(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジン本体(19)のクランクケース(20)に連設されて後輪(WR)の側方まで延出される伝動ケース(54)内に、前記クランクケース(20)の一側面が臨む変速機室(61)が形成され、前記クランクケース(20)で回転自在に支承されるクランク軸(26)と、前記後輪(WR)の車軸(56)に連動、連結されるとともに前記伝動ケース(54)で回転自在に支承される伝動軸(66)との間に設けられるベルト式無段変速機(52A)が前記変速機室(61)に収容され、前記クランク軸(26)を回転自在に貫通せしめる第1軸支持部(70)が前記クランクケース(20)の前記一側面に設けられ、前記伝動軸(66)を回転自在に貫通せしめる第2軸支持部(108)が前記伝動ケース(54)に設けられる小型車両用パワーユニットであって、前記ベルト式無段変速機(52A)の一部を構成する駆動プーリ(63)が、前記クランク軸(26)に固定される固定プーリ半体(67)と、該固定プーリ半体(67)よりも前記クランクケース(20)側で前記固定プーリ半体(67)に対する近接・離間を可能として前記クランク軸(26)に支承される可動プーリ半体(68)とを備え、前記駆動プーリ(63)のベルト巻き掛け半径を変化させるようにして前記可動プーリ半体(68)を軸方向に駆動する駆動機構(71)が、前記第1軸支持部(70)に対向して前記クランク軸(26)に固定されるランププレート(74)と、該ランププレート(74)および前記可動プーリ半体(68)背面間に配置される複数のウエイトローラ(75)とを備え、第1軸支持部(70)および前記クランク軸(26)間、ならびに第2軸支持部(108)および前記伝動軸(66)間に、前記変速機室(61)側から順に無端状のシール部材(72)および軸受部材(73)が介装されるものにおいて、
円筒状に形成された前記第1軸支持部(70)には、前記クランク軸(26)を無端状に囲むようにして前記ランププレート(74)に向けて張り出す囲い壁(81)が、該囲い壁(81)の先端部を前記ランププレート(74)に近接させるようにして一体に形成され、
前記可動プーリ半体(68)には、該可動プーリ半体(68)の径方向の外周部から前記クランクケース(20)側に向けて張出す円筒部(68b)が、前記駆動プーリ(63)の低速回転時に該円筒部(68b)の前記クランクケース(20)側の先端部が前記囲い壁(81)の先端部よりも前記クランクケース(20)側に位置するようにして一体に形成され、
前記ランププレート(74)には、前記ウエイトローラ(75)を転がり接触させる複数の斜面部(74c)が、前記クランクケース(20)側に一部を突出させるようにして形成され、更に前記ランププレート(74)には、前記斜面部(74c)よりも前記クランクケース(20)側に在って前記囲い壁(81)内に一部が配置される環状部(74b)が形成されることを特徴とする小型車両用パワーユニット。
前記ランププレート(74)の外周の周方向複数箇所にスライドピース(79)が取付けられ、それらのスライドピース(79)を前記クランク軸(26)の軸線に沿う方向にガイドするようにして前記軸線に沿う方向に延びるガイド板部(68a)が、少なくとも低回転速度では前記クランク軸(26)の半径方向で前記囲い壁(81)に一部が重なるようにして前記可動プーリ半体(68)の外周の周方向複数箇所に設けられることを特徴とする請求項1記載の小型車両用パワーユニット。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお以下の説明で前後、上下および左右の各方向は自動二輪車に搭乗した乗員から見た方向を言うものとする。
【0016】
本発明の第1の実施の形態について
図1〜
図6を参照しながら説明すると、先ず
図1において、この小型車両は低床式のフロア11を有するスクータ型自動二輪車であり、その車体フレームFは、前輪WFを軸支するフロントフォーク12を操向可能に支承するヘッドパイプ13と、該ヘッドパイプ13に前端部が接合される左右一対のサイドフレーム14…とを備える。サイドフレーム14は、ヘッドパイプ13から下方に垂下されるダウンフレーム部14aと、ダウンフレーム部14aの下端に連なるとともに前記フロア11の下方で後方に延びるとともに後半部が後ろ上がりに傾斜するように形成されるロアフレーム部14bと、ロアフレーム部14bの後端に連なるとともに前記フロア11の後方で上方に立ち上がる立ち上がりフレーム部14cと、乗車用シート15を支持すべく立ち上がりフレーム部14cの後端から後方に延びるシートレール部14dとを一体に有して、単一のパイプが屈曲成形されて成る。
【0017】
前記サイドフレーム14…におけるロアフレーム部14b…の後部およびシートレール部14d…の前部間には、サイドフレーム14…におけるロアフレーム部14b…の下方かつ立ち上がりフレーム部14c…の後方に位置するようにしてリヤサブフレーム16…が設けられており、両サイドフレーム14…および両リヤサブフレーム16…間にピボットプレート17…が設けられる。
【0018】
前記ピボットプレート17…には、後輪WRの前方側に配置されるエンジンEと、後輪WRの左側方に配置される伝動装置Mとから成るパワーユニットPが、上下に揺動することを可能としてリンク機構18を介して上下揺動可能に支承され、後輪WRはパワーユニットPの後部に軸支される。
【0019】
図2において、単気筒の水冷4サイクルエンジンである前記エンジンEのエンジン本体19は、左右に2分割された左右クランクケース半体20L,20Rが結合されて成るとともにクランク室34が内部に形成されるクランクケース20と、該クランクケース20に結合されるシリンダブロック21と、該シリンダブロック21に結合されるシリンダヘッド22と、該シリンダヘッド22に結合されるヘッドカバー23とを備え、前上がりにわずかに傾斜したシリンダ軸線を有してシリンダブロック21に設けられるシリンダボア24にピストン25が摺動可能に嵌合される。前記クランクケース20には、車体フレームFの幅方向に延びるクランク軸26が回転自在に支承されており、該クランク軸26に前記ピストン25が連接される。
【0020】
前記クランクケース20における右クランクケース半体20Rを回転自在に貫通するクランク軸26の右側端部にはアウターロータ27が固定され、該アウターロータ27とともに発電機29を構成するようにしてアウターロータ27で囲繞されるインナーステータ28が、右クランクケース半体20Rに締結される支持板30に固定される。
【0021】
前記右クランクケース半体20Rには、前記発電機29を囲む筒状の発電機カバー31が結合されており、この発電機カバー31の右側にラジエータ32が配設される。前記クランク軸26には、前記ラジエータ32に冷却風を流通させるための冷却ファン33が、前記発電機29および前記ラジエータ32間に配置されるようにして固定される。
【0022】
ところで、前記ピストン25の頂部を臨ませてシリンダブロック21およびシリンダヘッド22間に形成される燃焼室35への吸気を制御する吸気弁(図示せず)ならびに前記燃焼室35からの排気を制御する排気弁(図示せず)を開閉駆動する動弁装置36が、シリンダヘッド22およびヘッドカバー23間に収容されており、この動弁装置36が備えるカム軸37が、前記クランク軸26と平行な軸線まわりに回転することを可能としてシリンダヘッド22に支承される。
【0023】
前記クランク軸26および前記カム軸37間には、前記クランクケース20から前記シリンダヘッド22にわたって前記エンジン本体19に形成されるカムチェーン室38を走行するカムチェーン39を含む調時伝動装置40が設けられ、この調時伝動機構40によってクランク軸26からの動力が1/2の減速比で前記カム軸37に伝達される。また前記カム軸37には、前記シリンダヘッド22の右側面に取付けられる冷却水ポンプ41のポンプ軸42が同軸にかつ相対回転不能に連結されており、冷却水ポンプ41はサーモスタット43を介して前記ラジエータ32に接続される。
【0024】
図1に注目して、エンジン本体19におけるシリンダヘッド22の上部側面には吸気装置44が接続されるものであり、この吸気装置44は、エアクリーナ45と、該エアクリーナ45に上流端が接続されるインレットパイプ46と、該インレットパイプ46の下流端およびシリンダヘッド22間に設けられるスロットルボディ47とを備え、スロットルボディ47で計量された空気中に燃料を噴射する燃料噴射弁48がシリンダヘッド22に取付けられる。また前記シリンダヘッド22の下部側面に接続される排気装置49は、シリンダヘッド22の下部に接続されるとともにエンジン本体19の右側下部から後輪WRの右側方側に延出される排気管50と、該排気管50に接続されて後輪WRの右側方に配置される排気マフラー51とを備える。
【0025】
前記伝動装置Mは、前記クランクケース20に連設されて後輪WRの左側方に延びる伝動ケース54内に収容されるベルト式無段変速機52Aと、該無段変速機52Aの出力を減速して後輪WRの車軸56に伝達するギヤ機構53とを備え、ギヤ機構53は、前記伝動ケース54の後部に付設されるギヤケース55内に収容される。
【0026】
前記伝動ケース54は、クランクケース20の左クランクケース半体20Lに一体に連なって後輪WRの左側方まで後方に延びるケース主体58と、該ケース主体58を外側から覆う第1カバー59とから成り、前記吸気装置44のエアクリーナ45は、該エアクリーナ45の下方に配置される前記ケース主体58で支持される。前記ギヤケース55は、前記ケース主体58の後部と、該ケース主体58の後部に内側から結合される第2カバー60とから成る。前記伝動ケース54内には、ベルト式無段変速機52Aを収容する変速機室61が
、クランクケース20の一側面が臨むようにし
て前記クランクケース20内のクランク室34とは分離して形成され、前記ギヤケース55内には前記ギヤ機構53を収容するギヤ室62が、前記変速機室61および前記クランク室34とは分離して形成される。
【0027】
図3を併せて参照して、前記クランクケース20の左ケース半体20Lの前記一側面には、前記クランク室34および前記変速機室61間を結ぶ軸受孔69を形成する円筒状の第1軸支持部70が設けられており、ベルト式無段変速機52Aは、前記軸受孔69を回転自在に貫通するクランク軸26ならびに前記後輪WRの車軸56に連動、連結される伝動軸66間に設けられるようにして前記変速機室61に収容される。
【0028】
前記軸受孔69の内周および前記クランク軸26の外周間には、前記変速機室61から前記クランク室34側に向かって順に無端状のシール部材であるオイルシール72と、軸受部材であるボールベアリング73とが介装される。前記軸受孔69は、前記変速機室61側の小径孔部69aと、小径孔部69aよりも大径にして前記クランク室34側に配置される大径孔部69bとが同軸に連なって成るものであり、オイルシール72が小径孔部69aの内周およびクランク軸26の外周間に介装され、ボールベアリング73が大径孔部69bの内周およびクランク軸26の外周間に介装される。しかも前記小径孔部69aの内径は、前記ボールベアリング73のメンテナンス交換での取り外し時に前記ボールベアリング73の内輪73aを小径孔部69a側から押せるようにして比較的大径に形成される。
【0029】
ベルト式無段変速機52Aは、ベルト巻き掛け径を可変として前記クランク軸26に設けられる駆動プーリ63と、伝動軸66に設けられる従動プーリ64Aと、駆動プーリ63および従動プーリ64Aに巻き掛けられる無端状のVベルト65とを備え、前記駆動プーリ63のベルト巻き掛け径を変化させる駆動機構71が、前記変速機室61内で前記クランク軸26に設けられる。
【0030】
前記駆動プーリ63は、クランク軸26に固定された固定プーリ半体67と、固定プーリ半体67に対して近接・離間することを可能として固定プーリ半体67よりもクランクケース20側に配置される可動プーリ半体68とから成る。
【0031】
また前記駆動機構71は、前記可動プーリ半体68および第1軸支持部70間に配置されて前記クランク軸26に固定されたランププレート74と、該ランププレート74および前記可動プーリ半体6
8間に配置される複数のウエイトローラ75…とを備える。
【0032】
前記変速機室61内で前記クランク軸26には、前記クランクケース20とは反対側に臨む環状の段部26aが形成される。一方、前記ランププレート74の中央部には、前記クランク軸26を貫通せしめる透孔76が設けられており、前記透孔76の周縁部でランププレート74が前記段部26aに当接される。また前記クランク軸26には、前記可動プーリ半体68の中央部を貫通する円筒状のカラー77が嵌装されており、このカラー77の内端および前記段部26a間に前記ランププレート74が挟まれ、カラー77の外端は、前記クランク軸26を囲繞するようにして前記固定プーリ半体67の内側面に当接される。しかも後述のキック式始動装置84の一部を構成する被係合体87が前記カラー77の外端との間に前記固定プーリ半体67を挟むようにして前記固定プーリ半体67の外側面に当接されており、該被係合体87から突出するようにして前記クランク軸26の外端に同軸に設けられたねじ軸部26bにナット78が螺合され、このナット78を締めつけて前記被係合体87に当接、係合させることで前記固定プーリ半体67がクランク軸26に固定される。
【0033】
前記可動プーリ半体68は、前記カラー77でガイドされるようにして固定プーリ半体67に近接・離間可能であり、可動プーリ半体68が固定プーリ半体67に近接することで駆動プーリ63へのVベルト65のベルト巻き掛け半径が大きくなる。
【0034】
図4および
図5において、前記ランププレート74は、前記クランク軸26を貫通せしめる透孔76を中央部に有して円板状に形成されるとともに前記カラー77の内端が当接される円板部74aと、該円板部74aの外周の全周に連なって前記クランクケース20とは反対側に円筒状に延びる環状部74bと、該環状部74bの周方向に等間隔をあけた複数箇所(この実施の形態では3箇所)で相互に隣接して対をなすようにして放射状に張り出す複数組(この実施の形態では3組)の斜面部74c,74c…と、各組の斜面部74c,74c…間に配置されてクランク軸26の軸線と直交する平面に沿う平面部74d…と、前記クランク軸26の軸線に沿う方向に延びて各組の斜面部74c,74c…および前記平面部74d…間を結ぶ横断面略V字状の連結壁部74e…とを一体に有する。
【0035】
前記斜面部74c…は、前記ウエイトローラ75…を転がり接触させるものであり、前記クランク軸26の半径方向外方に向かうにつれて前記可動プーリ半体68に近接するように傾斜して形成され、これらの斜面部74c…の一部は、
図5で示すように第1軸支持部70側に突出する。
【0036】
また前記ランププレート74の外周の周方向複数箇所、この実施の形態では前記平面部74d…の外周縁部にスライドピース79…が取付けられており、それらのスライドピース79…を前記クランク軸26の軸線に沿う方向にガイドするようにして前記軸線に沿う方向に延びるガイド板部68a…が、前記可動プーリ半体68の外周の周方向複数箇所(この実施の形態では3箇所)に設けられ、可動プーリ半体68は前記ランププレート74とともに回転する。
【0037】
また、可動プーリ半体6
8には、
該可動プーリ半体68の径方向の外周部からクランクケース20側に
向けて張出す円筒部68b
が、駆動プーリ63の低速回転時に
該円筒部68bの
クランクケース20側の先
端部が囲い壁81の
先端部よりもクランクケース20側に位置するようにして一体に形成される。
【0038】
而して前記駆動機構71によれば、前記クランク軸26とともに回転する前記ランププレート74の回転速度が増大するのに応じて前記ウエイトローラ75…に作用する遠心力によって前記可動プーリ半体68が固定プーリ半体67に近接する側に押圧駆動され、駆動プーリ63のベルト巻き掛け半径が大きくなる。
【0039】
前記伝動ケース54における第1カバー59には、キック軸82が回転自在に支承されており、該キック軸82の外端にキックペダル83が設けられる。また第1カバー59の内面側で前記キック軸82および前記クランク軸26間には、キックペダル83の踏み込み操作に応じたキック軸82の回転動力を前記クランク軸26に伝達可能としたキック式始動装置84が設けられる。
【0040】
キック式始動装置84は、キック軸82の内端に固定されるセクタギヤ85と、軸方向の移動および軸線まわりの回転を可能として第1カバー59に支持されて前記クランク軸26と同軸に配置されるラチェット軸86と、前記固定プーリ半体67と反対側に臨むラチェット歯87aを有して前記固定プーリ半体67に固定される被係合体87と、前記セクタギヤ85に噛合するようにして前記ラチェット軸86に一体に形成される従動ヘリカルギヤ88と、前記ラチェット歯87aに噛合可能なラチェット歯89aを有して前記被係合体87に対向するとともに前記ラチェット軸86に固定されるラチェットホイール89と、前記伝動ケース54の第1カバー59および前記セクタギヤ85間に設けられる戻しばね90とを備える。
【0041】
このキック式始動装置84では、キックペダル83の踏み込み操作によって前記セクタギヤ85を前記戻しばね90のばね力に抗して回動操作すると、ラチェット軸86が回転しつつ固定プーリ半体67側に移動し、ラチェットホイール89のラチェット歯89aが被係合体87のラチェット歯87aに噛合し、被係合体87および固定プーリ半体67を介してクランク軸26に始動用回転動力が伝達されることになる。
【0042】
また駆動プーリ63における固定プーリ半体67の外面には、伝動ケース54内に冷却風を流通させる冷却ファンとしての機能を前記固定プーリ半体67に果たさせるための複数のフィン91…が突設される。
【0043】
図6を併せて参照して、従動プーリ64Aは、前記伝動軸66を同軸に囲繞しつつ該伝動軸66に相対回転可能に支承される円筒状の内筒118に固定される固定プーリ半体92と、前記内筒118に対する軸方向相対移動および相対回動を可能として前記内筒118を同軸に囲繞する外筒119に固定されることで前記固定プーリ半体92に対する近接・離反を可能とした可動プーリ半体93とで構成され、固定プーリ半体92および可動プーリ半体93間にVベルト65が巻き掛けられる。また可動プーリ半体93および固定プーリ半体92間の相対回転位相差に応じて両プーリ半体92,93間に軸方向の分力を作用せしめるトルクカム機構94が、前記内筒118および前記外筒119間に設けられ、可動プーリ半体93はコイルスプリング95によって固定プーリ半体92側に向けて弾発付勢され、固定プーリ半体92および伝動軸66間には、エンジン回転数が設定回転数を超えるのに伴って動力伝達状態となる遠心クラッチ96が設けられる。
【0044】
而して従動プーリ64Aにおける固定プーリ半体92および可動プーリ半体93間の軸方向間隔は、前記トルクカム機構94によって生じる軸方向の力と、コイルスプリング95によって生じる軸方向の弾性力と、固定プーリ半体92および可動プーリ半体93間の間隔をあける方向に作用するVベルト65からの力とのバランスにより決定され、駆動プーリ63において可動プーリ半体68を固定プーリ半体67に近接させることによりVベルト65の駆動プーリ63への巻き掛け半径が大きくなると、Vベルト65の従動プーリ64Aへの巻き掛け半径が小さくなる。
【0045】
後輪WRの車軸56の一端部は、第2カバー60を気密に貫通してギヤケース55内に突入されており、この車軸56の一端部はケース主体58および第2カバー60で回転自在に支承され、前記伝動軸66および前記車軸56間に設けられるギヤ機構53がギヤ室62に収納される。
【0046】
またエンジン本体19のクランクケース20に連設されたスイングアーム98(
図2参照)が後輪WRの右側に配置されており、このスイングアーム98の後部に前記車軸56の他端部が回転自在に支承される。さらに
図1で示すように、前記伝動ケース54におけるケース主体58の後部と、車体フレームFにおける左側のシートレール部14dの後部との間には、リヤクッションユニット99が設けられる。
【0047】
前記ギヤ機構53は、前記クランク軸26からの回転動力が伝達される伝動軸66に一体に設けられるドライブギヤ100と、前記後輪WRの車軸56に設けられるファイナルギヤ101と、該ファイナルギヤ101および前記ドライブギヤ100間に配設される第1および第2カウンターギヤ102,103とを有して前記ギヤ室62に収容される。
【0048】
前記ギヤケース55を協働して構成する前記ケース主体58および第2カバー60にはカウンター軸104の両端部が回転自在に支承されており、ドライブギヤ100よりも大径である第1カウンターギヤ102は、ドライブギヤ100に噛合するようにして前記カウンター軸104に固定され、第1カウンターギヤ102および前記ファイナルギヤ101よりも小径である第2カウンターギヤ103が、前記ファイナルギヤ101に噛合するようにして前記カウンター軸104に一体に設けられる。
【0049】
前記伝動軸66の一端部は、前記伝動ケース54における第1カバー59にボールベアリング105を介して回転自在に支承され、この伝動軸66の他端部はギヤケース55における第2カバー60にボールベアリング106を介して回転自在に支承される。またケース主体58には、前記変速機室61および前記ギヤ室62間を結ぶ軸受孔107を形成する第2軸支持部108が設けられており、前記伝動軸66は前記軸受孔107を回転自在に貫通する。
【0050】
第2軸支持部108における前記軸受孔107の内周および前記伝動軸66の外周間には、前記変速機室61から前記ギヤ室62側に向かって順に無端状のシール部材であるオイルシール109と、軸受部材であるボールベアリング110とが介装される。前記軸受孔107は、前記変速機室61側の小径孔部107aと、小径孔部107aよりも大径にして前記ギヤ室62側に配置される大径孔部107bとが同軸に連なって成るものであり、オイルシール109が小径孔部107aの内周および伝動軸66の外周間に介装され、ボールベアリング110が大径孔部107bの内周および伝動軸66の外周間に介装される。
【0051】
前記カウンター軸104の両端部は、前記ギヤケース55のケース主体58および第2カバー60にボールベアリング112,113を介して回転自在に支承される。また前記車軸56の一端部は前記ケース主体58にボールベアリング114を介して回転自在に支承され、第2カバー60を回転自在に貫通する前記車軸56の中間部および第2カバー60間には、前記ギヤ室62側から順にオイルシール115およびボールベアリング116が介装される。
【0052】
ところで前記クランクケース20の左ケース半体20Lに設けられた第1軸支持部70における前記軸受孔69の小径孔部69aは上述のように比較的大径に形成されるものであり、第1軸支持部70およびクランク軸26間に介装されて変速機室61に臨む前記オイルシール72も比較的大径に形成されるので、伝動ケース54の変速機室61内で浮遊している埃の付着に対して不利となっている。また前記伝動ケース54におけるケース主体58に設けられた第2軸支持部108および伝動軸66間に介装されているオイルシール109も変速機室61に臨むように配置されており、このオイルシール109への埃の付着も抑制したい。
【0053】
本発明に従えば、第1軸支持部70に、第1軸支持部70の変速機室61側の端部に対向するランププレート74に向けて張り出す囲い壁81が、前記クランク軸26を無端状に囲むようにして設けられるものであり、この第1の実施の形態ではクランク軸26の全周を囲みつつランププレート74に向けて張り出す囲い壁81が第1軸支持部70に設けられるとともに、伝動軸66の全周を囲みつつ固定プーリ半体92に向けて張り出す囲い壁111が第2軸支持部108に設けられ、一方の囲い壁81の先端部は前記ランププレート74に近接して配置され、他方の囲い壁111の先端部は固定プーリ半体92に近接して配置される。
【0054】
一方の囲い壁81は、前記クランクケース20の左ケース半体20Lに一体に形成されるものであり、その外周面を第1軸支持部70の外周面に面一に連ならせつつ、前記第1軸支持部70の全周にわたって連続して無端状に形成される。
【0055】
また前記ランププレート74は、前記斜面部74c,74c…よりも前記クランク軸26の半径方向に沿う内側に配置される円板部74aおよび環状部74bを備えるのであるが、前記囲い壁81内には、その円板部74aおよび環状部74bのうち環状部74bの一部および円板部74aが配置される。
【0056】
また前記ランププレート74に取付けられたスライドピース79…をガイドするようにして駆動プーリ63における前記可動プーリ半体68の外周の周方向複数箇所に設けられるガイド板部68a…は、少なくともクランク軸26およびランププレート74が低回転速度にある状態では、前記クランク軸26の半径方向で前記囲い壁81に一部が重なるように形成される
。
【0057】
また第2軸支持部108に設けられた囲い壁111が、環状に形成されてケース主体58の第2軸支持部108に一体に形成されており、この囲い壁111は、前記従動プーリ64Aにおける前記固定プーリ半体92がその内周に備える円筒状のボス部92aに、半径方向で前記囲い壁111の先端部が重なるように形成されることが望ましい。
【0058】
次に第1の実施の形態の作用について説明すると、クランク軸26を回転自在に貫通させる第1軸支持部70がクランクケース20の左ケース半体20Lの一側面に設けられ、後輪WRの車軸56に連動、連結される伝動軸66を回転自在に貫通させる第2軸支持部108が伝動ケース54のケース主体58に設けられ、クランク軸26および伝動軸66間に設けられるベルト式無段変速機52Aが伝動ケース54の変速機室61に収容され、第1軸支持部70およびクランク軸26間には、変速機室61から順にオイルシール72およびボールベアリング73が介装され、第2軸支持部108および伝動軸66間には、変速機室61側から順にオイルシール109およびボールベアリング110が介装されている。
【0059】
ところで伝動ケース54の変速機室61内には、ベルト式無段変速機52AにおけるVベルト65の摩耗粉や、駆動プーリ63における固定プーリ半体67の外面に突設されたフィン91…によって伝動ケース54内に導入される外気に含まれる塵埃等の埃が浮遊しており、この埃が前記オイルシール72,109に付着するとオイルシール72,109の寿命低下を招くことになる。しかるに、この第1の実施の形態では,クランク軸26の全周を囲みつつランププレート74に向けて張り出す囲い壁81が第1軸支持部70に設けられるとともに、伝動軸66の全周を囲みつつ固定プーリ半体92に向けて張り出す囲い壁111が第2軸支持部108に設けられ、一方の囲い壁81の先端部は前記ランププレート74に近接して配置され、他方の囲い壁111の先端部は固定プーリ半体92に近接して配置される。
【0060】
したがって、オイルシール72の変速機室61側の端部をランププレート74および囲い壁81で覆うようにして、変速機室61内の埃がオイルシール72に付着することを極力抑制することができ、オイルシール72の寿命向上に寄与することができるとともに、オイルシール109の変速機室61側の端部を固定プーリ半体92および囲い壁111で覆うようにして、変速機室61内の埃がオイルシール109に付着することを極力抑制することができ、オイルシール109の寿命向上に寄与することができる。
【0061】
また囲い壁81がクランクケース20の左ケース半体20Lに一体に形成され、囲い壁111がケース主体58に一体に形成されるので、部品点数の増加を抑えるとともに生産性の向上を図り、コストダウンが可能となる。
【0062】
また、ランププレート74には、斜面部74cよりもクランクケース20側に在って囲い壁81内に一部が配置される環状部74bが設けられるので
、駆動プーリ63の低速回転時に可動プーリ半体68の円筒部68bの先
端部
が囲い壁81の先端部よりもクランクケース20側に位置するのと相俟って、囲い壁81の外周および内周間にラビリンス構造が構成されることになり、オイルシール72側への埃の侵入をより一層効果的に抑制することができる。
【0063】
また従動プーリ64Aの固定プーリ半体92がその内周に備える円筒状のボス部92aに前記囲い壁111の先端部が半径方向で重なるようにしたときには、囲い壁111の外周および内周間にラビリンス構造が構成されることになり、オイルシール109側への埃の侵入をより一層効果的に抑制することができる。
【0064】
また、ランププレート74には、ウエイトローラ75…を転がり接触させる複数の斜面部74c…が第1軸支持部70側に一部が突出するようにして形成されるので、ランププレート74の回転時に複数の斜面部74c…の一部が第1軸支持部70側に突出していることで生じる空気流による送風効果で囲い壁81内への埃の侵入防止効果を高めることができる。
【0065】
またランププレート74の外周の周方向複数箇所にスライドピース79…が取付けられ、それらのスライドピース79…をクランク軸26の軸線に沿う方向にガイドするようにして前記軸線に沿う方向に延びるガイド板部68a…が、少なくとも低回転速度ではクランク軸26の半径方向で囲い壁81に一部が重なるようにして可動プーリ半体68の外周の周方向複数箇所に設けられるので、ガイド板部68a…による遠心ファン効果で囲い壁81内への埃の侵入防止効果をより一層高めることができる。
【0066】
本発明の参考形態について、
図7を参照しながら説明するが、上記第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0067】
クランク軸26(第1の実施の形態参照)および伝動軸66間に設けられるベルト式無段変速機52Bの一部を構成する従動プーリ64Bは、前記伝動軸66を同軸に囲繞しつつ該伝動軸66に相対回転可能に支承される円筒状の内筒124に固定される固定プーリ半体122と、前記内筒124に対する軸方向相対移動および相対回動を可能として前記内筒124を同軸に囲繞する外筒125に固定されることで前記固定プーリ半体122に対する近接・離反を可能とした可動プーリ半体123とで構成され、固定プーリ半体122および可動プーリ半体123間にVベルト65が巻き掛けられる。また可動プーリ半体123および固定プーリ半体122間の相対回転位相差に応じて両プーリ半体122,123間に軸方向の分力を作用せしめるトルクカム機構94が、前記内筒124および前記外筒125間に設けられ、可動プーリ半体123はコイルスプリング95によって固定プーリ半体122側に向けて弾発付勢され、可動プーリ半体123および伝動軸66間には、エンジン回転数が設定回転数を超えるのに伴って動力伝達状態となる遠心クラッチ96が設けられる。
【0068】
前記固定プーリ半体122および前記可動プーリ半体123は、同一形状のプーリ半体を180度反転させて用いられるものであり、固定プーリ半体122の内周部は、前記内筒124の第2軸支持部108側の端部に一体に設けられて半径方向外方に張り出す鍔部124aの外周部にリングマッシュ溶接によって固着される。また可動プーリ半体123の内周部は、前記外筒125の第2軸支持部108側の端部に一体に設けられて半径方向外方に張り出す鍔部125aの外周部にリングマッシュ溶接によって固着される。
【0069】
しかも内筒124の鍔部124aへの前記固定プーリ半体122の固着部の第2軸支持部108側に臨む部分には、リングマッシュ溶接時に生じるはみ出し部を除去するための機械加工によって環状凹部126が形成される。また外筒125の鍔部125aへの前記可動プーリ半体123の固着部の固定プーリ半体122とは反対側に臨む部分には、リングマッシュ溶接時に生じるはみ出し部を除去するための機械加工によって環状凹部127が形成され、この環状凹部127には、コイルスプリング95の一端を受ける環状リテーナ128の一部が嵌合される。
【0070】
伝動ケース54におけるケース主体58に設けられる第2軸支持部108には、内筒124の鍔部124aに向けて張り出す囲い壁111が、伝動軸66の全周を囲むようにして一体に形成され、この囲い壁111の先端部は、前記環状凹部126の内周側に近接するように配置される。
【0071】
この参考形態によれば、伝動軸66の全周を囲みつつ内筒124の鍔部124aに向けて張り出す囲い壁111が第2軸支持部108に設けられ、この囲い壁111の先端部が前記鍔部124aに近接して配置されるので、第2軸支持部108および伝動軸66間に介装されるオイルシール109の変速機室61側の端部を前記鍔部124aを有する内筒部124も一端部および囲い壁111で覆うようにして、変速機室61内の埃がオイルシール109に付着することを極力抑制することができ、オイルシール109の寿命向上に寄与することができる。
【0072】
しかも内筒124の鍔部124aへの固定プーリ半体122の固着部の第2軸支持部108側に臨む部分には機械加工による環状凹部126が形成されており、前記囲い壁111の先端部は、前記環状凹部126の内周側に近接するように配置されるので、囲い壁111の先端部および環状凹部126の内周側間の間隙の寸法ばらつきを抑えることができるとともに、囲い壁111と、内筒124の一端部および固定プーリ半体122との間に生じる間隙の幅を大小に変化させて流通抵抗を増加させ、埃がオイルシール109側に侵入するのをより効果的に抑制することができる。
【0073】
さらに従動プーリ64Bの固定プーリ半体122および可動プーリ半体123が、同一形状のプーリ半体を180度反転させて用いられるものであるので、部品の種類を減少させることができ、また固定プーリ半体122の内周部が内筒124の鍔部124aの外周部にリングマッシュ溶接によって固着され、可動プーリ半体123の内周部が外筒125の鍔部125aの外周部にリングマッシュ溶接によって固着されるので、生産性を高めることができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態及び参考形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0075】
たとえば本発明は、上記実施の形態で示した自動二輪車用パワーユニットだけでなく、自動三輪車用パワーユニットにも適用可能である。