特許第5820103号(P5820103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5820103
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】タイヤ成型システム
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/26 20060101AFI20151104BHJP
【FI】
   B29D30/26
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-180492(P2010-180492)
(22)【出願日】2010年8月11日
(65)【公開番号】特開2012-35604(P2012-35604A)
(43)【公開日】2012年2月23日
【審査請求日】2013年6月10日
【審判番号】不服2014-24190(P2014-24190/J1)
【審判請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100178685
【弁理士】
【氏名又は名称】田浦 弘達
(72)【発明者】
【氏名】小川 裕一郎
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 櫻田 正紀
【審判官】 平田 信勝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−25321号公報(JP,A)
【文献】 特開平4−128403号公報(JP,A)
【文献】 実開平2−53212号公報(JP,U)
【文献】 特開平1−238889号公報(JP,A)
【文献】 実開昭57−16968号公報(JP,U)
【文献】 特開平6−336701号公報(JP,A)
【文献】 特開2006−214269号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成型ステーションと、隣接する成型ステーション間を連結するレールと、各成型ステーションに配設した複数のドラムと、タイヤ構成部材を保持した状態で、前記レール上を移動して、一の成型ステーションのドラムから、他の成型ステーションのドラムまでタイヤ構成部材を搬送する搬送装置とを具えるタイヤ成型システムであって、
前記レールを、搬送装置とドラムとの間でのタイヤ構成部材の受渡し領域のそれぞれに敷設される固定レール部材、および、鉛直方向の敷設高さが互いに異なる固定レール部材どうしを連結する1つの可撓性レール部材で構成し、
前記可撓性レール部材は、平坦面状の上面を前記搬送装置が走行し、可撓性材料で形成される一対の走行案内部と、当該一対の走行案内部の下面側であって前記走行案内部の両端部側に、当該走行案内部の延在方向に間隔をおいて一対ずつ配設した支持台と、当該一対の走行案内部および当該一対の支持台の相互を連結する枕木とを備えるタイヤ成型システム。
【請求項2】
前記可撓性レール部材を、水平面内で迂曲して固定レール部材どうしを連結するものとしてなる請求項1に記載のタイヤ成型システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の成型ステーションのそれぞれに芯出し配置したドラム間で、搬送装置によるタイヤ構成部材の受渡しを行う、たとえば、グリーンケースの成型に供されるタイヤ成型システムに関するものであり、とくに、ドラムの据付配置および、その据付位置の修正を、ドラムや、搬送装置その他の周辺装置の組付け精度、ドラム設置面の凹凸等のいかんによらず、短時間で容易に行うことを可能とし、併せて、搬送装置とドラムとの間での、タイヤ構成部材の、適正にして確実なる受渡しを容易なものとする技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のタイヤ成型システムとしては、特許文献1、2に記載されたものがある。
これらのタイヤ成型システムは、各成型ステーションで、ドラム上に割り当てられた所定の作業を行うとともに、搬送装置によって、一の成型ステーションのドラム上で成型された円筒状のタイヤ構成部材を外周側から保持した状態で、その搬送装置を、成型ステーション間を連結するレール上で移動させて、タイヤ構成部材を、他の成型ステーションまで搬送するものであり、これらによれば、各工程のオートメーション化に伴うタイヤの生産能率の向上、製造コストの低減等を図ることができる。
【0003】
なお、このようなタイヤ成型システムを用いた生タイヤの成型方法として、出願人は先に、特願2010−117388号で、生タイヤを成型する成型ドラムとは別個のドラム上で、シート状カーカスプライ素材の両端面の相互を突き合わせ接合して、形成された円筒体を、搬送装置によって、成型ドラム上で成形した他のタイヤ構成部材、たとえばインナーライナ素材等の周りに吸着搬送する方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−500446号公報
【特許文献2】特開2003−236946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したようなタイヤ成型システムでは、複数の成型ステーションにわたって連続した、たとえば直線状の対をなす高剛性レールを、相互に平行に敷設することから、レールに変位をもたせることが困難であり、成型システムの設置に際し、各成型ステーションにドラムを据付配置するに当っては、はじめに、第1台目のドラムを据付配置した後、たとえば全成型ステーションにわたる直線状レールを、そのドラムを基準として所定の位置に正確に敷設し、次いで、搬送装置の中心軸線が、第1台目のドラムの中心軸線と一致するように、搬送装置をレール上に設置し、しかる後、このようにして設置した搬送装置の中心軸線に、第1台目のドラムに隣接する第2台目のドラムの中心軸線を一致させて、第2台目のドラムを据付配置するという作業を繰り返し行い、複数のドラムを順番に据付けなければならず、また、最終的に全てのドラムおよび搬送装置の中心軸線を相互に一致させることが必要になるため、ドラムの位置決め配置に多大な時間を要し、成型ドラム等の設置作業能率を向上させることができないという問題があった。
【0006】
しかも、上記の作業を行って各ドラムを正確に据付配置しても、搬送装置および成型ドラムの組付け精度や、設置面の凹凸の影響を受けるレールの敷設状態等のいかんによっては、ドラムの中心軸線と、搬送装置の中心軸線との間に微小なずれが生じる場合があり、このような微小なずれを修正するために一のドラムの設置位置を変更するときは、上述したような据付配置の際と同様の手順で、全てのドラム等を再度設置し直すことが必要になるので、微小なずれを含んだまま、成型システムを稼動させているのが現状であった。
【0007】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、搬送装置等の組付け精度や、レール設置面の凹凸等のいかんによらず、ドラム等の据付配置および、その据付位置の修正を、短時間のうちで容易に行うことができ、また、システムの稼動に当っては、ドラムと搬送装置との間で、タイヤ構成部材を常に正確に、かつ確実に受け渡すことができるタイヤ成型システムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のタイヤ成型システムは、複数の成型ステーションと、隣接する成型ステーション間を連結するレールと、各成型ステーションに配設した複数のドラムと、たとえば、円筒状のタイヤ構成部材を外周面側から保持した状態で、前記レール上を移動して、一の成型ステーションのドラムから、他の成型ステーションのドラムまでタイヤ構成部材を搬送する搬送装置とを具えるタイヤ成型システムであって、前記レールを、搬送装置とドラムとの間でのタイヤ構成部材の受渡し領域に敷設される固定レール部材、および、鉛直方向の敷設高さが互いに異なる固定レール部材どうしを連結する、たとえば、鉛直方向に容易に湾曲させることができる1つの可撓性レール部材で構成し、前記可撓性レール部材は、平坦面状の上面を前記搬送装置が走行し、可撓性材料で形成される一対の走行案内部と、当該一対の走行案内部の下面側であって前記走行案内部の両端部側に、当該走行案内部の延在方向に間隔をおいて一対ずつ配設した支持台と、当該一対の走行案内部および当該一対の支持台の相互を連結する枕木とを備えてなるものである。
【0009】
ここで好ましくは、前記可撓性レール部材を、水平面内で迂曲して固定レール部材どうしを連結するものとする。
【発明の効果】
【0010】
この発明のタイヤ成型システムによれば、各成型ステーションへの、ドラムの芯出し配置の際に、搬送装置とドラムとの間でのタイヤ構成部材の受渡し領域における、各固定レール部材の敷設高さを所要に応じて適宜設定することで、たとえば円筒状のタイヤ構成部材を搬送する、固定レール部材上の搬送装置の中心軸線位置を、ドラムの中心軸線位置に対し、設置床面の状態や、ドラムそれ自体の組付け精度等に応じて、ドラム毎に調整できることから、それぞれのステーションでは、ドラムの据付配置および、その据付位置の修正等を相互の独立下にて行うことによって、そのような配置や修正に要する時間が飛躍的に低減されて、ドラムの位置決めに際する作業能率を大きく向上させることができる。
また、ドラムの中心軸線と、搬送装置の中心軸線との微小なずれは、そのドラムの前記受渡し領域に敷設された固定レール部材の高さを変更することで個々に容易に修正できるため、ドラムと搬送装置との間で、タイヤ構成部材を、常に正確かつ確実に受け渡すことが可能となる。
【0011】
そしてここでは、鉛直方向に変形可能な可撓性レール部材によって、上述したように、ドラムの中心軸線位置を調整するために鉛直方向に互いに異なる高さで敷設された固定レール部材どうしを連結することで、搬送装置の、成型ステーション間での円滑なる走行を担保することができる。
【0012】
ここにおいて、前記可撓性レール部材を、水平面内で迂曲して固定レール部材どうしを連結するものとしたときは、固定レール部材の敷設位置の選択を、より柔軟に行うことができるので、固定レール部材上に設置した搬送装置の中心軸線位置の調整の自由度が高くなって、さらなる微調整が可能となり、これがため、システムの稼動に際し、搬送装置とドラムとの間でのタイヤ構成部材の受渡しを、高い精度の下にて行うことができ、また、搬送装置の中心軸線位置の調整を一層容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の一の実施形態のタイヤ成型システムを概略的に示す正面図である。
図2図1に示す可撓性レール部材の部分斜視図である。
図3】他の実施形態のタイヤ成型システムを概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、二箇所の成型ステーションを有するタイヤ成型システムを例示するが、成型ステーションは三箇所以上設けることも可能であり、また、複数の作業ステーションのそれぞれをオーバル状に配設することも可能である。
図示のタイヤ成型システムは、二箇所の成型ステーション1、2と、それらの成型ステーション1、2の相互を連結する一対のレール3と、それぞれの成型ステーション1、2に配設した二個のドラム4、5と、たとえば、図示しない円筒状タイヤ構成部材を外周面側から保持した状態で、レール3上を移動する搬送装置6とを具えてなるものである。
【0015】
ここで、この発明では、一対のレール3を、図1に示すように、各ドラム4、5と搬送装置6との間での、タイヤ構成部材の受渡し領域のそれぞれに敷設される固定レール部材7、8と、鉛直方向の敷設高さが互いに異なる両固定レール部材7、8の相互を連結する可撓性レール部材9とで構成する。
この可撓性レール部材9は、図2に、斜視図で例示するように、一対の走行案内部9aからなるものであり、これらの走行案内部9aは、たとえば、炭素鋼等の可撓性材料にて構成することができる。
【0016】
そして、レール3上に設置される搬送装置6は、レール3上での所要の走行を可能とするため、たとえば、タイヤ構成部材を外周面側から吸着把持する一対の保持機構6aの下部に、一対のレール3間の、図2に示すようなラック10と噛合するとともに、図示しないモータから回転駆動力を付与される、これもまた図示しないピニオンを具えてなり、レール3上での装置6の走行は、レール3に嵌合してレール3上で摺動するスライドベアリング6bを搬送装置6に設けることによって案内する。
なお、このようなラック・ピニオンからなる駆動機構に代えて、図示は省略するが、モータ駆動のチェーンやタイミングベルトなどの様々な駆動機構によって、搬送装置をレール上で走行させることができる。
【0017】
ここにおいて、上記の可撓性レール部材9の走行案内部9aの、厚み等の寸法は、搬送装置6が走行した際に、走行案内部9aに作用する最大応力が、たとえば、その材料の降伏強さにより定めた許容最大応力の範囲内となり、また、走行案内部9aの変形量が、所定の許容変形量の範囲内となるように選択することが好ましい。
ところで、可撓性レール部材9の走行案内部9aの下面側には、走行案内部9aの延在方向に所要の間隔をおいて、支持台9bを配設することができるが、この場合においても、上述したような走行案内部9aへの最大応力や、走行案内部9aの最大変形量が許容範囲内となるように、支持台9bの個数や配設位置を選択することが好ましい。
【0018】
またここで、システムの稼動に際し、レール3上で、搬送装置6のスライドベアリング6bを十分円滑に摺動させるため、搬送装置6の走行時に、可撓性レール部材9の一対の走行案内部9aが、所要の平行度を確保できるように、可撓性レール部材9を構成すべきである。
また、一対の可撓性レール部材9間に配設したラック10についても、搬送装置6のピニオンからの、ラック10への駆動力の伝達を確実なものとするため、可撓性レール部材9の走行案内部9aに対する平行度を所定の許容範囲内とすることが好ましい。
【0019】
このような、一対の走行案内部9aおよびラック10の相互の平行度を確保するため、たとえば図2に例示する可撓性レール部材9のように、走行案内部9aの下面側に配設した一対の支持台9bの相互を連結する一以上の枕木9cを設けることができる。
【0020】
ところで、タイヤ成型システムの稼働時の、たとえば、ドラム4から搬送装置6へのタイヤ構成部材の引き渡しに際しては、ドラム4上で形成された、図示しない円筒状のタイヤ構成部材を、搬送装置6で取り囲んで、そのタイヤ構成部材を、搬送装置6の、略環状をなす部材保持機構6aの内側に保持させることから、ドラム4、5、レール3および搬送装置6のそれぞれを設置するに当っては、ドラム4、5の中心軸線位置C4、C5のそれぞれに、搬送装置6、直接的には環状保持機構6aの中心軸線位置C6を正確に整合させることが必要となる。
【0021】
そこで、図1に示す成型システムでは、ドラム4、5と搬送装置6との間でのタイヤ構成部材の受渡し領域における、固定レール部材7、8のそれぞれの敷設高さを適宜設定し、ドラム4、5や搬送装置6の組付け精度、レール3の設置面の凹凸等のいかんによらず、それぞれの成型ステーション1、2のドラム4、5の相互の独立下で、固定レール部材7、8上の搬送装置6の中心軸線C6位置を、それらの固定レール部材7、8をもって、それぞれのドラム4、5の中心軸線C4、C5位置に対して調整することで、システムの設置に際するドラム4、5の据付配置や、その後の、ドラム4、5の据付位置の修正等を、短時間のうちに容易に行うことができ、また、それらの中心軸線C4、C5位置の微小なずれをも簡易・迅速に修正して、タイヤ構成部材の、適正にして確実なる受渡しを実現することができる。
【0022】
なお、図1に示すところでは、大部分が設置面の凹凸に起因する、ドラム中心軸線C4とC5との鉛直方向のずれ量、すなわち離隔距離Dは、たとえば1mm程度の小さなものであり、このような離隔距離Dが、可撓性レール部材9を構成する材料等に応じて定まる可撓性レール部材9の許容変形量の範囲内に収まるように、システム全体を設計することが好ましい。
【0023】
ここにおいて、図3に平面図で概略的に示すように、成型システムの可撓性レール部材29を、水平面内での迂曲姿勢で、固定レール部材27、28どうしを連結するものとしたときは、ドラム中心軸線C24、C25に対する、搬送装置26の中心軸線C26の位置決めのための、固定レール部材27、28の敷設位置の調整をより一層柔軟に行うことができる。
すなわち、この場合は、ドラム中心軸線C24とドラム中心軸線C25との鉛直方向のずれのみならず、水平面内での微小なずれをも修正可能として、レール23上を走行する搬送装置26による、これらのドラム24、25間でのタイヤ構成部材の受渡しを実現することができる。
そして、このような可撓性レール部材29もまた、たとえば、炭素鋼その他の可撓性材料にて構成することができる。
【0024】
以上に述べたところでは、搬送手段を、カーカスバンド等の円筒状タイヤ構成部材を搬送するものとしたが、この搬送手段は、レール上を走行してタイヤ構成部材を搬送するものであれば、上記の搬送手段に限定されることはなく、たとえば、図示は省略するが、ビードコア素材を磁気吸着等により保持した状態で搬送するものとすることができる他、シート状のタイヤ構成部材を搬送するものとすることも可能である。
【符号の説明】
【0025】
1、2、21、22 成型ステーション
3、23 レール
4、5、24、25 ドラム
6、26 搬送装置
6a 保持機構
6b スライドベアリング
7、8、27、28 固定レール部材
9、29 可撓性レール部材
9a 走行案内部
9b 支持台
9c 枕木
10 ラック
C4、C5、C24、C25 ドラム中心軸線
C6、C26 搬送装置の中心軸線
D 離隔距離
図1
図2
図3