(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記冷却構造は、前記冷却液貯留空間としての冷却液流路と、前記冷却液流路に接続されており、前記冷却液流路に冷却液を供給する冷却液供給路と、前記冷却液流路に接続されており、前記冷却液流路内の冷却液を排出する冷却液排出路とを含む、請求項10または11に記載の基板処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転状態の基板の中央部に供給された高温の処理液は、遠心力によって基板の中央部から基板の周縁部に移動する。その過程で、処理液の温度が次第に低下していく。そのため、周縁部での処理液の温度が、中央部での温度よりも低くなり、処理の均一性が低下してしまう。均一性の低下を防止するために、等しい温度の処理液を基板内の複数の位置に向けて吐出する方法が考えられる。しかし、基板の周縁部は、中央部よりも面積が広く、中央部よりも熱容量が大きいので、この方法を採ったとしても、均一性の低下を十分に防止できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、基板を面内全域で均一に処理できる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を水平に保持する基板保持手段(5)と、基板を通る鉛直な回転軸線(A1)まわりに前記基板保持手段に保持されている基板を回転させる基板回転手段(5)と、前記回転軸線からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置された複数の吐出口(29)と、外側から内側の順番で前記複数の吐出口に順次接続された流路(28)とを含み、前記流路から前記複数の吐出口に供給された処理液を前記複数の吐出口から前記基板に向けて吐出する吐出部材(6、8、208、308、408、508、608、708)と、前記吐出部材よりも高温の処理液を前記流路に供給する高温処理液配管(38)とを含
み、前記吐出部材は、前記基板保持手段に保持されている基板に平行に対向する円板状の吐出部をさらに含み、前記流路は、前記吐出部の内部で同一平面上に配置された第1流路を含み、前記複数の吐出口の少なくとも2つは、互いに異なる半径上に配置されている、基板処理装置(1)である。処理液は、エッチング液などの薬液であってもよいし、純水(脱イオン水
)などのリンス液であってもよい。当然、薬液およびリンス液以外の液体が、処理液として用いられてもよい。
【0007】
この構成によれば、吐出部材よりも高温の処理液が、高温処理液配管から吐出部材に供給され、基板保持手段によって水平に保持されている基板に向けて吐出部材から吐出される。これにより、処理液が基板に供給される。基板回転手段が基板を通る鉛直な回転軸線まわりに基板を回転させている状態で、吐出部材が処理液を吐出すると、基板に供給された処理液は、遠心力によって径方向外方に広がると共に、回転方向の下流側に向かって周方向に広がる。これにより、基板内の広範囲に処理液が供給される。
【0008】
吐出部材は、回転軸線からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置された複数の吐出口と、外側から内側の順番で複数の吐出口に順次接続された流路とを含む。高温処理液配管からの処理液は、流路に供給される。そして、流路に供給された処理液は、外側から内側の順番で複数の吐出口に順次供給される。処理液の温度が、吐出部材の温度よりも高いので、流路を流れる処理液の温度は、流路内での滞在時間の増加に伴って次第に低下していく。そのため、外側の吐出口に供給された処理液よりも低温の処理液が、その内側の吐出口に供給される。言い換えると、内側の吐出口に供給された処理液よりも高温の処理液が、その外側の吐出口に供給される。
【0009】
外側の吐出口から吐出された処理液は、その内側の吐出口から吐出された処理液が供給される領域よりも外側の領域(基板内の領域)に供給される。外側の吐出口には、その内側の吐出口に供給される処理液よりも高温の処理液が供給される。したがって、基板に供給される処理液の温度は、回転軸線から遠ざかるに従って高まる。基板上での処理液の温度は、回転軸線から遠ざかるに従って低下する。そのため、内側の領域に供給される処理液よりも高温の処理液をその外側の領域に供給することにより、基板上での処理液の温度を面内全域で均一にすることができる。これにより、処理の均一性を高めることができる。さらに、共通の流路から複数の吐出口に処理液が供給されるので、吐出口ごとに流路が設けられている場合よりも、吐出部材の構造を簡素にできる。
【0010】
請求項2に記載の発明のように、前記吐出部材は、前記基板保持手段による基板の保持位置の下方に配置された上向き吐出部材(8、208、308、408、508、608、708)を含んでいてもよい。この構成によれば、上向き吐出部材から上方に吐出された処理液が、基板の下面に供給される。これにより、基板の下面全域を均一に処理できる。また、前記吐出部材は、前記基板保持手段による基板の保持位置の上方に配置された下向き吐出部材(6)を含んでいてもよい。この構成によれば、下向き吐出部材から下方に吐出された処理液が、基板の上面に供給される。これにより、基板の上面全域を均一に処理できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記複数の吐出口は、互いに異なる
半径上に配置されており、前記流路内での処理液の流通方向に隣接する2つの吐出口を含む、請求項1または2に記載の基板処理装置である。
回転状態の基板に供給された処理液は、遠心力によって径方向外方に広がると共に、回転方向の下流側に向かって周方向に広がる。流通方向に隣接する2つの吐出口が共通の回転半径上に配置されている場合には、処理液の着液位置が回転半径方向に並んでいるので、2つの吐出口から吐出された処理液が、基板上で即座に混ざる。そのため、温度の異なる処理液が基板上で混ざり合い、直ぐに温度が変化してしまう場合がある。したがって、流通方向に隣接する2つの吐出口を互いに異なる回転半径上に配置することにより、2つの吐出口から吐出された処理液が、基板上で即座に混ざることを抑制または防止できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、
基板を水平に保持する基板保持手段と、基板を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板保持手段に保持されている基板を回転させる基板回転手段と、前記回転軸線からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置された複数の吐出口と、外側から内側の順番で前記複数の吐出口に順次接続された流路とを含み、前記流路から前記複数の吐出口に供給された処理液を前記複数の吐出口から前記基板に向けて吐出する吐出部材と、前記吐出部材よりも高温の処理液を前記流路に供給する高温処理液配管とを含み、前記流路は、前記流路内での処理液の流通方向に隣接する2つの吐出口を結ぶ直線とは異なる経路を通って前記2つの吐出口の一方から他方に延びている
、基板処理装置である。流通方向に隣接する2つの吐出口の間の流路の形状は、折れ線状であってもよいし、曲線状であってもよい。また、流路は、流通方向に隣接する2つの吐出口を結ぶ直線に交差していてもよいし、交差していなくてもよい。
【0013】
この構成によれば、
請求項1に関して述べた前記の作用効果に加えて、次の作用効果を奏することができる。具体的には、流通方向に隣接する2つの吐出口を結ぶ直線に沿って流路が延びている場合よりも、隣接する2つの吐出口の一方から他方までの流路長が長い。流路長が増加すると、流路内での処理液の滞在時間が増加する。流路を流れる処理液の温度は、流路内での滞在時間の増加に伴って次第に低下していく。したがって、流路長を増加させることにより、隣接する2つの吐出口に供給される処理液の温度差を大きくすることができる。これにより、温度が異なる処理液を基板内の複数の領域に確実に供給できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、
基板を水平に保持する基板保持手段と、基板を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板保持手段に保持されている基板を回転させる基板回転手段と、前記回転軸線からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置された複数の吐出口と、外側から内側の順番で前記複数の吐出口に順次接続された流路とを含み、前記流路から前記複数の吐出口に供給された処理液を前記複数の吐出口から前記基板に向けて吐出する吐出部材と、前記吐出部材よりも高温の処理液を前記流路に供給する高温処理液配管とを含み、前記流路は、前記複数の吐出口のうちの最も外側の吐出口よりも上流側に配置されており、前記回転軸線から前記吐出部材の外端部まで延びる上流部(35)と、前記上流部に接続されており、前記上流部と同一平面上に配置された下流部(36)とを含む
、基板処理装置である。前記吐出部材の外端部は、前記基板の周縁部に対向する部分である。この構成によれば、
請求項1に関して述べた前記の作用効果に加えて、次の作用効果を奏することができる。具体的には、高温処理液配管からの処理液が、上流部から下流部に供給され、その後、下流部から複数の吐出口に順次供給される。上流部と下流部とが同一平面上に配置されているので、上流部と下流部とが互いに異なる平面上に配置されている場合よりも、吐出部材を小型化できる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、
基板を水平に保持する基板保持手段と、基板を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板保持手段に保持されている基板を回転させる基板回転手段と、前記回転軸線からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置された複数の吐出口と、外側から内側の順番で前記複数の吐出口に順次接続された流路とを含み、前記流路から前記複数の吐出口に供給された処理液を前記複数の吐出口から前記基板に向けて吐出する吐出部材と、前記吐出部材よりも高温の処理液を前記流路に供給する高温処理液配管とを含み、前記流路は、前記複数の吐出口のうちの最も外側の吐出口よりも上流側に配置されており、前記回転軸線から前記吐出部材の外端部まで延びる上流部と、前記上流部に接続されており、前記上流部とは異なる平面上に配置された下流部とを含む
、基板処理装置である。前記吐出部材の外端部は、前記基板の周縁部に対向する部分である。この構成によれば、
請求項1に関して述べた前記の作用効果に加えて、次の作用効果を奏することができる。具体的には、高温処理液配管からの処理液が、上流部から下流部に供給され、その後、下流部から複数の吐出口に順次供給される。上流部と下流部とが互いに異なる平面上に配置されているので、下流部の形状が、上流部によって制約されない。そのため、下流部の形状の自由度を高めることができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、前記高温処理液配管から前記流路に供給される処理液よりも低温の処理液を前記流路に供給する低温処理液配管(41)と、処理液が前記高温処理液配管および低温処理液配管のいずれか一方から前記流路に選択的に供給されるように前記高温処理液配管および低温処理液配管の内部を開閉可能な切替装置(37、40)と、前記切替装置を制御することにより、前記高温処理液配管からの処理液を前記流路に供給する高温処理液供給工程と、前記高温処理液供給工程の後に、前記低温処理液配管からの処理液を前記流路に供給する低温処理液供給工程とを実行する制御装置(3)とをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置である。低温処理液配管から吐出部材に供給される処理液は、高温処理液配管から吐出部材に供給される処理液と同種の処理液であってもよいし、高温処理液配管から吐出部材に供給される処理液とは異なる種類の処理液であってもよい。
【0017】
この構成によれば、制御装置が、高温処理液配管および低温処理液配管の内部を開閉可能な切替装置を制御する。制御装置は、高温処理液配管からの処理液を吐出部材の流路に供給させ、その後、低温処理液配管からの処理液を吐出部材の流路に供給させる。高温処理液配管から吐出部材に供給される処理液の温度が、吐出部材の温度よりも高いので、高温処理液配管からの処理液が吐出部材に供給されると、吐出部材の温度が上昇する。また、低温処理液配管から吐出部材に供給される処理液の温度が、高温処理液配管から吐出部材に供給される処理液の温度よりも低いので、高温処理液配管からの処理液が吐出部材に供給された後に、低温処理液配管からの処理液が吐出部材に供給されると、吐出部材の温度が低下し、元の温度に近づく。そのため、高温処理液配管からの処理液が、再び吐出部材に供給されたときに、以前とは異なる温度の処理液が基板に供給されることを抑制または防止できる。これにより、温度の再現性を高めることができる。したがって、処理の安定性を高めることができる。
【0018】
請求項8に記載の発明は、
基板を水平に保持する基板保持手段と、基板を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板保持手段に保持されている基板を回転させる基板回転手段と、前記回転軸線からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置された複数の吐出口と、外側から内側の順番で前記複数の吐出口に順次接続された流路とを含み、前記流路から前記複数の吐出口に供給された処理液を前記複数の吐出口から前記基板に向けて吐出する吐出部材と、前記吐出部材よりも高温の処理液を前記流路に供給する高温処理液配管と、前記吐出部材の内部に設けられており、前記吐出部材を冷却する冷却物質(43)が配置される冷却物質配置空間(44、45、46)を含む冷却構造(42)
とを含む、基板処理装置である。
この構成によれば、
請求項1に関して述べた前記の作用効果に加えて、次の作用効果を奏することができる。具体的には、吐出部材の内部に設けられた冷却物質配置空間に配置された冷却物質によって吐出部材が冷却される。前述のように、高温処理液配管から吐出部材に供給される処理液の温度が、吐出部材の温度よりも高いので、高温処理液配管からの処理液が吐出部材に供給されると、吐出部材の温度が上昇する。吐出部材は、冷却物質によって冷却されて、元の温度(高温処理液配管からの処理液が供給される前の温度)に近づく。そのため、高温処理液配管からの処理液が、再び吐出部材に供給されたときに、以前とは異なる温度の処理液が基板に供給されることを抑制または防止できる。
【0019】
前記冷却物質は、固体であってもよい。具体的には、請求項9に記載の発明のように、前記冷却構造は、前記吐出部材よりも比熱の小さい、前記冷却物質としての冷却部材(43)を含んでいてもよい。この構成によれば、冷却部材の比熱が、吐出部材よりも小さいので、吐出部材が冷却物質によって確実に冷却される。これにより、吐出部材の温度が、元の温度に近づく。
【0020】
また、前記冷却物質は、液体(冷却液)であってもよい。具体的には、請求項10に記載の発明のように、前記冷却物質配置空間は、前記冷却物質としての冷却液を貯留する冷却液貯留空間(45、46)を含んでいてもよい。この場合、請求項11に記載の発明のように、前記冷却液貯留空間は、前記冷却液が充填された密閉空間(45)であってもよい。
【0021】
また、前記冷却物質が液体(冷却液)である場合、請求項12に記載の発明のように、前記冷却構造は、前記冷却液貯留空間としての冷却液流路(46)と、前記冷却液流路に接続されており、前記冷却液流路に冷却液を供給する冷却液供給路(47)と、前記冷却液流路に接続されており、前記冷却液流路内の冷却液を排出する冷却液排出路(48)とを含んでいてもよい。この構成によれば、冷却液貯留空間内の温まった冷却液が、冷却液排出路に排出され、冷却液供給路からの冷却液に置換される。そのため、吐出部材が、冷却液貯留空間内の冷却液によって確実に冷却される。
【0022】
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を水平方向から見た模式図である。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、複数の処理ユニット2と、基板処理装置1に備えられた装置やバルブの開閉を制御する制御装置3とを含む。
【0025】
処理ユニット2は、図示しない隔壁を備えるチャンバー4と、チャンバー4内で基板Wを水平に保持して基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、チャンバー4内でスピンチャック5の上方に配置された遮断板6と、チャンバー4内でスピンチャック5を取り囲む筒状のカップ7と、基板Wの下面に向けて処理液を吐出する下面ノズル8とを含む。
【0026】
スピンチャック5は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース9と、スピンベース9上に配置された複数のチャックピン10と、スピンベース9の中央部から下方に延びる回転軸11と、スピンベース9の中心を通る鉛直な軸線(回転軸線A1)まわりにスピンベース9および回転軸11を回転させるスピンモータ12とを含む。スピンチャック5は、複数のチャックピン10を基板Wの周端面に接触させることにより、スピンベース9の上方の保持位置(
図1に示す基板Wの位置)で基板Wを水平な姿勢で保持(挟持)する。さらに、スピンチャック5は、基板Wを保持している状態でスピンモータ12によってスピンベース9および回転軸11を回転させる。これにより、基板Wが回転軸線A1まわりに回転する。
【0027】
遮断板6は、基板Wよりも直径が大きい円板状である。遮断板6は、上下方向に延びる支軸13によって水平な姿勢で支持されている。遮断板6の中心軸線は、回転軸線A1上に配置されている。遮断板6の下面は、基板Wの上面と平行であり、基板Wの上面全域に対向している。遮断板6は、支軸13を介して遮断板昇降ユニット14に連結されている。遮断板昇降ユニット14は、遮断板6の下面が基板Wの上面に近接する近接位置(
図3A〜
図3Cに示す位置)と、近接位置の上方に設けられた退避位置(
図1に示す位置)との間で遮断板6を昇降させる。
【0028】
支軸13は、筒状である。支軸13の内部は、遮断板6の中央部を上下方向に貫通する貫通孔に連通している。遮断板6および支軸13は、上下方向に延びる上気体流路15を形成している。処理ユニット2は、上気体バルブ16が介装された上気体配管17を含む。上気体配管17は、上気体流路15に接続されている。上気体流路15の下端(上気体吐出口)は、遮断板6の下面中央部で開口している。したがって、上気体バルブ16が開かれると、上気体配管17から上気体流路15に供給された気体が、遮断板6の下面中央部から下方に吐出される。上気体流路15に供給される気体は、たとえば、窒素ガスである。気体は、アルゴンなどの窒素ガス以外の不活性ガスであってもよいし、乾燥空気や、清浄空気などの他の気体であってもよい。
【0029】
カップ7は、スピンチャック5を取り囲む筒状の内カップ18および外カップ19と、スピンチャック5を取り囲む筒状の内ガード20および外ガード21と、内ガード20および外ガード21を独立して昇降させるガード昇降ユニット22とを含む。内カップ18および外カップ19は、上向きに開いた環状の溝を形成している。内カップ18および外カップ19は、回収装置または廃液装置(図示せず)に接続されている。内ガード20の上端部は、回転軸線A1に向かって斜め上に延びており、内ガード20の下端部は、内カップ18の上方に配置されている。同様に、外ガード21の上端部は、回転軸線A1に向かって斜め上に延びており、外ガード21の下端部は、外カップ19の上方に配置されている。内ガード20および外ガード21の上端の内径は、スピンベース9の外径よりも大きい。
【0030】
ガード昇降ユニット22は、ガードの上端が基板Wよりも上方に位置する上位置と、ガードの上端が基板Wよりも下方に位置する下位置との間でそれぞれのガードを昇降させる。
図1では、内ガード20および外ガード21の両方が下位置に配置されている状態が示されている。内ガード20および外ガード21の両方が上位置に配置されている状態では、内ガード20の内面が基板Wの周端面に対向する。この状態では、基板Wの周囲に振り切られた処理液が、内ガード20の内面によって受け止められて、内カップ18内に案内される。また、内ガード20が下位置に配置されており、外ガード21が上位置に配置されている状態では、外ガード21の内面が基板Wの周端面に対向する。この状態では、基板Wの周囲に振り切られた処理液が、外ガード21の内面によって受け止められて、外カップ19内に案内される。そして、内カップ18および外カップ19内に集められた処理液は、回収または廃棄される。
【0031】
下面ノズル8は、基板Wの下面に向けて処理液を吐出する吐出部23と、吐出部23に処理液を供給する供給部24とを含む。吐出部23および供給部24は、樹脂などの耐薬性を有する材料によって形成されている。このような材料としては、たとえば、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パー フルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、およびPP(ポリプロピレン)が挙げられる。
【0032】
吐出部23は、基板Wの下面とスピンベース9の上面との間に配置されている。吐出部23は、基板Wよりも直径の小さい円板状である。吐出部23は、水平な姿勢で保持されている。吐出部23の上面は、上下方向に間隔を空けて基板Wの下面に平行に対向している。吐出部23の外周部は、チャックピン10の内側(回転軸線A1側)に配置されており、基板Wの下面周縁部に上下方向に対向している。
【0033】
供給部24は、吐出部23の中央部から下方に延びている。吐出部23は、供給部24と一体であってもよいし、供給部24とは異なる部材であってもよい。供給部24は、回転軸線A1に沿って上下方向に延びている。供給部24は、上下方向に延びる筒状である。供給部24は、スピンベース9および回転軸11を上下方向に貫通する貫通穴内に挿入されている。スピンベース9および回転軸11は、径方向に間隔を空けて供給部24を取り囲んでいる。したがって、上下方向に延びる筒状の下気体流路25が、スピンベース9および回転軸11と供給部24との間に形成されている。
【0034】
処理ユニット2は、下気体バルブ26が介装された下気体配管27を含む。下気体配管27は、下気体流路25に接続されている。下気体流路25の上端(下気体吐出口)は、スピンベース9の上面で開口している。下気体流路25の上端は、吐出部23の下方に配置されている。下気体バルブ26が開かれると、下気体配管27から下気体流路25に供給された気体が、スピンベース9の上面中央部から上方に吐出される。下気体流路25に供給される気体は、たとえば、窒素ガスである。気体は、アルゴンなどの窒素ガス以外の不活性ガスであってもよいし、乾燥空気や、清浄空気などの他の気体であってもよい。
【0035】
図2は、本発明の第1実施形態に係る処理ユニット2に備えられた下面ノズル8の上面および縦断面を示す模式図である。
下面ノズル8は、処理液が流通する流路28と、流路28から供給された処理液を吐出する複数の吐出口29とを含む。流路28は、吐出部23の内部に設けられた第1流路33と、回転軸11の内部に設けられた第2流路34とを含む。第2流路34は、回転軸線A1に沿って上下方向に延びている。第1流路33は、回転軸線A1上で第2流路34に接続されている。第1流路33は、吐出部23の中央部から吐出部23の外周部まで広がり、吐出部23の外周部から吐出部23の中央部に戻るように延びている。
図2では、第1流路33が、折れ線状である例が示されている。
【0036】
複数の吐出口29は、第1流路33から上方に延びている。複数の吐出口29は、吐出部23の上面で開口している。複数の吐出口29は、回転軸線A1からの距離(最短距離)が異なる複数の位置にそれぞれ配置されている。最も外側の吐出口29aは、基板Wの下面周縁部に対向しており、最も内側の吐出口29bは、基板Wの下面中央部に対向している。第1流路33は、回転軸線A1からの距離に従って外側から内側の順番で複数の吐出口29に順次接続されている。したがって、複数の吐出口29は、下流側の吐出口29ほど回転軸線A1の近くに配置されている。
【0037】
第1流路33は、複数の吐出口29のうちの最も外側の吐出口29aよりも上流側に配置されており、回転軸線A1から吐出部23の外端部(外周部)まで延びる上流部35と、上流部35に接続されており、上流部35と同一平面上に配置された下流部36とを含む。第1流路33は、流路28内での処理液の流通方向に隣接する2つの吐出口29を結ぶ直線L1とは異なる経路を通って2つの吐出口29の一方から他方に延びている。複数の吐出口29は、互いに異なる半径上に配置されている。したがって、流通方向に隣接する2つの吐出口29は、互いに異なる半径上に配置されている。流通方向に隣接する2つの吐出口29の径方向への間隔は、一定であってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
処理ユニット2は、薬液バルブ37が介装された薬液配管38と、薬液配管38に供給される薬液を室温(20〜30℃)よりも高温に加熱するヒータ39と、リンス液バルブ40が介装されたリンス液配管41とを含む。薬液配管38およびリンス液配管41は、流路28に接続されている。薬液バルブ37が開かれると、ヒータ39によって温度調節された室温よりも高温の薬液が薬液配管38から流路28に供給される。また、リンス液バルブ40が開かれると、室温のリンス液がリンス液配管41から流路28に供給される。
【0039】
下面ノズル8に供給される薬液は、たとえばフッ酸(フッ化水素酸)であり、下面ノズル8に供給されるリンス液は、たとえば純水(脱イオン水:Deionzied Water)である。薬液は、フッ酸に限らず、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液であってもよい。たとえば、BHF(HFとNH
4Fとを含む混合液)、フッ硝酸(HFとHNO
3とを含む混合液)、SC−1(NH
4OHとH
2O
2とを含む混合液)、SC−2(HClとH
2O
2とを含む混合液)、およびTMAHのいずれかが、下面ノズル8に供給されてもよい。また、リンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0040】
薬液バルブ37が開かれると、室温よりも高温の薬液が、第2流路34を介して第1流路33に供給される。第1流路33に供給された薬液は、第1流路33の下流端に向かって第1流路33内を流れる。第1流路33が外側から内側の順番で複数の吐出口29に接続されているので、第1流路33に供給された薬液は、最も外側の吐出口29aに供給され、最も外側の吐出口29aよりも下流側に移動した薬液が、外から2番目の吐出口29に供給される。そして、外から2番目の吐出口29よりも下流側に移動した薬液が、外から3番目の吐出口29に供給され、外から3番目の吐出口29よりも下流側に移動した薬液が、最も内側の吐出口29bに供給される。このように、第1流路33に供給された薬液は、外側から内側の順番で複数の吐出口29に供給される。
【0041】
複数の吐出口29に供給された薬液は、各吐出口29から基板Wの下面に向けて上方に吐出される。基板Wの下面に着液した薬液は、その勢いで基板Wの下面内を放射状に広がる。さらに、基板Wが回転している状態で薬液が各吐出口29から吐出されると、基板Wの下面に着液した薬液は、着液位置から径方向外方に広がると共に、回転方向の下流側に向かって着液位置から周方向に広がる。これにより、各吐出口29から吐出された薬液が、着液位置より外側の領域に供給される。最も外側の吐出口29aは、基板Wの下面周縁部に対向しており、最も内側の吐出口29bは、基板Wの下面中央部に対向している。そのため、複数の吐出口29から薬液が吐出されると、基板Wの下面全域に薬液が供給される。
【0042】
吐出部23に供給される薬液の温度が室温よりも高温であるのに対し、吐出部23が室温であるので、第1流路33に供給された薬液は、第1流路33内を流れるうちに次第に温度が低下していく。そのため、外側の吐出口29に供給される薬液よりも低温の薬液が、内側の吐出口29に供給される。したがって、基板Wの下面内のある領域に供給される薬液の温度は、その領域よりも内側の領域に供給される薬液の温度よりも高い。前述のように、各吐出口29から吐出された薬液は、基板Wの下面内を広がる。流通方向に隣接する2つの吐出口29は、互いに異なる半径上に配置されている。そのため、基板Wの下面に着液した直後の薬液同士が、基板Wの下面内で混ざり合うことを抑制または防止できる。
【0043】
また、リンス液バルブ40が開かれると、室温のリンス液が、第2流路34を介して第1流路33に供給される。第1流路33に供給されたリンス液は、薬液と同様に、外側から内側の順番で複数の吐出口29に供給される。これにより、リンス液が各吐出口29から基板Wの下面に向けて上方に吐出され、基板Wの下面全域にリンス液が供給される。室温より高温の薬液が第1流路33に供給された後は、吐出部23の温度が上昇している。したがって、薬液が第1流路33に供給された後に、室温のリンス液が第1流路33に供給されると、吐出部23の温度が低下し室温に近づく。そのため、室温より高温の薬液が再び第1流路33に供給されたときに、以前よりも高温の薬液が、基板Wの下面に供給されることを抑制または防止できる。これにより、基板Wに供給される薬液温度の再現性を高めることができる。
【0044】
スピンチャック5に保持される基板Wの直径が300mmであり、スピンベース9の上面と基板Wの下面との間のクリアランスが、10mmである場合、吐出部23の外径は、たとえば290mmであり、吐出部23の厚みは、たとえば6mmである。さらに、この場合、第1流路33の直径は、4mmである。さらに、この場合、回転軸線A1から4つの吐出口29までの距離は、たとえば、4mm、50mm、90mm、130mmである。基板Wの直径が300mmであり、スピンチャック5による基板Wの回転速度が10〜1500rpmの範囲内である場合、回転軸線A1から最も外側の吐出口29aまでの距離は、130mm以下であることが好ましい。すなわち、最も外側の吐出口29aまでの距離が130mmを超えると、最も外側の吐出口29aから基板Wの下面に供給された処理液が、基板Wの全周に行き渡る前に基板Wの周囲に飛散する場合がある。したがって、最も外側の吐出口29aまでの距離を130mm以下に設定することにより、最も外側の吐出口29aから吐出された処理液を基板Wの全周に行き渡らせることができる。
【0045】
図3A、
図3B、および
図3Cは、処理ユニット2によって行われる基板Wの処理の一例について説明するための模式図である。以下では、窒化膜(たとえば、SiN)が形成された基板Wの裏面にフッ酸を供給することにより、窒化膜をエッチングするときの処理の一例について説明する。基板Wに供給されるフッ酸の温度の一例は、50℃であり、フッ酸の濃度の一例は、49%である。また、基板Wへのフッ酸の供給流量の一例は、2L/minである。
【0046】
基板Wが処理されるときには、チャンバー4内に基板Wを搬入する搬入工程が行われる。具体的には、制御装置3は、遮断板6を退避位置に位置させ、内ガード20および外ガード21を下位置に位置させる。この状態で、制御装置3は、搬送ロボットによってチャンバー4内に基板Wを搬入させる。その後、制御装置3は、搬送ロボットによって、裏面が下に向けられた基板Wの下面周縁部をチャックピン10上に載置させる。そして、制御装置3は、チャックピン10によって基板Wを保持させる。制御装置3は、スピンチャック5上に基板Wが載置された後、搬送ロボットをチャンバー4から退避させる。
【0047】
次に、
図3Aに示すように、薬液の一例であるフッ酸を基板Wの下面に供給する薬液処理工程が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンチャック5を制御して、基板Wを回転軸線A1まわりに所定の回転速度(たとえば、1250rpm)で回転させる。さらに、制御装置3は、遮断板昇降ユニット14を制御して、遮断板6を近接位置に移動させる。さらに、制御装置3は、カップ7昇降ユニットを制御して、外ガード21を上位置に移動させる。この状態で、制御装置3は、上気体バルブ16および下気体バルブ26を開いて、遮断板6の下面中央部およびスピンベース9の上面中央部から気体の一例である窒素ガスを吐出させる。その後、制御装置3は、薬液バルブ37を開いて、下面ノズル8からフッ酸を吐出させる。そして、薬液バルブ37が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、薬液バルブ37を閉じて、下面ノズル8からのフッ酸の吐出を停止させる。
【0048】
遮断板6の下面中央部から吐出された窒素ガスは、基板Wの上面と遮断板6の下面との間の空間を外方に広がる。これにより、窒素ガスが、基板Wと遮断板6との間に充満する。同様に、スピンベース9の上面中央部から吐出された窒素ガスは、基板Wの下面とスピンベース9の上面との間の空間を外方に広がる。これにより、窒素ガスが、基板Wとスピンベース9との間に充満する。したがって、複数の吐出口29から吐出されたフッ酸は、窒素ガス雰囲気中で基板Wの下面に供給される。そして、基板Wの下面に供給されたフッ酸は、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの周囲に振り切られる。基板Wの周囲に振り切られたフッ酸は、外ガード21によって受け止められた後、回収される。このようにして、基板Wの下面全域にフッ酸が供給され、基板Wの裏面に形成された窒化膜が均一にエッチングされる。
【0049】
次に、
図3Bに示すように、リンス液の一例である純水を基板Wの下面に供給するリンス工程が行われる。具体的には、制御装置3は、基板Wが所定の回転速度(たとえば、1250rpm)で回転しており、遮断板6が近接位置に配置されている状態で、カップ7昇降ユニットを制御して、内ガード20および外ガード21の両方を上位置に位置させる。これにより、内ガード20の内面が基板Wの周端面に対向する。この状態で、制御装置3は、リンス液バルブ40を開いて、下面ノズル8から純水を吐出させる。したがって、遮断板6の下面中央部およびスピンベース9の上面中央部から窒素ガスが吐出されている状態で、下面ノズル8から純水が吐出される。そして、リンス液バルブ40が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ40を閉じて、下面ノズル8からの純水の吐出を停止させる。
【0050】
フッ酸と同様に、遮断板6が近接位置に配置されており、遮断板6の下面中央部から窒素ガスが吐出されているので、窒素ガスが、基板Wと遮断板6との間に充満している。同様に、スピンベース9の上面中央部から窒素ガスが吐出されているので、窒素ガスが、基板Wとスピンベース9との間に充満している。そのため、複数の吐出口29から吐出された純水は、窒素ガス雰囲気中で基板Wの下面に供給される。そして、基板Wの下面に供給された純水は、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの周囲に振り切られる。基板Wの周囲に振り切られた純水は、内ガード20によって受け止められた後、廃棄される。このようにして、基板Wの下面全域に純水が供給される。そのため、基板Wの下面に付着しているフッ酸が純水によって洗い流される。
【0051】
次に、
図3Cに示すように、基板Wを乾燥させる乾燥工程が行われる。具体的には、制御装置3は、遮断板6が近接位置に配置されている状態で、カップ7昇降ユニットを制御して、内ガード20および外ガード21の両方を下位置に位置させる。これにより、内ガード20および外ガード21の上端が、基板Wよりも下方に配置される。この状態で、制御装置3は、スピンチャック5を制御して、基板Wの回転を加速させる。したがって、基板Wは、遮断板6の下面中央部およびスピンベース9の上面中央部から窒素ガスが吐出されている状態で、高回転速度(たとえば2500rpm)で回転する。そのため、基板Wの下面に付着している純水は、基板Wの高速回転によって基板Wの周囲に振り切られる。これにより、純水が基板Wから除去され、基板Wが窒素ガス雰囲気中で乾燥する。そのため、ウォーターマークの発生が低減される。
【0052】
次に、チャンバー4内から基板Wを搬出する搬出工程が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンチャック5を制御して、スピンチャック5の回転を停止させる。さらに、制御装置3は、上気体バルブ16および下気体バルブ26を閉じて、遮断板6の下面中央部およびスピンベース9の上面中央部からの窒素ガスの吐出を停止させる。さらに、制御装置3は、遮断板昇降ユニット14を制御して、遮断板6を近接位置から退避位置まで上昇させる。この状態で、制御装置3は、搬送ロボットをチャンバー4内に進入させる。その後、制御装置3は、搬送ロボットによってスピンチャック5上の基板Wを保持させる。そして、制御装置3は、搬送ロボットをチャンバー4内から退避させる。これにより、チャンバー4内から基板Wが搬出される。
【0053】
以上のように本実施形態では、下面ノズル8が、回転軸線A1からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置された複数の吐出口29と、外側から内側の順番で複数の吐出口29に順次接続された流路28とを含む。薬液配管38からの薬液は、流路28に供給される。そして、流路28に供給された薬液は、外側から内側の順番で複数の吐出口29に順次供給される。薬液の温度が、下面ノズル8の温度よりも高いので、流路28を流れる薬液の温度は、流路28内での滞在時間の増加に伴って次第に低下していく。そのため、外側の吐出口29に供給された薬液よりも低温の薬液が、その内側の吐出口29に供給される。言い換えると、内側の吐出口29に供給された薬液よりも高温の薬液が、その外側の吐出口29に供給される。
【0054】
外側の吐出口29から吐出された薬液は、その内側の吐出口29から吐出された薬液が供給される領域よりも外側の領域(基板W内の領域)に供給される。外側の吐出口29には、その内側の吐出口29に供給される薬液よりも高温の薬液が供給される。したがって、基板Wに供給される薬液の温度は、回転軸線A1から遠ざかるに従って高まる。基板W上での薬液の温度は、回転軸線A1から遠ざかるに従って低下する。そのため、内側の領域に供給される薬液よりも高温の薬液をその外側の領域に供給することにより、基板W上での薬液の温度を面内全域で均一にすることができる。これにより、処理の均一性を高めることができる。さらに、共通の流路28から複数の吐出口29に薬液が供給されるので、吐出口29ごとに流路が設けられている場合よりも、下面ノズル8の構造を簡素にできる。
【0055】
図4は、本発明の第2実施形態に係る処理ユニット2に備えられた下面ノズル208の上面および縦断面を示す模式図である。この
図4において、前述の
図1〜
図3に示された各部と同等の構成部分については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
第2実施形態に係る下面ノズル208は、第1実施形態に係る下面ノズル8の構成に加えて、冷却構造42を備えている。
【0056】
冷却構造42は、吐出部23よりも比熱が小さい冷却部材43を含む。冷却部材43は、吐出部23の内部に設けられた配置空間44に配置されている。したがって、冷却部材43は、吐出部23内に充填されている。吐出部23が樹脂で形成されている場合、冷却部材43の少なくとも一部は、金属によって形成されている。高温の薬液の供給によって吐出部23の温度が上昇すると、吐出部23が、冷却部材43によって冷却される。そのため、薬液配管38からの高温の薬液が、再び吐出部23に供給されたときに、以前とは異なる温度の薬液が基板Wに供給されることを抑制または防止できる。これにより、温度の再現性を高めることができ、処理の安定性を高めることができる。
【0057】
また、冷却構造42は、吐出部23の内部に設けられた冷却液貯留空間45を含む。冷却液貯留空間45は、冷却液が充填された密閉空間である。冷却液は、純水などの水を含む液体であってもよいし、水を含む液体以外の液体であってもよい。冷却液の温度は、室温に維持されている。室温よりも高温の薬液が、薬液配管38から吐出部23に供給され、吐出部23の温度が上昇すると、吐出部23が、冷却液貯留空間45内の冷却液によって冷却される。そのため、薬液配管38からの高温の薬液が、再び吐出部23に供給されたときに、以前とは異なる温度の薬液が基板Wに供給されることを抑制または防止できる。
【0058】
また、冷却構造42は、吐出部23の内部に設けられた冷却液流路46と、冷却液流路46に冷却液を供給する冷却液供給路47と、冷却液流路46内の冷却液を排出する冷却液排出路48とを含む。冷却液流路46は、吐出部23の内部に設けられている。冷却液流路46は、第1流路33に沿って延びている。冷却液供給路47は、冷却液流路46の上流端に接続されており、冷却液排出路48は、冷却液流路46の下流端に接続されている。冷却液供給路47および冷却液排出路48は、供給部24の内部に設けられている。冷却液供給路47および冷却液排出路48は、上下方向に延びている。
【0059】
冷却液供給路47は、冷却液配管49に接続されている。冷却液配管49は、薬液配管38から流路28に供給される薬液の温度よりも低い一定の温度に調整された冷却液を冷却液供給路47に供給する。冷却液配管49から冷却液供給路47に供給される冷却液の温度は、基板処理装置1に供給される前に調整されていてもよいし、冷却液配管49に介装された温度調整器50(ヒータまたはクーラー)によって調整されてもよい。また、冷却液の温度は、室温以上であってもよいし、室温未満であってもよい。冷却液の温度の一例は、たとえば、24〜60℃である。冷却液供給路47に供給された冷却液は、冷却液供給路47から冷却液流路46に供給され、冷却液流路46から冷却液排出路48に排出される。冷却液は、常時、冷却液供給路47に供給される。したがって、吐出部23の温度は、冷却液の温度に維持される。そのため、薬液配管38からの高温の薬液が、再び吐出部23に供給されたときに、以前とは異なる温度の薬液が基板Wに供給されることを抑制または防止できる。
【0060】
本発明の第1および第2実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の第1および第2実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、第1および第2実施形態では、第1流路33の上流部35および下流部36が、同一平面上に配置されている場合について説明したが、
図5に示す下面ノズル308のように、上流部35および下流部36は、互いに異なる平面上に配置されていてもよい。
【0061】
また、第1および第2実施形態では、第1流路33が、折れ線状である場合について説明したが、
図6に示す下面ノズル408のように、第1流路33は、曲線状であってもよい。また、
図7に示す下面ノズル508のように、第1流路33は、下流側に向かって周方向に延びながら回転軸線A1に近づくらせん状であってもよい。この場合、上流部35および下流部36は、
図6に示すように同一平面上に配置されていてもよいし、
図7に示すように互いに異なる平面上に配置されていてもよい。
【0062】
また、第1および第2実施形態では、下面ノズル8の吐出部23が、円板状である場合について説明したが、
図8に示す下面ノズル608のように、吐出部23は、回転軸線A1から径方向外方に延びる棒状であってよい。同様に、
図9に示す下面ノズル708のように、吐出部23は、回転軸線A1から径方向外方に延びる棒状であってよい。この場合、上流部35および下流部36は、
図8に示すように同一平面上に配置されていてもよいし、
図9に示すように互いに異なる平面上に配置されていてもよい。また、下流部36は、流通方向に隣接する2つの吐出口29を結ぶ直線に沿って延びていてもよい。
【0063】
また、第1および第2実施形態では、流路28と複数の吐出口29とが、下面ノズル8に設けられている場合について説明したが、流路28が、遮断板6の内部に設けられており、複数の吐出口29が、遮断板6の下面で開口していてもよい。すなわち、流路28および複数の吐出口29は、下面ノズル8および遮断板6のいずれか一方だけに設けられていてもよいし、下面ノズル8および遮断板6の両方に設けられていてもよい。流路28と複数の吐出口29とが遮断板6に設けられる場合、流路28の形状は、
図2、
図5、
図6、および
図7のいずれに示す形状であってもよい。
【0064】
また、第1および第2実施形態では、室温よりも高温の薬液が、流路28に供給される場合について説明したが、薬液以外の高温の処理液が、流路28に供給されてもよい。たとえば、室温よりも高温の純水が、流路28に供給されてもよい。純水の温度が下がると、純水の置換能力が低下する場合があるので、基板W上での純水の温度を面内全域で均一にすることにより、基板W上の処理液を均一に純水に置換できる。
【0065】
また、第2実施形態では、冷却構造42が、冷却部材43、冷却液貯留空間45、および冷却液流路46を備えている場合について説明したが、冷却部材43、冷却液貯留空間45、および冷却液流路46のうちの1つまたは2つが省略されてもよい。
また、第1および第2実施形態では、基板処理装置1が、円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1は、液晶表示装置用基板などの多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
【0066】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。