(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5821085
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】配線基板モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20151104BHJP
【FI】
H05K3/34 501D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-117214(P2012-117214)
(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公開番号】特開2013-247119(P2013-247119A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100092820
【弁理士】
【氏名又は名称】伊丹 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100103274
【弁理士】
【氏名又は名称】千且 和也
(72)【発明者】
【氏名】山上 勝哉
【審査官】
中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−226817(JP,A)
【文献】
特開平07−135037(JP,A)
【文献】
特開平05−136539(JP,A)
【文献】
実開昭64−033164(JP,U)
【文献】
特開平10−200248(JP,A)
【文献】
特開2006−313791(JP,A)
【文献】
特開2010−074147(JP,A)
【文献】
実開平02−084361(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
H05K 1/00 − 1/02
H01R 9/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と同軸ケーブルとを半田付けにより接続する配線基板モジュールの製造方法において、
前記配線基板に内部導体半田付けランド、外部導体半田付けランド及び前記外部導体半田付けランドと連結したパターンの余剰半田付け受取ランドを形成し、
前記同軸ケーブルの内部導体及び外部導体を前記内部導体半田付けランド及び前記外部導体半田付けランドにそれぞれ半田付けし、
前記配線基板を前記外部導体半田付けランドと前記余剰半田付け受取ランドとの間で切断する
ことを特徴とする配線基板モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記同軸ケーブルが接続された前記配線基板を収容ケース内に収容することを特徴とする請求項1記載の配線基板モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記内部導体半田付けランド、前記外部導体半田付けランド及び前記余剰半田付け受取ランドを、前記内部導体半田付けランド及び前記外部導体半田付けランドがそれぞれ前記同軸ケーブルの軸方向に配置されると共に、前記余剰半田付け受取ランドが前記軸方向から外れる前記外部導体半田付けランドの近傍に配置され、且つ前記内部導体半田付けランド及び前記外部導体半田付けランドがそれぞれ前記軸方向と交差する方向に並んで配置されるように、前記配線基板に複数形成し、
前記配線基板に複数本の同軸ケーブルを平行に配置して接続する
ことを特徴とする請求項1記載の配線基板モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線基板に半田付けにより同軸ケーブルを接続した配線基板モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に配線パターンが形成されたプリント基板等の配線基板に、電線等のケーブルを半田付けにより接続した配線基板モジュールとしての部品実装プリント基板(例えば、特許文献1参照)が知られている。この部品実装プリント基板では、レジストで覆われた部品接続部に、半田が供給される第1開口部と、これよりも狭い幅で連続する第2開口部とからなるランドを形成し、リフロー時における余剰半田を第2開口部側へ流し込むことで、隣接するランド間の短絡を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−232740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来技術の部品実装プリント基板では、余剰半田が流れ込んだ第2開口部はその後に不要となるが、ランドの一部として基板上に残されるため、配線基板の小型化を妨げる要因となっていた。一方、小型化を図るために余剰半田を逃す構造がない配線基板の場合は、
図8に示すように、例えば同軸ケーブル101の外部導体102が半田付けされた基板103のランド104上に、半田105が高く盛り付けられる。このため、図中矢印で示すように、基板103を収容するケース106を基板103に取り付けてモジュール化する場合、半田105の高さを十分考慮した設計のケース106が必要となるので、必然的に配線基板モジュールが大きくなってしまうという問題がある。
【0005】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消し、半田と導体との接触面積を増大させつつ半田の高さを低減して配線基板を小型化し、配線基板モジュール全体の小型化を図ることができる配線基板モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る配線基板モジュールの製造方法は、配線基板と同軸ケーブルとを半田付けにより接続する配線基板モジュールの製造方法において、前記配線基板に内部導体半田付けランド、外部導体半田付けランド及び前記外部導体半田付けランドと連結したパターンの余剰半田付け受取ランドを形成し、前記同軸ケーブルの内部導体及び外部導体を前記内部導体半田付けランド及び前記外部導体半田付けランドにそれぞれ半田付けし、前記配線基板を前記外部導体半田付けランドと前記余剰半田付け受取ランドとの間で切断することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る配線基板モジュールの製造方法によれば、外部導体半田付けランドに半田付けされた半田が余剰半田付け受取ランドに流れ込んだ状態で半田付けされるので、半田とランド及び同軸ケーブルの外部導体との接触面積を増大させることができると共に、ランド及び外部導体上に半田付けされた半田の高さを低減させることができる。また、配線基板を余剰半田付け受取ランドと外部導体半田付けランドとの間で切断するので、配線基板の小型化を図ることができる。
【0008】
本発明の一実施形態においては、前記同軸ケーブルが接続された前記配線基板を収容ケース内に収容する。
【0009】
本発明の他の実施形態においては、前記内部導体半田付けランド、前記外部導体半田付けランド及び前記余剰半田付け受取ランドを、前記内部導体半田付けランド及び前記外部導体半田付けランドがそれぞれ前記同軸ケーブルの軸方向に配置されると共に、前記余剰半田付け受取ランドが前記軸方向から外れる前記外部導体半田付けランドの近傍に配置され、且つ前記内部導体半田付けランド及び前記外部導体半田付けランドがそれぞれ前記軸方向と交差する方向に並んで配置されるように、前記配線基板に複数形成し、前記配線基板に複数本の同軸ケーブルを平行に配置して接続する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半田と導体との接触面積を増大させつつ半田の高さを低減して配線基板を小型化し、配線基板モジュール全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る配線基板モジュールの製造方法により製造される配線基板モジュールの配線基板を示す平面図である。
【
図2】同配線基板モジュールの配線基板と同軸ケーブルとの接続状態を示す平面図である。
【
図5】同配線モジュールの配線基板を切断した様子を示す平面図である。
【
図6】同配線基板モジュールをケースに収容した状態を示す断面図である。
【
図7】同配線基板モジュールの他の配線基板を示す平面図である。
【
図8】従来の配線基板モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、この発明の実施の形態に係る配線基板モジュールの製造方法を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る配線基板モジュールの製造方法により製造される配線基板モジュールの配線基板を示す平面図である。
図2は、配線基板モジュールの配線基板と同軸ケーブルとの接続状態を示す平面図である。また、
図3は
図2のA−A’断面図、
図4は
図2のB−B’拡大断面図である。
【0014】
本実施形態に係る配線基板モジュールは、配線基板に同軸ケーブルを半田付けにより接続した構造を備える。
図1に示すように、配線基板10は、フレキシブルプリント基板(FPC)等の基板であり、絶縁樹脂等からなる基材11上に銅箔等からなる配線等を形成した構造を備えている。
【0015】
基材11は、例えば絶縁樹脂の樹脂フィルムにより形成されている。ここで、樹脂フィルムとしては、例えばポリイミド(PI)、ポリオレフィン(PO)、液晶ポリマー(LCP)などからなる樹脂フィルムや、熱硬化性のエポキシ樹脂(EP)からなる樹脂フィルム等を用いることができる。
【0016】
配線基板10は、具体的には、基材11上に形成された配線の一部である内部導体半田付けランド12と、外部導体半田付けランド13と、この外部導体半田付けランド13と連結したパターンの余剰半田付け受取ランド14とを複数備える。内部導体半田付けランド12、外部導体半田付けランド13及び余剰半田付け受取ランド14は、例えば次のように配線基板10の基材11上に複数配置形成される。
【0017】
すなわち、
図2に示すように、各内部導体半田付けランド12及び外部導体半田付けランド13は、それぞれ配線基板10に接続される同軸ケーブル20の軸方向に沿って並ぶように配置形成される。また、余剰半田付け受取ランド14は、上記軸方向から外れる外部導体半田付けランド13の近傍に外部導体半田付けランド13と連結したパターンで配置形成される。
【0018】
そして、各内部導体半田付けランド12及び外部導体半田付けランド13は、それぞれ上記軸方向と交差する方向(配線基板10の幅方向)に並んで配置されるように、基材11上に複数配置形成される。
図2に示す例では、余剰半田付け受取ランド14は、それぞれ外部導体半田付けランド13から上記幅方向に沿って、互いに乖離するように外側に向けて延出形成された状態で外部導体半田付けランド13の近傍に配置形成されている。
【0019】
なお、内部導体半田付けランド12、外部導体半田付けランド13及び余剰半田付け受取ランド14には、その表面に十分な半田濡れ性を確保するための表面処理が施されている。表面処理としては、例えば電解ニッケル金めっき処理、無電解ニッケル金めっき処理及び防錆処理等が挙げられる。
【0020】
内部導体半田付けランド12は、
図2に示すように、同軸ケーブル20の内部導体21と半田30により半田付けされて接続される。内部導体半田付けランド12は、配線基板10に形成された図示しない配線と連続し、この配線には例えば実装部品(図示せず)等が接続されている。
【0021】
外部導体半田付けランド13は、同軸ケーブル20の外部導体22と同じく半田30により半田付けされて接続される。余剰半田付け受取ランド14には、外部導体22と外部導体半田付けランド13とを半田30により接続する際に、余剰に供給された半田30が流れ込む。同軸ケーブル20は、複数本が配線基板10に平行に配置された上で接続されている。
【0022】
なお、半田30は、いわゆる糸半田や半田ペーストなどからなり、糸半田の場合は加熱した半田鏝により半田付けが行われ、半田ペーストの場合は印刷やディスペンサにより半田付けが行われる。半田付けの際に供給される半田30の量は、通常は過少供給による半田不良を防ぐためにある程度確実に半田付けが可能な十分な量にコントロールされて供給される。
【0023】
しかし、接続するランドや導体のピッチやサイズが小さくなると、供給半田量が過少でない限り余剰半田が発生してしまい従来技術のような問題が生じるが、本実施形態に係る配線基板10は、余剰半田付け受取ランド14を備えるため、余分な半田30は外部導体半田付けランド13上から余剰半田付け受取ランド14側へ流れる。
【0024】
この場合、
図3及び
図4に示すように、通常最も高さが高くなる同軸ケーブル20の外部導体22と外部導体半田付けランド13との接続部分においては、半田30が表面張力により外部導体22と外部導体半田付けランド13とを確実に接続しつつ余剰半田付け受取ランド14側へ流れ込んでいるので、その高さが同軸ケーブル20の外径高さと同一かそれよりも低くなり、半田30の高さを殆ど考慮しなくても良いこととなる。
【0025】
また、半田30が余剰半田付け受取ランド14側へ広がるように流れ込んでいるので、外部導体半田付けランド13上における外部導体22と半田30との接触面積が大きくなる。従って、半田30と外部導体22との接触面積を増大させて確実に接続しつつ半田30の高さを低減することができる。
【0026】
図5は、配線モジュールの配線基板を切断した様子を示す平面図である。
図6は、配線基板モジュールをケースに収容した状態を示す断面図である。
図5に示すように、半田30により同軸ケーブル20が接続された配線基板10は、モジュール化するに当たって
図2に二点鎖線で示す切断線Cに沿って、外部導体半田付けランド13と余剰半田付け受取ランド14との間の部分でそれぞれ切断される。これにより、配線基板10の幅方向の大きさを小さくすることができる。
【0027】
そして、切断加工した配線基板10を、
図5に点線で示す折曲げ線Fに沿って、基材11が互いに接するように折り曲げて、
図6に示すように、ケース19の内部の収容室19aに同軸ケーブル20の先端部と共に挿入して収容する。従って、ケース19内には、例えば図示しない実装部品も配線基板10と共に収容される。配線基板モジュール1は、このようにして製造される。
【0028】
なお、折り曲げられた配線基板10は、例えば基材11同士の接触面が図示しない接着剤等により接続されているため、折り曲げ後の形状がケース19内で崩れることはない。本実施形態に係る配線基板モジュール1においては、配線基板10は、上述したように半田30の高さが最小で、幅方向の寸法も小さくすることもできるので、折り曲げた後も最小限の大きさの外形寸法で構成することができる。ケース19は、収容室19aの大きさを、このような小さな外形寸法の配線基板10を収容可能な大きさにすれば良いので、全体として小型化が可能となる。従って、配線基板モジュール1は、モジュール全体の小型化を図ることができる。
【0029】
図7は、配線基板モジュールの他の配線基板を示す平面図である。
図7に示すように、配線基板10の余剰半田付け受取ランド14は、円形状の外形で、外部導体半田付けランド13と連結した状態でその近傍に一つの外部導体半田付けランド13に対してそれぞれ複数配置形成されている。このように、余剰半田付け受取ランド14は、外部導体半田付けランド13と連結して近傍に配置形成され、余剰半田を十分に逃がすことが可能なものであれば、その数や形状を自在に変化させて形成することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 配線基板モジュール
10 配線基板
11 基材
12 内部導体半田付けランド
13 外部導体半田付けランド
14 余剰半田付け受取ランド
19 ケース
20 同軸ケーブル
21 内部導体
22 外部導体
30 半田