特許第5820531号(P5820531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5820531
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20151104BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20151104BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALN20151104BHJP
【FI】
   H01M10/0587
   H01M10/0525
   !H01M10/0567
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-530400(P2014-530400)
(86)(22)【出願日】2012年8月13日
(86)【国際出願番号】JP2012070590
(87)【国際公開番号】WO2014027388
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2014年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 絵里香
(72)【発明者】
【氏名】西森 独志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏
(72)【発明者】
【氏名】藤村 秀和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和雄
(72)【発明者】
【氏名】河野 竜治
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−146749(JP,A)
【文献】 特開2003−257495(JP,A)
【文献】 特開平11−273743(JP,A)
【文献】 特開平6−150971(JP,A)
【文献】 特開2012−142206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板が捲回された電極群と、該電極群が収容される電池缶と、該電池缶に注液される電解液と、を有するリチウムイオン二次電池であって、
前記電極群の外周面に取り付けられて前記電極群の捲回状態を維持し、前記電極群の径方向の膨張に応じて変形して該膨張を許容する保持手段を有し、
前記保持手段は、前記電極群に外嵌されて、もしくは、前記電極群の外周面に周状に連続して塗布されて、該電極群の外周面を被覆し、前記電解液の浸透により、前記電極群の径方向の膨張に伴い漸次溶解して、厚みが漸次薄くなる可溶性の被覆体を有し、
前記被覆体は、前記電解液の劣化を抑制する添加剤を含み、
該添加剤は、前記被覆体の溶解に伴って漸次、前記電解液に溶解することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記被覆体は、前記溶解により消失することを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記電極板は、負極集電体の表面に負極活物質層が形成された負極板を有し、
前記負極活物質層には、負極活物質としてグラファイトが含まれていることを特徴とする請求項1またはに記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池をはじめとする蓄電池の電極、およびこの電極を有する蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の資源的節約や地球温暖化などを背景に、省エネルギーの推進が求められており、二次電池の中でも大容量で小型のリチウムイオン二次電池は省エネルギー社会の実現に重要な蓄電デバイスとして期待されている。そのため、携帯情報端末やコードレス電子機器電源としての民生用途、電動工具の電源や電力貯蔵用といった産業用途、電気自動車やハイブリッド電気自動車といった車載用途を中心に需要が拡大している。また、このような様々な用途に応じて、高容量化に代表される電池性能向上に向けた開発が加速している。
【0003】
リチウムイオン二次電池の高容量化を実現するために、電極に用いる活物質の種類を変える取り組みがなされている。これまで用いてきた負極活物質に代表される非晶質炭素では、充放電に伴うリチウムの挿入脱離過程において、活物質の膨張収縮量が問題とならない程度であった。しかし、負極活物質をより高容量なグラファイトに変えることで、非晶質炭素に比べ、充放電時における活物質の膨張収縮量が大きくなる。充放電サイクルを繰り返すことで、グラファイトは約1割から3割程度、体積が膨張する。
【0004】
また一方で、高容量化実現のために、電極活物質合剤の実装密度を向上させる取り組みがなされている。しかし、活物質合剤の実装密度を向上させることで、充放電過程における活物質の膨張により電極に掛かる内部応力が大きくなる。電極活物質膨張時の内部応力が大きくなると、活物質間に存在する細孔がつぶれ、細孔部分に充填してある電解液中を移動するリチウムイオンの動きが阻害されるため、電池容量の低下や電池性能劣化が生じる。さらに、電極に掛かる内部応力により電極が破断、あるいは挫屈し、内部短絡の原因となり、電池の安全性が低下する。
【0005】
このような課題に対し、本技術分野の背景技術として、特開2011−8929号公報(特許文献1)がある。この公報には、「正極板と多孔質絶縁体の間または負極板と多孔質絶縁体の間の少なくともいずれか一方に非水電解液で軟化して電極板の膨張収縮による応力を緩和する樹脂を配置して電極群を構成する」と記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、「正極集電体上に正極合剤層が形成された正極板、および負極集電体上に負極合剤層が形成された負極板をセパレータを介して捲回して電極群を構成し、正極板および負極板の少なくとも一方の極板が、電極群の長径方向の端部にある湾曲部において、集電体上に合剤層が形成されない未塗工部を有し、且つ、外装ケースがラミネート外装である」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−8929号公報
【特許文献2】特開2011−119145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のリチウムイオン二次電池では、正極板、セパレータ(多孔質絶縁体)、負極板の少なくともいずれか一方に膨張収縮を緩和する樹脂を設置しているため、電極に掛かる内部応力を緩和することは可能となる。しかし、設置する樹脂により電極体積が増大するため、電池体積に占める電池容量が低下する。そのため、電池容量向上の目的達成が困難となる。また、部品点数が増加し、コストアップに繋がる。
【0009】
一方、特許文献2に記載のリチウムイオン二次電池では、特に内部応力が大きくなる湾曲部において、集電体上に活物質を含む合剤層が形成されていない未塗工部が存在するため、活物質膨張に伴う電極に掛かる内部応力緩和に対して効果的である。しかし、円筒型電池のような湾曲部で占める電極群に対して、集電体上に合剤層が形成されない未塗工部を有することで、集電体全体の面積に占める電極面積が小さくなり、同様に容量低下を伴う。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品点数増加によるコストアップや、電池体積に占める容量低下を伴わず、電極活物質の膨張により電極に加えられる内部応力を緩和することで、高容量で劣化の小さな捲回型のリチウムイオン二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0012】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、電極板が捲回された電極群と、該電極群が収容される電池缶と、該電池缶に注液される電解液と、を有するリチウムイオン二次電池であって、前記電極群の外周面に取り付けられて前記電極群の捲回状態を維持し、前記電極群の径方向の膨張に応じて変形して該膨張を許容する保持手段を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、部品点数の増加を伴わず電極に加えられる内部応力を緩和することが可能となり、電極板に設けられている電極層の潰れを回避できる。電極層の潰れを回避することで、電極層内に形成されている活物質間の細孔が潰れて塞がれるのを防ぐことができ、電解液中のリチウムイオンの動きが阻害されず、電池の性能劣化を抑制できる。また、電極面積減少や電池体積増大を伴わないため、電池の高容量化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一の実施形態における、伸縮して電極に掛かる内部応力を緩和する伸縮性捲回電極群固定具を有するリチウムイオン二次電池の構成を示す平面図。
図2】本発明の第一の実施形態における、伸縮して電極に掛かる内部応力を緩和する伸縮性捲回電極群固定具を有するリチウムイオン二次電池の構成を示す模式図。
図3】本発明第二の実施形態における、徐々に電解液に溶解して消失する可溶性捲回電極群固定具を有するリチウムイオン二次電池の構成を示す平面図。
図4】本発明第二の実施形態における、電極膨張後のリチウムイオン二次電池の構成を示す平面図。
図5】本発明第三の実施形態における、電極の膨張に伴い徐々に収縮する膨張吸収材を有するリチウムイオン二次電池の構成を示す平面図。
図6】従来の捲回電極群固定具の使用方法を示す模式図。
図7】18650型の円筒型電池の構成を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図を用いて説明する。なお、以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1を図1の平面図および図2の模式図に示す。また、比較のため、従来方法についての模式図を図6に示す。
【0017】
本実施例1のリチウムイオン二次電池C1は、円筒型のリチウムイオン二次電池であり、正極板、セパレータ107、負極板、セパレータ107からなる一積層単位を軸芯109に捲回して電極群100を形成し、これを電池缶101に収納した構造をとる。なお、軸芯109が捲回電極群作成後に取り外されて存在しない構成を有する場合もある。
【0018】
電極群100の最外周は、セパレータ107で覆われるように捲回されており、捲き終わり端部である捲回電極群端部110は、テープ102で固定されて、捲回が巻き解けないようになっている。
【0019】
電極群100は、正極板、セパレータ107、負極板、セパレータ107を重ね合わせて捲回し、互いに密着させた状態で実装することで、電池電極としての充放電機能を果たす。テープ102は、電極群100形成時の密着性保持に必要な構成要素となるものであり、電極群100の外周面に取り付けられて電極群100の捲回状態を維持し、電極群100の径方向の膨張に応じて変形してその膨張を許容する保持手段としての機能を有する。
【0020】
テープ102は、捲回電極群端部110に一端が貼着され、捲回電極群端部110から突出して他端が電極群100の外周面に貼着されて、電極群100の径方向の膨張収縮に応じて電極群の捲回方向に沿って伸縮する伸縮性を有している。そして、電極群100の捲回軸方向に亘って延在するように取り付けられている。テープ102の具体的な材質として、ポリイミドに比べて伸び率の高いポリプロピレンテープやポリエステルテープ等が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0021】
正極板(電極板)は、正極集電箔(集電体)104上に、正極活物質や導電助剤、バインダを含む正極活物質層(電極層)103が形成されて構成される。また、負極板(電極板)も同様に、負極集電箔(集電体)106上に負極活物質や導電助剤、バインダを含む負極活物質層(電極層)105が形成されて構成される。ここで、正極活物質層103、負極活物質層105は、活物質や導電助剤、バインダの他に、添加物等を含む構成としても良い。正極活物質層103及び負極活物質層105は、活物質の間に電解液が染み込み可能な細孔を有している。
【0022】
一般的に、正極集電箔104にはアルミニウム箔が使用され、負極集電箔106には銅箔が使用されるが、ニッケル箔、ステンレス箔などの導電性材料を用いても良く、またこれらに限られるものではない。
【0023】
正極活物質層103の活物質材料として、例えばコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどに代表されるが、これに限るものではなく、適宜変えることができる。また、二種類以上の物質を用いても良い。負極活物質層105の活物質材料として、例えばグラファイトやチタン酸リチウムなどに代表されるが、これに限るものではなく、適宜変えることができる。
【0024】
セパレータ107は、正極板と負極板との間に介在されて正極板と負極板が直接接触することを防ぎ、かつイオン導電性を保持する必要があるが、電解液を用いる電池では、細孔部を有する多孔性材料を用いることが多い。この多孔性材料として、例えばポリオレフィンやポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるが、これに限るものではない。
【0025】
電解液(図示せず)は、セパレータ107、正極活物質層103、負極活物質層105の各細孔に浸入して存在する。ここで、電解液は、イオン導電相として働き、リチウムイオン二次電池では、非水溶液系電解質が用いられる。電解液は、LiPF6、 LiBF4、 LiClO4のようなリチウム塩とエチレンカーボネートやジエチルカーボネートのような溶媒によって構成される。また、電解液は、液体やゲルに限らず、固体でも良い。
【0026】
図1に示す円筒型リチウムイオン二次電池C1では、充放電過程における電極群100の膨張収縮に応じてテープ102が伸縮できる材質であることを特徴とする。さらに、正極活物質層103、負極活物質層105の膨張が原因で電極群100が膨張するが、その膨張に追随してテープ102は徐々に伸びる素材によって構成されている。
【0027】
通常、円筒型電池の電極群と電池缶との間には、長手方向の両端部や径方向外側に、ある程度の空間があるため、この空間を膨張収縮吸収部108とし、電極の膨張収縮を吸収することができる。即ち、電極群100の膨張に応じて伸縮性のテープ102が伸び、電極層内に形成されている活物質間の細孔を潰すことなく、膨張収縮吸収部108へ電極群100が膨張することができる。
【0028】
膨張収縮吸収部108は、その大きさを大きく取り過ぎると、電池体積に占める容量低下やコストアップにつながるので、電極群100の膨張を吸収できるだけの大きさであれば良い。特に、負極活物質層105の活物質としてグラファイトを用いている場合、充電時のリチウム挿入脱離過程による膨張収縮により、電極群100は、約1割から3割程度膨張する。
【0029】
ここで、円筒型リチウムイオン二次電池の代表例として、18650型電池、即ち、直径18mm、長さ65mmの円筒型電池を用いて説明する。18650型電池の構成を図7の表に示す。図7に示す表より、半径方向の負極活物質層105の厚さは0.56mm×2=1.12mmである。負極活物質が3割程度膨張する場合の電極群100の厚さ増分は0.336mmである。従って、半径方向の膨張収縮吸収部108は0.30mmから0.35mm程度の大きさで良く、軸芯の半径、セパレータの厚みや電池缶外壁を僅かに小さくすることで電池体積に占める容量低下を伴わずに適用可能である。
【0030】
従来は、図6に示す通り、電極群100を径方向に膨張させないために、周方向全周を硬直性捲回電極群固定具600で拘束し固定していた(捲回型固定方法)。ここで、硬直性捲回電極群固定具の600の長手方向の高さは電極高さの3分の1〜1倍程度の幅を持つテープが用いられるが、特に限定はされない。また、硬直性捲回電極群固定具600の材質として、通常、絶縁性があり伸縮性の小さいポリイミドテープが用いられていた。
【0031】
しかし、硬直性捲回電極群固定具600で拘束しても、充放電繰り返しにより活物質の膨張は起こるため、電極群100の半径方向への厚み変化は抑制されるものの、その分、活物質層103、105に強大な圧縮力が加えられて、活物質層103、105に存在する活物質間の細孔が潰されてしまう。ここで、従来品について充放電サイクル後の劣化した電池を解体して観察してみると、硬直性捲回電極群固定具600で固定されている位置の活物質間の細孔が主に潰されていることが分かった。活物質間の細孔が潰れることで、前述した通り、電解液中のリチウムイオンの動きが阻害され、電池容量低下や電池性能劣化につながる。
【0032】
そこで、本実施例では、図2に示す通り、捲回電極群端部110を伸縮性のテープ102で留める構成を採用する。テープ102は、捲回電極群端部110に一端が貼着され、捲回電極群端部110から突出して他端が電極群100の外周面に貼着されて、電極群100の径方向の膨張収縮に応じて電極群の捲回方向に沿って伸縮する伸縮性を有している。
【0033】
したがって、電極群100の膨張に起因して電極群100に作用する内部応力を緩和することができる。テープ102は、電極群100の膨張に伴い、図1に矢印で示すように、捲回方向に沿って伸張して活物質層103、105に圧縮力が作用するのを抑制し、活物質層103、105に存在する細孔が潰れるのを防止できる。
【0034】
本実施例のリチウムイオン二次電池C1によれば、電極群100の捲回軸方向に亘って延在するようにテープ102が取り付けられるので、電極群100が径方向に膨張した場合に、電極群100の捲回軸方向に亘って均一な力で留めることができる。したがって、従来のように、捲回軸方向の一部分に局所的に圧縮力が作用するのを防ぐことができる。
【実施例2】
【0035】
次に、実施例2の構成を図3に示す。また、図3について充放電サイクルを繰り返して膨張した後の構成を図4に示す。ここで、既に説明した図1図2に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0036】
本実施例において特徴的なことは、実施例1のテープ102の代わりに、電極群100に外嵌されて、もしくは、電極群100の外周面に周状に連続して塗布されて、電極群100の外周面を被覆し、電解液の浸透により、電極群100の径方向の膨張に伴い漸次溶解して、厚みが漸次薄くなる可溶性の被覆体300を設けたことを特徴としている。
【0037】
そして、電極群100が電池缶101に接触する大きさまで膨張する場合、被覆体300は完全に溶解して消失しても良い。さらに、この被覆体300には、充放電サイクルの繰り返しによる電解液の劣化を抑制する添加剤が含まれることが望ましい。
【0038】
前述した通り、電極群100が膨張する前の電池使用初期段階では、電極群100における正極板、セパレータ107、負極板、セパレータ107の密着性を保持する必要がある。しかし、充放電サイクルを繰り返すにつれ徐々に電極群100が膨張するため、図4に示すように、電極群100の外周面が電池缶101の内周面に接面して電極群100が電池缶101により保持される段階では、被覆体300は不必要な部品となる。
【0039】
そこで、電極群100の膨張に伴い、徐々に被覆体300が電解液に溶解し、かつ、電解液の性能を落とさないような材質を採用することで、電極群100の電極層の活物質間の細孔が潰れず、電池性能劣化を抑制できる。さらに、電解液により溶解する被覆体300を用いることで、電解液の電極群100に対する高い浸透性が発揮され、初期の電池性能向上にも効果を発揮する。
【0040】
被覆体300は、電極群100に外嵌される筒体、もしくは、電極群100の外周面に周状に連続して塗布されて電極群100の外周面を被覆する塗布材であってもよい。被覆体300の材質の具体例としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが代表的な材質として挙げられ、電解液への溶解性について粘着付与剤等で調整されるが、これに限られるものではない。
【0041】
また、電解液に溶解する被覆体300の構成例として、周状に連続して塗布される塗布材の層間に電解液の劣化を抑制する添加剤を予め実装させ、電解液に浸漬すると徐々に電解液に添加剤が溶解し、電池の長寿命化を実現できる。具体的な添加剤として、被膜成長を抑え高温特性を向上させるビニレンカーボネート等が挙げられるが、これに限られるものではない。なお、被覆体300は、筒体や塗布材に限定されるものではなく、電極群100を被覆できるものであればよく、例えば電極群100の外周面に貼り付ける貼付体であってもよい。
【実施例3】
【0042】
実施例3の構成を図5に示す。
【0043】
本実施例において特徴的なことは、実施例1のテープ102や実施例2の被覆体300の代わりに、電極群100の外周面と電池缶101の内周面との間に、電極群100の径方向の膨張に応じて厚みが漸次薄くなる収縮性の膨張吸収体500を設けたことである。
【0044】
本実施例では、膨張収縮吸収部108は設けずに、収縮性のある膨張吸収体500を、電池缶101の内部に設けて電極群100の密着性を保持し、電極群100の膨張を許容する方法について示している。
【0045】
具体的には、多孔性フィルムで膨張吸収体500を構成し、電極群100の膨張に伴い、膨張吸収体500が徐々に薄くなるような柔軟性を有する構成をとる。多孔性フィルムとは、ポリエチレン、ポリプロピレン、PPS等の樹脂、EPDM等のゴムを素材とする。より柔軟性が必要な場合はガラス繊維で強化されていないものを用いる。多孔質であることにより、電極群100の膨張に対して柔軟に変形することができる。このような構造を取ることで、膨張収縮吸収部108のようなスペースが存在しないため、電池缶101内部における捲回された電極群100のずれや振動を抑制でき、より安全性の高い長寿命電池を得ることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
100 電極群
101 電池缶
102 テープ
103 正極活物質層
104 正極集電箔(アルミニウム箔)
105 負極活物質層
106 負極集電箔(銅箔)
107 セパレータ
108 膨張収縮吸収部
109 軸芯
110 捲回電極群端部(捲き終わり端部)
300 被覆体
500 膨張吸収体
600 硬直性捲回電極群固定具
C1 リチウムイオン二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7