(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、k空間の撮影データの一部がない疎のk空間の撮影データは、サンプリングされない未サンプリングのデータである。この疎のk空間の撮影データに基づいて画像再構成するため、パラレルイメージングの手法も圧縮センシングの手法も、画質が劣化してしまうおそれがある。したがって、短い走査時間で、高品質の画像を取得できる画像再構成手法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点の磁気共鳴イメージング装置は、静磁場中に置かれた被検体に対して高周波磁場パルスを発生する送信コイルと、被検体から発生する核磁気共鳴信号を検出する信号検出手段と、を備える。その磁気共鳴イメージング装置は、k空間の参照データをサンプリングするため送信コイルから発生された第1パルスシーケンスと、k空間の一部のデータが欠けたアンダーサンプリングデータをサンプリングするため、送信コイルから発生された第2パルスシーケンスと、第1パルスシーケンスで得られた参照データと第2パルスシーケンスで得られたアンダーサンプリングデータとに基づいて、参照データとアンダーサンプリングデータとの相関関数を取得する関数取得手段と、相関関数に基づいてk空間の欠けた箇所のデータを画像再構成する画像再構成手段と、を備える。
【0007】
第2の観点の磁気共鳴イメージング装置は、第1の観点に記載の磁気共鳴イメージング装置において、第1パルスシーケンスが、参照データとしてプロトン密度画像を得るパルスシーケンスを含み、第2パルスシーケンスが、アンダーサンプリングデータとしてT1強調画像、T2強調画像、インフェーズ画像又はアウトオブフェーズ画像を得るパルスシーケンスを含む。
【0008】
第3の観点の磁気共鳴イメージング装置は、第1の観点に記載の磁気共鳴イメージング装置において、信号検出手段が、第1パルスシーケンスによって発生する核磁気共鳴信号を第1受信コイル及び第2受信コイルで受信し、信号検出手段が、第2パルスシーケンスによって発生する核磁気共鳴信号を第1受信コイル及び第2受信コイルで受信する。
【0009】
第4の観点の磁気共鳴イメージング装置は、第3の観点に記載の磁気共鳴イメージング装置において、関数取得手段が、第1受信コイル又は第2受信コイルの一方で得られた参照データとアンダーサンプリングデータとに基づいて1つの相関関数を取得し、画像再構成手段が、第1受信コイル又は第2受信コイルの他方のデータの画像再構成に対して1つの相関関数を使用する。
【0010】
第5の観点の磁気共鳴イメージング装置は、第1の観点から第4の観点のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、関数取得手段が、アンダーサンプリングデータのうち、k空間の中央領域のアンダーサンプリングデータに基づいて、参照データとアンダーサンプリングデータとの相関関数を取得する。
【0011】
第6の観点の磁気共鳴イメージング装置は、第1の観点から第4の観点のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、関数取得手段は、アンダーサンプリングデータのうち、k空間の振幅の大きい領域のアンダーサンプリングデータに基づいて、参照データとアンダーサンプリングデータとの相関関数を取得する。
【0012】
第7の観点の磁気共鳴イメージング装置は、第1の観点から第6の観点のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、 k空間の参照データをREF(kx、ky)とし、k空間のアンダーサンプリングデータをCON(kx、ky)としたとき、下記数式1を満たすカーネル(積分核)F(kx、ky)が相関関数であることを特徴としている。
CON(kx、ky) = F(kx、ky)* REF(kx、ky)…数式1
但し、*はコンボリューション(畳み込み積分)である。
【0013】
第8の観点の磁気共鳴イメージング装置は、第1の観点から第7の観点のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、画像再構成手段は、信号検出手段の感度の空間依存性を利用して画像の空間又は時間解像度を改良するパラレルイメージングを行うとともに、k空間の欠けた箇所のデータを画像再構成する。
【0014】
第9の観点のプログラムは、磁気共鳴イメージング装置による被検体の撮像に際して、パルスシーケンス時間を短くして高画質の画像を得るプログラムある。そのプログラムは、磁気共鳴イメージング装置に用いられるコンピュータに、k空間の参照データをサンプリングする第1パルスシーケンスを発生させる手順と、k空間の一部のデータが欠けたアンダーサンプリングデータをサンプリングする第2パルスシーケンスを発生させる手順と、参照データとアンダーサンプリングデータとに基づいて、参照データとアンダーサンプリングデータとの相関関数を取得する関数取得手順と、相関関数に基づいて、アンダーサンプリングデータの間引かれた箇所のデータを画像再構成する画像再構成手順と、を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の磁気共鳴イメージング装置は、参照データとアンダーサンプリングの撮影データとの相関関数から未サンプリングのk空間の撮影データを算出する。未サンプリングのk空間の撮影データを補間することができるので、この補間されたk空間の撮影データに基づいて磁気共鳴イメージング装置は高品質な画像を取得することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの形態に限られるものではない。
<磁気共鳴イメージング装置の構成>
【0018】
図1は、本実施の形態の磁気共鳴イメージング装置10の概略構成図である。
図1を参照して、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置10の構成及びその基本動作について述べる。
【0019】
本実施形態の磁気共鳴イメージング装置10は、マグネットシステム100、勾配コイル駆動部130、RFコイル駆動部140、データ収集部150、シーケンス制御部160、データ処理部170、表示部180及び操作部190を有する。
【0020】
マグネットシステム100は、主磁場コイル部102、勾配コイル部106及びRFコイル部108を有している。これら各コイル部は概ね円筒状の形状を有し、概ね円柱状のボアに互いに同軸状に配置されている。ボア内には被検者SBが寝台200に載置されており、寝台200は、撮影部位に応じて、マグネットシステム100内のボア内を移動可能になっている。
【0021】
主磁場コイル部102は、マグネットシステム100の内部空間に静磁場を形成する。静磁場の方向は概ね被検者SBの体軸の方向に平行であり水平磁場を形成する。主磁場コイル部102は、通常、超伝導コイルを用いて構成されるが、超伝導コイルに限らず永久磁石等を用いて構成してもよい。
【0022】
勾配コイル部106は、互いに直交する3軸、すなわち、スライス軸、位相軸及び周波数軸の方向において、それぞれ主磁場コイル部102によって形成された静磁場強度に勾配を持たせるための3種の勾配磁場を発生する。このような勾配磁場の発生を可能にするために、勾配コイル部106は図示しない3系統の勾配コイルを有する。勾配コイル部106には勾配コイル駆動部130が接続されており、勾配コイル駆動部130は勾配コイル部106に駆動信号を与えて勾配磁場を発生させる。勾配コイル駆動部130は、勾配コイル部106における3系統の勾配コイルに対応して、図示しない3系統の駆動回路を有する。
【0023】
スライス軸方向の勾配磁場をスライス勾配磁場と言い、位相軸方向の勾配磁場を位相エンコード勾配磁場(又はフェーズエンコード勾配磁場)と言い、周波数軸方向の勾配磁場をリードアウト勾配磁場(又は、周波数エンコード勾配磁場)と言う。
【0024】
静磁場空間における互いに直交する座標軸をX軸,Y軸,Z軸としたとき、いずれの軸もスライス軸とすることができる。本実施形態においては、スライス軸を被検者SBの体軸の方向をZ軸方向とし、残り2軸のうちの一方を位相軸とし、他方を周波数軸とする。なお、スライス軸、位相軸及び周波数軸は、相互間の直交性を保ったまま、X,Y,Z軸に関して任意の傾きを持たせることも可能である。
【0025】
RFコイル部108は、静磁場空間に被検者SBの体内のスピンを励起するための高周波磁場を形成する。高周波磁場を形成することをRF励起信号の送信といい、RF励起信号をRFパルスという。RFコイル部108にはRFコイル駆動部140が接続されており、RFコイル駆動部140はRFコイル部108に駆動信号を与え、その駆動信号に基づいてRFコイル部108はRFパルスを送信する。励起されたスピンが生じる電磁波すなわち核磁気共鳴信号は、RFコイル部108によって受信される。RFコイル部108にはデータ収集部150が接続されている。データ収集部150は、RFコイル部108が受信したエコー信号(又はMR受信信号)をデジタルデータとして収集する。
【0026】
具体的には、RFコイル部108は、複数の受信コイルを用いたマルチレシーバ80(Multi Receiver)(
図10を参照)を用いることができる。RFコイル部108で空間的に均一なRFの送受信を行い、RFコイル部とは別のマルチレシーバ(体に巻く等するRF受信コイル)によりRF受信を行う。マルチレシーバ80は、相対的に高感度な受信コイルを複数個並べる構成である。マルチレシーバ80は、各コイルで取得した信号を合成する。これにより磁気共鳴イメージング装置10は、受信コイルの高い感度を保ったまま視野を拡大し、高感度化を図っている。
【0027】
RFコイル部108で検出しデータ収集部150で収集した核磁気共鳴信号は、周波数ドメイン(周波数領域)、例えばフーリエ空間の信号となる。位相軸方向及び周波数軸方向の勾配により、核磁気共鳴信号のエンコードを2軸で行う。このため、核磁気共鳴信号は、たとえば、周波数空間をフーリエ空間で例示すると、二次元フーリエ空間における信号として得られる。二次元フーリエ空間をk空間(K-space)ともいう。位相(フェーズ)エンコード勾配磁場及び周波数エンコード(リードアウト)勾配磁場は、二次元フーリエ空間における信号のサンプリング位置を決定する。
【0028】
勾配コイル駆動部130、RFコイル駆動部140及びデータ収集部150にはシーケンス制御部160が接続されている。
【0029】
シーケンス制御部160は、操作者に入力された撮影条件、すなわち撮影プロトコルに従い、勾配コイル駆動部130及びRFコイル駆動部140を駆動させる。
【0030】
表示部180は、グラフィックディスプレー等で構成されている。表示部180はデータ処理部170に接続されている。表示部180は操作画面、及び画像再構成された画像などを表示することができる。
【0031】
操作部190は、ポインティングデバイスを有するキーボード等で構成される。操作部190はデータ処理部170に接続されている。操作部190は、操作者によって表示部180を介して操作される。操作部190は、キーボード等の代わりに表示部180にタッチパネルを配置してもよい。
【0032】
データ処理部170は演算部171及び記憶部172で構成され、データ処理部170は各種データの処理及びプログラムを実行する。なお、データ処理部170は磁気共鳴イメージング装置10とは別のネットワークに繋がったワークステーションであってもよい。演算部171には関数取得部175と画像再構成部176とが備えられる。関数取得部175はk空間の参照データとアンダーサンプリングデータとの相関関係を取得し、画像再構成部176はk空間の撮影データをフーリエ変換FTすることで画像を作成する。記憶部172は、各種撮影プロトコル、各種プログラム及び各種データが記憶され、データ等を適宜読み出し及び書き込みする。
【0033】
データ収集部150が収集した多くの核磁気共鳴信号がデータ処理部170に入力される。データ処理部170は、データ収集部150が収集した撮影データを記憶部172に記憶させる。記憶部172内には上述したk空間に対応するデータ空間が形成される。以下、本実施形態における撮影データ処理方法を説明する。
【0034】
<撮影データ処理方法>
一般に、磁気共鳴イメージング装置10は同一なスライス面において複数種類のパルスシーケンスで撮影する。磁気共鳴イメージング装置10はパルスシーケンスのパラメータを変化させて複数のコントラストの画像を取得する。例えば、磁気共鳴イメージング装置10は同一なスライス面をT1強調画像、T2強調画像及びプロトン(proton)密度画像などで撮影する。医師等の観察者は同一なスライス面において複数のコントラストが異なる画像を比較することで病気を診断する。
【0035】
例えば、磁気共鳴イメージング装置10は、所定部位の一連の撮影において同一なスライス面においてT1強調画像、T2強調画像及びプロトン密度画像を撮影する。T1強調画像、T2強調画像及びプロトン密度画像の撮影はそれぞれ対応するパルスシーケンスを用いて撮影が行われて撮影データが収集される。このためT1強調画像、T2強調画像及びプロトン密度画像を得るためには3回の撮影が行われる。それぞれの二次元配列されたk空間の撮影データが密に埋められ、3回分のフルサンプリング(full sampling)された撮影データが収集される。3回分のフルサンプリングされた撮影データはそれぞれ撮影時間(収集時間)が異なるが、フルサンプリングするために約3倍の撮影時間が必要となっている。このため、所定部位の一連の撮影には3回分のデータ量と約3倍の撮影時間とが必要である。
【0036】
さて、プロトン密度画像は水素原子の密度が画像化されている。プロトン密度画像は画像コントラストが低いが、被検体の体内には水素原子が多く含まれているため撮影データの情報量が多くSNR(Signal to Noise ratio)に優れ形態情報に有用とされている。
【0037】
T1強調画像はプロトン密度画像のT1緩和時間を強調した画像であり、T2強調画像はプロトン密度画像のT2緩和時間を強調した画像である。言い換えると、T1強調画像及びT2強調画像はプロトン密度画像のコントラストが変化した画像であり、変換式用いて表現することができるため、プロトン密度画像から変換式を用いてT1強調画像及びT2強調画像を作成することが可能である。また、T1強調画像はプロトン密度画像のT1緩和時間成分を取り出した画像であるとも表現でき、T2強調画像はプロトン密度画像のT2緩和時間成分を取り出した画像であるとも表現することができる。
【0038】
磁気共鳴イメージング装置10において、画像再構成される画像は、k空間の撮影データをフーリエ変換FTすることで作成されている。二次元配列されたk空間はその全領域が撮影データで埋められた密な状態(フルサンプリング)で高品質の画像が作成される。一方、k空間の撮影データが疎の状態(アンダーサンプリング(under sampling))においても画像再構成させる手法が圧縮センシングである。圧縮センシングはアンダーサンプリングの撮影データにおいても画像再構成し撮影を高速化しているが、撮影データの量も減少するため画質が劣化しにくいサンプリング方法とは言い難い。
【0039】
サンプリング方法の一例として、k空間において確率密度関数を用いたサンプリングパターンによって取得する方法がある。サンプリングパターンは確率密度関数によりk空間におけるサンプリングの領域が算出される。
【0040】
図2(a)は、所定の部位におけるk空間の撮影データの一例である。図示されるように、X軸であるkx及びY軸であるkyで示される撮影データは、信号強度が大きいほど白色に近くなり信号強度が小さいほど黒色に近くなるように示されている。なお、信号強度が大きいとはエコー信号の振幅が大きいことをいう。したがって、
図2(a)を観察すると、k空間の中心及びその周辺の信号強度が大きく、k空間の辺縁に近づくにつれて信号強度が小さくなっていることが理解される。信号強度分布から確率密度関数が算出され、
図2(b)には、確率密度関数のkxのライン上の確率密度分布の一例が示されている。なお、kxは周波数エンコード方向であり、kyは位相エンコード方向である。
【0041】
サンプリングパターンは、確率密度関数の中で確率がしきい値THよりも大きくなる領域を特定する。
図3は、確率密度関数の中で、確率がしきい値THよりも大きくなる領域を示す図である。
【0042】
確率がしきい値TH以上になる領域Rがサンプリングパターンとなり、その領域R内が所定のパルスシーケンスによって撮影データが収集される。しきい値TH以下の領域はサンプリングされない未サンプリングの領域となる。本実施形態では、このようなサンプリングを、k空間の撮影データが密に埋められるフルサンプリング(full sampling)と比較して、アンダーサンプリングと呼ぶ。アンダーサンプリングは、k空間の撮影データの一部がサンプリングされず、k空間の撮影データは疎になっている。
【0043】
例えば、アンダーサンプリングは、
図3に示された領域Rのk空間の領域をだけを取得し、領域R以外の領域が欠けたサンプリングである。このようなアンダーサンプリングは、走査時間を低減する。しかし、圧縮センシングの手法を用いても、このアンダーサンプリングされたk空間データに基づいて画像再構成された画像は、アーティファクトが残ってしまう。したがって、以下に説明する方法を用いて高品位な画像を取得する。
【0044】
本実施形態は、アンダーサンプリングされたT1強調画像及びT2強調画像をプロトン密度画像と比較して、未サンプリングの撮影データを演算によって求める。そして、本実施形態は高品位なT1強調画像及びT2強調画像を画像再構成する。
【0045】
以下、代表してプロトン密度画像からT1強調画像を作成する方法を説明する。なお、プロトン密度画像から作成される画像は、アンダーサンプリングされたT1強調画像及びT2強調画像だけでなくインフェーズ画像及びアウトオブフェーズ画像においても作成可能である。なお、インフェーズ画像とは水と脂肪との水素原子の総和の画像をいい、アウトオブフェーズ画像とは脂肪の水素原子と水の水素原子との差の画像をいう。
【0046】
<作成手順>
前述されたように、T1強調画像は、プロトン密度画像のコントラストが変化した画像と捉えることができる。本実施形態は、プロトン密度画像をリファレンスイメージRI(Ref Image)とし、T1強調画像をコントラストイメージCI(Contrast Image)として説明する。その他、コントラストイメージCIは、T2強調画像、インフェーズ画像及びアウトオブフェーズ画像としても同様である。
【0047】
図4は、コントラストイメージCI2の取得手順を示したフローチャートである。
ステップS11において、操作者はリファレンスイメージRIの撮影データriを取得する。データ収集部150は、リファレンスイメージRIのフルサンプリング用のパルスシーケンスによって撮影データを収集する。リファレンスイメージRIの撮影データriは、メモリ172内の2次元配列されたk空間に記憶される。
【0048】
図5(a)は、二次元配列されたリファレンスイメージRIのk空間の模式図である。図示されるようにリファレンスイメージRIの撮影データriはフルサンプリングされているためk空間において撮影データが密となっている。なお、図示される実線はk空間(kx及びky)における領域のサンプリングされた撮影データを示し、kxは周波数エンコード方向であり、kyは位相エンコード方向である。
【0049】
図5(b)は、画像再構成されたリファレンスイメージRIの模式図である。画像再構成部176が、
図5(a)の撮影データriを画像再構成することにより、
図5(b)に示されるリファレンスイメージRIを形成する。リファレンスイメージRIの画像再構成はデータ処理部170の画像再構成部176によりフルサンプリングされた撮影データをフーリエ変換FTさせることで作成できる。リファレンスイメージRIはリファレンスイメージRIの基となる情報量が被検体内に多く存在するため、比較的短時間で撮影データを収集可能である。また、リファレンスイメージRIはSNRに優れた高品位な画像を取得することが可能となっているが、コントラストは低くなっている。
【0050】
図4に戻り、ステップS12において、操作者はコントラストイメージCI1の撮影データci1を取得する。データ収集部150は、アンダーサンプリングされたコントラストイメージCI1のアンダーサンプリング用のパルスシーケンスによって撮影データを収集する。コントラストイメージCI1の撮影データci1はメモリ172内の2次元配列されたk空間に記憶される。
【0051】
図6(a)は、二次元配列されたコントラストイメージCI1のk空間の模式図である。図示されるようにコントラストイメージCI1の撮影データci1は、アンダーサンプリングされているためk空間において撮影データが疎となっている。なお、図示されるように実線はk空間(kx及びky)における領域のサンプリングされた撮影データを示し、破線は撮影データがサンプリングされていない未サンプリングの状態を示している。理解を助けるため、
図6(a)では、位相エンコード方向に一行おきに実線と破線とが描かれている。実際には
図3で示されたエコー信号の振幅が大きい、すなわち信号強度が大きい領域をアンダーサンプリングすることが好ましい。
図3に示されたように、信号強度が大きい領域は一般にk空間の中央領域である。
【0052】
図6(b)は、画像再構成されたコントラストイメージCI1の模式図である。データ処理部170の画像再構成部176が、
図6(a)の撮影データci1を圧縮センシングの手法を用いた画像再構成することにより、
図5(b)に示されるリファレンスイメージCI1を形成する。コントラストイメージCI1は、アンダーサンプリングされた撮影データに基づいているため、画質が劣化し医師の観察に適さない画像が形成される場合がある。
【0053】
図4に戻り、ステップS13において、演算部171はコントラストイメージCI1の撮影データci1とリファレンスイメージRIの撮影データriの相関関係を算出する。
【0054】
撮影データの相関関係は、演算部171の関数取得部175によって算出される。相関関係は、リファレンスイメージRIの画像関数をref(x,y)とし、コントラストイメージCI1の画像関数をcon(x,y)とし、コントラスト変換関数をf(x,y)としたとき、画像空間において数式1の関係式が成り立つ。
ref(x,y)=con(x,y) / f(x,y) …数式1
数式1は数式2の形式に変形される。
con(x,y)=f(x,y) × ref(x,y) …数式2
【0055】
画像空間における数式2は、図示すると
図7に示される関係になる。
また、k空間のアンダーサンプリングされたコントラストイメージCI1の撮影データci1をCON(kx,ky)とし、フルサンプリングされたリファレンスイメージRIの撮影データriをREF(kx,ky)とし、相関関数をF(kx,ky)とする。数式2はk空間において、数式3に示された畳み込み積分(Convolution)の形で表現することができる。
【0056】
CON(kx、ky) = F(kx、ky)* REF(kx、ky)…数式3
但し、*はコンボリューション(畳み込み積分)である。
【0057】
数式3で示されるカーネル(積分核)F(kx,ky)は、リファレンスイメージRIの撮影データriとコントラストイメージCI1の撮影データci1とから算出することが可能となる。
【0058】
つまり、相関関数であるカーネルF(kx,ky)は、アンダーサンプリングされたコントラストイメージCI1の撮影データci1とフルサンプリングされたリファレンスイメージRIの撮影データriを解析することで算出される。
【0059】
図8は、k空間のアンダーサンプリングされたコントラストイメージCI1の撮影データci1、フルサンプリングされたリファレンスイメージRIの撮影データri、相関関数f1(kx,ky)の模式図である。コントラストイメージCI1のk空間の撮影データの点c1(x,y)は、フルサンプリングされたリファレンスイメージRIの撮影データriの領域r1(x,y)との相関があるため、相関関数f1(kx,ky)の連立式が求まる。また、異なるコントラストイメージCI1のk空間の撮影データの点c2(x,y)は、フルサンプリングされたリファレンスイメージRIの撮影データriの領域r2(x,y)との相関があるため相関関数f2(kx,ky)の連立式が求まる。同様にして、m番目のコントラストイメージCI1のk空間の撮影データの点cm(x,y)は、リファレンスイメージRIの撮影データriの領域rm(x,y)からfm(kx,ky)が求まる。mは3以上の整数。なお
図8では点c1(x,y)及びr1(x,y)のみ図示されている。
【0060】
関数取得部175は、未知数より連立式を多くすることで、複数の相関関数f1(kx,ky)、f2(kx,ky)、・・・fm(kx,ky)、・・・fn(kx,ky)の連立式から、連立方程式が解く。そして関数取得部175は、カーネルF(kx,ky)を取得する。
【0061】
図4に戻り、ステップS14において、画像再構成部176は未サンプリングの撮影データをカーネルF(kx,ky)から算出する。
【0062】
図9(a)は、アンダーサンプリングされたコントラストイメージCI1の撮影データCON(kx,ky)と、カーネルF(kx,ky)と、リファレンスイメージRIの撮影データREF(kx,ky)との模式図である。カーネルF(kx,ky)とリファレンスイメージRIの撮影データREF(kx,ky)とに基づいて、画像再構成部176がコントラストイメージCI1の未サンプリングの撮影データd1(x,y)を算出することが可能となる。図示されないその他のコントラストイメージCI1の未サンプリングの撮影データd2(x,y)、d3(x,y)、・・・dn(x,y)も、画像再構成部176によってカーネルF(kx,ky)及びリファレンスイメージRIの撮影データREF(kx,ky)を用いて算出される。
【0063】
画像再構成部176は、コントラストイメージCI1の未サンプリングの撮影データd1(x,y)、d2(x,y)、・・・dn(x,y)の全てを求める。すると、
図9(b)に示されるように、k空間において疎であったコントラストイメージCI1の撮影データCi1は、撮影データが補完されて、k空間において密な撮影データci2になる。
【0064】
図4に戻り、ステップS15において、画像再構成部176はコントラストイメージCI1の密な撮影データci2からコントラストイメージCI2を画像再構成する。
図9(c)は密な撮影データci2を用いてフーリエ変換FTしたコントラストイメージCI2を示した図である。画像再構成部176は密な撮影データci2を用いてフーリエ変換FTすることができるため高品位なコントラストイメージCI2を画像再構成することができる。
【0065】
ステップS16において、他のコントラストイメージCIを取得するかを判断する。
他のコントラストイメージCIを取得する場合はステップS12に戻り、他のコントラストイメージCIを取得しない場合は終了する。
【0066】
ステップS13からステップS15は、磁気共鳴イメージング装置10に装備されたデータ処理部170を用いなくとも、ネットワークに接続されたワークステーションにおいても処理可能である。また
図4に示されたフローチャートは、プログラムとして記憶媒体に記憶することが可能である。この記憶媒体に記憶されているプログラムをコンピュータによりインストールさせることで、このデータ処理部170又はワークステーションタに処理を行わせることができる。
【0067】
以上に示された画像再構成方法は、パラレルイメージング(Parallel Imaging)法を用いた撮影方法と同時に使用可能である。パラレルイメージング法は、マルチコイルの感度の違いを利用した高速撮像法であり、SENSE(Sensitivity Encoding)法やGRAPPA(Generalized Auto calibrating Partially Parallel Acquisition)法などがある。SENSE法はフーリエ変換後の画像に用いる画像再構成方法であり、GRAPPAはk空間上で用いる画像再構成方法である。例えば、パラレルイメージング法は、位相方向のエンコードステップを間引いて被検体からの核磁気共鳴信号を検出することにより撮影時間を短縮して撮影し、さらに撮影視野が狭まり折返り偽像(アーチファクト)が存在する画像を生成する。そして、複パラレルイメージング法は、数のコイルの感度分布差に基づいて折返り偽像を取り除き、撮影視野が広がった画像を最終的に得ている。
【0068】
パラレルイメージングはマルチレシーバ80を用いる。
図10(a)はマルチレシーバ80の一例を図示されている。マルチレシーバ80は、8つの8の字型の受信コイル81〜88からなり、その2つずつをXY平面上及びYZ平面上にそれぞれ所定の距離をはさんで対向配置する。マルチレシーバ80は、これら受信コイルに囲まれる空間内に置かれる被検体からの核磁気共鳴信号を受信する。
【0069】
核磁気共鳴信号を受信するために、8個の受信コイルのうち、撮影断面及び位相エンコード方向に基づき最適な2組の受信コイルの組み合わせが選択される。例えば、
図10(a)に示すマルチレシーバ80の配置において、Y方向を位相エンコード方向として、YZ平面又はYX平面を撮影する場合を考える。この場合、
図10(b)に示されるように、第1受信コイル群81、83、85、87が最適な組み合わせの1つとなる。また、
図10(c)に示されるように、第2受信コイル群82、84、86、88が最適な組み合わせの一つとなる。
【0070】
具体的に最適な受信コイルは、第1受信コイル群及び第2受信コイル群全体としての感度分布を合成したときに、位相エンコード方向に感度分布の低領域がないことと、第1受信コイル群及び第2受信コイル群の感度分布が互いに同じではないこととを考慮して組み合わされる。なお、最適な受信コイルの組み合わせ方法は、受信コイルの配置が一定であれば、撮影断面及び位相エンコード方向によって決まる。どのスライス面が撮影されるかが設定されると、自動的に最適な受信コイル組み合わせが選択されるようになっている。
【0071】
また、マルチレシーバ80はそれぞれの受信コイルにおいてカーネルF(kx,ky)が変化しない。このため第1受信コイル群81で使用したカーネルF(kx,ky)を、第2受信コイル群82のコントラストイメージCIの画像再構成に適用できる。このためマルチレシーバ80は、受信コイルの倍数分だけ連立式を増やすことができる。