特許第5820265号(P5820265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5820265
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】裏面電極型太陽電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20151104BHJP
【FI】
   H01L31/04 420
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-279126(P2011-279126)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-131586(P2013-131586A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年9月18日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽エネルギー技術研究開発 太陽光発電システム次世代高性能技術の開発 極限シリコン結晶太陽電池の研究開発(次世代超薄型結晶シリコン太陽電池の低コスト・高効率化プロセス開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稗田 健
【審査官】 小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/105554(WO,A1)
【文献】 特開2009−200267(JP,A)
【文献】 特開2000−340811(JP,A)
【文献】 特開2005−101427(JP,A)
【文献】 特開2010−123859(JP,A)
【文献】 特開2005−101151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078
H01L 31/18−31/20
H01L 51/42−51/48
H02S 10/00−10/40
H02S 30/00−50/15
H02S 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の裏面の一部に、i型非晶質半導体層及び第1導電型の非晶質半導体層を積層する第1工程と、
前記第1導電型の非晶質半導体層に一部重複させて、絶縁層を形成することなく、i型非晶質半導体層及び第2導電型の非晶質半導体層を積層する第2工程と、
前記第1導電型の非晶質半導体層及び前記第2導電型の非晶質半導体層上に、絶縁層を形成することなく、電極を形成する第3工程と、
前記第1導電型の非晶質半導体層と前記第2導電型の非晶質半導体層の重複領域の上方の、前記電極をウエットエッチングで除去する第4工程を備えた裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記第4工程は、フォトリソグラフィ法により行われる請求項1に記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記第1導電型は、n型である請求項1または2に記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記第3工程は、スパッタリング法により透明電極を形成し、蒸着法により前記透明電極上に金属電極を形成する請求項1〜3のいずれかに記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記第1工程及び前記第2工程の処理温度は、他の工程の処理温度よりも高い請求項1〜4のいずれかに記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記第1工程及び前記第2工程の処理温度は、120℃〜200℃である請求項5に記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項7】
半導体基板の裏面側に設けられた第1導電型の非晶質半導体層と、
前記半導体基板の裏面側に、前記第1導電型の非晶質半導体層と接することなくi型非晶質半導体層を介して一部重複するように設けられた第2導電型の非晶質半導体層と、
前記第1導電型の非晶質半導体層上に、絶縁層を介在することなく設けられた第1電極と、
前記第2導電型の非晶質半導体層上に、絶縁層を介在することなく設けられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2導電型の非晶質半導体層とが接触せずに前記第1電極と前記第2電極とを分離するように、前記第1導電型の非晶質半導体層と前記第2導電型の非晶質半導体層との重複領域の少なくとも一部上に設けられた分離部とを備え、
前記第1導電型の非晶質半導体層と前記第2導電型の非晶質半導体層との間に、前記i型非晶質半導体層とは別に絶縁層を介在しておらず、
前記分離部の一方の側面を構成する前記第1電極の端面と角を成す該第1電極の面が端部で前記第1導電型の非晶質半導体層に接しており、前記分離部の他方の側面を構成する前記第2電極の端面と角を成す該第2電極の面が端部で前記第2導電型の非晶質半導体層に接している裏面電極型太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面電極型太陽電池及びその製造方法、特に、裏面電極型太陽電池の入射光側の反対の面である裏面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光エネルギを電気エネルギに直接変換する太陽電池は、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギ源として関心が高まっている。太陽電池の種類には、化合物半導体や有機物の材料を用いたものなど多くの種類があるが、主流はシリコン結晶を用いた太陽電池である。シリコン結晶を用いた太陽電池では、例えば、入射光側である受光面にn型半導体拡散層、裏面にp型半導体拡散層が形成されている両面電極型の太陽電池が広く開発されている。
【0003】
また、高い光電変換効率を目指して、裏面にn型半導体拡散層とp型半導体拡散層を形成することによって受光面の受光面積を大きくし、光吸収による電流を大きくした裏面電極型太陽電池が開発されている。また、拡散層の代わりに、i層と、p層/n層のアモルファスシリコン層を用いることによって、開放電圧を大きくしたヘテロ接合型太陽電池が開発されている。さらに、特許文献1には、上記に述べた2種類の太陽電池を組み合わせたヘテロ接合型の裏面電極型太陽電池が示されている。
【0004】
図3は、特許文献1に開示されている裏面電極型太陽電池の裏面側の平面図である。裏面電極型太陽電池110の裏面には、収集電極層120が形成されている。111は半導体基板、116は絶縁層、120aはp側電極層、120bはn側電極層である。
【0005】
図4は、図3のA−A線における断面図である。半導体基板111の裏面には、第1半導体層112及び第2半導体層114が形成されている。第1半導体層112は、半導体基板111の裏面側から順次積層された、i型アモルファスシリコン層とp型アモルファスシリコン層によって構成されている。また、第2半導体層114は、半導体基板111の裏面側から順次積層された、i型アモルファスシリコン層とn型アモルファスシリコン層によって構成されている。
【0006】
絶縁層116は、第2半導体層114上から第1半導体層112上まで跨って形成されている。透明電極層118は、第1半導体層112及び第2半導体層114を覆っており、一対の絶縁層116上に跨って形成されている。そして、収集電極層120は、透明電極層118上に形成されている。
【0007】
ここで、透明電極層118と収集電極層120は、絶縁層116上において第1方向に沿って形成される分離溝130によって分離される。分離溝130は、レーザ光の照射によって、透明電極層118と収集電極層120とを第1方向に沿って除去することにより形成される。これにより、収集電極層120は、第1半導体層112上に配置されるp側電極層120aと、第2半導体層114上に配置されるn側電極層120bとに分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−200267号公報(平成21年9月3日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の裏面電極型太陽電池110では、分離溝130を形成するためのレーザ光が第1半導体層112及び第2半導体層114に照射されないように、絶縁層116が形成されている。一般的に、絶縁層116の形成温度は、350℃〜1000℃で、第1半導体層112及び第2半導体層114のようなアモルファス半導体層の形成温度は、120〜200℃である。
【0010】
しかしながら、第1半導体層112及び第2半導体層114の形成後に、第1半導体層112及び第2半導体層114の形成時よりも処理温度の高い工程があると、第1半導体層112、第2半導体層114及び半導体基板111のキャリアライフタイムを低減させてしまうことになる。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体層及び半導体基板のキャリアライフタイムの低減を抑制することが可能な裏面電極型太陽電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法は、半導体基板の裏面の一部に、i型非晶質半導体層及び第1導電型の非晶質半導体層を積層する第1工程と、第1導電型の非晶質半導体層に一部重複させて、絶縁層を形成することなく、i型非晶質半導体層及び第2導電型の非晶質半導体層を積層する第2工程と、第1導電型の非晶質半導体層及び第2導電型の非晶質半導体層上に、絶縁層を形成することなく、電極を形成する第3工程と、第1導電型の非晶質半導体層と第2導電型の非晶質半導体層の重複領域の上方の、電極をウエットエッチングで除去する第4工程を備える。
【0013】
ここで、本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法は、第工程は、フォトリソグラフィ法により行われてもよい。
【0014】
また、本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法は、第1導電型は、n型であってもよい。
【0015】
また、本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法は、第3工程は、スパッタリング法により透明電極を形成し、蒸着法により透明電極上に金属電極を形成してもよい。
【0016】
また、本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法は、第1工程及び第2工程の処理温度は、他の工程の処理温度よりも高くてもよい。
【0017】
また、本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法は、第1工程及び第2工程の処理温度は、120℃〜200℃であってもよい。
本発明の裏面電極型太陽電池は、半導体基板の裏面側に設けられた第1導電型の非晶質半導体層と、半導体基板の裏面側に、第1導電型の非晶質半導体層と接することなくi型非晶質半導体層を介して一部重複するように設けられた第2導電型の非晶質半導体層と、第1導電型の非晶質半導体層上に、絶縁層を介在することなく設けられた第1電極と、第2導電型の非晶質半導体層上に、絶縁層を介在することなく設けられた第2電極と、第1電極と第2導電型の非晶質半導体層とが接触せずに第1電極と第2電極とを分離するように、第1導電型の非晶質半導体層と第2導電型の非晶質半導体層との重複領域の少なくとも一部上に設けられた分離部とを備え、第1導電型の非晶質半導体層と第2導電型の非晶質半導体層との間に、i型非晶質半導体層とは別に絶縁層を介在しておらず、分離部の一方の側面を構成する第1電極の端面と角を成す該第1電極の面が端部で第1導電型の非晶質半導体層に接しており、分離部の他方の側面を構成する第2電極の端面と角を成す該第2電極の面が端部で第2導電型の非晶質半導体層に接している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、非晶質半導体層及び半導体基板のキャリアライフタイムの低減を抑制することが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の裏面電極型太陽電池の一例の模式的な断面構成図である。
図2】本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法の一例を示す模式的な図である。
図3】従来技術の裏面電極型太陽電池の裏面側の平面図である。
図4図3のA−A線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の裏面電極型太陽電池の一例の断面構成図である。図1は、裏面電極型太陽電池の入射光側の面と反対の面である裏面(以下、「裏面電極型太陽電池の裏面」という)側が上となっている。
【0021】
裏面電極型太陽電池11には、第1導電型であるn型半導体基板1の入射光側の面と反対の面である裏面(以下、「n型半導体基板の裏面」という)に、第1導電型であるn型領域8と、第2導電型であるp型領域9が形成されている。なお、図1では、説明の便宜上、n型領域8とp型領域9はそれぞれ1領域ずつしか示していないが、n型半導体基板1の裏面には、n型領域8とp型領域9は所定の間隔を空けて複数形成されている。
【0022】
n型領域8には、n型半導体基板1の裏面に、n型半導体基板1側より、真性のi型非晶質半導体層2、n型非晶質半導体層3が形成されている。そして、n型非晶質半導体層3上には第1導電型のn型用電極81が形成されている。n型用電極81は、n型非晶質半導体層3側より、n型用透明電極61、n型用金属電極71が形成されている。また、p型領域9には、n型半導体基板1の裏面に、n型半導体基板1側より、真性のi型非晶質半導体層4、p型非晶質半導体層5が形成されている。そして、p型非晶質半導体層5上には、第2導電型のp型用電極82が形成されている。p型用電極82は、p型非晶質半導体層5側より、p型用透明電極62、p型用金属電極72が形成されている。
【0023】
i型非晶質半導体層4、p型非晶質半導体層5は、i型非晶質半導体層2、n型非晶質半導体層3に一部重なるように形成されている。
【0024】
n型用電極81のエッジは、n型非晶質半導体層3上で、i型非晶質半導体層4、p型非晶質半導体層5と接触しないように形成されている。
【0025】
また、p型用電極82のエッジは、p型非晶質半導体層5上で、n型非晶質半導体層3と重複しない領域に形成されている。すなわち、p型用電極82の存在領域の下方には、i型非晶質半導体層2、n型非晶質半導体層3は存在しない。n型非晶質半導体層3とp型非晶質半導体層5が重複する領域にp型用電極82のエッジが形成されると、その真下に電流パスが形成されるので、光電変換効率が低下してしまうからである。
【0026】
なお、n型領域8、p型領域9のエッジは、それぞれ、n型用電極81、p型用電極82のエッジと一致する。
【0027】
このように、n型非晶質半導体層3とp型非晶質半導体層5を一部重複して形成することで、n型領域8とp型領域9の間は、n型半導体基板1の裏面が露出しないようにしている。
【0028】
以下に、本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法の一例を示す。
【0029】
図2は、図1に示す本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法の一例であり、n型半導体基板1の裏面側が上となっている。
【0030】
まず、図2(a)を用いて説明する。半導体インゴットからスライスするなどによりn型半導体基板1を用意する。ここで、n型半導体基板1としては、例えば、多結晶シリコン若しくは単結晶シリコンなどからなるシリコン基板、またはGaAsやInPなどの化合物半導体からなる化合物半導体基板等を用いることができる。使用するn型半導体基板1は、スライスによって生じたダメージを除去しており、n型半導体基板1の入射光側の面である受光面(以下、「n型半導体基板の受光面」という)には、テクスチャ構造である凹凸構造が形成されていてもよい。なお、本実施形態では、n型の単結晶シリコン基板を用いて説明する。
【0031】
次に、n型半導体基板1の裏面の一部の領域に遮蔽板91を被せる。その後、プラズマ気相成長法(plasma−enhanced chemical vapor deposition:PECVD)や原子堆積法(atomic layer deposition:ALD)などの方法を用いて、i型非晶質半導体層2及びn型非晶質半導体層3の順に形成する。ここで、i型非晶質半導体層2及びn型非晶質半導体層3の膜厚は、各々数nm〜50nm程度である。本実施形態では、i型非晶質半導体層2及びn型非晶質半導体層3をプラズマ気相成長法によって形成し、その際の形成温度は、120℃〜200℃であった。なお、i型非晶質半導体層2はシランを用い、n型非晶質半導体層3はホスフィンとシランを用いて形成する。
【0032】
次に、図2(b)に示すように、遮蔽板91を除去した後、n型非晶質半導体層3の一部に遮蔽板92を被せて、プラズマ気相成長法や原子堆積法などの方法を用いて、非晶質半導体層4及びp型非晶質半導体層5の順に形成する。遮蔽板92を被せた領域は、n型領域8となる。ここで、i型非晶質半導体層4及びp型非晶質半導体層5の膜厚は、各々数nm〜50nm程度である。本実施形態では、i型非晶質半導体層4及びp型非晶質半導体層5をプラズマ気相成長法によって形成し、その際の形成温度は、120℃〜200℃であった。なお、i型非晶質半導体層4はシランを用い、p型非晶質半導体層5はジボランとシランを用いて形成する。
【0033】
なお、n型非晶質半導体層3とp型非晶質半導体層5が直接接すると、接した領域はpn接合となり太陽電池の一部を形成することとなるが、一般的に、非晶質半導体の品質は、結晶半導体に比べ良くないため、非晶質半導体層が形成するpn接合の存在は、結果的に太陽電池の光電変換効率を低下させることになる。したがって、n型非晶質半導体層3とp型非晶質半導体層5は接しないことが望ましい。
【0034】
また、図2(b)において、成膜する際、遮蔽板92のエッジは、n型非晶質半導体層3が一部露出するように配置して、n型非晶質半導体層3とi型非晶質半導体層4の重複領域を形成する。n型半導体基板1が露出した領域ができると、n型半導体基板1表面のキャリアの再結合が増加することになるので、n型半導体基板1の露出部分がないようにすることが好ましい。そこで、n型非晶質半導体層3とi型非晶質半導体層4の重複領域を形成することによって、n型半導体基板1の露出を防ぐことができる。また、n型非晶質半導体層3とi型非晶質半導体層4の重複領域を形成することによって、n型非晶質半導体層3とp型非晶質半導体層5の間に、i型非晶質半導体層4が形成される。
【0035】
上記方法では、i型非晶質半導体層2及びi型非晶質半導体層4をそれぞれ別々に形成するが、まず、最初にn型半導体基板1の裏面全面にプラズマ気相成長法等を用いてi型非晶質半導体層を形成し、その後、n型非晶質半導体層3、p型非晶質半導体層5を順に形成してもよい。この場合、n型非晶質半導体層3とp型非晶質半導体層5の重複部分においては、n型層とp型層が接することになるが、わずかな領域なので太陽電池の特性に影響を与えることはない。
【0036】
次に、図2(c)に示すように、例えば、スパッタリング法等を用いて、n型非晶質半導体層3上と、p型非晶質半導体層5上に透明電極6を形成する。ここで、透明電極6としては、例えば、酸化インジウムスズ(indium tin oxide:ITO)や酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ等を用いることができる。本実施形態では、スパッタリング法でITOを形成した。その際の形成温度は、200℃以下であった。
【0037】
次に、図2(d)に示すように、例えば、蒸着法や印刷法を用いて、透明電極6上に金属電極7を形成する。ここで、金属電極7としては、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)等の単体の金属からなる電極、もしくは、異なる種類の金属を積層させた電極がある。本実施形態では、蒸着法でアルミニウムを形成した。
【0038】
次に、図2(e)に示すように、スピンコータ等を用いて、金属電極7上にフォトレジスト材10を塗布する。
【0039】
次に、図2(f)に示すように、フォトリソグラフィ法によってn型領域8とp型領域9の境界をパターニングする。この際、n型非晶質半導体層3とi型非晶質半導体層4の重複領域を含む領域の上方はフォトレジストが除去されるようにする。
【0040】
次に、図2(g)に示すように、n型用電極81及びp型用電極82を形成する。まず、金属電極7を溶解する水溶液に浸漬することで、金属電極7をウエットエッチングしてn型用電極71とp型用電極72に分離し、その後、透明電極6を溶解する水溶液に浸漬することで、透明電極6をウエットエッチングしてn型用透明電極61とp型用透明電極62に分離する。これによって、n型用電極81及びp型用電極82を形成する。
【0041】
この際、n型用電極71とp型用電極72の分離、n型用透明電極61とp型用透明電極62の分離は、いずれも、n型非晶質半導体層3とのエッジ、および、p型非晶質半導体層5のエッジを含む領域の上方で行う。つまり、n型用電極81のエッジは、n型非晶質半導体層3上にあり、p型用電極82のエッジは、n型非晶質半導体層3と重複しないp型非晶質半導体層5上にあるようにする。
【0042】
また、透明電極6を溶解する水溶液のみに浸漬させることにより、リフトオフ法で、パターニングされた領域の金属電極7及び透明電極6を除去することもできる。本実施形態では、塩酸水溶液に浸漬することで、パターニングに沿ってITOとアルミニウムの両方をウエットエッチングして除去した。その後、フォトレジスト材10を除去する。このようにして、裏面電極型太陽電池11を作製することができる。
【0043】
なお、上記方法では、透明電極6と金属電極7を形成した後に、フォトリソグラフィ法によりn型領域8とp型領域9に分離したが、透明電極6を形成した後にフォトリソグラフィ法によりn型用透明電極61とp型用透明電極62を分離し、その後、金属電極7を形成した後にフォトリソグラフィ法によりn型用金属電極71とp型用金属電極72に分離してもよい。
【0044】
本実施形態の製造方法において、非晶質半導体層の形成後は、非晶質半導体層の形成工程の処理温度と比較して、同程度か、より低い処理温度で、他の工程を行うことができるので、n型半導体基板1のバルク及び非晶質半導体層のキャリアライフタイムの低減を抑制することができる。したがって、n型半導体基板1及び非晶質半導体層にダメージも与えることなく、n型領域8とp型領域9に分離することができる。
【0045】
今回、n型単結晶シリコン基板について記載したが、p型単結晶シリコン基板でも同様の結果が得られた。
【符号の説明】
【0046】
1 n型半導体基板、2 i型非晶質半導体層、3 n型非晶質半導体層、4 i型非晶質半導体層、5 p型非晶質半導体層、6 透明電極、7 金属電極、8 n型領域、9 p型領域、10 フォトレジスト
材、11 裏面電極型太陽電池、61 n型用透明電極、62 p型用透明電極、71 n型用金属電極、72 p型用金属電極、81 n型用電極、82 p型用電極、91 遮蔽板、92 遮蔽板。
図1
図2
図3
図4