【実施例】
【0030】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
[カリックスレゾルシンアレーン環状オリゴマーの調製]
〈調製例1〉
10mLナスフラスコ内において、エチレングリコール3mLにレゾルシノール0.74g(6.7mmol,官能基当量13.4mmol)を溶解させた。得られた溶液に、氷冷下にて1,6−ヘキサンジアール0.19g(1.7mmol,官能基当量3.4mmol)を滴下し、更に触媒としてトリフルオロ酢酸18mmolを滴下し、攪拌下に80℃で48時間加熱することにより反応させた。次いで、得られた反応溶液を水に注ぎ、生成物を沈殿させ、濾別した後、沈殿物をメタノールで洗浄し、室温で24時間減圧乾燥することにより、赤色固体よりなる生成物を得た。生成物の収量は0.1434g、収率は28%であった。
得られた生成物について、IR分析およびNMR分析を行った結果、生成物は、下記式(2−1)で表されるカリックスレゾルシンアレーン環状オリゴマーであることが確認された。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)を測定したところ、数平均分子量(Mn)が1882、分子量分布が1.04であった。以下、この生成物を「環状オリゴマー(2−1)」とする。
【0032】
【化6】
【0033】
IR分析およびNMR分析の結果を下記に示し、IRスペクトル図を
図1に、
1H−NMRスペクトル図を
図2に示す。
IR (KRS,cm
-1)
3332(νO−H hydoroxyl),2931,2858(νCH methylen),1620,1501,1443(νC=C aromatic)
1H−NMR(600MHz,CDCl
3 −d
6 ,TMS)
δppm:1.25−2.39(m,32.0H,H
a andH
b ),4.18(s,7.9H,H
c ),6.19(s,8.0H,H
c ),7.17(s,8.0H,H
d ),9.08(16.0H,H
f )
【0034】
〈調製例2〉
25mLナスフラスコ内において、エチレングリコール3mLにレゾルシノール0.74g(6.67mmol,官能基当量13.4mmol)を溶解させた。得られた溶液に、氷冷下にて1,9−ノナンジアール0.261g(1.7mmol,官能基当量3.4mmol)を滴下し、更に触媒としてトリフルオロ酢酸11.25mmolを滴下し、攪拌下に90℃で48時間加熱することにより反応させた。次いで、得られた反応溶液を水に注ぎ、生成物を沈殿させ、濾別した後、沈殿物をメタノールて洗浄し、室温で24時間減圧乾燥することにより、赤色固体よりなる生成物を得た。収率は46%であった。
得られた生成物について、IR分析およびNMR分析を行った結果、生成物は、下記式(2−2)で表されるカリックスレゾルシンアレーン環状オリゴマーであることが確認された。以下、この生成物を「環状オリゴマー(2−2)」とする。
【0035】
【化7】
【0036】
[特定の環状オリゴマー誘導体の合成]
〈合成例1〉
20mL二つ口ナスフラスコに、環状オリゴマー(2−1)1.2g (1mmol,水酸基当量16mmol)、炭酸カリウム2.2g(16mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.52(1.61mmol,環状オリゴマー(2−1)の水酸基に対して10mol%)を入れ、ナスフラスコ内を窒素で置換した後、N−メチルピロリジン5mLを加えて環状オリゴマー(2−1)を溶解した。得られた溶液に、ブロモ酢酸エチル2.65mL(24mmol,環状オリゴマー(2−1)の水酸基1当量に対して1.5当量)を加え、60℃で48時間反応させた。次いで、反応溶液をクロロホルムによって希釈し、得られた希釈液に対して、水で3回、飽和食塩水で1回分液操作を行った。得られた溶液の有機相を回収して無水硫酸マグネシウムよりなる乾燥剤で乾燥処理し、乾燥剤を濾別した後、濃縮して、メタノールに注ぎ、生成物を沈殿させた。この生成物を24時間減圧乾燥し、白色固体を得た。得られた生成物の収量は0.614g、収率は24%であった。
得られた生成物についてIR分析およびNMR分析を行ったところ、下記式(1−1)で表される特定の環状オリゴマー誘導体であることが確認された。
また、IR分析の結果から、水酸基によるピークが消失していることが確認され、このことから、水酸基に係る水素原子の99%以上が上記式(a)で表される基に置換されていることが確認された。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)を測定したところ、数平均分子量(Mn)が2150、分子量分布が1.01であった。
以下、この特定の環状オリゴマー誘導体を「環状オリゴマー誘導体(1−1)」とする。
【0037】
【化8】
【0038】
また、IR分析およびNMR分析の結果を下記に示し、IRスペクトル図を
図3に、
1H−NMRスペクトル図を
図4に示す。
IR (KRS,cm
-1)
2982,2931,2859(νCH methylen),1759,1753(νC=O carbonyl),1611,1587(νC=C aromatic),1207,1181(νC−O−C ester)
1H−NMR(600MHz,CDCl
3 −d
6 ,TMS)
δppm:0.99−1.29(br,49.7H,H
b ),1.84(bs,15.5H,H
a andH
c ),6.00−7.72(m,16.0H,H
e andH
d )
【0039】
〈合成例2〉
20mL二つ口ナスフラスコに、環状オリゴマー(2−2)1.84g (0.9mmol,水酸基当量21mmol)、炭酸カリウム3.23g(21mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.64(1.99mmol,環状オリゴマー(2−2)の水酸基に対して10mol%)を入れ、ナスフラスコ内を窒素で置換した後、N−メチルピロリジン4mLを加えて環状オリゴマー(2−2)を溶解した。得られた溶液に、ブロモ酢酸エチル3.7mL(32mmol,環状オリゴマー(2−2)の水酸基1当量に対して1.5当量)を加え、60℃で48時間反応させた。次いで、反応溶液をクロロホルムによって希釈し、得られた希釈液に対して、水で3回、飽和食塩水で1回分液操作を行った。得られた溶液の有機相を回収して無水硫酸マグネシウムよりなる乾燥剤で乾燥処理し、乾燥剤を濾別した後、濃縮して、メタノールに注ぎ、生成物を沈殿させた。この生成物を24時間減圧乾燥し、白色固体を得た。得られた生成物の収量は1.06g、収率は28%であった。
得られた生成物についてIR分析およびNMR分析を行ったところ、下記式(1−2)で表される特定の環状オリゴマー誘導体であることが確認された。
また、IR分析の結果から、水酸基によるピークが消失していることが確認され、このことから、水酸基に係る水素原子の99%以上が上記式(a)で表される基に置換されていることが確認された。
以下、この特定の環状オリゴマー誘導体を「環状オリゴマー誘導体(1−2)」とする。
【0040】
【化9】
【0041】
また、IR分析およびNMR分析の結果を下記に示し、IRスペクトル図を
図5に、
1H−NMRスペクトル図を
図6に示す。
IR (KRS,cm
-1)
2981,2925,2853(νC−H),1759,1732(νC=O),1203,1185(νC−O −C)
1H−NMR(600MHz,CDCl
3 ,TMS)
δppm:1.12−1.27(m,137H,H
b andH
f ),1.78,1.83(bs,28H,H
a ),4.15−4.22(m,70H,H
g ),4.33−4.39(m,22H,H
c ),4.61(s,15H,H
h ),6.15,6.22(s,12H,H
e ),6.44,6.80(s,12H,H
d )
【0042】
[包接機能試験]
〈試験例1〉
合成例1で得られた環状オリゴマー誘導体(1−1)を塩化メチレンに濃度が2.5×10
-4mol/dm
3 となるよう溶解し、得られた溶液4mLに、濃度が2.5×10
-4mol/dm
3 のピクリン酸セリウム水溶液4mLを加え、24時間室温で攪拌した後、静沈させ、水溶液(水相)を回収した。そして、回収された水溶液および上記のピクリン酸セリウム水溶液の各々にについて、金属イオン(セリウムイオン)による紫外可視吸光スペクトルを測定することにより、特定の環状オリゴマー誘導体によって包接された金属イオン(セリウムイオン)の割合(以下、「イオン包接率」という。)を求めた。結果を下記表1に示す。
【0043】
〈試験例2〉
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10
-4mol/dm
3 のピクリン酸ルビジウム水溶液4mLを用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
【0044】
〈試験例3〉
環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりに合成例2で得られた環状オリゴマー誘導体(1−2)を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
【0045】
〈試験例4〉
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10
-4mol/dm
3 のピクリン酸ルビジウム水溶液4mLを用い、環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりに合成例2で得られた環状オリゴマー誘導体(1−2)を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
【0046】
〈試験例5〉
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10
-4mol/dm
3 のピクリン酸マグネシウム水溶液4mLを用い、環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりに合成例2で得られた環状オリゴマー誘導体(1−2)を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
【0047】
〈試験例6〉
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10
-4mol/dm
3 のピクリン酸銀水溶液4mLを用い、環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりに合成例2で得られた環状オリゴマー誘導体(1−2)を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
【0048】
〈比較試験例1〉
環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりに下記式(c1)で表されるカリックスレゾルシンアレーン誘導体(以下、「CRA誘導体」という。)を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
【0049】
【化10】
【0050】
〈比較試験例2〉
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10
-4mol/dm
3 のピクリン酸ルビジウム水溶液4mLを用い、環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりにCRA誘導体を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
【0051】
〈比較試験例3〉
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10
-4mol/dm
3 のピクリン酸マグネシウム水溶液4mLを用い、環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりにCRA誘導体を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
【0052】
〈比較試験例4〉
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10
-4mol/dm
3 のピクリン酸銀水溶液4mLを用い、環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりCRA誘導体を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1の結果から明らかなように、環状オリゴマー誘導体(1−1)および環状オリゴマー誘導体(1−2)は、種々の金属イオンを包接する包接機能を有するものであることが理解される。
これに対して、CRA誘導体においては、金属イオンを包接する包接機能が認められなかった。