特許第5819337号(P5819337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5819337
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】X線回折装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/207 20060101AFI20151104BHJP
   G01T 1/18 20060101ALI20151104BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20151104BHJP
【FI】
   G01N23/207 320
   G01T1/18 A
   G01T7/00 A
   G01T7/00 B
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-43618(P2013-43618)
(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2014-173854(P2014-173854A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2014年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000230733
【氏名又は名称】日本核燃料開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石山 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 克彦
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−530671(JP,A)
【文献】 特開平9−229881(JP,A)
【文献】 特開2005−140566(JP,A)
【文献】 特開2008−101945(JP,A)
【文献】 特開2007−121324(JP,A)
【文献】 特開平6−102103(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0140889(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/207
G01T 1/18
G01T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源と、被測定物を保持し、ベースに回転可能に取り付けられた試料ステージと、前記X線源が取り付けられ、前記X線源を前記試料ステージの周囲で走査するX線源走査装置と、偏向結晶部材が取り付けられて回転する偏向結晶部材ステージと、放射線検出器と、前記偏向結晶部材、前記偏向結晶部材ステージおよび前記放射線検出器が内部に設置されて前記偏向結晶部材、前記偏向結晶部材ステージおよび前記放射線検出器を取り囲み、ベースに固定される放射線遮蔽体とを備え、前記偏向結晶部材ステージの回転中心を中心にして折れ曲がり、前記放射線検出器まで達するX線通路が前記放射線遮蔽体内に形成され、前記偏向結晶部材が前記X線通路の折れ曲り部に配置されることを特徴とするX線回折装置。
【請求項2】
前記X線通路に面している前記放射線検出器が、前記放射線検出器を構成する複数の部材のうち金属で構成することが必須の部材のみを金属製とし、前記金属製の部材以外の残りの部材を非金属製とする請求項1に記載のX線回折装置。
【請求項3】
前記X線通路に面している前記放射線検出器が、前記放射線検出器を構成する複数の部材のうち金属で構成することが必須の部材のみを金属製とし、前記金属製の部材以外の残りの部材をアルミニウム製およびマグネシウム製のいずれかにする請求項1に記載のX線回折装置。
【請求項4】
前記金属製の部材が、前記放射線検出器に含まれる陽極、陰極および前記陽極及び前記陰極に接続されたそれぞれの信号線である通電部材である請求項2または3に記載のX線回折装置。
【請求項5】
前記放射線検出器が比例計数管であり、前記比例計数管が、前記X線通路に対向するX線入射窓が形成されたケーシング、前記ケーシング内に配置された一対の陰極板および前記ケーシング内に配置された陽極線を有し、第1陰極線が1つの前記陰極板に巻き付けられ、第2陰極線が他の前記陰極板に巻き付けられ、前記第1陰極線及び前記第2陰極線に導通した第3陰極線が前記陰極板の長手方法において間隔を有して前記一対の陰極板に跨って巻き付けられており、前記一対の陰極板に跨って巻き付けられた前記第3陰極線が前記X線入射窓と対向し、前記陽極線が前記X線入射窓と対向し、前記X線入射窓に垂直な方向において、前記一対の陰極板に跨って巻き付けられた前記第3陰極線の間に配置された請求項1に記載のX線回折装置。
【請求項6】
前記比例計数管を構成する複数の部材のうち前記陽極線、前記第1陰極線、前記第2陰極線および前記第3陰極線を金属製とし、これらの線以外の残りの部材を非金属製とする請求項5に記載のX線回折装置。
【請求項7】
前記比例計数管を構成する複数の部材のうち前記陽極線、前記第1陰極線、前記第2陰極線および前記第3陰極線を金属製とし、これらの線以外の残りの部材をアルミニウム製およびマグネシウム製のいずれかにする請求項5に記載のX線回折装置。
【請求項8】
前記ベースに回転可能に設置されて前記試料ステージの回転中心に取り付けられた第1回転軸と、前記第1回転軸を回転させる、前記ベースに設けられた第1回転装置とを備え、前記X線源走査装置が、前記試料ステージよりも下方に配置されて前記X線源が取り付けられた保持部材、前記保持部材に取り付けられて前記第1回転軸を取り囲み、且つ回転の中心が前記第1回転軸の回転の中心と一致して前記ベースに回転可能に取り付けられた筒状の第2回転軸、および前記第2回転軸を回転させる、前記ベースに設けられた第2回転装置を有し、前記第2回転軸の下端が前記第1回転軸の下端よりも上方に位置しており、前記放射線遮蔽体が前記ベースに固定されている請求項1に記載のX線回折装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線回折装置に係り、特に、放射性の試料、例えば、原子力発電プラント等において中性子を照射されたことにより放射化された試料の測定に適用するのに好適なX線回折装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線回折装置は、X線が結晶中において回折する現象を利用して試料の組成分析または応力測定を行う装置である。一般的には、X線発生装置(X線源)において発生した特性X線を試料に入射させ、試料内で回折して出射したX線の強度を放射線検出器によって回折角度情報とともに測定する。得られた回折ピークの角度を基に、試料の組成分析または応力測定が行われる。測定精度を高めるためには回折角度を正確に求める必要があり、バックグラウンドに対して充分強度の大きい明瞭な回折X線ピークを得ることが重要になる。
【0003】
特開平6−102103号公報はX線応力測定装置を記載する。このX線応力測定装置は、X線源であるX線管、放射線検出器である比例計数管、モノクロメータおよびX線が通過する開口部を形成した放射線遮蔽体を有する。X線応力測定装置により応力を測定する被測定物は、原子力プラントの中性子照射を受けた、原子炉圧力容器及び炉内構造物等の材料である。X線管で発生したX線が被測定物の表面に照射される。このX線の照射により被測定物の表面で回折されたX線は、放射線遮蔽体に形成された開口部を通過してモノクロメータに当てられる。モノクロメータは、湾曲面を有し、反射率の大きな結晶、例えば、グラファイトで構成される。その開口部を通過したX線はモノクロメータの湾曲面で反射して比例計数管に入射される。比例計数管は、モノクロメータで反射された特性X線を検出する。検出された特性X線に基づいて被測定物の残留応力値が求められる。中性子照射を受けた被測定物からγ線が放出される。このγ線は、放射線遮蔽体で遮蔽される。
【0004】
特許第4784984号公報は、残留応力を測定するX線回折装置を記載する。このX線回折装置は、ゴニオメータのゴニオメータ本体に搭載された試料台に試料を載せ、X線源から放出されたX線をその試料に照射し、試料で回折されたX線がX線検出器で検出される。
【0005】
「X線回折ハンドブック」、24頁〜37頁、1998年、理学電機株式会社発行および高良和武ら、「物理工学実験10 X線回折技術」、82頁〜87頁、1988年、東京大学出版会発行は、それぞれ、X線回折技術について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−102103号公報
【特許文献2】特許第4784984号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「X線回折ハンドブック」、24頁〜37頁、1998年、理学電機株式会社発行
【非特許文献2】高良和武ら、「物理工学実験10 X線回折技術」、82頁〜87頁、1988年、東京大学出版会発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
運転された原子力プラントの構造部材にX線回折法を適用することによって、中性子の照射を受けて放射化された構造部材の組成分析または残留応力を非破壊的に測定することができる。しかしながら、放射化された構造部材を対象にX線回折を行う場合には、被測定物であるこの構造部材から放出されるγ線の影響を取り除く必要がある。
【0009】
放射化されてγ線が放出される測定物を対象にX線回折を行うことが、特開平6−102103号公報に記載されている。特開平6−102103号公報に記載されたX線回折法では、放射線遮蔽体を、X線を照射する被測定物とX線検出器との間に配置することによって、放射化された被測定物から放出されるγ線が放射線遮蔽体によって遮蔽される。この放射線遮蔽体の設置により、比例計数管で検出される放射線のバックグランド強度が低下する(特開平6−102103号公報の図3参照)。
【0010】
被測定物の放射化の程度が低い場合は、放射線遮蔽体の設置により、被測定物から放出されるγ線を、回折X線が測定可能な程度まで遮蔽することは可能である。しかし、被測定物の放射化の程度が高い場合は、そのγ線を、回折X線が測定可能な程度まで遮蔽することは困難である。そのγ線を、回折X線が測定可能な程度まで遮蔽するためには、この放射線遮蔽体(例えば、鉛製またはタングステン製)の厚みを非常に厚くする必要があり、この結果、X線回折装置が大型化してしまうことになる。さらに、X線光路が長くなることからX線強度が低下するため、十分な強度の回折X線ピークが得られなくなる。このため、X線を被測定物に照射することによって被測定物で生成される回折X線の回折ピークが鮮明に得られるように放射線遮蔽体の厚みを設定し、X線回折装置の大型化を避ける必要がある。
【0011】
このため、発明者らは、放射化された被測定物を対象にしたX線回折による測定を行う場合において、放射線検出器で検出されるバックグランド強度について検討した。この結果、発明者らは、放射線検出器の金属部が放射線のバックグランド強度を高めるバックグランド源であることを見出した。
【0012】
本発明の目的は、放射線に起因するバックグランド強度をさらに低減することができ、回折ピークをより精度良く測定することができるX線回折装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、X線源と、被測定物を保持し、ベースに回転可能に取り付けられた試料ステージと、X線源が取り付けられ、X線源を試料ステージの周囲で走査するX線源走査装置と、偏向結晶部材が取り付けられて回転する偏向結晶部材ステージと、放射線検出器と、偏向結晶部材、偏向結晶部材ステージおよび放射線検出器が内部に設置されて偏向結晶部材、偏向結晶部材ステージおよび放射線検出器を取り囲み、ベースに固定される放射線遮蔽体とを備え、偏向結晶部材ステージの回転中心を中心にして折れ曲がり、放射線検出器まで達するX線通路が放射線遮蔽体内に形成され、偏向結晶部材がX線通路の折れ曲り部に配置されることにある。
【0014】
放射線検出器が内部に設置された放射線遮蔽体が固定されて走査されず、X線源がX線源走査装置によって走査されるため、放射線遮蔽体の厚みを厚くすることができる。このため、放射化された被測定物または放射線環境下における被測定物のX線回折測定するとき、放射線検出器に入射される、回折X線以外の放射線を低減することができ、放射線に起因するバックグランド強度を著しく低減することができ、回折ピークをより精度良く測定することができる。
【0015】
好ましくは、X線通路に面している放射線検出器が、放射線検出器を構成する複数の部材のうち金属で構成することが必須の部材のみを金属製とし、金属製の部材以外の残りの部材を非金属製とすることが望ましい。これにより、放射線検出器を構成する複数の部材に占める金属製の部材の割合が減少するため、放射線が金属製の部材に当たって生成される2次X線および制動X線が減少する。放射線検出器への回折X線以外の放射線の入射の著しい低減、および放射線検出器内で生成される2次X線および制動X線の減少により、バックグランド強度をさらに低減することができ、回折ピークをより精度良く測定することができる。
【0016】
前述の非金属製の部材を、バックグランド強度への影響が小さいアルミニウムおよびマグネシウムのいずれかで構成しても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放射化された被測定物または放射線環境下における被測定物のX線回折測定するとき、放射線のバックグランド強度をさらに低減することができ、回折ピークをより精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の好適な一実施例であるX線回折装置の平面図である。
図2図1に示す放射線検出器の一例である比例計数管の構成図である。
図3図2のIII部の拡大図である。
図4図3のIV−IVの断面図である。
図5図1に示すX線回折装置を用いて放射化された試料を測定した場合における回折プロファイルの一例を示す説明図である。
図6図1に示す放射線検出器の他の例である半導体放射線検出器の構成図である。
図7】放射化されていない試料を対象にX線回折を行って得られた回折プロファイルの一例を示す説明図である。
図8】放射化された試料を対象にX線回折を行って得られた回折プロファイルの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
放射化された試料(被測定物)をX線回折法により測定する場合、試料から放出される放射線の影響によりバックグラウンドが高くなり、これが試料からの回折X線の強度に重畳して明瞭な回折ピークが得られなくなる(図8参照)。
【0020】
放射化されていない試料(被測定物)を、非放射線環境下でX線回折法により測定した場合において得られた回折プロファイルの例を、図7に示す。この例では、バックグラウンドの放射線強度が約100countsであるのに対し、得られた回折ピークが約400countsになっている。このため、回折ピークが明瞭に見られる。しかしながら、前述したように、放射化された試料をX線回折法により測定した場合には、図8に示すように、バックグラウンド強度が約30000countsと非常に高くなり、回折ピークを確認することができなくなる。
【0021】
放射線検出器の一種である比例計数管では、X線源から特性X線を照射した試料から回折X線が入射窓を通して比例計数管内に入射されたとき、内部のガスがイオン化され、高電圧をかけた陽極芯線と陰極の間にパルス的な電流が生じる。この電流のパルスを計数することにより、試料表面の組成分析または残留応力の測定が行われる。放射化された試料または試料が置かれた環境から比例計数管に入射される有害放射線により、比例計数管内のガスがイオン化され、パルス的な電流が生じる。これが、バックグランド源になる。さらに、放射線が放射線検出器である比例計数管の金属部に当ると、2次X線および制動X線が発生する。回折X線と同様に、比例計数管内のガスをイオン化してパルス的な電流を発生させる2次X線および制動X線が、バックグラウンド源となる。特に、比例計数管の金属部でこのような現象が生じると、大きなバックグラウンド源となる。入射する放射線のエネルギーが高いほど、放射線検出器の金属部で生じる2次X線および制動X線によるバックグランド強度への影響が大きくなる。
【0022】
発明者らは、2次X線および制動X線によるバックグランド強度の増大を防止するために、放射線検出器の金属部を減少すれば良いとの発想をするに至った。このため、発明者らは、放射線検出器として金属が必須になる部分を金属とし、これ以外の部分を非金属またはバックグランド強度への影響が小さいアルミニウムまたはマグネシウムで構成することにした。X線回折測定に使用するX線のエネルギーは約5〜10keV程度であるが、アルミニウムまたはマグネシウムに放射線が照射されることにより発生する特性X線は1〜1.5KeV程度である。このように、発生する特性X線のX線エネルギーが低いため、アルミニウムおよびマグネシウムは、バックグラウンド源としての寄与がほとんどない。
【0023】
以上に述べた検討結果を反映した、本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0024】
本発明の好適な一実施例である実施例のX線回折装置を、図1図4を用いて説明する。
【0025】
本実施例のX線回折装置1は、X線源(例えば、X線管)2、放射線検出器である比例計数管3、ベース11、試料ステージ15、X線源走査装置(例えば、2θウォーム減速機構)16、偏向結晶部材18、偏向結晶部材ステージ19、および鉛製の放射線遮蔽体20を備えている。図1はX線回折装置1の平面図であるが、放射線遮蔽体20の部分は、放射線遮蔽体20の内部構造が分かるように、横断面を示している。
【0026】
図1に示された34は第1回転装置であり、37は第2回転装置である。第1回転装置34はモータ35およびウォーム36を含み、第2回転装置37はモータ38およびウォーム39を含んでいる。なお、図1において、モータ35およびウォーム36が水平方向においてモータ38及びウォーム39とずれた状態で記載されているが、これはモータ35およびウォーム36がX線回折装置1に用いられていることを示すためであり、実際には、モータ35およびウォーム36はモータ38及びウォーム39の真下に配置されている。
【0027】
円板状の試料ステージ15は、回転可能にベース11に設置されている。試料ステージ15は裏面に取り付けられた第1回転軸(図示せず)を含んでおり、この第1回転軸の下端部がベース11に設置された第1ベアリング(図示せず)で支持される。試料ステージ15は、第1回転装置34により水平面内において回転される。第1回転装置34の、モータ35の回転軸に連結されたウォーム36は、ベース11に支持部材(図示せず)により支持され、さらに、第1回転軸に取り付けられた第1ウォーム歯車(図示せず)と噛み合っている。
【0028】
X線源走査装置16は、ベース11に設置されて、回転円板17および第2回転装置37を有する。回転円板17は試料ステージ15の下方に位置している。円筒状の第2回転軸(図示せず)が、回転円板17の裏面に取り付けられて、前述の第1回転軸を取り囲んでいる。すなわち、第1回転軸は第2回転軸内に配置される。第1回転軸および第2回転軸のそれぞれの回転中心は一致しており、第1回転軸の下端は第2回転軸の下端よりも下方に位置している。第2回転軸の下端部は、第1回転軸に取り付けられた第1ウォーム歯車よりも上方に配置されて、例えば、支持部材でベース11に支持された第2ベアリングによって支持されている。第2回転装置37のモータ38及びウォーム39はモータ35およびウォーム36の真上に配置され、モータ38が支持部材によりベース11に取り付けられる。モータ38の回転軸に連結されたウォーム39は、上記の第2回転軸に取り付けられた第2ウォーム歯車(図示せず)と噛み合っている。X線源2が回転円板17の上面に設置される。第2ウォーム歯車は第2ベアリングよりも上方で第2回転軸に取り付けられている。
【0029】
放射線遮蔽体20は、ベース11上に配置され、ベース11に固定されている。比例計数管3は、放射線遮蔽体20内に設置され、放射線遮蔽体20によって取り囲まれている。偏向結晶部材(例えば、グラファイト平板)18を設置した偏向結晶部材ステージ19は、放射線遮蔽体20内に形成された空間26内に配置されて、水平面内で回転可能に放射線遮蔽体20内に取り付けられている。偏向結晶部材ステージ19を回転させる第3回転装置(図示せず)は、放射線遮蔽体20内に配置されている。第3回転装置による偏向結晶部材ステージ19の回転は、X線源2が回転円板17の上面に設置されたときの初期設定の時に行われるのみである。偏向結晶部材18は、X線源2からのX線の照射により被測定物23で生じた回折X線のみを偏向できる結晶構造を有する。偏向結晶部材18は、回折X線のみを選択的に回折する、例えば、グラファイトを用いて構成することが望ましい。偏向結晶部材18を設置した偏向結晶部材ステージ19も放射線遮蔽体20によって取り囲まれている。回折X線強度の低減の抑制のため、X線光路真空パス21が放射線遮蔽体20内に形成され、このX線光路真空パス21は放射線遮蔽体20内に形成された空間26から比例計数管3まで伸びている。X線光路真空パス21は、空間26から比例計数管3まで達する、放射線遮蔽体20内に形成された孔の内面に、この孔の内面からの二次散乱防止のために、適切な複数材質のフィルムを積層接着させて形成されている。X線光路22がX線光路真空パス21内に形成される。X線光路22は回折X線の導波路である。X線入射口27が、放射線遮蔽体20内に形成され、空間26から試料ステージ15に向かって伸びているX線入射通路27とX線光路真空パス21は、一直線上に配置されていなく、偏向結晶部材ステージ19の回転軸を中心として偏向結晶部材18が回折X線のみ反射する角度に折れ曲がっている。偏向結晶部材ステージ19の回転軸を中心に折れ曲がっているX線入射通路27およびX線光路22は、回折X線を比例計数管3まで導く折れ曲がったX線通路を構成する。X線入射通路27の入口は、放射線遮蔽体20の側面に取り付けられた封鎖部材28で封鎖されている。封鎖部材28は、回折X線の吸収減衰率が低い、例えば、ポリイミドフィルムまたは金属ベリリウム箔で作られている。
【0030】
X線光路真空パス21の内面に開口する吸引通路(図示せず)が、放射線遮蔽体20内に形成され、放射線遮蔽体20の一側面まで伸びてこの側面に取り付けられた吸引管に連絡される。この吸引管は真空ポンプ(図示せず)に接続される。比例計数管3、偏向結晶部材18および偏向結晶部材ステージ19が放射線遮蔽体20内に設置された後、上記の真空ポンプを駆動して、封鎖部材28で封鎖されたX線入射通路27、空間26およびX線光路22内を真空状態にする。
【0031】
比例計数管3の基本的な構成を、図2を用いて説明する。比例計数管3は、ケーシング4、陽極芯線5、一対の陰極板6および陰極線7を有する。ケーシング4は、例えば、プラスチックで作られており、密封された容器である。高電圧絶縁のための、例えば陶器製のガイシ10A,10Bが、ケーシング4の、対向している一対の壁のそれぞれの外面に密封接着して取り付けられ、その一対の壁を封鎖する。X線入射窓8がケーシング4の、X線光路22側に位置する一つの壁に形成され、このX線入射窓8はX線光路22と対向している。X線入射窓8も、封鎖部材28と同様に、例えば、ポリイミドフィルムまたは金属ベリリウム箔で作られている。
【0032】
ガス33が、所定の圧力で、ケーシング4の内部空間に充填される。このガス33として、例えば、90%のArおよび10%のCHの混合ガスであるPRガス(またはXeガス)が用いられる。ケーシング4の内部空間に連通するガス供給管41およびガス排出管42が、ケーシング4の一つの側壁に接続される。ガス33が、ガス供給管41を通してケーシング4内に供給され、ガス排出管42を通してケーシング4から排出される。
【0033】
陽極芯線5がケーシング4内の内部空間に配置され、陽極芯線5の一端部がガイシ10Bに取り付けられる。陽極芯線5はガイシ10Aを貫通してケーシング4外に取り出される。陽極芯線5は、電気の良導体である極細の金属線、例えば、銅または金で作られている。
【0034】
プラスチック製である一対の細長い陰極板6は、それぞれの両端部をプラスチック製のスペーサ部材9A,9Bで結合されて所定の間隔を有する平行な状態で、ケーシング4の内部空間に配置される。一対の陰極板6のうちの一方の陰極板6に、例えば、銅または金で作られている極細線である陰極線7Bが巻き付けられ、他方の陰極板6にも銅または金で作られている極細線である陰極線7Cが巻き付けられている(図3参照)。一対の陰極板6は電界強度分布が均一になるように陽極芯線5と平行かつ等距離に配置される。さらに、陰極線7Aが、陰極板6の長手方向において所定の幅で等間隔になるように、一対の陰極板6に跨ってこれらの陰極板6に巻き付けられる。一対の陰極板6に巻き付けられた陰極線7Aは、X線入射窓8と対向している。ケーシング4内で陰極板6の長手方向に伸びて配置された陽極芯線5は、X線入射窓8に垂直な方向において、一対の陰極板6に巻き付けられた陰極線7Aの間に配置される(図4参照)。一対の陰極板6は、ケーシング4の、X線入射窓8に垂直な方向と直交する方向で対向している一対の壁にそれぞれ取り付けられたプラスチック製のネジ40によって、これらの壁に保持される。
【0035】
陽極芯線5と陰極線7A,7Bおよび7Cはそれぞれ接触していなく、陽極芯線5と陰極線7Aの間には隙間が形成されている。陰極線7Aは陽極芯線5が伸びている方向と直交する方向に配置される。陽極芯線5のうちケーシング4内に配置された部分は陽極を構成し、陽極芯線5のうちケーシング4の内面から外側の部分でケーシング4を貫通して端子29Aに接続される部分は信号線として機能する。陰極線7Aのうちケーシング4内に配置された部分および陰極線7Bおよび7Cは陰極を構成する。陰極線7Aのうちケーシング4の内面から外側の部分でケーシング4を貫通して端子29Bに接続される部分は信号線として機能する。
【0036】
陰極線7A,7Bおよび7Cは、電気の良導体である同種の金属で作られる。陽極芯線5と陰極線7A,7Bおよび7Cは、同種の良導体である金属で構成しても良いし、異種の良導体である金属で構成しても良い。
このようにすることにより、検出器へ入射するX線を電極板で遮ることなく取り入れることができる。
端子29A,29Bがケーシング4の外面に取り付けられている。陽極芯線5がケーシング4およびガイシ10A内を通って端子29Aに接続され、陰極線7Aがケーシング4内を通って端子29Bに接続される。なお、陰極線7Aと陰極線7B、および陰極線7Aと陰極線7Cは、それぞれの陰極板6の上で接続されている。陽極芯線5および陰極線7Aのそれぞれは、ケーシング4と電気的に絶縁されている。同軸コネクターを用いて、高圧ケーブル13の導線14Aが端子29Aに接続され、高圧ケーブル13の導線14Bが端子29Bに接続される。高圧ケーブル13は、放射線遮蔽体20内を通って放射線遮蔽体20の外に取りだされる。高圧ケーブル13は、放射線遮蔽体20と電気的に絶縁されている。高圧ケーブル13は同軸ケーブルであり、導線14A,14Bが検出器高圧電源に接続される。
【0037】
比例計数管3では、放射線の照射による制動X線および特性X線の発生を低減するために、金属部材を、電気が流れる陽極芯線5および陰極線7A,7Bおよび7Cに限定している。これらの金属部材は、銅、金、白金、タングステン、アルミニウムおよびこれらの合金から選ばれた一種の金属で構成すると良い。比例計数管3の、陽極芯線5および陰極線7A,7Bおよび7C以外の各部材(ケーシング4、一対の陰極板6、スペーサ部材9A,9Bおよびネジ40)は、2次X線および制動X線の発生を低減するために、非金属(例えば、プラスチック、セラミックス、ガラスおよび炭素繊維から選ばれた一種で構成すると良い。また、比例計数管3の、陽極芯線5、陰極線7A,7Bおよび7C以外の部材(ケーシング4および一対の陰極板6等)は、前述したように、バックグランド強度への影響が小さいアルミニウムまたはマグネシウムで構成しても良い。
【0038】
X線回折装置1を用いた被測定物23の測定方法を以下に説明する。この測定方法は、被測定物23をインバースX線回折方法により測定する例を示している。インバースX線回折方法は、放射線遮蔽体20内の偏向結晶部材18、放射線検出器、すなわち、比例計数管3を固定して走査しなく、X線源2を、X線源走査装置16を用いて被測定物23の周囲で走査させる方法である。
【0039】
原子力発電プラントの運転停止中に、中性子を照射されて放射化した炉内構造物を、原子炉圧力容器から取り出し、新しい炉内構造物と交換する場合がある。X線回折装置1を用いた本実施例のX線回折方法では、例えば、原子炉圧力容器から取り出された、放射化された炉内構造汚物の一部を被測定物23として用いる。この被測定物23が、X線回折したい面をX線源2に向けて、X線回折装置1の試料ステージ15上の回転センターに動かないように取り付けられる。
【0040】
第2回転装置37のモータ38が駆動されると、モータ37の回転がウォーム39に伝えられて第2ウォーム歯車が回転する。このとき、第2回転軸が回転し、X線源2を取り付けた回転円板17が回転する。モータ38の駆動により、回転円板17が設定された2θ°の角度範囲内で回転する。θは、被測定物の回折角度である。回転円板17が回転されるとき、試料ステージ15も回転円板17の回転に同期させて回転させる。試料ステージ15の回転は、以下のように行われる。第1回転装置34のモータ35を駆動する。モータ35の回転力がウォーム36、第1ウォーム歯車および第1回転軸へと伝えられ、試料ステージ15が回転される。試料ステージ15は、第1回転装置34により、回転円板17の回転速度の半分の回転速度で回転される。この結果、試料ステージ15の回転角度範囲がθ°になる。
【0041】
X線源走査装置16で走査されるX線源2から放出されたX線が、試料ステージ15上の被測定物23の表面に照射され、このX線の照射により被測定物23で生じた回折X線が、X線入射通路27、偏向結晶部材ステージ19上の偏向結晶部材18の表面、X線光路真空パス21内のX線光路22を経て比例計数管3のX線入射窓8に達する。
【0042】
具体的には、高圧ケーブル13の導線14A,14Bによって陽極芯線5と陰極線7Aの間に高電圧が印加されている。X線源2からX線ビームが試料ステージ15上の被測定物23の表面に照射される。X線ビームの照射により発生した、被測定物23からの回折X線が、封鎖部材28を透過して放射線遮蔽体20に形成されたX線入射通路27に入射され、偏向結晶部材18により偏向されてX線光路22内に達する。放射化された被測定物23から放出されてX線入射通路27に入射されたγ線は、偏向結晶部材ステージ19上の偏向結晶部材18を透過し、X線光路22内に入射されない。偏向結晶部材18で偏向された回折X線は、真空状態になっているX線光路22を通ってケーシング4のX線入射窓8を通過し、ケーシング4の内部空間に達する。この内部空間に到達した回折X線は、一対の陰極板6に跨って陰極板6の長手方向に等間隔で巻き付けられた陰極線7Aの間を通過し、一対の陰極板6の間に形成された領域に到達する。この領域内のガス33が、入射された回折X線によりイオン化される。陰極線7Bが巻き付けられた陰極板6と陰極線7Cが巻き付けられた陰極板6に跨って陰極線7Aが巻き付けられ、図4に示すように陰極線7A間に陽極芯線5が配置された構造として、陽極芯線5に高電圧をかけることにより、陰極線7と陽極芯線5の間に強い電場が生じる。イオン化により生じた電子は、この電場に引かれて陽極芯線5の方に移動し、陽極芯線5に到達すると陽極芯線5にパルス的な電流が生じる。このパルス電流は、高圧ケーブル13の導線14A,14Bに接続されたプリアンプ(図示せず)およびプリアンプに接続された波高分析回路に伝えられる。波高分析回路によってパルス電流を計数することにより、X線強度を示すカウント数が得られる。このカウント数に基づいて、例えば、被測定物23の残留応力を求めることができる。
【0043】
本実施例のX線回折方法は、X線源を固定して放射線検出器を走査する従来のX線回折方法とは異なり、X線源2をX線源走査装置16で被測定物23の周囲を回転させ、X線源2から放出されたX線ビームを被測定物23に照射するインバースX線回折法である。なお、応力測定においては、回折にあずかる多結晶粒の結晶面法線と被測定物23の表面のなす方位角度を試料ステージ15で数種類の角度で変えながら、測定が繰り返される。
【0044】
本実施例では、偏向結晶部材18および比例計数管3が放射線遮蔽体20内に配置されて放射線遮蔽体20によって取り囲まれているため、放射化された被測定物23から放出されるγ線が放射線遮蔽体20によって遮蔽される。このため、比例計数管3に入射されるそのγ線が著しく低減される。特に、回折X線を偏向させる偏向結晶部材18を放射線遮蔽体20内に配置し、X線入射通路27とX線光路真空パス21(X線光路22)が空間26を中心として折れ曲がっているため、被測定物23から放出されてX線入射通路27に入射したγ線、および被測定物23の表面で散乱した有害な散乱放射線が、偏向結晶部材18を透過し、X線光路22を経て比例計数管3に入射されることはない。X線回折装置1を設置した測定室の壁および床等で散乱した放射線が比例計数管3に入射される場合が考えられるが、本実施例のX線回折装置1では、その壁と比例計数管3の間およびその床と比例計数管3の間にそれぞれ放射線遮蔽体20が存在するため、壁および床等で散乱した放射線が比例計数管3に入射する可能性が著しく低減され、バックグランド強度が減少させる。
【0045】
また、本実施例では、比例計数管3を構成する部材のうち金属で構成することが必須の部材、すなわち、金属部材を必要最小限に限定し、電気を流すために金属で構成している陽極芯線5、および陰極線7A,7Bおよび7Cのみとしている。比例計数管3を構成する部材のうち金属部材以外の部材は、プラスチック等の非金属で構成されている。このため、放射線遮蔽体20を透過して比例計数管3内に放射線が入射しても、この放射線が金属部材に当って生成される2次X線および制動X線が著しく低減される。2次X線および制動X線は、回折X線と同様に、ケーシング4内のガス33をイオン化し、パルス的な電流を発生させる。発生する2次X線および制動X線が多いと、バックグランド強度を高めることになるが、本実施例では、前述のように、2次X線および制動X線の低減をもたらし、バックグランド強度を減少させる。
【0046】
本実施例によれば、偏向結晶部材18および比例計数管3のそれぞれの周囲を放射線遮蔽体20により取り囲み、比例計数管3における金属部材の割合を低減するので、バックグランド強度が著しく低減され、X線回折法において回折ピークをより精度良く測定することができる。
【0047】
本実施例のX線回折装置1を用いて放射化された被測定物23をX線回折測定した結果を、図5を用いて説明する。バックグラウンド強度は放射化されていない被測定物を測定した場合に比べてやや高いが、回折ピークを精度良く得ることができた。
【0048】
また、エメリー研磨により圧縮応力を付与した被測定物の応力測定を、X線回折装置1を用いて行った例を以下に説明する。この被測定物は、放射化されていない被測定物である。この放射化されていない被測定物を単独で測定した場合と、バックグラウンド源として図8に示すバックグランド強度を生じる放射化された被測定物を並べて測定した場合における測定結果を比較した。この結果、放射化されていない被測定物が単独の場合においてX線回折装置1で得られた測定結果を用いて求めた残留応力値が約260±65MPaであるのに対し、放射化されていない被測定物を放射化された被測定物と並べてバックグラウンド強度が高くなる条件下でX線回折装置1を用いて得られた測定結果に基づいて求めた残留応力値が約200±69MPaと、同程度の値が得られることを確認した。
【0049】
本実施例は、比例計数管3および放射線遮蔽体20を固定し、X線源2をX線源走査装置16により回転させるインバースX線回折方式であるため、X線源2を固定して比例計数管3を走査機構により回転させる従来のX線回折方式と比べて、X線源2の回転角度範囲が2分の1となり、被測定物23のX線回折に要する時間を半分に短縮することができる。さらに、従来のX線回折方式と同様に比例計数管3および重い放射線遮蔽体20を走査機構により回転させようとすると、その走査機構により重い放射線遮蔽体20を回転させることが極めて困難となる。また、放射線遮蔽体20を測定室の床面に設置されるベース11に固定するため、放射線遮蔽体20を厚くすることができ、それだけ、放射線の遮蔽効果を高めることもできる。これは、バックグランド強度のさらなる低減につながる。
【0050】
本実施例のように比例計数管3および重い放射線遮蔽体20を固定し、X線源2を回転させることは、発明者らが、検討の結果、X線源2を回転走査し、放射線検出器(例えば、比例計数管3)を固定した場合においても、X線源2を固定して放射線検出器を回転走査する従来のX線回折装置と同様に、回折ピークを精度良く得られることを発見したことに基づいて成された。また、発明者らは、検証試験によりこれが正しいことを確認した。この結果、発明者らは、比例計数管3および放射線遮蔽体20を固定し、X線源2を回転させるX線回折方法を、前述のように、インバースX線回折方法と呼ぶことにした。
【0051】
本実施例では、走査角度範囲を従来のX線回折装置と比べて1/2にすることができ、それだけ測定時間を半減することができる。すなわち、上記した従来のX線回折装置における被測定物へのX線の入射角の範囲をθ°とすると、この従来のX線回折装置では放射線検出器をその倍の2θ゜走査(回転)する必要がある。ところが、本実施例のX線回折装置1は、放射線検出器である比例計数管3を被測定物23の固有のピーク回折角度に固定しているため、X線入射角範囲をθ゜だけ走査(回転)すれば良いからである。
【0052】
本実施例で用いられる比例計数管3では、一対の陰極板6がケーシング4内に配置され、陰極線7Aが、陰極線7Bが巻き付けられた一つの陰極板6と陰極線7Cが巻き付けられた他の陰極板6に跨って、陰極板6の長手方向に所定の間隔を有して巻き付けられているため、X線入射窓8から入射した回折X線が巻き付けられた陰極線7Aの間を通して、高電圧が印加されている陽極芯線5と陰極線7Aの間に入射されやすくなる。このため、陽極芯線5と陰極線7Aの間に存在するガス33がイオン化しやすくなり、それだけ、パルス電流が発生しやすくなる。このため、回折X線の検出精度が向上する。
【0053】
さらに、本実施例では、X線光路22を真空ポンプ等により排気して真空パス化されるので、X線光路22を通過する回折X線を空気中におけるX線の吸収減衰を低減させることができる。例えば、X線光路22の150mmの長さを真空パス化した場合、約1.6倍の回折X線強度が得られる。このため、回折ピークをより精度良く測定することができる。
【0054】
本実施例のX線回折装置1において放射線検出器である比例計数管3を他の放射線検出器である半導体放射線検出器に替えたとしても、本実施例のX線回折装置1で生じる各効果を得ることができる。本実施例のX線回折装置1に用いる半導体放射線検出器3Aの一例を、図6を用いて説明する。この半導体放射線検出器3Aは、図1に示すX線回折装置1において比例計数管3が配置されている、放射線遮蔽体20内の位置に配置される。この場合において、半導体放射線検出器3Aは放射線遮蔽体20によって取り囲まれる。
【0055】
半導体放射線検出器3Aは、プラスチック製のケーシング4A、半導体24、陽極30および陰極31を有する。ケーシング4Aは密封された容器である。陽極30は半導体24の一面に取り付けられ、陰極31は半導体24のその一面と対向する他の面に取り付けられる。陽極30および陰極31は例えば金で作られている。放射線遮蔽体20内に形成されたX線光路22に対向するX線入射窓8Aが、ケーシング4Aの一つの壁に形成される。X線入射窓8Aは、比例計数管3のケーシング4に形成されるX線入射窓8と同じ材質で構成される。対向する2つの面に陽極30および陰極31をそれぞれ取り付けた半導体24の、各電極で覆われていない一つの側面が、X線入射窓8Aに対向するように、陽極30および陰極31を取り付けた半導体24が、ケーシング4A内に設置される。この状態で、例えば、半導体24の、X線入射窓8Aに対向する側面とは反対側の側面が、接着剤によりケーシング4Aの内面に接着される。陽極30に接続された信号線32Aが端子29Aに接続され、陰極31に接続された信号線32Bが端子29Bに接続されている。端子29A,29Bが、比例計数管3を用いた場合と同様に、ケーシング4Aの外面に取り付けられる。同軸コネクターを用いて、高圧ケーブル13の導線14Aが端子29Aに接続され、高圧ケーブル13の導線14Bが端子29Bに接続される。
【0056】
半導体放射線検出器3Aでは、放射線の照射による2次X線および制動X線の発生を低減するために、半導体放射線検出器3Aを構成する部材のうち金属で構成することが必須の部材、すなわち、金属部材を、電気が流れる陽極30、陰極31、および信号線32A,32Bに限定している。これらの金属部材は、銅、金、白金、タングステン、アルミニウムおよびこれらの合金から選ばれた一種の金属で構成すると良い。半導体放射線検出器3Aの、陽極30、陰極31、および信号線32A,32B以外の部材(ケーシング4A)は、2次X線および制動X線の発生を低減するために、非金属(例えば、プラスチック、セラミックス、ガラスおよび炭素繊維から選ばれた一種)で構成すると良い。また、半導体放射線検出器3Aにおいて、陽極30、陰極31、信号線32A,32Bおよび半導体24以外の部材をアルミニウムまたはマグネシウムで構成しても良い。
【0057】
半導体放射線検出器3Aは、陽極30、陰極31、および信号線28A,28B,32A,32B以外の部材を非金属としているため、2次X線および制動X線の発生が低減され、バックグランド強度を低減することができる。比例計数管3の替りにこのような半導体放射線検出器3Aを用いたX線回折装置1も、比例計数管3を用いた前述のX線回折装置1で生じる各効果を得ることができる。
【0058】
本実施例のX線回折装置1では、X線源走査装置16の、X線源2を取り付ける回転部材を回転円板17としているが、回転円板17の替りにアーム部材を第2回転軸に取り付け、このアーム部材にX線源2を取り付けても良い。回転円板17およびアーム部材はX線源を保持する、回転する保持部材である。
【符号の説明】
【0059】
1…X線回折装置、2…X線源、3…比例計数管、3A…半導体放射線検出器、4,4A…ケーシング、5…陽極芯線(陽極)、6…陰極板、7A,7B,7C…陰極線(陰極)、8…X線入射窓、11…ベース、15…試料ステージ、16…X線源走査装置、18…偏向結晶部材、19…偏向結晶部材ステージ、20…放射線遮蔽体、22…X線光路、23…被測定物、24…半導体、26…空間、27…X線入射通路、30…陽極、31…陰極、34…第1回転装置、37…第2回転装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8