(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の端板の板面と、前記第2の端板の板面の一方又は両方は、前記ステータコアのヨーク及びティースのうち、前記ステータコアのヨークに対応する領域のみを有し、
前記第1の端板と、前記第2の端板のうち、前記ステータコアのヨークに対応する領域のみを有する端板の板面の、前記ステータコアのヨークに対応する領域が、前記ステータコアのヨークの全面と対向していることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。尚、各図では、説明の都合上、説明に必要でない部分の図示を省略すると共に、図示した部分の構成を簡略化している。また、以下の実施形態では、回転電機の一例として、三相誘導電動機を例に挙げて説明する(以下の説明では「三相誘導電動機」を必要に応じて「モータ」と略称する)。ただし、回転電機は、ロータとステータと回転軸とを有するものであればよい。例えば、回転電機は、電動機に限定されず、発電機であってもよい。また、回転電機は、誘導機に限定されず、同期機であってもよい。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
<モータの構造>
図1は、モータの構成の一例を示す俯瞰図である。
図2は、モータの構成の一例を示す断面図である。具体的に
図2は、モータの軸に垂直な方向にモータを切ったときのモータの断面図(
図1に示すI−I断面図)である。
図3は、ステータコアの構成の一例を示す断面図である。具体的に
図3は、モータの軸に沿ってステータコアを切ったときのステータコアの断面図である。より具体的に
図3(a)は、ステータコアのティースを有する部分の断面図(
図2の仮想線201に沿ってモータの軸に平行な方向に切ったときのステータコアの断面図)であり、
図3(b)は、ステータコアのティースを有しない部分の断面図(
図2の仮想線202に沿ってモータの軸に平行な方向に切ったときのステータコアの断面図)である。尚、
図2のL1と
図3のL1とが相互に対応し、
図2のL2と
図3のL2とが相互に対応する。
【0014】
図1において、モータ100は、ステータ(固定子)110と、ロータ(回転子)120と、回転軸130と、端板140a〜140dと、を有している。
ステータ110は、相対的にモータ100の外側に配置される。ロータ120は、その外周面がステータ110の内周面と間隔を有して対向するように、相対的にモータ100の内側に配置される。回転軸130は、その外周面がロータ120の内周面と対向し、且つ、ロータ120に直接又は間接的に接続された状態でモータ100の中心部に配置される。ステータ110とロータ120の軸心は回転軸130の軸心と略一致している。尚、以下の説明では、「モータ100の外側」、「モータ100の内側」、「モータ100の軸方向」を、必要に応じて、それぞれ「外側」、「内側」、「軸方向」と略称する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、ロータ120は、ロータコア121と、かご形胴体122とを有している。
図1及び
図2では、図示を省略しているが、かご形胴体122の軸方向の両端には、エンドリングが形成されている。このように、ここでは、ロータ120が、かご形ロータである場合を例に挙げて示している。しかしながら、ロータは、かご形ロータに限定されるものではない。例えば、ロータは、巻線形ロータであってもよい。また、かご形胴体や巻線(コイル)の代わりに永久磁石を用いてもよい。本実施形態のロータコア121の全体の厚み(軸方向の長さ)は150[mm]であり、ロータコア121の外径は300[mm]である。
【0016】
図1及び
図2に示すように、ステータ110は、ステータコア111を有する。
ステータコア111は、周方向に延在するヨークと、ヨークの内周側から軸心方向に延在する複数のティースとを有し、その外周面(ヨークの外周面)が露出している。複数のティースは、周方向において略等間隔で設けられている。
図1及び
図2に示す例では、36個のティースが設けられている。しかしながら、ティースの数は36個に限定されるものではない。また、ティースには、図示しない巻線が分布巻で巻き回される。ただし、この巻線の巻線方式は、集中巻であってもよい。また、この巻線の巻数として12[Turn]を想定するが、この巻線の巻数は12[Turn]に限定されるものではない。さらに、モータ100の極数として4極を想定するが、モータ100の極数は4極に限定されるものではない。
【0017】
ステータコア111は、
図2に示す形に打ち抜かれた複数の電磁鋼板を、
図3に示すように、それらの厚み方向に積み重ねることにより形成される。これら複数の電磁鋼板の板面には絶縁処理が施されている。本実施形態では、電磁鋼板の一例として、JIS C 2552で規定される50A800を使用している。ただし、電磁鋼板であれば、どのようなものを使用してステータコア111を形成してもよい。また、本実施形態では、ステータコア111の全体の厚み(モータ100の軸方向の長さ)は150[mm]であり、ステータコア111の内径は304[mm]であり、ステータコア111の外径は480[mm]である。
【0018】
端板140a〜140dは、ステンレス鋼により形成される。本実施形態では、ステンレス鋼のうち、非磁性体であるオーステナイト系のステンレス鋼を用いて端板140a〜140dを形成している。具体的に本実施形態では、JIS G 4305で規定されるSUS304を用いて端板140a〜140dを形成している。また、本実施形態では、端板140a〜140dの厚みを、それぞれ1.6[mm]としている。尚、
図1では、表記の都合上、端板140a〜140dの全体の厚みに対するステータコア111の全体の厚み方向の長さ(軸方向の長さ)を小さく表している。
【0019】
図1及び
図3に示すように、端板140a〜140dの板面には、ステータコア111の板面と略同一の形状・大きさを有する領域がある。
ただし、端板140a〜140dの内周側の先端部が、ステータコア111のティースよりも突出(内側に位置)することを確実に防止するために、端板140a〜140dの「ティースに対応する部分の先端部(内側の端部)」が、ティースの先端部(内側の端部)よりも(僅かに)後退する位置(外側の位置)にあってもよい。また、端板140a〜140dの「ティースに対応する部分の周方向の端部」が、ステータコア111のスロットの領域に位置することを確実に防止するために、端板140a〜140dの「ティースに対応する部分の周方向の端部」が、ティースの周方向の端部よりも(僅かに)後退する位置にあってもよい。さらに、端板140a〜140dの「ヨークに対応する部分の内周側の端部(内側の端部)」が、ステータコア111のスロットの領域に位置することを確実に防止するために、端板140a〜140dの「ヨークに対応する部分の内周側の端部(内側の端部)」が、ヨークの内周側の端部(内側の端部)よりも(僅かに)後退する位置(外側の位置)にあってもよい。
端板140a〜140dは、厚みが1.6[mm]のステンレス鋼(SUS304)を前述した形に打ち抜くことにより形成される。
【0020】
また、前述したように、端板140a〜140dは、モータ100を使用している最中に、ステータコア111が変形や破壊することを防止するためのものである。よって、端板140a〜140dに使用する材料の引張強度は、大きいほど好ましいが、このような目的を達成できる範囲であれば、モータ100の使用環境、大きさ、及び運転条件等によって適宜決定することができる。
【0021】
端板140a、140bは、端板140bをステータコア111側にした状態で、それらの板面が、ステータコア111の板面と合うように、ステータコア111の軸方向の一端面(
図3では上面)に重ねられる。一方、端板140c、140dは、端板140cをステータコア111側にした状態で、それらの板面が、ステータコア111の板面と合うように、ステータコア111の軸方向の他端面(
図3では下面)に重ねられる。ここで、端板140a、140bは相互に絶縁された状態で重ねられ、端板140c、140dも相互に絶縁された状態で重ねられる。本実施形態では、板面方向の形状・大きさが、端板140a〜140dの板面方向の形状・大きさと略同一である絶縁材141a、141b(絶縁板や絶縁紙等)を、端板140a、140bの間と、端板140c、140dの間に、それぞれ配置するようにしている。ただし、相互に隣接する端板140a・140b、140c・140dを絶縁する方法は、このような方法に限定されない。例えば、端板140a〜140dの板面に絶縁処理を施すようにしてもよい。
【0022】
以上のようにして端板140a〜140dを配置することにより、端板140a〜140dの板面の、ステータコア111のヨークに対応する領域が、ステータコア111のヨークと対向すると共に、端板140aの板面の、ステータコア111のティースに対応する領域が、ステータコア111のティースと対向する。このように本実施形態では、端板140a、140bが第1の端板に対応し、端板140c、140dが第2の端板に対応する。
【0023】
本実施形態では、以上のようにして端板140a〜140dを配置した状態で、ステータコア111の外周部分と端板140a〜140dの外周部分にスポット溶接を施すことにより、端板140a〜140dがステータコア111に取り付けられる(固定される)。また、
図1及び
図3では図示を省略しているが、端板140a〜140dには、モータ100の設置場所に固定するための(同一の)領域が、別に形成されている。これらの領域(の同一位置)には、ボルトを通す(同一形状・大きさの)孔が形成されている。モータ100の設置場所に形成された孔と、端板140a〜140dに形成された孔に、ボルトを、モータ100と絶縁された状態で通すことにより、モータ100を、その設置場所に固定することができる。
【0024】
尚、本実施形態では、スポット溶接により、端板140a〜140dがステータコア111に取り付けられるようにしたが、端板140a〜140dをステータコア111に取り付ける方法は、このような方法に限定されるものではない。例えば、ステータコア111と端板140a〜140dの外周側のそれぞれに、ヨーク及びティースに対応する部分とは異なる(同一形状・大きさの)領域を設け、これらの領域のそれぞれ(の同一位置)にボルトを通す(同一形状・大きさの)孔を形成し、それらの孔にボルトを絶縁された状態で通すことにより、端板140a〜140dをステータコア111に取り付けることができる。
【0025】
<鉄損の評価>
本発明者らは、モータの損失を低減するために、モータの損失を把握することを試みた。その中で、(従来の端板の材料である)SPCCを用いて形成した端板の鉄損が予想以上に大きいことを見出した。
図4は、端板の鉄損とステータコアの鉄損の一例を表形式で示す図である。
図1〜
図3に示すステータコア111の磁束密度の分布をFEM(有限要素法)で解析した。このときのモータの無負荷運転条件は以下の通りである。
ロータ回転数:3000[rpm]
電流実効値:50[A
rms]
このようにして求めたステータコア111の磁束密度の分布と、ステータコア111の材質である50A800の磁束密度−鉄損特性とから、ステータコア111全体の鉄損を求めた。その値が、
図4に示すように2130[W]であった。
【0026】
また、このようにして求めたステータコア111の磁束密度の分布から、磁束密度B
maxの平均を求めたところ、平均の磁束密度B
maxは、1.65[T]であった。この平均の磁束密度B
maxの大きさは、B−H曲線において、磁界Hの変化に対する磁束密度Bの変化が小さい領域に当てはまる。磁束密度B
maxは有限要素法における各要素の電気角1周期の磁束密度解析結果の最大値である。したがって、前述したようにして求めたステータコアの磁束密度の分布は、SPCCの磁束密度の分布と同じであると仮定しても大きな誤差は生じない。そこで、大きさ・形状が端板140a〜140dと同一であり、且つ、材質がSPCCである端板1枚の鉄損を、前述したようにして求めたステータコアの磁束密度の分布と、SPCCの磁束密度−鉄損特性とから求めた。その値が、
図4に示すように206.5[W]であった。そして、この値から4枚の端板(端板全体)の鉄損を求めた。その値が、
図4に示すように、826[W]であった。このように、端板としてSPCCを用いると、端板の鉄損は、ステータコア111の鉄損の39[%]になることが分かった。すなわち、モータ全体の鉄損に占める端板の鉄損の割合が大きいことが分かった。
【0027】
尚、ここでは、SPCCの磁束密度−鉄損特性を、以下のようにして実測した。
厚みが1.6[mm]のSPCCの板を、外径が120[mm]、内径が100[mm]のリング状に形成したものを3枚作製し供試材とした。この供試材に、一次巻線として180[Turn]の導体線を、二次巻線として20[Turn]の導体線をそれぞれ巻き回した。そして、以下の励磁条件で一次巻線に電流を流し、二次巻線の誘起電圧から磁束密度を測定することで、各磁束密度における鉄損の値を測定した。
周波数:100[Hz]
磁束密度:0.3[T]から1.8[T]、0.1[T]刻み
このようにして測定した3枚の供試材での各磁束密度における鉄損の値を平均して、SPCCの磁束密度−鉄損特性を求めた。以上の測定の結果、磁束密度が1[T]、1.5[T]のときの鉄損の値は、それぞれ50[W/kg]、150[W/kg]となった。
尚、50A800の磁束密度−鉄損特性についても、SPCCの磁束密度−鉄損特性と同様にして測定することができる。これらの結果から、本願発明者らは、SPCCの鉄損は、50A800の鉄損よりも数倍(概ね4〜5倍程度)大きくなるという知見を得た。
【0028】
図4に示す結果を踏まえ、本発明者らは、端板の鉄損を低減することを検討した。
鉄損には、渦電流損が含まれる。この渦電流損を低減するために、固有抵抗値が大きい材料を、端板140を構成する材料として用いることが考えられる。そこで、本実施形態では、固有抵抗値が大きい材料のうち、比較的安価であり、且つ、加工(成形)が容易であるステンレス鋼を、端板140を構成する材料として採用した。
また、鉄損は、ステータ110の巻線に交流電流が流れることにより、磁束が端板140の内部に発生することに起因して生じる。したがって、端板140を構成する材料として非磁性体を用いれば、端板140の鉄損を著しく低減することができる。そこで、本実施形態では、ステンレス鋼のうち、非磁性体であるオーステナイト系のステンレス鋼を、端板140を構成する材料として採用した。
【0029】
ただし、ステンレス鋼と同等の固有抵抗値であれば、必ずしもステンレス鋼を、端板140を構成する材料として用いなくてもよい。前述したように、ステンレス鋼と同等の固有抵抗値を有する材料であれば、渦電流損を低減することができるからである。ここで、ステンレス鋼は、50[μΩ・cm]以上の固有抵抗値を有する。よって、50[μΩ・cm]以上の固有抵抗値を有していれば、必ずしもステンレス鋼を、端板140を構成する材料として用いなくてもよい。
【0030】
また、非磁性体であるオーステナイト系のステンレス鋼を、端板140を構成する材料として用いれば、端板140の鉄損を著しく低減できるので好ましい。しかしながら、オーステナイト系以外のマルテンサイト系、フェライト系、又は二相系のステンレス鋼を、端板140を構成する材料として用いても、端板140を構成する材料としてSPCCを用いた場合よりも、端板140の渦電流損を低減することができる。前述したように、渦電流損を低減することができるからである。よって、これらを、端板140を構成する材料として用いてもよい。
【0031】
以上のように本実施形態では、ステータコア111の軸方向の一端面と他端面に、ステータコア111の板面と略同一の形状及び大きさの領域を有する端板140a〜140dを取り付ける。端板140a〜140dには、固有抵抗値が50[μΩ・cm]以上であるステンレス鋼、好ましくは非磁性体であるオーステナイト系のステンレス鋼を用いる。したがって、SPCCを用いる場合よりも、端板140a〜140dの鉄損を低減させることができる。よって、モータ全体の鉄損を低減させることができる。
尚、本実施形態では、2枚の端板140a、140bを、ステータコア111の軸方向の一端面に取り付けると共に、他の2枚の端板140c、140dを、ステータコア111の軸方向の他端面に取り付けるようにした。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はなく、ステータコア111の軸方向の一端面と他端面にそれぞれ1枚ずつ端板を取り付けるようにしてもよい。
また、本実施形態のように、端板140a、140bと、端板140c、140dとの双方を、固有抵抗値が50[μΩ・cm]以上であるステンレス鋼、好ましくは非磁性体であるオーステナイト系のステンレス鋼で形成すれば、前述した効果が大きくなるのでこの好ましい。しかしながら、端板140a、140bと、端板140c、140dとの何れか一方を、本実施形態で説明した端板140とし、他方を、従来と同様の普通鋼で形成した端板としても鉄損の低減効果が得られるので、このようにしてもよい。
また、各端板140a〜140dの素材や厚みは、同じでなくてもよい。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。前述した第1の実施形態では、ステータコア111の軸方向の一端面と他端面に取り付ける端板140の数をそれぞれ2枚とした。渦電流損Weは、材料の板厚tの二乗に比例する(We∝t
2)。よって、第1の実施形態で示した端板140よりも、端板140の1枚当たりの板厚を薄くすれば、端板の鉄損をより一層低減することができる。また、ステータコア111の軸方向の一端面と他端面に取り付けたときの端板の全体の厚みを、第1の実施形態で示した端板140と同じ厚みにすれば、第1の実施形態の端板140を用いたときと比べて剛性が大きく低下することを抑制することができる。
【0033】
そこで、本実施形態では、厚みが0.4[mm]のSUS304を用いて、板面方向の形状・大きさが第1の実施形態と同一の形状・大きさとなるように構成された端板を16枚用いる。そして、16枚の端板のうち8枚をステータコア111の軸方向の一端面に、他の8枚をステータコア111の軸方向の他端面に取り付ける。このようにした場合も、第1の実施形態と同様に、相互に隣接する端板は相互に絶縁された状態で重ねられる。また、モータを使用している最中にステータコア111の変形や破壊しないように、端板に使用する材料を選択する。その他の構成については、第1の実施形態と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0034】
尚、本実施形態では、厚みが0.4[mm]のSUS304を用いて形成された端板を16枚用いるようにした。しかしながら、端板に用いる材料は、第1の実施形態で説明したように、SUS304に限定されるものではない。また、端板の厚み・枚数は、前述した値に限定されるものではない。
また、第1及び第2の実施形態では、ステータコア111の軸方向の一端面と他端面に同数の端板を取り付けるようにした。しかしながら、ステータコア111の軸方向の一端面と他端面に取り付ける端板の数は、必ずしも同数である必要はない。
【0035】
<実施例>
図5は、各種の端板の損失の一例を表形式で示す図である。
図5において、「SPCC」の欄に示す値は、1.6[mm]の4枚のSPCCのうち、2枚をステータコア111の軸方向の一端面に、他の2枚をステータコア111の軸方向の他端面に取り付けたものについての値である。また、「SUS304(1)」の欄に示す値は、1.6[mm]の4枚のSUS304のうち、2枚をステータコア111の軸方向の一端面に、他の2枚をステータコア111の軸方向の他端面に取り付けたものについての値である。また、「SUS304(2)」の欄に示す値は、0.4[mm]の16枚のSUS304のうち、8枚をステータコア111の軸方向の一端面に、他の8枚をステータコア111の軸方向の他端面に取り付けたものについての値である。尚、これらの端板の板面方向の形状及び大きさは、第1の実施形態で示したものと同じである。
【0036】
図5において、「鉄損値(SPCC端板鉄損基準)」とは、
図4に示した「SPCC」の「全鉄損」の値を「1」としたときの端板全体の鉄損値(相対値)である。
「鉄損値(ステータコア鉄損基準)」とは、
図4に示した「ステータコア」の「絶鉄損」の値を「1」としたときの端板全体の鉄損値(相対値)である。
「磁束密度」は、1.5[T]における「比透磁率」の値に比例するものとする。この「磁束密度」は、「SPCC」の値を「1」としたときの値(相対値)である。
【0037】
「渦電流損板厚換算比(1枚当たり)」とは、板厚の違いを渦電流損に換算した値であり、「SPCC」の値を「1」としたときの値(相対値)である。「渦電流損板厚換算比(1枚当たり)」は、端板1枚の板厚の二乗に比例するものとする。
「枚数を考慮した渦電流損比」とは、端板を構成する素材の枚数及び板厚の違いを渦電流損に換算した値であり、「SPCC」の値を「1」としたときの値(相対値)である。「枚数を考慮した渦電流損比」は、素材の枚数に比例するものとする。尚、「SUS304(2)」における「枚数を考慮した渦電流損比」は、「渦電流損板厚換算比(1枚当たり)」の値である「0.0625」に「4(=16/4)」を掛けることにより得られる。
【0038】
「材質・板厚変更時渦電流損比」は、端板を構成する素材の材質、板厚、及び枚数の違いを渦電流損に換算した値であり、「SPCC」の値を「1」としたときの値(相対値)である。「材質・板厚変更時渦電流損比」は、「固有抵抗値」に反比例し、「枚数を考慮した渦電流損比」に比例するものとする。また、端板の鉄損は、「磁束密度」の二乗に比例し、「材質・板厚変更時渦電流損比」に比例するものとする。
【0039】
図5に示す「SUS304(1)」の欄の値は、第1の実施形態の端板140a〜140dの値である。また、「SPCC」の欄の値は、第1の実施形態において端板140a〜140dと対比した端板の値である。これらの欄の値から、第1の実施形態で説明したように、端板を構成する材料として、SPCCを用いるよりもSUS304を用いた方が端板の鉄損を著しく低減させられることが分かる。
尚、固有抵抗値が50[μΩ・cm]であり、厚みが1.6[mm]である材料で、第1の実施形態で示した端板140a〜140dと同じ大きさ・形状の板面を有する端板を4枚作製し、これらの4枚の端板を第1の実施形態と同様にして配置した場合、「材質・板厚変更時渦電流損比」は0.37となる。
【0040】
また、
図5に示す「SUS304(2)」の欄の値は、第2の実施形態の端板の値である。「SUS304(2)」の欄の値と「SUS304(1)」の欄の値から、第2の実施形態で説明したように、端板の全体の厚みが同じであれば、各端板の厚みを薄くした方が、端板全体の鉄損を低減させられることが分かる。
尚、固有抵抗値が50[μΩ・cm]であり、厚みが0.4[mm]である材料で、第1の実施形態で示した端板140a〜140dと同じ大きさ・形状の板面を有する端板を16枚作製し、これらの16枚の端板を第2の実施形態と同様にして配置した場合、「材質・板厚変更時渦電流損比」は0.10となる。
【0041】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図6は、本実施形態のモータの構成の一例を示す俯瞰図である。本実施形態と第1、第2の実施形態とは、端板を構成する材料と枚数とが異なる。
第1、第2の実施形態では、端板を構成する材料として導電体(非絶縁体)であるステンレス鋼を用いた。これに対し、本実施形態では、端板を構成する材料として、非磁性体であり且つ絶縁体である材料を用いるようにする。このように、端板を構成する材料として絶縁体を用いた場合には、渦電流損は発生しない。よって、
図6に示すように、ステータコア111の軸方向の一端面と他端面に取り付ける端板640a、640bの枚数はそれぞれ1枚でよい。
【0042】
本実施形態では、端板640a、640bを構成する材料として、ABS樹脂、アクリル、ポリカーボネート、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、セラミックス、又はガラスを用いることができる。FRPのうち、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)を用いることが好ましい。前述した他の絶縁体(材料)よりも引張強度の値が大きいからである。
【0043】
端板640a、640bの板面には、ステータコア111の板面と略同一の形状・大きさを有する領域がある。ただし、第1の実施形態で説明したように、端板640a、640bの「ティースに対応する部分の先端部(内側の端部)」が、ティースの先端部(内側の端部)よりも、後退する位置(外側の位置)にあってもよい。また、端板640a、640bの「ティースに対応する部分の周方向の端部」が、ティースの周方向の端部よりも、後退する位置にあってもよい。さらに、端板640a、640bの「ヨークに対応する部分の内周側の端部(内側の端部)」が、ヨークの内周側の端部(内側の端部)よりも(僅かに)後退する位置(外側の位置)にあってもよい。
前述した絶縁体(材料)の引張強度の値は、ステンレス鋼の引張強度の値よりも小さい。このことを踏まえ、当該材料で端板を構成する場合には、モータ600を使用している最中にステータコア111が変形や破壊しないように、端板の厚みを適宜決定するようにする。
端板を成形する方法は、金型等を用いた公知の成形技術により実現することができる。
【0044】
端板640aは、その板面が、ステータコア111の板面と合うように、ステータコア111の軸方向の一端面(
図6では上面)に配置される。一方、端板640bは、その板面が、ステータコア111の板面と合うように、ステータコア111の軸方向の他端面(
図6では下面)に配置される。このように本実施形態では、端板640aが第1の端板に対応し、端板640bが第2の端板に対応する。
その他については、第1の実施形態と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0045】
以上のように本実施形態では、絶縁体を用いて端板640a、640bを構成するようにした。したがって、非絶縁体を用いて端板を構成する場合よりも渦電流損を低減することができる。
尚、第1、第2の実施形態と同様に、端板640aと、端板640bとの何れか一方を、本実施形態で説明した端板640とし、他方を従来と同様の普通鋼で形成した端板としてもよい。
また、端板640aと、端板640bとの何れか一方を、本実施形態で説明した端板640とし、他方を、第1、第2の実施形態で説明した端板140としてもよい。また、各端板640a、640bの素材や厚みは、同じでなくてもよい。
【0046】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。
図7は、本実施形態のモータの構成の一例を示す俯瞰図である。本実施形態と第1〜第3の実施形態とは、端板の板面方向の形状が異なる。
前述した第1〜第3の実施形態では、端板の板面に、ステータコア111の板面と略同一の形状・大きさを有する領域が含まれるようにした。これに対し本実施形態では、
図7に示すように、端板740a〜740dの板面は、それぞれ、ステータコア111のヨーク及びティースのうち、ステータコア111のヨークに対応する領域のみを有する。このように、本実施形態の端板740a〜740dの板面には、ステータコア111の板面のうちヨークに対応する領域と略同一の形状・大きさを有する領域は存在するが、ティースに対応する領域は存在しない。ただし、第1の実施形態で説明したように、端板740a〜740bの「ヨークに対応する部分の内周側の端部(内側の端部)」が、ヨークの内周側の端部(内側の端部)よりも(僅かに)後退する位置(外側の位置)にあってもよい。
【0047】
本実施形態の端板740a〜740dは、SUS304により形成される。また、本実施形態では、端板740a〜740dの厚みは、それぞれ1.6[mm]である。端板140a〜140dに使用する材料の引張強度は、大きいほど好ましいが、モータ700を使用している最中に、ステータコア111が変形や破壊することを防止できれば、モータ700の使用環境、大きさ、及び運転条件等によって適宜決定することができる。
【0048】
端板740a、740bは、端板740bをステータコア111側にした状態で、それらの板面が、ステータコア111の板面のヨークの領域と合うように、ステータコア111の軸方向の一端面(
図7では上面)に重ねられる。一方、端板740c、740dは、端板740cをステータコア111側にした状態で、それらの板面が、ステータコア111の板面のヨークの領域と合うように、ステータコア111の軸方向の他端面(
図7では下面)に重ねられる。ここで、端板740a、740bは相互に絶縁された状態で重ねられ、端板740c、740dも相互に絶縁された状態で重ねられる。本実施形態では、板面方向の形状が、端板740a〜740dの板面方向の形状と同一である絶縁材741a、741b(絶縁板や絶縁紙等)を端板740a、740bの間と、端板740c、740dの間に配置するようにしている。ただし、相互に隣接する端板740a・740b、740c・740dを絶縁する方法は、このような方法に限定されない。例えば、端板740a〜740dの板面に絶縁処理を施すようにしてもよい。このように本実施形態では、端板740a、740bが第1の端板に対応し、端板740c、740dが第2の端板に対応する。
以上のように端板740a〜740dを配置することにより、端板740a〜740dの板面の、ステータコア111のヨークに対応する領域が、ステータコア111のヨークと対向する。
その他については、第1の実施形態と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0049】
以上のように本実施形態では、端板740a〜740dの板面が、それぞれ、ステータコア111のヨーク及びティースのうち、ステータコア111のヨークに対応する領域のみを有するようにした。このようにすれば、端板740a〜740dは、ステータ110の巻線の内側に位置しないので、ステータ110の巻線に交流電流を流しても、端板740a〜740dの内部に磁束が発生することを抑制することができる。よって、端板740a〜740dの鉄損をより一層低減させることができる。
【0050】
尚、本実施形態では、第1の実施形態の端板140a〜140dと同じ材料・厚みを有する端板740a〜740dを例に挙げて説明した。しかしながら、ステータコア111のヨーク及びティースのうち、ステータコア111のヨークに対応する領域のみを有する端板であれば、端板は、第2、第3の実施形態で説明した端板と同じ材料・厚みを有していてもよい。
また、端板740a、740bと、端板740c、740dの双方について、ステータコア111のヨーク及びティースのうち、ステータコア111のヨークに対応する領域のみを有する端板とすれば、前述した効果が大きくなるので好ましい。しかしながら、例えば、端板740a、740bと、端板740c、740dとの何れか一方を、ステータコア111のヨークに対応する領域のみを有する端板とし、他方を、ステータコア111のステータとヨークに対応する領域を有する端板としても鉄損の低減効果が得られるので、このようにしてもよい。
また、端板740a、740bと、端板740c、740dの何れか一方を、第1、第2の実施形態で説明した端板140と同じ材料で形成し、他方を、第3の実施形態で説明した端板640と同じ材料で形成した端板としてもよい。
さらに、端板740a、740bと、端板740c、740dの何れか一方を、第1〜第3の実施形態で説明した端板140、640の何れかと同じ材料で形成した端板とし、他方を、従来と同様の普通鋼で形成した端板としてもよい。また、各端板740a〜740dの素材や厚みは、同じでなくてもよい。
【0051】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。