(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)において、(a)成分と(b)成分のヒドロシリル化反応を行う際に、(a)成分のアルケニル基またはヒドロシリル基一個に対して、(b)成分のヒドロシリル基またはアルケニル基が2.5個〜20個になる範囲で過剰量加えてヒドロシリル化反応によって変性し、未反応の(b)成分を留去する工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0021】
<多面体構造ポリシロキサン変性体(A)>
本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)と、ヒドロシリル基またはアルケニル基を含有する化合物(b)をヒドロシリル化させて得ることができる。多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の製造においては、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)と、ヒドロシリル基またはアルケニル基を含有する化合物(b)をヒドロシリル化させることにより、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)、あるいは、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を用いて得られる硬化物に、より高い耐熱性や耐光性、ガスバリア性等を付与することが可能となる。
【0022】
本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、ハンドリング性・加工性の観点から温度20℃において、液状であることが好ましい。
また、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、得られる硬化物の強度や硬度、さらには、耐熱性・耐光性、ガスバリア性・ハンドリング性等の観点から、
[X
1R
12SiO−SiO
3/2]
a[X
2R
22SiO−SiO
3/2]
b[R
33SiO−SiO
3/2]
c
[(a+b+cは10の整数、aは1以上の整数、bおよびcは0または1以上の整数。X
1は以下の式(1)または(2)示す構造を構成単位とする基、X
2は水素原子またはアルケニル基。R
1、R
2、R
3は、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
【0025】
(lは2以上の整数、mは0以上の整数、nは2以上の整数。YおよびZは水素原子またはアルケニル基、Rはアルキル基またはアリール基である。また、Xが複数ある場合は式(1)あるいは式(2)の構造が異なっていても良くまた式(1)あるいは式(2)の構造が混在していても良い。)]で表される多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が好ましい。ここで、aは平均して1以上、好ましくは2以上であり、また、bは好ましくは1以上の整数であり、cは好ましくは0または1以上の整数である。a+b+cは10である。
また、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基またはアルケニル基を有することが好ましく、耐熱性や耐光性、製造上の観点からは分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基を有することが好ましい。
【0026】
<多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)>
本発明における(a)成分は、アルケニル基およびヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物であればよく、特に限定されない。
【0027】
本発明において使用される多面体構造ポリシロキサン系化合物において、多面体構造に含有されるSi原子の数は10であり、以下の構造で示される多面体構造を有するシルセスキオキサンが好ましい。
【0029】
上記式中R
1〜R
10のうち、少なくとも1つはアルケニル基、また、少なくとも1つは水素原子であり、その他の官能基としては、水素原子、または、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、これらの官能基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子やシアノ基などで置換した、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の官能基であり、これらの官能基の炭素数は1〜20で、より好ましくは炭素数1〜10の非置換または置換の1価の炭化水素基である。
【0030】
アルケニル基の例として、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。アルケニル基を有する基としては、(メタ)アクリロイル基を例示することができる。アルキル基の例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。シクロアルキル基の例として、シクロヘキシル基等、アリール基の例として、フェニル基、トリル基等が挙げられる。炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した基としては、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0031】
前記、アルケニル基においては、耐熱性の観点からビニル基が好ましく、アルケニル基および水素原子以外の官能基が選択される場合は、耐熱性の観点からメチル基が好ましい。
【0032】
また、上記式中R
1〜R
10において、ガスバリア性の観点からはアルケニル基または水素原子の数が多いほうが好ましく、製造上の観点から水素原子の数よりもアルケニル基の数が多いほうがより好ましい。
【0033】
上記、多面体構造を有するシルセスキオキサンは、例えば、RSiX
3(式中Rは、上述のR
1〜R
10を表し、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって、得ることができる。また、RSiX
3の加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより、閉環し、多面体構造を有するシルセスキオキサンを合成する方法も知られている。さらには、前記トリシラノール化合物に、1官能性シランおよび/または2官能性シランを反応させることにより、部分開裂型の多面体構造を有するシルセスキオキサンを合成することもできる。
【0034】
本発明での多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)において、さらに好ましい例としては、以下の構造で示されるような多面体構造を有するシリル化ケイ酸が例示される。多面体骨格を形成するSi原子とアルケニル基およびヒドロシリル基とが、シロキサン結合を介して結合していると、得られる硬化物が剛直になり過ぎず、良好な成形体を得ることができる傾向にある。
【0036】
上記式中R
11〜R
40のうち、少なくとも1つはアルケニル基、また、少なくとも1つは水素原子である。その他の官能基としては、水素原子、または、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、これらの官能基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の官能基であり、これらの官能基の炭素数は1〜20で、より好ましくは炭素数1〜10の非置換または置換の1価の炭化水素基である。
【0037】
アルケニル基の例として、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。アルケニル基を有する基としては、(メタ)アクリロイル基を例示することができる。アルキル基の例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。シクロアルキル基の例として、シクロヘキシル基等、アリール基の例として、フェニル基、トリル基等が挙げられる。炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した基としては、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0038】
前記、アルケニル基においては、耐熱性の観点からビニル基が好ましく、アルケニル基および水素原子以外の官能基が選択される場合は、耐熱性、耐光性の観点からメチル基が好ましい。
【0039】
また、上記式中R
11〜R
40において、ガスバリア性の観点からはアルケニル基または水素原子の数が多いほうが好ましく、製造上の観点から水素原子の数よりもアルケニル基の数が多いほうがより好ましい。
【0040】
多面体構造を有するシリル化ケイ酸の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成される。前記合成方法としては、具体的に、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。
【0041】
本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライド、水素原子含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、多面体構造を形成するSi原子とアルケニル基および水素原子とが、シロキサン結合を介して結合した多面体構造ポリシロキサン系化合物を得ることが可能となる。本発明においては、シリカや稲籾殻等のシリカ含有物質からも、同様の多面体構造を有するシリル化ケイ酸を得ることが可能である。
【0042】
本発明においては、多面体構造を有するシリル化ケイ酸の多面体骨格に含有されるSi原子の数は10であり、上記式の構造で示される多面体構造を有するシルセスキオキサンが好ましい。また、Si原子数の異なる多面体骨格を有するポリシロキサンとの混合物であってもよい。
【0043】
<ヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)>
本発明におけるヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)は、分子中にヒドロシリル基またはアルケニル基を平均して1個以上含有する化合物であれば特に制限はないが、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)のハンドリング性、成形加工性、透明性、あるいは、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を用いて得られる硬化物の透明性、耐熱性、耐光性の観点から、ヒドロシリル基またはアルケニル基を有するシロキサン化合物が好ましく、さらには、ヒドロシリル基またはアルケニル基を有する環状シロキサンや、ヒドロシリル基またはアルケニル基を有する直鎖状シロキサンが好ましい。特には耐熱性やガスバリア性・製造上の観点から、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンが好ましいものとして例示される。
【0044】
本発明におけるヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
アルケニル基を有する直鎖状シロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、などが例示される。
【0046】
アルケニル基を有する環状シロキサンの具体例としては、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,3,5,−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサンなどが例示される。
【0047】
ヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、などが例示される。
【0048】
ヒドロシリル基を有する環状シロキサンの具体例としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−1,3,5,−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサンなどが例示される。
【0049】
本発明におけるヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)は、前記したようにシロキサン化合物が好ましく、耐熱性・耐光性の観点から、シロキサン化合物中のSi原子上は、水素原子、メチル基から構成されることが好ましい。さらには、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが入手性にも優れていることから好ましい。また、特には、耐熱性や耐光性、ガスバリア性、耐レーザー性などの観点から、環状シロキサン、具体的に例えば1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
【0050】
ヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)の添加量は、多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)のアルケニル基またはヒドロシリル基1個あたり、ヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)のヒドロシリル基またはアルケニル基の数が2.5〜20個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、架橋反応によりゲル化が生じてハンドリング性の劣る多面体構造ポリシロキサン変性体(A)となり、多すぎると、(A)を用いて得られる硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。さらには、過剰量のヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)を存在させるため、例えば減圧・加熱条件下にて、未反応のヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)を取り除くことが好ましい。
【0051】
多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)とヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)をヒドロシリル化反応させて多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を得る際には、ヒドロシリル化触媒を用いることができる。ヒドロシリル化触媒としては、特に制限はなく、任意のものを使用することができる。具体的に例示すると、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、Pt
n(ViMe
2SiOSiMe
2Vi)
n、Pt〔(MeViSiO)
4〕
n};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh
3)
4、Pt(PBu
3)
4};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)
3〕
4、Pt〔P(OBu)
3〕
4}(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)
2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0052】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh
3)
3、RhCl
3、Rh/Al
2O
3、RuCl
3、IrCl
3、FeCl
3、AlCl
3、PdCl
2・2H
2O、NiCl
2、TiCl
4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)
2等が好ましい。
【0053】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましい。
【0054】
<ポリシロキサン系組成物>
本発明のポリシロキサン系組成物は、本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)に、必要に応じて硬化剤(B)、ヒドロシリル化触媒、硬化遅延剤、接着性付与剤を添加して成すこともできる。添加物は必要に応じて適宜選択することができる。硬化遅延剤を用いることで組成物安定性、硬化過程でのヒドロシリル化の反応性の調整をすることができる。本発明のポリシロキサン系組成物は、透明な液状性樹脂組成物となす事が可能である。液状組成物と成すことにより、基材に塗布し、加熱して硬化させることで透明の膜を得ることができ、例えば、各種接着剤、コーティング剤、封止剤として好適に用いることが可能である。
【0055】
また、本発明のポリシロキサン系組成物は金型に流し込み、加熱することにより、高い透明性、耐熱性、耐光性、ガスバリア性、加工性等に優れる硬化物を得ることもできる。
【0056】
硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは40〜250℃である。硬化温度が高くなり過ぎると、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低すぎると硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。具体的には例えば、70℃、120℃、150℃、180℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることが可能となる。硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及びヒドロシリル基の量その他、本発明のポリシロキサン系組成物のその他の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜24時間、好ましくは10分〜16時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
【0057】
<硬化剤(B)>
本発明における硬化剤(B)としては、アルケニル基またはヒドロシリル基を有する化合物を好適に用いることができる。アルケニル基またはヒドロシリル基を有する化合物としては、1分子中に少なくともアルケニル基またはヒドロシリル基を2個含有するものが好ましく、特にはアルケニル基またはヒドロシリル基を有するポリシロキサンが好ましい。さらには、アルケニル基またはヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサン、アルケニル基またはヒドロシリル基を有する環状シロキサン、分子末端にアルケニル基またはヒドロシリル基を有するポリシロキサンが好ましいものとして例示される。さらに、具体的に例えば、得られる硬化物の強度や耐熱性、耐光性の観点から、アルケニル基またはヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンであることが好ましく、両末端にアルケニル基またはヒドロシリル基を有する直鎖状のポリシロキサンであることがさらに好ましい。また、さらにはガスバリア性の観点から、シロキサンユニットの数は2〜20個以上であることが好ましく、さらに好ましくは2〜10個である。シロキサンユニットの数が多いときは、ガスバリア性の低下を招くことがある。
【0058】
本発明における硬化剤(B)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
アルケニル基を有する直鎖状シロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0060】
アルケニル基を有する環状シロキサンの具体例としては、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサンなどが例示される。
【0061】
分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルアルケニル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルアルケニルシロキサン単位とSiO
2単位、SiO
3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0062】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0063】
ヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0064】
ヒドロシリル基を有する環状シロキサンの具体例としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサンなどが例示される。
【0065】
分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルハイドロジェン基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位とSiO
2単位、SiO
3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0066】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0067】
また、本発明のポリシロキサン系組成物に用いることができるヒドロシリル化触媒については、特に制限はなく、任意のものを使用することができる。具体的に例示すると、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、Pt
n(ViMe
2SiOSiMe
2Vi)
n、Pt〔(MeViSiO)
4〕
n};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh
3)
4、Pt(PBu
3)
4};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)
3〕
4、Pt〔P(OBu)
3〕
4}(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)
2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0068】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh
3)
3、RhCl
3、Rh/Al
2O
3、RuCl
3、IrCl
3、FeCl
3、AlCl
3、PdCl
2・2H
2O、NiCl
2、TiCl
4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)
2等が好ましい。
さらに、硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、ヒドロシリル化触媒を追加することができる。
【0069】
本発明のポリシロキサン系組成物の保存安定性を改良する目的、あるいは硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもかまわない。
【0070】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示されうる。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示されうる。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示されうる。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示されうる。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。
【0071】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10
-1〜10
3モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜300モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0072】
また、本発明のポリシロキサン系組成物の接着性を改良する目的で、シランカップリング剤、ほう素系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を好適に使用することが可能である。
【0073】
シランカップリング剤の例としては、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基と、ケイ素原子結合アルコキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。官能基については、中でも、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が好ましい。
【0074】
具体的に例示すると、エポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基を有するシランカップリング剤としては3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0075】
また、メタクリル基あるいはアクリル基とケイ素原子結合アルコキシ基を有するシランカップリング剤としては3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0076】
前記、ほう素系カップリング剤の例としては、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sDE−ブチル、ほう酸トリ−tDrt−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイドが挙げられる。
【0077】
前記、チタン系カップリング剤の例としては、テトラ(n−ブトキシ)チタン,テトラ(i−プロポキシ)チタン,テトラ(ステアロキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)チタン,i−プロポキシ(2−エチルヘキサンジオラート)チタン,ジ−i−プロポキシ−ジエチルアセトアセテートチタン,ヒドロキシ−ビス(ラクテト)チタン、i−プロピルトリイソステアロイルチタネート,i−プロピル−トリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート,テトラ−i−プロピル)−ビス(ジオクチルホスファイト)チタネート,テトラオクチル−ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート,i−プロピルトリオクタノイルチタネート,i−プロピルジメタクリル−i−ステアロイルチタネートが例示される。
【0078】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、アルミニウムブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセトナート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが例示される。
【0079】
本発明における接着性付与剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。添加量は、(A)成分の0.01〜30重量%であることが好ましい。さらには0.1〜20重量%、特には1〜10重量%が好ましい。
【0080】
本発明のポリシロキサン系組成物はガスバリア性が高く(透湿度が低い)、その組成物の硬化後のガスバリア性(透湿度)が20g/m
2/24h以下さらには、10g/m
2/24h以下とすることも可能である。
【0081】
なお、本発明におけるガスバリア性(透湿度)とは以下の方法に従って算出されるものである。
【0082】
5cm角の板ガラス(0.5mm厚)の上部に5cm角のポリイソブチレンゴムシート(3mm厚、ロの字型になるように内部の3cm角を切り取ったもの)を固定した治具を作製し、和光純薬工業製塩化カルシウム(水分測定用)0.3gをロの字型内に充填しこれを試験体とする。さらに上部に4cm角の評価用硬化物(2mm厚)を固定し、恒温恒湿機(エスペック製 PR‐2KP)内で温度40℃、湿度、90%RHで24時間養生する。
【0084】
透湿度(g/m
2/24h)=[(透湿性試験後の試験体総重量(g))−(透湿性試験前の試験体総重量(g))]×10000/9cm
2
本発明におけるガスバリア性(透湿度)は、例えば、光半導体もしくは光学デバイスにおいて、銀リードフレーム等の腐食性抑制の目安となる値である。封止剤の透湿度が高い場合、具体的には20g/m
2/24hより高い場合においては、水蒸気、更には、酸素等のガスも透過しやすく、銀リードフレームが腐食され、光半導体もしくは光学デバイスの特性の低下を招く恐れがある。
【0085】
本発明のポリシロキサン系組成物は、その組成によって硬化後の透湿度が20g/m
2/24h以下、あるいは10g/m
2/24h以下となるため、水蒸気や酸素等のガスの透過を抑制することができる。そのため、本発明のポリシロキサン系組成物を封止剤として用いてなる光半導体は、素子の劣化が少なく耐久性の良い光学デバイスを提供することができる。
【0086】
また、本発明に用いるポリシロキサン系組成物には、上記必須成分に加え、任意成分として本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、シリカ、粉砕石英、炭酸カルシウム、カーボンなどの充填剤を添加してもよい。
【0087】
また、本発明のポリシロキサン系組成物には、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。
【0088】
この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。
【0089】
また、本発明のポリシロキサン系組成物を難燃性、耐火性にするためには二酸化チタン、炭酸マンガン、Fe
2O
3、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を添加してもよい。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0090】
本発明に用いるポリシロキサン系組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりすることにより得ることができる。
【0091】
本発明のポリシロキサン系組成物は、成形体として使用することができる。成形方法としては、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、発泡成形、射出成形、液状射出成形、注型成形などの任意の方法を使用することができる。
【0092】
本発明によるポリシロキサン系組成物から得られる成形体は、耐熱性、耐光性に優れる。
本発明のポリシロキサン系組成物は、光学材料用組成物として用いることができる。ここで言う光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。
【0093】
本発明において得られる変性体および組成物の用途としては、具体的には、カラーフィルター、レジスト材料、液晶ディスプレイ分野における基板材料、パッシベーション膜、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料が例示される。
【0094】
また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止剤、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またLED表示装置に使用されるLED素子のモールド材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤が例示される。
【0095】
光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤が例示される。
【0096】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部が例示される。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーが例示される。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤などが例示される。光センシング機器のレンズ用材料、封止剤、接着剤、フィルムなどが例示される。
【0097】
光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止剤、接着剤などが例示される。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止剤、接着剤などが例示される。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LEDの封止剤、接着剤などが例示される。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【0098】
光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーが例示される。
【0099】
半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料が例示される。
【0100】
自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品が例示される。また、鉄道車輌用の複層ガラスが例示される。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コートが例示される。
【0101】
建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料が例示される。農業用では、ハウス被覆用フィルムが例示される。
【0102】
次世代の光・電子機能有機材料としては、次世代DVD、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【実施例】
【0103】
次に本発明の組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0104】
<試験方法>
(耐熱試験)
150℃に温度設定した熱風循環オーブン内にて、2mm厚板状成形体を100時間養生し、養生後の外観を目視で評価し、透明性の変化がみられない場合を○、着色がみられる場合を×とした。
【0105】
(光線透過率)
紫外可視分光光度計V−560(日本分光株式会社製)を用い、温度20℃/湿度50%の条件下、波長700nmでの光線透過率を測定した。
【0106】
(ガスバリア性試験)
本発明におけるガスバリア性試験とは以下の方法に従って算出したものである。
【0107】
5cm角の板ガラス(0.5mm厚)の上部に5cm角のポリイソブチレンゴムシート(3mm厚、ロの字型になるように内部の3cm角を切り取ったもの)を固定した治具を作製し、和光純薬工業製塩化カルシウム(水分測定用)0.3gをロの字型内に充填しこれを試験体とした。さらに上部に4cm角の評価用硬化物(2mm厚)を固定し、恒温恒湿機(エスペック製 PR‐2KP)内で温度40℃、湿度、90%RHで24時間養生した。以下の式に従い、ガスバリア性(透湿度)を算出した。
透湿度(g/m
2/24h)=[(透湿性試験後の試験体総重量(g))−(透湿性試験前の試験体総重量(g))]×10000/9cm
2
【0108】
(製造例1)
多面体構造ポリシロキサン系化合物の合成方法としては、40%2-テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液245gを水350gで希釈した後、テトラアルコキシシラン112gを加え、室温で3時間激しく攪拌した。反応系が均一溶液になった段階で攪拌を緩め、さらに16時間反応させた。次に、反応混合物に、イソプロピルアルコール117gを加え均一溶液とした。ジメチルビニルクロロシラン201g、トリメチルクロロシラン121g、ヘキサン450gの溶液を攪拌しながら、得られた均一溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を分離し、水層をヘキサンで抽出した。その後、先の有機層と共に減圧濃縮することにより、多面体構造ポリシロキサン系化合物(a−1)75gを得た。
1H−NMRより、ビニル基が5.1個とトリメチルシリル基が4.9個である事を確認した。
【0109】
(製造例2)
多面体構造ポリシロキサン系化合物の合成方法としては、40%2-テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液245gを水350gで希釈した後、テトラアルコキシシラン112gを加え、室温で3時間激しく攪拌した。反応系が均一溶液になった段階で攪拌を緩め、さらに16時間反応させた。次に、反応混合物に、イソプロピルアルコール117gを加え均一溶液とした。ジメチルビニルクロロシラン335g、ヘキサン450gの溶液を攪拌しながら、得られた均一溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を分離し、水層をヘキサンで抽出した。その後、先の有機層と共に減圧濃縮することにより、多面体構造ポリシロキサン系化合物(a−2)80gを得た。
1H−NMRより、ビニル基が10個である事を確認した。
【0110】
(製造例3)
多面体構造ポリシロキサン系化合物の合成方法としては、40%2-テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液245gを水350gで希釈した後、テトラアルコキシシラン112gを加え、室温で3時間激しく攪拌した。反応系が均一溶液になった段階で攪拌を緩め、さらに16時間反応させた。次に、反応混合物に、イソプロピルアルコール117gを加え均一溶液とした。ジメチルビニルクロロシラン159g、ジメチルクロロシラン138g、ヘキサン450gの溶液を攪拌しながら、得られた均一溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を分離し、水層をヘキサンで抽出した。その後、先の有機層と共に減圧濃縮することにより、多面体構造ポリシロキサン系化合物(a−3)69gを得た。
1H−NMRより、ビニル基が4.4個、ヒドロシリル基が5.6個である事を確認した。
【0111】
(製造比較例)
多面体構造ポリシロキサン系化合物の合成方法としては、48%コリン水溶液386gにテトラアルコキシシラン313gを加え、室温で3時間激しく攪拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、攪拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール225mLを加え均一溶液とした。ジメチルビニルクロロシラン162g、トリメチルクロロシラン179g、ヘキサン225mLの溶液を攪拌しながら、得られた均一溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を分離し、水層をヘキサンで抽出した。その後、先の有機層と共に減圧濃縮することにより、多面体構造ポリシロキサン系化合物(a−4)175gを得た。
1H−NMRより、ビニル基が3.0個とトリメチルシリル基が5.0個である事を確認した。
【0112】
(実施例1)
製造例1で得られた多面体構造ポリシロキサン系化合物(a−1)7g、トルエン14g、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)2.36μLの混合溶液を1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(クラリアント製)15gとトルエン15gの混合溶液に滴下し、滴下終了後105℃で2時間加温したのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液から、トルエンと未反応の1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、多面体構造ポリシロキサン変性体(A−1)11gを得た。
【0113】
得られた多面体構造ポリシロキサン変性体(A−1)6.50gに、ビニル基を両末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(MVMV、和光純薬工業製)2.75g、ジメチルマレート2.00μLを加え、ポリシロキサン系組成物を調整した。得られたポリシロキサン系組成物を型枠に流し込み、80℃で2時間、100℃で2時間、110℃で2時間、150℃で6時間加熱して硬化させ、2mm厚の評価用成形体を得た。このようにして得られた成形体のガスバリア性評価を行った。結果を表1に示す。
【0114】
(実施例2)
製造例2で得られた多面体構造ポリシロキサン系化合物(a−2)7g、トルエン14g、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)4.45μLの混合溶液を1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(クラリアント製)27gとトルエン27gの混合溶液に滴下し、105℃で2時間加温したのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液から、トルエンと未反応の1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、多面体構造ポリシロキサン変性体(A−2)15gを得た。
【0115】
得られた多面体構造ポリシロキサン変性体(A−2)6.50gに、ビニル基を両末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(MVMV、和光純薬工業製)3.69g、ジメチルマレート2.69μLを加え、ポリシロキサン系組成物を調整した。得られたポリシロキサン系組成物を実施例1と同様に評価し、結果を表1に示す。
【0116】
(実施例3)
製造例3で得られた多面体構造ポリシロキサン系化合物(a−3)7g、トルエン14g、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)2.16μLの混合溶液を1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(クラリアント製)13gとトルエン13gの混合溶液に滴下し、105℃で2時間加温したのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液から、トルエンと未反応の1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、多面体構造ポリシロキサン変性体(A−3)10gを得た。
【0117】
得られた多面体構造ポリシロキサン変性体(A−3)4.00gに、ビニル基を両末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(MVMV、和光純薬工業製)2.29g、ジメチルマレート1.17μLを加え、ポリシロキサン系組成物を調整した。得られたポリシロキサン系組成物を実施例1と同様に評価し、結果を表1に示す。
【0118】
(比較例1)
製造比較例で得られた多面体構造ポリシロキサン系化合物(a−4)10g、トルエン30g、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)2.51μLの混合溶液を、1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(クラリアント製)15gとトルエン15gの混合溶液に滴下し、105℃で2時間加温したのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液から、トルエンと未反応の1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、多面体構造ポリシロキサン変性体(A−4)14gを得た。
【0119】
得られた多面体構造ポリシロキサン変性体(A−4)7.40gに、ビニル基を両末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(MVMV、和光純薬工業製)2.63g、ジメチルマレート1.91μLを加え、ポリシロキサン系組成物を調整した。得られたポリシロキサン系組成物を実施例1と同様に評価し、結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
以上のように、本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体より得られるポリシロキサン系組成物は、透明性、耐熱性、耐光性に優れており、且つ、従来の多面体構造ポリシロキサン変性体からなる組成物よりもガスバリア性に優れている。これにより、本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体より得られるポリシロキサン系組成物を封止剤として用いた光半導体は、素子の劣化が少なく耐久性の良い光学デバイスを提供することができる。