選択したり、成膜プロセスの低温化を図ったりするなど、成膜中に発生する熱への施策が必要である。
【0062】
図7は透明基板12に光反射構造体14a、14bのみを成膜した場合の反射タイプの光学フィルタの分光透過率特性のグラフ図である。この光学フィルタは所望の可視波長領域で透過率が高く、紫外波長領域から透過波長領域にかけて透過を制限する第1阻止波長領域W11、第2阻止波長領域W12、第3阻止波長領域W13を有し、3つの阻止波長領域W11〜W13により構成されている。光反射構造体14aにより阻止波長領域W13が形成され、光反射構造体14bにより阻止波長領域W11及びW12が形成されている。
【0063】
光反射構造体14a、14bの薄膜積層構造は、スパッタ法により複数層の無機質から成る誘電体膜を順次に積層することにより形成している。
【0064】
実施例2では、透明基板12上に先ず光吸収構造体13を形成し、その上層に光反射構造体14aによる20層の薄膜を成膜し、その後に透明基板12の反対の面に光反射構造体14bによる25層の薄膜を成膜している。
【0065】
図8は光吸収構造体13のフタロシアニン系の色素を、アクリル系の樹脂バインダ中に分散させた場合の所定の吸収波長領域を有する分光特性を示し、所望の吸収を得られるように色素の濃度及び膜厚を調整し、膜状に塗工して形成している。このように分散された色素は、光反射構造体14a、14bにより形成された遷移波長領域の分光透過率の半値波長を含む波長近傍に吸収帯を有している。
【0066】
図9は上述の方法により製作された光学フィルタ11の分光透過率特性のグラフ図を示し、
図7に示す光反射構造体14a、14b、
図8に示す光吸収構造体13の分光特性を合成したものとなる。
【0067】
蛍光は微弱な光なので、少しの不要光が生じても画質の劣化を引き起こしてしまう。従って、少しでも不要光を低減することが重要であり、これによりノイズとしての影響は低減される。
【0068】
簡易的な計算では、光反射構造体14a、14bのみでの不要光の最大強度が上述の25%程度であるのに対し、例えば、実施例2で作製した光学フィルタ11の遷移波長領域での不要光の最大強度は8.3%程度となる。不要光に関しては、撮像素子の感度特性、遷移波長領域から透過制限波長領域において発生する合計値などによってもその影響は異なる。しかし、実施例2で作製された光学フィルタ11は遷移波長領域での最大強度を3割程度低減しており、光学フィルタ11では、透過波長領域で高透過率を維持しながら、ノイズの影響も低減することができる。
【0069】
ここで、実施例1、2においては光吸収構造体の塗工はスピンコート法を用いたが、これに限らず、ディップコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、キスコート法、ダイコート法、ナイフコート法、ブレードコート法、バーコータ法等であっても、同様の膜を形成することができる。つまり、所望の分光を満足する膜厚や、形状、生産性等を考慮して、最適な成膜方法を選択すればよい。
【0070】
光吸収構造体13には、実施例1ではシアニン系、実施例2においてはフタロシアニン系の色素を用いたが、これに限定されることはない。例えば、アゾ系やフタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ジイモニウム系、ポリメチン系、アンスラキノン系、ナフトキノン系、トリフェニルメタン系、アミニウム系、ピリリウム系、スクワリリウム系等の色素を単体又は混合して用いることができる。ただし、透過波長領域における吸収が小さく、透過波長領域における透過率が平坦又は連続的に変化する色素が好ましい。
【0071】
また実施例1、2では、光吸収構造体3、13の成膜後の硬化方法として熱硬化法を用いているが、他の活性エネルギ線、例えば可視光線、電子線、プラズマ、赤外線、紫外線等を用いてもよい。活性エネルギ線の照射量は樹脂組成物の硬化が進行するエネルギ量であればよく、必要に応じて光重合開始剤や酸化防止剤を添加すればよい。
【0072】
光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンジル、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクヘキシルフェニルケトン、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ヒドラゾン、α−アシロキシムエステル等が挙げられるが、これらに限定されるものでなく、単独又は複数で用いてもよい。
【0073】
電子線硬化開始剤としては、ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、イソプロピルチオキサントン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−フェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられるが、これらに限定されるものでなく、単独又は複数で用いてもよい。
【0074】
熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4−アゾビス(4−シアノバレリック酸)等が挙げられるが、これらに限定されるものでなく、単独又は複数で用いてもよい。