特許第5819702号(P5819702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5819702
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】イオン送出装置
(51)【国際特許分類】
   H01T 23/00 20060101AFI20151104BHJP
   H01T 19/04 20060101ALI20151104BHJP
【FI】
   H01T23/00
   H01T19/04
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-235750(P2011-235750)
(22)【出願日】2011年10月27日
(65)【公開番号】特開2013-93263(P2013-93263A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2014年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128842
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 温
(72)【発明者】
【氏名】小河 毅
【審査官】 出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−134016(JP,A)
【文献】 特開2004−142691(JP,A)
【文献】 特開2009−099472(JP,A)
【文献】 特開2002−277010(JP,A)
【文献】 特開2008−091145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 23/00
H01T 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1吹出口及び第2吹出口を開口する筐体と、正電圧が印加される第1放電電極の放電によって正イオンを発生する正イオン発生部と、負電圧が印加される第2放電電極の放電によって負イオンを発生する負イオン発生部と、第1吹出口を開放端に有して前記正イオン発生部が配される誘電体から成る第1送風ダクトと、第2吹出口を開放端に有して前記負イオン発生部が配される誘電体から成る第2送風ダクトと、第1送風ダクト及び第2送風ダクトに気流を流通させる送風ファンとを備え、正イオンを第1吹出口から送出して負イオンを第2吹出口から送出するとともに、第1送風ダクトが前記正イオン発生部の上流側を接地され、第2送風ダクトが前記負イオン発生部の上流側を接地されることを特徴とするイオン送出装置。
【請求項2】
前記正イオン発生部が第1放電電極に対向する第1誘導電極を有して第1放電電極と第1誘導電極との間に電圧を印加して第1放電電極が放電するとともに、前記負イオン発生部が第2放電電極に対向する第2誘導電極を有して第2放電電極と第2誘導電極との間に電圧を印加して第2放電電極が放電し、第1送風ダクト及び第2送風ダクトが互いに導通する第1誘導電極及び第2誘導電極に電気接続されることを特徴とする請求項1に記載のイオン送出装置。
【請求項3】
第1誘導電極及び第2誘導電極が前記筐体に設けた金属部に導通してフレーム接地されることを特徴とする請求項2に記載のイオン送出装置。
【請求項4】
第1送風ダクト及び第2送風ダクトが抵抗を介して接地されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のイオン送出装置。
【請求項5】
前記抵抗が2MΩ以上であることを特徴とする請求項4に記載のイオン送出装置。
【請求項6】
前記正イオン及び前記負イオンが空気イオンまたは帯電微粒子水であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のイオン送出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正イオン及び負イオンを送出するイオン送出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のイオン送出装置は特許文献1に開示される。このイオン送出装置は空気清浄機を構成し、筐体内に誘電体の樹脂成形品により形成される第1送風ダクト及び第2送風ダクトが設けられる。第1送風ダクトは筐体の一側面に開口する第1吸込口と上面に開口する第1吹出口とを連通させる。第2送風ダクトは第1吸込口に対向した筐体の側面に開口する第2吸込口と上面に開口する第2吹出口とを連通させる。第1吸込口及び第2吸込口には塵埃を捕集する集塵フィルターが配される。
【0003】
第1送風ダクト及び第2送風ダクトには送風ファンが配される。送風ファンはシロッコファンから成り、共通のファンモータにより駆動される2つの羽根車が同軸に設けられる。各羽根車がそれぞれ第1送風ダクト及び第2送風ダクト内に配置され、ファンモータによって羽根車が回転して第1送風ダクト及び第2送風ダクトに気流が流通する。
【0004】
また、第1送風ダクト及び第2送風ダクトにはそれぞれイオン発生装置が配される。イオン発生装置は正の高電圧が印加される第1放電電極と負の高電圧が印加される第2放電電極とを備えている。第1放電電極の放電によって空気イオンから成る正イオンが発生し、第2放電電極の放電によって空気イオンから成る負イオンが発生する。
【0005】
上記構成のイオン送出装置において、送風ファンの駆動によって第1、第2吸込口を介して第1、第2送風ダクト内に室内の空気が取り込まれる。空気に含まれる塵埃は集塵フィルターにより捕集される。塵埃を除去された空気にはイオン発生装置により発生した正イオン及び負イオンが含まれ、第1、第2吹出口から送出される。第1、第2吹出口から送出される正イオン及び負イオンによって空気中の浮遊菌や臭気成分を破壊し、室内の殺菌や脱臭を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−80425号公報(第6頁−第14頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のイオン送出装置によると、イオン発生装置により発生する正イオン及び負イオンは第1、第2送風ダクトを流通する間に互いに衝突する。このため、衝突によりイオンが消滅する中和失活が生じてイオンの送出量が減少し、室内の殺菌効果を十分得ることができない問題があった。
【0008】
本発明は、イオンの送出量を増加させることのできるイオン送出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明のイオン送出装置は、第1吹出口及び第2吹出口を開口する筐体と、正電圧が印加される第1放電電極の放電によって正イオンを発生する正イオン発生部と、負電圧が印加される第2放電電極の放電によって負イオンを発生する負イオン発生部と、第1吹出口を開放端に有して前記正イオン発生部が配される誘電体から成る第1送風ダクトと、第2吹出口を開放端に有して前記負イオン発生部が配される誘電体から成る第2送風ダクトと、第1送風ダクト及び第2送風ダクトに気流を流通させる送風ファンとを備え、正イオンを第1吹出口から送出して負イオンを第2吹出口から送出するとともに、第1送風ダクト及び第2送風ダクトを接地したことを特徴としている。
【0010】
この構成によると、送風ファンの駆動によって誘電体から成る第1送風ダクト及び第2送風ダクトに気流が流通する。第1放電電極の放電により正イオン発生部から発生する正イオンは接地により除電された第1送風ダクトを流通する気流に含まれ、第1吹出口から送出される。第2放電電極の放電により負イオン発生部から発生する負イオンは接地により除電された第2送風ダクトを流通する気流に含まれ、第2吹出口から送出される。第1、第2吹出口から送出された正イオン及び負イオンによって室内の浮遊菌や臭気成分が破壊され、殺菌や消臭が行われる。
【0011】
また本発明は、上記構成のイオン送出装置において、第1送風ダクトが前記正イオン発生部の上流側を接地されるとともに、第2送風ダクトが前記負イオン発生部の上流側を接地されることを特徴としている。この構成によると、第1、第2送風ダクトは正イオン発生部及び負イオン発生部の上流側を接地電位に維持される。正イオン発生部及び負イオン発生部で発生したイオンは下流の第1、第2吹出口に導かれる。
【0012】
また本発明は、上記構成のイオン送出装置において、前記正イオン発生部が第1放電電極に対向する第1誘導電極を有して第1放電電極と第1誘導電極との間に電圧を印加して第1放電電極が放電するとともに、前記負イオン発生部が第2放電電極に対向する第2誘導電極を有して第2放電電極と第2誘導電極との間に電圧を印加して第2放電電極が放電し、第1送風ダクト及び第2送風ダクトが互いに導通する第1誘導電極及び第2誘導電極に電気接続されることを特徴としている。
【0013】
この構成によると、第1誘導電極と第1放電電極との間に正の電圧を印加して第1放電電極が放電する。また、第1誘導電極に導通する第2誘導電極と第2放電電極との間に負の電圧を印加して第2放電電極が放電する。第1送風ダクト及び第2送風ダクトは第1誘導電極または第2誘導電極に電気接続することにより接地される。
【0014】
また本発明は、上記構成のイオン送出装置において、第1誘導電極及び第2誘導電極が前記筐体に設けた金属部に導通してフレーム接地されることを特徴としている。この構成によると、第1送風ダクト及び第2送風ダクトが第1、第2誘導電極を介してフレーム接地される。
【0015】
また本発明は、上記構成のイオン送出装置において、第1送風ダクト及び第2送風ダクトが抵抗を介して接地されることを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成のイオン送出装置において、前記抵抗が2MΩ以上であることを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記構成のイオン送出装置において、前記正イオン及び前記負イオンが空気イオンまたは帯電微粒子水であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、接地した第1送風ダクトに正イオン発生部を配し、接地した第2送風ダクトに負イオン発生部を配したので、正イオンと負イオンとの衝突による中和失活を低減することができる。また、第1、第2送風ダクトが接地によって除電されるため第1、第2送風ダクトの電位勾配が低減される。これにより、イオンを発生させる電界への電位勾配による悪影響が小さくなるためイオンの発生量を増加させることができる。従って、イオンの送出量を増加させることができ、殺菌効果や脱臭効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態のイオン送出装置を示す正面断面図
図2】本発明の第1実施形態のイオン送出装置を示す側面断面図
図3】本発明の第1実施形態のイオン送出装置のイオン発生装置を示す斜視図
図4】本発明の第1実施形態のイオン送出装置のイオン発生装置の回路図
図5】本発明の第1実施形態のイオン送出装置による室内のイオン濃度の測定点を示す斜視図
図6】本発明の第2実施形態のイオン送出装置のイオン発生装置の回路図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1図2は第1実施形態のイオン送出装置の正面断面図及び側面断面図を示している。イオン送出装置1は空気清浄機を構成し、筐体2内に誘電体の樹脂成形品により形成される第1送風ダクト11及び第2送風ダクト21が左右に並設される。
【0021】
第1送風ダクト11は筐体2の一側面に開口する第1吸込口12と上面に開口する第1吹出口13とを連通させる。第1吸込口12には塵埃を捕集する集塵フィルター15及び複数の通気孔を開口した通気板16が配される。第2送風ダクト21は筐体2の第1吸込口12に対向した側面に開口する第2吸込口22と上面に開口する第2吹出口23とを連通させる。第2吸込口22には塵埃を捕集する集塵フィルター25及び複数の通気孔を開口した通気板26が配される。
【0022】
第1送風ダクト11及び第2送風ダクト21には送風ファン3が配される。送風ファン2はシロッコファンから成り、共通のファンモータ3aにより駆動される2つの羽根車3b、3cが同軸に設けられる。羽根車3bが第1吸込口12に面して第1送風ダクト11内に配置され、羽根車3cが第2吸込口22に面して第2送風ダクト21内に配置される。ファンモータ3aによって羽根車3b、3cが回転して第1送風ダクト11及び第2送風ダクト21に気流が流通する。
【0023】
また、筐体2内には詳細を後述する正イオン発生部31及び負イオン発生部32を備えたイオン発生装置30が配される。正イオン発生部31は第1送風ダクト11に臨んで配され、負イオン発生部32は第2送風ダクト21に臨んで配される。
【0024】
第1送風ダクト11及び第2送風ダクト21の送風ファン3とイオン発生装置30との間には接地電極14、24がそれぞれ設けられている。
【0025】
筐体2の後部には送風ファン3及びイオン発生装置30を駆動制御する制御部4が配される。制御部4は筐体2に設けられる金属プレート(金属部、不図示)に導通してフレーム接地される接地端子(不図示)を備えている。接地電極14、24は導体により抵抗5を介して接地端子に接続され、接地電位に維持される。
【0026】
図3はイオン発生装置30の斜視図を示している。イオン発生装置30はセラミック等の誘電体のカバー34により覆われる。カバー34内には第1放電電極31a、第1誘導電極31b、第2放電電極32a、第2誘導電極32b及び駆動回路を実装した回路基板(不図示)が配される。第1放電電極31a及び第1誘導電極31bにより正イオン発生部31が形成され、第2放電電極32a及び第2誘導電極32bにより負イオン発生部32が形成される。
【0027】
第1放電電極31a及び第2放電電極32aは針状に形成され、所定の間隔で並設される。第1誘導電極31bは第1放電電極31aを中心とする環状に形成され、第1放電電極31aに対向する。第2誘導電極32bは第2放電電極32aを中心とする環状に形成され、第2放電電極32aに対向する。
【0028】
図4はイオン発生装置30の駆動回路を示す回路図である。駆動回路の一端の端子40a、40bは電源回路(不図示)に接続される。電源回路から端子40a、40b間に所定方向の電流が流れて電圧が印加されるとダイオード41及び抵抗42を介してコンデンサ43に充電される。
【0029】
コンデンサ43の端子間電圧が上昇して2端子サイリスタ44のブレークオーバー電圧に到達すると、2端子サイリスタ44はツェナーダイオードのように動作してさらに電流を流す。2端子サイリスタ44に流れる電流がブレークオーバー電流に到達すると、2端子サイリスタ44は略短絡状態となる。これにより、コンデンサ43に充電された電荷が2端子サイリスタ44及びパルストランス45の一次巻線45aを介して放電され、一次巻線45aにインパルス電圧が発生する。
【0030】
一次巻線45aにインパルス電圧が発生すると、パルストランス45の二次巻線45bに正及び負の高電圧パルスが交互に減衰しながら発生する。第1誘導電極31b及び第2誘導電極32bは導通して二次巻線45bの一端に接続される。二次巻線45bの他端はダイオード46、47を介してそれぞれ第1放電電極31a及び第2放電電極32aに接続される。
【0031】
このため、二次巻線45bで発生した正の高電圧パルスはダイオード46を介して第1放電電極31aに印加される。これにより、第1放電電極31aの先端でコロナ放電が発生する。二次巻線45bで発生した負の高電圧パルスはダイオード47を介して第2放電電極32aに印加される。これにより、第2放電電極32aの先端でコロナ放電が発生する。尚、第1、第2放電電極31a、32aは所定の周期で交互に高電圧が印加されるが、独立した2つの駆動回路を設けて同時に高電圧を印加してもよい。
【0032】
第1放電電極31aのコロナ放電により空気中の水分子が電離して水素イオンが生成される。この水素イオンが溶媒和エネルギーにより空気中の水分子とクラスタリングする。これにより、H+(H2O)m(mは0または任意の自然数)から成る空気イオンの正イオンが正イオン発生部31から放出される。
【0033】
また、第2放電電極32aのコロナ放電により空気中の酸素分子または水分子が電離して酸素イオンが生成される。この酸素イオンが溶媒和エネルギーにより空気中の水分子とクラスタリングする。これにより、O2-(H2O)n(nは任意の自然数)から成る空気イオンの負イオンが負イオン発生部32から放出される。
【0034】
+(H2O)m及びO2-(H2O)nは空気中の浮遊菌や臭い成分の表面で凝集してこれらを取り囲む。そして、式(1)〜(3)に示すように、衝突により活性種である[・OH](水酸基ラジカル)やH22(過酸化水素)を微生物等の表面上で凝集生成して浮遊菌や臭い成分を破壊する。ここで、m’、n’は任意の自然数である。従って、正イオン及び負イオンを室内に送出することにより、室内の殺菌及び臭い除去を行うことができる。
【0035】
+(H2O)m+O2-(H2O)n→・OH+1/2O2+(m+n)H2O ・・・(1)
+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2-(H2O)n+O2-(H2O)n’
→ 2・OH+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(2)
+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2-(H2O)n+O2-(H2O)n’
→ H22+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(3)
【0036】
上記構成のイオン送出装置1において、送風ファン3の駆動によって第1、第2吸込口12、22を介してそれぞれ第1、第2送風ダクト11、21内に室内の空気が取り込まれる。空気に含まれる塵埃は集塵フィルター15、25により捕集される。
【0037】
塵埃を除去して第1送風ダクト11を流通する空気には正イオン発生部31により発生した正イオンが含まれ、第1吹出口13から送出される。塵埃を除去して第2送風ダクト21を流通する空気には負イオン発生部32により発生した負イオンが含まれ、第2吹出口23から送出される。この時、正イオンと負イオンとが第1送風ダクト11と第2送風ダクト21とに隔離して流通するため、イオンの中和失活を低減して送出量を増加させることができる。
【0038】
そして、第1、第2吹出口13、23から送出される正イオン及び負イオンによって空気中の浮遊菌や臭気成分を破壊し、室内の殺菌や脱臭が行われる。
【0039】
また、第1、第2送風ダクト11、21は誘電体により形成されるため、正イオン及び負イオンの一方が流通するとイオンにより帯電して内壁に電位勾配が形成される。この電位勾配によってイオン発生装置30の近傍の電位が大きくなるとイオン発生装置30でイオンを発生させる電界に悪影響を及ぼし、イオン発生量が減少する。
【0040】
このため、第1送風ダクト11は接地電極14で接地して除電され、正イオンによる帯電が低減される。同様に、第2送風ダクト21は接地電極24で接地して除電され、負イオンによる帯電が低減される。これにより、イオン発生量が増加し、イオンの送出量をより増加させることができる。
【0041】
この時、イオン発生装置30の高電圧の印加によって第1、第2送風ダクト11、21が高電位に帯電すると接地電極14、24に流れる電流が大きくなる。このため、抵抗5により接地電極14、24に流れる電流を小さくすることができる。抵抗5を2MΩ以上に大きくすると、確実に接地電極14、24に流れる電流を小さくすることができる。
【0042】
尚、第1、第2送風ダクト11、21は接地電位に維持される接地電極14、24から離れた位置で僅かに電位勾配が形成される。このため、正イオンは正電位に帯電する第1送風ダクト11に反発して第1吹出口13から流出しやすくなる。同様に、負イオンは負電位に帯電する第2送風ダクト21に反発して第1吹出口13から流出しやすくなる。
【0043】
この時、接地電極14、24をそれぞれ正イオン発生部31、負イオン発生部32の下流側に配置すると、接地電位となる接地電極14、24に正イオン及び負イオンが反発しないため吸着される場合がある。このため、接地電極14、24をそれぞれ正イオン発生部31、負イオン発生部32の上流側に配置し、イオンの吸着を低減してイオンの送出量をさらに増加させることができる。
【0044】
図5はイオン送出装置1を試験室内に設置してイオン濃度を測定した測定点(9点)を示す斜視図である。試験室Rは幅300cm、奥行き350cm、高さ250cmに形成している。イオン送出装置1は試験室Rの幅方向を形成する一側壁Wの中央から30cm離れて配置している。イオン送出装置1の高さ(第1、第2吹出口13、23の形成面の高さ)は90cmである。また、イオン送出装置1の風量を1.2m3/minにしている。
【0045】
測定点A〜Iの高さは125cmである。測定点A、B、Cは側壁Wの中央に対して向かって右方向(第2吹出口23が配される側)に75cm離隔している。測定点D、E、Fは側壁Wの中央を通る鉛直面上(イオン送出装置1の正面)に配される。測定点G、H、Iは側壁Wの中央に対して向かって左方向(第1吹出口13が配される側)に75cm離隔している。
【0046】
また、測定点A、D、Gは側壁Wに対して奥行き方向に87.5cm離隔している。測定点B、E、Hは側壁Wに対して奥行き方向に175cm離隔している。測定点C、F、Iは側壁Wに対して奥行き方向に262.5cm離隔している。
【0047】
表1は各測定点A〜Iにおける正イオン及び負イオンのイオン濃度(単位:個/cm3)を測定した結果を示している。また、比較のため、表2に接地電極14、24を接地する導体を取り外してイオン濃度を同様に測定した結果を示している。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
表1、表2によると、第1、第2送風ダクト11、21を接地していない場合に負イオンの濃度が低く、正負イオンの濃度のバランスが悪くなっている。これに対して、第1、第2送風ダクト11、21を接地すると、正イオン及び負イオンの濃度が高く、正負イオンの濃度のバランスが改善されている。
【0051】
本実施形態によると、接地した第1送風ダクト11に正イオン発生部31を配し、接地した第2送風ダクト21に負イオン発生部32を配したので、正イオンと負イオンとの衝突による中和失活を低減することができる。また、第1、第2送風ダクト11、21が接地によって除電されるため第1、第2送風ダクト11、21の電位勾配が低減される。これにより、イオンを発生させる電界への電位勾配による悪影響が小さくなるためイオンの発生量を増加させることができる。従って、イオンの送出量を増加させることができ、殺菌効果や脱臭効果を向上させることができる。
【0052】
また、第1送風ダクト11が正イオン発生部31の上流側の接地電極14で接地され、第2送風ダクト21が負イオン発生部32の上流側の接地電極24で接地される。これにより、接地電位部分でのイオンの吸着を低減し、イオンの送出量をより増加させることができる。
【0053】
また、第1送風ダクト11及び第2送風ダクト21が抵抗5を介して接地されるので、接地電極14、24に流れる電流を小さくすることができる。また、抵抗5を2MΩ以上に大きくすることにより、接地電極14、24に流れる電流を確実に小さくすることができる。
【0054】
次に、図6は第2実施形態のイオン送出装置1のイオン発生装置30の駆動回路を示している。説明の便宜上、前述の図1図5に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は接地電極14、24が駆動回路の二次側コモン端子48に接続される。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0055】
二次側コモン端子48はパルストランス45の二次巻線45bの一端に接続され、第1誘導電極31b及び第2誘導電極32bに導通する。また、二次側コモン端子48は筐体2の金属プレート(金属部、不図示)に接続され、フレーム接地されている。二次側コモン端子48を制御部4の接地端子に接続してフレーム接地してもよい。接地電極14、24は抵抗5を介して二次側コモン端子48に接続される。これにより、接地電極14、24は互いに導通する第1誘導電極31b及び第2誘導電極32bに電気接続されて接地する。
【0056】
従って、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、接地電極14、24を互いに導通する第1誘導電極31b及び第2誘導電極32bに電気接続し、第1、第2送風ダクト11、21を容易に接地することができる。
【0057】
第1、第2実施形態において、正イオン発生部31及び負イオン発生部32は空気イオンから成る正イオン及び負イオンを発生するが、これに限らない。例えば、正イオン発生部31及び負イオン発生部32を静電霧化装置によって構成してもよい。
【0058】
即ち、静電霧化装置に設けた放電電極をペルチェ素子により冷却することで放電電極の表面に結露水が生じる。次に、放電電極に負の高電圧を印加すると、結露水から負イオンを含む帯電微粒子水が生成される。また、放電電極に正の高電圧を印加すると、結露水から正イオンを含む帯電微粒子水が生成される。これにより、正イオン発生部及び負イオン発生部が構成され、正イオン及び負イオンを送出して室内の殺菌等を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によると、正イオン及び負イオンを送出するイオン送出装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 イオン送出装置
2 筐体
3 送風ファン
4 制御部
5 抵抗
11 第1送風ダクト
12 第1吸込口
13 第1吹出口
14、24 接地電極
15、25 集塵フィルター
21 第2送風ダクト
22 第2吸込口
23 第2吹出口
30 イオン発生装置
31 正イオン発生部
31a 第1放電電極
31b 第1誘導電極
32 負イオン発生部
32a 第2放電電極
32b 第2誘導電極
48 二次側コモン端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6