(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5819938
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロリドおよびフルオリドの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 231/16 20060101AFI20151104BHJP
【FI】
C07D231/16CSP
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-505432(P2013-505432)
(86)(22)【出願日】2011年4月18日
(65)【公表番号】特表2013-525324(P2013-525324A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011056119
(87)【国際公開番号】WO2011131615
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2014年4月17日
(31)【優先権主張番号】61/327,269
(32)【優先日】2010年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10160885.9
(32)【優先日】2010年4月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512137348
【氏名又は名称】バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】パゼノツク,セルギー
(72)【発明者】
【氏名】ルイ,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ガリー,ステフアニー
【審査官】
伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−518345(JP,A)
【文献】
特表2009−507867(JP,A)
【文献】
特開平09−176126(JP,A)
【文献】
特開平06−192015(JP,A)
【文献】
特表平10−511109(JP,A)
【文献】
特表平07−507781(JP,A)
【文献】
特開平02−085257(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/070889(WO,A1)
【文献】
特表平07−501549(JP,A)
【文献】
特開平05−043553(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/011609(WO,A1)
【文献】
特表2010−508307(JP,A)
【文献】
特開昭61−158965(JP,A)
【文献】
特表2012−526768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次に示す式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドの調製方法であって、
【化1】
式中、R
1は、C
1−C
6アルキルであり、R
2は、C
1−C
5フルオロアルキルであり、Xは、フッ素もしくは塩素であり、
次に示す段階を含む方法:
(1)塩素化剤の存在下で、式(II)の1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキル
【化2】
(式中、R
1およびR
2は、上述したものと同じ意味であり、R
3は、直鎖もしくは分岐C
1‐12アルキル基である。)を塩素化して、式(III)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキル(式中、R
1、R
2およびR
3は、上述したものと同じ意味である。)を得;
(2a−i)式(IV)のフッ素化剤(式中、M
+は、Li
+、Na
+、K
+、Cs
+、もしくはAlk
4N
+であり、AlkはC
1−C
4アルキルである。)の存在下で、式(III)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルをフッ素化して、式(V)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルを得;
(2a−ii)式(V)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルを加水分解して、式(VIa)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸を得;
(2a−iii)次いで、ハロゲン化して、式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライド(式中、Xは、フッ素または塩素である。)を得る
。
【化3】
【請求項2】
次に示す式(Ib)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドの調製方法であって、
【化1】
式中、R1は、C1−C6アルキルであり、R2は、C1−C5フルオロアルキルであり、
次に示す段階を含む方法:
(1)塩素化剤の存在下で、式(II)の1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキル
【化2】
(式中、R1およびR2は、上述したものと同じ意味であり、R3は、直鎖もしくは分岐C1‐12アルキル基である。)を塩素化して、式(III)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキル(式中、R1、R2およびR3は、上述したものと同じ意味である。)を得;
(2b−i)式(III)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルを加水分解して、式(VIb)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸を得;
(2b−ii)次いで、式(VIb)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸をハロゲン化して、式(VII)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドを得て、但し、ここで、Xは、フッ素もしくは塩素であり、
【化4】
(2b−iii)式(IV)のフッ素化剤(式中、M+は、Li+、Na+、K+、Cs+、もしくはAlk4N+であり、AlkはC1−C4アルキルである。)の存在下で、式(VII)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドをフッ素化して、式(Ib)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドを得る。
【化5】
【請求項3】
フッ素化段階(2a−i)または(2b−iii)が、相間移動触媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
相間移動触媒が、第四アンモニウム、ホスホニウム化合物、またはアミドホスホニウム塩から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
相間移動触媒が、テトラメチルアンモニウムクロリドもしくはブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラキス(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリドもしくはブロミド、テトラキス(ジエチルアミノ)ホスホニウムクロリドもしくはブロミド、トリス(ジエチルアミノ)(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリドもしくはブロミド、トリス(ジメチルアミノ)(ジヘキシルアミノ)ホスホニウムクロリドもしくはブロミド、トリス(ジエチルアミノ)(ジヘキシルアミノ)ホスホニウムクロリドもしくはブロミド、ヘキサアルキルグアニジニウム塩、または6から17の鎖長rおよび500g/molの平均モル質量を有するポリエチレングリコールジメチルエーテルから選択されることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
式(III)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルが、5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルであることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の方法。
【請求項7】
5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル。
【請求項8】
5−フルオロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドの新規な調製方法、およびこの方法で生じる中間体、5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル、および5−フルオロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルに関する。
【背景技術】
【0002】
5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドは、植物保護剤(例えば、公報未発行の欧州特許出願第09356038号、およびWO2007/087906を参照のこと。)の合成における重要な中間体である。
【0003】
WO1992/012970に既に記載されているように、塩素化剤とカルボン酸の反応によって、ピラゾールカルボニルクロリドは通常調製される。この方法の1つの長所の根拠は、内在するカルボン酸が容易に利用可能であり、このため、工業規模で利用可能であるということである。対応する置換されたカルボン酸が容易に利用可能ではないので、この条件は、置換されたピラゾールカルボニルクロリドの調製で提供されない。別の方法は、公報未発行の欧州特許出願第09176426号に記載されており、多段階の合成によって、ピラゾリルカルバルデヒド(pyrazolylcarbaldehyde)から開始する酸塩化物を生じる。
【0004】
フッ素と塩素との交換方法(Halex法)は、5−クロロ−1,3−ジアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロリド(例えば、WO2007/031212、およびEP−A0776889を参照のこと。)において特に知られている。これに関連して、酸塩化物は酸フッ化物に変換され、さらにこれによって、フッ素化が促進される。しかしながら、活性化基が酸塩化物(COCl)または酸フッ化物(COF)の代わりにアルデヒド(CHO)である場合、フッ化カリウムとの反応は、非常に低い収率しかもたらさない。例えば、5−フルオロ−1,3−ジメチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒドは、1,3−ジメチル−5−クロロピラゾール−4−カルバルデヒドとフッ化カリウムの反応によって、24%の収率で得られるにすぎない(EP−A0776889)。また、不十分な収率について考えられる原因は、ピラゾールアルデヒド(pyrazolealdhyde)の熱安定性の低さである(EP−A1364946を参照のこと。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願第09356038号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/087906号
【特許文献3】国際公開第92/012970号
【特許文献4】欧州特許出願第09176426号明細書
【特許文献5】国際公開第2007/031212号
【特許文献6】欧州特許出願公開第0776889号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1364946号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、先行技術に記載されている不都合を示さない、5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドの調製経路を利用可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、次に示す式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドの調製方法によって今般達成されている:
【0008】
【化1】
式中、R
1は、C
1−C
6アルキルであり、R
2は、C
1−C
5フルオロアルキルであり、Xは、フッ素もしくは塩素であり、
次に示す段階を含む:
(1)塩素化剤の存在下で、式(II)の1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキル
【0009】
【化2】
(式中、R
1およびR
2は、上述したものと同じ意味であり、R
3は、直鎖もしくは分岐C
1‐12アルキル基である。)を塩素化して、式(III)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキル(式中、R
1、R
2およびR
3は、上述したものと同じ意味である。)を得;
(2a−i)式(IV)のフッ素化剤(式中、M
+は、Li
+、Na
+、K
+、Cs
+、もしくはAlk
4N
+であり、AlkはC
1−C
4アルキルである。)の存在下で、式(III)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルをフッ素化して、式(V)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルを得;
(2a−ii)式(V)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルを加水分解して、式(VIa)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸を得;
(2a−iii)次いで、ハロゲン化して、式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライド(式中、Xは、フッ素または塩素である。)を得るか;
【0010】
【化3】
または、
(2b−i)式(III)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルを加水分解して、式(VIb)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸を得;
(2b−ii)次いで、ハロゲン化して、式(VII)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドを得て、
【0011】
【化4】
(2b−iii)式(IV)のフッ素化剤(式中、M
+は、Li
+、Na
+、K
+、Cs
+、もしくはAlk
4N
+であり、AlkはC
1−C
4アルキルである。)の存在下で、式(VII)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドをフッ素化して、式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリド(式中、Xはフッ素である。)を得る。
【0012】
【化5】
金属フッ化物による5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルのフッ素化が成功するか否かについては、予測することができない。従って、金属フッ化物による5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボキシラートのフッ素化が、選択的に高い収率の新規な5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルを生じることは、驚くべきものであると考えられる。
【0013】
本発明の方法は、次のスキーム(I)によって説明することができる:
【0014】
【化6】
【0015】
本発明の方法を行う際の出発物質として使用される、1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルは、一般に、式(II)によって定義される。この式(II)中のR
1およびとR
3の基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチルまたはペンチルが好ましく、メチル、エチル、またはn−プロピルが特に好ましい。R
2基は、C
1−C
5フルオロアルキルであり、これは、過フッ素化までの少なくとも1個のフッ素原子に置換される。フルオロアルキルが過フッ素化されない場合、塩素および臭素等の付加的なハロゲン原子(好ましくは塩素)は、付加的な置換基として存在し得る。R
2は、CF
2H、CF
3、CF
2Cl、CCl
2F、C
2F
5、またはC
3F
7が好ましく、CF
2HおよびCF
3が特に好ましい。出発物質としては、1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル(II−1)を使用するのが非常に好ましい。X基は、フッ素および塩素から選択されるハロゲン原子である。
【0016】
式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドの調製が、式(VIa)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸から開始して行われる場合、ハロゲン化段階(2a−iii)の終了によって、対応する塩化物(X=Cl)またはフッ化物(X=F)のいずれかを生じ、これは、ハロゲン化剤の選択に依存する。
【0017】
式(IV)のフッ素化剤の存在下における、式(VII)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドのフッ素化による、式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドの本発明による別の調製では、X=Fの式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドのみが得られる。しかしながら、これらはその後、例えば、SiCl
4との適切なハロゲン交換反応によって、対応する塩化物(X=Cl)に変換することができる。
【0018】
式(II)の1−アルキル−3−ポリフルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルは、周知であるか、または周知の方法(WO2005/23690、WO2008/022777)によって調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
段階1:塩素化段階
式(II)の1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルを塩素化して、式(III)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルを得ることは、塩素化剤の存在下で、本発明によって行われる。適切な塩素化剤は、特許請求の範囲を網羅することなく、例えば、Cl
2、SO
2Cl
2、SOCl
2、N−クロロスクシンイミド、またはこれらの混合物である。塩素化剤としては、Cl
2、SO
2Cl
2、またはこれらの混合物を使用するのが好ましい。SO
2Cl
2が特に好ましい。式(II)の1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキル(alkyl 1−alkyl−3−fluoroalkyl−1H−pyrazole−4−caroxylate)、および塩素化剤は、1:10から1:1、好ましくは1:5から1:2のモル比で使用される。
【0020】
塩素化は、−10から150℃、好ましくは20から100℃の温度で通常行われ、標準圧力または超過圧力下で行うことができる。
【0021】
塩素化がガス相で行われる場合、場合により、例えば、窒素、二酸化炭素、または貴ガス等の不活性希釈ガスの存在下で行うことができる。
【0022】
塩素化は、希釈せずに、または一般的な反応条件下で不活性である希釈剤の存在下で行うことができる。希釈剤としては、例えば、モノもしくはポリ塩化脂肪族もしくは芳香族炭化水素、またはこれらの混合物を使用してもよい。適切な希釈剤の一例は、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン、クロロベンゾトリフルオリド、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム、または四塩化炭素である。好ましい希釈剤は、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、4−クロロ−トリフルオロメチルベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、4−クロロトルエン、またはこれらの混合物である。クロロベンゼンが特に好ましく使用される。
【0023】
段階(2a−iii)および段階(2b−ii):酸ハロゲン化物の生成
式(VIb)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸から、式(VII)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロリドへの変換、または、式(VIa)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸から、X=Clの式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロリドの変換は、塩素化剤の存在下で、本発明によって行われる。適切な塩素化剤は、特許請求の範囲を網羅することなく、例えば、SOCl
2、COCl
2、ジホスゲン、トリホスゲン、POCl
3、ClCO−COCl、またはこれらの混合物である。塩素化剤としては、SOCl
2、COCl
2、ClCO−COCl、またはこれらの混合物を使用するのが好ましい。SOCl
2およびCOCl
2が特に好ましい。式(VIb)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸、または式(VIa)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸および塩素化剤は、1:5から1:1、好ましくは1:2から1:1.05のモル比で使用される。
【0024】
塩素化は、希釈せずに、または一般的な反応条件下で不活性である希釈剤の存在下で行うことができる。希釈剤としては、例えば、モノもしくはポリ塩化脂肪族もしくは芳香族炭化水素、またはこれらの混合物を使用してもよい。適切な希釈剤の一例は、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン、クロロベンゾトリフルオリド、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム、または四塩化炭素である。好ましい希釈剤は、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、4−クロロ−トリフルオロメチルベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、4−クロロトルエン、またはこれらの混合物である。クロロベンゼンが特に好ましく使用される。
【0025】
式(VIb)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸から、式(VII)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドへの変換、または、式(VIa)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸から、X=Fの式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドの変換は、フッ素化剤の存在下で、本発明によって行われる。適切なフッ素化剤は、特許請求の範囲を網羅することなく、例えば、SF
4、DAST、デオキソフルオル、TFEDMA(HCF
2−CF
2NMe
2)、またはジフルオロホスゲンである。フッ素化剤としては、DASTまたはTFEDMA(HCF
2CF
2NMe
2)を使用するのが好ましい。TFEDMAが特に好ましい。式(VIb)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸、または式(VIa)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸およびフッ素化剤は、1:2から1:1、好ましくは1:2から1:1.5のモル比で使用される。
【0026】
フッ素化は、希釈せずに、または一般的な反応条件下で不活性である希釈剤の存在下で行うことができる。希釈剤としては、例えば、モノもしくはポリ塩化脂肪族もしくは芳香族炭化水素、またはこれらの混合物を使用してもよい。適切な希釈剤の一例は、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン、クロロベンゾトリフルオリド、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム、または四塩化炭素である。好ましい希釈剤は、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、ジクロロエタン、ジクロロメタン、またはこれらの混合物である。クロロベンゼンおよびジクロロメタンが、特に好ましく使用される。
【0027】
段階(2a−i)または段階(2b−iii):フッ素化
段階(2a−i)によって、式(III)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルをフッ素化して、式(V)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキルを得ることは、式(IV)のフッ素化剤の存在下で、本発明によって行われる。
【0028】
本発明による方法の別の実施形態は、段階(2b−iii)として、上述のスキームIで表され、式(IV)のフッ素化剤の存在下で、式(VII)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドを最終的に反応させ、式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドを得る。
【0029】
M
+F
−(IV)
式(IV)において、M
+は、アルカリ金属陽イオン、またはアンモニウム陽イオンであり、好ましくは、Li
+、Na
+、K
+、Cs
+、Alk
4N
+(AlkはC
1−C
4アルキルである。)、またはこれらの混合物である。フッ素化剤としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、またはこれらの混合物が、特に好ましく使用される。
【0030】
フッ化ナトリウムおよびフッ化カリウムは、合成用の周知の化学物質であり、市販されている。
【0031】
反応温度は、本発明によってフッ素化段階を行う際に、比較的広い範囲内で変化させることができる。一般に、操作は、120℃から200℃、好ましくは110℃から180℃の温度で行われる。
【0032】
反応時間は、出発物質の反応性に依存し、10時間以内であり、完全な変換によって、さらに早く反応を終了させることができる。反応時間は、3から5時間が好ましい。
【0033】
本発明の方法を行う際に、式(III)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキル中、または式(VII)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライド中の交換可能な塩素(chorine)原子当たり、0.8から1.8モル、好ましくは1から1.5モルの式(IV)のフッ素化剤が一般に使用される。
【0034】
反応は、希釈せずに、または溶媒の存在下で行うことができる。適切な溶媒は、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチルイミダゾリノン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、もしくはシクロヘキサノン等のケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチロニトリル、もしくはイソブチロニトリル等のニトリル、またはヘキサメチルホスホルアミドである。スルホラン、DMSO、ジメチルアセトアミド、DMF、またはNMPが、特に好ましく使用される。
【0035】
フッ素化は、相間移動触媒の添加によって促進することができる。
【0036】
第四アンモニウム、ホスホニウム化合物、またはアミドホスホニウム(amidophosphonium)塩は、本発明によって方法を行う際に、相間移動触媒として特に適切である。一例として、テトラメチルアンモニウムクロリドもしくはブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラキス(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリドもしくはブロミド、テトラキス(ジエチルアミノ)ホスホニウムクロリドもしくはブロミド、トリス(ジエチルアミノ)(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリドもしくはブロミド、トリス(ジメチルアミノ)(ジヘキシルアミノ)ホスホニウムクロリドもしくはブロミド、トリス(ジエチルアミノ)(ジヘキシルアミノ)ホスホニウムクロリドもしくはブロミド、ヘキサアルキルグアニジニウム塩、または6から17の鎖長rおよび500g/molの平均モル質量を有するポリエチレングリコールジメチルエーテル等の化合物を挙げることができる。
【0037】
本発明による方法の別の実施形態は、段階(2b−iii)として、上述のスキームIで表され、式(IV)のフッ素化剤の存在下で、式(VII)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドを最終的に反応させ、式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルハライドを得る。この場合、ハロゲン化段階(2b−ii)は、塩素化(X=Cl)が好ましく、これから得られた式(VII)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロリドは、式(IV)のフッ素化剤の存在下で、X=Fの式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドに変換される。
【0038】
式(V)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキル、および式(V)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸は共に、植物保護剤の合成において重要な中間体である(例えば、欧州特許出願第09356038.7号、およびWO2007/087906を参照のこと。)。
【0039】
段階(2b−i)または段階(2a−ii):加水分解
式(III)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アルキル、または式(V)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボキシラートを加水分解し、ならびに、式(VIb)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸、または式(VIa)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸を調製し、その後、塩素化して、X=Clの式(VII)の5−クロロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロリドを得ること、または式(I)の5−フルオロ−1−アルキル−3−フルオロアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロリドを得ることは、WO2005/123690に記載されているとおりに行われる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、上述の段階は、生成した中間体の一時的な単離をすることなく行うことができる。
【0041】
本発明の付加的な主題は、該方法で生成した中間体、5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル(III−1)と5−フルオロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル(V−1)であり、これらは、本発明の方法によって、1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルの反応を経る。
【0042】
式(I)の5−フルオロ−1,3−ジアルキル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリドの本発明による調製を、次に示す実施例で説明し、上述の説明をさらに例示する。しかしながら、実施例は、限定する方法で解釈されない。
【実施例】
【0043】
調製例
[
実施例1]
5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル(III−1)
【0044】
【化7】
20.25g(100mmol)の1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル、および40mlのSO
2Cl
2を、アルゴン下に供し、この混合物を60℃に加熱し、8時間この温度で撹拌する。この混合物を酢酸エチルによって希釈後、水で洗浄し、真空下で溶媒を除去し、21gの生成物を94%のHPLC純度で得る。M.p.37−39℃。
【0045】
1H NMR(CDCl
3):δ=7.1(1Н,t)、4.3(q,2H)、3.9(s,3H)、1.4(t,3H)ppm。
【0046】
19F NMR(CD
3CN):δ=−114.9(2F,t)ppm。
【0047】
[
実施例2]
5−フルオロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル
【0048】
【化8】
9.63g(166mmol)のスプレー乾燥したフッ化カリウム、23.8g(100mmol)の5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル(II−I)、および150mlのスルホランを、急速に撹拌しながら、190℃に加熱する。この反応を、8時間後に終了させる(GCのモニタリング)。反応混合物を周囲温度まで冷却し、水を500mlの全容積になるように加え、反応混合物を2×150mlの酢酸エチルで洗浄する。合わせた有機相を、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、蒸発させる。93%の純度の20gの生成物を得る。茶色の固形物の形態の5−フルオロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルを、さらなる精製をせずに、さらに反応させる。
【0049】
[
実施例3]
5−フルオロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロリド(I−1)
【0050】
【化9】
100mlのトルエンおよび50mlの10%NaOH中22.3g(100mmol)の5−フルオロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルの溶液を、3時間ATで撹拌する。水相を分離し、HClによってpH5に調整する。クロロベンゼンによって生成物を抽出し、有機相を共沸乾燥した後、23.8g(200mmol)のSOCl
2を溶液に加え、この混合物を、80℃で2時間加熱する。反応混合物を蒸発させた後、20.1gの生成物を、98%の純度(GC)で、油として得る。
【0051】
1H NMR(CD
3CN):δ=6.88(1Н,t)、3.7(3Н,s)ppm。
【0052】
[
実施例4]
5−フルオロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボニルフルオリド
【0053】
【化10】
14.2g(250mmol)のスプレー乾燥したフッ化カリウム、22.8g(100mmol)の5−クロロ−1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロリド、および40mlのスルホランを、急速に撹拌しながら、155℃に加熱する。この反応を、8時間後に終了させる(GCのモニタリング)。100℃で真空下(1mbar)におけるカラムを介して反応混合物から直接蒸留することによって、およそ20から30%のスルホランを依然として含む、28gの生成物を得る。Vigreuxカラムによる第2の蒸留によって、油の形態の15.68gの生成物(80%の収率)を得る。
【0054】
GC/MS:m/z 196。