特許第5821175号(P5821175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三浦工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5821175-給水システム 図000002
  • 特許5821175-給水システム 図000003
  • 特許5821175-給水システム 図000004
  • 特許5821175-給水システム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5821175
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】給水システム
(51)【国際特許分類】
   F22D 11/00 20060101AFI20151104BHJP
   F22D 1/18 20060101ALI20151104BHJP
【FI】
   F22D11/00 L
   F22D1/18
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-246201(P2010-246201)
(22)【出願日】2010年11月2日
(65)【公開番号】特開2012-97967(P2012-97967A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2013年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】柿本 直哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖国
(72)【発明者】
【氏名】大沢 智也
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−151702(JP,A)
【文献】 特開2010−243012(JP,A)
【文献】 特開2010−25431(JP,A)
【文献】 実開昭57−190281(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 11/00
F22D 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補給水を貯留する給水タンクと、
前記給水タンクに補給水を補給する補給水ラインと、
前記給水タンクからボイラ装置に向けて補給水を補給する給水ラインと、
上流側が前記給水タンクに接続され、下流側が前記給水ラインに接続される補給水加温ラインであって、当該給水タンクに貯留された補給水を加温して前記給水ラインに供給すると共に、前記ボイラ装置に補給される補給水及び前記給水タンクに補給される補給水が流通する補給水加温ラインと、
冷媒を介して廃熱を回収するヒートポンプと、
前記補給水加温ラインを流通する補給水と前記ヒートポンプを流通する冷媒とを熱交換する熱交換器と、
前記給水タンクから前記補給水加温ラインへ流入する補給水の温度が所定温度を下回った場合に前記ヒートポンプの運転を開始する制御手段と、
を備え
前記制御手段は、前記ヒートポンプの運転中において、当該ヒートポンプの負荷率が所定負荷率を下回った場合には、前記ヒートポンプの運転を停止させることを特徴とする給水システム。
【請求項2】
補給水を貯留する給水タンクと、
前記給水タンクに補給水を補給する補給水ラインと、
前記給水タンクからボイラ装置に向けて補給水を補給する給水ラインと、
上流側が前記給水タンクに接続され、下流側が前記給水ラインに接続される補給水加温ラインであって、当該給水タンクに貯留された補給水を加温して前記給水ラインに供給すると共に、前記ボイラ装置に補給される補給水及び前記給水タンクに補給される補給水が流通する補給水加温ラインと、
内部を流通する冷媒を介して廃熱を回収するヒートポンプであって、前記ヒートポンプの内部を流通する冷媒と前記補給水加温ラインを流通する補給水とを熱交換するヒートポンプと、
前記給水タンクから前記補給水加温ラインへ流入する補給水の温度が所定温度を下回った場合に前記ヒートポンプの運転を開始する制御手段と、
を備え
前記制御手段は、前記ヒートポンプの運転中において、当該ヒートポンプの負荷率が所定負荷率を下回った場合には、前記ヒートポンプの運転を停止させることを特徴とする給水システム。
【請求項3】
前記補給水加温ラインは、前記給水タンクに代えて、前記補給水ラインに接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の給水システム。
【請求項4】
前記補給水加温ラインから前記給水ラインを介して前記給水タンクに向けて流通する補給水を一時的に保持する貯留部を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の給水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給水タンクへ補給する補給水をヒートポンプにより加温する蒸気発生システムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−25431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の蒸気発生システムは、蒸気ボイラの負荷率が低い場合に、補給水の補給回数が少なくなる。このため、ヒートポンプの稼働率が低くなり、ヒートポンプの熱エネルギーを有効に利用することができない。
【0005】
従って、本発明は、ヒートポンプの熱エネルギーを有効に利用することができる給水システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、補給水を貯留する給水タンクと、前記給水タンクに補給水を補給する補給水ラインと、前記給水タンクからボイラ装置に向けて補給水を補給する給水ラインと、上流側が前記給水タンクに接続され、下流側が前記給水ラインに接続される補給水加温ラインであって、当該給水タンクに貯留された補給水を加温して前記給水ラインに供給すると共に、前記ボイラ装置に補給される補給水及び前記給水タンクに補給される補給水が流通する補給水加温ラインと、冷媒を介して廃熱を回収するヒートポンプと、前記補給水加温ラインを流通する補給水と前記ヒートポンプを流通する冷媒とを熱交換する熱交換器と、前記給水タンクから前記補給水加温ラインへ流入する補給水の温度が所定温度を下回った場合に前記ヒートポンプの運転を開始する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ヒートポンプの運転中において、当該ヒートポンプの負荷率が所定負荷率を下回った場合には、前記ヒートポンプの運転を停止させることを特徴とする給水システムに関する。
また、本発明は、補給水を貯留する給水タンクと、前記給水タンクに補給水を補給する補給水ラインと、前記給水タンクからボイラ装置に向けて補給水を補給する給水ラインと、上流側が前記給水タンクに接続され、下流側が前記給水ラインに接続される補給水加温ラインであって、当該給水タンクに貯留された補給水を加温して前記給水ラインに供給すると共に、前記ボイラ装置に補給される補給水及び前記給水タンクに補給される補給水が流通する補給水加温ラインと、内部を流通する冷媒を介して廃熱を回収するヒートポンプであって、前記ヒートポンプの内部を流通する冷媒と前記補給水加温ラインを流通する補給水とを熱交換するヒートポンプと、前記給水タンクから前記補給水加温ラインへ流入する補給水の温度が所定温度を下回った場合に前記ヒートポンプの運転を開始する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ヒートポンプの運転中において、当該ヒートポンプの負荷率が所定負荷率を下回った場合には、前記ヒートポンプの運転を停止させることを特徴とする給水システムに関する。
【0009】
また、前記給水システムにおいて、前記補給水加温ラインは、前記給水タンクに代えて、前記補給水ラインに接続されていることが好ましい。
【0010】
また、前記給水システムは、前記補給水加温ラインから前記給水ラインを介して前記給水タンクに向けて流通する補給水を一時的に保持する貯留部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヒートポンプの熱エネルギーを有効に利用することができる給水システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態のボイラシステム100を示す概略構成図である。
図2】貯留部131の構造を示す概略斜視図である。
図3】制御部180が補給水W1の水温を制御する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態のボイラシステム100Aを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の給水システムをボイラシステムに適用した実施形態ついて説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態のボイラシステム100を示す概略構成図である。また、図2は、貯留部131の構造を示す概略斜視図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のボイラシステム100は、軟水化装置110と、脱酸素装置120と、給水タンク130と、蒸気ボイラ140と、熱交換器150と、ヒートポンプ160と、を備える。また、本実施形態のボイラシステム100は、循環ポンプ170と、補給水バルブ171と、水位計172と、流量計173と、温度計174及び175と、制御手段としての制御部180と、を備える。更に、本実施形態のボイラシステム100は、補給水ラインL110と、給水ラインL120と、補給水加温ラインL130と、冷媒循環ラインL140と、を備える。なお、「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0015】
補給水ラインL110は、給水タンク130に補給水W1を補給するラインである。給水ラインL120は、給水タンク130から蒸気ボイラ140に向けて補給水W1を補給するラインである。補給水加温ラインL130は、給水タンク130の補給水W1を加温して給水ラインL120に供給するラインである。補給水加温ラインL130の一部は、熱交換器150の内部における水流路L1を構成する。なお、本実施形態では、補給水ラインL110、給水ラインL120及び補給水加温ラインL130を流通する水を総称して「補給水W1」という。
【0016】
補給水ラインL110には、軟水化装置110と、脱酸素装置120と、補給水バルブ171と、給水タンク130と、が設けられている。
【0017】
軟水化装置110は、原水タンク(不図示)から供給される原水の硬度分を除去して、軟化水を生成する装置である。
【0018】
脱酸素装置120は、軟水化装置110で生成された補給水W1(軟化水)に含まれる溶存酸素を除去する装置である。脱酸素装置120としては、例えば、膜式脱酸素装置を用いることができる。
【0019】
補給水バルブ171は、補給水ラインL110を流通する補給水W1の流量を制御するバルブである。補給水バルブ171は、脱酸素装置120と給水タンク130との間に設けられている。補給水バルブ171は、制御部180と電気的に接続されている。補給水バルブ171の運転(弁の開閉)は、制御部180から送信されるバルブ運転信号により制御される。
【0020】
給水タンク130は、補給水W1を貯留するタンクである。補給水W1は、補給水ラインL110を介して給水タンク130に補給される。給水タンク130には、補給水加温ラインL130の一次側(補給水W1の流入側)が接続されている。
【0021】
給水タンク130には、水位計172が設けられている。水位計172は、給水タンク130に貯留されている補給水W1の水位を計測する装置である。水位計172は、制御部180と電気的に接続されている。水位計172は、計測した補給水W1の水位Wに関する情報(信号)を制御部180に送信する。
【0022】
蒸気ボイラ140は、給水ラインL120を介して補給された補給水W1を加熱して蒸気を生成するボイラ装置であり、貫流ボイラからなる。蒸気ボイラ140で生成された蒸気は、この蒸気を動力源又は熱源とする蒸気使用設備(不図示)に供給される。また、蒸気ボイラ140は、給水ポンプ(不図示)を備える。この給水ポンプは、給水ラインL120を流通する補給水W1を取り込むためのポンプである。
【0023】
蒸気ボイラ140は、制御部180と電気的に接続されている。蒸気ボイラ140は、制御部180にボイラ運転信号を送信する。蒸気ボイラ140は、運転中(稼働状態)においては、ボイラ運転信号を「ON」にする。また、蒸気ボイラ140は、運転停止中(非稼働状態)においては、ボイラ運転信号を「OFF」にする。
【0024】
補給水加温ラインL130には、循環ポンプ170と、熱交換器150と、が設けられている。上述したように、補給水加温ラインL130の一次側(補給水W1の流入側)は、給水タンク130に接続されている。一方、補給水加温ラインL130の二次側(補給水W1の流出側)は、給水ラインL120の接続部J1に接続されている。
【0025】
循環ポンプ170は、補給水加温ラインL130を介して、補給水W1を給水ラインL120に向けて流通させる装置である。循環ポンプ170は、制御部180と電気的に接続されている。循環ポンプ170の運転(開始/停止)は、制御部180から送信されるポンプ運転信号により制御される。循環ポンプ170は、ポンプ運転信号が「ON」になると運転を開始する。また、循環ポンプ170は、ポンプ運転信号が「OFF」になると運転を停止する。
【0026】
本実施形態では、ボイラシステム100の運転中において、水位計172で取得した水位Wが給水タンク130の下限水位Wmin以上の場合に、ポンプ運転信号は常時「ON」となる。従って、ボイラシステム100の運転中において、補給水W1は、水位計172で取得した水位Wが給水タンク130の下限水位Wmin以上の場合には、補給水加温ラインL130を常に流通する。
【0027】
ここで、給水タンク130の構成について更に詳細に説明する。給水タンク130は、その内部に貯留部131を有する。貯留部131は、補給水加温ラインL130から給水ラインL120に流通する補給水W1の一部を一時的に保持するタンクである。貯留部131は、給水タンク130の内部において、給水ラインL120が給水タンク130と接続する位置に設けられている。
【0028】
貯留部131は、図2に示すように、略箱枠形に形成されている。貯留部131は、仕切り板132、切り欠き133、134、及び135を備える。仕切り板132は、貯留部131の内部を2つに区分する板である。貯留部131の内部は、仕切り板132により貯留槽131a、131bに区分される。貯留槽131aには、給水ラインL120の一端側が接続されている。
【0029】
仕切り板132は、貯留部131の上部に隙間が形成される程度の高さを有する。これにより、貯留部131の内部に貯留された補給水W1は、仕切り板132の上部を通じて、貯留槽131a、131bの間を移動することができる。
【0030】
切り欠き133〜135は、給水タンク130において、貯留部131を除く領域(以下、「他の領域」という)に貯留されている補給水W1と、貯留部131に貯留されている補給水W1とを徐々に混合させるための開口である。なお、図2では、かくれ線(破線)の図示を適宜に省略する。
【0031】
補給水加温ラインL130から給水ラインL120を経て給水タンク130に補給された補給水W1は、貯留部131の貯留槽131a、又は貯留槽131a及び131bに一時的に貯留される。すなわち、ヒートポンプ160により加温された補給水W1は、給水タンク130の他の領域に貯留されている補給水W1とすぐに混合することがない。
【0032】
また、貯留部131に補給された補給水W1は、切り欠き133〜135を介して、給水タンク130の他の領域に貯留されている補給水W1と徐々に混合する。従って、加温された補給水W1は、貯留部131において、その温度をすぐに下げることなく貯留される。
【0033】
図1において、蒸気ボイラ140へ補給される補給水W1の必要量と、補給水加温ラインL130から給水ラインL120に供給される補給水W1の量とがほぼ等しいとする。この場合には、熱交換器150により加温された補給水W1は、補給水加温ラインL130から給水ラインL120に供給され、優先的に蒸気ボイラ140に補給される。
【0034】
また、蒸気ボイラ140へ補給される補給水W1の必要量が、補給水加温ラインL130から給水ラインL120に供給される補給水W1の量を下回るとする。この場合には、余った分の補給水W1は、給水タンク130の貯留部131へ補給される。これにより、給水タンク130の貯留部131には、加温された補給水W1が貯留される。
【0035】
また、蒸気ボイラ140へ補給される補給水W1の必要量が、補給水加温ラインL130から給水ラインL120に供給される補給水W1の量を上回るとする。この場合には、足りない分の補給水W1が、給水タンク130から供給される。すなわち、補給水加温ラインL130から給水ラインL120に供給された補給水W1と、貯留部131に貯留されている補給水W1とが蒸気ボイラ140に補給される。
【0036】
再び図1を参照して、ボイラシステム100の他の構成について説明する。
補給水加温ラインL130の計測点J2には、流量計173が設けられている。計測点J2は、循環ポンプ170と熱交換器150との間に位置する。流量計173は、補給水加温ラインL130を流通する補給水W1の流量FL1を計測する装置である。流量計173は、制御部180と電気的に接続されている。流量計173は、計測点J2で計測した補給水W1の流量FL1に関する情報(信号)を制御部180に送信する。なお、計測点J2は、補給水加温ラインL130であれば、どの位置に設けられていてもよい。
【0037】
補給水加温ラインL130の計測点J3には、温度計174が設けられている。計測点J3は、循環ポンプ170と熱交換器150との間に位置する。計測点J3は、熱交換器150の近傍に位置することが好ましい。温度計174は、熱交換器150を通過する前の補給水W1の温度TS1(熱交換器150の入口温度)を計測する装置である。温度計174は、制御部180と電気的に接続されている。温度計174は、計測点J3で計測した補給水W1の温度TS1に関する情報(信号)を制御部180に送信する。
【0038】
補給水加温ラインL130の計測点J4には、温度計175が設けられている。計測点J4は、熱交換器150と接続部J1との間に位置する。計測点J4は、熱交換器150の近傍に位置することが好ましい。温度計175は、熱交換器150を通過した後の補給水W1の温度TS2(熱交換器150の出口温度)を計測する装置である。温度計175は、制御部180と電気的に接続されている。温度計175は、計測点J4で計測した補給水W1の温度TS2に関する情報(信号)を制御部180に送信する。
【0039】
熱交換器150は、補給水加温ラインL130を流通する補給水W1と、ヒートポンプ160と接続された冷媒循環ラインL140(後述)を流通する冷媒(水)W2と、を熱交換する装置である。熱交換器150の内部には、補給水加温ラインL130の一部を構成する水流路L1と、冷媒循環ラインL140に接続された冷媒流路L2とが、互いに混ざることがないように近接して配置されている。
【0040】
補給水加温ラインL130を流通する補給水W1は、熱交換器150の水流路L1を通過したときに、熱交換器150の冷媒流路L2を流通する冷媒W2の放熱により加温される。加温された補給水W1は、熱交換器150から補給水加温ラインL130を介して給水ラインL120に供給される。一方、冷媒循環ラインL140を流通する冷媒W2は、熱交換器150を通過したときに、熱交換器150の水流路を流通する補給水W1に放熱することにより冷却される。冷却された冷媒W2は、冷媒循環ラインL140を介してヒートポンプ160の凝縮器(後述)に送られる。
【0041】
冷媒循環ラインL140は、熱交換器150の冷媒流路L2と、ヒートポンプ160の凝縮器と熱交換する冷媒流路(不図示)とを環状に接続するラインである。
【0042】
ヒートポンプ160は、内部冷媒(不図示)介して、外部の熱源(不図示の空調機や食品機械等の各種の冷却器)で発生した熱(廃熱)を回収する装置である。ヒートポンプ160は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器(いずれも不図示)を備える。圧縮機は、気体の内部冷媒を圧縮し、高温・高圧にして凝縮器に送り出す。凝縮器は、内部冷媒の熱を冷媒W2に放出して、内部冷媒を冷却(液化)する。冷媒W2は、内部冷媒の放熱により温水となる。膨張弁は、内部冷媒の圧力を下げて、内部冷媒の温度を低下させる。蒸発器は、内部冷媒を熱源水W3により加温して蒸発(気化)させる。熱源水W3は、内部冷媒への放熱により冷水となる。
【0043】
ヒートポンプ160の蒸発器には、熱源水供給ラインL150と、熱源水戻しラインL160とが接続されている。熱源水供給ラインL150は、熱源からの熱源水W3が流通するラインである。熱源水戻しラインL160は、熱源に戻る熱源水W3が流通するラインである。
【0044】
なお、ヒートポンプ160の蒸発器に供給される熱源としては、熱源水W3とする水熱源式であれば、特定の構成に限定されない。熱源水W3は、ヒートポンプ160の熱源となる水である。熱源水W3としては、工業用水、井戸水、水道水だけでなく、ヒートポンプ160の蒸発器に対して腐食、スケール付着等による寿命や効率の低下を発生させない水質であれば、種々の装置の排水を用いることができる。また、ヒートポンプ160は、熱源を空気熱源とする空気熱源式のものであってもよく、特定の方式に限定されない。
【0045】
ヒートポンプ160の運転は、制御部180から送信されるHP運転信号により制御される。ヒートポンプ160は、HP運転信号が「ON」になると運転を開始する。また、ヒートポンプ160は、運転信号が「OFF」になると運転を停止する。
【0046】
制御部180は、ボイラシステム100において、補給水W1の流通及びヒートポンプ160の動作を制御する制御装置である。制御部180は、各種の演算処理を実行する中央処理装置、補給水温度制御プログラム等を記憶する記憶部、時間を計測するタイマー部、制御部180と接続された各機器との間で通信を行なう入出力部等を備える(いずれも不図示)。このうち、タイマー部は、後述する時間T1、T2及びT3を、それぞれ独立して計測することができる。なお、図1に示す破線は、制御部180と各計測装置及び制御対象装置との電気的な接続の経路を示す。
【0047】
制御部180は、ボイラシステム100の運転中において、給水タンク130の水位に応じて補給水W1の流通を制御する。すなわち、制御部180は、水位計172で計測された補給水W1の水位が下限の水位を下回る場合には、補給水バルブ171のバルブ運転信号を「ON」にする。これにより、補給水バルブ171の弁が開いて、補給水W1が給水タンク130へ補給される。一方、制御部180は、水位計172で計測された補給水W1の水位が上限の水位を上回る場合には、補給水バルブ171のバルブ運転信号を「OFF」にする。これにより、補給水バルブ171の弁が閉じて、補給水W1の給水タンク130への補給が停止される。
【0048】
また、制御部180は、給水タンク130から補給水加温ラインL130へ流入する補給水W1の温度TS1が規定温度TSAを下回った場合には、ヒートポンプ160の運転を開始する。また、制御部180は、ヒートポンプ160の運転中において、ヒートポンプ160の負荷率αが規定負荷率α1を下回る状態が時間T1継続した場合、又はボイラ運転信号「OFF」となる非稼働状態が時間T2継続した場合には、ヒートポンプ160の運転を停止する。
【0049】
ヒートポンプ160の負荷率αは、以下の式(1)により算出することができる。
α(%)=Q1/Q0・・・式(1)
ただし、Q1:熱交換器150の熱交換量、Q0:ヒートポンプ160の加温能力である。
【0050】
熱交換器150の熱交換量Q1は、以下の式(2)により算出することができる。
Q1=ρCV(TS2−TS1)・・・式(2)
ただし、ρ:補給水W1の密度、C:補給水W1に比熱、V:補給水W1の流量、TS1:熱交換器150の入口温度、TS2:熱交換器150の出口温度である。
【0051】
ここで、補給水W1の密度ρ、比熱Cは、温度により異なる物性値である。入口温度TS1は、温度計174により計測され、出口温度TS2は、温度計175により計測される。流量V(FL1)は、流量計173により計測される。
【0052】
次に、制御部180が、補給水W1の水温を制御する場合の処理手順について説明する。図3に示すフローチャートの制御は、記憶部(不図示)に記憶された補給水水温制御プログラムに基づいて、制御部180により実行される。また、図3に示すフローチャートの制御は、ボイラシステム100の運転中において、所定の時間間隔で周期的に実行される。
【0053】
ステップST101において、制御部180は、給水タンク130に貯留されている補給水W1の水位Wを水位計172から取得する。
【0054】
ステップST102において、制御部180は、取得した水位Wが給水タンク130の下限水位Wmin以上か否かを判定する。このステップST102において、制御部180により、水位Wが下限水位Wmin以上である(YES)と判定された場合には、処理はステップST103へ進む。また、ステップST102において、制御部180により、水位Wが下限水位Wmin未満である(NO)と判定された場合には、本フローチャートの処理を終了する。
【0055】
ステップST103において、制御部180は、循環ポンプ170に送信するポンプ運転信号を「ON」にする。これにより、給水タンク130に貯留されている補給水W1が補給水加温ラインL130を介して熱交換器150へ送られる。
【0056】
ステップST104において、制御部180は、補給水加温ラインL130の計測点J2における補給水W1の流量FL1を流量計173から取得する。
【0057】
ステップST105において、制御部180は、取得した流量FL1が規定流量FLA以上か否かを判定する。このステップST105において、制御部180により、流量FL1が規定流量FLA以上である(YES)と判定された場合には、処理はステップST106へ進む。また、ステップST105において、制御部180により、流量FL1が規定流量FLA未満である(NO)と判定された場合には、処理はステップST113へ進む。なお、タイマー部(不図示)は、制御部180により流量FL1が規定流量FLA未満である(NO)と判定された場合に、時間の計測を開始する。
【0058】
ステップST106において、制御部180は、補給水加温ラインL130の計測点J3における補給水W1の温度TS1を温度計174から取得する。
【0059】
ステップST107において、制御部180は、取得した温度TS1が規定温度TSA未満か否かを判定する。このステップST107において、制御部180により、温度TS1が規定温度TSA未満である(YES)と判定された場合には、処理はステップST108へ進む。また、ステップST107において、制御部180により、温度TS1が規定温度TSA以上である(NO)と判定された場合には、処理はステップST111へ進む。
【0060】
ステップST108において、制御部180は、ヒートポンプ160のHP運転信号を「ON」にする。
【0061】
ステップST109において、制御部180は、ヒートポンプ160の負荷率αを算出する。制御部180は、上述した式(1)、(2)に基づいて負荷率αを算出する。
【0062】
ステップST110において、制御部180は、算出したヒートポンプ160の負荷率αが規定負荷率α1未満となる状態が時間T1継続したか否かを判定する。このステップST110において、制御部180により、ヒートポンプ160の負荷率αが規定負荷率α1未満となる状態が時間T1継続した(YES)と判定された場合には、処理はステップST111へ進む。また、ステップST110において、制御部180により、ヒートポンプ160の負荷率αが規定負荷率α1未満となる状態が時間T1継続していない(NO)と判定された場合には、処理はステップST112へ進む。なお、タイマー部(不図示)は、ヒートポンプ160の負荷率αが規定負荷率α1未満となった時点で時間の計測を開始する。
【0063】
ステップST111において、制御部180は、ヒートポンプ160のHP運転信号を「OFF」にして、本フローチャートの処理を終了する。
【0064】
一方、ステップST112において、制御部180は、ボイラ運転信号「OFF」の状態が時間T2継続したか否かを判定する。このステップST112において、制御部180により、ボイラ運転信号「OFF」の状態が時間T2継続した(YES)と判定された場合には、処理はステップST111へ進む。また、ステップST112において、制御部180により、ボイラ運転信号「OFF」の状態が時間T2継続していない(NO)と判定された場合には、処理はステップST110へ戻る。なお、タイマー部(不図示)は、ボイラ運転信号「OFF」となった時点で時間の計測を開始する。
【0065】
一方、ステップST113において、制御部180は、流量FL1が規定流量FLA未満となってから時間T3が経過したか否かを判定する。このステップST113において、制御部180により、時間T3が経過した(YES)と判定された場合には、処理はステップST114へ進む。また、ステップST113において、制御部180により、時間T2が経過していない(NO)と判定された場合には、処理はステップST104へ戻る。
【0066】
ステップST114において、制御部180は、警報を発して、ボイラシステム100を緊急停止させる。その後、制御部180は、タイマー部で計測した時間をすべてリセットして、本フローチャートの処理を終了する。
【0067】
このように、制御部180は、ヒートポンプ160の負荷率αが規定負荷率α1未満の状態が時間T1継続した場合や、蒸気ボイラ140の運転が停止してから時間T2が経過した場合には、ヒートポンプ160の運転を停止する。
【0068】
上述した第1実施形態のボイラシステム100によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
【0069】
第1実施形態のボイラシステム100は、給水タンク130に貯留された補給水W1を加温して給水ラインL120に供給する補給水加温ラインL130と、ヒートポンプ160と、補給水加温ラインL130を流通する補給水W1とヒートポンプ160を流通する冷媒W2とを熱交換する熱交換器150と、を備える。
【0070】
そのため、第1実施形態のボイラシステム100において、補給水加温ラインL130を流通する補給水W1は、ヒートポンプ160により継続的に加温される。これによれば、蒸気ボイラ140の負荷率が高い場合には、加温された補給水W1が蒸気ボイラ140に優先的に補給される。また、蒸気ボイラ140の負荷率が低い場合には、加温された補給水W1の一部が給水タンク130に補給され、給水タンク130に貯留される。このように、第1実施形態のボイラシステム100では、蒸気ボイラ140の負荷率に係らずヒートポンプ160の運転を継続することができる。従って、第1実施形態のボイラシステム100によれば、ヒートポンプ160の熱エネルギーを有効に利用することができる。
【0071】
また、第1実施形態のボイラシステム100は、給水タンク130から補給水加温ラインL130へ流入する補給水W1の温度TS1が規定温度TSAを下回った場合に、ヒートポンプ160の運転を開始する制御部180を備える。
【0072】
そのため、第1実施形態のボイラシステム100では、補給水W1の水温が高い場合にはヒートポンプ160が運転されず、補給水W1の水温が低い場合にのみヒートポンプ160が運転される。このように、第1実施形態のボイラシステム100では、ヒートポンプ160による加温が必要な場合のみヒートポンプ160が運転されるので、ヒートポンプ160を効率良く運転することができる。
【0073】
また、第1実施形態のボイラシステム100において、制御部180は、ヒートポンプ160の負荷率αが規定負荷率α1を下回る状態が時間T1継続した場合、又は蒸気ボイラ140の非稼働状態が時間T2継続した場合には、ヒートポンプ160の運転を停止する。
【0074】
通常、ヒートポンプ160の運転中は、負荷に応じて圧縮機の回転数、内部冷媒の流量等が制御される。しかし、ヒートポンプ160の負荷率αが一定以下になると、急激にCOP(エネルギー消費効率)が低下する。従って、制御部180において、ヒートポンプ160の負荷率αが所定負荷率を下回った場合や、蒸気ボイラ140の非稼働状態が所定時間継続した場合に、ヒートポンプ160の運転を停止することにより、上記のような不具合の発生をより少なくすることができる。
【0075】
また、第1実施形態のボイラシステム100は、補給水加温ラインL130から給水ラインL120を介して給水タンク130に向けて流通する補給水W1の一部を一時的に保持する貯留部131を備える。
【0076】
上述した特許文献1の蒸気発生システムでは、給水タンクの水位に応じて補給水を補給している。給水タンクから蒸気ボイラへ補給される補給水の量(以下、「補給水量」という)は、蒸気ボイラの相当蒸発量に等しい。このため、特許文献1の蒸気発生システムでは、補給水を加温するヒートポンプも、補給水量に見合った規模が必要となる。
【0077】
一方、第1実施形態のボイラシステム100では、蒸気ボイラ140の負荷率が低い場合に、加温された補給水W1の一部が給水タンク130に補給され、貯留部131に一時的に保持される。このため、貯留部131に保持された補給水W1を、再び補給水加温ラインL130へ導くことにより、補給水W1を循環加温(追い炊き)することができる。
【0078】
これによれば、特許文献1の蒸気発生システムのように、給水タンク130に補給する補給水W1を加温する場合に比べて、より規模の小さいヒートポンプ160で同じ補給水量の補給水W1を加温することができる。従って、第1実施形態のボイラシステム100では、ヒートポンプの設備を大きくする必要がなく、コストの低減を図ることができる。また、補給水W1を循環加温することができるため、特許文献1の蒸気発生システムに比べて、ヒートポンプ160の稼働率を上げることができる。
【0079】
なお、特許文献1の蒸気発生システムには、クッションタンクの温水を循環加温する構成が示されている(図1)。しかし、特許文献1の蒸気発生システムにおいて、循環加温が実施されるのは、クッションタンクの貯水温度が所定温度を下回った場合に限られる。このため、特許文献1の蒸気発生システムでは、蒸気ボイラが一時停止した場合や蒸気ボイラの負荷率が低くなった場合でも、クッションタンクの貯水温度が所定温度を下回らなければ、クッションタンクの温水を循環加温することができない。この場合には、クッションタンクに貯留された温水だけでなく、給水タンクに貯留された温水の温度が全体的に下がる。従って、蒸気ボイラが運転を再開した場合等において、温度の低い温水が蒸気ボイラに供給されてしまうおそれがある。しかしながら、第1実施形態のボイラシステム100では、補給水W1を循環加温することができるため、上記のような補給水W1の温度低下を極力回避することができる。
【0080】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態のボイラシステム100Aを示す概略構成図である。この第2実施形態では、補給水加温ラインL130の一次側が接続される位置が第1実施形態と異なる。すなわち、本実施形態のボイラシステム100Aでは、図4に示すように、補給水加温ラインL130の補給水バルブ171と給水タンク130との間の接続点J5に、補給水加温ラインL130の一次側(補給水W1の流入側)が接続されている。補給水加温ラインL130の二次側(補給水W1の流出側)は、第1実施形態と同じく給水ラインL120の接続部J1に接続されている。
【0081】
第2実施形態のボイラシステム100Aにおいて、第1実施形態のボイラシステム100と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。また、第2実施形態のボイラシステム100Aにおいて、特に説明しない事項については、第1実施形態の説明が適宜に適用又は援用される。
【0082】
図4に示す第2実施形態のボイラシステム100Aにおいて、制御部180が補給水W1の水温を制御する場合の処理手順は、図3に示すフローチャートと同じとなる。このため、本実施形態のボイラシステム100における説明を援用して、第2実施形態のボイラシステム100Aにおける制御の説明を省略する。
【0083】
上述した第2実施形態のボイラシステム100Aにおいても、第1実施形態のボイラシステム100と同等の効果を奏する。
【0084】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0085】
第1及び第2実施形態では、脱酸素装置120を補給水ラインL110に設けた例について説明した。しかし、これに限らず、脱酸素装置120は、補給水加温ラインL130に設けてもよい。このような構成とした場合には、循環ポンプ170に代えて、脱酸素装置120に内蔵されたポンプを用いて補給水W1を流通させてもよい。
【0086】
第1及び第2実施形態では、ボイラ装置として、蒸気ボイラ140を用いた例について説明した。しかし、これに限らず、例えば温水ボイラを用いることもできる。
【0087】
第1及び第2実施形態では、貯留部131を給水タンク130の内部に設けた例について説明した。しかし、これに限らず、貯留部131は、給水タンク130の外部に設けることもできる。
【0088】
第1及び第2実施形態では、ヒートポンプ160の内部冷媒(不図示)と熱交換した冷媒W2により補給水W1を加温する構成について説明した。しかし、これに限らず、ヒートポンプ160の内部冷媒と補給水W1とを直接に熱交換する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0089】
100、100A ボイラシステム
130 給水タンク
131 貯留部
140 蒸気ボイラ
150 熱交換器
160 ヒートポンプ
180 制御部(制御手段)
L110 補給水ライン
L120 給水ライン
L130 補給水加温ライン
W1 補給水
W2 冷媒
図1
図2
図3
図4